説明

表示装置の製造方法および液晶表示装置

【課題】 液晶表示装置における周期的な画質のむらを低減する。
【解決手段】 絶縁基板の上に形成された感光性材料膜を露光、現像して、あらかじめ定められた基本パターンを前記絶縁基板上の複数箇所に形成する工程を有し、前記感光性材料膜の露光は、露光対象領域を複数の小領域に分割し、小領域毎に露光することで前記露光対象領域全体を露光し、かつ、空間光変調素子を数値制御することで各小領域に照射する光のパターンを生成する直描露光装置を用いて行う表示装置の製造方法であって、前記感光性材料膜の露光は、前記複数箇所に形成される前記基本パターンの寸法の変動量が0.2μm以下になるように、前記空間光変調素子で生成される前記光のパターンの光量分布を補正した前記直描露光装置を用いて行う表示装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造方法および液晶表示装置に関し、特に、液晶表示装置の製造方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アクティブマトリクス型液晶表示装置は、たとえば、テレビ、パーソナルコンピュータ向けのディスプレイ、携帯電話や携帯ゲーム機などの携帯型電子機器のディスプレイなどに広く用いられている。
【0003】
アクティブマトリクス型液晶表示装置は、一対の基板の間に液晶材料を封入した液晶表示パネルを有する表示装置であり、液晶表示パネルの表示領域は、たとえば、TFT素子、画素電極、対向電極、および液晶層を有する画素の集合で設定される。
【0004】
液晶表示装置で映像や画像を表示するときには、液晶表示パネルの各画素におけるバックライトからの光の透過率、または外光の反射率、あるいはその両方を制御する。このとき、各画素における光の透過率や反射率は、TFT基板と対向基板との間に介在する液晶層(液晶分子)の配向方向で制御する。液晶層の配向方向は、主として、画素電極と共通電極との電位差の大きさや、電位差が生じたときに印加される電界の方向によって制御される。このとき、画素電極と共通電極との配置方法は、VA方式やTN方式のように液晶層を挟んで配置する方法と、IPS方式のように一対の基板のうちの一方の基板に配置する方法とに大別される。
【0005】
IPS方式の場合、画素電極と共通電極は、たとえば、絶縁層の同一面上に配置される。このとき、画素電極と共通電極は、平面形状が櫛歯状であり、両電極の櫛歯部分が交互に並ぶように配置される。また、IPS方式の場合、画素電極と共通電極は、たとえば、絶縁層を介して積層することもある。このとき、画素電極と共通電極は、液晶層に近いほうの電極の平面形状を櫛歯状にする。
【0006】
画素電極と共通電極を絶縁層の同一面上に配置する場合、それらの電極は、通常、各画素における画素電極の櫛歯部分と共通電極の櫛歯部分との間隙が、概ね等しくなるように形成する必要がある。また、画素電極と共通電極を積層する場合、液晶層に近いほうの電極は、各櫛歯部分の間隙が、概ね等しくなるように形成する必要がある。
【0007】
ところで、画素電極および共通電極を形成する工程は、ITO膜などの透明導電膜をエッチングして形成するのが一般的である。このとき、従来の液晶表示パネルの製造方法では、透明導電膜の上に形成した感光性材料膜を、フォトマスクを使用する露光装置で露光した後、現像して得られるエッチングレジストをマスクとして、透明導電膜の不要な部分を除去する。
【0008】
しかしながら、液晶表示パネルを製造するときには、通常、大面積のマザーガラスを用いて製造する。そのため、フォトマスクを使用する露光装置で感光性材料膜を露光すると、たとえば、フォトマスクの端部と対応する部分の光のパターンにゆがみが生じ、その結果として画素電極や共通電極の線幅のばらつきが大きくなりやすい。
【0009】
そのため、近年の液晶表示パネルの製造方法では、感光性材料膜を露光するときに、フォトマスクを使用する露光装置の代わりに、マルチビーム露光装置と呼ばれる露光装置を用いる方法が提案されている(たとえば、特許文献1を参照。)。
【0010】
マルチビーム露光装置は、直描露光方式またはダイレクト露光方式などと呼ばれる方式の露光装置の一種であり、フォトマスクの代わりに、DMDなどのMEMSを数値制御することにより感光性材料膜に照射する光のパターンを生成する露光装置である。すなわち直描露光方式の露光装置は、制御に使用する数値データを補正することで感光性材料膜に照射する光のパターンを変更でき、たとえば、画素電極や共通電極の線幅のばらつきを容易に低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−294373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1のマルチビーム露光装置のような直描露光方式の露光装置の場合、一度に露光可能な領域が、たとえば、数mm×数mm程度と小さく、当該一度に露光可能な領域を走査させることで、感光性材料膜全体を露光する。そのため、フォトマスクを使用して大面積を一度で露光する場合に比べて、照射する光のパターンのゆがみが小さい。
【0013】
しかしながら、直描露光方式の露光装置で感光性材料膜を露光する場合でも、たとえば、一度に露光可能な領域に照射される光の光量にむらが生じ、画素電極や共通電極の線幅にばらつきが生じることがある。そのため、特許文献1のマルチビーム露光装置では、たとえば、DMDに当たる光の強度分布、すなわち光源から出射する光の光量分布(強度分布)を調整することで、感光性材料膜に照射される光の光量むらを抑制している。
【0014】
ところで、直描方式の露光装置において感光性材料膜に照射する光の光量均一性は、主として、光源の均一性、DMDなどの空間光変調素子の均一性、および投影光学系の均一性で決まる。このとき、光源や投影光学系の均一性に起因する光量のむらは緩やかなので、光源から出射する光の光量分布を調整するだけでも、感光性材料膜に照射される光の光量むらを抑制できると考えられる。
【0015】
しかしながら、直描露光方式の露光装置で使用するDMDなどの空間光変調素子は、数千もの素子の動きを制御して光のパターンを生成するので、光源から出射する光の光量分布を調整するだけでは、たとえば、個々の素子における反射方向や反射量のばらつきなどが原因で、感光性材料膜に照射される光の光量のむらを抑制しきれない。
【0016】
そのため、一度に露光可能な領域を走査させて感光性材料膜の全体を露光した場合、たとえば、画素電極や共通電極の線幅に、一度に露光可能な領域の寸法と同期する周期性を有するばらつき(変動)が生じやすい。その結果、得られた液晶表示パネル(液晶表示装置)には、たとえば、一度に露光可能な領域の寸法と同期する周期性を有する輝度むらなどが生じ、画質が低下するという問題があった。
