説明

自動車部品

【課題】鉄、アルミニウムに代わる最適な自動車部品を提供すること。
【解決手段】貝殻などに含まれる炭酸カルシウムを主体とした材料からシリンダーヘッド12、ヘッドカバー34などの自動車部品を構成する。天然物由来の炭酸カルシウムから自動車部品を構成することで、自動車の軽量化を図ることができるとともに、二酸化炭素の排出を低減することが可能となる。また、炭酸カルシウムから構成された自動車部品は燃焼生成物などの吸着作用を有するため、オイルの劣化を抑止することが可能となる。更に、炭酸カルシウムから構成された自動車部品は、優れた吸音、制振作用を有するため、自動車からの放射音を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関などを構成する自動車部品の材料として、鉄、アルミニウム等が広く用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−303927公報
【特許文献2】特開2005−8712号公報
【特許文献3】特開2005−2174号公報
【特許文献4】特公昭63−58778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鉄、アルミニウムなどの材料は比重が比較的大きいため、自動車の更なる軽量化を図る場合に難点がある。また、鉄、アルミニウム等はオイルの浄化作用を有していないため、これらの材料で内燃機関を構成した場合、オイルの劣化、およびオイルの消費を抑制することが困難になる。
【0005】
また、近時においては、地球温暖化を抑える等の理由から、二酸化炭素の排出をできるだけ抑えることが要請されている。このような状況下においては、自動車部品の製造時における二酸化炭素の排出を最小限に抑えるとともに、自然界に存在する二酸化炭素を可能な限り有効に消費することが好ましい。
【0006】
更に、近時においては、水産系生物廃棄物の処理が追いつかず、産業廃棄物として問題が生じている。このような水酸系生物廃棄物の中には、貝殻など二酸化炭素を多く含むものが存在する。特に、国内における貝殻の年間廃棄量は15万トンに達しており、環境への影響が懸念されている。従って、このような二酸化炭素を含む産業廃棄物を有効利用することが望ましい。
【0007】
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、鉄、アルミニウムに代わる最適な自動車部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、天然物由来の無機物を主体とした材料からなる自動車部品であることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、内燃機関の構成部品として用いられることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、潤滑油が介在する場所に用いられることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第3の発明において、ブローバイガス中に含まれる潤滑油を分離する潤滑油分離手段を構成することを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、第2又は第3の発明において、カムシャフトを支持する軸受部を一体に備えたヘッドカバーを構成することを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、第1〜第5の発明のいずれかにおいて、前記天然物由来の無機物は炭酸カルシウムであることを特徴とする。
【0014】
第7の発明は、第6の発明において、前記天然物由来の無機物は貝殻から得られたものであることを特徴とする。
【0015】
第8の発明は、上記の目的を達成するため、化学合成により得られた炭酸カルシウムを主体とした材料からなる自動車部品であることを特徴とする。
【0016】
第9の発明は、第8の発明において、内燃機関の構成部品として用いられることを特徴とする。
【0017】
第10の発明は、第9の発明において、潤滑油が介在する場所に用いられることを特徴とする。
【0018】
第11の発明は、第10の発明において、ブローバイガス中に含まれる潤滑油を分離する潤滑油分離手段を構成することを特徴とする。
【0019】
