説明

自転車用回生制動制御装置

【課題】常時回生とブレーキ回生とを行う回生制動制御装置において、ブレーキ回生による回生充電を効率よく行えるようにする。
【解決手段】回生制動制御部74は、第1制御部75と、第2制御部76と、切換制御部77と、を備えている。第1制御部75は、一定の第1回生制動力BF1を発生するようにアシストモータ60を制御する。第2制御部76は、フロントブレーキ機構117fが初期状態から制動状態に遷移するとき、徐々に大きくなるような第2回生制動力BF2を発生するようにアシストモータ60を制御する。切換制御部77は、第1制御部75による制御を行っているときに、フロントブレーキ機構117fが初期状態から制動状態に遷移するとき、第2制御部76による制御に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動制御装置、特に、人力による駆動をモータにより補助する電動自転車に装着可能なブレーキ装置に関連して、モータを制御する自転車用回生制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人力よる駆動をモータにより補助するアシスト自転車において、蓄電池の電力の消耗を抑えるために、回生制動を行う技術が従来知られている(たとえば、非特許文献1参照)。従来の回生制動装置では、ブレーキレバーにレバー操作の有無を検出するセンサを配置している。そして、ブレーキレバーが操作されたときにブレーキ回生を行い、回生充電している。また、下り坂を検知すると回生充電を行い、さらに平地でも弱い回生制動力を付与する常時回生を行って回転充電している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】三洋電機株式会社 2010年3月2日ニュースリリース、[online]、<URL : http:/jp.sanyo.com/news/2010/03/02-1/html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の構成では、上り坂以外の状況で常時回生、下り坂回生及びブレーキ回生により充電を行っている。このため下り坂回生及びブレーキ回生のみで回生充電を行う場合に比べて回生充電の機会が増加して充電効率が高くなる。
【0005】
しかし、ブレーキレバーの操作によりブレーキ回生するとき、その回生制動力が一定である。このため、ブレーキ回生のときの回生充電を効率よく行えない。
【0006】
本発明の課題は、常時回生とブレーキ回生とを行う回生制動制御装置において、ブレーキ回生による回生充電を効率よく行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る自転車用回生制動制御装置は、人力による駆動をモータにより補助する電動自転車に装着可能なブレーキ機構に関連して、モータを制御する装置である。自転車用回生制動制御装置は、第1制御部と、第2制御部と、切換制御部と、を備えている。第1制御部は、一定の第1回生制動力を発生するようにモータを制御する。第2制御部は、ブレーキ機構が初期状態から制動状態に遷移するとき、徐々に大きくなるような第2回生制動力を発生するようにモータを制御する。切換制御部は、第1制御部による制御を行っているときに、ブレーキ機構が初期状態から制動状態に遷移するとき、第2制御部による制御に切り換える。
【0008】
この回生制動制御装置では、ブレーキ機構の状態、すなわち機械的なブレーキ機構による制動が行われているか否かに関わらず、第1制御部による一定の第1回生制動力を発生させた回生充電が行われる。第1回生制動力は、通常の走行に差し支えない程度の制動力に設定される。第1制御部による制御を行っているときにブレーキ機構が初期状態から制動状態に遷移すると、たとえば、ブレーキレバーを操作すると、第2制御部による制御に切り換わり、徐々に大きくなるような第2回生制動力による回生充電が行われる。このため、第1回生制動力による回生充電より充電量が多くなる。
したがって、ブレーキ回生時の回生充電量が多くなり、ブレーキ回生による回生充電を効率よく行えるようになる。
【0009】
発明2に係る自転車用回生制動制御装置は、発明1に記載の装置において、ブレーキ機構は、自転車用ブレーキレバーを備える。第2制御部は、自転車用ブレーキレバーの動作に基づいてモータを制御する。
【0010】
この場合には、第2制御部による制御のときには、ブレーキレバーの動作、たとえばブレーキレバーの移動位置によりモータが制御される。このため、ブレーキレバーの動作により第2回生制動力が徐々に大きくなり、第2回生制動力を滑らかに増加させることができる。
【0011】
発明3に係る自転車用回生制動制御装置は、発明1又は2に記載の装置において、ブレーキ機構が初期状態から制動状態に遷移するとき、切換制御部により第1制御部による制御から第2制御部による制御に切り換わる第1制動モードと、ブレーキ機構が初期状態から制動状態に遷移するときに、第2制御部による制御を行う第2制動モードと、に切り換えるモード切換部をさらに備える。
【0012】
この場合には、第1制動モードでは、第1回生制動力で常時回生制動して回生充電し、ブレーキ機構が初期状態から動作状態に変化すると、徐々に大きくなる第2回生制動力で回生制動して回生充電量が多くなる。一方、第2制動モードでは、ブレーキ機構の状態が初期状態の間は回生制動を行わず、初期状態から動作状態に遷移すると、徐々に大きくなる第2回生制動力で制動して回生充電する。ここでは、ライダーの好みに合わせて充電量を調整できる。たとえば、電池残量が少ないときには、第1制動モードにして充電量を多くし、電池残量が多いときには、第2制動モードにしてブレーキ機構が動作しないときにペダルを軽くこげるようにすることができる。
【0013】
発明4に係る自転車用回生制動制御装置は、発明2又は3に記載の装置において、移動位置検出部と位置判断部と、をさらに備える。移動位置検出部は、ブレーキレバーの揺動するレバー部材の初期位置からの移動位置、すなわちレバー部材の初期位置を基準としたときのレバー部材の位置を検出する。位置判断部は、初期位置からの移動位置が所定位置を超えたか否かを判断する。切換制御部は、移動位置が所定位置を超えるまでは、第1制御部により第1回生制動力を発生させるようにモータを制御する。また切換制御部は、移動位置が所定位置を超えると、第2制御部により第2回生制動力を発生させるようにモータを制御する。
【0014】
