説明

表面欠陥検査装置

【課題】金属帯の幅方向に配列された複数台の撮像装置に故障などの異常が生じたことを正確に検出して表面欠陥の見逃し等を防止することのできる表面欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】表面欠陥検査装置2は、撮像装置3〜6と、その撮像領域に照明光を照射する照明装置7と、撮像装置により撮像された画像を記憶する画像メモリ9と、画像メモリに記憶された画像を画像処理して金属帯1の表面欠陥を検出する欠陥検出装置10とを備え、さらに、画像メモリに記憶された画像から金属帯のエッジを検出するエッジ検出部16と、検出されたエッジから金属帯の板幅を算出する板幅算出部17と、撮像装置から出力された画像信号の平均輝度レベルを算出する平均輝度算出部18と、算出された板幅を金属帯の真の板幅情報と比較すると共に算出された平均輝度レベルを閾値レベルと比較して撮像装置3〜6の異常を判断する異常判断部19とを有してなる異常検出装置15を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば溶融亜鉛めっき鋼板の連続製造設備などで用いられる表面欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融亜鉛めっき鋼板を連続的に製造する設備では、溶融亜鉛めっき処理が施された鋼帯を巻取機によりコイル状に巻き取る前に、凹凸欠陥や模様状欠陥などの表面欠陥が鋼帯の表面に発生しているか否かの検査が行われている。
このような鋼帯などの金属帯の表面検査に用いられる表面欠陥検査装置としては、金属帯の幅方向に沿って配列された複数台の撮像装置と、撮像装置の撮像領域に照明光を照射する照明装置と、撮像装置により撮像された金属帯の表面画像を記憶する画像メモリと、画像メモリに記憶された画像を画像処理して金属帯の表面欠陥を検出する欠陥検出装置とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような構成の表面欠陥検査装置によると金属帯を目視検査する検査員の経験などに頼ることなく表面欠陥を精度よく検出することができるが、撮像装置に故障などの異常が生じた場合には表面欠陥を見逃してしまうおそれがある。
【0003】
このような問題を解決する方法としては、画像メモリに記憶された画像から金属帯のエッジを検出すると共に検出したエッジから金属帯の板幅を算出し、その板幅算出値を金属帯の真の板幅情報と比較して撮像装置の異常を検出する方法が考えられる。
しかしながら、上述した方法では、金属帯の幅方向に配列された複数台の撮像装置のうち金属帯のエッジを含む領域を撮像する撮像装置については異常を検出することができるが、金属帯のエッジを含まない領域を撮像する撮像装置については異常を検出することができない。このため、金属帯のエッジを含まない領域を撮像する撮像装置に故障などの異常が生じた場合には撮像装置により撮像された金属帯表面の画像から表面欠陥を精度よく検出することができなくなり、表面欠陥を見逃してしまうおそれがあった。
【0004】
監視カメラなどの撮像装置の健全性を確認する技術としては、入力画像データと過去の平均画像データとの差異から監視カメラの異常を検出する方法(特許文献2参照)、監視カメラの露光量が目標値になるように監視カメラの絞りとシャッター速度を制御する制御値を算出し、算出した制御値と画像信号を信号処理する信号処理手段からの信号レベルとから監視カメラの異常を検出する方法(特許文献3参照)、複数の監視カメラを監視領域の一部が重なり合うように配置し、互いに対応する位置における画像データを比較して監視カメラの異常を検出する方法(特許文献4参照)、金属帯の表面疵を光学的に検査する表面疵検査装置において、金属帯を搬送するロール表面に標準欠陥標識を貼り付け、これを金属帯の表面と一緒に撮像し、標準欠陥の画像が変化していないことを確認することにより異常を検出する方法(特許文献5参照)などが知られている。
【0005】