【0017】
本発明の目的は、たとえば、液晶表示装置における周期的な画質のむらを低減することが可能な技術を提供することにある。
【0018】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概略を説明すれば、以下の通りである。
【0020】
(1)絶縁基板の上に形成された感光性材料膜を露光、現像して、あらかじめ定められた基本パターンを前記絶縁基板上の複数箇所に形成する工程を有し、前記感光性材料膜の露光は、露光対象領域を複数の小領域に分割し、小領域毎に露光することで前記露光対象領域全体を露光し、かつ、空間光変調素子を数値制御することで各小領域に照射する光のパターンを生成する直描露光装置を用いて行う表示装置の製造方法であって、前記感光性材料膜の露光は、前記複数箇所に形成される前記基本パターンの寸法の変動量が0.2μm以下になるように、前記空間光変調素子で生成される前記光のパターンの光量分布を補正した前記直描露光装置を用いて行う表示装置の製造方法。
【0021】
(2)前記(1)の表示装置の製造方法において、前記感光性材料膜の露光は、前記複数箇所に形成される前記基本パターンの寸法の変動量が0.1μm以下になるように、前記空間光変調素子で生成される前記光のパターンの光量分布を校正した前記直描露光装置を用いて行う表示装置の製造方法。
【0022】
(3)前記(1)の表示装置の製造方法において、前記光量分布の補正は、前記複数箇所に形成された前記基本パターンの寸法の変動分布をフーリエ解析し、あらかじめ定められた寸法と、前記フーリエ解析で得られた寸法との差に基づいて行う表示装置の製造方法。
【0023】
(4)前記(3)の表示装置の製造方法において、前記感光性材料膜はポジ型であり、前記光量分布の補正は、前記フーリエ解析で得られた寸法があらかじめ定められた寸法よりも大きい場合は光量を高くし、前記フーリエ解析で得られた寸法があらかじめ定められた寸法よりも小さい場合は光量を低くする表示装置の製造方法。
【0024】
(5)前記(1)の表示装置の製造方法において、前記基本パターンは、透明導電膜の上に形成し、前記基本パターンを形成した後、当該基本パターンをマスクとして前記透明導電膜をエッチングし、第1の電極と第2の電極とを形成する表示装置の製造方法。
【0025】
(6)前記(5)の表示装置の製造方法において、前記第1の電極および前記第2の電極は、それぞれ、平面形状が櫛歯状であり、かつ、前記第1の電極の櫛歯部分と前記第2の櫛歯部分とが交互に並ぶように形成される表示装置の製造方法。
【0026】
(7)前記(5)の表示装置の製造方法において、前記光量分布の補正は、前記複数箇所に形成された前記第1の電極および第2の電極の寸法の変動分布をフーリエ解析し、あらかじめ定められた寸法と、前記フーリエ解析で得られた寸法との差に基づいて行う表示装置の製造方法。
【0027】
(8)前記(1)の表示装置の製造方法において、前記基本パターンは、透明導電膜の上に形成し、前記基本パターンを形成した後、当該基本パターンをマスクとして前記透明導電膜をエッチングし、平面形状が櫛歯状の電極を形成する表示装置の製造方法。
【0028】
(9)前記(8)の表示装置の製造方法において、前記光量分布の補正は、前記複数箇所に形成された前記電極の寸法の変動分布をフーリエ解析し、あらかじめ定められた寸法と、前記フーリエ解析で得られた寸法との差に基づいて行う表示装置の製造方法。
【0029】
(10)前記(1)の表示装置の製造方法において、前記空間光変調素子は、複数のリボン状光回折素子からなり、前記複数のリボン状光回折素子は、それぞれ独立して可動し、かつ、動かす量に応じて回折光の強度が変化する表示装置の製造方法。
【0030】
(11)TFT素子、画素電極、共通電極、および液晶層を有する画素がマトリクス状に配置された表示領域を有する液晶表示装置であって、前記表示領域にマトリクス状に配置された複数の前記画素電極は、平面でみたときのある方向の寸法が最大になる画素電極の寸法と最小になる画素電極の寸法との差が0.2μm以下である液晶表示装置。
【0031】
(12)前記(11)の液晶表示装置において、複数の前記画素電極は、前記平面でみたときのある方向の寸法が最大になる画素電極の寸法と最小になる画素電極の寸法との差が0.1μm以下である液晶表示装置。
【0032】
(13)前記(11)の液晶表示装置において、前記画素電極は、前記平面で見たときの形状が複数の帯状部分を有する櫛歯状であり、当該帯状部分の幅の最大値と最小値との差、および隣接する2つの帯状部分の間隙の最大値と最小値との差が、0.2μm以下である液晶表示装置。
【発明の効果】
【0033】
本発明の表示装置の製造方法および液晶表示装置によれば、たとえば、液晶表示装置における周期的な画質のむらを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の適用が望まれる液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式平面図である。
【図2】図1に示した液晶表示パネルのTFT基板における画素の平面構成の一例を示す模式平面図である。
【図3】図2のA−A’線における液晶表示パネルの断面構成の一例を示す模式断面図である。
【図4】図2のB−B’線における液晶表示パネルの断面構成の一例を示す模式断面図である。
【図5】フォトマスクを使用する露光装置で感光性材料膜を露光したときの画素電極および共通電極の線幅の分布と画素の輝度との関係の一例を示す模式グラフ図である。
【図6】直描露光方式の露光装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【図7】直描露光方式の露光装置を用いた感光性材料膜の露光方法の一例を示す模式図である。
【図8】図7の領域ARを拡大した模式図である。
【図9】露光光量の分布の一例を示す模式グラフ図である。
【図10】直描露光方式の露光装置を用いた従来の露光方法で感光性材料膜を露光したときのx方向の位置と画素電極および共通電極の線幅との関係の一例を示す模式グラフ図である。
【図11】図10に示した線幅の分布のノイズ成分を除去した結果の一例を示す模式グラフ図である。
【図12】図10に示した線幅の分布におけるノイズ成分を示す模式グラフ図である。
【図13】光量の補正方法の一例を示す模式グラフ図である。
【図14】本実施例の原理に基づいて露光光量を補正したときの画素電極および共通電極の線幅の分布の一例を示す模式グラフ図である。
