説明

表示装置

【課題】直感的な表示を実現する表示装置の提供。
【解決手段】多重通信インターフェース25は、車両の車速値として取得するとともに、運転支援装置37からその作動情報を、障害物検知装置38から検知結果をそれぞれ取得する。運転支援装置37は高車速域HVAで車両の進行方向の第一領域に対して作動する装置であり、障害物検知装置38は低車速域LVAで車両の周囲且つ近接する第二領域に対して作動する装置である。プロセッサ21およびグラフィックコントローラ23は、車両を進行方向後側から俯瞰視したであって、車速値の増加に従って俯瞰視する俯角が減少する車両画像13、運転支援装置37の作動情報を報知するインジケータ16a,16b,17、障害物検知装置38の検知結果を報知する障害物検知インジケータ18を有する画像10を描画する。車両用表示装置100は、この画像10を液晶ディスプレイ29によって表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された装置の状態情報を表示によって報知する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された装置の状態情報を取得して、当該状態情報を報知するための報知画像部を有する画像を表示手段によって表示する車両用表示装置が知られている。こうした車両用表示装置の一種として、特許文献1および特許文献2には、車両の外観を模した車両画像部を表示手段によって表示される画像内へさらに加える構成が開示されている。
【0003】
例えば特許文献1に開示の車両用表示装置は、車両を一定車速で走行させる所謂クルーズコントロール装置の作動情報を取得して、当該作動情報を報知する報知画像部の表示を行う。具体的にこの車両用表示装置は、車両を側面視した車両画像部と、当該車両画像部の側方に並べられた複数の矩形画像部によってなる報知画像部とを表示している。
【0004】
また、特許文献2に開示の車両用表示装置は、装置としてのドアの開閉情報を取得して、ドアの開状態を報知する報知画像部の表示を行う。具体的にこの車両用表示装置は、車両を上方から平面視した車両画像部と、当該車両画像部の周囲に表示されるドア形状を模した複数の画像部によってなる報知画像部とを表示している。
【0005】
以上のように、報知画像部を車両画像部と関連させることによれば、当該報知画像部による報知の直感性の向上を図ることができるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−63401号公報
【特許文献2】特開2002−316551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、近年では車両に搭載される装置の増加にともなって、車両用表示装置に表示しなければならない報知情報も増加している。すると、例えば上述した特許文献2に開示の車両用表示装置ように、クルーズコントロール装置の作動情報を報知する報知画像部と、ドアの開状態を報知する報知画像部とを個々に表示することとなる。このように限られた表示領域内に、複数の装置に対応した報知画像部を個々に表示させることに起因して、それぞれの報知画像部が小さく、はっきりしないものとなっていたのである。
【0008】
そこで本発明者らは、車載される装置の増加に対応して、複数の報知画像部を集約して表示することを試みた。しかし、クルーズコントロール装置の作動情報を報知する報知画像部と、ドアの開状態を報知する報知画像部とを、共通の車両画像部に関連させて表示させたとしても、これらの各報知画像部をはっきりと表示できない場合があることが判明したのである。その理由を以下に説明する。
【0009】
クルーズコントロール装置のように車両の進行方向の領域に対して作動する装置の状態情報を報知する場合、表示上において車両画像部の上方又は側方に当該領域に相当する範囲を形成する必要がある。対して、ドアのように車両に近接した周囲の領域に対して影響する装置の状態情報を報知する場合、表示上において車両画像部の周囲に当該領域に相当する範囲を形成する必要がある。これらのように、車両に対して作動する領域が各装置によって異なるため、それぞれの領域に相当する範囲を車両画像部に対して形成すると、個々の報知画像部は小さく、はっきりしないままとなってしまうのである。
【0010】
そこで、各装置に対応する車両画像部および報知画像部を、共通の表示領域に切り替えて表示することで集約を試みた。しかし、各装置によって異なる作動領域に起因して、車両画像部の大きさや、当該車両画像部に対する報知画像部の表示位置が表示の切り替えの度に断続的になってしまう。このような断続的な表示は、運転者の感覚に同調し得ないのである。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、直感的な表示を実現する表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、車両の走行速度を車速値として取得する車速値取得手段と、第一車速域で車両の進行方向の第一領域に対して作動する第一装置の第一状態情報を取得する第一情報取得手段と、第一車速域よりも低速側の第二車速域で、車両の周囲且つ第一領域よりも車両に近接する第二領域に対して作動する第二装置の第二状態情報を取得する第二情報取得手段と、車両を進行方向後側から俯瞰視した車両画像部であって、車速値の増加に従って俯瞰視する俯角が減少する車両画像部、第一状態情報の取得によって車両画像部の上方に形成されて第一状態情報を報知する第一報知画像部、および第二状態情報の取得によって車両画像部の周囲に形成されて第二状態情報を報知する第二報知画像部を有する画像を描画する描画手段と、画像を表示する表示手段と、を備える表示装置とする。
【0013】
この発明によれば、車両の走行速度である車速値の小さい低速側の第二車速域では、表示手段によって表示される画像上に、俯瞰視する俯角の大きい車両画像部が形成される。この俯角の大きい車両画像部によれば、当該車両画像部の周囲の主に第二領域に相当する範囲が拡大されることとなる。故に、車両の周囲且つ近接した第二領域に対して作動する第二装置の第二状態情報を報知する第二報知画像部が、車両画像部の周囲の拡大された範囲にはっきりと表示されることとなる。また、第二車速域よりも車速値の大きい第一車速域では、車速値の増加に従って俯瞰視する俯角の減少した車両画像部が画像上に形成される。この俯角の小さい車両画像部によれば、当該車両画像部の上方の主に第一領域に相当する範囲が拡大されることとなる。故に、車両の進行方向の第一領域に対して作動する第一装置の第一状態情報を報知する第一報知画像部は、車両画像部の上方の拡大された範囲にはっきりと表示されることとなる。
【0014】
加えて、表示手段によって車両画像部とともに表示される主要な表示範囲は、車速値の増加に従い、第二領域に相当する表示範囲から第一領域に相当する表示範囲へと連続的に遷移することとなる。また運転者は、車速の増加に従って優先的に視認する範囲を車両の周囲且つ当該車両に近接した第二領域から、車両の進行方向の第一領域へと遷移させる。故に、表示範囲の遷移による表示上の変化を、運転者による視認範囲の変化に同調させ得る。以上のような、表示範囲にはっきりと表示される第一および第二報知画像部と、運転者の視認範囲の変化と同調する表示上の変化とによれば、表示装置は直感的な表示を実現することができるのである。
