説明

薄板製造装置および薄板製造方法

【課題】薄板の単位時間当たりの製造量を維持し、不活性ガスの使用量の削減と、真空排気系および搬送系の簡素化を実現できる薄板製造装置および薄板製造方法を提供する。
【解決手段】薄板製造装置1000は、浸漬機構1100と、下地板交換機構1003と、薄板分離機構1200と、主室1010とを備えている。浸漬機構1100は、融液1002に下地板Sの表面を浸漬し、下地板Sの表面に融液1002が凝固することにより薄板Pを形成する。下地板交換機構1003は、表面上に薄板Pが付着された下地板Sを浸漬機構1100から取り外す。薄板分離機構1200は、薄板Pを浸漬機構1100から取り外された下地板Sから分離する。主室1010は、浸漬機構1100と下地板交換機構1003と薄板分離機構1200とが内部に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板製造装置および薄板製造方法に関し、特に、下地板上に薄板を形成する薄板製造装置および薄板製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の薄板製造装置および薄板製造方法の一例として、たとえば国際公開第2004/003262号パンフレット(特許文献1)に開示の薄板製造装置および薄板製造方法が挙げられる。特許文献1に開示の薄板製造装置2000においては、図9に示すように、主室2010内に坩堝2001が配置され、坩堝2001中にシリコン融液2002が貯留され、シリコン融液2002に下地板Sの表層部を浸漬させる浸漬機構2100が配置されている。主室2010は不活性ガス雰囲気に保持されている。主室2010に、搬入用副室2020と搬出用副室2030とが隣接して設置されている。なお、図9は、一の従来の薄板製造装置を示す概略図である。
【0003】
また、特許文献1に開示の薄板製造方法は、以下の工程により行なわれる。まず、下地板Sが、薄板製造装置2000の外部から、大気開放された搬入用副室2020に搬入される。次いで、搬入用副室2020は真空引きされ、主室2010と同等の不活性ガス雰囲気に置換される。その後、下地板Sはゲートバルブ2021を通り、主室2010に搬入される。主室2010内で、下地板Sは浸漬機構2100に装着される。その後、下地板Sは温度調整される。次いで、浸漬機構2100は下地板Sを融液2002上に搬送し、下地板Sの表面を融液2002に浸すことで、下地板Sの表面上に薄板Pを作製する。作製された薄板Pは、下地板S上に載ったまま、浸漬機構2100から取り外され、ゲートバルブ2031を通り、主室2010と同等の不活性ガス雰囲気に置換された搬出用副室2030に搬送される。次いで、搬出用副室2030は大気開放され、薄板Pおよび下地板Sは装置外に搬出される。
【0004】
また、従来の薄板製造装置および薄板製造方法の他の例として、たとえば特開2003−59849号公報(特許文献2)に開示の薄板製造装置および薄板製造方法が挙げられる。特許文献2に開示の薄板製造装置3000は、図10に示すように、図9に示す主室2010内に坩堝3001が配置され、坩堝3001中にシリコン融液3002が貯留され、シリコン融液3002に下地板Sの表層部を浸漬させる浸漬機構3100が配置されている。下地板Sは、浸漬機構3100に装着される。具体的には、浸漬機構3100は、下地板Sを掴み、その傾斜角度を調整できる土台が横行するための横行レール3112と、横行レール3112を昇降レール3122に沿って昇降させる昇降機構3121によって、下地板Sを自由に横行、昇降、傾斜できる機構である。なお、図10は、他の従来の薄板製造装置を示す概略図である。
【0005】
特許文献2に開示の薄板製造方法は、以下の工程により行なわれる。まず、下地板Sを温度調整する。次いで、浸漬機構3100は下地板Sをシリコン融液3002上に搬送し、下地板Sの表面をシリコン融液3002に浸すことで、下地板Sの表面上に薄板Pを作製する。作製された薄板Pは、下地板S上に載ったまま、坩堝3001直上から外れた場所へ搬送される。その位置で、薄板Pは下地板Sから取り外される。そして、下地板Sをそのまま温度調整する位置に戻し、次の薄板製造に使用する。
【特許文献1】国際公開第2004/003262号パンフレット
【特許文献2】特開2003−59849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の薄板製造方法および薄板製造装置では、薄板Pの1枚の製造ごとに1枚の下地板Sの搬入と搬出とが必要である。すなわち、下地板Sを薄板製造装置2000内に搬入する際に、搬入用副室2020を通して搬入する必要がある。また、薄板Pを製造したあと、薄板Pと下地板Sとをまとめて、搬出用副室2030を通して搬出する必要がある。これら2つの副室は毎回不活性ガス雰囲気に置換されるため、薄板を1枚製造するごとに、下地板2枚分の搬入出に必要な副室容積に相当する不活性ガスを消費することになる。
【0007】
また、薄板生産量(薄板製造時間)を悪化させないようにするためには、下地板Sの搬入出を行う副室動作は浸漬機構2100の動作に遅れないように設計する必要がある。そのためには、2つの副室の動作時間に関わる機構の性能を向上させる必要がある。具体的には、真空排気性能と搬送性能とを向上する必要があり、そのためには非常に大きな導入コスト、維持労力、設置面積が必要となる。
【0008】
さらに、性能向上でも足りない場合は、下地板Sを複数枚同時に搬送すること、薄板Pおよび下地板Sの搬出の際に複数枚同時に搬出すること、および浸漬機構2100への取り付け前後にバッファを用意することなどで、1枚あたりの薄板製造時間を悪化させない方法をとる必要がある。具体的には、下地板Pおよび薄板Sの装着と取り外しとを同時に行う場合には、薄板1枚あたりの作製時間は、下地板Sの交換時間と、温度調整時間と、浸漬動作時間との合計となる。なお、下地板Sは、薄板製造装置外に出た後には、メンテナンスや清掃、および新品の下地板との交換が行われる。しかし、この場合も副室体積(設置面積)が非常に増大する。よって、薄板製造時間を維持するためには、副室のコストおよび面積を増大する必要が発生する。
【0009】
また、特許文献2に開示の薄板製造方法および薄板製造装置では、下地板Sが浸漬機構3100に装着されている状態で、薄板Pは下地板Sから分離される。この場合、1枚の薄板の製造時間は、温度調整時間と浸漬動作時間と薄板分離時間との合計となる。しかしながら、薄板Pを破損することなく下地板Sから分離するためには、下地板Sの交換時間より大幅な時間が必要と想定される。すなわち、この場合は薄板製造時間が必ず増大してしまうという課題が生じる。
【0010】
さらに、下地板Sは浸漬機構3100に固定されているため、下地板Sのメンテナンスや交換する必要が生じた場合は人手によって作業する必要があるが、浸漬機構3100は不活性ガス雰囲気の主室内に設置されているため、容易に作業ができない。すなわち、主室内の坩堝加熱機構への電力供給を中止し、シリコン融液3002の保持を中止し、主室を大気に置換し、主室内の浸漬機構3100を人が直接扱える状態にする必要がある。また、薄板の作製を再開するためには、少なくとも、主室の真空引き、不活性ガス置換、および原料の再溶解による融液作製を行う必要がある。そのため、下地板Sのメンテナンスおよび交換に時間が長時間必要となり、薄板の生産性が低下するという問題がある。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明は、薄板の単位時間当たりの製造量を維持しながら、不活性ガスの使用量の削減を実現でき、真空排気系および搬送系の簡素化を実現できる薄板製造装置および薄板製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の薄板製造装置によれば、浸漬機構と、下地板交換機構と、薄板分離機構と、主室とを備えている。浸漬機構は、融液に下地板の表面を浸漬し、下地板の表面に融液が凝固することにより薄板を形成する。下地板交換機構は、表面上に薄板が付着された下地板を浸漬機構から取り外す。薄板分離機構は、薄板を浸漬機構から取り外された下地板から分離する。主室は、浸漬機構と下地板交換機構と薄板分離機構とが内部に配置される。
【0013】
本発明の薄板製造装置は、主室内において、浸漬機構により下地板の表面に薄板を形成して、下地板交換機構により薄板が付着された下地板を取り外し、薄板分離機構により薄板を下地板から分離して、薄板を製造できる。そのため、1枚の薄板を製造するごとに、下地板の搬入出に必要な不活性ガスを消費しない。よって、薄板の単位時間当たりの製造量を維持するとともに、不活性ガスの使用量の削減を実現できる。また、下地板を外部に搬入出する回数を減少できるので、真空排気系および搬送系の性能を簡略化できる。よって、薄板の単位時間当たりの製造量を維持するとともに、真空排気系および搬送系の簡素化を実現できる。