【図15】図10に示した線幅の分布のノイズ成分を除去した結果の一例を示す模式グラフ図である。
【図16】光量の補正方法の一例を示す模式グラフ図である。
【図17】露光光量を図16に示した分布に補正したときの画素電極および共通電極の線幅の分布の一例を示す模式グラフ図である。
【図18】図17に示した線幅の分布のノイズ成分を除去した結果の一例を示す模式グラフ図である。
【図19】本実施例の液晶表示パネルの製造方法における露光方法の一具体例を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明について、図面を参照して実施の形態(実施例)とともに詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例】
【0036】
図1乃至図4は、本発明の適用が望まれる液晶表示パネルの概略構成の一例を説明するための模式図である。
図1は、本発明の適用が望まれる液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式平面図である。図2は、図1に示した液晶表示パネルのTFT基板における画素の平面構成の一例を示す模式平面図である。図3は、図2のA−A’線における液晶表示パネルの断面構成の一例を示す模式断面図である。図4は、図2のB−B’線における液晶表示パネルの断面構成の一例を示す模式断面図である。
【0037】
本実施例では、本発明の適用が望まれる液晶表示パネルの一例として、携帯電話端末などの携帯型電子機器の液晶ディスプレイに用いられるIPS方式のアクティブマトリクス型液晶表示パネルを挙げる。
【0038】
携帯電話端末などに用いられるアクティブマトリクス型液晶表示パネルは、たとえば、図1に示すように、TFT基板1と対向基板2とを有し、TFT基板1と対向基板2との間には、液晶材料(図示しない)が介在している。このとき、TFT基板1と対向基板2とは、表示領域DAを囲む環状のシール材(図示しない)で接着されており、液晶材料は、TFT基板1、対向基板2、およびシール材で囲まれる空間に封入されている。
【0039】
TFT基板1は、複数本の走査信号線3、複数本の映像信号線4、コモン配線5、および信号入力配線6や、図示していないTFT素子、画素電極、および共通電極などを有する。また、TFT基板1は、対向基板2よりも平面寸法が大きくなっており、対向基板2と重ならずにはみ出している部分には、たとえば、液晶表示パネルを動作させるための駆動回路などを有するICチップ7が実装されている。
【0040】
複数の走査信号線3は、それぞれ、表示領域DAを通る部分を有するとともに、一端がICチップ7に接続している。このとき、各走査信号線3の表示領域DAを通る部分は、x方向に延在しており、かつ、y方向に所定の間隔で並んでいる。
【0041】
複数の映像信号線4は、それぞれ、表示領域DAを通る部分を有するとともに、一端がICチップ7に接続している。このとき、各映像信号線4の表示領域DAを通る部分は、y方向に延在しており、かつ、x方向に所定の間隔で並んでいる。また、走査信号線3と映像信号線4との交差領域には、絶縁層が介在している。
【0042】
アクティブマトリクス型液晶表示パネルの表示領域DAは、複数の画素がマトリクス状に配置された領域であり、1つの画素が占有する領域は、たとえば、隣接する2本の走査信号線3と隣接する2本の映像信号線4とで囲まれる領域に相当する。このとき、それぞれの画素は、たとえば、アクティブ素子(スイッチング素子と呼ぶこともある)として機能するTFT素子、画素電極、および共通電極を有する。
【0043】
また、IPS方式のアクティブマトリクス型液晶表示パネルは、TFT素子、画素電極、および共通電極が、TFT基板1に形成されている。このとき、液晶表示パネルにおける1つの画素の構成は、たとえば、図2乃至図4に示すような構成になっている。
【0044】
TFT基板1は、ガラス基板などの第1の絶縁基板9を有し、当該第1の絶縁基板9の表面(液晶層8と対向する面)には、走査信号線3、コモン配線5、およびそれらを覆う第1の絶縁層10が形成されている。
【0045】
第1の絶縁層10の上には、TFT素子の半導体層11、映像信号線4、TFT素子のソース電極12、およびそれらを覆う第2の絶縁層13が形成されている。このとき、半導体層11は、走査信号線3上に配置し、走査信号線3をTFT素子のゲート電極として機能させ、第1の絶縁層10をTFT素子のゲート絶縁膜として機能させる。また、映像信号線4は、半導体層11に乗り上げる部分を設け、その部分をTFT素子のドレイン電極として機能させる。また、ソース電極12は、その一部分をコモン配線5と重畳させ、保持容量を形成するための電極として利用する。
【0046】
第2の絶縁層13の上には、画素電極14、共通電極15、およびそれらを覆う第1の配向膜16が形成されている。
【0047】
共通電極15は、複数の画素で共有される電極であり、各画素と対応する開口部を有し、かつ、各開口部のx方向で見た中央部分に、y方向に延在する分岐部を有する。このとき、共通電極15は、分岐部の先端が第1のスルーホールTH1によりコモン配線5と接続している。またこのとき、共通電極15は、たとえば、表示領域DAの外側でも、別のスルーホールによりコモン配線5と接続している。
【0048】
画素電極14は、画素毎に独立した電極であり、共通電極15の分岐部を挟んで並び、かつ、y方向に延在する2つの櫛歯部分と、当該2つの櫛歯部分を連結する部分とからなる。このとき、画素電極14は、第2のスルーホールTH2によりソース電極12と接続している。
【0049】
一方、対向基板2は、ガラス基板などの第2の絶縁基板17を有し、当該第2の絶縁基板17の表面(液晶層8と対向する面)には、ブラックマトリクス18、カラーフィルタ19R,19G,19B、およびそれらを覆う平坦化膜20が形成されている。液晶表示パネルがRGB方式のカラー表示に対応している場合、第2の絶縁基板17の表面には、通過した光が赤色を呈する赤色フィルタ19R、通過した光が緑色を呈する緑色フィルタ19G、および通過した光が青色を呈する青色フィルタ19Bの3種類が有り、通常、各画素は、当該3種類のフィルタのうちのいずれか1つを有する。またこのとき、赤色フィルタ19R、緑色フィルタ19G、および青色フィルタ19Bは、たとえば、x方向で連続する3つの画素が、赤色フィルタ19Rを有する画素、緑色フィルタ19Gを有する画素、および青色フィルタ19Bを有する画素になるように配置される。
【0050】