【0015】
請求項2に記載の発明では、描画手段は、車速値の増加に従って車両画像部を俯瞰視する位置を、車両画像部から遠ざけて画像を描画することを特徴とする。この発明によれば、表示装置は、広域な第一領域であっても、当該第一領域に相当する範囲を、表示手段によって表示される画像上の車両画像部の上方に確実に形成することができる。故に表示装置は、第一領域に対して作動する第一装置の第一状態情報を報知する第一報知画像部を、画像上での車両画像部と関連させて確実に表示することができるのである。
【0016】
請求項3に記載の発明では、描画手段は、第二車速域内の車速値において、車両画像部を直上から俯瞰視する画像を描画することを特徴とする。この発明によれば、第二車速域内では画像上で車両画像部を真上から俯瞰視することとなり、第二領域に相当する範囲が三次元車両画像の周囲に均等に拡大されて形成されることとなる。これにより表示装置は、第二領域に対して作動する第二装置の第二状態情報を報知する第二報知画像部を、車両画像部の周囲にさらにわかりやすく表示することができるのである。
【0017】
請求項4に記載の発明では、描画手段は、第一車速域内の全ての車速値において、車両画像部を俯瞰視する俯角を一定とする画像を描画することを特徴とする。また請求項5に記載の発明では、第二車速域内の全ての車速値において、車両画像部を俯瞰視する俯角を一定とする画像を描画することを特徴とする。これら発明によれば、第一装置の作動している第一車速域内、又は第二装置の作動している第二車速域内において、画像上で車両画像部を俯瞰視する俯角が一定に保たれることとなる。故に、画像上で車両画像部および当該車両画像部の上方又は周囲の第一領域又は第二領域に相当する範囲は固定された状態となる。形成される範囲は固定された状態となる。したがって、表示装置は、車両画像部に対してはっきりと表示された第一報知画像部又は第二報知画像部の表示状態を、車速の変化にかかわらず維持しつづけることができるのである。
【0018】
請求項6に記載の発明では、第一情報取得手段は、車両の車速を制御する車速制御装置の作動情報を第一状態情報として取得し、描画手段は、車速制御装置からの作動情報の取得によって車両画像部の上方に作動情報を報知する第一報知画像部を形成する画像を描画することを特徴とする。この発明では、運転者が車速制御装置を作動させた場合、当該車速制御装置の作動状態を報知する第一報知画像部が車両画像部の上方に表示される。また請求項7に記載の発明では、第一情報取得手段は、車両の進行方向を制御する車線維持支援装置の作動情報を第一状態情報として取得し、描画手段は、車線維持支援装置からの作動情報の取得によって車両画像部の上方に作動情報を報知する第一報知画像部を形成する画像を描画することを特徴とする。この発明では、運転者が車線維持支援装置を作動させた場合、当該車線維持支援装置の作動状態を報知する第一報知画像部が車両画像部の上方に表示される。上述したように、車速値の増加に従い俯角を減少させることによって、表示装置は、画像上で第一領域に相当する車両画像部上方の表示範囲を拡大する作用を獲得している。このような作用の発揮によれば、表示装置は、第一領域に対して作動する第一装置に関する第一報知画像部をはっきりと表示することができる。したがって、視認することの難しい車速制御装置および車線維持支援装置の作動状態を運転者に報知する第一報知画像部を表示する表示装置として、請求項6および7に記載の発明は特に好適なのである。
【0019】
請求項8に記載の発明では、第二情報取得手段は、車両周囲の障害物を検知する障害物検知装置の検知結果を第二状態情報として取得し、描画手段は、障害物検知装置からの検知結果の取得によって車両画像部の周囲に検知結果を報知する第二報知画像部を形成する画像を描画することを特徴とする。この発明では、運転者によって作動状態とされた障害物検知装置による車両周囲の障害物の検知があった場合、当該障害物検出手段による検知結果を報知する第二報知画像部が車両画像部の周囲に表示される。また請求項9に記載の発明では、第二情報取得手段は、車両のドアの開状態を検知する開閉検知装置の検知結果を第二状態情報として取得し、描画手段は、開閉検知装置からの検知結果の取得によって車両画像部の周囲に検知結果を報知する第二報知画像部を形成する前記画像を描画することを特徴とする。この発明では、閉状態でないドアがる場合、開閉検知手段によるドアの開状態の検知結果を報知する第二報知画像部が車両画像部の周囲に表示される。上述したように、車速値の低下に従い俯角を拡大することによって、表示装置は、画像上で第二領域に相当する車両画像部周囲の表示範囲を拡大する作用を獲得している。このような作用の発揮によれば、表示装置は、第二領域に対して作動する第二装置に関する第二報知画像部をはっきりと表示することができる。故に第二報知画像部は、運転者に直感的に知覚され得るのである。したがって、緊急性の高い障害物検知装置および開閉検知装置の検知結果を報知する第二報知画像部を表示する表示装置として、請求項8および9に記載の発明は特に好適なのである。
【0020】
請求項10に記載の発明では、描画手段は、車両の外観形状を再現した車両画像部を有する画像を描画することを特徴とする。この発明によれば、表示手段によって表示される車両画像部が、車両の外観形状を再現したものとなる。故に、車両画像部と実際の車両との相関を運転者に強く示し得る。また請求項11に記載の発明では、描画手段は、車両の外装色と同じ色相の車両画像部を有する画像を描画することを特徴とする。この発明のように、表示手段によって表示された実際の車両の外装色と同じ色相の車両画像部は、車両との相関を運転者に強く示し得る。これらのような車両と車両画像部との相関の強調作用によれば、表示範囲の変化を運転者の視認範囲の変化と同調させることによる表示の直感性の向上効果を、さらに強固なものとし得るのである。
【0021】
請求項12に記載の発明では、描画手段は、車両毎の車両画像部の形状情報を記憶する記憶部を有すること特徴とする。この発明によれば、車両毎に異なる外観の形状に対応して、当該車両を模した車両画像部の形状も異なるなることとなる。そこで、描画手段に記憶部を設けて、当該記憶部に車種毎の車両画像部の形状情報を記憶させることによれば、記憶部の容量を抑制し得る。以上の構成による記憶部は、直感的な表示を実現する表示装置の低コスト化に貢献し得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態による車両用表示装置の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態による車両用表示装置の電気回路構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による車両用表示装置において、車速値と俯角との相関を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態による車両用表示装置の正面図であって、(a)障害物検知インジケータを有する画像、(b)ドアウォーニングインジケータを有する画像、(c)車速値が低車速域と高車速域との間である場合の画像、(d)車速制御インジケータを有する画像、(e)車速制御インジケータ、先行車両インジケータ、および車線制御インジケータを有する画像、を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態による制御フローを示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態によるグラフィックコントローラによって、仮想の三次元空間にレイアウトされた各モデルの位置関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態による車両用表示装置100の正面図である。車両用表示装置100は、車両の車室内に設けられたインスツルメントパネル内に収容され、図1に示す正面側を運転席側に向けて配置されている。