しかし、鋼帯などの金属帯はその板幅や反射率、光沢度合が時々刻々と変化するため、特許文献2に記載の方法では、平均画像を撮ったときよりも幅の小さい金属帯や平均画像より反射率の大きく異なる金属帯を撮像した場合などにカメラの異常を誤判定してしまう可能性があり、特許文献3に記載の方法も同様に、金属帯の板幅や反射率、光沢度合が大きく変化すると制御値も大きく変化するため、カメラの異常と対象物の変化を判別することは困難である。従って、特許文献2及び特許文献3はカメラで撮像する対象物が静止物や大きさなどが大きく変化しない場合には有効であるが、金属帯のように板幅や反射率、光沢度合が変化する場合には撮像装置の異常を正確に検出することができないという問題がある。
【0006】
特許文献4に記載の方法は上記のような問題が生じるおそれがないが、現実問題として、全く同じ特性を持つカメラやレンズを製作することは困難であり、同じ場所を見ても全く同じ画像とはならない。一般的にカメラ視野を重ね合せる場合はカメラの端部で重ね合せることになるが、端部は特にレンズの収差などの関係により光量差が大きくなる場合がある。
【0007】
また、偏光フィルタなどの特殊フィルタを用いると、カメラ視野の周辺では画角の影響を大きく受け、カメラ視野両端部における入力光量には大きな差が発生することがある。さらに鋼帯などの金属帯のように被検査体の厚さが変化したり、あるいは搬送に伴う振動により対象物との距離が変化する場合、視野サイズも変化するため、重なり領域も変化してしまう。精密な画像を採取する場合においては、このような変化は無視できない場合もある。
【0008】
従って、特許文献4に記載された方法のように、単純に差分を算出するだけでは良否の判定は困難であり、金属帯の表面欠陥を光学的に検査する表面欠陥検査装置に有効に使用することができないという問題がある。
特許文献5に記載の方法では、ロール表面に貼り付けられた欠陥標識が金属帯によって傷つけられたり、汚れてしまい、機能を果たせなくなる。また、カメラが複数台あった場合には、金属帯が常に流れている部分のカメラについては装置の異常判断が行えないことになり、装置の異常を判断するためには連続して製造しているコイルを一旦切って、ロール全体をカメラで捉えることが必要となり、通常検査中には異常判断ができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平07−198627号公報
【特許文献2】特開2007−300547号公報
【特許文献3】特開2006−303844号公報
【特許文献4】特開2002−369224号公報
【特許文献5】特開平11−223609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属帯の幅方向に配列された複数台の撮像装置に故障などの異常が生じたことを正確に検出して表面欠陥の見逃し等を防止することのできる表面欠陥検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、金属帯の幅方向に沿って配列された複数台の撮像装置と、該撮像装置の撮像領域に照明光を照射する照明装置と、前記撮像装置により撮像された金属帯の表面画像を記憶する画像メモリと、該画像メモリに記憶された画像を画像処理して前記金属帯の表面欠陥を検出する欠陥検出装置とを備えた表面欠陥検査装置であって、前記画像メモリに記憶された画像から前記金属帯のエッジを検出するエッジ検出部と、該エッジ検出部により検出されたエッジから前記金属帯の板幅を算出する板幅算出部と、前記撮像装置から出力された画像信号の平均輝度レベルを算出する平均輝度算出部と、前記板幅算出部により算出された板幅を前記金属帯の真の板幅情報と比較すると共に前記平均輝度算出部により算出された平均輝度レベルを予め定めた閾値レベルと比較して前記撮像装置の異常を判断する異常判断部とを有してなる異常検出装置をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記平均輝度算出部は、前記画像メモリに記憶された画像から前記画像信号のエッジより内側の平均輝度レベルを算出するものであってもよい。また、前記異常検出装置は、前記異常判断部の判断結果を出力する判断結果出力部をさらに有するものであってもよい。
