説明

薬剤被覆ステントおよびその使用方法

本発明は、心血管疾患または腎臓病の治療または予防に有用である、有効量のc-Jun N末端キナーゼ(「JNK」)を含むステントに関する。さらに本発明は、アテローム性動脈硬化または再狭窄等の心血管疾患または腎臓病の治療または予防であって、前記治療または予防の必要な患者に有効量のJNK阻害剤を含むステントを移植することを含む、前記治療または予防に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年12月31日に出願した米国仮特許出願第60/437,332号の利益を主張するものである。なお前記出願の内容は、参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする。
【0002】
1. 発明の分野
本発明は、有効量のc-Jun N末端キナーゼ(「JNK」)を含むステントであって、心血管疾患または腎臓病の治療または予防に有用である、前記ステントに関する。さらに本発明は、アテローム性動脈硬化または再狭窄等の心血管疾患または腎臓病の治療または予防であって、前記治療または予防の必要な患者に有効量のJNK阻害剤を含むステントを移植することを含む、前記治療または予防に関する。
【背景技術】
【0003】
2. 本発明の背景
2.1 アテローム性動脈硬化と再狭窄の病理生物学
1994年には、米国では血管系疾患が原因で100万人近くが死亡した(これは癌の2倍であり、事故の10倍の数である)。National Vital Statistics Reports, 第49巻, 第8号を参照されたい。血管系疾患は、脳、心臓、腎臓、その他の生体器官、ならびに四肢に影響し得る。Ross R., Annu. Rev. Physiol. 57:791-804, 1995を参照されたい。
【0004】
最も一般的で深刻な血管系疾患は、アテローム性動脈硬化症である。アテローム性動脈硬化症は、動脈の不規則な内膜下の肥厚(アテローム)を特徴とし、動脈血管樹全体に影響を及ぼす。Espinola-Klein C.ら, Med. Klin. 97(4):221-228, 2002を参照されたい。
【0005】
アテローム性動脈硬化症の病変の発症は、血液に由来する血小板および単球からの化学的刺激に応答した血管壁の細胞成分の増殖が関与している。血管壁におけるこの細胞の増殖によって血管内腔の狭窄を引き起こす可能性がある。さらに、アテローム斑(アテローム性動脈硬化症の巣状病変)は、血栓または血餅の形成、出血、または潰瘍形成の部位となる可能性があり、その結果、罹患した血管によって供給される器官の血液供給に障害が起こる。
【0006】
アテローム性動脈硬化症の病因を説明するために、2つの主な仮説、すなわち、脂質仮説と慢性内皮損傷仮説が提案されている。
【0007】
脂質仮説は、血漿LDLレベルの上昇の結果、LDLが動脈壁へ浸透し、平滑筋細胞およびマクロファージ(泡沫細胞)に脂質の蓄積が生じると仮定している。
【0008】
慢性内皮損傷仮説は、様々な機序による内皮損傷が、内皮の損失、内皮下への血小板の接着、内皮下への血小板の凝集、血小板の凝集、単球およびT細胞リンパ球の走化性、ならびに中膜から内膜への平滑筋細胞の移動を誘導する血小板由来増殖因子および単球由来増殖因子の放出をもたらし、そこで、それらは複製し、結合組織およびプロテオグリカンを合成し、線維性プラークを形成すると仮定している。
【0009】
さらに、アテローム切除組織中のマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)のレベルは、血管診療後の組織における再狭窄の可能性または程度を示唆または予測し得ることが示されている。Takanoら, Circulation, 98 (17, 補遺): 4437, 1998。
【0010】
アテローム性動脈硬化症は、重篤な狭窄、血栓症、動脈瘤、または塞栓が起こるまで無症候性である。最初の症状および徴候は、罹患組織への血流能力の低下を反映して、需要に応じて増大する(例えば、アンギナまたは労作、間欠性跛行症)。一般に、症状および徴候は、アテロームが血管内腔にゆっくりと侵食するにつれて徐々に進行する。しかし、主要動脈が急性的に閉塞された場合、その影響は重篤であり、例えば、上述のような心筋梗塞形成などが起こる。
【0011】
アテローム性動脈硬化症の心血管および脳血管の合併症を予防または抑制するための伝統的な治療法は、アテローム性動脈硬化症に関連する危険因子(喫煙、肥満、異常血清濃度(LDLコレステロールレベル)、高血圧症、糖尿病、高ホモシステイン血症、および場合によりC.pneumoniae感染等)を低減または拮抗させることを目的とした間接的手法である。
【0012】
残念ながら、血管形成術、ステント術、アテローム切除術、および移植術等をはじめとする血管処置は、内皮細胞および平滑筋細胞の増殖によって悪化し、動脈の再狭窄または再閉塞をもたらすことが多い。これは、治療それ自体によって引き起こされる内皮細胞損傷が原因となり得る。再狭窄の治療には、二次的な血管形成術またはバイパス手術が必要とされることが多い。再発再狭窄のリスクをはじめとする、かかる治療の欠点は明らかである。
【0013】
再狭窄をもたらす生物学的機序と特徴の観点では、平滑筋細胞に関連するコラーゲンとプロテオグリカンを含有する細胞間マトリックスが蓄積するとアテロームと動脈過形成病変の特徴を示し、それがバルーン損傷または臨床血管形成術後に再狭窄を引き起こす。
【0014】
再狭窄を治療または予防するために様々な治療が試みられてきた。例えば、抗酸化特性を有するマルチビタミン(30,000IUのβ-カロテン、500mgのビタミンC、および700IUのビタミンE)、ならびに/またはプロブコール(500mg)の投与が研究されている。これらのビタミンを、血管形成術の前の4週間と術後6ヶ月間、1日2回投与した。Tardifら, N. Engl. J Med.: 337(6): 365-72, 1997を参照されたい。抗酸化ビタミン単独では効果がなかった。プロブコールは、血管形成術後の再狭窄率をほぼ50%低下させた。しかしプロブコールは、HDLコレステロールレベルを低下させ、危険な不整脈をもたらす可能性のある心拍障害を引き起こすことから米国市場から排除されている。
【0015】
再狭窄の症例を減少させるため、血管形成術およびステント移植中の冠動脈放射も同様に研究されている。これらの方法の不利な点としては、例えば、放射性の液体(Re 188−放射性レニウム)を充填したステントの取り扱いが挙げられる。
【0016】
アテローム性動脈硬化症、再狭窄および関連障害の予防および治療に有用な治療法が依然として大いに必要とされていることは明らかである。
【0017】
2.2 c-Jun N末端キナーゼ
3種類のJNK酵素が同定されている。これらの酵素は、3つの異なる遺伝子、JNK1、JNK2およびJNK3(Hibi M., Lin A., Smeal T., Minden A., Karin M. Genes Dev. 7:2135-2148, 1993; Mohit A. A., Martin M. H., およびMiller C. A. Neuron 14:67-78, 1995; Gupta, S., Barrett, T., Whitmarsh, A. J., Cavanagh, J., Sluss, H. K., Derijard, B.およびDavis, R. J. The EMBO J. 15:2760-2770, 1996)の選択的スプラスによる形態で表わされる。JNK経路の活性化は多数の疾患環境で立証されており、薬剤発見にあたってこの経路を標的とする論理的根拠を提供している。さらに、分子遺伝学的手法により、複数の疾患におけるJNK経路の発病上の機能が検証されている。
【0018】
JNK経路は、細菌性脂質多糖体に刺激されたマクロファージ、およびFceRII受容体を介して刺激された肥満細胞においてTNF-α産生を調節する(Swantek J. L., Cobb M. H., Geppert T. D. Mol. Cell. Biol. 17: 6274-6282, 1997; Ishizuka T., Tereda N., Gerwins P., Hamelmann E., Oshiba A., Fanger G. R., Johnson G. L., およびGelfland E. W. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 94:6358-6363, 1997)。JNK活性化を阻害すると、これらの細胞からのTNF-α分泌が効果的にモジュレートされる。従って、JNK経路は、この重要なプロ炎症サイトカインの産生を制御する。活性化内皮細胞および活性化平滑筋細胞は、ともにB細胞およびT細胞アクチベーターIL-6を生産する。IL-6は、IL-1により刺激された平滑筋細胞により分泌される新規合成タンパク質のほぼ4%を占める。またヒト血管壁細胞は、単球走化因子およびアクチベーター単球走化因子タンパク質-1(MCP-1)/JE(マクロファージ走化因子および活性化因子としても知られている)、ならびに単球分化および活性化因子M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)を産生する。従って、理論に限定されるものではないが、JNKを阻害することによって、M-CSFの産生を制限し、アテローム性動脈硬化症または再狭窄を治療または予防する効果的な方法を提供することができる。
【発明の開示】
【0019】
3. 本発明の要約
一実施形態では、本発明は、有効量のJNK阻害剤を含むステントであって、心血管疾患または腎臓病の治療または予防に有用である、前記ステント(「本発明のステント」)に関する。一実施形態では、本発明のステントは、有効量のJNK阻害剤を含む被覆(「本被覆」)を含む。別の実施形態では、本ステントは、有効量のJNK阻害剤がその内部に組み込まれた材料(「本材料」)を含む。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、有効量のJNK阻害剤でステントを被覆するステップを含む、本発明のステントの製造方法を包含する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、有効量のJNK阻害剤がその内部に組み込まれた材料を用いてステントを製造するステップを含む、本発明のステントの製造方法を包含する。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、心血管疾患または腎臓病の治療または予防方法が必要な患者に本発明のステントを移植することを含む、心血管疾患または腎臓病の治療または予防方法を包含する。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、本発明のステントとその使用に関する説明書を含むキットを包含する。
【0024】
以下の詳細な記載および実施例は本発明の実施形態を説明するものであるが、これに限定されるものではない。
【0025】
3.1 定義
本明細書では、「患者」という用語は、動物(例えば、雌ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、またはモルモット)、好ましくは非霊長類または霊長類等の哺乳動物(例えば、サルまたはヒト)、最も好ましくは、ヒトを意味する。
【0026】
「アルキル」は、1〜10個の炭素原子を有する飽和直鎖状または分枝状非環状炭化水素を意味する。「低級アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有する、上に定義したアルキルを意味する。代表的な飽和直鎖状アルキルとしては、-メチル、-エチル、-n-プロピル、-n-ブチル、-n-ペンチル、-n-ヘキシル、-n-ヘプチル、-n-オクチル、-n-ノニル、および-n-デシルが挙げられ;一方、飽和分枝状アルキルとしては、-イソプロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチル、-イソペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-エチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、2-メチル-4-エチルペンチル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2-メチル-4-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル、3,3-ジエチルヘキシル等が挙げられる。
【0027】
「アルケニル基」または「アルキリデン」は、2〜10個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1個の炭素-炭素の二重結合を含んでいる直鎖状または分枝状の非環状炭化水素を意味する。代表的な直鎖状および分枝状の(C2-C10)アルケニルとしては、-ビニル、-アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチレニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、-2,3-ジメチル-2-ブテニル、-1-ヘキセニル、-2-ヘキセニル、-3-ヘキセニル、-1-ヘプテニル、-2-ヘプテニル、-3-ヘプテニル、-1-オクテニル、-2-オクテニル、-3-オクテニル、-1-ノネニル、-2-ノネニル、-3-ノネニル、-1-デセニル、-2-デセニル、-3-デセニル等が挙げられる。アルケニル基は、非置換であっても、置換されていてもよい。「環状アルキリデン」は、3〜8個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1個の炭素-炭素の二重結合を含む環であって、前記環が1〜3個のヘテロ原子を有し得るものである。
【0028】
「アルキニル基」は、2〜10個の炭素原子を有し、かつ少なくとも炭素-炭素の三重結合を含んでいる直鎖状または分枝状の非環状炭化水素を意味する。代表的な直鎖状および分枝状の-(C2-C10)アルキニルとしては、-アセチレニル、-プロピニル、-1-ブチニル、-2-ブチニル、-1-ペンチニル、-2-ペンチニル、-3-メチル-1-ブチニル、-4-ペンチニル、-1-ヘキシニル、-2-ヘキシニル、-5-ヘキシニル、-1-ヘプチニル、-2-ヘプチニル、-6-ヘプチニル、-1-オクチニル、-2-オクチニル、-7-オクチニル、-1-ノニニル、-2-ノニニル、-8-ノニニル、-1-デシニル、-2-デシニル、-9-デシニル等が挙げられる。アルキニル基は、非置換であっても、置換されていてもよい。
【0029】
「ハロゲン」および「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0030】
「ハロアルキル」は、1種または複数のハロゲン原子で置換されているアルキル基(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味する。
【0031】
「ケト」は、カルボニル基(すなわち、C=O)を意味する。
【0032】
「アシル」は、-C(O)アルキル基(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-C(O)CH3、-C(O)CH2CH3、-C(O)(CH2)2CH3、-C(O)(CH2)3CH3、-C(O)(CH2)4CH3、-C(O)(CH2)5CH3等が挙げられる。
【0033】
「アシルオキシ」は、-OC(O)アルキル基(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-OC(O)CH3、-OC(O)CH2CH3、-OC(O)(CH2)2CH3、-OC(O)(CH2)3CH3、-OC(O)(CH2)4CH3、-OC(O)(CH2)5CH3等が挙げられる。
【0034】
「エステル」は、-C(O)Oアルキル基(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-C(O)OCH3、-C(O)OCH2CH3、-C(O)O(CH2)2CH3、-C(O)O(CH2)3CH3、-C(O)O(CH2)4CH3、-C(O)O(CH2)5CH3等が挙げられる。
【0035】
「アルコキシ」は、-O-(アルキル)(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-OCH3、-OCH2CH3、-O(CH2)2CH3、-O(CH2)3CH3、-O(CH2)4CH3、-O(CH2)5CH3等が挙げられる。
【0036】
「低級アルコキシ」は、-O-(低級アルキル)(ここで、低級アルキルは上に定義されているとおりである)を意味する。
【0037】
「アルコキシアルコキシ」は、-O-(アルキル)-O-(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して上に定義されているアルキル基である)を意味し、-OCH2OCH3、-OCH2CH2OCH3、-OCH2CH2OCH2CH3等が挙げられる。
【0038】
「アルコキシカルボニル」は、-C(=O)O-(アルキル)(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-C(=O)O-CH3、-C(=O)O-CH2CH3、-C(=O)O-(CH2)2CH3、-C(=O)O-(CH2)3CH3、-C(=O)O-(CH2)4CH3、-C(=O)O-(CH2)5CH3等が挙げられる。
【0039】
「アルコキシカルボニルアルキル」は、-(アルキル)-C(=O)O-(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して上に定義されているとおりである)を意味し、-CH2-C(=O)O-CH3、-CH2-C(=O)O-CH2CH3、-CH2-C(=O)O-(CH2)2CH3、-CH2-C(=O)O-(CH2)3CH3、-CH2-C(=O)O-(CH2)4CH3、-CH2-C(=O)O-(CH2)5CH3等が挙げられる。
【0040】
「アルコキシアルキル」は、-(アルキル)-O-(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して上に定義されているアルキル基である)を意味し、-CH2OCH3、-CH2OCH2CH3、-(CH2)2OCH2CH3、-(CH2)2O(CH2)2CH3等が挙げられる。
【0041】
「アリール」は、5〜10個の環原子を含有する炭素環式芳香族基を意味する。代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、ピリジニルおよびナフチル、ならびに5,6,7,8-テトラヒドロナフチルをはじめとするベンゾ結合(benzo-fused)炭素環式成分が挙げられる。炭素環式芳香族基は、非置換であっても、置換されていてもよい。一実施形態では、炭素環式芳香族基はフェニル基である。
【0042】
「アリールオキシ」は、-O-アリール基(ここで、アリールは上に定義したとおりである)を意味する。アリールオキシ基は、非置換であっても、置換されていてもよい。一実施形態では、アリールオキシ基のアリール環はフェニル基である。
【0043】
「アリールアルキル」は、-(アルキル)-(アリール)(ここで、アルキルおよびアリールは上に定義したとおりである)を意味し、-(CH2)フェニル、-(CH2)2フェニル、-(CH2)3フェニル、-CH(フェニル)2、-CH(フェニル)3、-(CH2)トリル、-(CH2)アントラセニル、-(CH2)フルオレニル、-(CH2)インデニル、-(CH2)アズレニル、-(CH2)ピリジニル、-(CH2)ナフチル等が挙げられる。
【0044】
「アリールアルキルオキシ」は、-O-(アルキル)-(アリール)(ここで、アルキルおよびアリールは上に定義されているとおりである)を意味し、-O-(CH2)2フェニル、-O-(CH2)3フェニル、-O-CH(フェニル)2、-O-CH(フェニル)3、-O-(CH2)トリル、-O-(CH2)アントラセニル、-O-(CH2)フルオレニル、-O-(CH2)インデニル、-O-(CH2)アズレニル、-O-(CH2)ピリジニル、-O-(CH2)ナフチル等が挙げられる。
【0045】
「アリールオキシアルキル」は、-(アルキル)-O-(アリール)(ここで、アルキルおよびアリールは上に定義されているとおりである)を意味し、-CH2-O-(フェニル)、-(CH2)2-O-フェニル、-(CH2)3-O-フェニル、-(CH2)-O-トリル、-(CH2)-O-アントラセニル、-(CH2)-O-フルオレニル、-(CH2)-O-インデニル、-(CH2)-O-アズレニル、-(CH2)-O-ピリジニル、-(CH2)-O-ナフチル等が挙げられる。
【0046】
「シクロアルキル」は、炭素原子と水素原子を有し、かつ炭素-炭素の多重結合を有していない単環式または多環式の飽和環を意味する。シクロアルキル基の例としては、これらに限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルをはじめとする(C3-C7)シクロアルキル基、ならびに飽和環状テルペンおよび複環状テルペンが挙げられる。シクロアルキル基は、非置換であっても、置換されていてもよい。一実施形態では、シクロアルキル基は単環式環または二環式環である。
【0047】
「シクロアルキルオキシ」は、-O-(シクロアルキル)(ここで、シクロアルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-O-シクロプロピル、-O-シクロブチル、-O-シクロペンチル、-O-シクロヘキシル、-O-シクロヘプチル等が挙げられる。
【0048】
「シクロアルキルアルキルオキシ」は、-O-(アルキル)-(シクロアルキル)(ここで、シクロアルキルおよびアルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-O-CH2-シクロプロピル、-O-(CH2)2-シクロプロピル、-O-(CH2)3-シクロプロピル、-O-(CH2)4-シクロプロピル、O-CH2-シクロブチル、O-CH2-シクロペンチル、O-CH2-シクロヘキシル、O-CH2-シクロヘプチル等が挙げられる。
【0049】
「アミノアルコキシ」は、-O-(アルキル)-NH2(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-O-CH2-NH2、-O-(CH2)2-NH2、-O-(CH2)3-NH2、-O-(CH2)4-NH2、-O-(CH2)5-NH2等が挙げられる。
【0050】
「モノアルキルアミノ」は、-NH(アルキル)(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-NHCH3、-NHCH2CH3、-NH(CH2)2CH3、-NH(CH2)3CH3、-NH(CH2)4CH3、-NH(CH2)5CH3等が挙げられる。
【0051】
「ジアルキルアミノ」は、-N(アルキル)(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して上に定義されているアルキル基である)を意味し、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、-N((CH2)2CH3)2、-N(CH3)(CH2CH3)等が挙げられる。
【0052】
「モノアルキルアミノアルコキシ」は、-O-(アルキル)-NH(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して上に定義されているアルキル基である)を意味し、-O-(CH2)-NHCH3、-O-(CH2)-NHCH2CH3、-O-(CH2)-NH(CH2)2CH3、-O-(CH2)-NH(CH2)3CH3、-O-(CH2)-NH(CH2)4CH3、-O-(CH2)-NH(CH2)5CH3、-O-(CH2)2-NHCH3等が挙げられる。
【0053】
「ジアルキルアミノアルコキシ」は、-O-(アルキル)-N(アルキル)(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して上に定義されているアルキル基である)を意味し、-O-(CH2)-N(CH3)2、-O-(CH2)-N(CH2CH3)2、-O-(CH2)-N((CH2)2CH3)2、-O-(CH2)-N(CH3)(CH2CH3)等が挙げられる。
【0054】
「アリールアミノ」は、-NH(アリール)(ここで、アリールは上に定義されているとおりである)を意味し、-NH(フェニル)、-NH(トリル)、-NH(アントラセニル)、-NH(フルオレニル)、-NH(インデニル)、-NH(アズレニル)、-NH(ピリジニル)、-NH(ナフチル)等が挙げられる。
【0055】