第12の発明は、第9又は第10の発明において、カムシャフトを支持する軸受部を一体に備えたヘッドカバーを構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、自動車部品に天然物由来の無機物を用いることにより、自動車部品の更なる軽量化を図ることが可能となる。これにより、自動車の燃費を向上することができ、二酸化炭素の排出を最小限に抑えることが可能となる。
【0021】
第2の発明によれば、天然物由来の無機物からなる自動車部品を内燃機関の構成部品として用いることで、内燃機関の軽量化を図ることが可能となる。また、天然物由来の無機物は燃焼生成物などの浄化作用を有しているため、燃焼生成物による内燃機関への影響を抑えることができる。
【0022】
第3の発明によれば、天然物由来の無機物からなる自動車部品を潤滑油が介在する箇所に用いることで、ブローバイガス中の燃焼生成物、水分などを浄化することができ、オイルの劣化を抑えることが可能となる。
【0023】
第4の発明によれば、天然物由来の無機物からなる自動車部品を用いてPCVルームなどの潤滑油分離手段を構成するため、ブローバイガス中のオイルを確実に分離することが可能となり、オイルの消費を抑えることが可能となる。
【0024】
第5の発明によれば、天然物由来の無機物からなる自動車部品は、吸音作用、制振作用に優れているため、カムシャフトを支持する軸受部を一体に備えたヘッドカバーを天然物由来の無機物から構成することで、内燃機関からの放射音、振動を最小限に抑えることができる。
【0025】
第6の発明によれば、生物、鉱物などの天然物には大気中の二酸化炭素を原料とする炭酸カルシウムが含まれるため、天然物由来の無機物として炭酸カルシウムを用いることができる。
【0026】
第7の発明によれば、天然物由来の無機物としての炭酸カルシウムを貝殻から得ることにより、水産系生物廃棄物としての貝殻を有効活用することができ、産業廃棄物の低減に寄与することができる。
【0027】
第8の発明によれば、自動車部品に化学合成により得られた炭酸カルシウムを用いることにより、自動車部品の更なる軽量化を図ることが可能となる。これにより、自動車の燃費を向上することができ、二酸化炭素の排出を最小限に抑えることが可能となる。
【0028】
第9の発明によれば、化学合成により得られた炭酸カルシウムからなる自動車部品を内燃機関の構成部品として用いることで、内燃機関の軽量化を図ることが可能となる。また、炭酸カルシウムは燃焼生成物などの浄化作用を有しているため、燃焼生成物による内燃機関への影響を抑えることができる。
【0029】
第10の発明によれば、化学合成により得られた炭酸カルシウムからなる自動車部品を潤滑油が介在する箇所に用いることで、ブローバイガス中の燃焼生成物、水分などを浄化することができ、オイルの劣化を抑えることが可能となる。
【0030】
第11の発明によれば、化学合成により得られた炭酸カルシウムからなる自動車部品を用いてPCVルームなどの潤滑油分離手段を構成するため、ブローバイガス中のオイルを確実に分離することが可能となり、オイルの消費を抑えることが可能となる。
【0031】
第12の発明によれば、化学合成により得られた炭酸カルシウムからなる自動車部品は、吸音作用、制振作用に優れているため、カムシャフトを支持する軸受部を一体に備えたヘッドカバーを天然物由来の無機物から構成することで、内燃機関からの放射音、振動を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面に基づいてこの発明のいくつかの実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。なお、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動車部品を有して構成されたカムシャフト支持構造を説明するための図である。より具体的には、図1は、本実施形態のカムシャフト支持構造を、一つの気筒の中央を通る面で切断することにより得られる断面図である。尚、本実施形態の内燃機関10は、直列4気筒型エンジンであり、また、内燃機関10の各気筒には、それぞれ2つの吸気弁および2つの排気弁が備わっているものとする。
【0034】
図1に示すように、内燃機関10は、シリンダーヘッド12を備えている。シリンダーヘッド12には、気筒毎に吸気ポート14と排気ポート16が設けられるとともに、それらを開閉するための吸気弁18および排気弁20が組み込まれる。吸気弁18および排気弁20の上端は、それぞれロッカーアーム22,24の一端に接している。