【0025】
(基本構成)
車両用表示装置100は、液晶ディスプレイ29によって、速度計、回転速度計、および燃料計等の画像(図示しない)と、車両画像13および種々のインジケータ15とを有する画像10を表示する。車両画像13は、車両用表示装置100の搭載されている車両の外観を模した画像であって、当該車両を特定の視点位置から描画した画像である。インジケータ15は、法規によって表示が義務付けられた画像であって、車両に搭載された種々の装置に関する状態情報を運転者に報知するための画像である。それぞれのインジケータ15には、当該インジケータ15に対応する車載された各装置の形状を模した意匠が与えられている。
【0026】
次に、車両用表示装置100の電気回路構成を図2に基づいて説明する。
【0027】
まず車両用表示装置100と外部との接続構成について説明する。車両用表示装置100は、バッテリ32、車載用のLocal Area Network(車内LAN)31、ならびに接地のためのアース配線34と接続されている。バッテリ32は、車両用表示装置100と接続されて、当該車両用表示装置100に電力を供給する。バッテリ32と車両用表示装置100との間には、常に導通している給電系統と、イグニッションリレー33bを介した給電系統とが設けられている。車内LAN31は、車両用表示装置100と接続されて、当該車両用表示装置100に情報を供給する。この車内LAN31には、横滑り防止装置35、運転支援装置37、エンジン制御装置36、障害物検知装置38、車両制御装置39、および電力供給制御装置33等が接続されている。
【0028】
横滑り防止装置35は、マイクロコンピュータからなり、車両の横滑りを検知すると当該車両の進行方向を保つよう制御する装置である。この横滑り防止装置35は、具体的には各車輪に適切な制動力を発生させて、車両の進行方向を修正および維持する。横滑り防止装置35は、制御のためのセンサとして、各車輪の回転角度を検出する回転角度センサ(図示しない)を有している。横滑り防止装置35は、これらの回転角度センサの検出結果を用いて車輪の回転各速度を算出した後、さらに当該車輪の動半径等を乗算し車両の走行速度を算出する。そして横滑り防止装置35は、算出した車両の走行速度に関する車速値を車内LAN31上に出力する。
【0029】
運転支援装置37は、マイクロコンピュータからなり、車両の走行に関する運転者の運転操作を支援する装置である。この運転支援装置37は、路上に描かれた白線又は黄線に車両の進行方向を追従させる、もしくは追従を支援する車線維持機能と、車両の走行速度を制御する車速制御機能とを有している。
【0030】
この車線維持機能は、例えば例えば時速約50〜120キロメートル(km/h)の走行速度領域において作動する機能である。運転支援装置37は、車線維持機能の作動とともに当該機能の作動を通知する情報を車内LAN31上に出力する。運転支援装置37は、この車線維持機能を実現するため例えばCMOSイメージセンサ等の撮像装置37bを有している。運転支援装置37は、車室内に進行方向を向けて設置された撮像装置37bによって車両の進行方向を撮像し、この撮像データを画像解析することによって前方の白線又は黄線を検出する。運転支援装置37は、車両の進行方向がこれらの白線又は黄線に追従するよう、目標となる操舵力を算出して車内LAN31上へ出力する。この目標操舵力の情報は、車内LAN31上に接続されているパワーステアリング制御装置(図示しない)によって取得され、パワーステアリング制御装置による操舵力制御に用いられる。
【0031】
また車速制御機能は、例えば約60〜100km/hの走行速度領域において作動する機能である。運転支援装置37は、この車速制御機能を実現するため、車両の進行方向約100メートルを走査可能なレーダーセンサ37aを有している。運転支援装置37は、車両のフロントバンパー内に収容されたレーダーセンサ37aによって車両の進行方向に赤外線を照射し、その反射時間を計測することで前方の先行車両等の検知および距離の算出を行う。この運転支援装置37による車速制御機能には、定速制御モードと、車間制御モードが設けられている。運転支援装置37が先行車両を検出していない場合に作動する定速制御モードでは、運転支援装置37は運転者によって設定された速度に車両の走行速度を制御する。また、運転支援装置37が先行車両を検出した状態で作動する車間制御モードでは、レーダーセンサ37aによって算出された先行車両との車間を維持するよう運転支援装置37が車両の走行速度を制御する。尚、運転支援装置37による車速制御機能の制御モードに関する情報は、当該運転支援装置37によって車内LAN31上へ出力される。このような車両の走行速度の制御を実現するため、運転支援装置37は、横滑り防止装置35によって出力された車速値を車内LAN31上から取得し、目標となる加減速度を算出した後、この目標加減速度を車内LAN31上に出力する。
【0032】
エンジン制御装置36は、マイクロコンピュータからなり、車両に搭載されたエンジンの作動状態を制御する装置である。エンジン制御装置36は、運転支援装置37の車速制御機能によって車内LAN31上に出力された目標加減速度を取得し、エンジンに供給される吸気量および燃料量を変更することで駆動力を制御する。このような運転支援装置37の制御下でエンジンを制御しているエンジン制御装置36は、当該運転支援装置37による車速制御機能の作動を通知する情報を車内LAN31上に出力する。
【0033】
障害物検知装置38は、マイクロコンピュータからなり、車両周囲のフロントバンパーおよびリヤバンパー付近に存在する障害物を検知する装置であって、例えば約15km/h未満の走行速度領域において作動する。この障害物検知装置38は、障害物を検知するためのセンサとして、超音波を発信する超音波センサ38aを複数有している。この超音波センサ38aは、具体的にはフロントバンパーおよびリヤバンパー内に収容されており、50〜100センチメートル程度の距離に存在する障害物の検知が可能である。障害物検知装置38は、超音波センサ38aによる検知結果を車内LAN31上に出力する。
【0034】
車両制御装置39は、マイクロコンピュータからなり、車両に搭載された種々の装置を統合的に制御する装置である。車両制御装置39は、車両のドアの開状態を検知する機能を有し、車両の各ドアの開口部周縁に設けられた複数のドアスイッチ39aと接続されている。このドアスイッチ39aは、搭乗者によって閉状態とされたドアに押圧されて通電状態となる。車両制御装置39は、各ドアスイッチ39aの通電状態を検出することにより、全てのドアの開閉状態を検知する。そして、開状態のドアを検知した車両制御装置39は、検知結果としてドア開状態を通知する情報と、この開状態のドアの位置を通知する情報とを車内LAN31上に出力する。
【0035】