「アリールアルキルアミノ」は、-NH-(アルキル)-(アリール)(ここで、アルキルおよびアリールは上に定義されているとおりである)を意味し、-NH-CH2-(フェニル)、-NH-CH2-(トリル)、-NH-CH2-(アントラセニル)、-NH-CH2-(フルオレニル)、-NH-CH2-(インデニル)、-NH-CH2-(アズレニル)、-NH-CH2-(ピリジニル)、-NH-CH2-(ナフチル)、-NH-(CH2)2-(フェニル)等が挙げられる。
【0056】
「アルキルアミノ」は、-N(アルキル)(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して上に定義されているアルキル基である)、例えば-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、-N((CH2)2CH3)2、-N(CH3)(CH2CH3)、ならびに-N(アルキル)(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して上に定義されているアルキル基である)、例えば-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、-N((CH2)2CH3)2、-N(CH3)(CH2CH3)等の上に定義されているモノアルキルアミノまたはジアルキルアミノを意味する。
【0057】
「シクロアルキルアミノ」は、-NH-(シクロアルキル)(ここで、シクロアルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-NH-シクロプロピル、-NH-シクロブチル、-NH-シクロペンチル、-NH-シクロヘキシル、-NH-シクロヘプチル等が挙げられる。
【0058】
「カルボキシル」および「カルボキシ」は-COOHを意味する。
【0059】
「シクロアルキルアルキルアミノ」は、-NH-(アルキル)-(シクロアルキル)(ここで、アルキルおよびシクロアルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-NH-CH2-シクロプロピル、-NH-CH2-シクロブチル、-NH-CH2-シクロペンチル、-NH-CH2-シクロヘキシル、-NH-CH2-シクロヘプチル、-NH-(CH2)2-シクロプロピル等が挙げられる。
【0060】
「アミノアルキル」は、-(アルキル)-NH2(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、CH2-NH2、-(CH2)2-NH2、-(CH2)3-NH2、-(CH2)4-NH2、-(CH2)5-NH2等が挙げられる。
【0061】
「モノアルキルアミノアルキル」は、-(アルキル)-NH(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して上に定義されているアルキル基である)を意味し、-CH2-NH-CH3、-CH2-NHCH2CH3、-CH2-NH(CH2)2CH3、-CH2-NH(CH2)3CH3、-CH2-NH(CH2)4CH3、-CH2-NH(CH2)5CH3、-(CH2)2-NH-CH3等が挙げられる。
【0062】
「ジアルキルアミノアルキル」は、-(アルキル)-N(アルキル)(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して上に定義されているアルキル基である)を意味し、-CH2-N(CH3)2、-CH2-N(CH2CH3)2、-CH2-N((CH2)2CH3)2、-CH2-N(CH3)(CH2CH3)、-(CH2)2-N(CH3)2等が挙げられる。
【0063】
「ヘテロアリール」は、5〜10員であって、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を有し、かつ少なくとも1個の炭素原子を含有している芳香族ヘテロ環を意味し、これには単環式および二環式の環系が含まれる。代表的なヘテロアリールは、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ピリジル、フリル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、キノリニル、ピロリル、インドリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ピリミジル、オキセタニル、アゼピニル、ピペラジニル、モルホリニル、ジオキサニル、チエタニル、およびオキサゾリルである。
【0064】
「ヘテロアリールアルキル」は、-(アルキル)-(ヘテロアリール)(ここで、アルキルおよびヘテロアリールは上に定義されているとおりである)を意味し、-CH2-トリアゾリル、-CH2-テトラゾリル、-CH2-オキサジアゾリル、-CH2-ピリジル、-CH2-フリル、-CH2-ベンゾフラニル、-CH2-チオフェニル、-CH2-ベンゾチオフェニル、-CH2-キノリニル、-CH2-ピロリル、-CH2-インドリル、-CH2-オキサゾリル、-CH2-ベンゾオキサゾリル、-CH2-イミダゾリル、-CH2-ベンゾイミダゾリル、-CH2-チアゾリル、-CH2-ベンゾチアゾリル、-CH2-イソオキサゾリル、-CH2-ピラゾリル、-CH2-イソチアゾリル、-CH2-ピリダジニル、-CH2-ピリミジニル、-CH2-ピラジニル、-CH2-トリアジニル、-CH2-シンノリニル、-CH2-フタラジニル、-CH2-キナゾリニル、-CH2-ピリミジル、-CH2-オキセタニル、-CH2-アゼピニル、-CH2-ピペラジニル、-CH2-モルホリニル、-CH2-ジオキサニル、-CH2-チエタニル、-CH2-オキサゾリル、-(CH2)2-トリアゾリル等が挙げられる。
【0065】
「ヘテロ環」は、5〜7員の単環式、または7〜10員の二環式のヘテロ環を意味し、これらは飽和されていても、不飽和であってもよく、また、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を含有し、この場合、窒素と硫黄のヘテロ原子は場合により酸化されていてもよく、また窒素ヘテロ原子は場合により4級化されていてもよく、例えば、上記の任意のヘテロ環がベンゼン環に結合している二環式環が挙げられる。ヘテロ環は、任意のヘテロ原子または炭素原子を介して結合され得る。ヘテロ環は、上に定義されているヘテロアリールを含んでいる。代表的なヘテロ環としては、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロプリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル等が挙げられる。
【0066】
「フェニルに縮合しているヘテロ環」は、フェニル環の隣接する2個の炭素原子でフェニル環に結合されているヘテロ環(ここで、ヘテロ環は上に定義されているとおりである)を意味する。
【0067】
「ヘテロシクロアルキル」は、-(アルキル)-(ヘテロ環)(ここで、アルキルおよびヘテロ環は上に定義されているとおりである)を意味し、-CH2-モルホリニル、-CH2-ピロリジノニル、-CH2-ピロリジニル、-CH2-ピペリジニル、-CH2-ヒダントイニル、-CH2-バレロラクタミル、-CH2-オキシラニル、-CH2-オキセタニル、-CH2-テトラヒドロフラニル、-CH2-テトラヒドロピラニル、-CH2-テトラヒドロピリジニル、-CH2-テトラヒドロプリミジニル、-CH2-テトラヒドロチオフェニル、-CH2-テトラヒドロチオピラニル、-CH2-テトラヒドロピリミジニル、-CH2-テトラヒドロチオフェニル、-CH2-テトラヒドロチオピラニル等が挙げられる。
【0068】
本明細書で使用されている「置換(されている)」という用語は、置換されている成分の少なくとも1個の水素原子が置換基と置換されている、上記の任意の基(すなわち、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、およびヘテロシクロアルキル)を意味する。一実施形態では、置換されている基の各炭素原子は、2個以下の置換基で置換される。別の実施形態では、置換されている基の各炭素原子は、1個以下の置換基で置換される。ケトン置換基の場合、2個の水素原子は、二重結合によって炭素に結合されている酸素と置換される。置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、一置換または二置換のアミノアルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、ヘテロシクロアルキル、-NRaRb、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)NRaRb、-NRaC(=O)ORb-NRaSO2Rb、-ORa、-C(=O)RaC(=O)ORa-C(=O)NRaRb、-OC(=O)Ra、-OC(=O)ORa、-OC(=O)NRaRb、-NRaSO2Rb、または式:-Y-Z-Raの基(式中、Yはアルカンジイルであるか、直接結合であり、Zは、-O-、-S-、-N(Rb)-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-N(Rb)C(=O)-、-C(=O)N(Rb)-であるか、直接結合であり、式中、RaおよびRbは、同一であるか異なっており、かつ独立して、水素、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、もしくはヘテロシルエアルキル(heterocylealkyl)であるか、あるいはRaおよびRbは、それら結合されている窒素原子と一緒になってヘテロ環を形成する)が挙げられる。
【0069】
「ハロアルキル」は、ハロゲン(ここで、ハロゲンは上に定義されているとおりである)で置換されている1種または複数の水素原子を有するアルキル(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-CF3、-CHF2、-CH2F、-CBr3、-CHBr2、-CH2Br、-CCl3、-CHCl2、-CH2Cl、-CI3、-CHI2、-CH2I、-CH2-CF3、-CH2-CHF2、-CH2-CH2F、-CH2-CBr3、-CH2-CHBr2、-CH2-CH2Br、-CH2-CCl3、-CH2-CHCl2、-CH2-CH2Cl、-CH2-CI3、-CH2-CHI2、-CH2-CH2I等が挙げられる。
【0070】
「ヒドロキシアルキル」は、ヒドロキシで置換されている1種または複数の水素原子を有するアルキル(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-CH2OH、-CH2CH2OH、-(CH2)2CH2OH、-(CH2)3CH2OH、-(CH2)4CH2OH、-(CH2)5CH2OH、-CH(OH)-CH3、-CH2CH(OH)CH3等が挙げられる。
【0071】
「ヒドロキシ」は-OHを意味する。
【0072】
「スルホニル」は-SO3Hを意味する。
【0073】
「スルホニルアルキル」は-、SO2-(アルキル)(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-SO2-CH3、-SO2-CH2CH3、-SO2-(CH2)2CH3、-SO2-(CH2)3CH3、-SO2-(CH2)4CH3、-SO2-(CH2)5CH3等が挙げられる。
【0074】
「スルフィニルアルキル」は、-SO-(アルキル)(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-SO-CH3、-SO-CH2CH3、-SO-(CH2)2CH3、-SO-(CH2)3CH3、-SO-(CH2)4CH3、-SO-(CH2)5CH3等が挙げられる。
【0075】
「スルホンアミドアルキル」は、-NHSO2-(アルキル)(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-NHSO2-CH3、-NHSO2-CH2CH3、-NHSO2-(CH2)2CH3、-NHSO2-(CH2)3CH3、-NHSO2-(CH2)4CH3、-NHSO2-(CH2)5CH3等が挙げられる。
【0076】
「チオアルキル」は、-S-(アルキル)(ここで、アルキルは上に定義されているとおりである)を意味し、-S-CH3、-S-CH2CH3、-S-(CH2)2CH3、-S-(CH2)3CH3、-S-(CH2)4CH3、-S-(CH2)5CH3等が挙げられる。
【0077】
本明細書では、「JNK阻害剤」という用語は、これらに制限されるものではないが、本明細書に記載されている化合物を包含する。理論により限定されるものではないが、特定のJNK阻害剤は、in vitroまたはin vivoにおいてJNKの活性を阻害することができる。JNK阻害剤は、その製薬上許容可能な塩、遊離塩基、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、またはプロドラッグの形態であってよい。かかる阻害活性は、5.2節に記載されているものをはじめとする、当技術分野で周知のアッセイまたは動物モデルによって測定することができる。一実施形態では、JNK阻害剤は、構造(I)〜(III)の化合物である。
【0078】
本明細書では、「本発明のステント」は、動脈、静脈または毛細管を開くことによって血流を改善する;動脈、静脈または毛細管の開きを維持する;動脈、静脈または毛細管中のすべての裂傷部または開口部を閉じる;動脈壁、静脈壁または毛細管壁が崩壊または再度閉塞するのを予防する;あるいは小さなプラークの数片が破壊されるのを防止するのに有用なすべての器具を意味する。一実施形態では、ステントはステントグラフトである。
【0079】
本明細書では、「ステントグラフト」は、グラフト人工器官を形成するために人工材料または天然材料で被覆されているすべてのステントを意味する。またこの用語は、ステントが、天然グラフト材料または人工グラフト材料で全体的に被覆されている移植ステント(例えば、Vanguard-グラフトステント、Palmaz-Impragraftステント、またはCorvitaステント)を包含する。一実施形態では、ステントグラフトは人工器官である。
【0080】
JNK阻害剤に関して使用する場合の「有効量」は、心血管疾患または腎臓病を治療または予防するのに有用なJNK阻害剤の量である。
【0081】
別の活性剤に関連して用いられる場合の「有効量」は、JNK阻害剤がその治療効果または予防効果を及ぼしている間、別の活性剤の治療効果または予防効果を提供するのに有用な別の活性剤の量である。
【0082】
被覆する場合、被覆は、ステントの表面の任意の部分上に存在させることができる。一実施形態では、表面は内表面である。別の実施形態では、表面は外面である。一実施形態では、その層は表面の少なくとも約10%を覆う。別の実施形態では、その層は表面の少なくとも約20%を覆う。別の実施形態では、その層は表面の少なくとも約30%を覆う。別の実施形態では、その層は表面の少なくとも約40%を覆う。別の実施形態では、その層は表面の少なくとも約50%を覆う。別の実施形態では、その層は表面の少なくとも約60%を覆う。別の実施形態では、その層は表面の少なくとも約70%を覆う。別の実施形態では、その層は表面の少なくとも約80%を覆う。別の実施形態では、その層は表面の少なくとも約90%を覆う。別の実施形態では、その層は表面の約100%を覆う。
【0083】
本明細書では、「予防する」という用語には、心血管疾患または腎臓病、特に、アテローム性動脈硬化症、狭窄または再狭窄、あるいはアテローム性動脈硬化症、狭窄または再狭窄の症状を抑制することが含まれる。
【0084】
本明細書では、「治療する」という用語には、心血管疾患または腎臓病、特に、アテローム性動脈硬化症、狭窄または再狭窄、あるいはアテローム性動脈硬化症、狭窄または再狭窄の症状を根絶することが含まれる。一実施形態では、「治療する」とは、心血管疾患または腎臓病、特に、アテローム性動脈硬化症、狭窄または再狭窄、あるいはアテローム性動脈硬化症、狭窄または再狭窄の症状の拡大を最小限にすること、あるいは悪化を最小限にすることを意味する。
【0085】
「JNK」は、JNK 1、JNK 2またはJNK 3遺伝子によって発現されるタンパク質またはそのアイソフォームを意味する(Gupta, S., Barrett, T., Whitmarsh, A. J., Cavanagh, J., Sluss, H. K., Derijard, B. およびDavis, R. J. The EMBO J. 15:2760-2770 (1996))。
【0086】
本明細書では、「製薬上許容可能な塩(類)」は、無機酸および無機塩基、ならびに有機酸および有機塩基をはじめとする、製薬上許容可能な非毒性の酸または塩基から調製される塩を意味する。JNK阻害剤の好適な製薬上許容可能な塩基付加塩としては、これらに限定されるものではないが、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛から製造される金属塩、あるいはリジン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、およびプロカインから製造される有機塩が挙げられる。好適な非毒性の酸としては、これらに限定されるものではないが、無機酸および有機酸、例えば、酢酸、アルギン酸、アントラニル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、フロ酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グリコール酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、硫酸、酒石酸、およびp-トルエンスルホン酸が挙げられる。特定の非毒性の酸としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、およびメタンスルホン酸が挙げられる。従って、特定の塩の例としては、塩酸塩およびメシレート塩が挙げられる。他の塩は当技術分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing, Easton PA (1990)、またはRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, Mack Publishing, Easton PA (1995)を参照されたい。
【0087】
本明細書では、「多形体(類)」という用語および本明細書での関連語は、結晶格子中の分子の順序の結果、異なる物性を有しているJNK阻害剤の固体形態を意味する。固体形態により示される物性の差は、例えば、貯蔵安定性、圧縮性および密度(製剤および製品製造において重要)、ならびに溶解速度(バイオアベイラビリティの測定における重要因子)等の製薬上のパラメーターに影響を及ぼす。安定性の差は、化学反応性(例えば、ある固体形態からなる場合に、別の固体形態からなる場合よりも投与剤形が急速に変色するといった酸化における差異)、または機械的変化(例えば、速度論的に好まれる多形体が熱力学的により安定した固体形態に変換される場合、錠剤は保存時に崩壊する)、またはその両方(例えば、ある固体形態の錠剤は高湿度で崩壊しやすい)に起因し得る。溶解性/分解の差の結果、極端な場合、一部の固体形態の変化は、効力の低下、またはそれとは正反対に毒性をもたらす可能性がある。さらに、結晶の物性は加工時に重要となり得る。例えば、ある固体形態は溶媒和物を形成しやすい、あるいは濾過および洗浄して不純物を無くすことが難しい(すなわち、ある固体形態と他の形態との間で粒子形状と粒度分布は異なっている可能性がある)などがある。
【0088】
本明細書では、また特段の記載のない限り、「包接化合物」という用語は、内部に封入されているゲスト分子(例えば、溶媒または水)を有する空間(例えばチャンネル(channel))を含有している結晶格子の形状のJNK阻害剤またはその塩を意味する。
【0089】
本明細書では、また特段の記載のない限り、「水和物」という用語は、非共有結合の分子間力によって結合されている化学量論的量または非化学量論的量の水をさらに含むJNK阻害剤またはその塩を意味する。
【0090】
本明細書では、また特段の記載のない限り、「プロドラッグ」という用語は、加水分解、酸化、または生物学上の条件下(in vitroまたはin vivo)で反応し、活性化合物、特にJNK阻害剤を提供するJNK阻害剤誘導体を意味する。プロドラッグの例としては、これらに限定されるものではないが、生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイド、および生加水分解性ホスフェート類似体等の生加水分解性成分を含む、JNK阻害剤の誘導体および代謝産物が挙げられる。好ましくは、カルボキシル官能基を含む化合物のプロドラッグは、カルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、分子上に存在する任意のカルボン酸成分のエステル化により形成されるのが好都合である。プロドラッグは、一般には周知の方法、例えば、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery 第6版(Donald J. Abraham編集, 2001, Wiley) およびDesign and Application of Prodrugs (H. Bundgaard編集, 1985, Harwood Academic Publishers Gmfh)により記載されている方法を用いて調製することができる。
【0091】
本明細書では、また特段の記載のない限り、「立体異性体」または「立体異性体的に純粋な」という用語は、その化合物の他の立体異性体が実質的に存在しないJNK阻害剤の1つの立体異性体を意味する。例えば、1つのキラル中心を有する立体異性体的に純粋な化合物には、その化合物の反対の鏡像異性体は実質的に存在しない。2つのキラル中心を有する立体異性体的に純粋な化合物には、その化合物の別のジアステレオマーは実質的には存在しない。一般的な立体異性体的に純粋な化合物は、化合物の1つの立体異性体を約80重量%以上、その化合物の別の立体異性体を20重量%未満含み、より好ましくは、化合物の1つの立体異性体を約90重量%以上、その化合物の別の立体異性体を10重量%未満含み、より一層好ましくは、化合物の1つの立体異性体を約95重量%以上、その化合物の別の立体異性体を5重量%未満含み、最も好ましくは、化合物の1つの立体異性体を約97重量%以上、その化合物の別の立体異性体を3重量%未満含む。
【0092】
4. 発明の詳細な説明
一実施形態では、本発明は、心血管疾患または腎臓病を治療または予防するのに有用な本発明のステントを包含する。
【0093】
別の実施形態では、本発明は、アテローム性動脈硬化症をはじめとする、心血管疾患または腎臓病の治療または予防方法、特に、かかる治療または予防が必要な患者に本発明のステントを移植することを含む、血管形成術等の血管処置後の再狭窄の治療または予防を包含する。
【0094】
別の実施形態では、本発明は、有効量のJNK阻害剤でステントを被覆するステップを含む、本発明のステントの製造方法を包含する。被覆ステップは、有効量の1種または複数のJNK阻害剤をステントに浸漬、噴霧、鋳込、積層、添加すること、あるいは充填することを含み得る。
【0095】
別の実施形態では、本発明は、有効量のJNK阻害剤がその内部に組み込まれた材料を用いてステントを製造するステップを含む、本発明のステントの製造方法を包含する。
【0096】
別の実施形態では、本発明のステントは、心血管疾患または腎臓病を治療または予防するのに有用な有効量の別の活性剤をさらに含む。かかる活性剤としては、これらに限定されるものではないが、抗血液凝固剤、代謝拮抗剤、抗炎症剤、抗血小板剤、抗トロンビン剤、抗有糸分裂剤、細胞静止剤、および抗増殖剤が挙げられる(その他の活性剤のさらなる例については第4.5節を参照されたい)。
【0097】
別の実施形態では、本発明のステントは一酸化窒素をさらに含む。
【0098】
別の実施形態では、本発明のステントは、移植片拒絶を予防することができる、抗生物質または抗ウィルス剤、またはその混合物をさらに含む。
【0099】
一実施形態では、被覆は複数の層を含む。
【0100】
一実施形態では、被覆は放出制御被覆である。
【0101】
一実施形態では、本発明のステントは、内部に組み込まれたJNK阻害剤の放出制御を可能にする材料で構成されている。
【0102】
別の実施形態では、本発明は、本発明のステントおよびその使用のための説明書を含むキットを包含する。
【0103】
4.1 具体的なJNK阻害剤
上記のように、本発明は、心血管疾患または腎臓病を治療または予防するのに有用な方法であって、それらの治療または予防が必要な患者に本発明のステント(すなわち、有効量のJNK阻害剤を含むステント)を移植することを含む、前記方法を目的とする。具体的なJNK阻害剤を以下に述べる。
【0104】
一実施形態では、JNK阻害剤は、以下の構造(I):
【化1】