この場合には、ブレーキレバーのレバー部材の移動位置が所定位置を超えるまでは第1制御部により一定の第1回生制動力で回生制動される。移動位置が所定位置を超えると、第2制御部により移動位置に応じて徐々に大きくなる第2回生制動力で回生制動される。ここでは、レバー部材の移動位置によりモータ制御を切り換えているので、回生制動力の切り換えをスムーズに行える。
【0015】
発明5に係る自転車用回生制動制御装置は、発明4に記載の装置において、第2制御部は、初期位置からの移動位置に応じて第2回生制動力が徐々に大きくなるようにモータを制御する。
【0016】
この場合には、初期位置からの移動位置に応じて第2回生制動力が大きくなる。このため、第1回生制動力とレバー部材が所定位置のときの第2回生制動力とが等しくなるように設定すれば、第1制御部による第1回生制動力から第2制御部による第2回生制動力に違和感なく回生制動力を変化させることができる。
【0017】
発明6に係る自転車用回生制動制御装置は、発明4又は5に記載の装置において、位置判断部は、第2回生制動力が第1回生制動力を超えるときの移動位置を所定位置と判断する。この場合には、一定の第1回生制動力と初期位置から徐々に大きくなる第2回生制動力とが同じになったときの移動位置を所定位置として判断している。たとえばデューティ制御により回生制動力を設定する場合、デューティ比が同じになったときに、所定位置と判断する。このため、レバー部材の初期位置が変動しても第2回生制動力が第1回生制動力から徐々に大きくなる。
【0018】
発明7に係る自転車用回生制動制御装置は、発明4に記載の装置において、第2制御部は、少なくとも所定位置からの移動位置に応じて第2回生制動力が第1回生制動力より徐々に大きくなるように前記モータを制御する。
【0019】
この場合には、所定位置を初期位置とブレーキ機構の制動開始位置との間で固定しても、所定位置で第2回生制動力が第1回生制動力から徐々に大きくなる。しかも、初期位置ではなく所定位置から第2回生制動力が大きくなるように設定できるので、制御を簡素化できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、一定の第1回生制動力による回生制動をブレーキ機構の状態に関わらず常時行って電源に対する回生充電を行っているときに、ブレーキ機構が初期状態から制動状態に遷移すると、徐々に大きくなる可変の第2回生制動力による回生充電が行われる。このため、ブレーキ回生時の回生充電量が多くなり、ブレーキ回生による回生充電を効率よく行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態が採用された自転車の側面図。
【図2】ブレーキレバー及び表示装置を示す平面図。
【図3】表示装置のモード画面の表示の一例を示す図。
【図4】表示装置のサイクルコンピュータ画面の一例を示す図。
【図5】本発明の第1実施形態による電装システムの構成を示すブロック図。
【図6】その接続形態を示すブロック図。
【図7】全体制御部の機能構成を示すブロック図。
【図8】回生制動制御部の制御動作を示すフローチャート。
【図9】初期位置書換部の動作を示すフローチャート。
【図10】回生制動制御動作を示すフローチャート。
【図11】ブレーキ回生及び常時回生時の回生制動力の変化を示すグラフ。
【図12】第2実施形態の図10に相当する図。
【図13】第2実施形態の図11に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
図1において、本発明の第1実施形態を採用する自転車は人力よる駆動をモータユニット10により補助するアシスト自転車である。なお、以下の説明では、自転車の左右は、通常、自転車を後方から見たときに右にあるのを右とし、左にあるのを左と規定している。
【0023】
自転車は、フレーム体102及びフロントフォーク103を有するフレーム101と、ハンドル部104と、駆動部105と、前輪106fと、後輪106rと、フロントブレーキ装置107f及びリアブレーキ装置107rと、前照灯23と、尾灯24と、を備えている。フロントフォーク103は、フレーム体102の前部に斜めの軸回りに揺動自在に装着されている。フロントブレーキ装置107f及びリアブレーキ装置107rは、前輪106f及び後輪106rのフロントリム121f及びリアリム121rにそれぞれ接触して制動する。
【0024】
フレーム101には、サドル111やハンドル部104を含む各部が取り付けられている。駆動部105は、フレーム体102のハンガー部に回転自在に支持されたクランク軸116と、クランク軸116の両端に固定されたギアクランク118a及び左クランク(図示せず)と、ギアクランク118aに掛け渡されたチェーン119と、後輪106rのリアハブ110に装着されたギア109と、フロントディレーラ108fと、リアディレーラ108rと、を有している。
【0025】
フロントディレーラ108fは、ギアクランク118aに装着された、たとえば3枚のスプロケットのいずれかにチェーン119を架け渡すものである。リアディレーラ108rは、リアハブ110に取り付けられた、ギア109のたとえば9枚のスプロケットのいずれかにチェーン119を架け渡すものである。いずれも電動駆動されるものである。
【0026】
フレーム体102の後上部には、リアキャリア112が取り付けられている。リアキャリア112には、全体制御部12を含むリアキャリアユニット13が装着されている。リアキャリアユニット13は、後述するモータユニット10、全体制御部12及び前照灯23等の電源となる蓄電部14を着脱可能に搭載している。蓄電部14は、例えばニッケル水素電池またはリチウムイオン電池等の蓄電池を含んでいる。蓄電部14に尾灯24が一体で取り付けられている。
【0027】
前輪106fの中心には、前輪106fの駆動補助用のモータユニット10が装着されている。モータユニット10の内部には、図5に示すように、アシストモータ60と、インバータ61と、速度センサ62とが設けられている。アシストモータ60は、たとえば3相ブラシレスDCモータまたは交流モータである。インバータ61は、蓄電部14から直流出力された電流をアシストモータ60のアシストモードに応じたアシスト力を発生する交流電流に変換する。また、アシストモータ60の回生制動力を変化させる。インバータ61は、デューティ比を変化させることによりアシスト力及び回生制動力を変化させる。速度センサ62は、アシストモータ60の回転速度つまり、自転車の速度を検出する。
【0028】
また、ハンガー部122には、図5に示すように、クランク軸116に作用する踏力を検出するためのトルクセンサ17およびクランク軸116の回転角度を検出する角度センサ19を有する後述するハンガーユニット122aが設けられている。