【0014】
上記薄板製造装置において好ましくは、主室内に配置され、浸漬機構により形成される薄板が付着した下地板を載置できる分離前下地板バッファをさらに備える。
【0015】
これにより、主室内において、薄板が付着された下地板の薄板分離機構への装着待ちが可能となる。そのため、薄板の単位時間当たりの製造量を向上できる。
【0016】
上記薄板製造装置において好ましくは、主室内に配置され、薄板分離機構により薄板を分離した下地板を、主室外に搬出する使用済下地板と、浸漬機構に搬出する再使用下地板とに判別する下地板判別機構をさらに備える。
【0017】
これにより、メンテナンスまたは交換を行なう必要がある下地板(使用済下地板)と、メンテナンスを行なわずに再度浸漬機構に装着できる下地板(再利用下地板)とを判別できる。そのため、主室内で下地板を有効に再利用して、下地板の搬入出を減少できるので、下地板の搬入出に伴う不活性ガスの使用量をより削減できる。
【0018】
上記薄板製造装置において好ましくは、主室内に配置され、下地板判別機構により判別される使用済下地板を載置できる下地板待機バッファをさらに備える。
【0019】
これにより、下地板の浸漬機構への装着待ちによって薄板製造数が低下することを防止できる。また、薄板を1枚製造するごとに主室外から下地板を搬入する必要がないので、主室内で連続して薄板を製造できる。よって、薄板の単位時間当たりの製造量を向上するとともに、不活性ガスの使用量をより削減できる。
【0020】
上記薄板製造装置において好ましくは、主室内に配置され、下地板判別機構により判別される再使用下地板を載置できる装着前下地板バッファをさらに備える。
【0021】
これにより、下地板の搬入出に要する時間を削減できるので、真空排気系および搬送系の装置規模の削減を実現できる。
【0022】
上記薄板製造装置において好ましくは、主室内に配置され、薄板分離機構により分離される薄板を載置できる薄板ストッカをさらに備える。
【0023】
これにより、製造される薄板の搬出に要する時間を削減できるので、真空排気系および搬送系の装置規模の削減を実現できる。
【0024】
本発明の薄板製造方法によれば、融液に下地板の表面を浸漬し、下地板の表面に融液が凝固することにより薄板を形成する薄板製造方法であって、浸漬工程と、取出工程と、分離工程と、再浸漬工程とを備える。浸漬工程は、融液に下地板を浸漬する。取出工程は、浸漬工程において薄板が付着した下地板を取り出す。分離工程は、取出工程において取り出された下地板から薄板を分離する。再浸漬工程は、分離工程において分離された下地板を再度融液に浸漬する。浸漬工程と取出工程と分離工程と再浸漬工程とは主室内で実施される。
【0025】
本発明の薄板製造方法は、主室内において、浸漬工程により下地板の表面に薄板を形成して、取出工程により薄板が付着された下地板を取り外し、分離工程により薄板を下地板から分離して薄板を製造でき、再浸漬工程により連続して浸漬を行なう。そのため、1枚の薄板を製造するごとに、下地板の搬入出に必要な不活性ガスを消費しない。よって、薄板の単位時間当たりの製造量を維持するとともに、不活性ガスの使用量の削減を実現できる。また、外部に下地板を搬入出する回数を減少できるので、真空排気系および搬送系の性能を簡略化できる。よって、薄板の単位時間当たりの製造量を維持するとともに、真空排気系および搬送系の簡素化を実現できる。
【0026】
上記薄板製造方法において好ましくは、分離工程において分離された下地板を主室外に搬出する下地板搬出工程をさらに備える。これにより、メンテナンスが必要な下地板を主室外に搬出できる。
【0027】
上記薄板製造方法において好ましくは、下地板搬出工程は、複数の下地板を主室外に搬出する工程を含む。これにより、メンテナンスが必要な下地板をまとめて主室外に搬出できるので、薄板の製造効率が向上する。
【0028】
上記薄板製造方法において好ましくは、融液の原料を追装する追装工程をさらに備え、追装工程を実施する際に、下地板搬出工程を実施する。
【0029】
これにより、さらに連続して薄板を製造できるので、薄板の単位時間当たりの製造量を向上するとともに、真空排気系および搬送系のさらなる簡素化を実現できる。
【0030】
上記薄板製造方法において好ましくは、分離工程において分離された複数枚の薄板を主室外に搬出する薄板搬出工程をさらに備え、追装工程を実施する際に、薄板搬出工程を実施する。
【0031】
これにより、薄板の搬出に要する時間をさらに短縮できる。そのため、薄板の単位時間当たりの製造量を向上するとともに、真空排気系および搬送系のさらなる簡素化を実現できる。
【0032】
上記薄板製造方法において好ましくは、分離工程において分離された複数枚の薄板を主室外に搬出する薄板搬出工程をさらに備える。複数枚の薄板を搬出することにより、薄板の製造効率を向上できる。
【0033】
上記薄板製造方法において好ましくは、融液の原料を追装する追装工程をさらに備え、融液追加工程を実施する際に、薄板搬出工程を実施する。これにより、さらに連続して薄板を製造できるので、薄板の単位時間当たりの製造量を向上するとともに、真空排気系および搬送系のさらなる簡素化を実現できる。
【0034】
上記薄板製造方法において好ましくは、取出工程と分離工程との間に実施され、取出工程において取り出される薄板が付着した下地板を主室内に配置された分離前下地板バッファに載置する分離前下地板載置工程をさらに備える。
【0035】
これにより、主室内において、薄板が付着された下地板の薄板分離機構への装着待ちが可能となる。そのため、薄板の単位時間当たりの製造量を向上できる。
【0036】
上記薄板製造方法において好ましくは、分離工程と再浸漬工程との間に実施され、分離工程において分離された下地板を主室内に配置された装着前下地板バッファに載置する装着前下地板載置工程をさらに備える。
【0037】
これにより、下地板の搬入出に要する時間を削減できるので、真空排気系および搬送系の装置規模の削減を実現できる。
【0038】
上記薄板製造方法において好ましくは、主室内で、分離工程により薄板を分離した下地板を、主室外に搬出する使用済下地板と、浸漬機構に搬出する再使用下地板とに判別する下地板判別工程をさらに備える。
【0039】
これにより、メンテナンスまたは交換を行なう必要がある下地板(使用済下地板)と、メンテナンスを行なわずに再度浸漬機構に装着できる下地板(再使用下地板)とを判別できる。そのため、主室内で下地板を有効に再利用できるので、下地板の搬入出に伴う不活性ガスの使用量をより削減できる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の薄板製造装置によれば、主室内で、浸漬機構により下地板の表面に薄板を形成して、下地板交換機構により薄板が付着された下地板を取り外し、薄板分離機構により薄板を下地板から分離して、薄板を製造する。そのため、1枚の薄板を製造するごとに、下地板の搬入出に必要な不活性ガスを消費しない。よって、薄板の単位時間当たりの製造量を維持するとともに、不活性ガスの使用量の削減を実現できる。また、外部に下地板を搬入出する回数を減少できるので、真空排気系および搬送系の性能を簡略化できる。よって、薄板の単位時間当たりの製造量を維持するとともに、真空排気系および搬送系の簡素化を実現できる。
【0041】
本発明の薄板製造方法によれば、主室内において、浸漬工程により下地板の表面に薄板を形成して、取出工程により薄板が付着された下地板を取り外し、分離工程により薄板を下地板から分離して、薄板を製造し、再浸漬工程により連続して浸漬を行なう。そのため、1枚の薄板を製造するごとに、下地板の搬入出に必要な不活性ガスを消費しない。よって、薄板の単位時間当たりの製造量を維持するとともに、不活性ガスの使用量の削減を実現できる。また、外部に下地板を搬入出する回数を減少できるので、真空排気系および搬送系の性能を簡略化できる。よって、薄板の単位時間当たりの製造量を維持するとともに、真空排気系および搬送系の簡素化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0043】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の実施の形態1における薄板製造装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における薄板製造装置を示す概略図である。図1を参照して、本発明の実施の形態1における薄板製造装置1000は、浸漬機構1100と、下地板交換機構1003と、薄板分離機構1200と、主室1010とを備えている。浸漬機構1100は、融液1002に下地板Sの表面を浸漬し、下地板Sの表面に融液1002が凝固することにより薄板Pを形成する。下地板交換機構1003は、表面上に薄板Pが付着された下地板Sを浸漬機構1100から取り外す。薄板分離機構1200は、薄板Pを浸漬機構1100から取り外された下地板Sから分離する。主室1010は、浸漬機構1100と下地板交換機構1003と薄板分離機構1200とが内部に配置されている。