電力供給制御装置33は、マイクロコンピュータからなり、車両に搭載されている各装置に供給される電力を統合的に制御する装置である。電力供給制御装置33は、バッテリ32(接続の図示は省略する)、イグニッションスイッチ33a、イグニッションリレー33b、およびエンジン制御装置36等と接続されている。バッテリ32から電力の供給を受ける電力供給制御装置33は、運転者によるイグニッションスイッチ33aの押圧操作を検知して、イグニッションリレー33bに電圧を印加し、当該リレー33bを通電状態にする。また、電力供給制御装置33は、検知した運転者によるイグニッションスイッチ33aの押圧操作に基づいて、車両のイグニッションのON/OFF状態に関する情報を車内LAN31上に出力する。
【0036】
つづいて、車両用表示装置100内の電気構成について説明する。車両用表示装置100は、プロセッサ21を中心に、当該プロセッサ21に接続されたRandom Access Memory(RAM)21a、Read Only Memory(ROM)21b、グラフィックコントローラ23、多重通信インターフェース25、内部電源27、および電源インターフェース28を備えている。加えてグラフィックコントローラ23には、上述した液晶ディスプレイ29と、ビデオRAM23aとが接続されている。
【0037】
プロセッサ21は、プログラムの演算処理を実行するための演算装置であって、バス22を介して、RAM21a、ROM21b、およびグラフィックコントローラ23と接続されている。RAM21aは、プロセッサ21の演算処理に必要な情報を一時的に記憶する記憶装置である。ROM21bは、不揮発性の半導体メモリであって、プロセッサ21およびグラフィックコントローラ23によって演算処理されるプログラム等を記憶している。
【0038】
多重通信インターフェース25は、車内LAN31と接続されて、当該車内LAN31上に出力された種々の情報を受信する。そして多重通信インターフェース25は、受信した情報から、車両用表示装置100によって用いられる情報を選別して取得する。この多重通信インターフェース25によって取得される情報には、例えば上述した各装置33,35〜39によって出力された、車速値情報、車線維持機能および車速制御機能の作動情報および制御モードに関する情報、ドア開状態の情報、障害物の検知情報、ならびに車両のイグニッションのON/OFF情報が含まれている。この多重通信インターフェース25によって取得された情報は、プロセッサ21に供給される。
【0039】
グラフィックコントローラ23は、画像処理に関するプログラムの演算処理を実行するための演算装置であって、液晶ディスプレイ29に表示される画像10を描画する。この画像10の描画とは、具体的には液晶ディスプレイ29のサブ画素毎の階調データを生成する演算処理を示す。グラフィックコントローラ23は、プロセッサ21から情報を取得するとともに、ROM21bに記憶されている情報を参照する。そしてグラフィックコントローラ23は、ビデオRAM23aに演算処理に必要な情報を一時的に記憶させつつ、画像10の階調データを生成する演算処理を実行する。以上によって描画された画像10の階調データは、グラフィックコントローラ23から液晶ディスプレイ29に出力される。
【0040】
液晶ディスプレイ29は、画像10を表示する表示器であって、マトリクス状に配された複数の画素を有するドットマトリクス型のTFT透過液晶パネルである。液晶ディスプレイ29の各画素は、赤(R),緑(G),青(B)のカラーフィルタがそれぞれ設けられた三色のサブ画素から構成されており、画像10をカラー表示することができる。液晶ディスプレイ29は、グラフィックコントローラ23から取得した階調データに基づいて各画素を駆動させることで、画像10の表示を実現する。加えて液晶ディスプレイ29は、表示方向裏面側にバックライトを具備しており、裏面側から透過照明することによって画像10を発光表示することができる。
【0041】
電源インターフェース28は、イグニッションスイッチ33aが通電状態である場合、バッテリ32から電力の供給を受ける。電源インターフェース28は、プロセッサ21等の車両用表示装置100を構成する各部品に電力を供給する。電源インターフェース28は、具体的には、供給された電力に変圧や平滑化等の処置を行い、各部品の作動に適した電力を生成する。内部電源27には、バッテリ32から常時電力が供給されている。内部電源27は、車両のイグニッション状態がOFF状態である際にも行われる警告表示について、その表示に必要な電力を供給するための構成である。
【0042】
(特徴部分)
以下、本発明の一実施形態による車両用表示装置100の特徴部分について説明する。
【0043】
まず車両用表示装置100によって表示される画像10について詳細に説明する。
【0044】
図1に示すように、車両用表示装置100に表示される画像10には、車両を進行方向後側から俯瞰視した車両画像13が描画されている。この画像10に描画される車両画像13は、車両の外観形状を再現した形状を呈し、且つ車両の外装色と同一の色相で描画されている。画像10上において、車両画像13を俯瞰視する俯角は、車速値の増加に従って減少する。以下、図3に基づいて車速値と俯角との相関について説明する。
【0045】
車両の走行速度が停止(0km/h)から障害物検知装置38の作動上限車速S1である約15km/h未満の間の低車速域LVAでは、画像10上で車両画像13を俯瞰視する俯角は一定とされている。この低車速域LVAでは、俯角は90度に設定されており、画像10上において車両画像13は、車両を直上から俯瞰視した画像となる(図4(a)および(b)参照)。
【0046】
この低速側の低車速域LVAからさらに車速が増加すると、車速値の増加に従って俯角は徐々に低減される。加えて、車速値の増加に従って車両画像13を俯瞰視する位置は、当該車両画像13から遠ざけられる。この俯角の減少と視点位置PSの離間とによれば、画像10上で車両画像13を俯瞰視する視点位置PSが車両の直上から車両の後方へと遷移する(図4(c)参照)。
【0047】
そして、車両の走行速度が運転支援装置37の車速制御機能の作動下限車速S2である約60km/h以上の高車速域HVAでは、画像10上で車両画像13を俯瞰視する俯角は再び一定とされている。この高車速域HVAでは、俯角は30度に設定されており、画像10上において車両画像13は、車両を斜め後方から俯瞰視した画像となる(図4(d)および(e)参照)。
【0048】
以上のような車両画像13と関連させて表示される各インジケータ16a〜19について、図4(a)〜(e)に基づいて詳細に説明する。尚、図4(a)〜(e)では、インジケータ15の図示を省略している。
【0049】
図4(a)および(b)に示すように、車両用表示装置100は、低車速域LVAで車両の周囲且つ当該車両に近接する第二領域に対して作動する装置としての障害物検知装置38(図2参照)から検知結果を取得した場合、車両画像13の周囲に検知結果を報知する障害物検知インジケータ18を表示する。加えて、車両用表示装置100は、第二領域に対して作動する装置としてのドアについて、その開状態に関する検知結果を車両制御装置39から取得した場合、車両画像13の周囲にドアの開状態を報知するドアウォーニングインジケータ19を表示する。
【0050】