【0029】
リアキャリアユニット13は、全体制御部12を内部に有している。全体制御部12は、マイクロコンピュータを有し、接続された電装品を制御する。全体制御部12は、アシストモードのとき、乗り手の踏力の最大でN1倍のアシスト力が発生するようにモータユニット10を制御可能である。全体制御部12は、複数の回生制動モードと複数のアシストモードとでアシストモータ60を制御する。具体的には、全体制御部12は、アシストモードでは、踏力のN1倍のアシスト力で補助する強アシストモード、N2倍のアシスト力で補助する中アシストモード、およびN3倍のアシスト力で補助する弱アシストモードの3つのアシストモードを有している。N1、N2およびN3は、予め定める数字を表し、N1>N2>N3に選ばれる。N1は例えば2に選ばれ、N2は例えば1.5に選ばれ、N3は例えば1に選ばれる。
【0030】
また、回生制動モードでは、常時回生モード(第1制動モードの一例)と、後述する右ブレーキレバー16fのレバー部材31の移動位置に応じて制動力を変化させるブレーキ回生モード(第2制動モードの一例)との2つの制動モードを有している。また、モータユニット10の動作モードとして、アシストおよび回生制動を両方とも行わないオフモードも有している。常時回生モードでは、右ブレーキレバー16fのレバー部材31が初期位置から移動したときに所定位置に到達するまでは、一定の第1回生制動力で制動し、所定位置を超えると、レバー部材31の移動位置に応じて回生制動による制動力が大きくなる第2回生制動力で制動する。ブレーキ回生モードでは、常時回生は行わずに、右ブレーキレバー16fのレバー部材31の移動位置に応じて、第2回生制動力で制御する。常時回生及びブレーキ回生制動モードでは、アシストモータ60から発生する電力を蓄電部14に蓄えつつ前輪106fを制動するようにしている。
【0031】
ハンドル部104は、フロントフォーク103の上部に固定されたハンドルステム114と、ハンドルステム114に固定されたバーハンドル型のハンドルバー115とを有している。ハンドルバー115の両端には、自転車のハンドル部104を上方から見た図2に示すように、右ブレーキレバー16f及び左ブレーキレバー16rと、グリップ15と、が装着されている。ハンドルバー115の中央部には、ハンドルステム114を跨いで表示装置18が固定されている。表示装置18は、液晶ディスプレイ画面18aを有している。液晶ディスプレイ画面18aは、例えば、図3に示すアシストおよび回生制動モードの選択画面等を表示するアシスト画面と、図4に示す自転車の速度、フロントディレーラ108f及びリアディレーラ108rの変速位置、並びに走行距離等を表示するサイクルコンピュータ画面とに切り換え可能である。なお、いずれの画面にも蓄電部14の残量が表示される。図3に示すアシスト画面では、例えば2つの回生制動モードと、3つのアシストモードを選択できるとともに、アシストおよび回生制動を行わないオフモードも選択できる。後述する上モード選択スイッチ44cまたは下モード選択スイッチ44dを操作するとカーソルが上又は下に移動する。そして、移動先で数秒以上操作が停止するとそのモードが選択される。また、選択されたモードにカーソルが止まる。
【0032】
なお、図3に示すアシスト画面では、アシストモードが強アシストモードに設定され、回生制動モードが常時回生モードに設定されている。したがって、アシストモードと回生制動モードが選択された場合は2つのカーソルが表示される。しかし、アシスト回生オフが選択された場合は、アシスト回生オフにカーソルが表示される。
【0033】
また、サイクルコンピュータ画面において、変速位置のカーソルは、現在の変速位置を示している。
【0034】
<ブレーキレバーの構成>
右ブレーキレバー16fは、フロントブレーキケーブル113fによりフロントブレーキ装置107fに接続されている。左ブレーキレバー16rは、リアブレーキケーブル113rによりリアブレーキ装置107rに接続されている。右ブレーキレバー16fと、フロントブレーキ装置107fによりフロントブレーキ機構117fが構成される。また、左ブレーキレバー16rと、リアブレーキ装置107rによりリアブレーキ機構117rが構成される。
【0035】
右ブレーキレバー16f及び左ブレーキレバー16rは、ハンドルバー115に着脱自在に装着される取付ブラケット30と、取付ブラケット30に揺動自在に装着されたレバー部材31と、をそれぞれ備えている。
【0036】
取付ブラケット30は、図2に示すように、ハンドルバー115に装着可能に図2下部に配置された装着部41と、装着部41に連結されたブラケット部42と、を有している。装着部41は、図示しない固定ボルトを締め付けることにより取付ブラケット30をハンドルバー115に固定できる。右ブレーキレバー16f及び左ブレーキレバー16rのブラケット部42には、リアディレーラ108r及びフロントディレーラ108fを変速操作するためのリア変速操作部43r及びフロント変速操作部43fが各別に着脱可能に取り付けられている。
【0037】
リア変速操作部43r及びフロント変速操作部43fは、例えば左右に並べて配置されたシフトアップスイッチ43aとシフトダウンスイッチ43bとを有している。シフトアップスイッチ43aは、シフトダウンスイッチ43bの、たとえば内側に配置されている。シフトアップスイッチ43aは、高速側の変速段に変速操作するためのスイッチであり、シフトダウンスイッチ43bは、低速側の変速段に変速操作するためのスイッチである。たとえば、フロント変速操作部43fのシフトアップスイッチ43aを操作すると、ギアクランク118aにおいて、最小径のスプロケットから中間径のスプロケット、又は中間径のスプロケットから最大径のスプロケットにチェーン119が架け替えられる。また、リア変速操作部43rのシフトアップスイッチ43aが操作されると、小ギア109において、チェーン119が架けられているスプロケットより一段小さい径のスプロケットにチェーン119が架け替えられる。シフトダウンスイッチ43bが操作されると、逆の動作が行われる。
【0038】
右ブレーキレバー16fのブラケット部42には、ライトスイッチ44aと、表示切換スイッチ44bとが左右に並べて配置されている。表示切換スイッチ44bは、表示装置18の液晶ディスプレイ画面18aをアシスト画面とサイクルコンピュータ画面とに切り換えるためのスイッチである。ライトスイッチ44aは、前照灯23をオンオフするスイッチである。ライトスイッチ44aは、押圧操作する都度、前照灯23がオンまたはオフする。また、表示切換スイッチ44bは、押圧操作する都度、表示装置18の液晶ディスプレイ画面18aをアシスト画面とサイクルコンピュータ画面とに切り換える。