【0044】
詳細には、薄板製造装置1000は、るつぼ1001と、融液1002と、下地板交換機構1003と、主室1010と、分離前下地板バッファ1011と、装着前下地板バッファ1012と、下地板待機バッファ1013と、薄板ストッカ1014と、下地板搬入出副室1020と、ゲートバルブ1021,1022,1031,1032と、薄板搬出副室1030とを備えている。るつぼ1001と、融液1002と、下地板交換機構1003と、分離前下地板バッファ1011と、装着前下地板バッファ1012と、下地板待機バッファ1013と、薄板ストッカ1014とが主室1010の内部に配置されている。
【0045】
るつぼ1001には、融液1002が貯留され、融液1002に下地板Sの表面を浸漬させる浸漬機構1100と、浸漬機構1100に下地板Sを装着および取り外しを行なう下地板交換機構1003が配置されている。融液1002は、実施の形態1ではシリコンとしているが特にこれに限定されない。融液1002は、薄板Pの材料であればよく、薄板Pの用途から、金属材料および半導体材料のうち少なくとも一方を含んでいることが好ましい。たとえば、融液1002は、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、ヒ素、インジウム、硼素、アンチモン、亜鉛、すずなどの半導体材料や、アルミニウム、ニッケル、鉄などの金属材料や、樹脂などを使用することができる。
【0046】
分離前下地板バッファ1011は、浸漬機構1100により形成される薄板Pが付着した下地板Sを載置できる。分離前下地板バッファ1011は、浸漬機構1100に隣接して配置されている。
【0047】
薄板分離機構1200は、薄板Pを浸漬機構1100から取り外された下地板Sから分離する。薄板分離機構1200は、分離前下地板バッファ1011に隣接して配置されている。
【0048】
下地板判別機構1300は、薄板分離機構1200により薄板Pを分離した下地板Sを、主室1010外に搬出する使用済下地板と、浸漬機構1100に搬出する再使用下地板とに判別する。使用済下地板は、メンテナンスまたは交換が必要な基板である。主室1010外とは、実施の形態1では、下地板搬入出副室1020を含んでいる。下地板判別機構1300は、薄板分離機構1200に隣接して配置されている。
【0049】
装着前下地板バッファ1012は、下地板判別機構1300により判別される再使用下地板を載置し、好ましくは複数枚の再使用下地板を載置する。装着前下地板バッファ1012は、下地板判別機構1300および浸漬機構1100に隣接して配置されている。
【0050】
下地板待機バッファ1013は、下地板判別機構1300により判別される使用済下地板を載置し、好ましくは複数枚の使用済下地板を載置する。
【0051】
薄板ストッカ1014は、薄板分離機構1200により下地板Sから分離される薄板Pを載置する。
【0052】
装着前下地板バッファ1012、下地板待機バッファ1013、および薄板ストッカ1014は、たとえば独立した複数のコンベア、ローラ、またはリフトキャリーなどの搬送系統を用いて搬送可能な構造のものを用いることができる。また、下地板Sまたは薄板Pを載置できるように、たとえばカセット、トレイ状、または器のような凹みのある形状のものを用いることができる。
【0053】
主室1010には不活性ガスが導入され、大気圧よりも低い圧力、すなわち負圧に保たれる。図1に示す薄板製造装置1000では、Ar(アルゴン)ガスが導入され、圧力500MPa付近とされている。これにより、主室1010内には、反応性の高い原料を溶解可能としている。
【0054】
薄板搬出副室1030は、主室1010とゲートバルブ1031を介して接続されている。実施の形態1では、薄板ストッカ1014に隣接した場所に薄板搬出副室1030が配置されている。薄板搬出副室1030は、ゲートバルブ1032を開放すると大気圧となる。
【0055】
下地板搬入出副室1020は、主室1010とゲートバルブ1021を介して接続されている。実施の形態1では、下地板搬入出副室1020は、下地板待機バッファ1013に隣接した場所に下地板搬入出副室1020が配置されている。下地板搬入出副室1020は、ゲートバルブ1022を開放すると大気圧となる。
【0056】
また、追加原料を主室1010内のるつぼ1001に投入するための原料用副室(図示せず)が配置されている。原料用副室には、たとえば融液1002の原料の追装機構などが配置されている。
【0057】
また、薄板搬出副室1030、下地板搬入出副室1020、および原料用副室は、主室1010と同じ雰囲気、すなわち不活性ガス雰囲気で負圧とされている。また、薄板搬出副室1030、下地板搬入出副室1020、および原料用副室は、主室1010よりも小さい。
【0058】
次に、図1〜図3を参照して、本発明の実施の形態における薄板製造方法を説明する。本発明の実施の形態1における薄板製造方法は、融液1002に下地板Sの表面を浸漬し、下地板Sの表面に融液1002が凝固することにより薄板Pを形成する薄板製造方法であって、浸漬工程(S10)と、取出工程(S20)と、分離工程(S40)と、再浸漬工程(S70)とを備えている。浸漬工程(S10)は、融液1002に下地板Sを浸漬する。取出工程(S20)は、浸漬工程(S10)において薄板Pが付着した下地板Sを取り出す。分離工程(S40)は、取出工程(S20)において取り出された下地板Sから薄板Pを分離する。再浸漬工程(S70)は、分離工程(S40)において分離された下地板Sを再度融液1002に浸漬する。浸漬工程(S10)と取出工程(S20)と分離工程(S40)と再浸漬工程(S70)とは、主室1010内で実施される。なお、図2は、本発明の実施の形態1における薄板製造方法のフローチャートである。図3は、本発明の実施の形態1における下地板交換動作の一例を示す概略図である。
【0059】
図2に示すように、まず、融液1002に下地板Sを浸漬する浸漬工程(S10)を実施する。浸漬工程(S10)を実施すると、下地板Sの表面に薄板Pが付着される。なお、下地板Sは、融液1002が高温である場合には、浸漬工程(S10)により損傷し難い十分な耐熱性を有していることが好ましく、たとえばカーボンを用いることが好ましい。
【0060】
次に、浸漬工程(S10)において薄板Pが付着した下地板Sを取り出す取出工程(S20)を実施する。具体的には、取出工程(S20)では、薄板Pと下地板Sとが一体となった状態で浸漬機構1100から取り外す。その後、次の下地板Sを浸漬機構1100に装着される。取出工程(S20)では、薄板Pの製造時間を短縮するために、薄板Pが付着された下地板Sの取り出しと、下地板Sの浸漬機構1100への装着とを同時に行なうことが好ましい。
【0061】
取出工程(S20)で行なう下地板交換動作は、たとえば図3に示すように、浸漬工程(S10)で薄板Pが表面に付着された下地板S1を搭載した浸漬機構1100を下地板交換位置に配置する。そして、下地板交換機構1003(たとえば把持させる部材)に、装着前下地板バッファ1012で待機している下地板S2を装着する。そして、下地板交換機構1003に装着された下地板S2を、浸漬機構1100に装着された薄板Pが付着された下地板S1をたとえば溝に沿った方向に押し出すことによって、薄板Pが付着された下地板S1を浸漬機構1100から取り出すとともに、次の下地板S2を浸漬機構1100に装着する。なお、下地板交換位置とは、浸漬機構1100に搭載されている下地板Sを取り出して、新たな下地板Sを浸漬機構1100に搭載できる位置である。
【0062】
次に、取出工程(S20)において取り出される薄板Pが付着した下地板Sを主室1010内に配置された分離前下地板バッファ1011に載置する分離前下地板載置工程(S30)を実施する。具体的には、分離前下地板載置工程(S30)では、下地板交換機構1003により取り出された薄板Pが付着された下地板Sを分離前下地板バッファ1011に載置する。分離前下地板バッファ1011には、薄板Pが付着された下地板Sを複数枚貯留しておくことが好ましい。
【0063】