平坦化膜20の上には、および第2の配向膜21が形成されている。なお、平坦化膜20の上には、たとえば、各画素における液晶層8の厚さを均一にするための柱状スペーサが設けられていることもある。
【0051】
また、液晶表示装置が透過型または半透過型の場合は、通常、第1の絶縁基板9の、液晶層8と対向する面とは反対側の面に第1の偏光板22が設けられ、第2の絶縁基板17の、液晶層8と対向する面とは反対側の面に第2の偏光板23が設けられる。このとき、第1の偏光板22と第2の偏光板23とは、たとえば、それぞれの偏光板における吸収軸が直交するように配置される。
【0052】
液晶表示装置で映像や画像を表示するときには、液晶表示パネルの各画素におけるバックライトからの光の透過率、または外光の反射率、あるいはその両方を制御する。このとき、各画素における光の透過率や反射率は、TFT基板1と対向基板2との間に介在する液晶層8(液晶分子)の配向方向で制御する。液晶層8の配向方向は、主として、画素電極14と共通電極15との電位差の大きさや、電位差が生じたときに印加される電界の方向によって制御される。
【0053】
図2乃至図4に示した構成の画素において、画素電極14と共通電極15とが等電位(すなわち電位差が0)のときの液晶層8の配向方向は、第1の配向膜16および第2の配向膜21の配向方向にしたがう。IPS方式の場合、液晶層8は、画素電極14と共通電極15とが等電位のときの配向方向が第1の偏光板22の吸収軸または第2の偏光板23の吸収軸のいずれかと概ね平行になるホモジニアス配向にしている。このとき、画素電極14と共通電極15とが等電位の画素は、暗表示になる。
【0054】
また、図2乃至図4に示した構成の画素において、画素電極14と共通電極15との間に電位差を与えると、図4に示したような液晶層8を通る電気力線24が生じ、液晶層8にフリンジ電界と呼ばれる電界が印加される。このとき、液晶層8の配向方向は、印加される電界の大きさや方向に応じて回転する。そのため、画素電極14と共通電極15との間に電位差を与えた画素は、当該電位差の大きさに応じた明表示になる。
【0055】
RGB方式のカラー表示に対応している液晶表示装置の場合、映像や画像の1ドット(絵素)は、たとえば、赤色フィルタ19Rを有する画素、緑色フィルタ19Gを有する画素、および青色フィルタ19Bを有する画素の3つの画素からなり、各ドットの色は、当該3つの画素の明るさ(画素電極14の電位)の組み合わせにより制御される。
【0056】
また、画素電極14と共通電極15との間に所定の電位差を与えたときに液晶層8に印加される電界の強さは、画素電極14と共通電極15との間隙Gの大きさによって変化する。図2乃至図4に示した画素の画素電極14および共通電極15において、液晶分子の配向方向の制御、言い換えると光の透過率や反射率の制御に大きく寄与する部分は、映像信号線4の延伸方向(y方向)に沿って延びる部分(図2の平行斜線群を付した部分)である。そのため、図2乃至図4に示したような平面形状の画素電極14および共通電極15を形成するときには、液晶分子の配向方向の制御に大きく寄与する部分(図2の平行斜線群を付した部分)における画素電極14と共通電極15との間隙が概ね一定の値Gになるように形成する。
【0057】
図2乃至図4に示したような構成のTFT基板1を製造する際、画素電極14および共通電極15は、通常、ITO膜などの透明導電膜をエッチングして形成する。このとき、透明導電膜の上に形成する保護膜(エッチングレジスト)は、通常、当該透明導電膜の上に形成した感光性材料膜を露光、現像して形成する。またこのとき、従来のTFT基板1の製造方法では、感光性材料膜の露光を、フォトマスクを使用する露光装置で行うのが一般的であった。
【0058】
しかしながら、フォトマスクを使用する露光装置で感光性材料膜を露光するときには、複数枚のレンズにより、フォトマスクを通過した光を感光性材料膜の表面で結像させるので、たとえば、感光性材料膜に照射される光のパターンにゆがみが生じやすい。そのため、画素電極14および共通電極15を形成する工程における感光性材料膜の露光を、フォトマスクを使用する露光装置で行うと、たとえば、1枚のTFT基板1内にある各画素における画素電極14と共通電極15との間隙Gの大きさにばらつきが生じやすい。また、多面取りと呼ばれる方法で液晶表示パネルを製造するときには、たとえば、1組のマザーガラスから得られる複数の液晶表示パネル間で、画素電極14と共通電極15との間隙Gの大きさにばらつきが生じやすい。このように、画素電極14と共通電極15との間隙Gの大きさにばらつきが生じると、両電極間に所定の電位差を与えたときに液晶層8に印加される電界の強さがばらつき、液晶表示装置の画質にむらが生じる。
【0059】
また、画素電極14および共通電極15を形成する工程における感光性材料膜の露光を、フォトマスクを使用する露光装置で行う場合は、たとえば、画素電極14と共通電極15との間隙Gの大きさに無視できないばらつきが生じると、両電極の寸法や形成位置を補正した新たなフォトマスクを作成する必要がある。
【0060】
図5は、フォトマスクを使用する露光装置で感光性材料膜を露光したときの画素電極および共通電極の線幅の分布と画素の輝度との関係の一例を示す模式グラフ図である。
【0061】
図2乃至図4に示したような構成の液晶表示パネルを製造する場合、画素電極14および共通電極15を形成する工程において、フォトマスクを使用する露光装置で感光性材料膜を露光すると、1枚の液晶表示パネルにおける画素電極および共通電極の線幅と、画素の輝度との関係は、たとえば、図5に示したような関係になる。なお、図5には、画素電極14および共通電極15を形成するときに、液晶分子の配向方向の制御に大きく寄与する部分(図2の平行斜線群を付した帯状部分)の線幅Wが2.3μmになるように形成し、かつ、輝度むらが最も見えやすい白色中間輝度での所定動作条件における輝度を測定したときの線幅Wと相対輝度QoEとの関係の一例を示している。
【0062】
このように、フォトマスクを使用する露光装置で感光性材料膜を露光した場合、得られる画素電極14および共通電極15の線幅Wの変動量σ1が0.4μm以上と大きく、相対輝度QoEの変動量が約5%になる。そのため、得られた液晶表示パネルでは、この輝度の変動によるむらが生じる。
【0063】
ところで、一般的な液晶表示パネルでは、たとえば、相対輝度QoEの変動量が2%以下であると、むらとして識別することが難しくなる。また、画素電極14および共通電極15の線幅Wの変動量と、相対輝度QoEの変動量との関係は、図5に示したように、概ね比例関係になる。そのため、画素電極14および共通電極15の線幅Wのばらつきによる輝度むらを低減するには、たとえば、画素電極14および共通電極15の線幅Wの変動量をσ2以下(0.2μm以下)に抑えればよい。またこのとき、画素電極14および共通電極15の線幅Wの変動量は、0.1μm以下に抑えることが望ましい。