【0039】
左ブレーキレバー16rのブラケット部42には、上モード選択スイッチ44cと、下モード選択スイッチ44dと、電源スイッチ44eとが配置されている。上モード選択スイッチ44cは、回生制動モードおよびアシストモードを図3に示す画面上方向に順に選択するスイッチである。下モード選択スイッチ44dは、複数の回生制動モード又は複数のアシストモードを図3に示す画面下方向に順に選択するスイッチである。電源スイッチ44eは、図2において下モード選択スイッチ44dの上方に配置された円形の押しボタンスイッチであり、全体制御部12の電源をオンまたはオフするソフトウェアスイッチである。上モード選択スイッチ44cを押圧する都度、回生制動モード又はアシストモードを選択するためのカーソルが画面上方向に順に移動する。カーソルの移動が停止するとそのモードが選択される。下モード選択スイッチ44dは、同様に下方向に順にカーソルが移動する。ここでは、表示画面に表示されている各モードが上下方向に並んでいるが、各モードは左右方向に並べて表示されてもよい。電源スイッチ44eは、押圧操作の都度、全体制御部12の電源がオンまたはオフされる。
【0040】
ブラケット部42には、レバー部材31の初期位置を調整可能な調整ボルトを有する初期位置調整部50が設けられている。また、ブラケット部42の内部には、レバー部材31との距離によりレバー部材31の初期位置からの移動位置を検出するリニアホール素子を用いたブレーキセンサ(移動位置検出部の一例)53が設けられている。ブレーキセンサ53は、レバー部材31に埋め込まれた磁石54からの距離により、レバー部材31の初期位置からの移動位置を検出するリニアホール素子55を有している。この移動位置に応じて全体制御部12は、ブレーキ回生モード及び常時回生モード時に回生制動制御を行う。
【0041】
レバー部材31は、初期位置から最大揺動位置との間でブラケット部42に揺動自在に装着されている。初期位置は、レバー部材31が最もハンドルバー115から離れた位置である。レバー部材31は、図示しない付勢部材により初期位置側に付勢されている。初期位置は、前述したように初期位置調整部50により調整可能である。レバー部材31には、フロントブレーキケーブル113f(又はリアブレーキケーブル113r)のインナーケーブルが係止されている。フロントブレーキケーブル113f(又はリアブレーキケーブル113r)のアウターケーシングは、ブラケット部42に係止されている。
【0042】
<電装システムの構成>
図5及び図6に示すように、自転車に搭載される電装システム100は、電装品としてのリアキャリアユニット13と、モータユニット10と、ハンガーユニット122aと、フロントディレーラ108f及びリアディレーラ108rと、前照灯23と、表示装置18と、右ブレーキレバー16fおよび左ブレーキレバー16rとを備えている。これらの電装品が通信可能な第1電力線70a〜70gおよび第2電力線71により接続されている。図5において第1電力線70a〜70gを実線で示し、第2電力線71は第1電力線70a〜70gを示す線よりも太い線で示す。第1電力線70a〜70g及び第2電力線71は、2本の導線を含んで構成される。2本のうちの一方はグランドラインである。
【0043】
リアキャリアユニット13は、電装システム100の電装品を制御する全体制御部12と、蓄電部14と、尾灯24と、を有している。リアキャリアユニット13はリアキャリア112に装着されている。全体制御部12は、マイクロコンピュータを有するものである。全体制御部12には、電装システム100の電源としての蓄電部14が着脱自在に装着されている。尾灯24は、蓄電部14に一体で取り付けられている。
【0044】
リアキャリアユニット13には、モータユニット10が第2電力線71を介して接続されている。第2電力線71は、たとえば24ボルトの電源電流を流せる電力線である。第1電力線70a〜70gは、たとえば6ボルトの電源電流を流せる電力線である。
【0045】
第1電力線0a〜70g及び第2電力線71には、それぞれの電装品を制御する制御信号が重畳された電源電流が流れている。
【0046】
また、リアキャリアユニット13には、ハンガーユニット122aが第1電力線70aを介して接続されている。ハンガーユニット122aは、前述したようにトルクセンサ17と、角度センサ19と、を有している。ハンガーユニット122aには、前照灯23、フロントディレーラ108f、及びリアディレーラ108rが第1電力線70b、第1電力線70g及び第2電力線70cを介して各別に接続されている。前照灯23は、例えばLED(発光素子)を用いた省電力形のものであり、フロントフォーク103の前面に装着されている。
【0047】
フロントディレーラ108f及びリアディレーラ108rは、フロント変速モータ20f、フロント段数センサ21f及びリア変速モータ20r、フロント段数センサ21f及びリア段数センサ21rを各別に有している。また、フロントディレーラ108f及びリアディレーラ108rは、フロント変速モータ20f及びリア変速モータ20rを制御する図示しないフロント制御部及びリア制御部を各別に有している。このフロント段数センサ21f及びリア段数センサ21rの出力により表示装置18にフロントディレーラ108f及びリアディレーラ108rの段数が各別に表示される。前照灯23には、表示装置18が第2電力線70dを介して接続されている。
【0048】
表示装置18には、右ブレーキレバー16fおよび左ブレーキレバー16rが第1電力線70eおよび第1電力線70fを介して各別に接続されている。
【0049】
図6に示すように、各電装品は、シリアルバス構造で接続されている。これにより、全体制御部12が搭載される電装品(例えば、リアキャリアユニット13)を除いて、いずれの電装品を接続または離脱しても、電装システム100は動作可能である。例えば、図6において、前照灯23を外しても、第1電力線70bを表示装置18に接続することにより、電装システム100は動作する。また、フロントディレーラ108f及びリアディレーラ108rが通常の変速ケーブルで動作する場合は、第1電力線70g及び第1電力線70cを外せばよい。この場合にも、電装システム100は動作する。
【0050】
<全体制御部の機能構成>