次に、取出工程(S20)において取り出された下地板Sから薄板Pを分離する分離工程(S40)を実施する。具体的には、分離工程(S40)では、浸漬機構1100から取り外された下地板Sは、分離前下地板バッファ1011を経由して、薄板分離機構1200に送られる。薄板分離機構1200により、薄板Pを下地板Sから取り外す。分離工程(S40)を実施することにより、薄板Pを製造できる。製造された薄板Pは薄板ストッカ1014に載置することが好ましい。また、下地板Sは、後述する下地板判別工程(S50)に送られる。
【0064】
分離工程(S40)では、薄板Pを下地板Sから分離するのに時間を要する場合には、複数の薄板Pを複数の下地板Sから同時に分離する工程を含んでいることが好ましい。具体的には、薄板分離機構1200は複数個設置されていることが好ましい。これにより、複数の薄板Pを下地板Sから同時に分離することができるので、薄板Pの単位時間当たりの製造量を向上できる。
【0065】
次に、分離工程(S40)により薄板Pを分離した下地板Sを、主室1010外に搬出する使用済下地板と、浸漬機構1100に搬出する再使用下地板とに判別する下地板判別工程(S50)を実施する。下地板判別工程(S50)では、薄板Pを分離した下地板Sを、メンテナンスまたは交換が必要か否かについて判別される。具体的には、メンテナンスまたは交換が必要と判別された下地板Sは使用済下地板と判別され、メンテナンスまたは交換が必要でないと判別された下地板Sは再使用下地板と判別される。下地板判別工程(S50)を実施することにより、使用済下地板と判別された下地板Sは、薄板製造装置1000の外部に搬出する必要があるため、下地板待機バッファ1013に送られて、下地板待機バッファ1013に載置される。なお、下地板待機バッファ1013には、未使用の下地板Sが複数待機しており、使用済下地板と判別されて送られてきた下地板Sと交換される。
【0066】
次に、分離工程(S40)において分離された下地板Sを主室1010内に配置された装着前下地板バッファ1012に載置する装着前下地板載置工程(S60)を実施する。具体的には、装着前下地板載置工程(S60)では、下地板判別工程(S50)で再使用下地板と判別された下地板Sを装着前下地板バッファ1012に載置する。
【0067】
次に、分離工程(S40)において分離された下地板Sを再度融液1002に浸漬する再浸漬工程(S70)を実施する。具体的には、再浸漬工程(S70)では、装着前下地板バッファ1012に載置されている下地板Sを上述した浸漬工程(S10)と同様に浸漬することにより、薄板Pを下地板Sに付着させる。
【0068】
次に、取出工程(S20)を実施する。この工程以降は、上述した工程と同様であるので、その説明は繰り返さない。また、上記工程(S10〜S70)は主室1010内で実施される。
【0069】
実施の形態1では、分離工程(S40)において分離された下地板Sを主室1010外に搬出する下地板搬出工程をさらに備えている。下地板搬出工程では、下地板判別機構1300により使用済下地板と判別された下地板Sを下地板待機バッファ1013に載置し、下地板Sが載置されたとき、または任意のときに、以下のようにして下地板Sを主室1010外に搬出する。なお、薄板Pの製造効率を向上する観点から、下地板搬入出工程は、複数の下地板Sを主室1010外に搬出する工程を含むことが好ましい。
【0070】
具体的には、下地板搬入出副室1020と主室1010とを結ぶゲートバルブ1021を開けて、下地板搬入出副室1020を主室1010と同等の不活性ガス雰囲気に置換する。そして、下地板搬入出副室1020へ下地板待機バッファ1013に載置された下地板Sを搬送する。次いで、ゲートバルブ1021を閉じ、下地板搬入出副室1020を大気開放する。その後、下地板搬入出副室1020と薄板製造装置1000の外部とを結ぶゲートバルブ1022を開けて、下地板Sを薄板製造装置1000の外部へ搬出する。その後、薄板製造装置1000の外部から、新品もしくはメンテナンスされた下地板Sを下地板搬入出副室1020に搬入する。そして、ゲートバルブ1022を閉じて、下地板搬入出副室1020は真空引きされ、その後に不活性ガスに置換される。そして、主室1010と下地板搬入出副室1020の雰囲気が同等になったら、ゲートバルブ1021を開けて、新品もしくはメンテナンスされた下地板Sを下地板待機バッファ1013に搬入する。
【0071】
また、実施の形態1では、分離工程(S40)において分離された複数枚の薄板Pを主室1010外に搬出する薄板搬出工程をさらに備えている。薄板搬出工程では、薄板分離機構1200により分離された薄板Pを薄板ストッカ1014に載置し、薄板Pが載置されたときまたは任意のときに、以下のようにして薄板Pを主室1010外に搬出する。なお、薄板Pの製造効率を向上する観点から、薄板搬出工程は、複数の薄板Pを主室1010外に搬出することが好ましい。
【0072】
具体的には、薄板搬出副室1030と主室1010とを結ぶゲートバルブ1031を開けて、薄板搬出副室1030を主室1010と同等の不活性ガス雰囲気に置換する。そして、薄板搬出副室1030へ薄板Pを搬送する。この際、薄板ストッカ1014ごと載置されている薄板Pを搬出することが望ましい。また、搬出する際に交換する空のストッカを準備しておくことが望ましい。これにより、分離工程(S40)を中断する必要がなくなる。次いで、ゲートバルブ1031を閉じて、薄板搬出副室1030を大気開放する。その後、薄板搬出副室1030と薄板製造装置1000の外部とを結ぶゲートバルブ1032を開けて、薄板Pを薄板製造装置1000の外部へ搬出する。その後、薄板製造装置1000の外部から、空の薄板ストッカが薄板搬出副室1030に搬入する。そして、ゲートバルブ1032を閉じて、薄板搬出副室1030は真空引きされ、その後に不活性ガスに置換される。主室1010と薄板搬出副室1030との雰囲気が同等になったら、ゲートバルブ1031を開けて、空の薄板ストッカを主室1010に搬入する。
【0073】
実施の形態1では、融液1002の原料を追装する追装工程をさらに備えている。追装工程を実施する際に、下地板搬出工程を実施することが好ましい。また、追装工程を実施する際に、薄板搬出工程を実施することが好ましい。さらに、追装工程を実施する際に、下地板搬出工程および薄板搬出工程を実施することが好ましい。なお、「追装工程を実施する際」とは、追装工程と同時であっても良いし、少しずれていても良く、追装工程を実施している時間帯が重なっていれば良い。追装工程を実施する時間を下地板搬出工程および薄板搬出工程に充てることができる観点から、同時に実施することが好ましい。
【0074】
上記工程(S10〜S70)を実施することにより、薄板Pを製造できる。実施の形態1では、シリコン薄板を得られる。
【0075】
以上説明したように、本発明の実施の形態1における薄板製造装置1000によれば、融液1002に下地板Sの表面を浸漬し、下地板Sの表面に融液1002が凝固することにより薄板Pを形成する浸漬機構1100と、表面上に薄板Pが付着された下地板Sを浸漬機構1100から取り外す下地板交換機構1003と、薄板Pを浸漬機構1100から取り外された下地板Sから分離する薄板分離機構1200と、浸漬機構1100と下地板交換機構1003と薄板分離機構1200とが内部に配置される主室1010とを備えている。これにより、主室1010内において、浸漬機構1100により下地板Sの表面に薄板Pを形成して、下地板交換機構1003により薄板Pが付着された下地板Sを取り外し、薄板分離機構1200により薄板Pを下地板Sから分離して、薄板Pを製造できる。そのため、1枚の薄板Pを製造するごとに、下地板Sの搬入出に必要な不活性ガスを消費しない。よって、薄板Pの単位時間当たりの製造量を維持するとともに、不活性ガスの使用量の削減を実現できる。また、薄板製造装置1000の外部に下地板Sを搬入出する回数を減少できるので、真空排気系および搬送系の性能を簡略化できる。よって、薄板Pの単位時間当たりの製造量を維持するとともに、真空排気系および搬送系の簡素化を実現できる。
【0076】
上記薄板製造装置1000において好ましくは、主室1010内に配置され、浸漬機構1100により形成される薄板Pが付着した下地板Sを載置できる分離前下地板バッファ1011をさらに備えている。これにより、主室1010内において、薄板Pが付着された下地板Sの薄板分離機構1200への装着待ちが可能となる。そのため、1枚の基板S当たりの浸漬機構1100による浸漬工程(S10)に要する時間と、薄板分離機構1200による分離工程(S40)に要する時間との間に差があっても、主室1010内で調整できる。よって、薄板Pの単位時間当たりの製造量を向上できる。
【0077】