さらに、前記撮像装置の撮像領域に照明光を照射する照明装置と、該照明装置から前記撮像装置の撮像領域に照射される照明光の光量を制御する光量制御装置とをさらに備え、前記金属帯の先行金属帯と後行金属帯との溶接部を境にして照明光の光量を変化させる機能を前記光量制御装置が有し、前記異常検出装置は、前記金属帯のエッジより内側に位置する複数の撮像装置から出力された輝度信号の平均輝度を比較し、該平均輝度の比較結果から前記照明光の光量変化が所定の光量変化であるか否かを判定して前記撮像装置の異常を検出する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、平均輝度算出部により算出された平均輝度レベルを予め定められた閾値レベルと比較することによって金属帯のエッジを含まない領域を撮像する撮像装置についても故障などの異常が生じたかどうかを異常判断部で判断することができる。従って、金属帯の幅方向に配列された複数台の撮像装置に故障などの異常が生じたことを正確に検出して表面欠陥の見逃し等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る表面欠陥検査装置を示す図である。
【図2】図1に示す異常検出装置による異常検出方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】金属帯の表面を撮像する全ての撮像装置に異常が生じていないときの各撮像装置の出力信号を示す図である。
【図4】金属帯のエッジを含む領域を撮像する撮像装置に異常が生じたときの各撮像装置の出力信号を示す図である。
【図5】金属帯のエッジを含まない領域を撮像する撮像装置に異常が生じたときの各撮像装置の出力信号を示す図である。
【図6】金属帯に蛇行が生じたときの各撮像装置の出力信号の一例を示す図である。
【図7】金属帯が蛇行した場合の各撮像装置の位置と出力信号の一例を示す図である。
【図8】本発明の変形例を説明するための図である。
【図9】図1に示す異常検出装置による他の異常検出方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る表面欠陥検査装置を示す図で、本実施形態に係る表面欠陥検査装置2は、撮像装置3,4,5,6、照明装置7、画像入力装置8、画像メモリ9、欠陥検出装置10、光量制御装置14及び異常検出装置15を備えている。
撮像装置3,4,5,6は図示しない巻取機により図中矢印方向に巻き取られる金属帯1の表面を撮像して画像信号を出力するものであって、金属帯1の幅方向に沿って一定間隔で配列されている。また、撮像装置3,4,5,6は例えば一次元または二次元のCCDカメラまたは光電子倍増管などから構成されている。
【0016】
照明装置7は撮像装置3,4,5,6の撮像領域に照明光を照射するものであって、金属帯1の板幅全体にわたって照明光を照射するように構成されている。
画像入力装置8は撮像装置3,4,5,6により撮像された金属帯1の表面画像を取り込むものであって、図示を省略したが、撮像装置3,4,5,6から出力された画像信号を増幅する増幅器や増幅された画像信号をディジタル信号に変換するA/D変換器などから構成されている。
【0017】
画像メモリ9は撮像装置3,4,5,6により撮像された金属帯1の表面画像を記憶するものであって、撮像装置3,4,5,6から出力された画像信号は画像入力装置8でディジタル信号に変換された後、金属帯1の表面画像データとして画像メモリ9に記憶されるようになっている。
欠陥検出装置10は金属帯1の表面欠陥を検出するものであって、例えば画像メモリ9に記憶された画像を画像処理する画像処理部11、画像処理部11の出力から表面欠陥の種別や程度などを判断する欠陥判断部12、欠陥判断部12の判定結果を表示装置やプリンタなどに出力する判断結果出力部13などから構成されている。
【0018】
光量制御装置14は撮像装置3,4,5,6に入射する照明光の光量が一定となるように照明装置7を制御するものであって、画像入力装置8に入力した撮像装置3,4,5,6の出力信号を基に照明装置7を制御するように構成されている。
