蒸気タービン溶接ロータとその製造方法及び蒸気タービンとその発電プラント
【課題】本発明の目的は、積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部への応力集中がかからず、高い疲労強度を有する蒸気タービン溶接ロータとその製造方法及び蒸気タービンとそれを用いた発電プラントを提供することにある。
【解決手段】本発明は、少なくとも2個に分割されたタービンロータを突合せ溶接により接続された蒸気タービン溶接ロータにおいて、前記タービンロータの両者の突合せ部は、その中心部に形成された中空部と、その外周側に形成された前記タービンロータの基部面より径方向に対して隆起した外周側隆起部とを有し、前記突合せ部に形成された開先部が積層溶接によって前記突合せ溶接されていることを特徴とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも2個に分割されたタービンロータを突合せ溶接により接続された蒸気タービン溶接ロータにおいて、前記タービンロータの両者の突合せ部は、その中心部に形成された中空部と、その外周側に形成された前記タービンロータの基部面より径方向に対して隆起した外周側隆起部とを有し、前記突合せ部に形成された開先部が積層溶接によって前記突合せ溶接されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な溶接部継手構造及び溶接部強度を有する新規な蒸気溶接タービンロータとその製造方法及び蒸気タービンとその発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題の高まりから、蒸気タービン発電プラントには高効率化及び出力の大容量化が求められ、蒸気温度は高温高圧化が進められている。従来、蒸気タービンロータの如く大型の回転体は、鍛造熱処理技術の発展とも相俟って、一体型ロータが適用されてきた。蒸気温度538℃〜600℃の高圧、中圧蒸気タービンには、1%CrMoV系鋼(特許文献1)、12%Cr系鋼(特許文献2)が使用され、蒸気温度400℃以下の低圧蒸気タービンには3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼(特許文献3)が使用されている。
【0003】
また、タービンの軽量化、構造簡素化のために、538〜566℃の蒸気温度で高圧から低圧までを同一材質で一体成形した高低圧一体型ロータには2%Ni−2%Cr−Mo−V系鋼(特許文献4)等が使用されているが、さらなる高温化、大容量化には適さない。
【0004】
ロータ材に要求される特性は、高圧(高温)では高温クリープ破断強度であり、低圧では引張強さ、靭性である。このように蒸気タービンロータは、一つの材質で高圧、低圧の双方の特性を満足することは困難であるのは勿論のこと、要求される特性は段落毎に異なっている。段落毎または複数段落毎に最適な材料を選択して、ボルト締結、溶接接合等により一本のロータを構成する方法が知られており、溶接構造ロータが特許文献5等に示されている。また、製造工程の再溶解時に異なる材質を接合する方法として、特許文献6等がある。大型ロータの製造と比べて、段落毎または複数段落毎のような小鋼塊は、高品質な鋼塊が得られやすく、大規模な製造設備を必要としない。
【0005】
【特許文献1】ASTM A470 Class8
【特許文献2】特許第1833108号公報
【特許文献3】ASTM A470 Class7
【特許文献4】特許第3106121号公報
【特許文献5】三菱重工技報、Vol.37、No.3(2000−5)
【特許文献6】特公昭56−14842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のロータ材料(1%CrMoV系鋼、12%Cr系鋼、3〜4%NiCrMoV系鋼、Ni基合金)は、高温化、大容量化に対応した大型鋼塊の製造が困難であり、分割構造にして高品質な小鋼塊を溶接接合することが好ましい。また、一体型である中実ロータは重量が増大すると共に、起動停止時の熱応力が大きく疲労損傷を受けやすい。分割構造にして中空構造にすると、ロータの軽量化と共に熱応力を低減可能で、起動停止に要する手間を短縮して運用性を改善できる利点がある。
【0007】
しかし、一体型ロータは全領域に渡って鍛造された材料であり、強度と靭性を確保しやすいのに対して、溶接部は凝固組織であり、母材側には熱影響部が存在するため、継手部の機械的性質は母材に比べると低下している。溶接技術の進歩も著しく、入熱量を小さくして熱影響部の幅を小さくする狭開先溶接等が開発されているが、凝固組織と熱影響部が存在することに変わりはない。
【0008】
更に、溶接初層部では溶接中央部と比べると欠陥が発生しやすく、また、母材との希釈率の違いから特性が低下しやすい問題がある。また、最終層部では、熱履歴の違いからFe系材料ではAC3変態(オーステナイト変態、ベイナイト変態(マルテンサイト変態))の繰返し、Ni基合金では再結晶の繰返しが少なく粗粒を形成しやすいために、機械的性質が低下する問題がある。ロータの軸表面に欠陥及び弱化部が存在すると、応力集中により破壊の起点となるため、回転体では特に注意が必要である。初層部に隆起構造を構成して応力集中を回避した構造が上述の文献に示されているが、最終層部の粗粒域の特性低下に対しては考慮されていない。
【0009】
本発明の目的は、積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部に応力集中がかからず、高い疲労強度を有する蒸気タービン溶接ロータとその製造方法及び蒸気タービン発電プラントを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部への応力集中及び初層溶接部に形成される熱影響部への応力集中がかからず、高い疲労強度を有する蒸気タービン溶接ロータとその製造方法及び蒸気タービン発電プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも2個に分割されたタービンロータを突合せ溶接により接続された蒸気タービン溶接ロータにおいて、前記タービンロータの両者の突合せ部は、その中心部に形成された中空部と、その外周側に形成された前記タービンロータの基部面より径方向に対して隆起した外周側隆起部とを有し、前記突合せ部に形成された開先部が積層溶接によって前記突合せ溶接されていることを特徴とする。
【0012】
又、本発明は、前記中空部の内周側に前記タービンロータの基部面より径方向に対して隆起した内周側隆起部を有すること、又、前記積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部がかからないような前記外周側隆起部の前記タービンロータの軸方向幅を有するものであること、更に、前記積層溶接における初層溶接によって形成される熱影響部がかからないような前記内周側隆起部の前記タービンロータの軸方向幅を有するものであることが好ましい。
【0013】
本発明は、異なる材質のタービンロータを溶接する際には、タービンロータの開先部の一方に前記積層溶接の組成を緩和するバタリング層を有すること、又、最終溶接層である粗粒域を研削等により削除することが好ましい。
【0014】
外周側隆起部の高さaと内周側隆起部の高さbのタービンロータ軸方向の幅は、開先間隔Wの2〜30倍、その両者の各高さは開先間隔Wの0.5〜5倍、前記外周側隆起部及び内周側隆起部のいずれも前記基部との間が曲率半径Rを有して形成されていることが好ましく、中空部はタービンロータ軸方向の幅が開先深さの0.5〜5倍、径方向長さが開先深さの2〜8倍が好ましい。
【0015】
本発明の高圧用、中圧用、高中圧用蒸気タービン溶接ロータとしては、質量で、C0.25〜0.35%、Mn1%以下、Ni1%以下、Cr0.8〜1.5%、Mo1.0〜1.5%、V0.2〜0.3%を含むベーナイト組織を有する1%Cr−Mo−V系鋼、又は、質量で、C0.1〜0.2%、Mn0.3〜1.0%、Ni1%以下、Cr9〜13%、Mo0.1〜1.5%、W0.2〜3%、Nb0.02〜0.1%、Co3%以下、B0.01%以下を含む全焼戻しマルテンサイト組織を有する12%Cr系鋼を用いることが好ましい。
【0016】
本発明の低圧ロータ又は低圧蒸気タービンロータとしては、質量で、C0.17〜0.32%、Mn0.20〜0.40%、Ni3〜4%、Cr1.25〜2.0%、Mo0.25〜0.60%、V0.05〜0.15%を含むベーナイト組織を有する3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼を用いることが好ましい。
【0017】
更に、本発明の高圧用、中圧用、高中圧用蒸気タービン溶接ロータは、質量で、Cr12〜20%、Nb1.5〜3.5%、Ti1.5〜2.0%、Al0.2〜1.5%を含むNi基合金、又は、質量で、Cr15〜20%、Mo5〜15%、Ti1.0〜2.0%、Al0.2〜2.0%を含むNi基合金を用いることが好ましい。
【0018】
これらの積層溶接の組成及び溶接ワイヤには、質量で、C0.04〜0.1%、Si0.3〜0.7%、Mn0.5〜1.5%、Cr0.8〜1.5%、Mo0.3〜0.8%を含む1%Cr−Mo系鋼溶接金属、C0.06%以下、Si0.3〜0.7%、Mn0.5〜1.5%、Cr1.5〜2.5%、Mo0.8〜1.5%を含む2%Cr−Mo系鋼溶接金属、C0.05〜0.15%、Si0.05〜0.5%、Mn1.0〜2.5%、Ni2.0〜4.0%、Cr0.25〜1.5%、Mo0.5〜0.8%を含む3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼溶接金属を用いることが好ましい。
【0019】
バタリングの溶接金属部の組成及びその溶接ワイヤには、質量で、C0.05〜0.15%、Si0.05〜0.5%、Mn1.0〜2.5%、Ni2.0〜4.0%、Cr0.25〜1.5%、Mo0.5〜0.8%を含む3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼溶接金属、又は、C0.04〜0.1%、Si0.05〜0.3%、Mn0.5〜2.5%、Ni0.5〜1.0%、Cr7.5〜10.0%、Mo0.6〜1.5%、V0.1〜0.25%、Nb0.1%以下を含む9%Cr−Ni−Mo−V系鋼溶接金属を用いることが好ましい。
【0020】
又、本発明の高圧、中圧及び高中圧蒸気タービン溶接ロータは、蒸気温度の高い高温側に12%Cr系鋼を用い、温度の低下した低温側及びシャフト部の少なくとも一方に1%CrMoV系鋼を用いること、又、蒸気温度の高い高温側にNi基合金を用い、温度の低下した低温側及び軸受部の少なくても一方に12%Cr系鋼、1%CrMoV系鋼のいずれか又は双方を用いることが好ましい。
【0021】
本発明の高低圧一体型及び中低圧一体型蒸気タービン溶接ロータは、高圧ロータ及び中圧ロータは1%CrMoV系鋼及び12%Cr系鋼のいずれかを用い、低圧ロータは3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼を用いることが好ましい。
【0022】
1%CrMoV系鋼と12%Cr系鋼との溶接には12%Cr系鋼側に9%Cr−Ni−Mo−V系鋼溶接金属をバタリングし1〜2%Cr−Mo系鋼溶接金属にて積層溶接すること、1%CrMoV系鋼と3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼との溶接には1%CrMoV系鋼側に1〜2%Cr−Mo系鋼溶接金属をバタリングし3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼溶接金属又は1〜2%Cr−Mo系鋼溶接金属にて積層溶接することが好ましい。
【0023】
本発明は、少なくとも2個に分割されたタービンロータを突合せ溶接により接続する蒸気タービン溶接ロータの製造方法において、前記タービンロータの突合せ部の中心部に中空部を形成すると共に、前記突合せ部の外周側に前記タービンロータの基部面より隆起した外周側隆起部を形成し、前記突合せ部に形成された開先部を積層溶接することを特徴とする。
【0024】
本発明の開先部は狭開先で、前記タービンロータの軸方向で僅かに外周側に向かって広がっており、ルート開先部がU字状に形成されていることが好ましい。
【0025】