上記薄板製造装置1000において好ましくは、主室1010内に配置され、薄板分離機構1200により薄板Pを分離した下地板Sを、主室1010外に搬出する使用済下地板と、浸漬機構1100に搬出する再使用下地板とに判別する下地板判別機構1300をさらに備える。これにより、メンテナンスまたは交換を行なう必要がある下地板Sと、メンテナンスを行なわずに再度浸漬機構1100に装着できる下地板Sとを判別できる。そのため、再使用下地板ののべ使用回数分だけ、下地板搬入出副室1020を開放して新品またはメンテナンス済みの下地板Sと交換する時間を長くできる。よって、主室1010内で下地板Sを有効に再利用できるので、下地板Sの搬入出に伴う不活性ガスの使用量をより削減できる。
【0078】
上記薄板製造装置1000において好ましくは、主室1010内に配置され、下地板判別機構1300により判別される使用済下地板を載置できる下地板待機バッファ1013をさらに備える。これにより、下地板Sの浸漬機構1100への装着待ちによって薄板製造数が低下することを防止できる。また、薄板Pを1枚製造するごとに主室1010外から新品またはメンテナンス済みの下地板Sを搬入する必要がないので、主室1010内で連続して薄板Pを製造できる。よって、薄板Pの単位時間当たりの製造量を向上するとともに、不活性ガスの使用量をより削減できる。
【0079】
上記薄板製造装置1000において好ましくは、主室1010内に配置され、下地板判別機構1300により判別される再使用下地板を載置できる装着前下地板バッファ1012をさらに備える。これにより、主室1010内で連続して薄板Pを製造できる。また、分離前下地板バッファ1011と装着前下地板バッファ1012とを備えることにより、下地板Sの交換と取り出しを同時に行なうことができる。よって、下地板搬出工程に要する時間を削減できるので、真空排気系および搬送系の装置規模の削減を実現できる。
【0080】
上記薄板製造装置1000において好ましくは、主室1010内に配置され、薄板分離機構1200により分離される薄板Pを載置できる薄板ストッカ1014をさらに備える。これにより、製造される薄板Pをまとめて搬出できる。そのため、薄板Pの搬出に要する時間を削減できるので、真空排気系および搬送系の装置規模の削減を実現できる。
【0081】
本発明の実施の形態1における薄板製造方法によれば、融液1002に下地板Sの表面を浸漬し、下地板Sの表面に融液1002が凝固することにより薄板Pを形成する薄板製造方法であって、融液1002に下地板Sを浸漬する浸漬工程(S10)と、浸漬工程(S10)において薄板Pが付着した下地板Sを取り出す取出工程(S20)と、取出工程(S20)において取り出された下地板Sから薄板Pを分離する分離工程(S40)と、分離工程(S40)において分離された下地板Sを再度融液1002に浸漬する再浸漬工程(S70)とを備え、浸漬工程(S10)と取出工程(S20)と分離工程(S40)と再浸漬工程(S70)とは主室内で実施されている。これにより、主室1010内において、浸漬工程(S10)により下地板Sの表面に薄板Pを形成して、取出工程(S20)により薄板Pが付着された下地板Sを取り外し、分離工程(S40)により薄板Pを下地板Sから分離して、薄板Pを製造でき、再浸漬工程(S70)により連続して浸漬を行なう。そのため、1枚の薄板Pを製造するごとに、下地板Sを搬入出する必要がなく、下地板Sの搬入出に必要な不活性ガスを消費しない。よって、薄板Pの単位時間当たりの製造量を維持するとともに、不活性ガスの使用量の削減を実現できる。また、薄板製造装置1000の外部に下地板Sを搬入出する回数を減少できるので、下地板搬入出副室1020および薄板搬出副室1030の体積を低減でき、真空排気系および搬送系の性能を低減することによる真空排気系および搬送系の装置規模を簡略化できる。よって、薄板Pの単位時間当たりの製造量を維持するとともに、真空排気系および搬送系の簡素化を実現できる。また、真空排気系および搬送系の簡素化に伴い、維持費の削減も実現できる。
【0082】
上記薄板製造方法において好ましくは、分離工程(S40)において分離された下地板Sを主室1010外に搬出する下地板搬出工程をさらに備える。これにより、メンテナンスまたは交換が必要な下地板Sを主室1010外に搬出できる。
【0083】
上記薄板製造方法において好ましくは、下地板搬出工程は、複数の下地板Sを主室1010外に搬出する工程を含む。これにより、メンテナンスが必要な下地板Sをまとめて主室1010外に搬出できる。そのため、下地板搬入出副室1020と主室1010とを接続しているゲートバルブ1021を開ける回数を削減できるので、ゲートバルブ1021の開放に伴う不活性ガスの使用量を削減できる。
【0084】
上記薄板製造方法において好ましくは、融液1002の原料を追装する追装工程をさらに備え、追装工程を実施する際に、下地板搬出工程を実施する。これにより、追装工程に要する時間を下地板搬出工程に充てることができるので、薄板Pの製造効率を向上できる。また、下地板搬入出副室1020での下地板Sの搬出または搬入の動作に無駄が生じないため、下地板搬出工程で搬出される下地板Sの枚数を削減することにより、下地板搬入出副室1020の装置を小型化できるとともに、真空排気性能および搬送性能を低減することによる真空排気系および搬送系のさらなる簡素化を実現できる。なお、追装工程に要する時間は、追加する原料をるつぼ1001に投入する時間と、追加する原料の溶解時間と、融液1002の温度調整時間との和である。
【0085】
上記薄板製造方法において好ましくは、分離工程(S40)において分離された複数枚の薄板Pを主室1010外に搬出する薄板搬出工程をさらに備え、追装工程を実施する際に、薄板搬出工程を実施する。これにより、追装工程に要する時間を下地板搬出工程および薄板搬出工程に充てることができる。そのため、薄板Pの製造効率をさらに向上できる。よって、薄板Pの単位時間当たりの製造量を向上するとともに、真空排気系および搬送系のさらなる簡素化を実現できる。
【0086】
上記薄板製造方法において好ましくは、分離工程(S40)において分離された複数枚の薄板Pを主室1010外に搬出する薄板搬出工程をさらに備える。複数枚の薄板Pを薄板搬出副室1030に搬出することにより、薄板Pをまとめて主室1010外に搬出できる。そのため、薄板搬出副室1030と主室1010とを接続しているゲートバルブ1031を開ける回数を削減できるので、ゲートバルブ1031の開放に伴う不活性ガスの使用量を削減できる。
【0087】
上記薄板製造方法において好ましくは、融液1002の原料を追装する追装工程をさらに備え、融液追加工程を実施する際に、薄板搬出工程を実施する。追装工程に要する時間を薄板搬出工程に充てることができる。そのため、薄板Pの製造効率をさらに向上できる。よって、薄板Pの単位時間当たりの製造量を向上するとともに、真空排気系および搬送系のさらなる簡素化を実現できる。
【0088】
上記薄板製造方法において好ましくは、取出工程(S20)と分離工程(S40)との間に実施され、取出工程(S20)において取り出される薄板Pが付着した下地板Sを主室1010内に配置された分離前下地板バッファ1011に載置する分離前下地板載置工程(S30)をさらに備えている。これにより、主室1010内において、薄板Pが付着された下地板Sの薄板分離機構1200への装着待ちが可能となる。そのため、1枚の基板S当たりの浸漬機構1100による浸漬工程(S10)に要する時間と、薄板分離機構1200による分離工程(S40)に要する時間との間に差があっても、主室1010内で調整できる。よって、薄板Pの単位時間当たりの製造量を向上できる。
【0089】
上記薄板製造方法において好ましくは、分離工程(S40)と再浸漬工程(S70)との間に実施され、分離工程(S40)において分離された下地板Sを主室1010内に配置された装着前下地板バッファ1012に載置する装着前下地板載置工程(S60)をさらに備えている。これにより、下地板搬出工程に要する時間を削減できるので、真空排気系および搬送系の装置規模の削減を実現できる。
【0090】
上記薄板製造方法において好ましくは、主室1010内で、分離工程(S40)により薄板Pを分離した下地板Sを、主室1010外に搬出する使用済下地板と、浸漬機構1100に搬出する再使用下地板とに判別する下地板判別工程(S50)をさらに備える。下地板判別工程(S50)により、メンテナンスまたは交換を行なう必要がある下地板Sと、メンテナンスを行なわずに再度浸漬機構1100に装着できる下地板Sとを判別できる。そのため、再使用下地板ののべ使用回数分だけ、下地板搬入出副室1020を開放して新品のまたはメンテナンス済みの下地板Sと交換する時間を長くできる。よって、主室1010内で下地板Sを有効に再利用できるので、下地板Sの搬入出に伴う不活性ガスの使用量をより削減できる。