図7に示すように、全体制御部12は、ソフトウェアで実現される機能構成として、変速制御部72と、アシスト制御部73と、回生制動制御部(回生制動制御装置の一例)74と、を有している。回生制動制御部74は、第1制御部75と、第2制御部76と、切換制御部77と、モード切換部78と、位置判断部79と、初期位置書換部80と、調整位置書込部81と、を有している。また、全体制御部12には、前述した蓄電部14及びモータユニット10等の電装品に加えて記憶部90が接続されている。記憶部90は、例えば、EEPROM(electrically erasable programmable read only memory)またはフラッシュメモリ等の不揮発メモリ素子で構成されており、最大調整位置記憶部91と、初期位置記憶部92と、固定デューティ記憶部93と、可変デューティ記憶部94と、を有している。
【0051】
最大調整位置記憶部91には、初期位置調整部50により最大限初期位置が調整されたときの移動位置が記憶されている。この記憶処理は、工場出荷時に行ってもよいし、販売店または乗り手が行ってもよい。初期位置記憶部92には、初期位置が変更された場合に、後述する回生制動モード処理により変更された初期位置が記憶される。なお、自転車を購入後の最初の初期位置は、初期位置調整部50により調整されていない位置であり、移動位置を数字で表す場合、例えば初期位置は移動位置「0」に対応する。
【0052】
固定デューティ記憶部93には、常時回生モード時に使用する第1回生制動力BF1を発生する固定デューティFDが記憶されている。可変デューティ記憶部94には、ブレーキ回生時のレバー部材31の初期位置からの移動位置Mに応じて徐々に大きくなる第2回生制動力BF2を発生する可変デューティCDが記憶されている。可変デューティCDは、たとえば移動位置Mの関数f(M)に基づいて移動位置M毎に算出された表形式で可変デューティ記憶部94に記憶されている。したがって、移動位置Mにより可変デューティCDを読み出すことができる。
【0053】
たとえば、図11に示すように、固定デューティFDは、たとえば最大回生制動力(デューティ比100)の場合の3パーセントから20パーセントのデューティ比である。また、可変デューティCDは、初期位置から徐々に大きくなるデューティ比であり、上限は100パーセントである。なお、図11に示す例では、上限に到達するまでにレバー部材31の移動が終わっているため、第2回生制動力BF2は、100パーセント以下になっている。また、図11に示す可変デューティCDの曲線は移動位置Mの増加に応じて増加割合が大きくなる曲線である。
【0054】
変速制御部72は、左右のシフトアップスイッチ43a及び左右のシフトダウンスイッチ43bの操作に応じてフロントディレーラ108f及びリアディレーラ108rの段数を制御する。アシスト制御部73は、上モード選択スイッチ44c及び下モード選択スイッチ44dで選択されたアシストモードでインバータ61を介してアシストモータ60を制御する。回生制動制御部74は、上モード選択スイッチ44c及び下モード選択スイッチ44dで選択された回生制動モード(常時回生モードとブレーキ回生モードのいずれか)でインバータ61を介してアシストモータ60を制御する。
【0055】
第1制御部75は、一定の第1回生制動力を発生するようにアシストモータ60を制御する。第2制御部76は、フロントブレーキ機構117fが初期状態から制動状態に遷移するとき、徐々に大きくなる第2回生制動力を発生するようにアシストモータ60を制御する。具体的には、第2制御部76は、レバー部材31が初期位置(初期状態の一例)から移動するとその移動位置に応じて徐々に大きくなる第2回生制動力を発生するようにアシストモータ60を制御する。第1回生制動力及び第2回生制動力の一例を図11に示す。図11では、第1制御部75の制御によりアシストモータ60が発生する第1回生制動力FDは、一定であり、第2制御部76の制御によりアシストモータ60が発生する第2回生制動力f(M)Dは、移動位置Mのたとえば関数f(M)で表され、移動位置Mが大きくなると徐々に大きくなる。切換制御部77は、常時回生モード時において第1制御部75による制御を行っているときに、レバー部材31が初期位置から所定位置を超えて移動すると、第2制動部76による制御に切り換える。モード切換部78は、常時回生モードとブレーキ回生モードとのいずれかに回生制動モードを切り換える。具体的には、上モード選択スイッチ44c及び下モード選択スイッチ44dによって選択された回生制動モードを動作させる。位置判断部79は、レバー部材31の初期位置からの移動位置が所定位置を超えたか否かを判断する。
【0056】
初期位置書換部80は、初期位置調整部50により初期位置が変更されたとき、初期位置記憶部92の記憶内容を調整後の移動位置に書き換える。具体的には、リニアホール素子55により最大調整位置より小さい移動位置が検出されると、その移動位置を初期位置として初期位置記憶部92に記憶し、初期位置を書き換える。調整位置書込部81は、例えば、初期位置調整部50で最大限初期位置を調整したときに、各スイッチ44a〜44eのいずれか一つの例えば2秒以上の長押し操作または2つ以上の同時操作等の操作によりその操作が行われたときの移動位置を最大調整位置として最大調整位置記憶部91に記憶させる。
【0057】
<回生制動制御部の制御動作>
次に、回生制動制御部74の制御動作を図9、図10及び図11に示す制御フローチャートに基づいて説明する。なお、制御動作は、図9から図11に示す処理は本発明の制御動作の一例であり、本発明はこれに限定されない。また、以降の説明では、前輪106f用のフロントブレーキ装置107fの制動操作を行う右ブレーキレバー16fの移動位置によりブレーキ回生を行う場合を例に説明する。
【0058】
蓄電部14からの電力が全体制御部12に供給されると、全体制御部12が制御動作を開始する。
図8のステップS1では、初期設定を行う。初期設定では、各種の変数やフラグがリセットされる。ステップS2では、電源スイッチ44eがオンされるのを待つ。電源スイッチ4eがオンされるとステップS3に移行する。ステップS3では、表示装置18の表示処理を行う。ここでは、表示切換スイッチ44bの操作に応じて図3に示すアシスト画面と図4に示すサイクルコンピュータ画面とのいずれかを表示する。また、各種の表示処理を行う。ステップS4では、スイッチ入力がなされたか否を判断する。ステップS5では、アシストモードを実行するか否かを判断する。ステップS6では、初期位置が変更され初期位置書込処理を行うか否かを判断する。ステップS7では、回生制動処理を行うか否かを判断し、ステップS2に移行する。
【0059】