異常検出装置15は撮像装置3,4,5,6の異常を検出するものであって、エッジ検出部16、板幅算出部17、平均輝度算出部18及び異常判断部19を有している。この異常検出装置15のエッジ検出部16は画像メモリ9に記憶された画像から金属帯1のエッジ1a,1bを検出するものであって、例えば画像メモリ9に記憶された金属帯1の表面画像を画像処理して金属帯1のエッジ1a,1bを検出するように構成されている。
【0019】
異常検出装置15の板幅算出部17はエッジ検出部16により検出されたエッジ1a,1bから金属帯1の板幅を算出するものであって、例えばエッジ検出部16で検出されたエッジ1aとエッジ1bとの間の画素数を計数して金属帯1の板幅を算出するように構成されている。
異常検出装置15の平均輝度算出部18は撮像装置3,4,5,6から出力された画像信号の平均輝度レベルを算出するものであって、例えば画像メモリ9に記憶された画像データから平均輝度レベルを算出するように構成されている。
【0020】
異常検出装置15の異常判断部19は撮像装置3,4,5,6が異常であるかどうかを判断するものであって、板幅算出部17により算出された板幅を金属帯1の真の板幅情報(例えば前工程で測定した板幅実測値)と比較すると共に平均輝度算出部18により算出された平均輝度レベルを予め定めた閾値レベルと比較して撮像装置3,4,5,6の異常を判断するように構成されている。
異常検出装置15は、また、判断結果出力部20を有し、異常判断部19の判定結果は判断結果出力部20から表示装置やプリンタなどに出力されるようになっている。
【0021】
また、異常検出装置15は例えば図2に示すフローチャートに従って撮像装置3,4,5,6の異常を検出するように構成されている。すなわち、撮像装置3,4,5,6により撮像された金属帯1の表面画像が画像メモリ9に格納されると、異常検出装置15は金属帯1の真の板幅情報(例えば板幅実測値)を図示しない上位計算機から取得する(ステップS1)。
【0022】
金属帯1の真の板幅情報を取得したならば、異常検出装置15は金属帯1のエッジ1a,1bを本来撮像すべき2台の撮像装置(以下「エッジ撮像カメラ」という。)を金属帯1の真の板幅情報から特定する(ステップS2)。そして、金属帯1のエッジ1a,1bを画像メモリ9に記憶された画像データから検出し(ステップS3)、検出したエッジから金属帯1の板幅を算出する(ステップS4)。なお、ステップS3で検出したエッジから金属帯1の板幅を算出する方法としては、例えばエッジ1aとエッジ1bとの間の画素数から金属帯1の板幅を算出することができる。
【0023】
金属帯1の板幅をステップS4で算出したならば、異常検出装置15は算出した板幅(以下「板幅算出値」という。)を金属帯1の真の板幅情報と比較する(ステップS5)。そして、板幅算出値が真の板幅情報と同じ板幅または許容範囲内であるかどうかを判定する(ステップS6)。
ここで、板幅算出値が真の板幅情報と同じ板幅または許容範囲内でない場合には、異常検出装置15はエッジ撮像カメラ(本実施形態では撮像装置3及び/又は撮像装置6)に故障などの異常が発生したと判断する(ステップS7)。また、板幅算出値が真の板幅情報と同じ板幅または許容範囲内である場合には、異常検出装置15はステップS12に進む。
【0024】
エッジ撮像カメラ(撮像装置3及び/又は撮像装置6)に故障などの異常が発生したとステップS7で判断した場合には、異常検出装置15はステップS8に進み、ステップS2でエッジ撮像カメラであると特定された撮像装置3がエッジを検出しているかどうかを判定する。ここで、撮像装置3がエッジを検出していると判定した場合には、異常検出装置15はステップS10に進む。また、撮像装置3がエッジを検出していないと判定した場合には、異常検出装置15は撮像装置3が異常であると判断し、その判断結果を表示装置等に出力し(ステップS9)、ステップS10に進む。
【0025】