前記タービンロータは互いに材質が異なり、前記積層溶接する前に、残留応力除去焼鈍温度の高い材質の前記ロータ側の前記突合せ部の全面に前記積層溶接の組成を緩和するバタリング層を形成した後、前記開先部を形成することが好ましい。
【0026】
前記タービンロータの軸を縦向きにて前記バタリング層を形成し、又は、前記ロータ軸を横向きにして回転させながら他の部材との間に溶接金属部を形成する突合せ溶接した後、前記タービンロータ軸を径方向で横切る面で前記溶接金属部を残して切断して前記バタリング層を形成し、前記バタリング層の残留応力除去焼鈍を施した後、前記開先部を形成すること、更に、前記タービンロータ軸を横向きにして回転させながら他の部材との間に溶接金属部を形成する突合せ溶接した後、前記溶接金属部の残留応力除去焼鈍を施してから前記タービンロータ軸を横切る面で前記溶接金属部を残して切断し、次いで前記開先部を形成することが好ましい。他の部材は、接合される部材と同じ組成を有することが好ましいが、炭素鋼又は低合金鋼を用いることができる。
【0027】
タービンロータの回転体は、軸の偏芯が大きな振動を引起すので、溶接中の寸法安定性が重要である。本発明の蒸気タービン溶接ロータの製造方法は、狭開先部の積層溶接及びバタリング層の形成にTIG溶接法、サブマージアーク溶接法、ミグ溶接法、被覆アーク溶接法のいずれかを用い、ロータ軸を横向きにして回転させながら溶接すること、バタリング層の形成はロータ軸を縦向き又はロータ軸を横向きにして回転させながら溶接することが好ましい。
【0028】
突合せ溶接する前の準備として、仮付けを行うことが好ましい。ディスク形状、又はそれに近いものは、縦方向に積み上げて仮付けを行うことが好ましい。複数段落のような比較的大きなブロックでは、横向きにして仮付けすることが好ましい。ロータの一端を保持して縦向きに回転させながら溶接することもできる。
【0029】
本発明は、タービン動翼と、該動翼を複数の段落に植設するタービンロータとを有する蒸気タービンにおいて、前記タービンロータが、前述に記載の蒸気タービン溶接ロータ又はその製造法よって製造された蒸気タービン溶接ロータで構成されていることを特徴とする。
【0030】
本発明は、高圧蒸気タービン-中圧蒸気タービン-低圧蒸気タービン、高中圧一体型蒸気タービン-低圧蒸気タービン及び高低圧一体型蒸気タービンのいずれかと発電機とを有し、前記高圧蒸気タービン、高中圧一体型蒸気タービン、中圧蒸気タービン、高低圧一体型蒸気タービン及び低圧蒸気タービンのいずれかが前述に記載の蒸気タービンよりなることを特徴とする蒸気タービン発電プラントにある。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部に応力集中がかからず、高い疲労強度を有する分割構造型の蒸気タービン溶接ロータを作製することができ、それを用いることによって蒸気条件の高温高圧化、発電プラントの大出力化に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体的な実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
図1は本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータの継手の全体構造を示す部分断面図(a)、継手構造を示す部分断面図(b)及びその寸法を示す断面図である。2つのタービンロータ1とタービンロータ2とは突合せ部側の直径がその奥より小さい円形カップ状の凹部を有し、内周面先端が狭開先部7の空間を形成するタービンロータ軸方向に所定の長さに形成された矩形断面を有するリング状の突起からなる突合せ部6で突き合わされて円筒形状の中空部8が形成される。狭開先部7は、積層溶接部表面がタービンロータ1、2の基部外表面と同一面にならないよう曲率半径R5を有する外周側隆起部4を形成すると共に、基部内表面と同一面にならないよう曲率半径R5を有する内周側隆起部3を形成し、狭開先部7をTIG溶接等にて溶接ワイヤを溶加材として積層溶接する。
【0034】
狭開先部7はルート部がU字状で、タービンロータ軸方向幅が内周側から外周側に向けてやや広がった形状を有し、積層溶接によってその幅が熱収縮によって狭められるので、開先の広がりは積層溶接中の溶接の作業に支障がないように、十分な広がりを施す。
【0035】
タービンロータ1、2の直径500mmに対して、外周側隆起部5の高さa、内周側隆起部3の高さbをそれぞれ10mm、開先深さd=100mm、間隔W=12mm、ルートフェースe=2mm、ルート間隔は0mmとし、平滑部の突合せ、及びインロー構造としても良い。継手部の特性調査のため、模擬ロータをTIG溶接で積層溶接し、断面の組織観察及び破壊調査を行った(バタリング層は無し)。外周側隆起部4の高さaの最大直径における軸方向の幅と内周側隆起部3の高さbの最小直径における軸方向の幅は開先間隔Wの2〜4倍の30mm、中空部8は軸方向幅が開先深さdの1〜2倍の100mm、最大直径340mmである。
【0036】
本実施例の蒸気タービン用溶接ロータは、中空部8のもで、中実であるが、径方向中心部に軸方向全体に亘って中空部8の径より小さい中心孔を形成することができ、それによってタービンロータ内面の欠陥の検査を行うことができる。
【0037】
表1は母材及び溶接ワイヤの化学組成(重量%)を示し、残部がFeである。積層溶接は、250℃〜300℃に予熱後、パス間温度を400℃以下にして行った。溶接後、400℃に保持して脱水素処理を行い、残留応力除去のため、570℃に昇温して保持した。溶接ワイヤの組成は、母材に比較してC量を0.07〜0.15%、Ni量を2.0〜3.0%及びCr量を0.8〜1.3%と少なくし、Si量を0.25〜0.4%、Mn量を1.5〜2.5%、Mo量を0.5〜0.8%と多くし、Vを含まないものである。
【0038】
【表1】
溶接部の浸透探傷試験の結果、初層部では裏波にやや不完全な溶接部分が有り、欠陥の存在する確率が高かった。一方、初層部以降の溶接中央部にはほぼ欠陥が認められなかった。初層部の溶接では、極めて大型の構造物の溶接となるため、初層部では裏波にやや不完全な溶け込みとなり易いが、本実施例の隆起部3を設けることによって裏波の溶け込みが容易となり欠陥の発生が少ないものとなる。溶接部は、溶接後の熱収縮によって径方向に収縮し、外周部ではやや凹み、内周部ではやや内周側に凸状になるが、それらの変形は小さいものであった。内外周部での変形が小さいのは、本実施例における内外周隆起部3、4の形成によるものである。
【0039】
図2は溶接部断面の顕微鏡組織写真(100倍)を示す図である。厚み方向での組織的特徴は、溶接最終層近傍(a)が粗粒を有するのに対して、最終層近傍以外は微細な結晶組織を呈していた(b)。
【0040】
表2は溶接部の引張試験及び衝撃試験の結果を示すものである。初層、最終層近傍において、延性、靭性が低い傾向にあり、特に最終層近傍で低下量が大きかった。溶接部の初層及び最終層近傍は、機械的性質が低下しており、ロータ母材からは、欠陥部と同等と考えられる。しかし、本発明の外周側隆起部4を有するものでは、最終層近傍を切削除去することができ、最終層近傍の無い基部と同じ高さのものを得ることができる。
【0041】
【表2】
図3は、溶接部表面に欠陥が存在する場合、開先部の隆起構造が疲労強度の保持に有効か否かを評価するため、人口欠陥を導入した疲労試験に用いた試験片形状を示す平面図である。平行部径6mmの試験片(a)を基準とし、平滑面から0.5mmの隆起構造部に0.5mm、稜角90°のVノッチを環状に導入したもの(b)、直径7mmの平滑平行部中央に深さ0.5mm、稜角90°のVノッチを環状に導入したもの(c)のそれぞれを試験した。
【0042】
図4は、回転曲げ疲労試験結果を示す線図である。本発明の隆起構造を有する試験片(b)の破断位置はR部であり、ほぼ母材(a)と同等の疲労強度を有していたが、隆起構造を持たない試験片(c)は母材強度より低下しており、隆起構造が欠陥の存在に対して有効に働いていた。
【0043】
図5は、本発明の隆起構造を有する試験片の溶接部の表曲げ及び側曲げ試験結果を示す図である。いずれの曲げ試験においても割れは認められず良好な溶接部を形成していた。
【0044】
本実施例の溶接部について非破壊検査(磁紛探傷試験、浸透探傷試験、超音波探傷試験)の結果、初層部では裏波にやや不完全な溶接部分が有ったが、初層部以降の溶接中央部には欠陥が認められなかった。
【0045】
本実施例の外周側隆起部4の曲率半径R5部は、積層溶接における最終溶接によって形成される約5mm程度の熱影響部がかからないものであり、更に、内周側隆起部3の曲率半径R5部も積層溶接における初層溶接によって形成される熱影響部がかからないものであり、いずれも応力集中は曲率半径R5の部分にかかり、熱影響部にはかからない充分な幅と高さを有するものであった。
【0046】
その結果、従来の溶接構造では溶接熱影響部に応力集中がかかり、その部分での疲労強度が低いためにその部分での設計強度にて設計せざるを得ないものであったが、本発明においては溶接熱影響部に応力集中がかかる位置を内外周側隆起部の曲率半径R部にすることができることからタービンロータ材の母材での強度設計ができることからより蒸気条件の高温高圧化、発電プラントの大出力化に対応することができる。
【0047】
以上のように、本実施例によれば、積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部に応力集中がかからず、又、初層溶接部に形成される熱影響部への応力集中がかからず、高い疲労強度を有する分割構造型の蒸気タービン溶接ロータを作製することができ、それを用いることによって蒸気条件の高温高圧化、発電プラントの大出力化に対応することができる。
【0048】
又、溶接構造とすることで、突合せ面を中空化できることからロータ重量を軽くでき、又、熱応力を低減できることから起動停止を急速に行えるのでプラントの運用性を高めることができる。
【実施例2】
【0049】
図6は本発明に係る低圧複流蒸気タービン用溶接ロータの断面図である。本低圧複流蒸気タービン用溶接ロータロータは、左右対称に6段のタービン動翼が植え込まれる構造を有し、その中央部から左右に蒸気が流入される複流型である。本実施例では、最終段以外のタービン動翼が植え込まれる中央部の蒸気流入側ロータ12に対してその両側に最終段タービン動翼が植え込まれるジャーナル部を有する最終段落側ロータ11、13が夫々溶接部16、17で溶接接合する構造を有するものである。
【0050】
本実施例の継手部の構造は前述の実施例1と同様の構造を有し、中空部14、15を形成して軽量化を図っている。又、蒸気流入側ロータ12及び最終段落側ロータ11、13のいずれも表1の3〜4%Ni−Cr−Mo−V鋼を用い、実施例1のTIG溶接と同様の条件で溶接部16、17で接合した。本実施例の外周側隆起部4は、3層の積層溶接層によって形成されたものである。本実施例の蒸気タービン用溶接ロータは、中空部8以外は中実であるが、径方向中心部に軸方向全体に亘って中空部14,15の径より小さい中心孔を形成することができ、それによってタービンロータ内面の欠陥の検査を行うことができる。
【0051】
本実施例による溶接部16、17は、それらの外周部では、熱収縮によって緩やかにやや凹んだ形状を有し、その溶接のままでも良い。又、その凹んだ部分を含め溶接部の最終層部分を含めて全体を胴部に対して平行になるように切削加工するのも良い。切削加工においては、切削後には溶接部の最終層が残らない高さの外周側隆起部4を設けるようにすることが好ましい。又、この切削加工は、図1に示す外周側隆起部4を設けることによって胴部全体を切削加工することなく、外周側隆起部4についてのみ行うことができるので、その切削量が少ないこと等、製造が容易である。
【0052】
本実施例の溶接部について非破壊検査の結果、初層部での欠陥が少なく、一方、初層部以降の溶接中央部にはほぼ欠陥が認められなかった。
【0053】
又、本実施例の外周側隆起部の曲率半径R部は、積層溶接における最終溶接によって形成される約5mm程度の熱影響部がかからないものであり、更に、内周側隆起部の曲率半径R部も積層溶接における初層溶接によって形成される熱影響部がかからないものであり、いずれも応力集中は曲率半径にかかり、熱影響部にはかからない充分な幅を有するものであった。
【0054】