スイッチ入力がなされたと判断すると、ステップS4からステップS8に移行する。ステップS8では、スイッチ入力処理を行い、ステップS5に移行する。スイッチ入力処理では、操作されたスイッチに応じた処理を行う。例えば、図3に示すアシスト画面では、上モード選択スイッチ44cを操作すると、画面右側に表示された3つのアシストモード及び2つの回生制動モードと、アシスト回生オフとのいずれかに表示されたカーソルが押圧操作の都度下方に一つずつ移動する。また、下モード選択スイッチ44dを操作すると、カーソルが押圧操作の都度上方に一つずつ移動する。カーソル移動後に所定時間(例えば、2秒から5秒)が経過すると、選択されたアシストモード及び回生制動モードが設定され、設定されたアシストモード及び回生制動モードにカーソルが固定される。
【0060】
アシストモードを実行すると判断すると、ステップS5からステップS9に移行する。ステップS9では、スイッチ入力処理により選択されたアシストモードでアシスト処理を行い、ステップS6に移行する。アシストモードでは、選択された「強」、「中」、「弱」のいずれかのアシストモードによるアシスト力をアシストモータ60が発生し、乗り手の人力による駆動を補助する。
【0061】
初期位置書換処理を行うと判断すると、ステップS6からステップS10に移行する。ステップS10では、図9に示す初期位置書込処理を実行し、ステップS7に移行する。
【0062】
回生制動処理を行うと判断すると、ステップS7からステップS11に移行する。ステップS11では、図10示す回生制動モード処理に実行し、ステップS2に移行する。
【0063】
ステップS10の初期位置書込処理では、図9のステップS20で速度センサ62からの出力により自転車の速度が「0」か否かを判断する。速度が「0」ではない場合は図8に示すメインルーチンに戻る。速度が「0」の場合は、ステップS21に移行する。
【0064】
ステップS21では、初期位置調整部50により最大調整位置にレバー部材31が調整され、その最大調整位置を書き込むための操作が行われたか否かを判断する。この判断は、例えば、ライトスイッチ44aと表示切換スイッチ44bの同時操作により判断する。この判断が「YES」の場合はステップS12に移行する。ステップS22では、そのときの右ブレーキレバー16fのリニアホール素子55が検出したレバー部材31の移動位置Mを最大調整位置MAとして最大調整位置記憶部91に書き込み、ステップS23に移行する。ステップS23では、レバー部材31が移動したか否かを判断する。移動していない場合は図8に示すメインルーチンに戻る。移動している場合は、ステップS24に移行する。ステップS24では、リニアホール素子55から移動位置Mを取り込む。ステップS25では、最大調整位置記憶部91から最大調整位置MAを読み込む。ステップS26では、取り込んだ移動位置Mが最大値調整位置MAより小さいか否か、つまり、初期位置調整部50による初期位置の調整操作であるのか否かを判断する。
【0065】
移動位置Mが最大調整位置MAより小さく、初期位置の調整操作であると判断した場合は、ステップS26からステップS27に移行する。ステップS27では、所定時間(たとえば、2秒)以上レバー部材31が停止しているか否かを判断する。これは調整途中の移動位置をキャンセルするための処理である。所定時間レバー部材31が停止していない場合は、メインルーチンに戻り、所定時間以上レバー部材31が停止していると、ステップS27からステップS28に移行する。ステップS28では、そのときにリニアホール素子55が検出した移動位置Mを初期位置記憶部92に初期位置IMとして記憶する。これにより、ブレーキ回生モードにおいて、レバー部材31の初期位置IMが変更される。
【0066】
移動位置Mが最大調整位置MAより大きく、通常の制動操作であると判断した場合は、ステップS26から図8に示すメインルーチンに戻る。
【0067】
ステップS11の回生制動モード処理では、図10のステップS31で回生制動モードが常時制動モードか否かを判断する。第1実施形態では、回生制動モードは、常時制動モードとブレーキ回生モードの2つしかないので、常時回生モードの場合は、この判断が「YES」となり、ステップS31からステップS32に移行する。ステップS32では、固定デューティ記憶部93から第1回生制動力BF1を発生する固定デューティFDを読み込む。ステップS33では、ブレーキセンサ53のリニアホール素子55から移動位置Mを取り込む。ステップS34では、可変デューティ記憶部94から第2回生制動力BF2を発生する移動位置Mに応じた可変デューティCDを読み込む。
【0068】
ステップS35では、移動位置Mでの可変デューティCDが固定デューティFDを超えたか否かにより、移動位置Mが所定位置を超えたか否かを判断する。移動位置Mでの可変デューティCDが固定デューティFDを超えていない場合は、ステップS35からステップS36に移行する。ステップS36では、固定デューティFDにより第1回生制動力BF1を発生するようにアシストモータ60を制御し、メインルーチンに戻る。移動位置Mでの可変デューティCDが固定デューティFDを超えると、ステップS35からステップS37に移行する。ステップS37では、移動位置Mに応じた可変デューティCDにより第2回生制動力BF2を発生するようにアシストモータ60を制御し、メインルーチンに戻る。これにより、常時回生モードのときには、図11に太線で示すように、レバー部材31が操作されるまでは、常時一定の第1回生制動力BF1で回生制動される。そして、レバー部材31が所定位置に到達すると、移動位置Mに応じて第1回生制動力BF1から徐々に大きくなる第2回生制動力BF2で回生制動される。なお、通常は、フロントブレーキ装置107fが制動動作する前、すなわち、フロントブレーキ装置107fのブレーキパッドが前輪106fのリム121fに接触する前の移動位置Mが所定位置となるように第2回生制動力は設定される。
【0069】
一方、ステップS31でブレーキ回生と判断する(ステップS31の判断が「NO」)の場合は、ステップS31からステップS38に移行する。ステップS38では、ブレーキセンサ53のリニアホール素子55から移動位置Mを取り込む。ステップS39では、移動位置Mが初期位置である「0」か否かによりレバー部材31が初期位置から移動したか否かを判断する。レバー部材31が移動していないと判断すると、ステップS39からメインルーチンに戻る。移動位置Mが初期位置より大きくなりレバー部材31が移動したと判断すると、ステップS29からステップS37に移行する。そして、初期位置からのレバー部材31の移動位置Mに応じた可変デューティCDにより第2回生制動力BF2を発生するようにアシストモータ60を制御する。これにより、ブレーキ回生モードのときには、図11において、初期位置から細線および太線で示した曲線から太線で示した第2回生制動力BF2で回生制動される。
