説明

記録媒体管理システム

【課題】現行のIDカードのIDを変換して転用先システム用のIDを重複せずに生成できるID管理システムを提供すること。
【解決手段】本発明に係るID管理システム1は、カードデータ550に所定の演算を行って基本コードを生成する基本コード生成手段1710と、基本コード生成手段1710が生成した基本コードを含む識別コードが識別コードリスト510中に存在しない場合、当該基本コードに第1の付加コード530を付加して識別コードを生成し、基本コードを含む識別コードが識別コードリスト510中に存在する場合、当該基本コードに重複対策用付加コードを付加して識別コードを生成する識別コード生成手段1730と、識別コードを識別情報と対応付けて識別コードリスト510に登録し、カードデータ550と重複対策用付加コードとを対応付けて重複リスト520に登録する識別コード登録手段1740と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録されている識別情報を管理する記録媒体管理システムに関する。特に、本発明は、稼働中のシステムにおいて既に使用されている記録媒体を他のシステムにおいても利用することができるように識別情報を管理する。
【背景技術】
【0002】
従来、企業等の建物内のセキュリティ性を高めるために、社員証等をIDカードとして用いて建物や特定のエリアへの人の出入を管理する入退室管理システムが利用されている。一般に、このような入退室管理システムでは、建物の出入口や建物内の部屋の扉等に設置されたカードリーダがIDカードを読み取ると、読み取ったIDカードのIDが入退室管理システムに登録されているか否かを照合する。そして、入退室管理システムは、そのIDカードが正規のIDカード所持者(登録済み)のものであると判定すれば、対象のカードリーダが設置されたエリアへの出入りを許可し、扉や出入り口を解錠して通行可能状態にする。また、入退室管理システムは、入出する資格のないIDカードをカードリーダが読み取ったときは、そのIDカード所持者の入出を許可せずに扉や出入り口を施錠状態に保持する。
【0003】
一方、このように利用されるIDカードは、入退室管理システムだけでなく、オフィス内のPCログオン認証やプリンターの利用管理、社員食堂の清算、社員の就業管理などの様々な目的で幅広く利用されるようになった。このような状況下、既に社員に配布され利用されている現行のIDカードを、そのまま、例えば新規に導入する既製の入退室管理システムにおいても利用できるようにすることが要望されるようになっている。
【0004】
このような要望に応えるため、例えば、特許文献1及び2には、既に他システムで利用されているIDカードを新規に導入される入退室管理システムに転用するため、現行のIDカードから読み出した識別情報に所定の演算を施して得られた所望の桁数のIDを、新規入退室管理システムのIDとして用いることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開H3−244770
【特許文献2】特開H3−244771
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の方法で現行のIDカードのIDを転用先システムのIDに変換すると、転用先システムのIDが重複しないという前提が必ずしも保証されないという問題があった。特に、例えば、転用先システム用のIDの桁数が現行のIDカードのIDの桁数より短い場合、現行のシステムでは重複がなく一意性が担保されているIDであっても、転用先システムにおけるIDの重複が発生する可能性が高まるという問題があった。転用先システムのIDの桁数が使用中のIDカードを変換するのに十分な大きさであったとしても、重複のない変換方法を特定するのは非常に困難である。
【0007】
そこで、本発明では、上記の問題を解決するべく、ユーザが所有する現行のIDカードに記録されたIDなどの識別情報を変換して転用先システム用のIDを生成、利用する場合であっても、転用先システム用のIDが転用先システムにおいて既に登録されているIDと重複しないように生成できるID管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る記録媒体管理システムは、記録媒体から識別情報を読み取る読取部と、識別情報を所定の演算を行って基本コードを生成する基本コード生成部と、基本コードに付加コードを含めた識別コードを記憶部に登録する登録部とを具備する記録媒体管理システムであって、登録部は、記録媒体の登録の際に、読取部が読み取った識別情報から基本コード生成部が生成した基本コードが記憶部に登録済の識別コードに含まれる基本コードと重複するか否かを判定する重複判定手段と、重複判定手段にて重複していないと判定すると第1の付加コードを当該基本コードに付加した識別コードを生成し、重複判定手段にて重複していると判定すると第1の付加コードと異なる重複対策用付加コードを当該基本コードに付加して識別コードを生成する識別コード生成手段と、識別コード生成手段にて生成された識別コードを記憶部に登録する登録手段と、を具備することを特徴とする。
【0009】
これにより、基本コードが重複したとしても、異なる識別コードを生成することで、登録対象とするすべての記録媒体の登録を可能にする。
【0010】
本発明に係る記録媒体管理システムにおいて、更に、記録媒体を照合する際に照合用識別コードを生成する照合用識別コード生成部と、照合用識別コードと記憶部に記憶されている識別コードを照合する照合部と、照合結果を出力する出力部を有し、登録手段は、重複判定手段にて重複していると判定された当該識別情報と当該重複対策用付加コードとを対応付けた重複リストを記憶部に記憶させ、照合用識別コード生成部は、読取部が読み取った識別情報が重複リストに含まれているか否かを判定する照合用重複判定手段と、照合用重複判定手段にて含まれていると判定すれば、重複リストを参照し当該識別情報に合致した重複対策用付加コードを基本コードに付加して照合用識別コードとし、照合用重複判定手段にて含まれていないと判定すれば、第1の付加コードを基本コードに付加して照合用識別コードとする照合用識別コード生成手段とを有することが好ましい。
【0011】
これにより、基本コードが重複したとしても、記録媒体の照合が可能になる。
【0012】
また、本発明に係る記録媒体管理システムにおいて、更に、記録媒体を照合する際に照合用識別コードを生成する照合用識別コード生成部と、照合用識別コードと記憶部に記憶されている識別コードを照合する照合部と、照合結果を出力する出力部を有し、登録手段は、重複判定手段にて重複していると判定された当該識別情報と当該識別コードとを対応付けた重複リストを記憶部に記憶させ、照合用識別コード生成部は、読取部が読み取った識別情報が重複リストに含まれているか否かを判定する照合用重複判定手段と、照合用重複判定手段にて含まれていると判定すれば、重複リストを参照し当該識別情報に合致した識別コードを照合用識別コードとし、照合用重複判定手段にて含まれていないと判定すれば、第1の付加コードを基本コードに付加して照合用識別コードとする照合用識別コード生成手段とを有することが好ましい。