【0035】
吸気弁18および排気弁20には、それぞれ図示省略するバルブスプリングの付勢力が作用している。ロッカーアーム22,24の一端は、それぞれ、その付勢力を受けた吸気弁18および排気弁20により上方に付勢されている。ロッカーアーム22,24の他端は、それぞれ、ラッシュアジャスタ25により支持されている。
【0036】
ロッカーアーム22の上部には、吸気カムシャフト26が配置されている。吸気カムシャフト26には、ロッカーアーム22と当接する吸気カム28が固定されている。同様に、ロッカーアーム24の上部には、排気カムシャフト30が配置されている。排気カムシャフト30には、ロッカーアーム24と当接する排気カム32が固定されている。
【0037】
シリンダーヘッド12の上部には、アッパカムキャリア一体ヘッドカバー34(以下単にヘッドカバー34と称する)が図示省略する締結ボルトによって固定される。図2は、図1に示すヘッドカバー34を、ロッカーアーム22,24側から見た斜視図である。より具体的には、図2は、ヘッドカバー34、カムシャフト26,30、および後述する下方軸受部材44,46,48,50,52を分解して表した斜視図である。図2に示すように、吸気カムシャフト26および排気カムシャフト30の一端には、それぞれ、クランクシャフトの駆動力を伝達するためのチェーンを巻き掛けるためのタイミングスプロケット36,38が固定されている。また、吸気カムシャフト26の他端には、図示しない燃料ポンプを駆動するためのポンプ駆動用カム40が固定されている。
【0038】
図2に示すように、ヘッドカバー34には、吸気カムシャフト26および排気カムシャフト30をそれぞれ支持するための上方軸受部42が一体に形成されている。より具体的には、上方軸受部42は、内燃機関10の各気筒間の3ヶ所、および両端の気筒の外側の合計5箇所に、それぞれ2つづつ設けられている。個々の上方軸受部42は、カムシャフト26,30の各ジャーナル部を支持することができるように、半円状の凹状に形成されている。ここでは、図2中に示すように、タイミングスプロケット36,38に最も近い側から順に、カムシャフト26,30の各ジャーナル部に対して、#1〜#5の符号を付すことでそれぞれのジャーナル部を区別することとする。
【0039】
それぞれの上方軸受部42には、対応する下方軸受部材44,46,48,50,52が組み合わされる。下方軸受部材44,46,48,50,52のそれぞれには、2つの下方軸受部54が形成されている。下方軸受部54は、カムシャフト26,30の各ジャーナル部#1〜#5を支持することができるように、上方軸受部42と同一径となる半円形の凹状に形成されている。下方軸受部材44,46,48,50,52は、カムシャフト26,30を上方軸受部42に搭載した状態で、締結ボルト(図示省略)によってヘッドカバー34に固定される。
【0040】
本実施形態において、ヘッドカバー34の少なくとも一部は、天然生物由来の無機物を主体とした材料により構成されている。より具体的には、これらの自動車部品は、貝殻から得られた炭酸カルシウムを素材として構成されている。
【0041】
天然に採取される貝殻(例えば、ホタテ、カキなどの貝殻)は、主として炭酸カルシウムから構成されている。本実施形態では、貝殻を粉末状に粉砕し、所定温度、所定圧力で固化させることで、ヘッドカバー34などの自動車部品を構成している。
【0042】
より詳細には、天然に採取される貝殻は炭酸カルシウム(CaCO)の結晶構造から構成されている。貝殻には接着作用を有する材料が含まれており、貝殻を粉末状に粉砕し、所定温度、所定圧力で固化させると、炭酸カルシウムの結晶構造が再現される。より好適には、製造コストを最小限に抑えるためには、常温、常圧下で固化することが望ましい。炭酸カルシウムの結晶構造は強固なものであり、貝殻の粉末を固化して得られた自動車部品は、ヘッドカバー34のみならず、シリンダーヘッドやシリンダーブロックの一部など、内燃機関10を構成する部品に適用することができる。また、貝殻を素材とする自動車部品は、内燃機関10以外においても、自動車の車体、車室内装備品など様々な部品として用いることができる。
【0043】