【0064】
しかしながら、液晶表示パネルは、たとえば、730mm×920mmなどの大面積のマザーガラスを用いて製造する。そのため、フォトマスクを使用する露光装置で感光性材料膜を露光する場合、画素電極14および共通電極15の線幅Wの変動量を0.2μm以下に抑えることが難しい。
【0065】
上記のようなことから、近年の液晶表示パネル(TFT基板)の製造方法では、直描露光方式またはダイレクト露光方式などと呼ばれる、フォトマスクを使用しない露光装置で感光性材料膜を露光する方法の適用が検討されている。
【0066】
直描露光方式の露光装置は、フォトマスクの代わりに、たとえば、CADなどで作成されたレイアウトデータに基づく数値制御により感光性材料膜に照射する光のパターンを生成する空間光変調素子を用いた露光装置である。空間光変調素子には、たとえば、DMD(Digital Micromirror Device)や、GLV(Grating Light Valve)などのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が用いられる。
【0067】
DMDは、複数の微小ミラーを有し、それぞれの微小ミラーは、たとえば、静電気力により向き(光を反射する方向)を変えることができるようになっている。そのため、空間光変調素子としてDMDを用いた露光装置は、レイアウトデータに基づいてそれぞれの微小ミラーの向きを制御することで、感光性材料膜に照射する光のパターンを生成することができる。
【0068】
また、GLVは、複数のリボン状光回折素子を有し、それぞれのリボン状光回折素子は、たとえば、電気信号により動かすことができ、かつ、動かす量によって回折光の光量を変えることができるようになっている。そのため、空間光変調素子としてGLVを用いた露光装置は、レイアウトデータに基づいてそれぞれのリボン状光回折素子の動かす量を制御することで、感光性材料膜に照射する光のパターンを生成することができる。
【0069】
図6乃至図9は、直描露光方式の露光装置の概略構成の一例および露光方法を一例を説明するための模式図である。
図6は、直描露光方式の露光装置の概略構成の一例を示す模式図である。図7は、直描露光方式の露光装置を用いた感光性材料膜の露光方法の一例を示す模式図である。図8は、図7の領域ARを拡大した模式図である。図9は、露光光量の分布の一例を示す模式グラフ図である。
【0070】
空間光変調素子としてGLVを用いた直描露光方式の露光装置は、たとえば、図6に示すように、光源25、照明光学系26、空間光変調素子27(GLV)、回折光フィルタ28、投影光学系29、およびステージ30を有する。
【0071】
光源25は、たとえば、感光性材料膜が感光する波長のレーザ光を発するレーザ光源であり、当該光源25が発したレーザ光は、照明光学系26を通過して空間光変調素子27に入射する。このとき、空間光変調素子27は、たとえば、CADなどで作成されたレイアウトデータ(数値データ)に基づいてそれぞれのリボン状光回折素子を動かし、レイアウトデータを反映したパターンの回折光を生成する。またこのとき、空間光変調素子27から出射してステージ30の上に固定された基板31に向かう光には、上記の回折光の他に、当該空間光変調素子27で反射した反射光が含まれている。直描露光方式の露光装置において、基板31に形成された感光性材料膜を感光させるのに必要な光は、回折光のみであり、反射光は不要である。そのため、空間光変調素子27としてGLVを用いた直描露光方式の露光装置では、空間光変調素子27と基板31との間に回折光フィルタ28を配置し、空間光変調素子27から出射して基板31に向かう光に含まれる反射光を除去する。回折光フィルタ28を通過した回折光は、投影光学系29により、たとえば、基板31上に、1/10に縮小投影される。
【0072】
ところで、空間光変調素子27として用いるGLVは、微小なリボン状光回折素子が一列に並んでおり、生成される回折光のパターン、言い換えると一度に露光可能な領域は、一次元的である。
【0073】
そのため、空間光変調素子27としてGLVを用いた直描露光方式の露光装置で感光性材料膜を露光するときには、たとえば、光源25、照明光学系26、空間光変調素子27(GLV)、回折光フィルタ28、および投影光学系29でなる光学ユニットを固定しておき、ステージ30を移動させて、基板31上における一度に露光可能な領域の位置をずらしながら、感光性材料膜の全体を露光する。
【0074】
このとき、基板31に形成された感光性材料膜の露光は、たとえば、図7に示すように、全体を、y方向を長手方向とする複数の帯状領域BAに分割し、一度に露光可能な領域EAをy方向に移動させる主走査と、x方向に移動させる副走査とを繰り返して行う。またこのとき、帯状領域BAの幅BWは、たとえば、1mmから10mm程度である。
【0075】
また、図7に示したように感光性材料膜を複数の帯状領域BAに分割し、主走査と副走査とを繰り返して露光する場合、隣接する2つの帯状領域BAの境界に未露光領域が生じることを防ぐために、たとえば、図8に示すように、隣接する2つの帯状領域BAの境界部分に幅(短辺方向の寸法)がOLWの重複領域を設けることが望ましい。このとき、重複領域の幅OLWは任意であるが、できるだけ小さくすることが望ましい。また、重複領域を設ける場合、空間光変調素子は、一度に露光可能な領域EAの幅EW(一度の主走査における露光幅)が、たとえば、図8に示したように、EW=BA+OLWになるようなものを用いる。なお、図8では、わかりやすくするために重複領域の幅OLWを広くしているが、実際の幅OLWは数十μm程度である。
【0076】
ところで、隣接する2つの帯状領域BAの境界に設ける重複領域は、当該重複領域の左側の帯状領域BAを露光する際と、右側の帯状領域BAを露光する際の2回露光されることになる。そのため、幅OLWの重複領域を設ける場合は、一度の主走査における幅方向(x方向)の光量QoEの分布を、たとえば、図9に示すような分布にし、重複領域の1回目の露光時における光量と、2回目の露光時における光量の総量が、1回だけ露光される幅UWの帯状領域に対して照射する光の光量QoEと同等になるようにすることが望ましい。
【0077】
図10は、直描露光方式の露光装置を用いた従来の露光方法で感光性材料膜を露光したときのx方向の位置と画素電極および共通電極の線幅との関係の一例を示す模式グラフ図である。なお、図10は、帯状領域BAの幅BWを4mmとしたときのx方向の位置と画素電極および共通電極の線幅との関係の一例を示している。