【0013】
これにより、基本コードが重複していても、記録媒体の照合が可能になる。
【0014】
さらに、本発明に係る記録媒体管理システムにおいて、所定の演算は、識別情報の桁数より小さい桁数の基本コードを生成することが好ましい。
【0015】
これにより、基本コードの重複が発生しやすい状況でも登録対象とするすべての記録媒体を登録できる。
【0016】
また、本発明に係る記録媒体管理システムにおいて、所定の演算は、一方向性関数を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ユーザが所有する現行のIDカードに記録されたIDなどの識別情報を変換して転用先システム用のIDを生成、利用する場合であっても、転用先システムにおいて既に登録されているIDと重複しないように転用先システム用のIDを生成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一実施例として、ユーザが稼働中のシステムにおいて既に利用している現行のIDカードを、例えば、新規導入する入退室管理システムにおいても使用できるID管理システムについて説明する。このID管理システムでは、現行のIDカード(記録媒体)のID(識別情報)から転用先システムにおいても重複することのない識別コードに変換し、この識別コードを使用して転用先システムにおいて照合処理を行うことができる。
【0019】
[ID管理システム]
図1は、本発明の一実施例によるID管理システムの構成図である。本実施例のID管理システム1は、記録媒体であるIDカード50に記録された識別情報であるカードデータ550を管理する記録媒体管理システムの一例である。図1に示すように、ID管理システム1は、IDカード50に関する情報を集中的に管理するセンタ装置10と、IDカード50の照合を行うカードリーダ20と、照合結果に従って電気錠30を開閉するための電気錠コントローラ310と、を有する。このID管理システム1では、IDカード50、重複登録カード52、登録カード54が使用される。
【0020】
[IDカード]
本実施例では、識別情報を記録する記録媒体として磁気カード又はICカードなどにIDなどの識別情報を記録したIDカード50を使用する。しかし、識別情報をデジタル情報として記録し読み取ることができる媒体であれば、例えば、カード又は物品などに貼ったバーコードシール又はRFIDシールなど、任意の記録媒体を使用することができる。次に述べる重複登録カード及び登録カードに関しても同様である。
【0021】
[重複登録カード及び登録カード]
本実施例では、重複登録カード52は、基本コードの重複に関する重複リスト520などの重複に関する情報を記録し、登録カード54は、ソルト540や第1の付加コード530などの照合処理に必要なその他の情報を登録する。重複登録カード52及び登録カード54は、1枚の同じカードを使用してもよいし、それぞれに1枚又は複数のカードを使用してもよい。IDカード50、重複登録カード52、登録カード54は、センタ装置10(又はカードリーダ20)において、共通の読書装置(又は読取装置)で読み書き(又は読み取り)が可能であってもよいし、異なる装置を使ってもよい。転用先システムの読書装置又は読取装置をそのまま利用することが好ましい。尚、基本コード、重複リスト520、ソルト540、第1の付加コード530に関しては、後述のIDカードの登録処理の説明において詳述する。
【0022】
[センタ装置]
図1に示すように、センタ装置10は、入力部110、カード読書部120、表示部130、記憶部140、通信部150、制御部160を有する。センタ装置10は、記録媒体に登録された識別情報を記録媒体管理システムに登録する識別情報登録装置として機能する。センタ装置10は、PCで実現してもよいし、多様なタイプの処理装置を備えるコントローラなどの機器として実現してもよい。また、PCとコントローラがネットワーク経由で接続されるような形態で実現してもよい。
【0023】
入力部110は、ユーザから操作の指示を受け取り制御部160に渡すためのものであり、キーボードやマウス、タッチパネルなど、ユーザが操作の指示を入力できる任意の入力装置である。
【0024】
カード読書部120は、記録媒体などから識別情報などを読み書きする識別情報読書部である。カード読書部120は、IDカード50からカードデータ550を読み取り制御部160に渡す読取部と、制御部160から受け取ったソルト540や第1の付加コード530を登録カード54に書き込み、制御部160から受け取った重複リスト520を重複登録カード52に書き込む書込部と、を有する。カード読書部120は、IDカード50、登録カード54、重複登録カード52として使用する記録媒体の種類に応じて、その記録媒体から情報を読み取ることができる装置及びその記録媒体に情報を書き込むことができる装置、又は両方を備える装置を有する。本実施例では、IDカード50、登録カード54、重複登録カード52として、磁気カード又はICカードなどのカードを使用するため、カード読書部120は、これらのカードに読み書きを行うことができるカード読書装置を有する。
【0025】
尚、IDカード50を登録する際、IDカード50からカードデータ550を読み取る代わりに、登録したいカードデータ550を記述したファイルを読み込む場合は、カード読書部120は、ファイルが記録された記録媒体の読取装置を介してカードデータ550を読み取り制御部160に渡してもよい。
【0026】
表示部130は、制御部160からの処理結果などを表示するためのものであり、例えば、多様なタイプのディスプレイを使用することができる。また、処理結果は、プリンタ(図示せず)などの他の出力装置に出力してもよいし、通信を介してカードリーダ20などに送信してもよい。
【0027】
記憶部140は、各種プログラム及び各種データを記憶することができ、例えばRAMまたはROM、EPROMなどの半導体メモリ、ハードディスクなどの磁気記録媒体、CD−ROM、DVD−R/Wなどの光記録媒体などを用いて構成することができる。記憶部140には、識別コードリスト510、重複リスト520、第1の付加コード530、ソルト540が記憶されている。
【0028】
識別コードリスト510は、カード登録部170において、IDカード50から読み取ったカードデータ550とこのカードデータ550を元に生成した識別コードとを対応づけて登録したリストである。識別コードは、カードデータから算出される基本コードと基本コードを更に区別するための付加コードから構成されている。また、付加コードには、第1の付加コードと重複対策用付加コードの2種類がある。