天然の貝殻の比重はアルミニウムと同程度である。従って、貝殻の粉末を固化して得られた自動車部品の比重もアルミニウムと同程度である。また、固化の際に発泡させることで、貝殻を素材とする自動車部品の比重をアルミニウムの比重よりも小さくすることが可能である。また、貝殻を素材とする自動車部品は薄肉化などの方法を用いることで軽量化を図ることができる。従って、貝殻を素材とする自動車部品を用いることで、内燃機関10、若しくは車体などに用いられる自動車部品の大幅な軽量化を達成することができる。従って、自動車の大幅な軽量化が可能となり、燃費を向上することが可能となる。これにより、内燃機関10の二酸化炭素の排出を削減することが可能となる。
【0044】
また、貝殻を素材として自動車部品を製造する際には、精錬、電気分解などの工程が不要であるため、アルミニウムなどから自動車部品を製造する場合に比べて製造時の二酸化炭素の排出量を大幅に低減することができる。従って、二酸化炭素の排出が自然環境へ与える影響(負荷)を低減することができる。
【0045】
更に、炭酸カルシウムの結晶構造は、すすなどの燃焼生成物を吸着する特性を有している。従って、貝殻の粉末を固化して得られた自動車部品を用いて内燃機関10を構成することで、燃焼生成物によって内燃機関10を潤滑するオイルが劣化してしまうことを抑えることができる。
【0046】
すなわち、すすなどの燃焼生成物がブローバイガスに含まれると、燃焼生成物がブローバイガスとともにシリンダーブロックの下方に送られ、燃焼生成物によってオイルが劣化してしまう。しかし、本実施形態の構成によれば、すすなどの燃焼生成物は、ヘッドカバー34を構成する炭酸カルシウムの部品の表面に吸着されるため、燃焼生成物がブローバイガスに含まれることを抑止できる。従って、燃焼生成物によるオイルの劣化を最小限に抑えることができる。また、貝殻を材料とする自動車部品の表面には、炭酸カルシウム特有の結晶構造の微細凹凸部分が形成されるため、この微細凹凸部分にオイルを捕捉することができ、オイルの分離性能をより向上することができる。
【0047】
また、炭酸カルシウムの結晶構造は、水分を吸水する特性(吸水性)を有している。水分がブローバイガスに含まれていると、水分がブローバイガスとともにシリンダーブロックの下方に送られ、水分によってオイルが劣化してしまう。しかし、本実施形態の構成によれば、水分はヘッドカバー34を構成する炭酸カルシウムの部品の表面に吸着されるため、水分がブローバイガスに含まれることを抑止できる。従って、水分によるオイルの劣化を最小限に抑えることができる。
【0048】
特に、冷間時に低温の水分がブローバイガスに含まれると、オイルの劣化が進行し易くなる。本実施形態の構成によれば、冷間時においても、水分がヘッドカバー34を構成する炭酸カルシウムの部品表面に吸着されるため、低温の水分がブローバイガスに含まれてしまうことを抑止できる。また、内燃機関10が暖機された後は、炭酸カルシウムの部品表面に吸着されていた水分が水蒸気となって放出される。
【0049】
このように、貝殻の材料は純度の高い炭酸カルシウムであり、貝殻を材料として自動車部品を構成することで、以上説明したような燃焼生成物の吸着性、水分の吸水性などの特性を非常に良好にすることができる。
【0050】
また、貝殻を素材とする自動車部品は、鉄、アルミニウムよりも優れた断熱性を有している。従って、寒冷条件下においても内燃機関10の内部における内部結露を抑えることができ、内部結露による水分結露を最小限に抑えることができる。従って、寒冷条件下において内部結露による水分がブローバイガス中に含まれることを抑止することができ、水分によるオイルの劣化を確実に抑えることができる。
【0051】
このように、貝殻で構成される自動車部品は特にオイルが介在する箇所の部品に適用することが好適である。オイルが介在する箇所の部品としては、シリンダーヘッド12、ヘッドカバー34、シリンダーブロック等の他、ヘッドカバー34などに設けられるPCVルーム、PCVケースが挙げられる。
【0052】
図3は、内燃機関10に設けられたPCVルーム、PCVケースの例を示す模式図である。図3の例では、ヘッドカバー34に設けられたPCVルーム60と、シリンダーブロック61に一体に設けられたPCVケース62を示している。PCVルーム60、PCVケース62、および後述するオイルタンク80は、ブローバイガス中のオイルを分離する潤滑油分離手段として設けられている。
【0053】
図3に示すように、ピストン64とシリンダー66との間を通過したブローバイガスは、シリンダーブロック61の下方に送られた後、ヘッドカバー34内に送られ、通路68から吸気管70内に戻される。ヘッドカバー34に設けられたPCVルーム60は、ブローバイガス中に含まれるオイルを分離する機能を有している。