ステップS10では、ステップ2でエッジ撮像カメラであると特定された撮像装置6がエッジを検出しているかどうかを判定する。ここで、撮像装置6がエッジを検出していると判定した場合には、異常検出装置15はステップS12に進む。また、撮像装置6がエッジを検出していないと判定した場合には、異常検出装置15は撮像装置6が異常であると判断し、その判断結果を表示装置等に出力し(ステップS11)、ステップS12に進む。
【0026】
ステップS12では、撮像装置3から出力された画像信号の平均輝度(エッジより内側の平均輝度)を画像メモリ9に記憶された画像データから算出する。そして、異常検出装置15はステップS12で求めた平均輝度が予め定めた閾値以上であるかどうかを判定する(ステップS13)。ここで、閾値以上である場合には、異常検出装置15はステップS15に進む。また、ステップS12で求めた平均輝度が閾値以上でない場合には、異常検出装置15は撮像装置3が異常であると判断し、その判断結果を表示装置等に出力し(ステップS14)、ステップS15に進む。
【0027】
このとき、金属帯1の蛇行等がある場合には、図7に示すように、撮像装置3と撮像装置5の両方がエッジ撮像カメラとなる場合もある。これに対応するため、各撮像装置の平均輝度を算出するステップS12、S15、S18、S21の処理の前に、各撮像装置についてエッジ撮像カメラであるかエッジ撮像カメラの内側に位置するカメラであるかを判断する(ステップS12−0、S15−0、S18−0、S21−0)。ここで、エッジ撮像カメラでないと判断した場合あるいはエッジ撮像カメラの外側に位置するカメラ(図7の場合には撮像装置6)であると判断した場合は、平均輝度算出および閾値判定を行わず、次の処理に進むようにする。こうすることで、金属帯1が蛇行して、エッジのかかっていないカメラや金属帯1を全く撮像していないカメラを異常と判断することが無くなる。
【0028】
ステップS15では、撮像装置6から出力された画像信号の平均輝度(エッジより内側の平均輝度)を画像メモリ9に記憶された画像データから算出する。そして、異常検出装置15はステップS15で求めた平均輝度が予め定めた閾値以上であるかどうかを判定する(ステップS16)。ここで、閾値以上である場合には、異常検出装置15はステップS18に進む。また、ステップS15で求めた平均輝度が閾値以上でない場合には、異常検出装置15は撮像装置6が異常であると判断し、その判断結果を表示装置等に出力し(ステップS17)、ステップS18に進む。
【0029】
ステップS18では、撮像装置4から出力された画像信号の平均輝度を画像メモリ9に記憶された画像データから算出する。そして、異常検出装置15はステップS18で求めた平均輝度が予め定めた閾値以上であるかどうかを判定する(ステップS19)。ここで、閾値以上である場合には、異常検出装置15はステップS21に進む。また、ステップS18で求めた平均輝度が閾値以上でない場合には、異常検出装置15は故障などの異常が撮像装置4に発生したと判断し、その判断結果を表示装置等に出力し(ステップS20)、ステップS21に進む。
【0030】
ステップS21では、撮像装置5から出力された画像信号の平均輝度を画像メモリ9に記憶された画像データから算出する。そして、異常検出装置15はステップS21で求めた平均輝度が予め定めた閾値以上であるかどうかを判定する(ステップS22)。ここで、閾値以上である場合には、異常検出装置15はステップS24に進む。また、ステップS21で求めた平均輝度が閾値以上でない場合には、異常検出装置15は故障などの異常が撮像装置5に発生したと判断し、その判断結果を表示装置等に出力し(ステップS23)、ステップS24に進む。
【0031】
ステップS24では、以上のフローで異常が見つからなければ、全ての撮像装置3,4,5,6は正常であると判断し、その判断結果を表示装置等に出力する。
なお、以上の図2による説明において、後述する図4に示す場合のように金属帯1が蛇行したことにより撮像装置6でエッジ検出せず、撮像装置5でエッジを検出する場合は、ステップS15〜S17における撮像装置6に関する判定に換えて、撮像装置5についてステップS21−0〜S23にて判定を行うことになる。