以上のように、本実施例によれば、実施例1と同様に積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部に応力集中がかからず、又、初層溶接部に形成される熱影響部への応力集中がかからず、高い疲労強度を有する分割構造型の蒸気タービン溶接ロータを作製することができ、それを用いることによって蒸気条件の高温高圧化、発電プラントの大出力化に対応することができるものである。
【0055】
ロータの長さ、分割数、胴部径は蒸気タービンの出力及び回転数により変わるが、種々のロータ形状に対して、同様に溶接接合が可能である。
【実施例3】
【0056】
図7は本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータの継手の全体構造を示す部分断面図(a)及び継手部を示す部分断面図(b)である。タービンロータ21、タービンロータ22が突合せ部28で突き合わされ、開先は、溶接表面が軸面と同一面にならないよう曲率半径R25を有し、タービンロータの内周側に内周側隆起部23、外周側に外周側隆起部24を形成し、狭開先部27をTIG溶接等にて同系ワイヤを溶加材として積層溶接接合する。突合せ部28は実施例1と同様である。
【0057】
本実施例では、一方のタービンロータ22の突合せ部28にバタリング層26を形成するものである。外周面側隆起部24の高さa、内周面側隆起部23の高さbはそれぞれ10mm、開先深さd=100mm、間隔W=12mm、バタリング層幅Y=10mm、ルートフェースe=2mm、ルート間隔は0mmとし、平滑部の突合せ及びインロー構造としても良い。表3は母材及び溶接ワイヤの化学組成(重量%)を示し、残部Feである。他の要件は、実施例1と同様である。
【0058】
【表3】
図8は本発明に係る高低圧一体型タービン用溶接ロータの断面図である。高温側ロータ31と低温側ロータ32の2つに分割され、溶接部34で接合した。継手部の構造は実施例3と同様の構造を有し、継手部は中空部33を形成し、軽量化を図っている。高温側ロータ31は表3の1%Cr−Mo−V系鋼、低温側ロータ32は表3の3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼より構成されている。
【0059】
バタリング層は表3の溶接ワイヤ(バタリング)を用い、高温側ロータ31の軸を横向きにして、突合せ溶接により形成した。バタリング層の形成は、250℃〜300℃に予熱後、パス間温度を400℃以下にして行った。溶接後、400℃に保持して脱水素処理を行い、軸を横切る面で切断後、残留応力除去のため、630℃に昇温して保持した。バタリング層の組成は、母材に比較してC量を0.02〜0.06%、Mo量を0.8〜1.1%と少なくし、Si量を0.3〜0.6%、Mn量を0.9〜1.3%、Cr量を2.0〜2.5%と多くし、Niを含まないものである。
【0060】
図9は、バタリング層を形成する際のタービンロータ向きによるバタリング層組織の相違を模式的に示す断面図である。図9(a)は、タービンロータを縦向きにして積層溶接したときのバタリング層組織35を示し、溶接パス界面はタービンロータ軸を横切る方向に形成される。図9(b)はタービンロータを横向きにして積層したときのバタリング層組織36を示し、溶接パス界面はロータ軸と平行に形成される。そして、バタリング層組織36は、タービンロータ軸の曲げ応力に抗するには、溶接パス界面がロータ軸と平行になることがより好ましい。
【0061】
タービンロータ41、タービンロータ42が突合せ部48で突き合わされ、開先は、溶接表面が軸面と同一面にならないよう曲率半径R46を有し、タービンロータの内周側に内周側隆起部47、外周側に外周側隆起部45を形成し、狭開先部をTIG溶接等にて同系ワイヤを溶加材として積層溶接接合する。突合せ部48は実施例1と同様である。バタリング層の形成は、250℃〜300℃に予熱後、パス間温度を400℃以下にして行った。溶接後、400℃に保持して脱水素処理を行い、軸を横切る面で切断後、残留応力除去のため、630℃に昇温して保持した。
【0062】
本実施例では、実施例1と同様に狭開先形状に加工後、積層溶接による突合せ溶接により実施例1のTIG溶接と同様の条件で溶接部34で接合した。積層溶接は250℃〜300℃に予熱後、パス間温度を400℃以下にして行った。溶接後、400℃に保持して脱水素処理を行い、残留応力除去のため、570℃に昇温して保持した。溶接ワイヤの組成は実施例1と同様の組成を有し、低温側ロータ32の3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼に対して同様の関係を有するものである。本実施例の蒸気タービン用溶接ロータは、中空部33以外は中実であるが、径方向中心部に軸方向全体に亘って中空部33の径より小さい中心孔を形成することができ、それによってタービンロータ内面の欠陥の検査を行うことができる。
【0063】
図10は、バタリング層の形成方法を模式的に示す断面図である。図10(a)はタービンロータ42に対して図9に示すタービンロータ41の開先形状と同様の形状に加工したタービンロータとは異なる開先部近傍だけを形成した部材49を突合せて横向きにしたもの、図10(b)は部材49とタービンロータ42とを回転させながら積層溶接しバタリング層となる溶接層44’を形成したもの、図10(c)はタービンロータ42側にバタリング層44を残して切断し、開先形状に切削加工したもの、図10(d)は実際のタービンロータ41、42と突合せて実施例3と同様に積層溶接を行うものである。開先形状は実施例1と同様である。部材49には炭素鋼等を用いることができる。
【0064】
本実施例の継手部の構造は前述の実施例1と同様の構造を有し、中空部33を形成して軽量化を図っている。本実施例による溶接部34は、それらの外周部では、熱収縮によって緩やかにやや凹んだ形状を有し、その溶接のままでも良いが、その凹んだ部分を含め、又、溶接部の最終層部分を含めて全体を胴部に対して平行になるように切削加工するのが好ましい。この切削加工は、外周側隆起部45を設けることによって胴部全体を切削加工することなく、外周側隆起部45についてのみ行うことができるので、その切削量が少ないこと等、製造が容易である。
【0065】
本実施例の溶接部について非破壊検査の結果、初層部での欠陥が少なく、一方、初層部以降の溶接中央部にはほぼ欠陥が認められなかった。
【0066】
本実施例においても、実施例1と同様に、積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部に応力集中がかからず、又、初層溶接部に形成される熱影響部への応力集中がかからず、高い疲労強度を有する分割構造型の蒸気タービン溶接ロータを作製することができ、それを用いることによって蒸気条件の高温高圧化、発電プラントの大出力化に対応することができるものである。
【0067】
高温側ロータ31を1%Cr−Mo−V系鋼に代えて12%Cr系鋼と溶接ロータで構成した場合も、良好な溶接結果が得られた。
【実施例4】
【0068】
図11は本発明に係る異なる材料を組み合わせた高圧蒸気タービン及び高中圧蒸気タービン用溶接ロータの継手部を示す断面図である。狭開先部58には、バタリング層が無いものである。溶接表面が軸面と同一面にならないよう曲率半径R55を有し、ロータの内周側隆起部56、外周側隆起部57を形成して狭開先部58をTIG溶接等にて母材と同等の組成を有する溶接ワイヤを溶加材として積層溶接接合する。表4は母材及び溶接ワイヤの化学組成(重量%)を示し、残部がFeである。
【0069】
【表4】
【0070】
図12は本発明に係る高圧蒸気タービン用溶接ロータの断面図である。図12に示すように、高温側ロータ61、低温側ロータ62、高温側ロータ61に接続された軸受部63の3つに分割され、各々が溶接部66、67で接合される。継手部は中空部64、65が形成され、軽量化を図っている。高温側ロータ61は表4の12%Cr系鋼、低温側ロータ62及び軸受部63は表4の1%Cr−Mo−V系鋼より構成されている。
【0071】
狭開先部には、バタリング層が無く、溶接表面が軸面と同一面にならないよう曲率半径Rを有し、高温側ロータ61、低温側ロータ62、軸受部63の内周側には図11に示す内周側隆起部56及び外周側に外周側隆起部57が形成され、狭開先部をTIG溶接等にて表4に示す溶接ワイヤを溶加材として実施例1と同様に積層溶接接合する。積層溶接は250℃〜300℃に予熱後、パス間温度を400℃以下にして行った。その溶接後、400℃に保持して脱水素処理を行い、残留応力除去のため、630℃に昇温して保持した。溶接ワイヤの組成は、低温側ロータ62及び軸受部63の母材に比較してC量を0.02〜0.06%、Mo量を0.8〜1.1%と少なくし、Si量を0.3〜0.6%、Mn量を0.9〜1.3%、Cr量を2.0〜2.5%と多くし、Niを含まないものである。
【0072】
図13は、高中圧蒸気タービン用溶接ロータの断面図である。図13に示すように、高温側ロータ71とそれぞれの後側段落に接続された低温側ロータ72、73の3つに分割され、溶接部76、77で接合される。継手部は中空部74、75が形成され、軽量化を図っている。高温側ロータ71は表4の12%Cr系鋼、低温側ロータ72、73は表4の1%Cr-Mo-V系鋼より構成されている。
【0073】
ルートフェース底部がI型の狭開先部には、バタリング層が無く、溶接表面が軸面と同一面にならないよう曲率半径Rを有し、図11に示すように、タービンロータの内周側に内周側隆起部53、外周側に外周側隆起部57を形成して狭開先部をTIG溶接等にて表4に示す溶接ワイヤを溶加材として実施例1と同様に積層溶接接合する。積層溶接は250℃〜300℃に予熱後、パス間温度を400℃以下にして行った。溶接後、400℃に保持して脱水素処理を行い、残留応力除去のため、630℃に昇温して保持した。溶接ワイヤの組成は、低温側ロータ72、73の母材に比較してC量を0.02〜0.06%、Mo量を0.8〜1.1%と少なくし、Si量を0.3〜0.6%、Mn量を0.9〜1.3%、Cr量を2.0〜2.5%と多くし、Niを含まないものである。
【0074】
本実施例のいずれの蒸気タービン用溶接ロータにおいても、中空部を有する以外は中実であるが、径方向中心部に軸方向全体に亘って中空部の径より小さい中心孔を形成することができ、それによってタービンロータ内面の欠陥の検査を行うことができる。
【0075】
本実施例の溶接部について非破壊検査の結果、初層部での欠陥が少なく、初層部以降の溶接中央部にはほぼ欠陥が認められなかった。又、実施例1と同様に、積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部に応力集中がかからず、又、初層溶接部に形成される熱影響部への応力集中がかからず、高い疲労強度を有する分割構造型の蒸気タービン溶接ロータを作製することができ、それを用いることによって蒸気条件の高温高圧化、発電プラントの大出力化に対応することができるものである。
【実施例5】
【0076】
本実施例は、実施例2〜4のいずれかに記載の蒸気タービン用溶接ロータを高低圧一体型蒸気タービン、高圧蒸気タービン、高中圧一体型蒸気タービン及び低圧蒸気タービンの各々のロータに用いた蒸気タービン発電プラントを構成するものである。
【0077】
高低圧一体型蒸気タービンは、高圧側(HP)と低圧側(LP)とが一体のタービンロータによって形成され、高圧蒸気がその中央部よりやや片側に設けられたノズルボックスより主蒸気温度が500℃以上の蒸気がHP側の初段である調速段のタービン動翼に導かれ、HPの7段のタービン動翼を通ってLPの10段のタービン動翼に導入される蒸気タービン発電プラントを構成することができる。これらのタービン動翼に対応して各々静翼が設けられる。タービンロータは、実施例3の図8に示す蒸気タービン用溶接ロータが用いられ、軸部と、軸部に連なる胴部とを有し、胴部の軸方向にタービン動翼が植設される複数のディスク部を有し、このディスク部は軸方向に沿った翼溝が形成され、翼溝は調速段を含め全タービン動翼が植え込まれる翼根元部の断面形状と相似形の断面形状を有する。
【0078】
高圧蒸気タービン(HP)は、タービン動翼の初段が調速段で複流であり、片側に9段有し、これらのタービン動翼に対応して各々静翼が設けられる。タービンロータは、実施例4の図11に示す蒸気タービン用溶接ロータが用いられ、軸部と、軸部に連なる胴部とを有し、胴部の軸方向にタービン動翼が植設される複数のディスク部が形成されている。このディスク部は軸方向に沿った翼溝が形成され、翼溝は初段である調速段を含め全タービン動翼が植え込まれる翼根元部の断面形状と相似形の断面形状を有する。また、本実施例においては、中圧タービン(IP)及び低圧蒸気タービン(LP)が連結され、(HP)−(IP)−発電機とLP2台−発電機、又、(HP)−(LP)−発電機と(IP)-(LP)−発電機の組み合わせによって主蒸気温度500℃以上の蒸気タービン発電プラントを構成することができる。