上述したように、低車速域LVAでは、車両画像13を俯瞰視する俯角が大きくなる。故に、当該車両画像13の周囲の主に第二領域に相当する範囲が画像10上で拡大されることとなる。したがって、この第二領域に対して作動する障害物検知装置38およびドアに関する検知結果を報知する、障害物検知インジケータ18およびドアウォーニングインジケータ19は、車両画像13の周囲の拡大された範囲にはっきりと表示されることとなるのである。
【0051】
図4(d)および(e)に示すように、車両用表示装置100は、高車速域HVAで車両の進行方向の第一領域に対して作動する装置としての運転支援装置37(図2参照)による車速制御機能の作動情報を取得した場合、車両画像13の上方に作動情報を報知する車速制御インジケータ16aおよび先行車両インジケータ16bを表示する。さらに車両用表示装置100は、第一領域に対して作動する装置としての運転支援装置37による車線維持機能の作動情報を取得した場合、車両画像13の上方に作動情報を報知する車線制御インジケータ17を表示する。
【0052】
上述したように、高車速域HVAでは、車両画像13を俯瞰視する俯角が小さくなる。故に、当該車両画像13の上方の主に第一領域に相当する範囲が画像10上で拡大されることとなる。したがって、この第一領域に対して作動する運転支援装置37の作動情報を報知する車速制御インジケータ16a、先行車両インジケータ16b、および車線制御インジケータ17は、車両画像13の上方の拡大された範囲にはっきりと表示されることとなるのである。
【0053】
以上説明した画像10は、仮想の三次元空間にレイアウトされた三次元車両モデル13mおよび複数のインジケータモデルを特定の方向からレンダリングすることによって描画される(図6参照)。この画像10を描画するための電気的構成を図2に基づいて以下詳細に説明する。
【0054】
車両用表示装置100のROM21bには、仮想の三次元空間にレイアウトされる背景データ、三次元車両モデル13m、車速制御インジケータモデル16m、先行車両モデル16n、車線モデル17m、障害物検知インジケータモデル18m、および車両のドアが開状態である複数のドア開状態車両モデルが記憶されている(図6参照)。加えてROM21bは、これらのデータのうち車両毎に異なる情報、具体的には三次元車両モデル13mおよびドア開状態車両モデルを記憶するための諸元記憶領域部21cを有している。この諸元記憶領域部21cは、書き換え容易な領域として予め確保された記憶領域であって、例えば工場出荷時等に、車両用表示装置100の搭載される車両に対応した三次元車両モデル13mおよびドア開状態車両モデル等の形状情報が書き込まれる。
【0055】
プロセッサ21は、ROM21bに記憶されたプログラムを実行することによって各装置33,35〜39から車内LAN31上に出力された情報を多重通信インターフェース25を介して取得し、グラフィックコントローラ23へ伝達する。加えてプロセッサ21は、車速値に基づいてレンダリングを行う視点位置PSおよび方向を演算し、グラフィックコントローラ23へ伝達する。グラフィックコントローラ23は、プロセッサ21から伝達された情報に基づいて、ROM21bから参照した背景データ、三次元車両モデル13m又はドア開状態車両モデル、および上述した複数のインジケータモデルを仮想の三次元空間に適宜レイアウトする。そしてグラフィックコントローラ23は、プロセッサ21から伝達された視点位置PSからレンダリングを実行し、画像10の階調データを生成するのである。
【0056】
以上のグラフィックコントローラ23によるレンダリングによれば、三次元車両モデル13mは車両画像13として、車速制御インジケータモデル16mは車速制御インジケータ16aとして、先行車両モデル16nは先行車両インジケータ16bとして、車線モデル17mは車線制御インジケータ17として、障害物検知インジケータモデル18mは障害物検知インジケータ18として、それぞれ画像10上に描画されることとなる。加えて、三次元車両モデル13mをドア開状態車両モデルに置換してレンダリング車両画像13としてするによれば、画像10はドアウォーニングインジケータ19を有することとなる(図4(a)〜(e)および図6参照)。
【0057】
以上説明した画像10を車両用表示装置100が描画して表示する制御フローを、図5、図2および図6に基づいて以下に説明する。
【0058】
まず、ステップS100によって制御が開始されると、ステップS101でプロセッサ21の起動の判定がなされる。ステップS101において、内部電源27によって供給される電力によるプロセッサ21の起動が確認されると、制御フローはステップS102に移行する。ステップS101でプロセッサ21が起動していない場合、制御フローはステップS122へ移行して終了となる。
【0059】
ステップS102以降は、プロセッサ21およびグラフィックコントローラ23によってROM21bに記憶されたプログラムが実行される。ステップS102では、グラフィックコントローラ23が、ROM21b内に記憶されている背景データを参照し、仮想の三次元空間内に背景データをレイアウトする。ステップS103では、プロセッサ21は多重通信インターフェース25を介して、車両制御装置39によって車内LAN31へ出力されたドアの開状態に関する検知結果を取得し、開状態のドアの有無を判定する。ステップS103において、開状態のドアが無いという判定がなされると、制御フローはステップS104に移行する。ステップS104では、全てのドアが閉状態である三次元車両モデル13mがグラフィックコントローラ23によって仮想の三次元空間上にレイアウトされる。そして制御フローは、ステップS107へ移行する。
【0060】
ステップS103において、開状態のドアが有るという判定がなされると、制御フローはステップS105へ移行する。ステップS105では、グラフィックコントローラ23はプロセッサ21によって特定された開状態のドアの位置情報を取得する。ステップS106では、グラフィックコントローラ23は、開状態のドアの位置に対応したドア開状態車両モデルを選択して仮想三次元空間上にレイアウトする。これにより制御フローはステップS107へ移行する。
【0061】
ステップS107では、車両のイグニッションのON/OFF状態を判定する。車両のイグニッションがON状態であれば、車両用表示装置100の各構成にバッテリ32からの電力が供給されて、制御フローはステップS108に移行する。ステップS107で、車両のイグニッションがOFF状態である場合、制御フローはステップS120へ移行する。ステップS108では、プロセッサ21が横滑り防止装置35によって車内LAN31上に出力された車速値を取得する。ステップS109では、仮想の三次元空間内で三次元車両モデル13mを俯瞰視する俯角がグラフィックコントローラ23に伝達される。これによりグラフィックコントローラ23では、三次元車両モデル13mを俯瞰視する視点位置PSが設定される。
【0062】