【0029】
重複リスト520は、カード登録部170において、識別コードをカードデータ550と対応付けて識別コードリスト510に登録する際に、登録しようとしている識別コードに含まれる基本コードが登録済の識別コードの基本コードと重複する場合に、カードデータ550と、識別コードを生成するために基本コードに付加する重複対策用付加コードと、を対応づけて登録したリストである。
【0030】
第1の付加コード530は、カード登録部170において識別コードをカードデータ550と対応付けて識別コードリスト510に登録する際に、登録済の識別コードの基本コードが重複しない場合に、識別コードを生成するために基本コードに付加するデータである。
【0031】
ソルト540は、セキュリティ強化のため使用するデータである。本実施例では、カード登録部170の基本コード生成手段1710は、IDカード50から読み取ったカードデータ550にこのソルト540を付加したデータを使用して基本コードを生成する。以下では、ソルトを利用した処理を説明しているが、ソルトは使用しなくてもよい。
【0032】
尚、識別コードリスト510、重複リスト520、第1の付加コード530、重複対策用付加コード、ソルト540に関しては、後述のIDカードの登録処理の説明においてさらに詳しく解説する。
【0033】
通信部150は、有線又は無線の公衆回線又は専用回線、或いはその組み合わせによって構成される通信を介して、カードリーダ20や電気錠コントローラ310との通信を行なう。通信部150は、接続されている通信に応じて、例えば、LANなどの通信インターフェイスを有する。
【0034】
制御部160は、カード登録部170とカード照合部180とを有する。制御部160は、例えば、CPU、DSP、MCUなどの処理装置が、記憶部140に記憶されたカード登録部170及びカード照合部180などの各手段の処理手順を記述したプログラムを読み出し実行する。
【0035】
カード登録部170は、基本コード生成手段1710と、重複判定手段1720と、識別コード生成手段1730と、識別コード登録手段1740と、を有する。カード登録部170は、記録媒体に記録されている識別情報を記録媒体管理システムに登録するための登録部の一例である。
【0036】
基本コード生成手段1710は、IDカード50から読み取ったカードデータ550にソルト540を付加したデータに所定の演算処理を行って、識別コードの一部となる基本コードを生成する。
【0037】
重複判定手段1720は、基本コード生成手段1710が生成した基本コードと識別コードリスト510に登録済の識別コードに含まれる基本コードとが重複しているか否かを判定する。
【0038】
識別コード生成手段1730は、重複判定手段1720の判定結果に従って、基本コード生成手段1710が生成した基本コードに付加すべき一意の付加コードを付加し、識別コードを生成する。
【0039】
識別コード登録手段1740は、識別コード生成手段1730が生成した識別コードを、カードデータ550と対応付けて識別コードリスト510に登録する。
【0040】
カード照合部180は、記録媒体に記録されている識別情報から変換された識別コードを記録媒体管理システムにおいて照合するための照合部の一例である。
【0041】
尚、カード登録部170、カード照合部180、及びこれらの各手段に関しては、後述のIDカードの登録処理の説明においてさらに詳しく解説する。
【0042】
[カードリーダ20]
図1に示すように、カードリーダ20は、カード読取部220、表示部230、記憶部240、通信部250、制御部260を有する。カードリーダ20は、記録媒体の照合を行う照合装置として機能する。
【0043】
カード読取部220は、記録媒体を照合する際に、記録媒体から照合用の識別情報を読み取る照合用読取部の一例である。カード読取部220は、IDカード50を照合する際、IDカード50からカードデータ550を読み取り制御部260に渡す。また、カード読取部220は、登録カード54からソルト540や第1の付加コード530を読み取り、重複登録カード52から重複リスト520を読み取る。カードリーダ20のカード読取部220は、IDカード50、登録カード54、重複登録カード52として使用する記録媒体の種類に応じて、その記録媒体から情報を読み取ることができる装置を有する。本実施例では、IDカード50、登録カード54、重複登録カード52として、磁気カード、ICカードなどのカードを使用するため、カード読取部220は、これらのカードを読み取ることができるカード読取装置を有する。
【0044】
表示部230は、制御部260からの処理結果などを表示するためのものであり、例えば、液晶ディスプレイなどの多様なタイプのディスプレイを使用することができる。
【0045】
記憶部240は、各種プログラム及び各種データを記憶することができ、例えばRAMまたはROM、EPROMなどの半導体メモリ、磁気記録媒体、光記録媒体などを用いて構成することができる。記憶部240には、重複リスト520、第1の付加コード530、ソルト540が記憶されており、それぞれ、センタ装置10の記憶部140の重複リスト520、第1の付加コード530、ソルト540と同じ値を保持するために使用される。
【0046】
通信部250は、有線又は無線の公衆回線又は専用回線、或いはその組み合わせによって構成される通信を介して、センタ装置10と通信する。通信部250は、接続されている通信に応じて、例えば、LANなどの通信インターフェイスを有する。
【0047】
制御部260は、カード変換部270を有する。制御部260は、例えば、CPU、DSP、MCUなどの処理装置が、記憶部240に記憶されたカード変換部270などの各手段の処理手順を記述したプログラムを読み出して実行する。
【0048】
カード変換部270は、照合用基本コード生成手段2710、照合用重複判定手段2720、照合用識別コード生成手段2730を有する。カード変換部270は、IDカード50から読み取ったカードデータ550を変換して照合用識別コードを生成し、この照合用識別コードと共にセンタ装置10へ照合要求を送信する。
【0049】
照合用基本コード生成手段2710は、センタ装置10のカード登録部170の基本コード生成手段1710と同じ演算処理を行なって照合用基本コードを生成する。
【0050】
照合用重複判定手段2720は、IDカード50を照合するために読み込んだ照合用カードデータ550が記憶部240に記憶されている重複リスト520に存在するか否かを判定する。
【0051】
照合用識別コード生成手段2730は、照合用重複判定手段2720の判定に従って、記憶部240に記憶されている第1の付加コード530または重複リスト520から取り出した重複対策用付加コードを、照合用基本コード生成手段2710が生成した照合用基本コードに付加して照合用識別コードを生成する。
【0052】