【0079】
高中圧一体型蒸気タービンは、高圧部(HP)と中圧部(IP)とが一体のタービンロータによって形成され、高圧蒸気がその中央部に設けられたノズルボックスよりHP側の初段である調速段のタービン動翼に導かれ、HPの8段のタービン動翼を通ってIPの6段のタービン動翼に導入される。これらのタービン動翼に対応して各々静翼が設けられる。タービンロータは、実施例4の図12に示す蒸気タービン用溶接ロータが用いられ、軸部と、軸部に連なる胴部とを有し、胴部の軸方向にタービン動翼が植設される複数のディスク部を有し、このディスク部は軸方向に沿った翼溝が形成され、翼溝は調速段を含め全タービン動翼が植え込まれる翼根元部の断面形状と相似形の断面形状を有する。本実施例においては、(HP・IP)と低圧蒸気タービン(LP)1台又は2台で、HPの主蒸気温度は500℃以上、IPの蒸気温度は500℃以上に再熱器によって加熱されて導入され、本蒸気タービンによって回転する発電機を有する蒸気タービン発電プラントを構成することができる。
【0080】
前述の各発電プラントに組み込まれる低圧蒸気タービン(LP)は、そのタービンロータに、実施例2の図6に示す蒸気タービン用溶接ロータが用いられ、軸部と、軸部に連なる胴部とを有し、胴部の軸方向にタービン動翼が植設される複数のディスク部を有し、このディスク部は軸方向に沿った翼溝が形成され、翼溝は調速段を含め全タービン動翼が植え込まれる翼根元部の断面形状と相似形の断面形状を有する。
【0081】
本実施例においては、実施例2〜4における蒸気タービン溶接ロータを用いたときと同様に蒸気タービンとして高温強度が必要な高温域には、高温強度の高いNi基合金、12%Cr鋼、1%Cr−Mo−V鋼のいずれかを用い、靭性が必要な低温域には3〜4%Ni−Cr−Mo−V鋼を用いることができ、高温化、大容量化、より熱効率の高い蒸気タービン発電プラントが得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータの継手の全体構造を示す部分断面図(a)及び継手構造を示す部分断面図(b)である。
【図2】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータの溶接継手部の断面の顕微鏡組織を示す図である。
【図3】疲労試験片の形状を示す平面図である。
【図4】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータの疲労試験結果を示す線図である。
【図5】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータの溶接継手部の曲げ試験結果を示す図である。
【図6】本発明に係る低圧複流タービン用溶接ロータの断面図である。
【図7】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータとしてバタリング層を形成した継手の全体構造を示す部分断面図(a)及び継手構造を示す部分断面図(b)である。
【図8】本発明に係る高低圧一体型蒸気タービン用溶接ロータの断面図である。
【図9】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータにおけるバタリング層の組織を示す模式図である。
【図10】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータにおけるバタリング層の組織を示す模式図である。
【図11】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータとして異材による継手部を示す断面図である。
【図12】本発明に係る高圧蒸気タービン用溶接ロータの断面図である。
【図13】本発明に係る高中圧蒸気タービン用溶接ロータの断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1、2、21、22、51,52…タービンロータ、3、23、47、53…内周側隆起部、4、24、45、57…外周側隆起部、5、25、55…曲率半径R、6、28、48、54…突合せ部、7、27、58…狭開先部、11、13…最終段落側ロータ、12…蒸気流入側ロータ、14、15、33、64,65、74、75…中空部、16、17、34、66、67、76、77…溶接部、26…バタリング層、31、42、61、71…高温側ロータ、32、41、62、72、73…低温側ロータ、43…ロータを縦向きで積層したバタリング層、44…ロータを横向きで積層したバタリング層、49…部材、63…軸受部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な溶接部継手構造及び溶接部強度を有する新規な蒸気溶接タービンロータとその製造方法及び蒸気タービンとその発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題の高まりから、蒸気タービン発電プラントには高効率化及び出力の大容量化が求められ、蒸気温度は高温高圧化が進められている。従来、蒸気タービンロータの如く大型の回転体は、鍛造熱処理技術の発展とも相俟って、一体型ロータが適用されてきた。蒸気温度538℃〜600℃の高圧、中圧蒸気タービンには、1%CrMoV系鋼(特許文献1)、12%Cr系鋼(特許文献2)が使用され、蒸気温度400℃以下の低圧蒸気タービンには3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼(特許文献3)が使用されている。
【0003】
また、タービンの軽量化、構造簡素化のために、538〜566℃の蒸気温度で高圧から低圧までを同一材質で一体成形した高低圧一体型ロータには2%Ni−2%Cr−Mo−V系鋼(特許文献4)等が使用されているが、さらなる高温化、大容量化には適さない。
【0004】
ロータ材に要求される特性は、高圧(高温)では高温クリープ破断強度であり、低圧では引張強さ、靭性である。このように蒸気タービンロータは、一つの材質で高圧、低圧の双方の特性を満足することは困難であるのは勿論のこと、要求される特性は段落毎に異なっている。段落毎または複数段落毎に最適な材料を選択して、ボルト締結、溶接接合等により一本のロータを構成する方法が知られており、溶接構造ロータが特許文献5等に示されている。また、製造工程の再溶解時に異なる材質を接合する方法として、特許文献6等がある。大型ロータの製造と比べて、段落毎または複数段落毎のような小鋼塊は、高品質な鋼塊が得られやすく、大規模な製造設備を必要としない。
【0005】
【特許文献1】ASTM A470 Class8
【特許文献2】特許第1833108号公報
【特許文献3】ASTM A470 Class7
【特許文献4】特許第3106121号公報
【特許文献5】三菱重工技報、Vol.37、No.3(2000−5)
【特許文献6】特公昭56−14842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のロータ材料(1%CrMoV系鋼、12%Cr系鋼、3〜4%NiCrMoV系鋼、Ni基合金)は、高温化、大容量化に対応した大型鋼塊の製造が困難であり、分割構造にして高品質な小鋼塊を溶接接合することが好ましい。また、一体型である中実ロータは重量が増大すると共に、起動停止時の熱応力が大きく疲労損傷を受けやすい。分割構造にして中空構造にすると、ロータの軽量化と共に熱応力を低減可能で、起動停止に要する手間を短縮して運用性を改善できる利点がある。
【0007】
しかし、一体型ロータは全領域に渡って鍛造された材料であり、強度と靭性を確保しやすいのに対して、溶接部は凝固組織であり、母材側には熱影響部が存在するため、継手部の機械的性質は母材に比べると低下している。溶接技術の進歩も著しく、入熱量を小さくして熱影響部の幅を小さくする狭開先溶接等が開発されているが、凝固組織と熱影響部が存在することに変わりはない。
【0008】
更に、溶接初層部では溶接中央部と比べると欠陥が発生しやすく、また、母材との希釈率の違いから特性が低下しやすい問題がある。また、最終層部では、熱履歴の違いからFe系材料ではAC3変態(オーステナイト変態、ベイナイト変態(マルテンサイト変態))の繰返し、Ni基合金では再結晶の繰返しが少なく粗粒を形成しやすいために、機械的性質が低下する問題がある。ロータの軸表面に欠陥及び弱化部が存在すると、応力集中により破壊の起点となるため、回転体では特に注意が必要である。初層部に隆起構造を構成して応力集中を回避した構造が上述の文献に示されているが、最終層部の粗粒域の特性低下に対しては考慮されていない。
【0009】
本発明の目的は、積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部に応力集中がかからず、高い疲労強度を有する蒸気タービン溶接ロータとその製造方法及び蒸気タービン発電プラントを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部への応力集中及び初層溶接部に形成される熱影響部への応力集中がかからず、高い疲労強度を有する蒸気タービン溶接ロータとその製造方法及び蒸気タービン発電プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも2個に分割されたタービンロータを突合せ溶接により接続された蒸気タービン溶接ロータにおいて、前記タービンロータの両者の突合せ部は、その中心部に形成された中空部と、その外周側に形成された前記タービンロータの基部面より径方向に対して隆起した外周側隆起部とを有し、前記突合せ部に形成された開先部が積層溶接によって前記突合せ溶接されていることを特徴とする。
【0012】
又、本発明は、前記中空部の内周側に前記タービンロータの基部面より径方向に対して隆起した内周側隆起部を有すること、又、前記積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部がかからないような前記外周側隆起部の前記タービンロータの軸方向幅を有するものであること、更に、前記積層溶接における初層溶接によって形成される熱影響部がかからないような前記内周側隆起部の前記タービンロータの軸方向幅を有するものであることが好ましい。
【0013】
本発明は、異なる材質のタービンロータを溶接する際には、タービンロータの開先部の一方に前記積層溶接の組成を緩和するバタリング層を有すること、又、最終溶接層である粗粒域を研削等により削除することが好ましい。
【0014】
外周側隆起部の高さaと内周側隆起部の高さbのタービンロータ軸方向の幅は、開先間隔Wの2〜30倍、その両者の各高さは開先間隔Wの0.5〜5倍、前記外周側隆起部及び内周側隆起部のいずれも前記基部との間が曲率半径Rを有して形成されていることが好ましく、中空部はタービンロータ軸方向の幅が開先深さの0.5〜5倍、径方向長さが開先深さの2〜8倍が好ましい。
【0015】
本発明の高圧用、中圧用、高中圧用蒸気タービン溶接ロータとしては、質量で、C0.25〜0.35%、Mn1%以下、Ni1%以下、Cr0.8〜1.5%、Mo1.0〜1.5%、V0.2〜0.3%を含むベーナイト組織を有する1%Cr−Mo−V系鋼、又は、質量で、C0.1〜0.2%、Mn0.3〜1.0%、Ni1%以下、Cr9〜13%、Mo0.1〜1.5%、W0.2〜3%、Nb0.02〜0.1%、Co3%以下、B0.01%以下を含む全焼戻しマルテンサイト組織を有する12%Cr系鋼を用いることが好ましい。
【0016】
本発明の低圧ロータ又は低圧蒸気タービンロータとしては、質量で、C0.17〜0.32%、Mn0.20〜0.40%、Ni3〜4%、Cr1.25〜2.0%、Mo0.25〜0.60%、V0.05〜0.15%を含むベーナイト組織を有する3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼を用いることが好ましい。
【0017】
更に、本発明の高圧用、中圧用、高中圧用蒸気タービン溶接ロータは、質量で、Cr12〜20%、Nb1.5〜3.5%、Ti1.5〜2.0%、Al0.2〜1.5%を含むNi基合金、又は、質量で、Cr15〜20%、Mo5〜15%、Ti1.0〜2.0%、Al0.2〜2.0%を含むNi基合金を用いることが好ましい。