ステップS110では、プロセッサ21が、運転支援装置37による車速制御機能の作動の有無を判定する。ステップS110の判定において運転支援装置37の車速制御機能の作動が確認されない場合、制御フローはステップS114へ移行する。対して、ステップS110の判定において運転支援装置37による車速制御機能の作動が確認された場合、プロセッサ21は判定結果をグラフィックコントローラ23へ伝達して、制御フローはステップS111へ移行する。ステップS111では、グラフィックコントローラ23は車速制御インジケータモデル16mを三次元車両モデル13m又はドア開状態車両モデルの前方にレイアウトする。ステップS112では、プロセッサ21が、運転支援装置37による車速制御機能の制御モードに関する情報を取得して、先行車両の有無を判定する。ステップS112の判定において、先行車両が確認されない場合、制御フローはステップS114へ移行する。対して、ステップS112の判定において先行車両が確認された場合、プロセッサ21は判定結果をグラフィックコントローラ23へ伝達して、制御フローはステップS113へ移行する。ステップS113では、グラフィックコントローラ23は、車速制御インジケータモデル16mのさらに前方へ先行車両モデル16nをレイアウトする。そして制御フローは、ステップS114へ移行する。
【0063】
ステップS114では、プロセッサ21が、運転支援装置37による車線維持機能の作動の有無を判定する。ステップS114の判定において運転支援装置37の車線維持機能の作動が確認されない場合、制御フローはステップS116へ移行する。対して、ステップS114の判定において運転支援装置37による車線維持機能の作動が確認された場合、プロセッサ21は判定結果をグラフィックコントローラ23へ伝達して、制御フローはステップS115へ移行する。ステップS115では、グラフィックコントローラ23は、ROM21bより参照した車線モデル17mを三次元車両モデル13mの両側方にレイアウトする。そして制御フローはステップS116へ移行する。
【0064】
ステップS116では、プロセッサ21が、障害物検知装置38の作動の有無を判定する。ステップS116の判定において障害物検知装置38の作動が確認されない場合、制御フローはステップS120へ移行する。対して、ステップS116の判定において障害物検知装置38作動が確認された場合、プロセッサ21は判定結果をグラフィックコントローラ23へ伝達して、制御フローはステップS117へ移行する。ステップS117では、グラフィックコントローラ23は、複数の障害物検知インジケータモデル18mを三次元車両モデル13mの周囲にレイアウトする。ステップS118では、プロセッサ21が、障害物検知装置38の検知結果に関する情報を取得して、障害物の有無を判定する。ステップS118の判定において、障害物が確認されない場合、制御フローはステップS120へ移行する。対して、ステップS118の判定において障害物が確認された場合、プロセッサ21は障害物の位置情報を取得し、グラフィックコントローラ23へ伝達する。ステップS119では、グラフィックコントローラ23は、検知された位置に対応したいずれかの障害物検知インジケータモデル18mの色情報を、誘目性の高い例えば高彩度の赤色へ更新する。これにより制御フローはステップS120へ移行する。
【0065】
ステップS120では、グラフィックコントローラ23は設定された視点位置PSから仮想の三次元空間をレンダリングして、背景画像上に車両画像13および各インジケータ16a〜19の描画された画像10を描画する。ステップS121では、グラフィックコントローラ23によって描画された画像10の階調データが、液晶ディスプレイ29に出力される。液晶ディスプレイ29は、この画像データに従って各画素を駆動して画像10の表示を行う。そしてこのステップS121の終了によって、制御フローは再びステップS101に戻り、上述した制御を繰り返す。ステップS101において、プロセッサ21が停止すると、本制御フローはステップS122へ移行して終了となる。
【0066】
ここまで説明した本実施形態では、車両画像13を俯瞰視する俯角を車速値に対応させることによって、図4(a)〜(e)に示す画像10において、各インジケータ16a〜19は、それぞれ拡大された表示範囲にはっきりと表示されることとなる。加えて、視点位置PSを車速値の増加に従って変更させることによれば、画像10上において車両画像13とともに表示される主要な表示範囲は、第二領域に相当する範囲から第一領域に相当する範囲へと連続的に遷移することとなる。また運転者は、車速の増加に従って優先的に視認する範囲を第二領域から第一領域へと遷移させる。故に、上述した表示範囲の遷移による表示上の変化を、運転者による視認範囲の変化に同調させ得る。以上のように、車両画像13と関連してはっきりと表示される各インジケータ16a〜19と、運転者の視認範囲の変化と同調する表示上の変化とによれば、車両用表示装置100は直感的な表示を実現することができるのである。
【0067】
加えて本実施形態では、車速値の増加に従って、三次元車両モデル13mに対する視点位置PSは、次第に遠ざけられる(図6参照)。故に車両用表示装置100は、広域な第一領域であっても、当該第一領域に相当する範囲を画像上の車両画像13の上方に確実に形成することができる。これにより車両用表示装置100は、第一領域に対して作動する運転支援装置37の作動状態を報知する車速制御インジケータ16a、先行車両インジケータ16b、および車線制御インジケータ17を、車両画像13と関連させて確実に表示することができるのである。
【0068】
また本実施形態では、低車速域LVA内の車速値において視点位置PSは、三次元車両モデル13mの直上に設定される。故に低車速域LVA内では、車両用表示装置100に表示される画像10上で、第二領域に相当する範囲が車両画像13の周囲に均等に拡大されて形成されることとなる。これにより車両用表示装置100は、第二領域に対して作動する障害物検知装置38の検知結果を報知する障害物検知インジケータ18、およびドアの開情報を報知するドアウォーニングインジケータ19を、車両画像13の周囲にさらにわかりやすく表示することができるのである。
【0069】
さらに本実施形態では、車両用表示装置100は、低車速域LVAおよび高車速域HVA内において、三次元車両モデル13mに対する視点位置PSの俯角を一定としている。これにより低車速域LVAおよび高車速域HVA内において、画像10上で車両画像13を俯瞰視する俯角は一定に保たれることとなる。故に、画像10上で車両画像13および当該車両画像13の上方又は周囲に形成される範囲は固定された状態となる。したがって、車両用表示装置100は、はっきりと表示された各インジケータ16a〜19の表示状態を、車速の変化にかかわらず維持しつづけることができるのである。
【0070】
また加えて本実施形態では、車速値の増加に従い車両画像13を俯瞰視する俯角を低減することによって、車両用表示装置100は画像10上で第一領域に相当する車両画像13上方の表示範囲を拡大する作用を獲得している。このような作用の発揮によれば、主に高車速域HVAで第一領域に対して作動する運転支援装置37の作動情報を報知する各インジケータ16a,16b,17をはっきりと表示することができる。したがって、視認することの難しい運転支援装置37の作動を運転者に報知する各インジケータ16a〜19を表示する車両用表示装置100として、本発明は特に好適なのである。
【0071】
さらに加えて本実施形態では、車速値の低下に従い車両画像13を俯瞰視する俯角を拡大することによって、車両用表示装置100は画像10上で第二領域に相当する車両画像13周囲の表示範囲を拡大する作用を獲得している。このような作用の発揮によれば、主に低車速域LVAで第二領域に対して作動する障害物検知装置38の検知結果を報知する障害物検知インジケータ18は、画像10へはっきりと表示される。同様に、第二領域に対して作動するドアの開情報を報知するドアウォーニングインジケータ19は、画像10へはっきりと表示される。以上によれば、障害物検知インジケータ18およびドアウォーニングインジケータ19は、運転者に直感的に知覚され得る。したがって、緊急性の高い障害物検知装置38の検知結果およびドア開情報等を報知する車両用表示装置100として、本発明は特に好適なのである。