尚、カード変換部270及びこれらの各手段に関しては、後述のIDカードの照合処理の説明においてさらに詳しく解説する。
【0053】
[ID管理システムの動作]
次に、図1に示された本発明の一実施例によるID管理システム1における処理動作について説明する。
【0054】
本実施例において、識別情報を記録する記録媒体としてIDカード50が使用されているが、このIDカード50には、社員番号などのIDが識別情報として記録されている。下記では、照合のために使用される識別コードの桁数が、IDカード50に記録されているIDの桁数より短い場合について説明する。ただし、本発明は、これに限定されない。
【0055】
本実施例によるID管理システム1の主な処理動作には、センタ装置10のカード登録部170におけるIDカードの登録処理と、登録処理によって作成されたID管理情報によるカードリーダ20におけるID管理情報の更新処理と、これらの登録/更新されたID管理情報を使用して実行されるカードリーダ20及びセンタ装置10におけるIDの照合処理と、が含まれる。以下、これらの三つの処理について図2〜4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0056】
[IDカードの登録処理]
図2は、本発明の一実施例によるセンタ装置におけるIDカードの登録処理のフローを示すフローチャートである。
【0057】
本実施例におけるIDカードの登録処理とは、例えば、ID管理システム1の導入時などに、センタ装置10において、カード読書部120から現行のIDカード50に記録された識別情報を読み取り、読み取った識別情報からIDを管理するためのID管理情報を作成して記憶部140などに登録する処理である。センタ装置10は、ここで作成されるID管理情報に基づいてIDの集中管理を行う。図2を参照しながら、センタ装置10におけるIDカードの登録処理について説明する。
【0058】
ステップS110において、センタ装置10のカード読書部120にIDカード50がかざされると、カード読書部120は、IDカード50からIDカード50に記録されている識別情報を読み取り、IDなどのカードデータ550を抽出する。
【0059】
ステップS120において、ステップS110で抽出されたカードデータ550の前に所定のソルト540を付加したデータを作成する。例えば、抽出したカードデータ550が“123456789”、ソルト540が“100”の場合、データ“100123456789”が作成される。ここでは、ソルトをカードデータの前に付加する場合について説明しているが、カードデータの後ろにつけてもよいし、ソルトを使用しなくてもよい。
【0060】
ステップS130において、基本コード生成手段1710は、ステップS120で作成されたデータから、所定の演算処理を行い、カードデータ550の桁数より小さい桁数の基本コードを生成する。ここでは、カードデータ550の桁数が9桁、識別コードの桁数が6桁で、識別コードよりも付加コードの桁数(例えば2桁)分少ない桁数、すなわち4桁の基本コードを生成する場合について説明する。
【0061】
例えば、所定の演算処理は、各桁の数字を加算した値に対し下位から所望の桁数(今回の例では4桁)を抽出する処理であってもよい。この場合、例えば、データ“100123456789”に対しては、各桁の数字を加算した値が“46”であるので、その下位から4桁の“0046”を抽出して基本コードが生成される。カードデータ550の各桁の数字を加算した値が、例えば“31452”であれば、その下位から4桁の“1452”が基本コードとして生成される。
【0062】
なお、ここでは、基本コード生成手段1710が使用する所定の演算処理の一例として、各桁の数字を加算した値に対し下位から所望の桁数を抽出する演算について説明したが、これ以外の演算処理でもよい。例えば、演算処理の他の例として、ソルト540とカードデータ550からハッシュ関数などの一方向性関数を用いて基本コードを生成してもよい。この場合においても、所望の桁数(例えば4桁)の基本コードが得られるようにする。必要であれば、他の演算と組み合わせて基本コードの桁数を調整してもよい。
【0063】
ステップS140〜S160において、識別コード生成手段1730は、基本コード生成手段1710がステップS130で作成した基本コードの前に付加コードを付加して、IDカード50を照合する時に使用する識別コードを生成する。ここでは、付加コードを基本コードの前に付加しているが、基本コードの後ろにつけてもよい。
ステップS140において、識別コード生成手段1730は、重複判定手段1720によって、基本コード生成手段1710がステップS130で作成した基本コードと同じ基本コードを含む識別コードが、記憶部140に記憶されている識別コードリスト510中に既に存在するか否かを調べる。同じ基本コードを含む識別コードが識別コードリスト510中に存在しない場合(ステップS140のNo)、ステップS150へ進む。一方、同じ基本コードを含む識別コードが識別コードリスト510中に既に存在する場合(ステップS140のYes)、ステップS160へ進む。識別コード及び識別コードリスト510については、以下のステップS150〜S160の処理の説明の中で詳細に説明する。
【0064】
ステップS150において、同じ基本コードを含む識別コードが識別コードリスト510中に存在しない場合、識別コード生成手段1730は、基本コード生成手段1710がステップS130で生成した基本コードの前に所定の第1の付加コード530を付加して識別コードを生成する。そして、識別コード登録手段1740は、この生成された識別コードを、ステップS110で抽出されたカードデータ550と対応付けて識別コードリスト510に追加し、処理を終了する。
【0065】
ここで、第1の付加コード530とは、同じ基本コードを含む識別コードの中で最初に識別コードリスト510に登録される識別コードであることを示す付加コードである。例えば、所定の第1の付加コード530が“00”で、基本コード生成手段1710が生成した基本コードが“0046”である場合、基本コード“0046”の前に付加コード“00”を付加して識別コード“000046”が生成される。こうすることによって、この第1の付加コード530を含む識別コードは、識別コードリスト510に登録される時点において、識別コードリスト510中に重複する基本コードを持つ他の識別コードが存在しなかったことを示すことができる。
【0066】
ステップS160において、同じ基本コードを含む識別コードが識別コードリスト510中に既に存在する場合、識別コード生成手段1730は、基本コード生成手段1710がステップS130で作成した基本コードの前に未使用の付加コードを付加して識別コードを生成する。この生成された識別コードを、識別コード登録手段1740は、ステップS110で抽出されたカードデータ550と対応付けて識別コードリスト510に追加する。
【0067】