【0018】
これらの積層溶接の組成及び溶接ワイヤには、質量で、C0.04〜0.1%、Si0.3〜0.7%、Mn0.5〜1.5%、Cr0.8〜1.5%、Mo0.3〜0.8%を含む1%Cr−Mo系鋼溶接金属、C0.06%以下、Si0.3〜0.7%、Mn0.5〜1.5%、Cr1.5〜2.5%、Mo0.8〜1.5%を含む2%Cr−Mo系鋼溶接金属、C0.05〜0.15%、Si0.05〜0.5%、Mn1.0〜2.5%、Ni2.0〜4.0%、Cr0.25〜1.5%、Mo0.5〜0.8%を含む3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼溶接金属を用いることが好ましい。
【0019】
バタリングの溶接金属部の組成及びその溶接ワイヤには、質量で、C0.05〜0.15%、Si0.05〜0.5%、Mn1.0〜2.5%、Ni2.0〜4.0%、Cr0.25〜1.5%、Mo0.5〜0.8%を含む3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼溶接金属、又は、C0.04〜0.1%、Si0.05〜0.3%、Mn0.5〜2.5%、Ni0.5〜1.0%、Cr7.5〜10.0%、Mo0.6〜1.5%、V0.1〜0.25%、Nb0.1%以下を含む9%Cr−Ni−Mo−V系鋼溶接金属を用いることが好ましい。
【0020】
又、本発明の高圧、中圧及び高中圧蒸気タービン溶接ロータは、蒸気温度の高い高温側に12%Cr系鋼を用い、温度の低下した低温側及びシャフト部の少なくとも一方に1%CrMoV系鋼を用いること、又、蒸気温度の高い高温側にNi基合金を用い、温度の低下した低温側及び軸受部の少なくても一方に12%Cr系鋼、1%CrMoV系鋼のいずれか又は双方を用いることが好ましい。
【0021】
本発明の高低圧一体型及び中低圧一体型蒸気タービン溶接ロータは、高圧ロータ及び中圧ロータは1%CrMoV系鋼及び12%Cr系鋼のいずれかを用い、低圧ロータは3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼を用いることが好ましい。
【0022】
1%CrMoV系鋼と12%Cr系鋼との溶接には12%Cr系鋼側に9%Cr−Ni−Mo−V系鋼溶接金属をバタリングし1〜2%Cr−Mo系鋼溶接金属にて積層溶接すること、1%CrMoV系鋼と3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼との溶接には1%CrMoV系鋼側に1〜2%Cr−Mo系鋼溶接金属をバタリングし3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼溶接金属又は1〜2%Cr−Mo系鋼溶接金属にて積層溶接することが好ましい。
【0023】
本発明は、少なくとも2個に分割されたタービンロータを突合せ溶接により接続する蒸気タービン溶接ロータの製造方法において、前記タービンロータの突合せ部の中心部に中空部を形成すると共に、前記突合せ部の外周側に前記タービンロータの基部面より隆起した外周側隆起部を形成し、前記突合せ部に形成された開先部を積層溶接することを特徴とする。
【0024】
本発明の開先部は狭開先で、前記タービンロータの軸方向で僅かに外周側に向かって広がっており、ルート開先部がU字状に形成されていることが好ましい。
【0025】
前記タービンロータは互いに材質が異なり、前記積層溶接する前に、残留応力除去焼鈍温度の高い材質の前記ロータ側の前記突合せ部の全面に前記積層溶接の組成を緩和するバタリング層を形成した後、前記開先部を形成することが好ましい。
【0026】
前記タービンロータの軸を縦向きにて前記バタリング層を形成し、又は、前記ロータ軸を横向きにして回転させながら他の部材との間に溶接金属部を形成する突合せ溶接した後、前記タービンロータ軸を径方向で横切る面で前記溶接金属部を残して切断して前記バタリング層を形成し、前記バタリング層の残留応力除去焼鈍を施した後、前記開先部を形成すること、更に、前記タービンロータ軸を横向きにして回転させながら他の部材との間に溶接金属部を形成する突合せ溶接した後、前記溶接金属部の残留応力除去焼鈍を施してから前記タービンロータ軸を横切る面で前記溶接金属部を残して切断し、次いで前記開先部を形成することが好ましい。他の部材は、接合される部材と同じ組成を有することが好ましいが、炭素鋼又は低合金鋼を用いることができる。
【0027】
タービンロータの回転体は、軸の偏芯が大きな振動を引起すので、溶接中の寸法安定性が重要である。本発明の蒸気タービン溶接ロータの製造方法は、狭開先部の積層溶接及びバタリング層の形成にTIG溶接法、サブマージアーク溶接法、ミグ溶接法、被覆アーク溶接法のいずれかを用い、ロータ軸を横向きにして回転させながら溶接すること、バタリング層の形成はロータ軸を縦向き又はロータ軸を横向きにして回転させながら溶接することが好ましい。
【0028】
突合せ溶接する前の準備として、仮付けを行うことが好ましい。ディスク形状、又はそれに近いものは、縦方向に積み上げて仮付けを行うことが好ましい。複数段落のような比較的大きなブロックでは、横向きにして仮付けすることが好ましい。ロータの一端を保持して縦向きに回転させながら溶接することもできる。
【0029】
本発明は、タービン動翼と、該動翼を複数の段落に植設するタービンロータとを有する蒸気タービンにおいて、前記タービンロータが、前述に記載の蒸気タービン溶接ロータ又はその製造法よって製造された蒸気タービン溶接ロータで構成されていることを特徴とする。
【0030】
本発明は、高圧蒸気タービン-中圧蒸気タービン-低圧蒸気タービン、高中圧一体型蒸気タービン-低圧蒸気タービン及び高低圧一体型蒸気タービンのいずれかと発電機とを有し、前記高圧蒸気タービン、高中圧一体型蒸気タービン、中圧蒸気タービン、高低圧一体型蒸気タービン及び低圧蒸気タービンのいずれかが前述に記載の蒸気タービンよりなることを特徴とする蒸気タービン発電プラントにある。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部に応力集中がかからず、高い疲労強度を有する分割構造型の蒸気タービン溶接ロータを作製することができ、それを用いることによって蒸気条件の高温高圧化、発電プラントの大出力化に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体的な実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
図1は本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータの継手の全体構造を示す部分断面図(a)、継手構造を示す部分断面図(b)及びその寸法を示す断面図である。2つのタービンロータ1とタービンロータ2とは突合せ部側の直径がその奥より小さい円形カップ状の凹部を有し、内周面先端が狭開先部7の空間を形成するタービンロータ軸方向に所定の長さに形成された矩形断面を有するリング状の突起からなる突合せ部6で突き合わされて円筒形状の中空部8が形成される。狭開先部7は、積層溶接部表面がタービンロータ1、2の基部外表面と同一面にならないよう曲率半径R5を有する外周側隆起部4を形成すると共に、基部内表面と同一面にならないよう曲率半径R5を有する内周側隆起部3を形成し、狭開先部7をTIG溶接等にて溶接ワイヤを溶加材として積層溶接する。
【0034】
狭開先部7はルート部がU字状で、タービンロータ軸方向幅が内周側から外周側に向けてやや広がった形状を有し、積層溶接によってその幅が熱収縮によって狭められるので、開先の広がりは積層溶接中の溶接の作業に支障がないように、十分な広がりを施す。
【0035】
タービンロータ1、2の直径500mmに対して、外周側隆起部5の高さa、内周側隆起部3の高さbをそれぞれ10mm、開先深さd=100mm、間隔W=12mm、ルートフェースe=2mm、ルート間隔は0mmとし、平滑部の突合せ、及びインロー構造としても良い。継手部の特性調査のため、模擬ロータをTIG溶接で積層溶接し、断面の組織観察及び破壊調査を行った(バタリング層は無し)。外周側隆起部4の高さaの最大直径における軸方向の幅と内周側隆起部3の高さbの最小直径における軸方向の幅は開先間隔Wの2〜4倍の30mm、中空部8は軸方向幅が開先深さdの1〜2倍の100mm、最大直径340mmである。
【0036】
本実施例の蒸気タービン用溶接ロータは、中空部8のもで、中実であるが、径方向中心部に軸方向全体に亘って中空部8の径より小さい中心孔を形成することができ、それによってタービンロータ内面の欠陥の検査を行うことができる。
【0037】
表1は母材及び溶接ワイヤの化学組成(重量%)を示し、残部がFeである。積層溶接は、250℃〜300℃に予熱後、パス間温度を400℃以下にして行った。溶接後、400℃に保持して脱水素処理を行い、残留応力除去のため、570℃に昇温して保持した。溶接ワイヤの組成は、母材に比較してC量を0.07〜0.15%、Ni量を2.0〜3.0%及びCr量を0.8〜1.3%と少なくし、Si量を0.25〜0.4%、Mn量を1.5〜2.5%、Mo量を0.5〜0.8%と多くし、Vを含まないものである。
【0038】
【表1】
溶接部の浸透探傷試験の結果、初層部では裏波にやや不完全な溶接部分が有り、欠陥の存在する確率が高かった。一方、初層部以降の溶接中央部にはほぼ欠陥が認められなかった。初層部の溶接では、極めて大型の構造物の溶接となるため、初層部では裏波にやや不完全な溶け込みとなり易いが、本実施例の隆起部3を設けることによって裏波の溶け込みが容易となり欠陥の発生が少ないものとなる。溶接部は、溶接後の熱収縮によって径方向に収縮し、外周部ではやや凹み、内周部ではやや内周側に凸状になるが、それらの変形は小さいものであった。内外周部での変形が小さいのは、本実施例における内外周隆起部3、4の形成によるものである。
【0039】
図2は溶接部断面の顕微鏡組織写真(100倍)を示す図である。厚み方向での組織的特徴は、溶接最終層近傍(a)が粗粒を有するのに対して、最終層近傍以外は微細な結晶組織を呈していた(b)。
【0040】
表2は溶接部の引張試験及び衝撃試験の結果を示すものである。初層、最終層近傍において、延性、靭性が低い傾向にあり、特に最終層近傍で低下量が大きかった。溶接部の初層及び最終層近傍は、機械的性質が低下しており、ロータ母材からは、欠陥部と同等と考えられる。しかし、本発明の外周側隆起部4を有するものでは、最終層近傍を切削除去することができ、最終層近傍の無い基部と同じ高さのものを得ることができる。
【0041】
【表2】
図3は、溶接部表面に欠陥が存在する場合、開先部の隆起構造が疲労強度の保持に有効か否かを評価するため、人口欠陥を導入した疲労試験に用いた試験片形状を示す平面図である。平行部径6mmの試験片(a)を基準とし、平滑面から0.5mmの隆起構造部に0.5mm、稜角90°のVノッチを環状に導入したもの(b)、直径7mmの平滑平行部中央に深さ0.5mm、稜角90°のVノッチを環状に導入したもの(c)のそれぞれを試験した。
【0042】
図4は、回転曲げ疲労試験結果を示す線図である。本発明の隆起構造を有する試験片(b)の破断位置はR部であり、ほぼ母材(a)と同等の疲労強度を有していたが、隆起構造を持たない試験片(c)は母材強度より低下しており、隆起構造が欠陥の存在に対して有効に働いていた。
【0043】
図5は、本発明の隆起構造を有する試験片の溶接部の表曲げ及び側曲げ試験結果を示す図である。いずれの曲げ試験においても割れは認められず良好な溶接部を形成していた。
【0044】
本実施例の溶接部について非破壊検査(磁紛探傷試験、浸透探傷試験、超音波探傷試験)の結果、初層部では裏波にやや不完全な溶接部分が有ったが、初層部以降の溶接中央部には欠陥が認められなかった。
【0045】
本実施例の外周側隆起部4の曲率半径R5部は、積層溶接における最終溶接によって形成される約5mm程度の熱影響部がかからないものであり、更に、内周側隆起部3の曲率半径R5部も積層溶接における初層溶接によって形成される熱影響部がかからないものであり、いずれも応力集中は曲率半径R5の部分にかかり、熱影響部にはかからない充分な幅と高さを有するものであった。
【0046】