【0105】
(式中、
Aは、直接結合、-(CH2)a-、-(CH2)bCH=CH(CH2)c-、または-(CH2)bC≡C(CH2)c-であり;
R1は、フェニルに縮合しているアリール、ヘテロアリールまたはヘテロ環であり、各基は場合によりR3から独立して選択される1〜4個の置換基と置換されていてもよく;
R2は、-R3、-R4、-(CH2)bC(=O)R5、-(CH2)bC(=O)OR5、-(CH2)bC(=O)NR5R6、-(CH2)bC(=O)NR5(CH2)cC(=O)R6、-(CH2)bNR5C(=O)R6、-(CH2)bNR5C(=O)NR6R7、-(CH2)bNR5R6、-(CH2)bOR5、-(CH2)bSOdR5、または-(CH2)bSO2NR5R6であり;
aは1、2、3、4、5、または6であり;
bおよびcは、同一であるか異なっており、かつ各存在において独立して0、1、2、3または4から選択され;
dは、各存在において0、1または2であり;
R3は、各存在において、独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、ヘテロシクロアルキル、-C(=O)OR8、-OC(=O)R8、-C(=O)NR8R9、-C(=O)NR8OR9、-SO2NR8R9、-NR8SO2R9、-CN、-NO2、-NR8R9、-NR8C(=O)R9、-NR8C(=O)(CH2)bOR9、-NR8C(=O)(CH2)bR9、-O(CH2)bNR8R9、またはフェニルに縮合しているヘテロ環であり;
R4は、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、またはヘテロシクロアルキルであり、各基は、場合により、R3から独立して選択される1〜4個の置換基で置換されていてもよく、あるいはR4はハロゲンまたはヒドロキシであり;
R5、R6およびR7は、同一であるか異なっており、かつ各存在において、独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、またはヘテロシクロアルキルであり、ここで、R5、R6およびR7の各基は、場合により、R3から独立して選択される1〜4個の置換基で置換されていてもよく;
R8およびR9は、同一であるか異なっており、かつ各存在において、独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、またはヘテロシクロアルキルであるか、あるいはR8およびR9は、それらが結合されている1個または複数の原子と一緒になってヘテロ環を形成しており、ここで、R8、R9の各基、ならびにヘテロ環を形成するために一緒になっているR8およびR9は、場合により、R3から独立して選択される1〜4個の置換基と置換されていもよい)
を有している。
【0106】
一実施形態では、-A-R1は、ハロゲン、アルコキシ、-NR8C(=O)R9、-C(=O)NR8R9、および-O(CH2)bNR8R9(式中、bは2または3であり、かつ式中、R8とR9は上に定義されているとおりである)から独立して選択される1〜4個の置換基と場合により置換されていてもよいフェニルである。
【0107】
別の実施形態では、R2は、-R4、-(CH2)bC(=O)R5、-(CH2)bC(=O)OR5、-(CH2)bC(=O)NR5R6、-(CH2)bC(=O)NR5(CH2)cC(=O)R6、-(CH2)bNR5C(=O)R6、-(CH2)bNR5C(=O)NR6R7、-(CH2)bNR5R6、-(CH2)bOR5、-(CH2)bSOdR5、または-(CH2)bSO2NR5R6であり、bは0〜4の範囲の整数である。
【0108】
別の実施形態では、R2は、-(CH2)bC(=O)NR5R6、-(CH2)bNR5C(=O)R6、3-トリアゾリル、または5-テトラゾリルであり、式中、bは0であり、かつ式中、R8およびR9は上に定義したとおりである。
【0109】
別の実施形態では、R2は、3-トリアゾリルまたは5-テトラゾリルである。
【0110】
別の実施形態では:
(a)-A-R1は、ハロゲン、アルコキシ、-NR8C(=O)R9、-C(=O)NR8R9、および-O(CH2)bNR8R9から独立して選択される1〜4個の置換基と場合により置換されていてもよいフェニルであり、式中、bは2または3であり;
(b)R2は、-(CH2)bC(=O)NR5R6、-(CH2)bNR5C(=O)R6、3-トリアゾリル、または5-テトラゾリルであり、式中、bは0であり、かつ式中、R8およびR9は上に定義されているとおりである。
【0111】
別の実施形態では:
(a)-A-R1は、ハロゲン、アルコキシ、-NR8C(=O)R9、-C(=O)NR8R9、および-O(CH2)bNR8R9から独立して選択される1〜4個の置換基と場合により置換されていてもよいフェニルであり、式中、bは2または3であり;
(b)R2は3-トリアゾリルまたは5-テトラゾリルである。
【0112】
別の実施形態では、R2はR4であり、かつR4は、
(a)ヒドロキシル、メチルアミノ、ジメチルアミノ、または1-ピロリジニル基で場合により置換されていてもよいC1-C4の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、あるいは、
(b)2-ピロリジニル基、
によりその5位で場合により置換されていてもよい3-トリアゾリルである。
【0113】
別の実施形態では、R2はR4であり、かつR4は、メチル、n-プロピル、イソプロピル、1-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、メチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、1-(ジメチルアミノ)エチル、1-ピロリジニルメチル、または2-ピロリジニルによりその5位で場合により置換されていてもよい3-トリアゾリルである。
【0114】
別の実施形態では、構造(I)の化合物は、Aが直接結合である構造(IA)を有するか、またはAが-(CH2)a-である構造(IB)を有している:
【化2】