ここで、未使用の付加コードとは、識別コードリスト510に既に登録されている同じ基本コードを含む識別コードの付加コードの何れとも一致しない付加コードである。例えば、識別コードリスト510中の同じ基本コード(上記の例では、“0046”)を持つ識別コードに対して使用されていない未使用の付加コード(例えば、“01”)を付加コード決定手段(図示せず)によって求める。識別コード生成手段1730は、この未使用の付加コードを重複対策用付加コードとして基本コードの前に付加して、識別コード(例えば、“010046”)を生成する。
【0068】
この重複対策用付加コードは、上記のステップS150において付加される第1の付加コード530とは異なることに留意されたい。したがって、この第1の付加コード530と異なる重複対策用付加コードが付加された識別コードは、同じ基本コードを含む識別コードの中で2番目以降に識別コードリスト510に登録された識別コードであることを示す。すなわち、識別コードが上記の第1の付加コード530と異なる付加コードを含む場合、識別コードリスト510中に同じ基本コードを含む識別コードが他にも存在することが分かる。
【0069】
また、識別コードリスト510に既に登録された同じ基本コードを含む識別コードの何れの付加コードとも異なる未使用の付加コードを求め、重複対策用付加コードとして使用する。したがって、この重複対策用付加コードを付加して作成される識別コードは、他の識別コードと重複しない。すなわち、識別コードは、カードデータ550に対して一意的に決定される。
【0070】
図6は、本発明の一実施例による識別コードリスト510を示す図である。識別コードリスト510は、IDカード50上に記録されているカードデータ550と照合で利用する識別コードとを対応付ける。識別コードリスト510の各行には、ステップS110においてIDカード50から読み取られ抽出されたカードデータ550と、識別コード生成手段1730がステップS130〜S160でこのカードデータ550とソルト540から算出した基本コードの前に付加コードを付加して生成した識別コードと、が対応付けられて記憶されている。ここでは、固定の桁数のカードデータ550と識別コードとが表形式で対応付けられて記憶されているが、カードデータ550と識別コードとを対応付けることができれば、どのような形式でもよい。
【0071】
また、例えば、IDカード50が、暗証番号などの認証に使用する認証データを有する場合、この認証データを識別コードと共にカードデータ550と対応付けて識別コードリスト510に登録してもよい。
【0072】
ステップS170において、識別コード登録手段1740は、ステップS160で付加した重複対策用付加コードを、カードデータ550と対応付けて重複リスト520に追加し、処理を終了する。
【0073】
図7は、本発明の一実施例による重複リスト520を示す図である。重複リスト520は、ステップS140において、重複判定手段1720が、登録しようとする識別コードに含まれる基本コードと重複する基本コードを含む識別コードが既に識別コードリスト510中に存在すると判定された場合、その識別コードを登録するためのものである。すなわち、識別コードリスト510中で同じ基本コードを含む識別コードのうち2番目以降に登録されたものが登録される。図7の重複リスト520の各行には、ステップS110においてIDカード50から読み取り抽出されたカードデータ550と、識別コード生成手段1730がステップS160でこのカードデータ550とソルト540から識別コードを生成するのに付加した重複対策用付加コードと、が対応付けられて記憶されている。識別コードリスト510と同様に、重複リスト520は、カードデータ550と重複対策用付加コードとを対応付けられるものであればいかなる形式でもよい。
【0074】
識別コードリスト510及び重複リスト520について、具体的な例を挙げて説明する。例えば、ソルト540が“100”で、図6に示すように、カードデータ“123456789”に対して、基本コード“0046”の前に所定の第1の付加コード530、例えば“00”を付加して生成された識別コード“000046”が、識別コードリスト510の1行目に既に登録されているとする。
【0075】
次に、カードデータ“123454321”を登録しようとするとき、ステップS130において識別コード生成手段1730がソルト“100”とカードデータ“123454321”を使って所定の演算処理を行った結果、基本コード“0026”が算出されたとする。この時点では、識別コードリスト510中に同じ基本コード“0026”を含む識別コードが存在しないため、ステップS140において、重複判定手段1720は、識別コードリスト510中に重複する基本コードを含む識別コードが存在しないと判定する(ステップS140のNo)。したがって、識別コード生成手段1730は、ステップS150において、上記の1行目の識別コードと同じ第1の付加コード530、すなわち“00”を基本コードの前に付加して、識別コード“000026”を生成する。そして、図6に示すように、この識別コード“000026”をカードデータ“123454321”と対応付けて識別コードリスト510の2行目に登録する。
【0076】
さらに、カードデータ“234567891”を登録するため、ステップS130において識別コード生成手段1730がソルト“100”とカードデータ“234567891”を使って所定の演算処理を行った結果、基本コード“0046”が算出されたとする。この場合、識別コードリスト510の1行目に既に同じ基本コード“0046”を含む識別コードが存在するため、ステップS140において、重複判定手段1720は、識別コードリスト510中に重複する基本コードを含む識別コードが存在すると判定する(ステップS140のYes)。したがって、識別コード生成手段1730は、ステップS160において、未使用の付加コードを重複対策用の付加コードを基本コードの前に付加して、識別コードを生成する。この場合、1行目の識別コードの付加コード“00”以外の付加コード、例えば“01”を重複対策用の付加コードとして付加して識別コード“010046”を生成する。そして、図6に示すように、生成した識別コード“010046”をカードデータ“234567891”と対応付けて識別コードリスト510の3行目に登録する。同時に、例えば図7に示すように、ここで付加した重複対策用の付加コード“01”をカードデータ“234567891”と対応付けて、重複リスト520の1行目に登録する。
【0077】
図8は、本発明の他の実施例による重複リスト520’を示す図である。図7の重複リスト520と同様に、ステップS140において、重複判定手段1720によって重複する基本コードを含む識別コードが識別コードリスト510中に既に存在すると判定された識別コードを登録する。この重複リスト520’の各行には、ステップS110においてIDカード50から読み取り抽出されたカードデータ550と、識別コード生成手段1730がステップS160でこのカードデータ550とソルト540から生成した識別コードと、が対応付けられて記憶されている。図7の重複リスト520と同様に、この重複リスト520’も、カードデータ550と識別コードとを対応付けられるものであればいかなる形式でもよい。