【0078】
直描露光方式の露光装置を用いて感光性材料膜を露光する場合、従来は、たとえば、図9に示したように、1回だけ露光する幅UWの帯状領域における光量分布が均一になるように校正(キャリブレーション)をしている。したがって、直描露光方式の露光装置を用いて感光性材料膜を露光する場合、x方向に並んだ各画素における画素電極14および共通電極15の線幅は、本来なら、概ね一定の値になるはずである。
【0079】
しかしながら、光量分布が図9に示したような分布になるように調整した場合でも、たとえば、図10に示すように、x方向に並んだ各画素における画素電極14および共通電極15の線幅Wが変動する。なお、図10は、画素電極14および共通電極15の線幅が2.5μmになるように形成した場合の、実際の線幅Wの分布の一例である。このとき、線幅Wの変動量は、約0.2μmであり、図5に示したフォトマスクを使用する露光装置を用いた場合の変動幅σ1に比べると小さくなっている。そのため、画素電極14および共通電極15の線幅Wのばらつきによる輝度のむらが小さくなる。
【0080】
しかしながら、図10に示した画素電極14および共通電極15の線幅Wの分布を大局的に見ると、一度の主走査における露光幅EWと同期する周期(4mm周期)で変動している。したがって、このような線幅Wの分布を有する液晶表示装置では、たとえば、一度の主走査における露光幅EWと対応する周期性の輝度むらが生じる。
【0081】
図11乃至図13は、本実施例の液晶表示装置の製造方法の原理を説明するための模式図である。
図11は、図10に示した線幅の分布のノイズ成分を除去した結果の一例を示す模式グラフ図である。図12は、図10に示した線幅の分布におけるノイズ成分を示す模式グラフ図である。図13は、光量の補正方法の一例を示す模式グラフ図である。
【0082】
本願発明者らが、図10に示した分布をフーリエ解析してノイズ成分を除去したところ、たとえば、図11に示すような、帯状領域BAの幅BWと同期する周期(4mm周期)の波が確認され、その変動は約0.18μmであった。またこのとき、除去したノイズ成分ΔWは、たとえば、図12に示すような分布になり、その変動量は約0.1μmであった。
【0083】
透明導電膜をエッチングして画素電極および共通電極を形成したときの線幅のばらつきの要因は、たとえば、露光工程、現像工程、およびエッチング工程におけるプロセス要因と、線幅を測定する際の測定精度(測定誤差)に起因する要因とに分けられる。
【0084】
また、主走査および副走査を繰り返して感光性材料膜を露光した場合、図11に示したような周期性を有する線幅Wの変動は、主として、露光時の露光光量の分布に起因すると考えられる。また、図12に示したようなノイズ成分ΔWは、主として、現像工程、およびエッチング工程におけるプロセス要因と、線幅を測定する際の測定精度(測定誤差)に起因すると考えられる。
【0085】
また、画素電極14および共通電極15を形成する工程で、たとえば、ポジ型の感光性材料膜を露光してエッチングレジストを形成した場合は、光量が不十分な部分は線幅Wが太くなり、光量が過剰な部分は線幅Wが細くなる。したがって、露光時の露光光量の分布による線幅Wの変動が、図11に示したような分布になった場合、一度の主走査における露光光量の分布は、幅方向(x方向)で見た中央部分の光量が不十分であり、端部の光量が過剰であったと考えられる。
【0086】
そのため、図9に示したような光量分布になるように校正した露光装置で感光性材料膜を露光した結果、画素電極14および共通電極15の線幅Wが図10に示したような分布になる場合、露光光量QoEの分布を、たとえば、図13に示すように、幅方向(x方向)で見た中央部分の光量を大きくし、端部の光量を小さくすればよいと考えられる。なお、図13において、点線で示した分布は、図9に示した露光光量QoEの分布である。また、図13に実線で示した補正後の露光光量QoEの分布は、補正前の露光光量QoEに対する相対値で示している。
【0087】
直描露光方式の露光装置における空間光変調素子として、GLVを用いた場合、露光光量QoEの分布は、各リボン状光回折素子で反射した回折光の強度によって決まる。リボン状光回折素子で反射した回折光の強度は、リボン状光回折素子を動かすために印加する電気信号(たとえば、電圧の大きさ)によって変わるので、たとえば、図11に示した線幅Wの変動分布に基づいて各リボン状光回折素子に印加する電気信号を調整すればよい。
【0088】
このようにすれば、一度の主走査における露光の中央部分は光量が増え、端部は光量が減る。したがって、一度の主走査における露光の中央部分に形成される画素電極14および共通電極15の線幅Wは細くなり、端部に形成される画素電極14および共通電極15の線幅Wは太くなる。このようにすると、線幅Wの分布は、帯状領域BAの幅BWと同期する周期(4mm周期)の変動量が小さくなり、周期性の輝度むらを低減できる。
【0089】
図14乃至図18は、本実施例の原理に基づいて露光光量を補正したときの画素電極および共通電極の線幅の分布の一例と露光光量の補正方法を説明するための模式図である。
図14は、本実施例の原理に基づいて露光光量を補正したときの画素電極および共通電極の線幅の分布の一例を示す模式グラフ図である。図15は、図10に示した線幅の分布のノイズ成分を除去した結果の一例を示す模式グラフ図である。図16は、光量の補正方法の一例を示す模式グラフ図である。図17は、露光光量を図16に示した分布に補正したときの画素電極および共通電極の線幅の分布の一例を示す模式グラフ図である。図18は、図17に示した線幅の分布のノイズ成分を除去した結果の一例を示す模式グラフ図である。
【0090】
本願発明者らが、上記のような方法により露光光量QoEの分布を補正した露光装置を用いて感光性材料膜を露光し、画素電極14および共通電極15を形成したところ、x方向に並んだ各画素における画素電極14および共通電極15の線幅Wの分布は、たとえば、図14に示すような分布になった。この図14に示した分布における線幅Wの変動量は、図10に示した分布における変動量よりも小さくなっている。そのため、得られた液晶表示装置では、図5に示したような線幅Wと相対輝度QoEとの関係から、線幅Wのばらつきによる輝度のむらが低減されている。
【0091】
しかしながら、図14に示した分布をフーリエ解析してノイズ成分を除去してみると、たとえば、図15に示すような、帯状領域BAの幅BWと同期する周期(4mm周期)の波が確認され、その変動量は約0.06μmであった。
【0092】