【0115】
他の実施形態では、構造(I)の化合物は、Aがa-(CH2)bCH-CH(CH2)c-である構造(IC)を有し、また、Aが-(CH2)bC≡C(CH2)c-である構造(ID)を有している:
【化3】

【0116】
本発明のさらなる実施形態では、構造(I)のR1は、アリールまたは置換アリール、例えば、フェニルまたは以下の構造(IE):
【化4】

【0117】
によって表される置換フェニル等である。
【0118】
別の実施形態では、構造(I)のR2は-(CH2)bNR4(C=O)R5である。この実施形態の一態様では、bは0であり、化合物は以下の構造(IF):
【化5】

【0119】
を有する。
【0120】
構造(I)の化合物の代表的なR2基としては、アルキル(例えば、メチルおよびエチル)、ハロゲン(例えば、クロロおよびフルオロ)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、アルコキシ(例えば、メトキシおよびエトキシ)、アミノ、アリールアルキルオキシ(例えば、ベンジルオキシ)、モノアルキルアミンまたはジアルキルアミン(例えば、-NHCH3、-N(CH3)2および-NHCH2CH3)、-NHC(=O)R4を含み、式中、R6は置換または非置換のフェニルまたはヘテロアリール(例えば、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、エステル、アルコキシ、アルキル、アリール、ハロアルキル、ハロゲン、-CONH2、および-CONHアルキルで置換されているフェニルまたはヘテロアリール)、-NH(ヘテロアリールアルキル)(例えば、-NHCH2(3-ピリジル)、-NHCH2(4-ピリジル)、ヘテロアリール(例えば、ピラゾロ、トリアゾロおよびテトラゾロ)、-C(=O)NHR6(式中、R6は水素、アルキル、あるいは上に定義されているとおりである(例えば、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)NH(H-カルボキシフェニル)、-C(=O)N(CH3)2))、アリールアルケニル(例えば、フェニルビニル、3-ニトロフェニルビニル、4-カルボキシフェニルビニル)、ヘテロアリールアルケニル(例えば、2-ピリジルビニル、4-ピリジルビニル)である。
【0121】
構造(I)の化合物の代表的なR3基としては、ハロゲン(例えば、クロロおよびフルオロ)、アルキル(例えば、メチル、エチルおよびイソプロピル)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシおよびイソブチルオキシ)、アミノ、モノアルキルアミノまたはジアルキルアミノ(例えば、ジメチルアミン)、アリール(例えば、フェニル)、カルボキシ、ニトロ、シアノ、スルフィニルアルキル(例えば、メチルスルフィニル)、スルホニルアルキル(例えば、メチルスルホニル)、スルホンアミドアルキル(例えば、-NHSO2CH3)、-NR8C(=O)(CH2)bOR9(例えば、NHC(=O)CH2OCH3)、NHC(=O)R9(例えば、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2C6H5、-NHC(=O)(2-フラニル))、および-O(CH2)bNR8R9(例えば、-O(CH2)2N(CH3)2)が挙げられる。
【0122】
構造(I)の化合物は、当業者に周知の有機合成技術、ならびに2002年2月7日に公開された国際公開第WO 02/10137号(参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする)に記載されている方法(特に、35ページ1行目から396ページ12行目の実施例1〜430に記載されている方法)を用いて製造することができる。さらに、これらの化合物の特定の例についてはこの公報中で確認される。
【0123】
構造(I)のJNK阻害剤の具体的な例は、
【化6】

【0124】
3-(4-フルオロ-フェニル)-5-(1H-[1,2,4]トリアゾル-3-イル)-1H-インダゾール);
【化7】

【0125】
3-[3-(2-ピペリジン-1-イル-エトキシ)-フェニル]-5-(1H-[1,2,4]トリアゾール-3-イル)-1H-インダゾール;
【化8】

【0126】
3-(4-フルオロ-フェニル)-1H-インダゾール-5-カルボン酸(3-モルフォリン-4-イループロピル)-アミド;
【化9】

【0127】
3-[3-(3-ピペリジン-1-イル-プロピオニルアミノ)-フェニル]-1H-インダゾール-5-カルボン酸アミド;
【化10】

【0128】
3-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-5-(2H-テトラゾール-5-イル)-1H-インダゾール;
【化11】

【0129】
3-(4-フルオロ-フェニル)-5-(5-メチル-[1,3,4]オキサジアゾール-2-イル)-1H-インダゾール;
【化12】

【0130】
N-tert-ブチル-3-[5-(1H-[1,2,4]トリアゾール-3-イル)-1H-インダゾール-3-イル]ベンズアミド;
【化13】

【0131】
3-[3-(2-モルフォリン-4-イル-エトキシ)-フェニル]-5-(1H-[1,2,4]トリアゾール-3-イル)-1H-インダゾール;
【化14】

【0132】
ジメチル-(2-{4-[5-(1H-[1,2,4]トリアゾール-3-イル)-1H-インダゾール-3-イル]-フェノキシ}-エチル)-アミン;
【化15】

【0133】
5-[5-(1,1-ジメチル-プロピル)-1H-[1,2,4]トリアゾール-3-イル]-3-(4-フルオロ-フェニル)-1H-インダゾール;
【化16】

【0134】
3-(4-フルオロ-フェニル)-5-(5-ピロリジン-1-イルメチル-1H-[1,2,4]トリアゾール-3-イル)1H-インダゾール);
【化17】

【0135】
3-(6-メトキシ-ナフタレン-2-イル)-5-(5-ピロリジン-1-イルメチル-1H-[1,2,4]トリアゾール-3-イル)-1H-インダゾール;
【化18】

【0136】
3-(4-フルオロ-フェニル)-1H-インダゾール-5-カルボン酸アミド、
およびその製薬上許容可能な塩である。
【0137】
別の実施形態では、JNK阻害剤は以下の構造(II):
【化19】