【0078】
このように、ステップS140において、重複判定手段1720が識別コードリスト510中の他の識別コードの基本コードと重複すると判定した識別コードについてのみ重複リスト520に登録するので、重複リスト520のサイズは、識別コードリスト510に比べて非常に小さくなる。特に、図7の形式の重複リスト520を使用した場合、カードデータ550に対応する重複対策用の付加コードのみ登録するので、重複リスト520のサイズはさらに小さくなる。したがって、IDカードやカードリーダの記憶部などの記憶容量の限られた記録媒体に容易に記憶することができる。また、図8の形式の重複リスト520’を使用した場合は、カードデータ550に対応する識別コードが登録されているので、IDカード50の照合を行う際、ソルト540とカードデータ550から基本コードを計算し直す必要がない。
【0079】
全ての登録すべきIDカード50について、ステップS110〜S170の処理を実行し終えたら、カード読書部120は、重複登録カード52などのカードリーダ20が読み取り可能な記録媒体に重複リスト520などを書き込んでもよい。この場合、カードリーダ20ごとに、利用されるIDカードに関して重複リストを作成し、重複登録カード52に書き込んでもよい。これによって、さらに重複リストのサイズは小さくなる。
【0080】
尚、上記の登録処理は、IDカード50のカードデータ550をカード読書部120から読み取る場合について記述しているが、IDカード50のカードデータ550を記述したファイルを用意し、そのファイルから読み取ったカードデータ550について、上記と同様に登録処理を行なってもよい。
【0081】
[カードリーダの記憶部の更新処理]
カードリーダ20の記憶部240の更新処理とは、上記のセンタ装置10におけるIDカードの登録処理によって作成された重複リスト520や使用されたソルト540及び第1の付加コード530などのID管理情報によって、カードリーダ20の記憶部240に記憶されているID管理情報を更新する処理である。
【0082】
カードリーダ20の記憶部240に記憶されたソルト540及び第1の付加コード530は、センタ装置10の記憶部140に記憶されたソルト540及び第1の付加コード530と同じ値にしておく必要がある。そのため、例えば、予め、ソルト540及び第1の付加コード530が記録された登録カード54を作成し、その登録カード54をカードリーダ20のカード読取部220から読み取らせ、カードリーダ20の記憶部240に記憶されたソルト540及び第1の付加コード530を更新してもよい。
【0083】
また、センタ装置10において重複リスト520が更新されたときは、この重複リスト520を記録した重複登録カード52を作成し、この重複登録カード52をカードリーダ20のカード読取部220から読み取らせ、カードリーダ20の記憶部240の重複リスト520を更新してもよい。
【0084】
なお、ここでは、ソルト540及び第1の付加コード530、又は更新された重複リスト520などのID管理情報を記録するため、登録カード54及び重複登録カード52を記録媒体として使用しているが、カードリーダ20が読み取り可能であればメモリスティックなどの他の記録媒体でもよい。また、記録媒体を介してソルト540及び第1の付加コード530、更新された重複リスト520などのID管理情報を運ぶ以外に、例えば、センタ装置10とカードリーダ20との問の通信を介して、これらのデータを転送してもよい。
【0085】
[IDカードの照合処理]
本実施例におけるIDカードの照合処理とは、カードリーダ20のカード読取部220にかざされたIDカード50が、ID管理システム1に登録されているか否か(すなわち、認証されるか否か)を照合する処理である。ここで、IDカード50のIDを管理するための識別コードリスト510などのID管理情報は、ID管理システム1のセンタ装置10において上記の登録処理が行われ、集中管理されている。また、カードリーダ20に記憶された重複リスト520、第1の付加コード530、ソルト540などのID管理情報は、カードリーダ20の記憶部240の更新処理によって、センタ装置10の記憶部140のID管理情報との同期が取れている。
【0086】
[カードリーダにおけるIDカードの照合処理]
図3は、本発明の一実施例によるカードリーダにおけるIDカードの照合処理のフローを示すフローチャートである。本実施例のカードリーダ20におけるIDカードの照合処理では、IDカード50から読み取ったカードデータ550から照合用の識別コードを生成し、この生成した照合用の識別コードをIDカードの認証要求と共にセンタ装置10に送ることによって、IDカード50が認証可能か否かを問い合わせる。以下、図3を参照しながらカードリーダ20におけるIDカードの照合処理について説明する。
【0087】
ステップS210において、カードリーダ20のカード読取装置にIDカード50がかざされると、カード読取部220は、IDカード50からIDカード50に記録されている識別情報を読み取り、IDなどのカードデータ550を抽出する。
【0088】
ステップS220において、カード変換部270は、ステップS210で抽出されたカードデータ550の前に所定のソルト540を付加したデータを作成する。この処理は、上記のIDカードの登録処理のステップS120と同様に行われる。
【0089】
ステップS230において、照合用基本コード生成手段2710は、ステップS220で作成されたデータから、所定の演算処理を行い、カードデータ550の桁数より小さい桁数の基本コードを生成する。ここで、照合用基本コード生成手段2710は、上記のIDカードの登録処理のステップS130の基本コード生成手段1710と同様の処理を行って基本コードを生成する。
【0090】
ステップS240において、照合用識別コード生成手段2730は、照合用重複判定手段2720によって、ステップS210で抽出されたカードデータ550が、カードリーダ20の記憶部240に記憶されている重複リスト520中に存在するか否かを調べる。この重複リスト520は、上記のIDカードの登録処理において作成され、上記のカードリーダの記憶部の更新処理によってカードリーダ20の記憶部240に記憶されている。ここでは、図7に示すカードデータ550に重複対策用付加コードが対応付けられた形式の重複リスト520を使用する場合について説明する。カードデータ550が重複リスト520中に存在しない場合(ステップS240のNo)、ステップS250へ進む。一方、カードデータ550が重複リスト520中に存在する場合(ステップS240のYes)、ステップS260へ進む。