その結果、従来の溶接構造では溶接熱影響部に応力集中がかかり、その部分での疲労強度が低いためにその部分での設計強度にて設計せざるを得ないものであったが、本発明においては溶接熱影響部に応力集中がかかる位置を内外周側隆起部の曲率半径R部にすることができることからタービンロータ材の母材での強度設計ができることからより蒸気条件の高温高圧化、発電プラントの大出力化に対応することができる。
【0047】
以上のように、本実施例によれば、積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部に応力集中がかからず、又、初層溶接部に形成される熱影響部への応力集中がかからず、高い疲労強度を有する分割構造型の蒸気タービン溶接ロータを作製することができ、それを用いることによって蒸気条件の高温高圧化、発電プラントの大出力化に対応することができる。
【0048】
又、溶接構造とすることで、突合せ面を中空化できることからロータ重量を軽くでき、又、熱応力を低減できることから起動停止を急速に行えるのでプラントの運用性を高めることができる。
【実施例2】
【0049】
図6は本発明に係る低圧複流蒸気タービン用溶接ロータの断面図である。本低圧複流蒸気タービン用溶接ロータロータは、左右対称に6段のタービン動翼が植え込まれる構造を有し、その中央部から左右に蒸気が流入される複流型である。本実施例では、最終段以外のタービン動翼が植え込まれる中央部の蒸気流入側ロータ12に対してその両側に最終段タービン動翼が植え込まれるジャーナル部を有する最終段落側ロータ11、13が夫々溶接部16、17で溶接接合する構造を有するものである。
【0050】
本実施例の継手部の構造は前述の実施例1と同様の構造を有し、中空部14、15を形成して軽量化を図っている。又、蒸気流入側ロータ12及び最終段落側ロータ11、13のいずれも表1の3〜4%Ni−Cr−Mo−V鋼を用い、実施例1のTIG溶接と同様の条件で溶接部16、17で接合した。本実施例の外周側隆起部4は、3層の積層溶接層によって形成されたものである。本実施例の蒸気タービン用溶接ロータは、中空部8以外は中実であるが、径方向中心部に軸方向全体に亘って中空部14,15の径より小さい中心孔を形成することができ、それによってタービンロータ内面の欠陥の検査を行うことができる。
【0051】
本実施例による溶接部16、17は、それらの外周部では、熱収縮によって緩やかにやや凹んだ形状を有し、その溶接のままでも良い。又、その凹んだ部分を含め溶接部の最終層部分を含めて全体を胴部に対して平行になるように切削加工するのも良い。切削加工においては、切削後には溶接部の最終層が残らない高さの外周側隆起部4を設けるようにすることが好ましい。又、この切削加工は、図1に示す外周側隆起部4を設けることによって胴部全体を切削加工することなく、外周側隆起部4についてのみ行うことができるので、その切削量が少ないこと等、製造が容易である。
【0052】
本実施例の溶接部について非破壊検査の結果、初層部での欠陥が少なく、一方、初層部以降の溶接中央部にはほぼ欠陥が認められなかった。
【0053】
又、本実施例の外周側隆起部の曲率半径R部は、積層溶接における最終溶接によって形成される約5mm程度の熱影響部がかからないものであり、更に、内周側隆起部の曲率半径R部も積層溶接における初層溶接によって形成される熱影響部がかからないものであり、いずれも応力集中は曲率半径にかかり、熱影響部にはかからない充分な幅を有するものであった。
【0054】
以上のように、本実施例によれば、実施例1と同様に積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部に応力集中がかからず、又、初層溶接部に形成される熱影響部への応力集中がかからず、高い疲労強度を有する分割構造型の蒸気タービン溶接ロータを作製することができ、それを用いることによって蒸気条件の高温高圧化、発電プラントの大出力化に対応することができるものである。
【0055】
ロータの長さ、分割数、胴部径は蒸気タービンの出力及び回転数により変わるが、種々のロータ形状に対して、同様に溶接接合が可能である。
【実施例3】
【0056】
図7は本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータの継手の全体構造を示す部分断面図(a)及び継手部を示す部分断面図(b)である。タービンロータ21、タービンロータ22が突合せ部28で突き合わされ、開先は、溶接表面が軸面と同一面にならないよう曲率半径R25を有し、タービンロータの内周側に内周側隆起部23、外周側に外周側隆起部24を形成し、狭開先部27をTIG溶接等にて同系ワイヤを溶加材として積層溶接接合する。突合せ部28は実施例1と同様である。
【0057】
本実施例では、一方のタービンロータ22の突合せ部28にバタリング層26を形成するものである。外周面側隆起部24の高さa、内周面側隆起部23の高さbはそれぞれ10mm、開先深さd=100mm、間隔W=12mm、バタリング層幅Y=10mm、ルートフェースe=2mm、ルート間隔は0mmとし、平滑部の突合せ及びインロー構造としても良い。表3は母材及び溶接ワイヤの化学組成(重量%)を示し、残部Feである。他の要件は、実施例1と同様である。
【0058】
【表3】
図8は本発明に係る高低圧一体型タービン用溶接ロータの断面図である。高温側ロータ31と低温側ロータ32の2つに分割され、溶接部34で接合した。継手部の構造は実施例3と同様の構造を有し、継手部は中空部33を形成し、軽量化を図っている。高温側ロータ31は表3の1%Cr−Mo−V系鋼、低温側ロータ32は表3の3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼より構成されている。
【0059】
バタリング層は表3の溶接ワイヤ(バタリング)を用い、高温側ロータ31の軸を横向きにして、突合せ溶接により形成した。バタリング層の形成は、250℃〜300℃に予熱後、パス間温度を400℃以下にして行った。溶接後、400℃に保持して脱水素処理を行い、軸を横切る面で切断後、残留応力除去のため、630℃に昇温して保持した。バタリング層の組成は、母材に比較してC量を0.02〜0.06%、Mo量を0.8〜1.1%と少なくし、Si量を0.3〜0.6%、Mn量を0.9〜1.3%、Cr量を2.0〜2.5%と多くし、Niを含まないものである。
【0060】
図9は、バタリング層を形成する際のタービンロータ向きによるバタリング層組織の相違を模式的に示す断面図である。図9(a)は、タービンロータを縦向きにして積層溶接したときのバタリング層組織35を示し、溶接パス界面はタービンロータ軸を横切る方向に形成される。図9(b)はタービンロータを横向きにして積層したときのバタリング層組織36を示し、溶接パス界面はロータ軸と平行に形成される。そして、バタリング層組織36は、タービンロータ軸の曲げ応力に抗するには、溶接パス界面がロータ軸と平行になることがより好ましい。
【0061】
タービンロータ41、タービンロータ42が突合せ部48で突き合わされ、開先は、溶接表面が軸面と同一面にならないよう曲率半径R46を有し、タービンロータの内周側に内周側隆起部47、外周側に外周側隆起部45を形成し、狭開先部をTIG溶接等にて同系ワイヤを溶加材として積層溶接接合する。突合せ部48は実施例1と同様である。バタリング層の形成は、250℃〜300℃に予熱後、パス間温度を400℃以下にして行った。溶接後、400℃に保持して脱水素処理を行い、軸を横切る面で切断後、残留応力除去のため、630℃に昇温して保持した。
【0062】
本実施例では、実施例1と同様に狭開先形状に加工後、積層溶接による突合せ溶接により実施例1のTIG溶接と同様の条件で溶接部34で接合した。積層溶接は250℃〜300℃に予熱後、パス間温度を400℃以下にして行った。溶接後、400℃に保持して脱水素処理を行い、残留応力除去のため、570℃に昇温して保持した。溶接ワイヤの組成は実施例1と同様の組成を有し、低温側ロータ32の3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼に対して同様の関係を有するものである。本実施例の蒸気タービン用溶接ロータは、中空部33以外は中実であるが、径方向中心部に軸方向全体に亘って中空部33の径より小さい中心孔を形成することができ、それによってタービンロータ内面の欠陥の検査を行うことができる。
【0063】
図10は、バタリング層の形成方法を模式的に示す断面図である。図10(a)はタービンロータ42に対して図9に示すタービンロータ41の開先形状と同様の形状に加工したタービンロータとは異なる開先部近傍だけを形成した部材49を突合せて横向きにしたもの、図10(b)は部材49とタービンロータ42とを回転させながら積層溶接しバタリング層となる溶接層44’を形成したもの、図10(c)はタービンロータ42側にバタリング層44を残して切断し、開先形状に切削加工したもの、図10(d)は実際のタービンロータ41、42と突合せて実施例3と同様に積層溶接を行うものである。開先形状は実施例1と同様である。部材49には炭素鋼等を用いることができる。
【0064】
本実施例の継手部の構造は前述の実施例1と同様の構造を有し、中空部33を形成して軽量化を図っている。本実施例による溶接部34は、それらの外周部では、熱収縮によって緩やかにやや凹んだ形状を有し、その溶接のままでも良いが、その凹んだ部分を含め、又、溶接部の最終層部分を含めて全体を胴部に対して平行になるように切削加工するのが好ましい。この切削加工は、外周側隆起部45を設けることによって胴部全体を切削加工することなく、外周側隆起部45についてのみ行うことができるので、その切削量が少ないこと等、製造が容易である。
【0065】
本実施例の溶接部について非破壊検査の結果、初層部での欠陥が少なく、一方、初層部以降の溶接中央部にはほぼ欠陥が認められなかった。
【0066】
本実施例においても、実施例1と同様に、積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部に応力集中がかからず、又、初層溶接部に形成される熱影響部への応力集中がかからず、高い疲労強度を有する分割構造型の蒸気タービン溶接ロータを作製することができ、それを用いることによって蒸気条件の高温高圧化、発電プラントの大出力化に対応することができるものである。
【0067】
高温側ロータ31を1%Cr−Mo−V系鋼に代えて12%Cr系鋼と溶接ロータで構成した場合も、良好な溶接結果が得られた。
【実施例4】
【0068】
図11は本発明に係る異なる材料を組み合わせた高圧蒸気タービン及び高中圧蒸気タービン用溶接ロータの継手部を示す断面図である。狭開先部58には、バタリング層が無いものである。溶接表面が軸面と同一面にならないよう曲率半径R55を有し、ロータの内周側隆起部56、外周側隆起部57を形成して狭開先部58をTIG溶接等にて母材と同等の組成を有する溶接ワイヤを溶加材として積層溶接接合する。表4は母材及び溶接ワイヤの化学組成(重量%)を示し、残部がFeである。
【0069】
【表4】
【0070】
図12は本発明に係る高圧蒸気タービン用溶接ロータの断面図である。図12に示すように、高温側ロータ61、低温側ロータ62、高温側ロータ61に接続された軸受部63の3つに分割され、各々が溶接部66、67で接合される。継手部は中空部64、65が形成され、軽量化を図っている。高温側ロータ61は表4の12%Cr系鋼、低温側ロータ62及び軸受部63は表4の1%Cr−Mo−V系鋼より構成されている。
【0071】
狭開先部には、バタリング層が無く、溶接表面が軸面と同一面にならないよう曲率半径Rを有し、高温側ロータ61、低温側ロータ62、軸受部63の内周側には図11に示す内周側隆起部56及び外周側に外周側隆起部57が形成され、狭開先部をTIG溶接等にて表4に示す溶接ワイヤを溶加材として実施例1と同様に積層溶接接合する。積層溶接は250℃〜300℃に予熱後、パス間温度を400℃以下にして行った。その溶接後、400℃に保持して脱水素処理を行い、残留応力除去のため、630℃に昇温して保持した。溶接ワイヤの組成は、低温側ロータ62及び軸受部63の母材に比較してC量を0.02〜0.06%、Mo量を0.8〜1.1%と少なくし、Si量を0.3〜0.6%、Mn量を0.9〜1.3%、Cr量を2.0〜2.5%と多くし、Niを含まないものである。
【0072】