【0072】
またさらに本実施形態では、車両用表示装置100によって表示される画像10において、車両の外観形状を再現し且つ車両の外装色と同じ色相である車両画像13は、実際の車両との相関を運転者に強く示し得る。このような車両と車両画像13との相関の強調作用によれば、表示範囲の変化を運転者の視認範囲の変化と同調させることによる表示の直感性の向上効果を、さらに強固なものとし得るのである。尚、車両の外観形状とは、具体的にはハッチバック、セダン、ワンボックス、又はノッチバック等の車体形状に加えて、ヘッドライトおよびテールライト等の特徴的な形状を示す。
【0073】
さらに車両の外観形状は車種毎に異なるので、当該車両を模した三次元車両モデル13mの形状も車種毎に異なる。そこで本実施形態では、ROM21bに諸元記憶領域部21cを設け、当該諸元記憶領域部21cに車種毎の三次元車両モデル13mの形状情報を記憶させることによれば、諸元記憶領域部21cの容量を抑制し得る。したがって、ROM21bに諸元記憶領域部21cを設けることで、直感的な表示を実現する車両用表示装置100の低コスト化に貢献し得るのである。
【0074】
尚、本実施形態では、多重通信インターフェース25が請求項に記載の「車速値取得手段」、「第一情報取得手段」、「第二情報取得手段」に、RAM21aおよびROM21bを含むプロセッサ21およびビデオRAM23aを含むグラフィックコントローラ23が請求項に記載の「描画手段」に、液晶ディスプレイ29が請求項に記載の「表示手段」に、諸元記憶領域部21cが請求項に記載の「記憶部」に、高車速域HVAが請求項に記載の「第一車速域」に、低車速域LVAが請求項に記載の「第二車速域」に、運転支援装置37が請求項に記載の「車速制御装置」、「車線維持支援装置」および「第一装置」に、障害物検知装置38が請求項に記載の「障害物検知装置」および「第二装置」に、ドアスイッチ39aを含む車両制御装置39が請求項記載の「開閉検知装置」および「第二装置」に、車両制御装置39による車線維持機能および車速制御機能の作動情報および制御モードに関する情報が請求項に記載の「第一状態情報」に、障害物の検知情報およびドア開状態に関する情報が請求項に記載の「第二状態情報」に、車両画像13が請求項に記載の「車両画像部」に、車速制御インジケータ16a、先行車両インジケータ16b、および車線制御インジケータ17が請求項に記載の「第一報知画像部」に、障害物検知インジケータ18およびドアウォーニングインジケータ19が請求項に記載の「第二報知画像部」に、それぞれ相当する。
【0075】
(他の実施形態)
以上、本発明による一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0076】
上記実施形態では、車両用表示装置100は、「第一装置」としての運転支援装置37の作動情報を取得して、各インジケータ16a,16b,17を表示していた。しかし、「第一装置」は運転支援装置37に限定するものではない。同様に、車両用表示装置100は、「第二装置」としての障害物検知装置38の検知結果やドアの開情報を取得して、各インジケータ18,19を表示していた。しかし、「第二装置」はこれらに限定するものではない。例えば、車速制御機能として低速追従モードの設定がさらに可能な運転支援装置37を「第一装置」とともに「第二装置」としてもよい。ここで、車速制御機能の低速追従モードとは、30km/h以下で走行する渋滞時等に作動し、先行車両と自車両との間隔を維持する機能である。
【0077】
上記実施形態では、車両用表示装置100のグラフィックコントローラ23は、仮想の三次元空間内に複数のモデルをレイアウトした後、レンダリングすることによって画像10を描画していた。しかし、車速の増加に従って俯角の減少する車両画像13を有する画像10を描画することができれば、当該画像10を描画する手法は限定しない。例えば、車両画像13および全てのインジケータ16a〜19の二次元の画像データを順に重ね合わせることによって画像10を描画する車両用表示装置100であってもよい。又は、三次元車両モデル13mをレンダリングすることによって車両画像13を取得した後、他のインジケータ16a〜19の二次元の画像データを順に重ね合わせることによって画像10を描画する車両用表示装置100であってもよい。
【0078】
上記実施形態では、車両用表示装置100は、各装置の作動情報および検知結果を、多重通信インターフェース25を介して車内LAN31から取得していた。しかし、車両用表示装置は、各装置の作動情報および検知結果を多重通信インターフェース25以外から取得する構成であってもよい。例えば、各装置又は各センサに直接的に電気接続されて、プロトゴルに拠らない電気信号によって作動情報又は検知結果を取得する車両用表示装置であってもよい。
【0079】
上記実施形態では、車速値の増加に従って、三次元車両モデル13mに対する視点位置PSは、次第に遠ざけられていた。しかし、車速値の増加に従って車両画像13を俯瞰視する俯角を減少させる画像が表示されるのであれば、三次元車両モデル13mに対する視点位置PSの距離は適宜設定されてよい。例えば、車速値の増加に従って、三次元車両モデル13mに対して視点位置PSを次第に近づける設定であってもよい。
【0080】
上記実施形態では、車速値の増加に従って車両画像13を俯瞰視する俯角を90度から30度の範囲で変化させていた。しかし、俯角を変化させる角度範囲を限定するものではなく、当該角度範囲は適宜設定されてよい。さらに、例えば車速値が負の値であって、車両が後退している場合、90度を超える俯角で車両画像13を俯瞰視する画像10が表示される車両用表示装置であってもよい。
【0081】
上記実施形態では、車両用表示装置100は、低車速域LVAおよび高車速域HVA内において、三次元車両モデル13mに対する視点位置PSの俯角を一定としている。しかし、低車速域LVAおよび高車速域HVA内において三次元車両モデル13mに対する視点位置PSの俯角は変化してもよい。加えて、低車速域LVAは、障害物検知装置38の作動上限車速S1に対応していなくてもよく、例えば上述した運転支援装置37による車速制御機能の低速追従モードの作動上限車速である30km/hに設定されていてもよい。あるいは、低車速域LVAは設定されなくてもよい。同様に高車速域HVAは、運転支援装置37による車速制御機能の作動下限車速S2に対応していなくてもよく、例えば運転支援装置37による車線維持機能の作動下限車速である50km/hに設定されていてもよい。あるいは、低車速域LVAは設定されなくてもよい。
【0082】
またさらに本実施形態では、車両用表示装置100によって表示される画像10において、車両画像13は、車両の外観形状を再現し且つ車両の外装色と同じ色相で描画されていた。しかし、車両画像13は、実際の車両との相関を運転者に示すことが可能であれば、その形状および色相を限定しない。あるいは、運転者の嗜好に対応して、車両画像13の形状および色相を画像10上で自在に変更できる車両用表示装置100であってもよい。