上記のような方法により露光光量QoEの分布を補正した後でも、画素電極14および共通電極15の線幅Wに、このような周期性を有する分布が生じる場合は、図15に示した分布に基づいて、露光光量QoEの分布を再度補正すればよい。ノイズを除去した線幅Wの分布が、図15に示した分布になる場合、一度の主走査における露光光量QoEの分布は、幅方向(x方向)で見た中央部分の光量が概ね適切であるものの、端部の光量が過剰であったと考えられる。
【0093】
そのため、画素電極14および共通電極15の線幅Wが図14に示したような分布になる場合、露光光量QoEの分布を、たとえば、図16に示すように、幅方向(x方向)で見た中央部分の光量はそのままにし、端部の光量をさらに小さくすればよいと考えられる。なお、図16において、点線で示した分布は、図13に実線で示した1回目の補正後の露光光量QoEの分布である。
【0094】
本願発明者らが、露光光量QoEの分布を、図16に示したような分布に補正した露光装置を用いて感光性材料膜を露光し、画素電極14および共通電極15を形成したところ、x方向に並んだ各画素における画素電極14および共通電極15の線幅Wの分布は、たとえば、図17に示すような分布になった。また、図17に示した分布をフーリエ解析してノイズ成分を除去してみると、たとえば、図18に示すような結果が得られ、帯状領域の幅BWと同期する周期性(4mm周期性)を確認できなかった。したがって、このとき得られる液晶表示パネルにおける、画素電極14および共通電極15の線幅Wの変動は、図12に示したようなノイズ成分ΔWによる変動のみになり、その変動量を0.1μm程度に抑えることができる。
【0095】
このように、本実施例の液晶表示装置の製造方法では、形成される画素電極14および共通電極15の線幅Wの分布に基づいて、直描露光方式の露光装置における露光光量QoEの分布を補正することで、画素電極14および共通電極15の線幅Wの変動量を抑制するとともに、帯状領域BAの幅BWと同期する周期性を無くす。そのため、本実施例の製造方法で得られる液晶表示装置は、局所的な輝度むら、および帯状領域BAの幅BWと同期する周期性の輝度むらを低減するができる。
【0096】
図19は、本実施例の液晶表示パネルの製造方法における露光方法の一具体例を示す模式斜視図である。
【0097】
液晶表示パネルを製造するときには、前述のように、大面積のマザーガラスを用いて製造するのが一般的である。このとき、使用するマザーガラスの寸法が、たとえば、730mm×920mmであるとすると、直描露光方式の露光装置で感光性材料膜を露光するときには、たとえば、感光性材料膜を4mm×920mmの帯状領域BAに分割する。この場合、感光性材料膜の全体を露光するには、たとえば、主走査を、最低でも183回行う必要がある。そのため、露光装置に設ける光学ユニットが1組であると、感光性材料膜全体の露光に要する時間が非常に長くなる。
【0098】
そのため、液晶表示パネル(TFT基板1)の製造方法において、直描露光方式の露光装置で感光性材料膜を露光するときには、たとえば、図19に示すように、基板31に形成された感光性材料膜(露光対象領域)を8つの領域CAに分割し、8組の光学ユニット(図19には投影光学系のみを示している)を用いて、当該8つの領域CAの露光を並行して行う。このようにすると、1組の光学ユニットのみで露光する場合に比べて、感光性材料膜全体の露光に要する時間が1/8になるので、TFT基板1の製造効率の低下を抑えることができる。
【0099】
このとき、8組の光学ユニットは、空間光変調素子(GLV)が独立しており、通常、光学ユニット毎に光量分布の特性(癖)が異なる。したがって、各光学ユニットにおける光量分布を、図9に示したような分布に校正しておくと、画素電極14および共通電極15の線幅Wの分布が、露光に使用した光学ユニット毎に異なる分布になる。そのため、大面積のマザーガラスを用いて小型の液晶表示パネルを多面取りで製造した場合は、たとえば、一組のマザーガラスから切り出して得られる複数の液晶表示パネル間における画質の均一性が低下する。また、大画面の液晶表示パネルを製造した場合は、たとえば、画面の中央部分と端部とで輝度に差が生じてむらになる。
【0100】
これに対し、本実施例の製造方法では、形成される画素電極14および共通電極15の線幅Wの分布に基づいて、直描露光方式の露光装置における露光光量の分布を補正することで、画素電極14および共通電極15の線幅Wの変動量を抑制するとともに、変動の周期性を無くす。したがって、上記のような手順で、光学ユニット毎に光量分布を補正すれば、光学ユニット間の光量分布のばらつきによる画素電極14および共通電極15の線幅Wのばらつきを抑制できる。そのため、大面積のマザーガラスを用いて小型の液晶表示パネルを多面取りで製造する場合は、たとえば、一組のマザーガラスから切り出して得られる複数の液晶表示パネル間における画質の均一性を高くすることができる。また、大画面の液晶表示パネルを製造する場合は、たとえば、画面の中央部分と端部との輝度の差を小さくでき、むらを低減できる。
【0101】
以上説明したように、本実施例の液晶表示パネルの製造方法によれば、局所的な輝度むらや周期性の輝度むらを低減するができる。
【0102】
なお、本実施例では、主として、帯状領域BAの幅BWを4mmにした場合を挙げて説明しているが、本実施例の製造方法では、これに限らず、幅BWを、たとえば、1mmから10mm程度の範囲で変えることも可能である。
【0103】
また、本実施例では、たとえば、図2乃至図4に示したように、第2の絶縁層13の上(同一面)に画素電極14および共通電極15が配置されている場合を例に挙げたが、本実施例の製造方法は、これに限らず、画素電極14と共通電極15とが絶縁層を介して積層されている場合にも適用可能である。画素電極14と共通電極15とが絶縁層を介して積層されている場合は、通常、液晶層8に近いほうの電極の平面形状を櫛歯状にする。そのため、液晶層8に近いほうの電極を形成する際に行う感光性材料膜の露光を、上記のような手順で露光光量が補正された露光装置で行うことにより、櫛歯部分の幅のばらつきによる輝度むらを低減することができる。
【0104】
以上、本発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることはもちろんである。
【0105】
たとえば、前記実施例では、画素電極14および共通電極15を形成する工程で行う感光性材料膜の露光を挙げているが、本発明は、これに限らず、別の工程で行う感光性材料膜の露光にも適用可能であることはもちろんである。また、本発明は、TFT基板1を製造する際に行う感光性材料膜の露光に限らず、たとえば、対向基板2を製造する際に行う感光性材料膜の露光にも適用可能であることはもちろんである。