【0091】
ステップS250において、ステップS210で抽出されたカードデータ550が、カードリーダ20の記憶部240に記憶されている重複リスト520中に存在しない場合、照合用識別コード生成手段2730は、照合用基本コード生成手段2710がステップS230で生成した基本コードの前に所定の第1の付加コード530を付加して識別コードを生成する。
【0092】
ここで、所定の第1の付加コード530とは、上記のIDカードの登録処理のステップS150において付加される第1の付加コード530と同じものを使用する。この第1の付加コード530は、上記のカードリーダ20の記憶部240の更新処理によって、登録時に使用されたものがカードリーダ20の記憶部240に記憶されている。例えば、第1の付加コード530が“00”で、ステップS230でソルト“100”とカードデータ“123456789”から算出された基本コードが“0046”の場合、カードデータ“123456789”が重複リスト520に存在しなければ、基本コード“0046”の前に第1の付加コード530の“00”を付加して識別コード“000046”が生成される。
【0093】
ステップS260において、ステップS210で抽出されたカードデータ550が、カードリーダ20の記憶部240に記憶されている重複リスト520中に存在する場合、照合用識別コード生成手段2730は、重複リスト520からカードデータ550に対応する重複対策用付加コードを取り出し、照合用基本コード生成手段2710がステップS230で作成した基本コードの前にこの重複対策用付加コードを付加して識別コードを生成する。例えば、ステップS230でソルト“100”とカードデータ“234567891”から基本コード“0046”が算出され、図7に示すようにカードデータ“234567891”が重複リスト520の1行目に登録されている場合、対応する重複対策用付加コード“01”を基本コード“0046”の前に付加し、識別コードとして“010046”を生成する。
【0094】
ステップS270において、カード変換部270は、照合用識別コード生成手段2730がステップS240〜S260において生成した識別コードと共にIDカードの認証要求をセンタ装置10に送信する。
【0095】
ステップS280において、制御部260は、センタ装置10からIDカードの認証結果を受信し、その結果をディスプレイなどの表示部230に表示して処理を終了する。尚、LEDなどのランプ、ブザー、スピーカーを介した音声などで認証結果を知らせてもよい。
【0096】
尚、上記では、ステップS210でカードデータ550を抽出した後、ステップS220でカードデータ550にソルト540を付加したデータを作成し、ステップS230で所定の演算処理により基本コードを生成している。その後、ステップS240でカードデータ550が重複リスト520に存在するか否かを判定し、判定結果に応じてステップS250又はS260で識別コードを生成しているが、必ずしもこの順序に限定するものではない。例えば、次に説明する図4のフローチャートと同様に、ステップS310でカードデータ550を抽出した後、ステップS320でカードデータ550が重複リスト520に存在するか否かを判定してもよい。その後、カードデータ550にソルト540を付加したデータを作成して所定の演算処理により基本コードを生成する処理を行い、図3のステップS250又はS260と同様に、上記判定結果に応じた付加コード(所定の第1の付加コード530もしくは重複対策用の付加コード)を基本コードに付加して識別コードを生成するようにしてもよい。
【0097】
次に、図3及び図4を参照しながら、図8に示すカードデータ550に識別コードが対応付けられた形式の重複リスト520’を使用したカードリーダ20におけるIDカードの照合処理の他の実施例について説明する。
【0098】
重複リスト520’を使用するとき、図3のステップS260又は図4のステップS340において、ステップS210又はステップS310で抽出されたカードデータ550が、カードリーダ20の記憶部240に記憶されている重複リスト520’中に存在する場合、照合用識別コード生成手段2730は、重複リスト520から重複対策用付加コードを読み出して基本コードに付加して識別コードとして生成する代わりに、重複リスト520’からカードデータ550に対応する識別コードを取り出す。この取り出した識別コードを、ステップS270又はステップS350で用いる。例えば、図8に示すように、カードデータ“234567891”が重複リスト520’の1行目に登録されている場合、対応する識別コード“010046”を取り出して認証要求を行う。
【0099】
[センタ装置におけるIDカードの照合処理]
図5は、本発明の一実施例によるセンタ装置におけるIDカードの照合処理のフローを示すフローチャートである。
【0100】
本実施例のセンタ装置10におけるIDカードの照合処理では、カード照合部180によって、カードリーダ20から識別コードと共に認証要求を受信し、受信した識別コードがセンタ装置10の識別コードリスト510に登録されているか否かを照合する。以下、図5を参照しながら、センタ装置10におけるIDカードの照合処理について説明する。
【0101】
ステップS410において、センタ装置10のカード照合部180は、カードリーダ20から識別コードと共に認証要求を受信する。
【0102】
ステップS420において、カード照合部180は、ステップS410で受信した識別コードが、センタ装置10の記憶部140に記憶されている識別コードリスト510中に存在するか否かを照合し、その照合結果をカードリーダ20に送信する。尚、識別コードリスト510で識別コードを照合する際、例えば、識別コードリスト510中に認証のための認証データなどが登録されている場合は、この認証データを使用してより高度な認証処理を行ってもよい。
【0103】
ステップS430において、ステップS410で受信した識別コードが識別コードリスト510中に存在しない場合(ステップS430のNo)、カード照合部180は、処理を終了する。一方、ステップS410で受信した識別コードが識別コードリスト510中に存在する場合(ステップS430のYes)、センタ装置10のカード照合部180は、ステップS440に進む。
【0104】
ステップS440において、カード照合部180は、IDカード50をID管理システム1に登録されているカードとして認証する。したがって、例えば、電気錠30の解錠を行うように電気錠コントローラ310に要求するなどのIDカード50が認証された場合の処理を行い、処理を終了する。
【0105】
上記では、カードリーダ20の照合処理において、センタ装置10から認証結果を受信すると、表示部230にその結果を表示し、センタ装置10の照合部が電気錠コントローラ310経由で対応する電気錠30を解錠する例を示した。しかし、認証結果を表示せずに電気錠30を解錠するだけでもよいし、カードリーダ20から電気錠コントローラ310に電気錠30を解錠するように要求してもよい。