【0070】
ここでは、一定の第1回生制動力BF1による回生制動をフロントブレーキ機構117fの状態に関わらず常時行って電源である蓄電部14に対する回生充電を行う。そして、フロントブレーキ機構117fが初期状態から制動状態に遷移する、すなわちレバー部材31が初期状態から移動すると、徐々に大きくなる可変の第2回生制動力BF2による回生充電が行われる。したがって、回生制動モードにおいて、走行中は常に第1回生制動力BF1により回生充電させ、フロントブレーキ機構117fが動作するブレーキ回生時には、制動力が徐々に大きくなる第2回生制動力BF2で回生充電させることができる。このため、ブレーキ回生時の回生充電量が多くなり、ブレーキ回生による回生充電を効率よく行えるようになる。
【0071】
また、フロントブレーキ機構117fの動作開始時に回生制動の第2回生制動力BF2が大きな制動力になっているため、回生制動からフロントブレーキ機構117fによる機械制動にスムーズに移行できる。このため、回生制動から機械制動への遷移時に制動力の急変が生じにくくなる。
【0072】
さらに、右ブレーキレバー16fのレバー部材31の移動位置をブレーキセンサ53により検出し、レバー部材31の移動位置によりアシストモータ60を制御している。このため、第2回生制動力BF2をスムーズに増加させることができる。
【0073】
<第2実施形態>
第1実施形態では、ブレーキ回生モードの第2回生制動力BF2を用い、初期位置から設定された移動位置M毎に大きくなる第2回生制動力BF2が第1回生制動力BF1を超える位置を所定位置とした。したがって、第1回生制動力BF1及び第2回生制動力BF2の曲線が変化しても必ず所定位置において、第1回生制動力から大きくなる第2回生制動力が得られる。しかし、第1回生制動力BF1及び第2回生制動力BF2の曲線が変化すると所定位置は変化する。
【0074】
第2実施形態では、予め設定された移動位置Mを所定位置SMに固定し、移動位置Mが所定位置SMを超えると、第1回生制動力BF1に対して増加する第2回生制動力BF2を発生するように、回生制動制御部74がアシストモータ60を制御する。したがって、第1回生制動力BF1及び第2回生制動力BF2の曲線が変化しても所定位置SMは変動しないようにすることができる。
【0075】
図12において、第2実施形態による回生制動モード処理では、ステップS41で回生制動モードが常時制動モードか否かを判断する。回生制動モードは、第2実施形態でも常時制動モードとブレーキ回生モードの2つしかないので、常時回生モードの場合は、この判断が「YES」となり、ステップS41からステップS42に移行する。ステップS42では、固定デューティ記憶部93から第1回生制動力BF1を発生する固定デューティFDを読み込む。ステップS43では、ブレーキセンサ53のリニアホール素子55から移動位置Mを取り込む。ステップS44では、移動位置Mが所定位置SMを超えたか否かを判断する。移動位置Mが所定位置SMを超えていない場合は、ステップS44からステップS45に移行する。ステップS45では、固定デューティFDにより第1回生制動力BF1を発生するようにアシストモータ60を制御し、メインルーチンに戻る。
【0076】
移動位置Mが所定位置SMを超えると、ステップS44からステップS46に移行する。ステップS46では、可変デューティSDにより第2回生制動力BF2を発生するようにアシストモータ60を制御する。
【0077】
可変デューティSDは、図13に示すように、所定位置SMからレバー部材31の移動位置Mが移動すると固定デューティFDから徐々に大きくなるように設定されている。たとえば、固定デューティFDを初期値とする移動位置Mの関数に基づいて算出された移動位置M毎のデューティ比が可変デューティ記憶部94に記憶されている。なお、可変デューティ記憶部94には、可変の第3回生制動力BF3を発生するように初期位置から所定位置SMまでの移動位置Mン毎のデューティ比も算出され記憶されている。この第3回生制動力BF3は、ブレーキ回生モードで使用される。
【0078】
回生制動モードがブレーキ回生の場合、図12のステップS41からステップS47に移行する。ステップS47では、ブレーキセンサ53のリニアホール素子55から移動位置Mを取り込む。ステップS48では、移動位置Mが初期位置である「0」か否かによりレバー部材31が初期位置から移動したか否かを判断する。レバー部材31が移動していないと判断すると、ステップS48からメインルーチンに戻る。移動位置Mが初期位置より大きくなりレバー部材31が移動したと判断すると、ステップS48からステップS49に移行する。そして、初期位置から所定位置SMまではレバー部材31の移動位置Mに応じた可変デューティCDにより可変の第3回生制動力BF3を発生するようにアシストモータ60を制御する。また、所定位置SMを超えると、レバー部材31の移動位置Mに応じた可変デューティCDにより可変の第2回生制動力BF3を発生するようにアシストモータ60を制御する。これにより、ブレーキ回生モードのときには、図13において、初期位置から細線および太線で示した曲線から太線で示した第3回生制動力及び第2回生制動力BF2で回生制動される。
【0079】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0080】
(a)前記第1実施形態及び第2実施形態では、可変デューティCDの曲線は移動位置Mの増加に応じて増加割合が大きくなる曲線であったが、本発明の可変デューティCDはこれに限定されない。本発明の可変デューティCDは図11に示す曲線に限定されず、移動位置Mに比例する直線でもよく、また、移動位置Mに応じて途中で増加割合が減少する曲線であってもよい。
【0081】
(b)前記実施形態では、ブレーキレバーとブレーキケーブルにより連結されたブレーキ装置を有するブレーキ機構を開示したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ブレーキレバーと油圧配管により連結されたブレーキ装置を有するブレーキ機構にも本発明を適用できる。油圧配管を用いる場合、油の圧力を検出して、この圧力に応じて回生制御を行ってもよい。また前記実施形態では、ブレーキレバーのレバー部の移動位置に応じて回生制御を行っているが、ブレーキ装置のブレーキシューの移動位置に応じて回生制御を行ってもよく、ブレーキケーブルの一部分の移動位置に応じて回生制御を行ってもよい。