【0138】
(式中、
R1は、R7から独立して選択される1〜4個の置換基で場合により置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールであり;
R2は水素であり;
R3は水素または低級アルキルであり;
R4は任意の1〜4個の置換基を表し、ここで、各置換基は、同一であるか異なっており、かつ独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、および低級アルコキシから選択され;
R5およびR6は、同一であるか異なっており、かつ独立して、-R8、-(CH2)aC(=O)R9、-(CH2)aC(=O)OR9、-(CH2)aC(=O)NR9R10、-(CH2)aC(=O)NR9(CH2)bC(=O)R10、-(CH2)aNR9C(=O)R10、(CH2)aNR11C(=O)NR9R10、-(CH2)aNR9R10、-(CH2)aOR9、-(CH2)aSOcR9、または-(CH2)aSO2NR9R10であり; あるいはR5およびR6は、それらが結合されている窒素原子と一緒になってヘテロ環または置換ヘテロ環を形成し;
R7は、各存在において、独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、置換ヘテロ環、ヘテロシクロアルキル、_C(=O)OR8、-OC(=O)R8、-C(=O)NR8R9、-C(=O)NR8OR9、-SOcR8、-SOcNR8R9、-NR8SOcR9、-NR8R9、-NR8C(=O)R9、-NR8C(=O)(CH2)bOR9、-NR8C(=O)(CH2)bR9、_O(CH2)bNR8R9、あるいはフェニルに縮合しているヘテロ環であり;
R8、R9、R10およびR11は、同一であるか異なっており、かつ各存在において、独立して水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、ヘテロシクロアルキルであり;
あるいはR8およびR9は、それらが結合されている1個または複数の原子と一緒になってヘテロ環を形成し;
aおよびbは、同一であるか異なっており、かつ各存在において、独立して0、1、2、3または4から選択され;
cは、各存在において、0、1または2である)
を有する。
【0139】
一実施形態では、R1は置換または非置換のアリールまたはヘテロアリールである。R1が置換されている場合、それは下に定義されている1種または複数の置換基で置換されている。一実施形態では、置換されている場合、R1は、ハロゲン、-SO2R8、または-SO2R8R9で置換されている。
【0140】
別の実施形態では、R1は、置換または非置換のアリール、フリル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、キノリニル、ピロリル、インドリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シンノリニル、フタラジニル、またはキナゾリニルである。
【0141】
別の実施形態では、R1は、置換または非置換のアリールまたはヘテロアリールである。R1が置換されている場合、それは下に定義されている1種または複数の置換基で置換されている。一実施形態では、置換されている場合、R1は、ハロゲン、-SO2R8、または-SO2R8R9で置換されている。
【0142】
別の実施形態では、R1は置換または非置換のアリール、好ましくはフェニルである。R1が置換アリールである場合、置換基は下に定義されているとおりである。一実施形態では、置換されている場合、R1は、ハロゲン、-SO2R8、または-SO2R8R9で置換されている。
【0143】
別の実施形態では、R5およびR6は、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、置換または非置換の窒素含有非芳香族ヘテロ環、一実施形態では、ピペラジニル、ピペリジニルまたはモルホリニルを形成する。
【0144】
R5およびR6が、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、置換ピペラジニル、ピペリジニルまたはモルホリニルを形成する場合、ピペラジニル、ピペリジニルまたはモルホリニルは、下に定義されている1種または複数の置換基で置換されている。一実施形態では、置換されている場合、置換基は、アルキル、アミノ、アルキルアミノ、アルコキシアルキル、アシル、ピロリジニルまたはピペリジニルである。
【0145】
一実施形態では、R3は水素であり、R4は存在せず、JNK阻害剤は以下の構造(IIA):
【化20】

【0146】
およびその製薬上許容可能な塩を有している。
【0147】
より特定の実施形態では、R1は、場合によりR7で置換されていていもよいフェニルであり、以下の構造(IIB):
【化21】

【0148】
およびその製薬上許容可能な塩を有している。
【0149】
さらなる実施形態では、R7は、ピリミジンに対するフェニル基のパラ位にあり、以下の構造(IIC):
【化22】

【0150】
およびその製薬上許容可能な塩によって表されるとおりである。
【0151】
構造(II)の化合物は、当業者に周知の有機合成技術、ならびに2002年1月13日に公開された国際公開第WO 02/46170号(参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする)に記載されている方法(特に、23ページ5行目から183ページ25行目の実施例1〜27に記載されている方法)を用いて製造することができる。さらに、これらの化合物の特定の例はこの刊行物で確認される。
【0152】
構造(II)のJNK阻害剤の具体的な例は:
【化23】

【0153】
4-[4-(4-クロロ-フェニル)-ピリミジン-2-イルアミノ]-ベンズアミド;
【化24】

【0154】
4-[4-(4-クロロ-フェニル)-ピリミジン-2-イルアミノ]-N,N-ジメチル-ベンズアミド;
【化25】

【0155】
4-[4-(4-クロロ-フェニル)-ピリミジン-2-イルアミノ]-N-(3-ピペリジン-1-イル-プロピル)-ベンズアミド;
【化26】

【0156】
{4-[4-(4-クロロ-フェニル)-ピリミジン-2-イルアミノ]-フェニル}-ピペラジン-1-イル-メタノン;
【化27】

【0157】
1-(4-{4-[4-(4-クロロ-フェニル)-ピリミジン-2-イルアミノ]-ベンゾイル}-ピペラジン-1-イル)エタノン;
【化28】

【0158】
1-[4-(4-{4-[4-(3-ヒドロキシ-プロピルスルファニル)-フェニル]-ピリミジン-2-イルアミノ}-ベンゾイル)-ピペラジン-1-イル]-エタノン;
【化29】

【0159】
{4-[4-(4-クロロ-フェニル)-ピリミジン-2-イルアミノ]-フェニル}-(4-ピロリジン-1-イル-ピペリジン-1-イル)-メタノン、
およびその製薬上許容可能な塩である。
【0160】
別の実施形態では、JNK阻害剤は以下の構造(III):
【化30】

【0161】
(式中、
R0は、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、NHまたは-CH2-であり);
構造(III)の化合物は:(i)非置換であるか、(ii)一置換であって、第1の置換基を有しているか、あるいは(iii)二置換であって、第1および第2の置換基を有しており;
第1または第2の置換基は、存在する場合、3位、4位、5位、7位、8位、9位または10位にあり、ここで、第1または第2の置換基は、存在する場合、独立して、アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、トリフルオロメチル、スルホニル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールアルキル、シクロアルキルアルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アミノアルコキシ、モノアルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、または構造(a)、(b)、(c)、(d)、(e)もしくは(f):
【化31】

【0162】
によって表される基であり、
式中、R3およびR4は一緒になって、アルキリデンまたはヘテロ原子含有環状アルキリデンを表すか、あるいは、R3とR4は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールオキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルであり;
R5は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルアルキルアミノ、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルである)
を有している。
【0163】
別の実施形態では、JNK阻害剤は以下の構造(IIIA):
【化32】

【0164】
2H-ジベンゾ[cd,g]インドール-6-オン(IIIA)
であって:(i)非置換であるか、(ii)一置換であって、第1の置換基を有しているか、あるいは(iii)二置換であって、第1および第2の置換基を有しており;
第1または第2の置換基は、存在する場合、3位、4位、5位、7位、8位、9位または10位にあり;
ここで、第1または第2の置換基は、存在する場合、独立して、アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、トリフルオロメチル、スルホニル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールアルキル、シクロアルキルアルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アミノアルコキシ、モノアルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、または構造(a)、(b)、(c)、(d)、(e)もしくは(f):
【化33】

【0165】
によって表される基であり:
式中、R3およびR4は一緒になって、アルキリデンまたはヘテロ原子含有環状アルキリデンを表すか、あるいは、R3とR4は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールオキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルであり;
R5は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルアルキルアミノ、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルである)
を有する。
【0166】
構造(IIIA)の化合物のサブクラスは、第1または第2置換基が5位、7位または9位に存在する場合のものである。一実施形態では、第1または第2の置換基は、5位または7位に存在する。
【0167】
構造(IIIA)の化合物の第2のサブクラスは、第1または第2の置換基が、5位、7位または9位に存在し;
第1または第2の置換基が、独立して、アルコキシ、アリールオキシ、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、または構造(a)、(c)、(d)、(e)もしくは(f)によって表される基であり;
R3およびR4が、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;
R5が、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはシクロアルキルアルキルであるものである。
【0168】
別の実施形態では、JNK阻害剤は以下の構造(IIIB):
【化34】

【0169】
2-オキソ-2H-214-アントラ[9,1-cd]イソチアゾール-6-オン(IIIB)
であって、(i)非置換であるか、(ii)一置換であって、第1の置換基を有しているか、あるいは(ii)二置換であって、第1および第2の置換基を有しており;
第1または第2の置換基は、存在する場合、3位、4位、5位、7位、8位、9位、または10位にあり;
ここで、第1または第2の置換基は、存在する場合、独立して、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、トリフルオロメチル、スルホニル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールアルキル、シクロアルキルアルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アミノアルコキシ、モノアルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、または構造(a)、(b)、(c)、(d)、(e)もしくは(f):
【化35】

【0170】
によって表される基であり、
ここで、R3およびR4は一緒になり、アルキリデンまたはヘテロ原子含有環状アルキリデンを表すか、あるいは、R3とR4は、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールオキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルであり;
R5は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルアルキルアミノ、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルである、
構造を有している。
【0171】
構造(IIIB)の化合物のサブクラスは、第1または第2置換基が5位、7位または9位に存在する場合のものである。一実施形態では、第1または第2の置換基は、5位または7位に存在する。
【0172】
構造(IIIB)の化合物の第2のサブクラスは、第1または第2の置換基が、独立して、アルコキシ、アリールオキシ、または構造(a)、(c)、(d)、(e)もしくは(f)によって表される基であり;
R3およびR4が、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;
R5が、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはシクロアルキルアルキルであるものである。
【0173】
別の実施形態では、JNK阻害剤は以下の構造(IIIC):
【化36】

【0174】
2-オキサ-1-アザ-アセアントリレン-6-オン (IIIC)
であり:
(i)一置換であって、第1の置換基を有しているか、あるいは(ii)二置換であって、第1および第2の置換基を有しており;
第1または第2の置換基は、存在する場合、3位、4位、5位、7位、8位、9位または10位にあり;
ここで、第1または第2の置換基は、存在する場合、独立して、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、トリフルオロメチル、スルホニル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールアルキル、シクロアルキルアルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アミノアルコキシ、モノアルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、または構造(a)、(b)、(c)、(d)、(e)もしくは(f):
【化37】

【0175】
によって表される基であり、
式中、R3およびR4は一緒になり、アルキリデンまたはヘテロ原子含有環状アルキリデンを表すか、あるいは、R3とR4は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールオキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルであり;
R5は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルアルキルアミノ、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルである。
【0176】
構造(IIIC)の化合物のサブクラスは、第1または第2の置換基が5位、7位または9位に存在する場合のものである。一実施形態では、第1または第2の置換基は、5位または7位に存在する。
【0177】
構造(IIIC)の化合物の第2のサブクラスは、第1または第2の置換基が、独立して、アルコキシ、アリールオキシ、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、または構造(a)、(c)、(d)、(e)もしくは(f)によって表される基であり;
R3およびR4が、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;
R5が、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはシクロアルキルアルキルであるものである。
【0178】
別の実施形態では、JNK阻害剤は以下の構造(IIID):
【化38】

【0179】
2,2-ジオキソ-2H-216-アントラ[9,1-cd]イソチアゾール-6-オン(IIID)
であり、
(i)一置換であって、5位、7位または9位で存在する第1の置換基を有するか、(ii)二置換であって、5位で存在する第1の置換基と7位で存在する第2の置換基を有するか、(iii)二置換であって、5位で存在する第1の置換基と9位で存在する第2の置換基を有するか、あるいは(iv)二置換であって、7位で存在する第1の置換基と9位で存在する第2の置換基を有しており;
ここで、第1または第2の置換基は、存在する場合、独立して、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、トリフルオロメチル、スルホニル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールアルキル、シクロアルキルアルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アミノアルコキシ、モノアルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、または構造(a)、(b)、(c)、(d)、(e)もしくは(f):
【化39】

【0180】
によって表される基であり、
ここで、R3およびR4は一緒になって、アルキリデンまたはヘテロ原子含有環状アルキリデンを表すか、あるいは、R3とR4は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールオキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルであり;
R5は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルアルキルアミノ、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルである、
構造を有する。
【0181】
構造(IIID)の化合物のサブクラスは、第1または第2の置換基が5位または7位に存在する場合のものである。
【0182】
構造(IIID)の化合物の第2のサブクラスは、第1または第2の置換基が、独立して、アルキル、トリフルオロメチル、スルホニル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールアルキル、シクロアルキルアルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アミノアルコキシ、モノアルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、あるいは構造(a)、(c)、(d)、(e)または(f)によって表される基であるものである。
【0183】
構造(IIID)の化合物の別のサブクラスは、第1および第2の置換基が、独立して、アルコキシ、アリールオキシ、または構造(a)、(c)、(d)、(e)もしくは(f)によって表される基であり;
R3およびR4が、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;
R5が、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルコキシカルボニル、またはシクロアルキルアルキルであるものである。
【0184】
別の実施形態では、JNK阻害剤は以下の構造(IIIE):
【化40】

【0185】
アントラ[9,1-cd]イソチアゾール-6-オン)(IIIE)
であって、
これが、(i)一置換であって、5位、7位または9位で存在する第1の置換基を有するか、(ii)二置換であって、5位で存在する第1の置換基と9位で存在する第2の置換基を有するか、(iii)二置換であって、7位で存在する第1の置換基と9位で存在する第2の置換基を有するか、あるいは(iv)二置換であって、5位で存在する第1の置換基と7位で存在する第2の置換基を有しており;
ここで、第1または第2の置換基は、存在する場合、独立して、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、トリフルオロメチル、スルホニル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールアルキル、シクロアルキルアルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アミノアルコキシ、モノアルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、または構造(a)、(b)、(c)、(d)、(e)もしくは(f):
【化41】