図13は、高中圧蒸気タービン用溶接ロータの断面図である。図13に示すように、高温側ロータ71とそれぞれの後側段落に接続された低温側ロータ72、73の3つに分割され、溶接部76、77で接合される。継手部は中空部74、75が形成され、軽量化を図っている。高温側ロータ71は表4の12%Cr系鋼、低温側ロータ72、73は表4の1%Cr-Mo-V系鋼より構成されている。
【0073】
ルートフェース底部がI型の狭開先部には、バタリング層が無く、溶接表面が軸面と同一面にならないよう曲率半径Rを有し、図11に示すように、タービンロータの内周側に内周側隆起部53、外周側に外周側隆起部57を形成して狭開先部をTIG溶接等にて表4に示す溶接ワイヤを溶加材として実施例1と同様に積層溶接接合する。積層溶接は250℃〜300℃に予熱後、パス間温度を400℃以下にして行った。溶接後、400℃に保持して脱水素処理を行い、残留応力除去のため、630℃に昇温して保持した。溶接ワイヤの組成は、低温側ロータ72、73の母材に比較してC量を0.02〜0.06%、Mo量を0.8〜1.1%と少なくし、Si量を0.3〜0.6%、Mn量を0.9〜1.3%、Cr量を2.0〜2.5%と多くし、Niを含まないものである。
【0074】
本実施例のいずれの蒸気タービン用溶接ロータにおいても、中空部を有する以外は中実であるが、径方向中心部に軸方向全体に亘って中空部の径より小さい中心孔を形成することができ、それによってタービンロータ内面の欠陥の検査を行うことができる。
【0075】
本実施例の溶接部について非破壊検査の結果、初層部での欠陥が少なく、初層部以降の溶接中央部にはほぼ欠陥が認められなかった。又、実施例1と同様に、積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部に応力集中がかからず、又、初層溶接部に形成される熱影響部への応力集中がかからず、高い疲労強度を有する分割構造型の蒸気タービン溶接ロータを作製することができ、それを用いることによって蒸気条件の高温高圧化、発電プラントの大出力化に対応することができるものである。
【実施例5】
【0076】
本実施例は、実施例2〜4のいずれかに記載の蒸気タービン用溶接ロータを高低圧一体型蒸気タービン、高圧蒸気タービン、高中圧一体型蒸気タービン及び低圧蒸気タービンの各々のロータに用いた蒸気タービン発電プラントを構成するものである。
【0077】
高低圧一体型蒸気タービンは、高圧側(HP)と低圧側(LP)とが一体のタービンロータによって形成され、高圧蒸気がその中央部よりやや片側に設けられたノズルボックスより主蒸気温度が500℃以上の蒸気がHP側の初段である調速段のタービン動翼に導かれ、HPの7段のタービン動翼を通ってLPの10段のタービン動翼に導入される蒸気タービン発電プラントを構成することができる。これらのタービン動翼に対応して各々静翼が設けられる。タービンロータは、実施例3の図8に示す蒸気タービン用溶接ロータが用いられ、軸部と、軸部に連なる胴部とを有し、胴部の軸方向にタービン動翼が植設される複数のディスク部を有し、このディスク部は軸方向に沿った翼溝が形成され、翼溝は調速段を含め全タービン動翼が植え込まれる翼根元部の断面形状と相似形の断面形状を有する。
【0078】
高圧蒸気タービン(HP)は、タービン動翼の初段が調速段で複流であり、片側に9段有し、これらのタービン動翼に対応して各々静翼が設けられる。タービンロータは、実施例4の図11に示す蒸気タービン用溶接ロータが用いられ、軸部と、軸部に連なる胴部とを有し、胴部の軸方向にタービン動翼が植設される複数のディスク部が形成されている。このディスク部は軸方向に沿った翼溝が形成され、翼溝は初段である調速段を含め全タービン動翼が植え込まれる翼根元部の断面形状と相似形の断面形状を有する。また、本実施例においては、中圧タービン(IP)及び低圧蒸気タービン(LP)が連結され、(HP)−(IP)−発電機とLP2台−発電機、又、(HP)−(LP)−発電機と(IP)-(LP)−発電機の組み合わせによって主蒸気温度500℃以上の蒸気タービン発電プラントを構成することができる。
【0079】
高中圧一体型蒸気タービンは、高圧部(HP)と中圧部(IP)とが一体のタービンロータによって形成され、高圧蒸気がその中央部に設けられたノズルボックスよりHP側の初段である調速段のタービン動翼に導かれ、HPの8段のタービン動翼を通ってIPの6段のタービン動翼に導入される。これらのタービン動翼に対応して各々静翼が設けられる。タービンロータは、実施例4の図12に示す蒸気タービン用溶接ロータが用いられ、軸部と、軸部に連なる胴部とを有し、胴部の軸方向にタービン動翼が植設される複数のディスク部を有し、このディスク部は軸方向に沿った翼溝が形成され、翼溝は調速段を含め全タービン動翼が植え込まれる翼根元部の断面形状と相似形の断面形状を有する。本実施例においては、(HP・IP)と低圧蒸気タービン(LP)1台又は2台で、HPの主蒸気温度は500℃以上、IPの蒸気温度は500℃以上に再熱器によって加熱されて導入され、本蒸気タービンによって回転する発電機を有する蒸気タービン発電プラントを構成することができる。
【0080】
前述の各発電プラントに組み込まれる低圧蒸気タービン(LP)は、そのタービンロータに、実施例2の図6に示す蒸気タービン用溶接ロータが用いられ、軸部と、軸部に連なる胴部とを有し、胴部の軸方向にタービン動翼が植設される複数のディスク部を有し、このディスク部は軸方向に沿った翼溝が形成され、翼溝は調速段を含め全タービン動翼が植え込まれる翼根元部の断面形状と相似形の断面形状を有する。
【0081】
本実施例においては、実施例2〜4における蒸気タービン溶接ロータを用いたときと同様に蒸気タービンとして高温強度が必要な高温域には、高温強度の高いNi基合金、12%Cr鋼、1%Cr−Mo−V鋼のいずれかを用い、靭性が必要な低温域には3〜4%Ni−Cr−Mo−V鋼を用いることができ、高温化、大容量化、より熱効率の高い蒸気タービン発電プラントが得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータの継手の全体構造を示す部分断面図(a)及び継手構造を示す部分断面図(b)である。
【図2】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータの溶接継手部の断面の顕微鏡組織を示す図である。
【図3】疲労試験片の形状を示す平面図である。
【図4】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータの疲労試験結果を示す線図である。
【図5】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータの溶接継手部の曲げ試験結果を示す図である。
【図6】本発明に係る低圧複流タービン用溶接ロータの断面図である。
【図7】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータとしてバタリング層を形成した継手の全体構造を示す部分断面図(a)及び継手構造を示す部分断面図(b)である。
【図8】本発明に係る高低圧一体型蒸気タービン用溶接ロータの断面図である。
【図9】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータにおけるバタリング層の組織を示す模式図である。
【図10】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータにおけるバタリング層の組織を示す模式図である。
【図11】本発明に係る蒸気タービン用溶接ロータとして異材による継手部を示す断面図である。
【図12】本発明に係る高圧蒸気タービン用溶接ロータの断面図である。
【図13】本発明に係る高中圧蒸気タービン用溶接ロータの断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1、2、21、22、51,52…タービンロータ、3、23、47、53…内周側隆起部、4、24、45、57…外周側隆起部、5、25、55…曲率半径R、6、28、48、54…突合せ部、7、27、58…狭開先部、11、13…最終段落側ロータ、12…蒸気流入側ロータ、14、15、33、64,65、74、75…中空部、16、17、34、66、67、76、77…溶接部、26…バタリング層、31、42、61、71…高温側ロータ、32、41、62、72、73…低温側ロータ、43…ロータを縦向きで積層したバタリング層、44…ロータを横向きで積層したバタリング層、49…部材、63…軸受部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個に分割されたタービンロータを突合せ溶接により接続された蒸気タービン溶接ロータにおいて、前記タービンロータの両者の突合せ部は、その中心部に形成された中空部と、その外周側に形成された前記タービンロータの基部面より径方向に対して隆起した外周側隆起部とを有し、前記突合せ部に形成された開先部が積層溶接によって前記突合せ溶接されていることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項2】
請求項1において、前記中空部の内周側に前記タービンロータの基部面より径方向に対して隆起した内周側隆起部を有することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部が前記基部面にかからないような前記外周側隆起部の前記タービンロータの軸方向幅を有することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記積層溶接における初層溶接によって形成される熱影響部が前記基部面にかからないような前記内周側隆起部の前記タービンロータの軸方向幅を有することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記突合せ部の少なくとも一方の全面に前記積層溶接の組成を緩和するバタリング層が形成され、該バタリング層を介して前記積層溶接されていることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記タービンロータの少なくとも一方が、質量で、C0.25〜0.35%、Mn1%以下、Ni1%以下、Cr0.8〜1.5%、Mo1.0〜1.5%、V0.2〜0.3%を含むベーナイト組織を有する1%Cr−Mo−V系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記タービンロータの少なくとも一方が、質量で、C0.1〜0.2%、Mn0.3〜1.0%、Ni1%以下、Cr9〜13%、Mo0.1〜1.5%、W0.2〜3%、Nb0.02〜0.1%、Co3%以下、B0.01%以下を含む全焼戻しマルテンサイト組織を有する12%Cr系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記タービンロータの少なくとも一方が、質量で、Cr12〜20%、Nb1.5〜3.5%、Ti1.5〜2.0%、Al0.2〜1.5%を含むNi基合金、又は、質量で、Cr15〜20%、Mo5〜15%、Ti1.0〜2.0%、Al0.2〜2.0%を含むNi基合金よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記タービンロータの少なくとも一方が、質量で、C0.17〜0.32%、Mn0.20〜0.40%、Ni3〜4%、Cr1.25〜2.0%、Mo0.25〜0.60%、V0.05〜0.15%を含むベーナイト組織を有する3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項10】
高圧蒸気タービン用ロータ、中圧蒸気タービン用ロータ及び高中圧蒸気タービン用ロータのいずれかであって、蒸気温度の高い高温側が請求項7に記載の12%Cr系鋼よりなり、前記温度の低下した低温側及び軸受部の少なくとも一方が請求項6に記載の1%Cr−Mo−V系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項11】
高圧蒸気タービン用ロータ、中圧蒸気タービン用ロータ及び高中圧蒸気タービン用ロータのいずれかであって、蒸気温度の高い高温側が請求項8に記載のNi基超合金よりなり、前記温度の低下した低温側及び軸受部の少なくとも一方が請求項6に記載の1%Cr−Mo−V系鋼又は請求項7に記載の12%Cr系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項12】