【0091】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2の薄板製造装置における浸漬機構の動作を示す概略図である。本発明の実施の形態2では、浸漬機構に特徴がある。図4を参照して、浸漬機構について説明する。なお、その他の構成は、実施の形態1における薄板製造装置1000と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0092】
図4に示すように、浸漬機構1100は、水平動作モータ1111によって動作(走行)する水平動作軸1112と、水平動作軸1112によって水平動作する昇降動作モータ1121とを備える。昇降動作モータによって昇降動作する懸垂支柱1122には、回転機構1131と、主柱1123とが取り付けられている。主柱1123の先端には、回転軸1142によって回転可能なように、固定支柱1151および台座1152が接続されている。回転機構1131によって動作される回転軸1141と、主柱1123の先端に設置された回転軸1142とは、動力伝達機構1132によって同期回転する。これにより、下地板Sを把持した台座1152は、自由に回転動作を行なうことができる。また昇降動作モータ1121および水平動作モータ1111によって、昇降動作および水平動作を自由に行なうことができる。このような水平動作、昇降動作、および回転動作は相互に独立に行なうことができる。
【0093】
図5は、本発明の実施の形態2の薄板製造方法における浸漬工程(S10)の動作を示す概略図である。図1および図5を参照して、浸漬工程(S10)について説明する。
【0094】
図5に示すように、下地板Sは、台座1152が下地板交換位置1161に位置しているときに、台座1152に装着される。詳細には、台座1152は、中央部に、下地板Sと係合する係合溝を有している。下地板Sは、裏面に畝状突起を有し、その畝状突起と台座1152の係合溝とが係合し、両者は一体化されている。下地板Sにおける台座1152と対向する表面と反対の表面は、薄板Pを製造する面であり、平坦としている。台座1152の係合溝を下地板Sの畝状突起に嵌め合わせるように、スライドさせて装着する。この際、薄板Pを成長させる面側の下地板Sの表面は天頂方向を向いている。その位置で、ヒーター(図示せず)を用いて、下地板Sの温度調整を行なってもよい。その後、下地板Sは図5における右方向へ移動する。次いで、矢印1160のように、図5における左方向に戻りながら、下地板Sの表面を融液1002に浸漬して、取り出すことにより、下地板Sの表面に薄板Pを製造する。
【0095】
その後、薄板Pが成長した下地板S1は、さらに左方向へ戻りつつ、回転して、下地板Sの表面が天頂方向に向いた形で、下地板交換位置1161まで戻る。その後、薄板Pが形成された下地板S1をスライドさせて台座1152から押し出し、新しい下地板S2を台座1152に装着する。
【0096】
下地板Sを交換するときの、下地板Sの姿勢は、本実施の形態では薄板Pを成長させる側の表面を天頂方向に向けたが、横向きや下向きなどのいずれの方向を向いていても構わない。また、図5において、浸漬動作サイクルを時計回りとしたが、反時計回り、もしくは途中まで時計回りで途中から反時計回り、もしくは途中まで反時計回りで途中から時計回りなど、いずれのサイクルであっても構わない。
【0097】
上記動作の設定は、通常は、パソコン等により、水平方向移動指令と昇降動作移動指令、回転動作指令をそれぞれプログラミングし、それをコントローラに送信しておくことで、プログラム通りの任意軌道を実現する。
【0098】
以上説明したように、浸漬工程(S10)を実施することにより、下地板Sの表面上に薄板Pを付着できる。なお、実施の形態2における浸漬工程(S10)は、ガイドレールを使用する浸漬機構1100を用いているが、特にこれに限定されず、たとえば回転体を使用する機構やロボットアームのような構造を使用する機構などを用いることもできる。
【0099】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3の薄板製造装置における薄板分離機構を示す概略図である。本発明の実施の形態3では、薄板分離機構に特徴がある。図6を参照して、薄板分離機構について説明する。なお、その他の構成は、実施の形態1における薄板製造装置1000と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0100】
図6に示すように、薄板分離機構1200は、掴み部吸着パッド1210と、薄板搬送吸着パッド1220と、バリ吸着パッド1230と、下地板Sを固定する固定台1240とを備えている。掴み部吸着パッド1210および薄板吸着パッド1220は、薄板Pが形成されている面と吸着パッド1211,1221とが接触できる位置に配置されている。バリ吸着パッド1230は、バリBが形成される部分と吸着パッド1231とが接触できる位置に配置されている。実施の形態3では、掴み部吸着パッド1210と薄板搬送吸着パッド1220とは、薄板Pが形成される面の上方に配置されて、バリ吸着パッド1230は、バリBが形成される面の側方に配置されている。
【0101】
掴み部吸着パッド1210は、吸着パッド1211と、真空ライン1212と、垂直移動ロッド1213と、水平移動ロッド1214とから構成される。真空ライン1212に接続された制御ユニット、真空ポンプもしくは真空エジェクタ、圧力計、エアフィルタ等(図示せず)によって真空のオンまたはオフを制御できるようになっている。
【0102】
薄板搬送吸着パッド1220は、吸着パッド1221と、真空ライン1222と、垂直移動ロッド1223と、水平移動ロッド1224とから構成される。真空ライン1222に接続された制御ユニット、真空ポンプもしくは真空エジェクタ、圧力計、エアフィルタ等(図示せず)によって真空のオンまたはオフを制御できるようになっている。
【0103】
バリ吸着パッド1230は、吸着パッド1231と、真空ライン1232と、水平移動ロッド1234とから構成される。真空ライン1232に接続された制御ユニット、真空ポンプもしくは真空エジェクタ、圧力計、エアフィルタ等(図示せず)によって真空のオンまたはオフを制御できるようになっている。
【0104】
下地板Sには、その側面の一面に凹形状の掴み構造を設けることで、薄板Pの落下を防止する工夫がなされている。さらに下地板Sの表面において、掴み構造を持つ辺以外の3辺の周縁部に沿った堀構造を設けることで、薄板Pと、下地板Sの周縁部に成長した凝固物(以下、バリBと称する)とが分離される。
【0105】
吸着パッド1211,1221,1231の材質は特に限定されないが、耐熱性の高い素材であることが好ましい。浸漬工程(S10)直後の下地板Sおよび薄板Pは150〜200℃と比較的高温であるため、耐熱性の低い材質であれば冷却を行なってから分離工程(S40)を実施する必要があるためである。さらに、吸着パッド1211,1221,1231の材質は可撓性を有していることが好ましい。可撓性を有する材質を用いることにより、薄板Pに与える衝撃をやわらげるのみならず、薄板Pに微小な凹凸があっても、掴み部吸着パッド1210および薄板搬送吸着パッド1220の変形により微小な凹凸を吸収し、吸着を容易に行なうことができるからである。耐熱性と可撓性とを兼ね備える素材として、たとえばフッ素ゴム、シリコンゴム等を好適に用いることができる。
【0106】
また、図6に示すように、薄板分離機構1200は、薄板Pの搬送用に別途薄板搬送吸着パッド1220を設けているが、掴み部吸着パッド1210を薄板搬送用として併用することも可能である。このような併用する構成にすることにより、薄板製造装置はより簡略化されることになる。なお、併用する構成では、薄板Pの重力バランスが比較的悪い位置で吸着して搬送させるために、薄板Pが搬送中に落下しないような工夫を施すことが好ましい。たとえば、掴み部吸着パッド1210を複数設けることにより、搬送時の薄板Pの重力バランスは改善される。
【0107】
図6では、分離工程(S40)時に下地板Sが動いてしまうのを防ぐために、下地板Sのアリ溝部を固定するための固定台1240を設けているが、固定台1240の形態は図6に示した形態に限定されない。固定台1240は、たとえば下地板Sの側面を固定する形態であってもよいし、アリ溝角部を対角線上にチャッキングする形態であってもよいし、吸着により固定する形態であってもよい。
【0108】
図7は、本発明の実施の形態3の薄板製造方法における分離工程(S40)の動作を示し、(A)は、掴み部吸着パッドを動作させたときの概略図であり、(B)は、薄板搬送吸着パッドおよび張り吸着パッドを動作させたときの概略図である。図7(A)および図7(B)を参照して、分離工程(S40)について説明する。
【0109】
まず、図7(A)に示すように、掴み部吸着パッド1210によって薄板Pの掴み部P1付近を吸着しつつ、薄板Pを薄板Pの延在する方向(図7(A)における矢印の方向)へ移動する。これによって、薄板Pの掴み部P1と下地板Sの掴み部とが分離する。