【0054】
図4は、PCVルーム60の構成を詳細に示す断面図である。図4に示すように、PCVルーム60の内部には複数の衝突板72が設けられている。ブローバイガスは孔74からPCVルーム60の内部に入り、衝突板72で規定された流路を蛇行するように流れ、通路68に送られる。そして、ブローバイガスがPCVルーム60内を流れる過程で、ブローバイガスに含まれるオイルが衝突板72、またはPCVルーム60の内壁に付着し、ブローバイガス中のオイルが分離される。分離されたオイルは、孔74を通過して下方へ落下する。
【0055】
また、ピストン64とシリンダー66との間を通過したブローバイガスは、シリンダーブロック61の下方に送られた後、シリンダーブロック61に設けられたPCVケース62に送られ、通路78からオイルタンク80を経由して吸気管70に戻される。PCVケース62の内部にも、衝突板72によって流路が規定されている。PCVケース62に入ったブローバイガスは、衝突板72で規定された流路を蛇行するように流れ、通路78に送られる。そして、ブローバイガスがPCVケース62内を流れる過程で、ブローバイガスに含まれるオイルが衝突板72、またはPCVケース62の内壁に付着し、ブローバイガス中のオイルが分離される。
【0056】
同様に、オイルタンク80は、内燃機関10に対して別置きされるPCVケースであって、内部にはPCVルーム60と同様に衝突板72が設けられている。オイルタンク80に流入したブローバイガスは衝突板72に衝突し、ブローバイガス中のオイルは衝突板72に付着し、分離される。分離されたオイルは、オイル通路82を通ってシリンダーブロック内に戻される。
【0057】
従って、内燃機関10に設けられるPCVルーム60、PCVケース62、オイルタンク80、およびこれらの内部に設けられる衝突板72を貝殻を主体とする材料で構成することで、オイルの吸着性能をより向上させることができ、ブローバイガス中のオイルを衝突板72、またはPCVルーム60、PCVケース62、オイルタンク80の内壁に確実に付着させることが可能となる。従って、ブローバイガス中のオイルを確実に分離することが可能となり、オイルの劣化を抑制するとともに、オイルの消費量を確実に低減することが可能となる。
【0058】
また、貝殻で構成される自動車部品は、炭酸カルシウムと有機成分の複合構造で構成されるため、鉄、アルミニウムよりも優れた吸音作用、制振作用を有している。また、内燃機関10からの騒音は、主としてカムシャフト26,30が格納されたヘッドカバー34からの放射音として外部に伝達される。従って、ヘッドカバー34を貝殻で構成される自動車部品とすることで、内燃機関10からの放射音を大幅に低減することが可能となる。
【0059】
特に、本実施形態のように、部品点数削減等のためにヘッドカバー34が上方軸受部42を一体に備えている場合は、ヘッドカバー34によってカムシャフト26,30が直接的に支持されるため、ヘッドカバー34からの振動、放射音が外部に伝達され易くなることが想定できる。本実施形態によれば、貝殻を素材としてヘッドカバー34を構成しているため、放射音を確実に低減することが可能となる。従って、部品点数削減、小型化などを目的としてヘッドカバーにカムシャフトのジャーナル部を設けた場合においても、放射音を低減することが可能となる。
【0060】
上述したように、貝殻は主として炭酸カルシウムから構成されている。そして、貝殻に含まれる炭酸カルシウムは、大気中から海水に溶け込んだ二酸化炭素が原料となっている。従って、貝殻を素材として自動車部品を製造することで、大気中の二酸化炭素を部品中に固定化することができ、大気中の二酸化炭素の削減に寄与することができる。より詳細には、貝殻の約半分は大気から吸収された二酸化炭素から構成されているため、二酸化炭素の固定化の効果が大きい。また、部品の耐用年数が経過した後は、通常はリサイクルされるが貝殻を素材とする自動車部品が廃棄処理されても、炭酸カルシウム中の二酸化炭素は自然界に戻され、再び天然無機物として炭素循環し再利用できる。
【0061】
また、貝殻は水産系生物廃棄物としてその多くが放置されており、廃棄物処理の問題が顕在化している。本実施形態によれば、産業廃棄物としての貝殻を有効活用して自動車部品を製造することができるため、産業廃棄物の低減に寄与することができる。従って、産業廃棄物に起因する環境の悪化を緩和することが可能となる。