【0186】
によって表される基であり、
式中、R3およびR4は一緒になって、アルキリデンまたはヘテロ原子含有環状アルキリデンを表すか、あるいは、R3とR4は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールオキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルであり;
R5は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルアルキルアミノ、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルである、
構造を有する。
【0187】
構造(IIIE)の化合物のサブクラスは、第1または第2の置換基が5位または7位に存在するものである。
【0188】
構造(IIIE)の化合物の第2のサブクラスは、構造(IIIE)の化合物が二置換であって、置換基の少なくとも1つの基が構造(d)または(f)によって表される基であるものである。
【0189】
構造(IIIE)の化合物の別のサブクラスは、化合物が一置換されているものである。さらに化合物の別のサブクラスは、化合物が、構造(e)または(f)によって表される基により5位または7位で一置換されているものである。
【0190】
別の実施形態では、JNK阻害剤は以下の構造(IIIF):
【化42】

【0191】
2H-ジベンゾ[cd,g]インダゾール-6-オン(IIIF)
であって、
これが、(i)一置換であって、第1の置換基を有するか、または(ii)二置換であって、第1の置換基および第2の置換基を有しており;
第1または第2の置換基は、存在する場合、3位、4位、5位、7位、8位、9位または10位にあり;
ここで、第1または第2の置換基は、存在する場合、独立して、アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、トリフルオロメチル、スルホニル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールアルキル、シクロアルキルアルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アミノアルコキシ、モノアルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、または構造(a)、(b)、(c)、(d)、(e)もしくは(f):
【化43】

【0192】
によって表される基であり、
式中、R3およびR4は一緒になって、アルキリデンまたはヘテロ原子含有環状アルキリデンを表すか、あるいは、R3とR4は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールオキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルであり;
R5は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルアルキルアミノ、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルである、
構造を有する。
【0193】
一実施形態では、構造(IIIF)の化合物、またはその製薬上許容可能な塩は、3位、4位、5位、7位、8位、9位または10位で非置換である。
【0194】
構造(III)のJNK阻害剤は、当業者に周知の有機合成技術、ならびに2001年2月22日に公開された国際公開第WO 01/12609号に記載されている方法(特に、24ページ6行目から49ページ16行目の実施例1〜7に記載されている方法)、および2002年8月29日に公開された国際公開第WO 02/066450号に記載されている方法(特に、59〜108ページの化合物AA〜HG)を用いて製造することができる。なお、前記各公報は参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする。さらに、これらの化合物の特定の例は、この公報中で確認することができる。
【0195】
構造(III)のJNK阻害剤の具体的な例は、
【化44】

【0196】
2H-ジベンゾ[cd,g]インダゾール-6-オン;
【化45】

【0197】
7-クロロ-2H-ジベンゾ[cd,g]インダゾール-6-オン;
【化46】

【0198】
5-ジメチルアミノ-2H-ジベンゾ[cd,g]インダゾール-6-オン;
【化47】

【0199】
7-ベンジルオキシ-2H-ジベンゾ[cd,g]インダゾール-6-オン;
【化48】

【0200】
N-(6-オキソ-2,6-ジヒドロ-ジベンゾ[cd,g]インダゾール-5-イル)-アセトアミド;
【化49】

【0201】
5-(2-ピペリジン-1-イル-エチルアミノ)-2H-ジベンゾ[cd,g]インダゾール-6-オン;
【化50】

【0202】
5-アミノ-アントラ[9,1-cd]イソチアゾール-6-オン;
【化51】

【0203】
N-(6-オキソ-6H-アントラ[9,1-cd]イソチアゾール-5-イル)ベンズアミド;
【化52】

【0204】
7-ジメチルアミノ-アントラ[9,1-cd]イソチアゾール-6-オン;
【化53】

【0205】
2-オキソ-1-アザ-アセアントリレン-6-オン、
およびその製薬上許容可能な塩である。
【0206】
本方法に有用な他のJNK阻害剤は、これらに限定されるものではないが、国際公開第WO 00/39101号(特に、2ページ10行目から6ページ12行目まで);国際公開第WO 01/14375号(特に、2ページ4行目から4ページ4行目まで);国際公開第WO 00/56738号(特に、3ページ25行目から6ページ13行目まで);国際公開第WO 01/27089号(特に、3ページ7行目から5ページ29行目まで);国際公開第WO 00/12468号(特に、2ページ10行目から4ページ14行目まで);ヨーロッパ特許公報第1 110 957号(特に、19ページ52行目から21ページ9行目まで);国際公開第WO 00/75118号(特に、8ページ10行目から11ページ26行目まで);国際公開第WO 01/12621号(特に、8ページ10行目から10ページ7行目まで);国際公開第WO 00/64872号(特に9ページの1行目から106ページ2行目まで);国際公開第WO 01/23378号(特に、90ページ1行目から91ページ11行目まで);国際公開第WO 02/16359号(特に、163ページ1行目から164ページ25行目まで);米国特許第6,288,089号(特に、22欄25行目から25欄35行目まで);米国特許第6,307,056号(特に、63欄29行目から66欄12行目まで);国際公開第WO 00/35921号(特に、23ページ5行目から26ページ14行目まで);国際公開第WO 01/91749号(特に、29ページ1〜22行);国際公開第WO 01/56993号(特に、43ページ〜45ページ)、および国際公開第WO 01/58448号(特に、39ページ)に記載されているものが挙げられる。なお、前記の各公報は参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする。
【0207】
有効量のJNK阻害剤を含む本発明の投与製剤をはじめとする医薬組成物は、本発明の方法において用いることができる。
【0208】
4.2 アテローム性動脈硬化症または再狭窄の治療または予防方法
本発明のステントは、アテローム性動脈硬化症をはじめとする、すべての心血管疾患または腎臓病の治療または予防に、特に、血管形成、ステント移植、アテローム切除、または移植等の血管処置後の再狭窄の治療または予防に用いることができる。
【0209】
本発明のステントが治療または予防に有用である心血管疾患としては、これらに限定されるものではないが、血栓崩壊、再狭窄、冠状動脈性心疾患、および心筋梗塞が挙げられる。
【0210】
本発明のステントが治療または予防に有用である腎臓病としては、これらに限定されるものではないが、腎動脈狭窄症、アテローム性動脈硬化虚血腎臓病、および線維筋性形成異常が挙げられる。
【0211】
別の実施形態では、本発明のステントは、胆管癌、食道癌、心筋梗塞、良性前立腺過形成、膵臓癌、傍乳頭部癌または腎動脈狭窄症の治療または予防に有用である。
【0212】
別の実施形態では、本発明のステントは、異常に高いレベルの循環マクロファージコロニー刺激因子を有している患者を治療する。
【0213】
別の実施形態では、本発明のステントは、これらに限定されるものではないが、腎血管形成術、血管再生術、経皮的冠動脈処置、経皮経管的冠形成術、頚動脈の経皮経管的動脈形成術、冠状動脈のバイパス移植、ステント移植による血管形成術、腸骨動脈、大腿動脈または膝窩動脈の末梢経皮的経腔処置、あるいは充填人工グラフトを用いる外科的処置をはじめとする、血管処置と組み合わせて用いられる。
【0214】
一実施形態では、本発明のステントは、外科的に、患者の動脈、静脈または毛細管へ移植される。以下の表に、本発明のステントを移植可能な主要な全身動脈を列挙する。
【表1】