【0110】
次に、掴み部吸着パッド1210を薄板Pから取り外し、図7(B)に示すように、薄板搬送吸着パッド1220によって薄板P全体を持ち上げる。その後、薄板Pは、掴み部吸着パッド1210によって所定の場所へと搬送される。
【0111】
次に、バリBは、バリ吸着パッド1230によって、掴み部P1とは逆方向に移動することで、下地板Sから分離される。分離されたバリBは、薄板分離機構1200周辺に配置されたバリ回収機構(図示せず)に溜められる。なお、バリ回収機構に溜められたバリは、追装工程で追加する原料に再利用することもできる。
【0112】
なお、図7(A)に示すように、実施の形態3では、掴み部吸着パッド1210は、一点で薄板Pの吸着を行なっているが、複数の点で吸着を行なってもよい。また、矩形の吸着パッドによる広範囲吸着を行ってもよい。このように広い範囲で吸着を行なうことで、薄板Pはより強固に保持されることになる。
【0113】
また、掴み部吸着パッド1210、薄板搬送吸着パッド1220、およびバリ吸着パッド1230の吸着力は吸着パッド1211,1221,1231の面積と圧力によって決まるが、分離工程(S40)を実施するのに好適な吸着力は、吸着パッド1211,1221,1231の形状や、分離工程(S40)を実施する対象となる下地板Sの形状によって異なるので、適宜変更することが好ましい。
【0114】
なお、分離工程(S40)の動作としては、図7に示したような薄板搬送吸着パッド1220の垂直方向および水平方向に限定されない。薄板Pの搬送として、たとえば多関節ロボット等を用いてもよい。下地板Sの固定方法および分離動作としてはライン搬送上最も適した形態を選択することができる。
【0115】
以上説明したように、分離工程(S40)を実施することにより、分離された薄板Pは、薄板搬送吸着パッド1220の垂直移動ロッド1223および水平移動ロッド1224によって、薄板ストッカ1014に移動される。ただし、薄板分離機構1200と薄板ストッカ1014の位置が離れている場合、分離した薄板Pを薄板分離機構1200の薄板搬送吸着パッド1220によって薄板ストッカ1014まで搬送すると、分離工程(S40)に要する時間が増大する。薄板分離機構1200の垂直移動ロッド1223および水平移動ロッド1224の大型化などが生じる。そのため、薄板分離機構1200から薄板ストッカ1014へ搬送する機構を別に設けても構わない。たとえば、コンベア等によって、薄板分離機構1200の近接位置から薄板ストッカ1014まで薄板Pを搬送することが可能である。その場合、薄板搬送吸着パッド1220は、薄板Pを搬送する機構に移動させる。
【0116】
実施の形態3では、掴み構造を有する下地板Sから薄板Pを分離する際に、薄板Pに与える剪断応力が小さい方法を説明したが、掴み部P1を有しない薄板Pを分離する場合や、薄板Pの強度が強い場合は、薄板搬送吸着パッド1220のみを用いて分離することも可能である。
【0117】
また、実施の形態3では、掴み部吸着パッド1210、薄板搬送吸着パッド1220、およびバリ吸着パッド1230を備える分離方法を説明したが、その他の分離方法を用いても構わない。薄板分離機構1200として、たとえば、下地板Sの薄板成長面を下向きとし、衝撃を与えて薄板Pを落下させる方法を用いても構わない。
【0118】
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4の薄板製造装置における下地判別機構を示す概略図である。本発明の実施の形態4では、下地板判別機構に特徴がある。図8を参照して、下地板判別機構について説明する。なお、その他の構成は、実施の形態1における薄板製造装置1000と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0119】
下地板判別機構1300は、表面形状測定装置1310と、カメラ1320と、使用履歴管理装置1330と、搬送装置1340と、搬送系1350とを備えている。
【0120】
表面形状測定装置1310は、下地板Sの表面を測定する装置である。表面形状測定装置1310は、下地板判別機構1300に搬送される基板Sの表面の上方に配置されている。
【0121】
カメラ1320は、表面形状測定装置1310に付随している。カメラ1320は基板の表面を撮像できる位置に配置されている。実施の形態4では、基板Sの側方に配置され、基板Sの側面から、基板Sの表面の凹凸などを撮像している。
【0122】
使用履歴管理装置1330は、下地板Sの使用履歴を管理する装置である。使用履歴管理装置1330は、表面形状測定装置1310およびカメラ1320などと離れた位置に配置されている。
【0123】
搬送装置1340は、判別された下地Sを装着前下地板バッファ1012および下地板待機バッファ1013のいずれかに搬送する装置である。搬送装置1340は、搬送系1350から押し出される基板Sを載置できる位置に配置されている。
【0124】
搬送系1350は、カメラ1320で撮像するときの下地板Sの台座の役割と、カメラ1320で撮像された基板Sを搬送装置1340に移動させる役割とを有する部材である。カメラ1320の側方から搬送装置1340までを移動できるように配置されている。
【0125】
次に、図8を参照して、下地板判別工程(S50)について説明する。薄板Pが分離された下地板Sは、搬送系1350によって下地板判別機構1300に搬送される。
【0126】
搬送される下地板Sは、融液1002に浸漬されるので、浸漬工程(S10)および再浸漬工程(S70)の回数の増大につれ、その表面の形状が劣化することがある。具体的には、本実施の形態における下地板Sの成長面は、薄板Pを結晶成長させるために畝状の凹凸を有するが、浸漬工程(S10)および再浸漬工程(S70)の回数の増大につれて、畝状の凹凸の高さが減少する。畝状の凹凸の高さが減少すると高品質のシリコンなどの薄板Pが形成されない。そこで、下地板Sの表面形状の劣化を判別する機構、または、下地板Sの連続使用回数からメンテナンスもしくは交換が必要な下地板Sを判別する機構を有する下地板判別工程(S50)を実施することによって、使用済下地板は、薄板製造装置1000の外部に搬出し、表面を再加工することで、再度使用可能とできる。以下、詳細に説明する。
【0127】
まず、下地板Sの薄板Pを成長させる面を表面形状測定装置1310に付属するカメラ1320によって撮像する。表面形状測定装置1310は、撮像された画像から、色の違いによって、薄板Pの一部もしくはバリが下地板Sに残存しているか否かを確認する。
【0128】
さらに、表面形状測定装置1310に付属する測定機構(図示せず)によって、下地板Sの薄板Pを成長させる面の畝状の凹凸の高さを測定する。表面形状測定方法は、たとえばレーザー照射による三角法、静電容量法、またはカメラ撮像にて焦点を変化させて3次元マッピングを行なう方法など、どのような手段を用いても構わない。また、下地板Sの表面のうち、一部の範囲のみを測定する方法でも構わない。これによって、表面形状測定装置1310の簡素化および測定時間の短縮化が可能となる。
【0129】
さらに、使用履歴管理装置1330によって、通過する下地板Sの連続使用回数をカウントする。使用履歴管理装置1330は、薄板製造装置1000内に存在するすべての下地板Sの位置を把握し、下地板判別機構1300を通過した段階で使用回数を1回増やす方法をとっても構わないし、下地板Sに個別番号を付与し、カメラ1320によって通過する下地板Sの個別番号を読み取り、使用回数を1回増やす方法をとっても構わない。
【0130】
薄板Pの一部やバリBの残存の有無、畝状の凹凸の高さ、連続使用回数、下地板Sの位置や個別番号などの情報は、情報伝達経路1331を経由して使用履歴管理装置1330に伝えられる。これらの情報を元に、使用履歴管理装置1330は、薄板Pの一部やバリが残存する下地板S、畝状の凹凸の高さが規定値以下となった下地板S、および規定の連続使用回数を超過した下地板Sなどを不合格と判別することが可能である。
【0131】
下地板判別工程(S50)を実施した結果、合格となった下地板Sは、矢印1341にしたがって、分岐位置にて装着前下地板バッファ1012へ振り分けられ、次の再浸漬工程(S70)のために使用される。一方、不合格になった下地板Sは、矢印1342にしたがって、分岐位置にて下地板待機バッファ1013へ送られる。それとともに、下地板待機バッファ1013から新品の下地板Sが装着前下地板バッファ1012に搬送されることによって、薄板製造装置1000内の下地板Sの総数を一定に保つことが可能である。
【0132】
なお、上述した下地板分岐動作に伴う搬送装置1340への動作指令1332は、使用履歴管理装置1330から行なうことが可能である。