【0083】
上記実施形態では、車種又は車両毎に異なる情報、具体的には、三次元車両モデル13mの形状および色相に関する情報等は、書き換え自在な諸元記憶領域部21cに記憶されていた。しかし諸元記憶領域部21cを設ける場所は、ROM21b内に限定するものではなく、ROM21b外であってもよい。例えば、プロセッサ21と接続された、EEPROM等の不揮発性メモリを「記憶部」として備える車両用表示装置であってもよい。あるいは、書き換え自在な「記憶部」を備えない車両用表示装置100であってもよい。
【0084】
上記実施手段では、画像を表示する「表示手段」として液晶ディスプレイ29を例に説明したが、「表示手段」は液晶ディスプレイ29に限定しない。例えば、Cathode Ray Tube(CRT)ディスプレイや、Plasma Display Panel(PDP)を用いた「表示手段」であってもよい。さらに本発明は、車両用表示装置として機能する車両用表示装置以外にも、例えば車両のフロントガラスに画像を虚像表示する所謂Head−up Display(HUD)装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 画像、13 車両画像(車両画像部)、13m 三次元車両モデル、15 インジケータ、16a 車速制御インジケータ(第一報知画像部)、16b 先行車両インジケータ(第一報知画像部)、16m 車速制御インジケータモデル、16n 先行車両モデル、17 車線制御インジケータ(第一報知画像部)、17m 車線モデル、18 障害物検知インジケータ(第二報知画像部)、18m 障害物検知インジケータモデル、19 ドアウォーニングインジケータ(第二報知画像部)、21 プロセッサ(描画手段)、21a RAM(描画手段)、21b ROM(描画手段)、21c 諸元記憶領域部(記憶部)、22 バス、23 グラフィックコントローラ(描画手段)、23a ビデオRAM(描画手段)、25 多重通信インターフェース(車速値取得手段・第一情報取得手段・第二情報取得手段)、27 内部電源、28 電源インターフェース、29 液晶ディスプレイ(表示手段)、31 車内LAN、32 バッテリ、33 電力供給制御装置、33a イグニッションスイッチ、33b イグニッションリレー、35 横滑り防止装置、36 エンジン制御装置、37 運転支援装置(第一装置・車速制御装置・車線維持支援装置)、38 障害物検知装置(第二装置)、38a 超音波センサ、39 車両制御装置(第二装置)、39a ドアスイッチ(第二装置)、100車両用表示装置、HVA 高車速域(第一車速域)、LVA 低車速域(第二車速域)、PS 視点位置、S1 作動上限車速、S2 作動下限車速

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行速度を車速値として取得する車速値取得手段と、
第一車速域で前記車両の進行方向の第一領域に対して作動する第一装置の第一状態情報を取得する第一情報取得手段と、
前記第一車速域よりも低速側の第二車速域で、前記車両の周囲且つ前記第一領域よりも前記車両に近接する第二領域に対して作動する第二装置の第二状態情報を取得する第二情報取得手段と、
前記車両を進行方向後側から俯瞰視した車両画像部であって、前記車速値の増加に従って俯瞰視する俯角が減少する車両画像部、前記第一状態情報の取得によって前記車両画像部の上方に形成されて前記第一状態情報を報知する第一報知画像部、および前記第二状態情報の取得によって前記車両画像部の周囲に形成されて前記第二状態情報を報知する第二報知画像部を有する画像を描画する描画手段と、
前記画像を表示する表示手段と、を備える表示装置。
【請求項2】
前記描画手段は、前記車速値の増加に従って前記車両画像部を俯瞰視する位置を、前記車両画像部から遠ざけて前記画像を描画することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記描画手段は、前記第二車速域内の前記車速値において、前記車両画像部を直上から俯瞰視する前記画像を描画することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記描画手段は、前記第一車速域内の全ての前記車速値において、前記車両画像部を俯瞰視する俯角を一定とする前記画像を描画することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記描画手段は、前記第二車速域内の全ての前記車速値において、前記車両画像部を俯瞰視する俯角を一定とする前記画像を描画することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第一情報取得手段は、前記車両の車速を制御する車速制御装置の作動情報を前記第一状態情報として取得し、
前記描画手段は、前記車速制御装置からの前記作動情報の取得によって前記車両画像部の上方に前記作動情報を報知する前記第一報知画像部を形成する前記画像を描画することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第一情報取得手段は、前記車両の進行方向を制御する車線維持支援装置の作動情報を前記第一状態情報として取得し、
前記描画手段は、前記車線維持支援装置からの前記作動情報の取得によって前記車両画像部の上方に前記作動情報を報知する前記第一報知画像部を形成する前記画像を描画することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第二情報取得手段は、前記車両周囲の障害物を検知する障害物検知装置の検知結果を前記第二状態情報として取得し、
前記描画手段は、前記障害物検知装置からの前記検知結果の取得によって前記車両画像部の周囲に前記検知結果を報知する前記第二報知画像部を形成する前記画像を描画することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第二情報取得手段は、前記車両のドアの開状態を検知する開閉検知装置の検知結果を前記第二状態情報として取得し、
前記描画手段は、前記開閉検知装置からの前記検知結果の取得によって前記車両画像部の周囲に前記検知結果を報知する前記第二報知画像部を形成する前記画像を描画することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記描画手段は、前記車両の外観形状を再現した前記車両画像部を有する前記画像を描画することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記描画手段は、前記車両の外装色と同じ色相の前記車両画像部を有する前記画像を描画することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項12】
前記描画手段は、前記車両毎の前記車両画像部の形状情報を記憶する記憶部を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−228471(P2010−228471A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75021(P2009−75021)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】