【0215】
ステントまたはステントを含む材料の被覆におけるJNK阻害剤の最適用量は、当業者によって容易に決定され、また、治療する症状、特定のJNK阻害剤、および投与方法に応じて変わる。他の因子としては、患者の体重および状態が挙げられる。本発明は、ヒトおよび動物での使用における適用を有していることは理解されよう。
【0216】
一実施形態では、本発明のステントは、約0.01mgから約5000mgの有効量のJNK阻害剤を含む。別の実施形態では、本発明のステントは、約0.1mgから約4500mgの有効量のJNK阻害剤を含む。別の実施形態では、本発明のステントは、約1mgから約4000mgの有効量のJNK阻害剤を含む。別の実施形態では、本発明のステントは、約25mgから約4000mgの有効量のJNK阻害剤を含む。別の実施形態では、本発明のステントは、約50mgから約3000mgの有効量のJNK阻害剤を含む。別の実施形態では、本発明のステントは、約100mgから約2000mgの有効量のJNK阻害剤を含む。別の実施形態では、本発明のステントは、約250mgから約1500mgの有効量のJNK阻害剤を含む。別の実施形態では、本発明のステントは、約500mgから約1000mgの有効量のJNK阻害剤を含む。別の実施形態では、本発明のステントは、約250mgから約500mgの有効量のJNK阻害剤を含む。
【0217】
ステントを受ける患者には、一般には下記症状、すなわち、異常血清脂質レベル、高血圧症、喫煙、糖尿病、肥満、運動不足、高ホモシステイン血症、およびクラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)感染の1種または複数がある。
【0218】
一実施形態では、本発明のステントは、先に心臓血管または腎臓の手術を受けている患者へ移植することができる。別の実施形態では、本発明のステントは、先に心臓血管または腎臓の手術を受けたことがない患者へ移植することができる。別の実施形態では、本発明のステントは、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)中に移植することができる。
【0219】
別の実施形態では、本発明のステントは、手術を受ける前に患者に移植される。一実施形態では、外科手術は心臓血管手術または腎臓手術である。
【0220】
4.3 本発明のステント
有効量のJNK阻害剤で被覆可能なステント、または有効量のJNK阻害剤がその内部に組み込まれた材料を含み得るステントの例としては、これらに限定されるものではないが、ステントもしくはステントグラフト、合成血管グラフトまたは生物学的血管グラフトをはじめとする、すべてのタイプの血管形成器具が挙げられる。
【0221】
一実施形態では、本ステントはポリマーを含む。ポリマーの実例としては、これらに限定されるものではないが、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリ(エチレンテレフタルレート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリシアノアクリレート、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)、エチレングリコールIジメチルアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(HEMA)あるいはポリヒドロキシアルカノエート化合物が挙げられる。一実施形態では、ポリマーは、その中に組み入れられる有効量のJNK阻害剤を有する。一実施形態では、ポリマーは生体適合性である。
【0222】
ステントの実例としては、これらに限定されるものではないが、食道ステント、気管ステント、胆管ステント、および前立腺ステント等が挙げられる。ステントは、カバーされていなくても、カバーされていてもよく、あるいは逆流防止されていてもよい(例えば、米国特許第5,984,965号および第5,647,843号を参照されたい。なお、各特許は参照により本明細書に組み入れるものとする。当技術分野で周知のすべてのステント、ステントグラフトまたは組織処置用の血管グラフトは、JNK阻害剤で被覆、シーリング、または充填されていもよい。一実施形態では、ステントは生物分解性である(例えば、米国特許第6,423,097号を参照されたい。なお、本特許は参照により本明細書に組み入れるものとする。別の実施形態では、ステントは非生物分解性である。別の実施形態では、ステントは自己膨張式である(例えば、米国特許第6,425,898号を参照されたい。なお、本特許は参照により本明細書に組み入れるものとする)。別の実施形態では、ステントはバルーン拡張型である(米国特許第5,79,729号を参照されたい。なお、本特許は参照により本明細書に組み入れるものとする)。別の実施形態では、ステントは、中空管状ワイヤー製である(米国特許第5,891,108号を参照されたい。なお、本特許は参照により本明細書に組み入れるものとする)。
【0223】
ステントの特定の例としては、これらに限定されるものではないが、Palmaz、Palmaz-Schatz、Gianturco、Gianturco-Roubin、Gianturco-Rosch、Strecker、または形状記憶型ステントが挙げられる。
【0224】
一実施形態では、ステントはカテーテルに取り付けられる(米国特許第6,428,570号を参照されたい。なお、本特許は参照により本明細書に組み入れるものとする)。
【0225】
別の実施形態では、ステントは、ステントの移植中に、または移植後に遊離されるようになるプラーク、粒子または残渣物を捕集する有用なフィルター器具と組み合わせられる。
【0226】
別の実施形態では、ステントは、繊維被覆型金属構造であって、例えば、直線状、先細状、二分岐状等の任意の所望の形状または構造へ設定可能なものであり、コイルの使用または未使用により、繊維技術(例えば、波形状、織物、ニット製ベロア、ダブルベロア)を用いて調製することができる。
【0227】
別の実施形態では、ステントは、例えば、環状または幾何学的形状である直線的またはランダムな小孔を有する多孔性材料(場合により、有効量のJNK阻害剤を含有していてもよい)を用いて、化学的押出、キャスティングまたは成型により調製することができる。
【0228】
別の実施形態では、ステントは、胎盤由来の脱冷却化(decolderized)漿尿膜または他のコラーゲン原料等の生体材料(場合によりそこに組み入れられる有効量のJNK阻害剤を有する)を含む。
【0229】
4.4 本発明のステントの製造方法
また本発明は、有効量のJNK阻害剤でステントを被覆するステップを含む、本発明のステントの製造方法を包含する。別の実施形態では、被覆は、製薬上許容可能な担体をさらに含む。被覆ステップには、これらに限定されるものではないが、有効量の1種または複数のJNK阻害剤でステントを液浸、スプレー、成型、積層、添加、または充填することが挙げられる。
【0230】
また本発明は、有効量のJNK阻害剤がその内部に組み込まれた材料を用いてステントを製造するステップを含む、本発明のステントを製造方法を包含する。ステントの製造方法は、当業者には周知である。別の実施形態では、本発明のステントを含む材料は、製薬上許容可能な担体をさらに含む。別の実施形態では、本発明のステントを含む材料は、JNK阻害剤を放出制御することができる。
【0231】
一実施形態では、ステントは、患者における使用前に、有効量のJNK阻害剤で被覆される。かかる実施形態では、JNK阻害剤がステント上に被覆またはシールされ得る。多層被覆または放出可能被覆も包含されることは理解されよう。放出可能な被覆は、再狭窄の危険のある領域にJNK阻害剤を直接付着させることができる。
【0232】
本発明のステントを製造するのに有用な方法は多数ある。JNK阻害剤は、懸濁液のJNK阻害剤によりステントの少なくとも1つの表面に噴霧し、噴霧表面を乾燥させることによって、ステントに適用することができる。
【0233】
別の実施形態では、ステントはかかる懸濁液に浸漬してもよく、あるいはJNK阻害剤を含む懸濁液をステント上に投じてもよく、すなわち、JNK阻害剤の懸濁液をステントに積層させてもよく、あるいは溶液または懸濁液形態のJNK阻害剤を、ステントに添加してもよく、あるいは、ステントをJNK阻害剤の溶液または懸濁液で充填してもよい。JNK阻害剤はステントの内面に適用することもできる。ステントの内側にJNK阻害剤を適用することによって、JNK阻害剤は、内腔壁の適切な再内皮化(reendothelialization)を促進し、狭窄、再狭窄、内膜異常増殖および新内膜異常増殖等の1種または複数の心血管疾患症状を治療または予防するよう創傷を促進することができる。
【0234】
ステントを被覆する方法も当技術分野で周知である(例えば、米国特許第6,153,252号および第6,299,604号を参照。なお、両特許は参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする)。放出制御の被覆ステントの調製もまた当技術分野で周知である(例えば、米国特許第6,358,556号を参照されたい。なお、この特許は参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする)。ステントを被覆する他の方法は当技術分野で周知であり、また発明によって検討されている(例えば、ポリマーフィルムの被覆によるステントが記載されている米国特許第5,637,113号と、薬剤放出ステントの被覆方法が記載されている米国特許第5,837,313号を参照されたい、なお、これらの両特許はそれらの全体とすべての目的について本明細書に組み入れるものとする)。
【0235】
カテーテルによるステントの送達を妨げないように、被覆層は十分に薄くなければならない。一実施形態では、被覆は約0.005インチ未満の厚さである。別の実施形態では、被覆は約0.002インチ未満の厚さである。別の実施形態では、被覆は約0.001インチ未満の厚さである。別の実施形態では、被覆は約0.0005インチ未満の厚さである。
【0236】
ステントに適用するJNK阻害剤またはステントへ組み入れられるJNK阻害剤の量は、ステント上に被覆されるか、ステント内に組み入れられる種々の量のJNK阻害剤を有する本発明のステントの効果を測定することによって経験的に決定することができる。また、当業者は、本発明のステントの効果を評価することができる。
【0237】
本発明のステントの移植に用いられる方法(多くの場合、外科手術を含む)は、JNK阻害剤を含有しないかかるステントの移植に用いられる方法と同様であり、勿論、改変または修正しようとする状態の性質に依存する。外科手術は局所麻酔下であっても全身麻酔下であっても行うことができ、一般的に、切開、移植片を収容するための間隔保持、挿入、および縫合を含む。
【0238】
JNK阻害剤は、当業者に周知の製剤方法を用いて、製薬上許容可能な製剤として提供することができる。さらに、JNK阻害剤には、化合物の徐放性を可能にする生分解性高分子へ組み入れることができる。生分解性高分子とその使用については、例えば、Bremら, J. Neurosurg. 74:441-446 (1991)に詳細に記載されている。
【0239】
製剤には、患者への移植に好適なものが含まれる。製剤は、慣用の製薬技術によって調製することができる。かかる技術は、JNK阻害剤と、製薬用担体または添加剤とを混合するステップを含む。一般、製剤は、液体の担体または微粉固体担体、またはその両方とJNK阻害剤とを混合するステップと、次いで、必要に応じて、生成物を成形するステップにより調製することができる。
【0240】
従って、ステントの被覆用製剤は、JNK阻害剤と、場合により製薬上許容可能な担体、希釈剤または添加剤を含む。かかる製剤の調製時には、JNK阻害剤は、通常、添加剤と混合するか、添加剤により希釈する。添加剤が希釈剤として提供される場合、それは、ビヒクル、担体、またはJNK阻害剤用媒体として作用する固体、半固体または液体材料であってよい。好適な添加剤の例としては、これらに限定されるものではないが、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、スターチ、アラビアゴム、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリジノン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。製剤はさらに、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルなどの潤滑剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、メチルヒドロキシベンゾエートおよびプロピルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤、甘味料または香料を含み得る。
【0241】
本被覆または材料を用いて、様々な比率で所望の放出プロフィールを提供するために、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、その他のポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、浸透系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、もしくはマイクロスフェアまたはそれらの組合せを用いて1種または複数のJNK阻害剤の徐放または放出制御を提供することができる。本明細書に記載されるものを含む、当業者には公知の好適な制御放出製剤は、本発明の医薬組成物と共に使用するために容易に選択することができる。
【0242】
放出制御被覆および材料は、最初に所望の治療効果を速やかにもたらすJNK阻害剤の量を放出し、長時間に渡って、この治療効果のレベルを維持する量の薬剤を徐々に、かつ連続的に放出するように設計することができる。体内でJNK阻害剤の一定レベルの薬剤を維持するためには、この阻害剤を、体内から代謝および排出される薬剤量に取って代わる速度で前記剤形から放出させる必要がある。JNK阻害剤の制御放出は、これらに限定されるものではないが、pH、温度、酵素、水、または他の生理条件もしくは化合物などの種々の誘導因子により刺激することができる。
【0243】
4.5 その他の活性剤
本発明のステント中に場合により存在してもよいその他の活性剤は、アテローム性動脈硬化症をはじめとする心血管疾患または腎臓病の治療または予防、特に、血管形成などの血管処置後の再狭窄の治療または予防に有用なすべての化合物を、単独で、あるいはJNK阻害剤と一緒に用いることができる。例えば、その他の活性剤は、抗凝血剤、例えば、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ラパマイシン、抗トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、抗血小板薬、またはダニ(tick)抗血小板ペプチドであってよい。またその他の活性剤は、血管細胞増殖のプロモーター、例えば、増殖因子レセプターアンタゴニスト、転写活性化因子または翻訳プロモーターであってよい。あるいは、その他の活性剤は、血管細胞増殖阻害剤、例えば、増殖因子阻害剤、増殖因子レセプターアンタゴニスト、転写リプレッサーまたは翻訳リプレッサー、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、複製阻害剤、遮断抗体、増殖因子に対する抗体、または二官能分子であってよい。またその他の活性剤は、高脂血治療薬、血管拡張剤、または内因性血管作動機序を阻害する薬剤であってもよい。その他の活性剤に関する他の例としては、抗炎症薬、抗血小板または線維素溶解薬、抗新生物剤、抗アレルギー剤、抗拒絶剤)、抗微生物剤または抗細菌剤または抗ウイルス剤、ホルモン、血管作動性物質、抗侵襲因子、抗癌剤、抗体またはリンホカイン、抗血管形成剤、放射性剤、あるいは遺伝子治療剤が挙げられる。その他の活性剤は、そのオリジナルの市販形態であるか、あるいはポリマーまたはタンパク質担体と一緒になって徐放および一貫放出を達成するものであってよい。
【0244】
さらにその他の活性剤の実例としては、これらに限定されるものではないが、IMiD(登録商標)およびSelCID(登録商標)(Celgene Corporation, New Jersey)(例えば、米国特許第6,075,041号;第5,877,200号;第5,698,579号;第5,703,098号;第6,429,221号;第5,736,570号;第5,658,940号;第5,728,845号;第5,728,844号;第6,262,101号;第6,020,358号;第5,929,117号;第6,326,388号;第6,281,230号;第5,635,517号;第5,798,368号;第6,395,754号;第5,955,476号;第6,403,613号;第6,380,239号;および第6,458,810号(前記各特許は参照により本明細書に組み入れるものとする)に記載されているもの)、PDE IV阻害剤(例えば、シロマスト(cilomast)、テオフィリン、ザルダベリン(zardaverine)、ロリプラム、ペントキシフィリン、エノキシモン(enoximone))、パクリタキセル、ドセタキセルまたはその誘導体、エポチロン、一酸化窒素剥離剤、ヘパリン、アスピリン、クマジン、PPACK、ヒルジン、アンギオスタチンおよびエンドスタチン由来のポリペプチド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、エストラジオール、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1キメラ、アブシキマブ、エキソケリン(exochelin)、エロイテロビン(eleutherobin)およびサルコジクチイン(sarcodictyin)、フルダラビン、シロリムス、トラニラスト、VEGF、トランスフォーミング成長因子(TGF)-β、インシュリン様増殖因子(IGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、RGDペプチド、βまたはγ線エミッター(放射性)剤が挙げられる。
【0245】
別の実施形態では、本発明のステントは、移植片拒絶を予防可能な、抗生物質または抗ウィルス剤、あるいはその混合物をさらに含む。
【0246】
4.6 キット
本発明は、心血管疾患または腎臓病の治療または予防に有用な本発明のステントを含有する1種または複数の容器を含む、製剤パックまたは製剤キットを提供する。かかる容器は、場合により、製造を規制している政府機関によって規定されている様式による、薬剤または生物学的製剤の使用または販売の注意書き(この注意書きは、製造に関する政府機関による承認を反映しているもの)、ヒトの投与のための使用または販売の注意書き;あるいは本発明のステント使用についての取扱説明書を伴っていても良い。
【0247】
以下の実施例は、本発明の性質をさらに特徴付けるのに役立つが、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0248】
5. 実施例
5.1 ステントの被覆
テトラヒドロフラン(THF)(HPLCグレード、AldrichまたはEM Science)中のシリコーン5%(w/w)溶液は、シリコーン混合物中にTHFおよび架橋剤を添加することにより調製する。JNK阻害剤の別の0.5%(w/w)溶液を調製する。W薬剤/Wシリコーン固体の比は約0.1である。伸ばした状態のステントの被覆は、シリコーン溶液を1サイクル噴霧し、短時間待ち(約30秒)、JNK阻害剤溶液を1サイクル噴霧し、短時間待ち(約30秒)、次いで、噴霧の系列を繰り返すことにより達成する。最後の噴霧サイクルはシリコーン溶液である。30ミクロンの厚さに被覆するには、それぞれ約30サイクルを適用する。用いる噴霧サイクルの回数は、溶液の粘度、液滴の大きさ、および流速によって決まる。次いで、被覆されたステントを対流式オーブンに移動させ、150℃にて45分間硬化させる。
【0249】
5.2 JNK阻害剤活性アッセイ
JNKを阻害するJNK阻害剤の能力、従って、心血管疾患または腎臓病の治療または予防に有用なJNK阻害剤の能力は、以下の1つ以上のアッセイを用いて説明することができる。
【0250】
5.2.1 JNK2アッセイ
20%DMSO/20mM HEPES(pH7.6)、0.1mM EDTA、2.5mM塩化マグネシウム、0.004%トリトン×100、2μg/mLロイペプチン、20mM、β-グリセリンリン酸、0.1mMバナジン酸ナトリウム、および2mM DTTの水溶液からなる80%稀釈バッファーに溶解したJNK阻害剤の10μLに、同一の稀釈バッファーに溶解した50ngのHis6-JNK2を30μL添加する。この混合物を室温で30分間、予備インキュベートする。20mM HEPES(pH7.6)、50mM塩化ナトリウム、0.1mM EDTA、24mM塩化マグネシウム、1mM DTT、25mM PNPP、0.05%トリトン×100、11μM ATP、および0.5μCi γ-32P ATPの水溶液からなるアッセイバッファーに溶解させた10μg GST-c-Jun(1-79)の60マイクロリットルを添加し、反応を室温にて1時間進行させる。c-Junリン酸化は、12.5%トリクロロ酢酸を150μL添加することにより終了させる。30分後、沈殿物を濾板上で回収し、シンチレーション液体50μLで希釈し、カウンターにより定量する。IC50値は、c-Junリン酸化がコントロール値の50%まで低減されるIC50値をJNK阻害剤の濃度として算出する。一実施形態では、JNK阻害剤は、このアッセイにおいて0.01〜10μMの範囲のIC50値を有している。
【0251】
5.2.2 JNK3アッセイ
20%DMSO/20mM HEPES(pH7.6)、0.1mM EDTA、2.5mM塩化マグネシウム、0.004%トリトン×100、2μg/mLロイペプチン、20mMβ-グリセリンリン酸、0.1mMバナジン酸ナトリウム、および2mM DTT水溶液からなる80%稀釈バッファーに溶解したJNK阻害剤の10μLに、同一稀釈バッファーに溶解した200ng His6-JNK3の30μLを添加する。この混合物を室温で30分間、予備インキュベートする。20mM HEPES(pH7.6)、50mM塩化ナトリウム、0.1mM EDTA、24mM塩化マグネシウム、1mM DTT、25mM PNPP、0.05%トリトン×100、11μM ATP、および0.5μCi γ-32P ATPの水溶液からなるアッセイバッファーに溶解した10μg GST-c-Jun(1-79)の60マイクロリットルを添加し、反応を室温にて1時間進行させる。c-Junリン酸化は、12.5%トリクロロ酢酸を150μL添加することにより終了させる。30分後、沈殿物を濾板上で回収し、シンチレーション液体50μLで希釈し、カウンターにより定量する。IC50値は、c-Junリン酸化がコントロール値の50%まで低減されるIC50値をJNK阻害剤の濃度として算出する。一実施形態では、JNK阻害剤は、このアッセイにおいて0.01〜10μMの範囲のIC50値を有している。
【0252】
5.2.3 Jurkat T細胞IL-2産生アッセイ
Jurkat T細胞(クローンE6-1)はAmerican Tissue Culture Collectionから購入し、10%ウシ胎児血清(Hyclone)およびペニシリン/ストレプトマイシンを含む、2mM L-グルタミン(Mediatech)含有のRPMI 1640培地からなる増殖培地中で維持する。細胞はすべて、95%空気および5%CO2中、37℃にて培養する。細胞は、200μLの培地中、1ウェル当たり0.2×106個の細胞密度でプレーティングする。JNK阻害剤ストック(20mM)を増殖培地で希釈し、容量25μlの用量で10×濃縮溶液として各ウェルに添加し、混合し、30分間細胞と一緒に予備インキュベートする。ビヒクル(ジメチルスルホキシド)は、すべてのサンプル中、最終濃度0.5%で維持する。30分後、細胞をPMA(ホルボールミリステートアセテート;最終濃度50ng/mL)およびPHA(フィトヘマグルチニン;最終濃度2μg/mL)で活性化させる。PMAおよびPHAは増殖培地で調製された10×濃縮溶液として添加され、かつ1ウェル当たり容量25μLで添加させる。細胞プレートは10時間培養される。細胞を遠心分離によりペレット化し、培地を除去し、-20℃で保存する。培地のアリコートは、メーカー取扱説明書(Endogen)のとおり、IL-2の存在下、サンドイッチELISAによって分析する。IC50値は、IL-2産生がコントロール値の50%まで低減されるIC50値をJNK阻害剤の濃度として算出する。一実施形態では、JNK阻害剤は、このアッセイにおいて0.1〜30μMの範囲のIC50値を有している。
【0253】
5.2.4 ラットのin vivoにおけるLPS誘導TNF-α産生アッセイ
Charles River Laboratoriesから入手した7週齢の雄CDラットは、使用前の1週間で環境に馴化させる。簡単なイソフルラン麻酔下、22ゲージ超の針カテーテルを用いて経皮的に外側の尾部静脈にカニューレ挿入する。尾部静脈カテーテルによる静脈注射または経口胃管栄養のいずれかによりラットにJNK阻害剤を15〜180分投与し、その後、0.05mg/kgのLPS(E. Coli 055:B5)を注射する。カテーテルは通常の注射用生理的食塩水2.5mL/kgでフラッシングする。LPSによる攻撃を90分行なった後、心臓穿孔により血液を回収する。リチウムヘパリン単離試験管を用いて血漿を調製し、分析まで-80℃にて凍結する。ラット特異的TNF-αELISAキット(Busywork)を用いて、TNF-αのレベルを測定する。ED50は、TNF-α産生がコントロール値の50%まで低減されるED50値をJNK阻害剤の用量として算出する。一実施形態では、JNK阻害剤は、このアッセイにおいて1〜30mg/kgの範囲に及ぶED50値を有している。
【0254】
5.2.5 ホスポリレート化(Phosporylated)c-Junの検出
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を80%密集度まで培養し、次いで、0.5%のDMSO最終濃度でJNK阻害剤(30μM)を用いて事前処置する。30分後、20分間TNFα(30ng/ml)で細胞を刺激する。細胞を洗浄し、プレートから掻取り、2×Laemmliバッファーで溶解し、5分間100℃まで加熱する。全細胞溶解物(約30μg)をトリスグリシンで緩衝化した10%SDSポリアクリルアミドゲル(Novex, San Diego, CA)上で分画し、ニトロセルロース膜(Amersham, Piscataway, NJ)に移す。膜を5%無脂肪牛乳粉末(Biorad, Hercules, CA)でブロックし、ホスホ-cJun(1:1000 #91645)(New England Biolabs, Beverly, MA)の抗体とともにインキュベートし、次いで、ロバ抗ウサギ西洋わさびペルオキシダーゼを、0.1%Tween-20および5%無脂肪牛乳粉末を含むリン酸緩衝生理食塩水に溶解した抗体(1:2500)(Amersham)と結合させる。免疫反応性タンパク質は、化学発光およびオートラジオグラフィー(Amersham)で検出する。一実施形態では、JNK阻害剤は、このアッセイにおいて、30μmでc-Junリン酸化(phosphorylation)の阻害が50%を上回ることを示す。
【0255】
本明細書に記載されている本発明の実施形態は、本発明の範囲の単なる事例である。多数の参考文献が本明細書に引用されているが、それらの内容全体は参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0256】
多数の参考文献が引用されているが、それらの記載全体は参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のJNK阻害剤を含むステント。
【請求項2】
有効量のJNK阻害剤を含む被覆を有する請求項1に記載のステント。
【請求項3】
有効量のJNK阻害剤がその内部に組み込まれた材料を含む、請求項1に記載のステント。
【請求項4】
JNK阻害剤が次式:
【化1】