高圧ロータ及び中圧ロータのいずれか一方と低圧ロータとを突合せ溶接により接続された高低圧一体型蒸気タービン用ロータ又は中低圧一体型蒸気タービン用ロータであって、前記高圧ロータ及び中圧ロータは請求項6に記載の1%Cr−Mo−V系鋼又は請求項7に記載の12%Cr系鋼よりなり、前記低圧ロータは請求項9に記載の3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項13】
2個に分割された低圧ロータを突合せ溶接により接続された低圧蒸気タービン用ロータであって、前記低圧ロータの両者が、請求項9に記載の3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項14】
少なくとも2個に分割されたタービンロータを突合せ溶接により接続する蒸気タービン溶接ロータの製造方法において、前記タービンロータの突合せ部の中心部に中空部を形成すると共に、前記突合せ部の外周側に前記タービンロータの基部面より隆起した外周側隆起部を形成し、前記突合せ部に形成された開先部を積層溶接することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータの製造方法。
【請求項15】
請求項14において、前記中空部の内周側に前記タービンロータの基部面より隆起した内周側隆起部を形成することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータの製造方法。
【請求項16】
請求項14又は15において、前記タービンロータは互いに材質が異なり、前記積層溶接する前に、前記タービンロータの少なくとも一方の前記突合せ部の全面に前記積層溶接の組成を緩和するバタリング層を形成した後、前記開先部を形成することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータの製造方法。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれかにおいて、前記タービンロータの軸を縦向きにして前記バタリング層を形成し、又は、前記タービンロータ軸を横向きにして回転させながら他の部材との間に溶接金属部を形成する突合せ溶接した後前記タービンロータ軸を径方向で横切る面で前記溶接金属部を残して切断して前記バタリング層を形成し、前記バタリング層の残留応力除去焼鈍を施した後、前記開先部を形成することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータの製造方法。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれかにおいて、前記タービンロータ軸を横向きにして回転させながら他の部材との間に溶接金属部を形成する突合せ溶接した後、前記溶接金属部の残留応力除去焼鈍を施してから前記タービンロータ軸を径方向で横切る面で前記溶接金属部を残して切断し、次いで前記開先部を形成することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータの製造方法。
【請求項19】
タービン動翼と、該動翼を複数の段落に植設するタービンロータとを有する蒸気タービンにおいて、前記タービンロータが、請求項1〜13のいずれかに記載の蒸気タービン溶接ロータのいずれか又は請求項14〜18のいずれかに記載の蒸気タービン溶接ロータの製造法のいずれかによって製造された蒸気タービン溶接ロータで構成されていることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項20】
高圧蒸気タービン-中圧蒸気タービン-低圧蒸気タービン、高中圧一体型蒸気タービン-低圧蒸気タービン、及び高低圧一体型蒸気タービンのいずれかと発電機とを有し、前記高圧蒸気タービン、中圧蒸気タービン、高中圧一体型蒸気タービン、高低圧一体型蒸気タービン及び低圧蒸気タービンのいずれかが請求項19に記載の蒸気タービンよりなることを特徴とする蒸気タービン発電プラント。
【請求項1】
少なくとも2個に分割されたタービンロータを突合せ溶接により接続された蒸気タービン溶接ロータにおいて、前記タービンロータの両者の突合せ部は、その中心部に形成された中空部と、その外周側に形成された前記タービンロータの基部面より径方向に対して隆起した外周側隆起部とを有し、前記突合せ部に形成された開先部が積層溶接によって前記突合せ溶接されていることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項2】
請求項1において、前記中空部の内周側に前記タービンロータの基部面より径方向に対して隆起した内周側隆起部を有することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記積層溶接における最終溶接によって形成される熱影響部が前記基部面にかからないような前記外周側隆起部の前記タービンロータの軸方向幅を有することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記積層溶接における初層溶接によって形成される熱影響部が前記基部面にかからないような前記内周側隆起部の前記タービンロータの軸方向幅を有することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記突合せ部の少なくとも一方の全面に前記積層溶接の組成を緩和するバタリング層が形成され、該バタリング層を介して前記積層溶接されていることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記タービンロータの少なくとも一方が、質量で、C0.25〜0.35%、Mn1%以下、Ni1%以下、Cr0.8〜1.5%、Mo1.0〜1.5%、V0.2〜0.3%を含むベーナイト組織を有する1%Cr−Mo−V系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記タービンロータの少なくとも一方が、質量で、C0.1〜0.2%、Mn0.3〜1.0%、Ni1%以下、Cr9〜13%、Mo0.1〜1.5%、W0.2〜3%、Nb0.02〜0.1%、Co3%以下、B0.01%以下を含む全焼戻しマルテンサイト組織を有する12%Cr系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記タービンロータの少なくとも一方が、質量で、Cr12〜20%、Nb1.5〜3.5%、Ti1.5〜2.0%、Al0.2〜1.5%を含むNi基合金、又は、質量で、Cr15〜20%、Mo5〜15%、Ti1.0〜2.0%、Al0.2〜2.0%を含むNi基合金よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記タービンロータの少なくとも一方が、質量で、C0.17〜0.32%、Mn0.20〜0.40%、Ni3〜4%、Cr1.25〜2.0%、Mo0.25〜0.60%、V0.05〜0.15%を含むベーナイト組織を有する3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項10】
高圧蒸気タービン用ロータ、中圧蒸気タービン用ロータ及び高中圧蒸気タービン用ロータのいずれかであって、蒸気温度の高い高温側が請求項7に記載の12%Cr系鋼よりなり、前記温度の低下した低温側及び軸受部の少なくとも一方が請求項6に記載の1%Cr−Mo−V系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項11】
高圧蒸気タービン用ロータ、中圧蒸気タービン用ロータ及び高中圧蒸気タービン用ロータのいずれかであって、蒸気温度の高い高温側が請求項8に記載のNi基超合金よりなり、前記温度の低下した低温側及び軸受部の少なくとも一方が請求項6に記載の1%Cr−Mo−V系鋼又は請求項7に記載の12%Cr系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項12】
高圧ロータ及び中圧ロータのいずれか一方と低圧ロータとを突合せ溶接により接続された高低圧一体型蒸気タービン用ロータ又は中低圧一体型蒸気タービン用ロータであって、前記高圧ロータ及び中圧ロータは請求項6に記載の1%Cr−Mo−V系鋼又は請求項7に記載の12%Cr系鋼よりなり、前記低圧ロータは請求項9に記載の3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項13】
2個に分割された低圧ロータを突合せ溶接により接続された低圧蒸気タービン用ロータであって、前記低圧ロータの両者が、請求項9に記載の3〜4%Ni−Cr−Mo−V系鋼よりなることを特徴とする蒸気タービン溶接ロータ。
【請求項14】
少なくとも2個に分割されたタービンロータを突合せ溶接により接続する蒸気タービン溶接ロータの製造方法において、前記タービンロータの突合せ部の中心部に中空部を形成すると共に、前記突合せ部の外周側に前記タービンロータの基部面より隆起した外周側隆起部を形成し、前記突合せ部に形成された開先部を積層溶接することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータの製造方法。
【請求項15】
請求項14において、前記中空部の内周側に前記タービンロータの基部面より隆起した内周側隆起部を形成することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータの製造方法。
【請求項16】
請求項14又は15において、前記タービンロータは互いに材質が異なり、前記積層溶接する前に、前記タービンロータの少なくとも一方の前記突合せ部の全面に前記積層溶接の組成を緩和するバタリング層を形成した後、前記開先部を形成することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータの製造方法。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれかにおいて、前記タービンロータの軸を縦向きにして前記バタリング層を形成し、又は、前記タービンロータ軸を横向きにして回転させながら他の部材との間に溶接金属部を形成する突合せ溶接した後前記タービンロータ軸を径方向で横切る面で前記溶接金属部を残して切断して前記バタリング層を形成し、前記バタリング層の残留応力除去焼鈍を施した後、前記開先部を形成することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータの製造方法。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれかにおいて、前記タービンロータ軸を横向きにして回転させながら他の部材との間に溶接金属部を形成する突合せ溶接した後、前記溶接金属部の残留応力除去焼鈍を施してから前記タービンロータ軸を径方向で横切る面で前記溶接金属部を残して切断し、次いで前記開先部を形成することを特徴とする蒸気タービン溶接ロータの製造方法。
【請求項19】
タービン動翼と、該動翼を複数の段落に植設するタービンロータとを有する蒸気タービンにおいて、前記タービンロータが、請求項1〜13のいずれかに記載の蒸気タービン溶接ロータのいずれか又は請求項14〜18のいずれかに記載の蒸気タービン溶接ロータの製造法のいずれかによって製造された蒸気タービン溶接ロータで構成されていることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項20】
高圧蒸気タービン-中圧蒸気タービン-低圧蒸気タービン、高中圧一体型蒸気タービン-低圧蒸気タービン、及び高低圧一体型蒸気タービンのいずれかと発電機とを有し、前記高圧蒸気タービン、中圧蒸気タービン、高中圧一体型蒸気タービン、高低圧一体型蒸気タービン及び低圧蒸気タービンのいずれかが請求項19に記載の蒸気タービンよりなることを特徴とする蒸気タービン発電プラント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−278064(P2007−278064A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101316(P2006−101316)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]