【0032】
図1に示した構成において、撮像装置3,4,5,6に異常が生じていないときの各撮像装置の出力信号を図3に示す。また、撮像装置6に異常が生じているときの各撮像装置の出力信号を図4に、撮像装置5に異常が生じているときの各撮像装置の出力信号を図5に、金属帯1に蛇行が生じたときの各撮像装置の出力信号を図6に示す。
上述した本発明の一実施形態では、撮像装置3,4,5,6に異常が生じていない場合には板幅算出部17により算出された板幅Wが金属帯1の板幅Wと一致することが図3からわかり、撮像装置6に異常が生じている場合には板幅算出部17により算出された板幅Wが金属帯1の板幅Wと一致しないことが図4からわかる。
【0033】
また、撮像装置3,4,5,6に異常が生じていない場合には撮像装置3,4,5,6の出力信号レベルL,L,L,Lが閾値レベルL以上となることが図3からわかり、撮像装置5に異常が生じている場合には平均輝度算出部18により算出された撮像装置5の出力信号レベルLが閾値レベルLより低くなることが図5からわかる。
また、金属帯1に蛇行が生じたために本来はエッジを検出すべき撮像装置6の出力信号が低い場合でも、板幅算出部17により算出された板幅板幅Wが金属帯1の板幅Wと一致する場合には、撮像装置6の異常でないことが図6からわかる。
【0034】
従って、上述した本発明の一実施形態のように、撮像装置3,4,5,6の異常を検出する装置として、画像メモリ9に記憶された画像から金属帯1のエッジ1a,1bを検出するエッジ検出部16と、エッジ検出部16により検出されたエッジ1a,1bから金属帯1の板幅を算出する板幅算出部17と、撮像装置3,4,5,6から出力された画像信号の平均輝度レベルを算出する平均輝度算出部18と、板幅算出部17により算出された板幅を金属帯1の真の板幅情報と比較すると共に平均輝度算出部18により算出された平均輝度レベルを予め定めた閾値レベルと比較して撮像装置3,4,5,6の異常を判断する異常判断部19とを有してなる異常検出装置15を備えたことで、金属帯1のエッジ1a,1bを含まない領域を撮像する撮像装置4,5についても故障などの異常が生じたかどうかを判断できるので、金属帯の幅方向に配列された複数台の撮像装置に故障などの異常が生じたことを正確に検出して表面欠陥の見逃し等を防止することができる。
【0035】
また、上述した本発明の一実施形態のように、照明装置7を制御する光量制御装置14を備えたことで、金属帯1から撮像装置3,4,5,6に入射する照明光の光量が一定となるので、撮像装置3,4,5,6から出力された画像信号の平均輝度を予め定めた閾値と比較することによって撮像装置3,4,5,6の異常を正確に検出することができる。
さらに、板幅算出部17により算出された板幅を金属帯1の真の板幅情報と比較してエッジ撮像カメラの異常の可能性を判断した後、平均輝度算出部18により算出された平均輝度レベルを予め定めた閾値レベルと比較して撮像装置の異常を判断することで、金属帯1の蛇行による影響を受けることなく撮像装置の異常を判断することができる。
【0036】
なお、上述した本発明の一実施形態では、金属帯の表面を撮像する複数台の撮像装置として4台の撮像装置を例示したが、撮像装置の台数については2〜3台または5台以上であってもよい。
図2に示した処理フローを行った時に、撮像装置の通常の故障、異常時については判断することが可能であるが、撮像装置の故障の中には、撮像装置がある一定レベルの輝度を出力したままの状態となる故障もある。この場合には図2の処理フローでは撮像装置の故障や異常を検出することができない。そこで、以下に示す方法で撮像装置の故障や異常を検出できるようにする。
【0037】