(式中:
Aは、直接結合、-(CH2)a-、-(CH2)bCH=CH(CH2)c-、または-(CH2)bC≡C(CH2)c-であり;
R1は、フェニルに縮合しているアリール、ヘテロアリールまたはヘテロ環であり、各基は場合によりR3から独立して選択される1〜4個の置換基と置換されていてもよく;
R2は、-R3、-R4、-(CH2)bC(=O)R5、-(CH2)bC(=O)OR5、-(CH2)bC(=O)NR5R6、-(CH2)bC(=O)NR5(CH2)cC(=O)R6、-(CH2)bNR5C(=O)R6、-(CH2)bNR5C(=O)NR6R7、-(CH2)bNR5R6、-(CH2)bOR5、-(CH2)bSOdR5、または-(CH2)bSO2NR5R6であり;
aは1、2、3、4、5、または6であり;
bおよびcは、同一であるか異なっており、かつ各存在において独立して0、1、2、3または4から選択されるものであり;
dは、各存在において0、1または2であり;
R3は、各存在において、独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、ヘテロシクロアルキル、-C(=O)OR8、-OC(=O)R8、-C(=O)NR8R9、-C(=O)NR8OR9、-SO2NR8R9、-NR8SO2R9、-CN、-NO2、-NR8R9、-NR8C(=O)R9、-NR8C(=O)(CH2)bOR9、-NR8C(=O)(CH2)bR9、-O(CH2)bNR8R9、またはフェニルに縮合しているヘテロ環であり;
R4は、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、またはヘテロシクロアルキルであり、各基は、場合により、R3から独立して選択される1〜4個の置換基で置換されていてもよく、あるいはR4はハロゲンまたはヒドロキシであり;
R5、R6およびR7は、同一であるか異なっており、かつ各存在において、独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、またはヘテロシクロアルキルであり、ここで、R5、R6およびR7の各基は、場合により、R3から独立して選択される1〜4個の置換基で置換されていてもよく;
R8およびR9は、同一であるか異なっており、かつ各存在において、独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、またはヘテロシクロアルキルであるか、あるいはR8およびR9は、それらが結合されている1個または複数の原子と一緒になってヘテロ環を形成しており、ここで、R8、R9の各基、ならびにヘテロ環を形成するために一緒になっているR8およびR9は、場合により、R3から独立して選択される1〜4個の置換基と置換されていもよい)
あるいはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、または立体異性体を有する、請求項1に記載のステント。
【請求項5】
JNK阻害剤が次式:
【化2】

(式中:
R1は、場合によりR7から独立して選択される1〜4個の置換基で置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールであり;
R2は水素であり;
R3は水素または低級アルキルであり;
R4は1〜4個の任意の置換基を表し、ここで、各置換基は、同一であるか、異なっており、かつ独立してハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、および低級アルコキシであり;
R5およびR6は、同一であるか異なっており、かつ独立して、-R8、-(CH2)aC(=O)R9、-(CH2)aC(=O)OR9、-(CH2)aC(=O)NR9R10、-(CH2)aC(=O)NR9(CH2)bC(=O)R10、-(CH2)aNR9C(=O)R10、(CH2)aNR11C(=O)NR9R10、-(CH2)aNR9R10、-(CH2)aOR9、-(CH2)aSOcR9、または-(CH2)aSO2NR9R10であり; あるいはR5およびR6は、それらが結合されている窒素原子と一緒になってヘテロ環または置換ヘテロ環を形成し;
R7は、各存在において、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、ヘテロシクロアルキル、-C(=O)OR8、-OC(=O)R8、-C(=O)NR8R9、-C(=O)NR8OR9、-SOCR8、-SOCNR8R9、-NR8SOCR9、-NR8R9、-NR8C(=O)R9、-NR8C(=O)(CH2)bOR9、-NR8C(=O)(CH2)bR9、-O(CH2)bNR8R9、あるいはフェニルに縮合しているヘテロ環であり;
R8、R9、R10およびR11は、同一であるか異なっており、かつ各存在において、独立して水素、アルキル、置換アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロ環、またはヘテロシクロアルキルであり;
あるいはR8およびR9は、それらが結合されている1個または複数の原子と一緒になってヘテロ環を形成し;
aおよびbは、同一であるか異なっており、かつ各存在において、独立して0、1、2、3または4であり;
cは、各存在において0、1または2である)
あるいはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、また立体異性体を有している、請求項1に記載のステント。
【請求項6】
JNK阻害剤が次式:
【化3】

(式中、
R0は、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、NHまたは-CH2-であり;
前記化合物は、(i)非置換であるか、(ii)一置換であって、第1の置換基を有しているか、あるいは(iii)二置換であって、第1および第2の置換基を有しており;
第1または第2の置換基は、存在する場合、3位、4位、5位、7位、8位、9位または10位にあり、
ここで、第1または第2の置換基は、存在する場合、独立して、アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、トリフルオロメチル、スルホニル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールアルキル、シクロアルキルアルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アミノアルコキシ、モノアルキルアミノアルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、または構造(a)、(b)、(c)、(d)、(e)もしくは(f):
【化4】

(式中、
R3およびR4は一緒になり、かつアルキリデンまたはヘテロ原子含有環状アルキリデンを表すか、あるいは、R3とR4は、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールオキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルであり;
R5は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルアルキルアミノ、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、またはジアルキルアミノアルキルである)
によって表される基である)
あるいはその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、または立体異性体を有する、請求項1に記載のステント。
【請求項7】
被覆が製薬上許容可能な担体を含む、請求項2に記載のステント。
【請求項8】
ステントがステントグラフトである、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
ステントがポリマーを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項10】
ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリシアノアクリレート、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)、エチレングリコールIジメタクリレート、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(HEMA)、またはポリヒドロキシアルカノエート化合物である、請求項9に記載のステント。
【請求項11】
被覆が放出制御被覆である、請求項2に記載のステント。
【請求項12】
有効量のJNK阻害剤でステントを被覆するステップを含む、請求項2に記載のステントの製造方法。
【請求項13】
ステントがステントグラフトである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
有効量のJNK阻害剤がその内部に組み込まれた材料がJNK阻害剤を放出制御し得る、請求項3に記載のステント。
【請求項15】
有効量のJNK阻害剤がその内部に組み込まれた材料を用いてステントを製造することを含む、請求項3に記載のステントを製造する方法。
【請求項16】
心血管疾患または腎臓病の治療または予防が必要な患者に請求項1に記載のステントを移植することを含む、患者の心血管疾患または腎臓病の治療または予防方法。
【請求項17】
アテローム性動脈硬化症の治療または予防が必要な患者に請求項1に記載のステントを移植することを含む、患者のアテローム性動脈硬化症の治療または予防方法。
【請求項18】
外科的処置をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
外科的処置をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
外科的処置が、経皮的冠動脈形成術、血管再生術、経皮経管的冠動脈形成術、頚動脈経皮経管的動脈形成術、冠動脈バイパス移植、またはステント移植による冠動脈形成術を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
外科的処置が、腎血管形成術;腸骨動脈、大腿動脈もしくは膝窩動脈の末梢経皮経管的処置;または移植人工グラフトを用いる外科的処置を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
ステントがステントグラフトである、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
ステントがステントグラフトである、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
移植が血管形成術の適用前に行なわれる、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
移植が血管形成術の適用中に行なわれる、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
移植が血管形成術の適用後に行なわれる、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
請求項1に記載のステントと、その使用に関する説明書とを含むキット。

【公表番号】特表2006−512143(P2006−512143A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564931(P2004−564931)
【出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/041763
【国際公開番号】WO2004/060318
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(591120033)セルジーン・コーポレーション (84)
【氏名又は名称原語表記】CELGENE CORPORATION
【Fターム(参考)】