【0106】
また、本発明は、前記実施例で挙げたIPS方式の液晶表示パネルの製造方法に限らず、たとえば、VA方式やTN方式などの液晶表示パネルの製造方法にも適用できることはもちろんである。
【0107】
またさらに、本発明は、液晶表示パネルの製造方法に限らず、たとえば、有機ELを用いた自発光型の表示パネルの製造方法などにも適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0108】
1 TFT基板
2 対向基板
3 走査信号線
4 映像信号線
5 コモン配線
6 信号入力配線
7 ICチップ
8 液晶層
9 第1の絶縁基板
10 第1の絶縁層
11 半導体層
12 ソース電極
13 第2の絶縁層
14 画素電極
15 共通電極
16 第1の配向膜
17 第2の絶縁基板
18 ブラックマトリクス
19R 赤色フィルタ
19G 緑色フィルタ
19B 青色フィルタ
20 平坦化膜
21 第2の配向膜
22 第1の偏光板
23 第2の偏光板
24 電気力線
25 光源
26 照明光学系
27 空間光変調素子(GLV)
28 回折光フィルタ
29 投影光学系
30 ステージ
31 基板
BA 帯状領域
EA 一度に露光可能な領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の上に形成された感光性材料膜を露光、現像して、あらかじめ定められた基本パターンを前記絶縁基板上の複数箇所に形成する工程を有し、前記感光性材料膜の露光は、露光対象領域を複数の小領域に分割し、小領域毎に露光することで前記露光対象領域全体を露光し、かつ、空間光変調素子を数値制御することで各小領域に照射する光のパターンを生成する直描露光装置を用いて行う表示装置の製造方法であって、
前記感光性材料膜の露光は、前記複数箇所に形成される前記基本パターンの寸法の変動量が0.2μm以下になるように、前記空間光変調素子で生成される前記光のパターンの光量分布を補正した前記直描露光装置を用いて行うことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記感光性材料膜の露光は、前記複数箇所に形成される前記基本パターンの寸法の変動量が0.1μm以下になるように、前記空間光変調素子で生成される前記光のパターンの光量分布を補正した前記直描露光装置を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記光量分布の補正は、前記複数箇所に形成された前記基本パターンの寸法の変動分布をフーリエ解析し、あらかじめ定められた寸法と、前記フーリエ解析で得られた寸法との差に基づいて行うことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記感光性材料膜はポジ型であり、前記光量分布の補正は、前記フーリエ解析で得られた寸法があらかじめ定められた寸法よりも大きい場合は光量を高くし、前記フーリエ解析で得られた寸法があらかじめ定められた寸法よりも小さい場合は光量を低くすることを特徴とする請求項3に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記基本パターンは、透明導電膜の上に形成し、前記基本パターンを形成した後、当該基本パターンをマスクとして前記透明導電膜をエッチングし、第1の電極と第2の電極とを形成することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の電極および前記第2の電極は、それぞれ、平面形状が櫛歯状であり、かつ、前記第1の電極の櫛歯部分と前記第2の櫛歯部分とが交互に並ぶように形成されることを特徴とする請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記光量分布の補正は、前記複数箇所に形成された前記第1の電極および第2の電極の寸法の変動分布をフーリエ解析し、あらかじめ定められた寸法と、前記フーリエ解析で得られた寸法との差に基づいて行うことを特徴とする請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記基本パターンは、透明導電膜の上に形成し、前記基本パターンを形成した後、当該基本パターンをマスクとして前記透明導電膜をエッチングし、平面形状が櫛歯状の電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記光量分布の補正は、前記複数箇所に形成された前記電極の寸法の変動分布をフーリエ解析し、あらかじめ定められた寸法と、前記フーリエ解析で得られた寸法との差に基づいて行うことを特徴とする請求項8に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記空間光変調素子は、複数のリボン状光回折素子からなり、前記複数のリボン状光回折素子は、それぞれ独立して可動し、かつ、動かす量に応じて回折光の強度が変化することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
TFT素子、画素電極、共通電極、および液晶層を有する画素がマトリクス状に配置された表示領域を有する表示装置であって、
前記表示領域にマトリクス状に配置された複数の前記画素電極は、平面でみたときのある方向の寸法が最大になる画素電極の寸法と最小になる画素電極の寸法との差が0.2μm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
複数の前記画素電極は、前記平面でみたときのある方向の寸法が最大になる画素電極の寸法と最小になる画素電極の寸法との差が0.1μm以下であることを特徴とする請求項11に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記画素電極は、前記平面で見たときの形状が複数の帯状部分を有する櫛歯状であり、当該帯状部分の幅の最大値と最小値との差、および隣接する2つの帯状部分の間隙の最大値と最小値との差が、0.2μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−8201(P2011−8201A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154278(P2009−154278)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】