通常の金属帯の連続製造設備では、金属帯をコイルと呼ばれる巻き取った状態のものを溶接しながら連続的に製造している。コイルのつなぎ目の溶接部分については、溶接部の検出等のための穴を開けており、この部分は製造時に切り落とす。このため、図8に示すように、表面欠陥検査装置ではその部分を不感帯として処理しないのが通常である。この場合には、溶接部より前の先行金属帯である先行コイル1aの区間Aにおいて、エッジ撮像カメラ及びその内側のカメラについて、各カメラの平均輝度を図9に示す処理フローのステップS12、S15、S18、S21で求めておく。コイルが切り替わると同時に、光量制御装置14の光量を不感帯の部分で現状の半分の光量に下げる。たとえば、図8に示す区間Bのように、光量を80%から40%に変える。このとき、図8の区間Bで求めた後行コイル(後行金属帯)1bの各カメラの平均輝度が図8の区間Aで求めた先行コイル1aの各カメラの平均輝度の約1/2になっているかを図9に示すステップS13、S16、S19、S22で判断する。
【0038】
平均輝度が光量制御装置14で下げた輝度(例えば1/2)になっていない場合には、そのカメラはカメラ出力がある値で固定しているような異常と判断することが可能となる。この処理を行う場合には、先行コイルと後行コイルの表面性状、例えば粗さ等が大きく変わっても金属帯の反射率が大きく変わる部分では誤判断をする可能性があるため、先行コイルと後行コイルの表面性状等の製造条件がほぼ同じで金属帯の反射率が大きく変化しない部分で行うことで、カメラの異常を判断することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1…金属帯
1a,1b…エッジ
2…表面欠陥検査装置
3,4,5,6…撮像装置
7…照明装置
8…画像入力装置
9…画像メモリ
10…欠陥検出装置
11…画像処理部
12…欠陥判断部
13…判断結果出力部
14…光量制御装置
15…異常検出装置
16…エッジ検出部
17…板幅算出部
18…平均輝度算出部
19…異常判断部
20…判断結果出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯の幅方向に沿って配列された複数台の撮像装置と、該撮像装置の撮像領域に照明光を照射する照明装置と、前記撮像装置により撮像された金属帯の表面画像を記憶する画像メモリと、該画像メモリに記憶された画像を画像処理して前記金属帯の表面欠陥を検出する欠陥検出装置とを備えた表面欠陥検査装置であって、
前記画像メモリに記憶された画像から前記金属帯のエッジを検出するエッジ検出部と、該エッジ検出部により検出されたエッジから前記金属帯の板幅を算出する板幅算出部と、前記撮像装置から出力された画像信号の平均輝度レベルを算出する平均輝度算出部と、前記板幅算出部により算出された板幅を前記金属帯の真の板幅情報と比較すると共に前記平均輝度算出部により算出された平均輝度レベルを予め定めた閾値レベルと比較して前記撮像装置の異常を判断する異常判断部とを有してなる異常検出装置をさらに備えたことを特徴とする表面欠陥検査装置。
【請求項2】
前記平均輝度算出部は、前記画像メモリに記憶された画像から前記画像信号のエッジより内側の平均輝度レベルを算出することを特徴とする請求項1に記載の表面欠陥検査装置。
【請求項3】
前記異常検出装置は、前記異常判断部の判断結果を出力する判断結果出力部をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の表面欠陥検査装置。
【請求項4】
前記撮像装置の撮像領域に照明光を照射する照明装置と、該照明装置から前記撮像装置の撮像領域に照射される照明光の光量を制御する光量制御装置とをさらに備え、前記金属帯の先行金属帯と後行金属帯との溶接部を境にして照明光の光量を変化させる機能を前記光量制御装置が有し、前記異常検出装置は、前記金属帯のエッジより内側に位置する複数の撮像装置から出力された輝度信号の平均輝度を比較し、該平均輝度の比較結果から前記照明光の光量変化が所定の光量変化であるか否かを判定して前記撮像装置の異常を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−108106(P2012−108106A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225040(P2011−225040)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】