【0082】
(c)前記実施形態では、フロントブレーキ機構117fの動作により常時回生モード及びブレーキ回生モードにおいて、回生制動力を制御しているが、リアブレーキ機構117rの動作により可変の回生制動力を制御してもよい。また前記実施形態では、右ブレーキレバー16fの移動位置に応じて回生制御を行っているが、左ブレーキレバー16rの移動位置に応じて回生制御を行ってもよい。
【0083】
(d)前記実施形態では、前輪106fにモータユニット10を設けたアシスト自転車を例に本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、後輪106r又はハンガー部122にモータユニットを設けたアシスト自転車にも本発明を適用できる。この場合、リアブレーキ機構117rの動作により可変の回生制動力を制御してもよい。
【0084】
(e)前記実施形態では、レバー部材が制動終了位置に移動するまでブレーキ機構による機械制動中も可変の回生制動力を同じように付与するように構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、機械制動が開始されると、回生制動をやめたり、回生制動力を一定にしたり、回生制動力を制動開始までと異なる割合で増加させたりしてもよい。
【0085】
なお、機械制動を開始位置の判断をレバー部材31の移動速度の変化により判断してもよい。たとえば、機械制動開始時はレバー部材の移動速度が遅くなるため、移動位置の時間変化により移動速度を検出し、所定以下の速度になると機械制動が開始されたと判断してもよい。機械制動が始まったと判断すると、回生制動力を変化させてもよい。
【0086】
また、ブレーキ装置の機械制動開始時には、また、予めライダーが機械制動開始位置でレバー部材31の移動を止めて、所定の操作(たとえばスイッチ類の長押し操作)によりそのときの移動位置Mを制動開始位置として設定してもよい。
【0087】
(f)前記実施形態では、レバー部材の移動位置を検出しているが、初期位置からのレバー部材の移動量を検出し、回生制御部は、検出した移動量に応じて回生制御を行ってもよい。
【0088】
(g)前記実施形態では、アシスト自転車は外装変速機を有する構成であるが、内装変速機を有する構成であってもよく、変速機を備えない構成であってもよく、本システムはあらゆるアシスト自転車に適用することができる。
【0089】
(h)前記実施形態では、可変デューティCDが可変デューティ記憶部94に表形式で記憶されていたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、可変デューティCDを移動位置に応じて随時計算により求めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
12 全体制御部
16f 右ブレーキレバー
31 レバー部材
50 初期位置調整部
53 ブレーキセンサ(移動位置検出部の一例)
55 リニアホール素子
60 アシストモータ
74 回生制動制御部(回生制動制御装置の一例)
75 第1制御部
76 第2制御部
77 切換制御部
78 モード切換部
79 位置判断部
80 初期位置書換部
81 調整位置書込部
93 固定デューティ記憶部
94 可変デューティ記憶部
117f フロントブレーキ機構
117r リアブレーキ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力による駆動をモータにより補助する電動自転車に装着可能なブレーキ機構に関連して、前記モータを制御する自転車用回生制動制御装置であって、
一定の第1回生制動力を発生するように前記モータを制御する第1制御部と、
前記ブレーキ機構が初期状態から制動状態に遷移するとき、徐々に大きくなるような第2回生制動力を発生するように前記モータを制御する第2制御部と、
第1制御部による制御を行っているときに、前記ブレーキ機構が前記初期状態から前記制動状態に遷移すると、前記第2制御部による制御に切り換える切換制御部と、
を備えた自転車用回生制動制御装置。
【請求項2】
前記ブレーキ機構は、自転車用ブレーキレバーを備え、
前記第2制御部は、前記自転車用ブレーキレバーの動作に基づいて前記モータを制御する、請求項1に記載の自転車用回生制動制御装置。
【請求項3】
前記ブレーキ機構が前記初期状態から前記制動状態に遷移するとき、前記切換制御部により前記第1制御部による制御から前記第2制御部による制御に切り換わる第1制動モードと、前記ブレーキ機構が前記初期状態から前記制動状態に遷移するときに、前記第2制御部による制御を行う第2制動モードとに切り換えるモード切換部をさらに備える、請求項1又は2に記載の自転車用回生制動制御装置。
【請求項4】
前記ブレーキレバーの揺動するレバー部材の初期位置からの移動位置を検出する移動位置検出部と、
前記初期位置からの移動位置が所定位置を超えたか否かを判断する位置判断部と、をさらに備え、
前記切換制御部は、前記移動位置が前記所定位置を超えるまでは、前記第1制御部により前記第1回生制動力を発生させるように前記モータを制御し、前記移動位置が前記所定位置を超えると、前記第2制御部により前記第2回生制動力を発生させるように前記モータを制御する、請求項2又は3に記載の自転車用回生制動制御装置。
【請求項5】
前記第2制御部は、前記初期位置からの前記移動位置に応じて前記第2回生制動力が徐々に大きくなるように前記モータを制御する、請求項4に記載の自転車用回生制動制御装置。
【請求項6】
前記位置判断部は、前記第2回生制動力が前記第1回生制動力を超えるときの前記移動位置を前記所定位置と判断する、請求項4又は5に記載の自転車用回生制動制御装置。
【請求項7】
前記第2制御部は、少なくとも前記所定位置からの前記移動位置に応じて前記第2回生制動力が前記第1回生制動力より徐々に大きくなるように前記モータを制御する、請求項4に記載の自転車用回生制動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−259682(P2011−259682A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134554(P2010−134554)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】