【0133】
上述したような下地板判別工程(S50)を実施することにより、薄板Pが分離された下地板Sは、そのまま次の薄板作製に使用できる再使用下地板と、メンテナンスまたは交換を要する使用済下地板とに分別することができる。なお、使用済下地板は、薄板製造装置1000の外部にて、その表面などに残存する薄板Pの一部やバリを除去される。ただし、再加工回数が許容値を超えた場合には、廃棄する必要が有る。
【0134】
以上説明したように、下地板判別工程(S50)を実施することにより、下地板SにバリBや薄板Pが残存していないか判別する機構を有しているので、分離工程(S40)実施時に、バリBや薄板Pの一部などの残存物が、特に掘り構造部分などの下地板Sに食い込んで外れない場合に、そのまま次の再浸漬工程(S70)を実施しない。そのため、融液1002が基板Sの表面の残存物を起点として凝固して、作製される薄板Pの形状不良や応力集中による割れを生じることを防止できる。
【0135】
今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の薄板製造装置および薄板製造方法を用いることにより、たとえばシリコン薄板の単位時間当たりの製造量を維持しながら、不活性ガスの使用量の削減を実現できるので、低コストで大量に薄板を製造できる。そのため、シリコン薄板を安価に大量に供給することができ、たとえば太陽光発電用シリコン薄板の製造などに広範囲に用いられることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の実施の形態1における薄板製造装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1における薄板製造方法のフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1における下地板交換動作の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態2の薄板製造装置における浸漬機構の動作を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態2の薄板製造方法における浸漬工程の動作を示す概略図である。
【図6】本発明の実施の形態3の薄板製造装置における薄板分離機構を示す概略図である。
【図7】本発明の実施の形態3の薄板製造方法における分離工程の動作を示し、(A)は、掴み部吸着パッドを動作させたときの概略図であり、(B)は、薄板搬送吸着パッドおよび張り吸着パッドを動作させたときの概略図である。
【図8】本発明の実施の形態4の薄板製造装置における下地判別機構を示す概略図である。
【図9】一の従来の薄板製造装置を示す概略図である。
【図10】他の従来の薄板製造装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0138】
1000 薄板製造装置、1001 るつぼ、1002 融液、1003 下地板交換機構、1010 主室、1011 分離前下地板バッファ、1012 装着前下地板バッファ、1013 下地板待機バッファ、1014 薄板ストッカ、1020 下地板搬入出副室、1021,1022,1031,1032 ゲートバルブ、1030 薄板搬出副室、1100 浸漬機構、1111 水平動作モータ、1112 水平動作軸、1121 昇降動作モータ、1122 懸垂支柱、1123 主柱、1131 回転機構、1132 動力伝達機構、1141,1142 回転軸、1151 固定支柱、1152 台座、1160,1341,1242 矢印、1161 下地板交換位置、1200 薄板分離機構、1210 掴み部吸着パッド、1211,1221,1231 吸着パッド、1212,1222,1232 真空ライン、1213,1223 垂直移動ロッド、1214,1224,1234 水平移動ロッド、1220 薄板搬送吸着パッド、1240 固定台、1300 下地板判別機構、1310 表面形状測定装置、1320 カメラ、1330 使用履歴管理装置、1331 情報伝達経路、1332 動作指令、1340 搬送装置、1350 搬送系、S,S1,S2 下地板、P 薄板、B バリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融液に下地板の表面を浸漬し、前記下地板の前記表面に前記融液が凝固することにより薄板を形成する浸漬機構と、
表面上に前記薄板が付着された前記下地板を前記浸漬機構から取り外す下地板交換機構と、
前記薄板を前記浸漬機構から取り外された前記下地板から分離する薄板分離機構と、
前記浸漬機構と前記下地板交換機構と前記薄板分離機構とが内部に配置される主室とを備える、薄板製造装置。
【請求項2】
前記主室内に配置され、
前記浸漬機構により形成される前記薄板が付着した前記下地板を載置できる分離前下地板バッファをさらに備える、請求項1に記載の薄板製造装置。
【請求項3】
前記主室内に配置され、
前記薄板分離機構により前記薄板を分離した前記下地板を、前記主室外に搬出する使用済下地板と、前記浸漬機構に搬出する再使用下地板とに判別する下地板判別機構をさらに備える、請求項1または2に記載の薄板製造装置。
【請求項4】
前記主室内に配置され、
前記下地板判別機構により判別される前記使用済下地板を載置できる下地板待機バッファをさらに備える、請求項3に記載の薄板製造装置。
【請求項5】
前記主室内に配置され、
前記下地板判別機構により判別される前記再使用下地板を載置できる装着前下地板バッファをさらに備える、請求項3または4に記載の薄板製造装置。
【請求項6】
前記主室内に配置され、
前記薄板分離機構により分離される前記薄板を載置できる薄板ストッカをさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載の薄板製造装置。
【請求項7】
融液に下地板の表面を浸漬し、前記下地板の表面に前記融液が凝固することにより薄板を形成する薄板製造方法であって、
前記融液に前記下地板を浸漬する浸漬工程と、
前記浸漬工程において前記薄板が付着した前記下地板を取り出す取出工程と、
前記取出工程において取り出された前記下地板から前記薄板を分離する分離工程と、
前記分離工程において分離された前記下地板を再度前記融液に浸漬する再浸漬工程とを備え、
前記浸漬工程と前記取出工程と前記分離工程と前記再浸漬工程とは主室内で実施される、薄板製造方法。
【請求項8】
前記分離工程において分離された前記下地板を前記主室外に搬出する下地板搬出工程をさらに備える、請求項7に記載の薄板製造方法。
【請求項9】
前記下地板搬出工程は、複数の前記下地板を前記主室外に搬出する工程を含む、請求項8に記載の薄板製造方法。
【請求項10】
前記融液の原料を追装する追装工程をさらに備え、
前記追装工程を実施する際に、前記下地板搬出工程を実施する、請求項8または9に記載の薄板製造方法。
【請求項11】
前記分離工程において分離された複数枚の前記薄板を前記主室外に搬出する薄板搬出工程をさらに備え、
前記追装工程を実施する際に、前記薄板搬出工程を実施する、請求項10に記載の薄板製造方法。
【請求項12】
前記分離工程において分離された複数枚の前記薄板を前記主室外に搬出する薄板搬出工程をさらに備える、請求項7に記載の薄板製造方法。
【請求項13】
前記融液の原料を追装する追装工程をさらに備え、
前記融液追加工程を実施する際に、前記薄板搬出工程を実施する、請求項12に記載の薄板製造方法。
【請求項14】
前記取出工程と前記分離工程との間に実施され、
前記取出工程において取り出される前記薄板が付着した前記下地板を前記主室内に配置された分離前下地板バッファに載置する分離前下地板載置工程をさらに備える、請求項7〜13のいずれかに記載の薄板製造方法。
【請求項15】
前記分離工程と前記再浸漬工程との間に実施され、
前記分離工程において分離された前記下地板を前記主室内に配置された装着前下地板バッファに載置する装着前下地板載置工程をさらに備える、請求項7〜14のいずれかに記載の薄板製造方法。
【請求項16】
前記主室内で、前記分離工程により前記薄板を分離した前記下地板を、前記主室外に搬出する使用済下地板と、前記浸漬機構に搬出する再使用下地板とに判別する下地板判別工程をさらに備える、請求項7〜15のいずれかに記載の薄板製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−120640(P2008−120640A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307755(P2006−307755)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】