【0062】
なお、上述の例では、天然物由来の無機物として貝殻から得られた炭酸カルシウムを用いているが、天然物由来の無機物であれば、貝殻以外のものを用いた場合であっても、軽量化、オイル劣化防止、吸音(制振)、二酸化炭素排出量などに関して貝殻の場合と同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、上述の例では、貝殻から炭酸カルシウムを採取した場合を例示しているが、貝殻以外の生物(例えば蟹、海老などの殻)から炭酸カルシウムを採取しても良い。また、炭酸カルシウムは生物以外の天然生成物から採取したものでも良く、例えば石灰石などの鉱物から採取したものであっても良い。これらの場合においても、貝殻の場合と同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、炭酸カルシウムは天然生成物以外のものであっても良く、化学合成された炭酸カルシウムの粉末を用いても良い。化学合成された炭酸カルシウムを用いた場合においても、貝殻等の天然生成物を用いた場合と同様に、炭酸カルシウムの粉末を固化することで自動車部品を構成することが可能であり、天然生成物から得られた炭酸カルシウムを用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0065】
以上説明したように本実施形態によれば、貝殻などに含まれる炭酸カルシウムを用いて自動車部品を製造するため、部品の軽量化を達成することができ、オイルの劣化を抑止することが可能となる。従って、燃費を向上することができ、環境に配慮した最適な自動車部品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動車部品を有して構成されたカムシャフト支持構造を説明するための図である。
【図2】図1に示すヘッドカバーを、ロッカーアーム側から見た斜視図である。
【図3】内燃機関に設けられたPCVルームの例を示す模式図である。
【図4】PCVルームの構成を詳細に示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
12 シリンダーヘッド
34 ヘッドカバー
44,46,48,50,52 下方軸受部材
60 PCVルーム
62 PCVケース
80 オイルタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然物由来の無機物を主体とした材料からなることを特徴とする自動車部品。
【請求項2】
内燃機関の構成部品として用いられることを特徴とする請求項1記載の自動車部品。
【請求項3】
潤滑油が介在する場所に用いられることを特徴とする請求項2記載の自動車部品。
【請求項4】
ブローバイガス中に含まれる潤滑油を分離する潤滑油分離手段を構成することを特徴とする請求項3記載の自動車部品。
【請求項5】
カムシャフトを支持する軸受部を一体に備えたヘッドカバーを構成することを特徴とする請求項2又は3記載の自動車部品。
【請求項6】
前記天然物由来の無機物は炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自動車部品。
【請求項7】
前記天然物由来の無機物は貝殻から得られたものであることを特徴とする請求項6記載の自動車部品。
【請求項8】
化学合成により得られた炭酸カルシウムを主体とした材料からなることを特徴とする自動車部品。
【請求項9】
内燃機関の構成部品として用いられることを特徴とする請求項8記載の自動車部品。
【請求項10】
潤滑油が介在する場所に用いられることを特徴とする請求項9記載の自動車部品。
【請求項11】
ブローバイガス中に含まれる潤滑油を分離する潤滑油分離手段を構成することを特徴とする請求項10記載の自動車部品。
【請求項12】
カムシャフトを支持する軸受部を一体に備えたヘッドカバーを構成することを特徴とする請求項9又は10記載の自動車部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−239425(P2008−239425A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84124(P2007−84124)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】