【0106】
また、上記の実施例では、カード照合部180は、センタ装置10内にあるが、本発明はこれに限定されない。例えば、カード照合部180は、他の装置内に存在してもよいし、カードリーダ20内に存在してもよい。さらに、センタ装置10とカードリーダ20とが一体化され、同じ装置内にカード登録部170、カード変換部270、カード照合部180が存在してもよく、様々な形態をとり得る。
【0107】
このように、本実施例におけるID管理システム1では、転用先の入退室管理システムを拡張して現行のIDカード50を転用先システムでも利用できるようにしている。例えば、転用先システムを構成するセンタ装置10においてIDカード50を登録する際、IDカード50のカードデータ550からカード照合部180で利用する識別コードに変換して登録するカード登録部170を追加している。さらに、カードリーダ20においてIDカード50を照合する際、IDカード50のカードデータ550からカード照合部180で利用する識別コードに変換してカード照合部180に送信するカード変換部270を追加している。こうして、センタ装置10のカード照合部180において、カード変換部270で生成された識別コードを使用して、カード登録部170が登録した識別コードと照合することによって、転用先システムにおいて現行のIDカードの照合処理が行えるようにしている。したがって、転用先システムのハードウェア及びソフトウェアの構成をほとんど変更せずに利用することができる。
【0108】
センタ装置10のカード照合部180は、追加してもよいが、例えば、既存の入退室管理システムの照合部であってもよい。この場合、既存の入退室管理システムの照合部を、カード変換部270から受け取った識別コードを使用してカード登録部170が登録した識別コードと照合できるように変更してもよい。こうすることによって、転用先の入退室管理システムのハードウェア及びソフトウェアの構成をほとんど変更することなく利用することができる。或いは、既存の入退室管理システムの照合部がカード変換部270から受け取った識別コードを使用してカード登録部170が登録した識別コードと照合ができるように、この照合部との互換性を取るためのインターフェイスを追加してもよい。例えば、このインターフェイスによって、センタ装置10のカード登録部170において、既存の入退室管理システムの照合部が照合のため使用する登録リストを作成し、この照合部が使用する記憶部に登録してもよい。そして、カードリーダ20のカード変換部270において、既存の入退室管理システムの照合部が照合のため使用する識別コードを、この照合部に送信するようにしてもよい。さらに、インターフェイスによって、既存の入退室管理システムの照合部がカードリーダ20のカード変換部270から識別コードを受け取ることができるようにしてもよい。こうすることによって、転用先の入退室管理システムを変更せずに、現行のIDカードを転用することができる。
【0109】
本発明によれば、現行のシステムにおいて利用されているIDカードを、IDカードの識別情報の形式に制約されずに、転用先のシステムにおいても利用することができる。特に、転用先システムで利用するIDの桁数が現行のIDカードのIDの桁数より短い場合においても、転用先のシステムにおいてユーザ登録時に独自で重複のないIDを発行することができる。
【0110】
また、本発明によれば、識別コードリスト中の他の識別コードの基本コードと重複する識別コードに関してのみ重複リストに登録するので、重複リストを記憶するための容量は非常に小さい。また、カードリーダごとに重複リストを登録することも可能である。したがって、IDカードやカードリーダの記憶部などの記憶容量の限られた記録媒体でも容易に記憶することができる。
【0111】
本実施例では、現行のIDカードのIDの桁数より小さい桁数のIDに変換する場合について説明したが、同じ桁数やより大きい桁数のIDに変換してもよい。また、現行のIDカードに記録されているIDのデータ形式が、転用先システムのIDと全く異なってもよい。
【0112】
本実施例では、現行のIDカードを入退室管理システムに転用する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、一意性を保証すべき識別情報などの情報に基づいて何らかの処理を行うためこの情報を管理するシステムであれば、いかなるシステムにおいても適用できる。例えば、IDカードを利用したオフィス内のPCログオン認証やプリンターの利用管理、社員食堂の清算、社員の就業管理などを行うシステムにおいて適用することができる。また、例えば、バーコードやRFIDなどによって識別情報を記録したシールなどを物品などに貼り、それらの流通管理、在庫管理、販売管理などを行うシステムにおいても適用可能である。また、RFIDを搭載した車両などの通行管理システム、課金システムなど、様々なシステムに適用できる。
【0113】
さらに、本発明は、システムを新規導入する場合だけでなく、稼働中の他のシステムに転用する場合にも適用可能である。転用先システムの照合部に関しては、独立したシステムでもよいが、転用先システムの一部の機能又はその機能の一部のプログラムモジュールなど、どのような形態でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の一実施例によるID管理システムの構成図である。
【図2】本発明の一実施例によるセンタ装置におけるIDカードの登録処理のフローを示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施例によるカードリーダにおけるIDカードの照合処理のフローを示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施例によるカードリーダにおけるIDカードの照合処理のフローを示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施例によるセンタ装置におけるIDカードの照合処理のフローを示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施例による識別コードリストを示す図である。
【図7】本発明の一実施例による重複リストを示す図である。
【図8】本発明の他の実施例による重複リストを示す図である。
【符号の説明】
【0115】
1 ID管理システム
10 センタ装置
110 入力部
120 カード読書部
130 表示部
140 記憶部
150 通信部
160 制御部
170 カード登録部
1710 基本コード生成手段
1720 重複判定手段
1730 識別コード生成手段
1740 識別コード登録手段
180 カード照合部
20 カードリーダ
220 カード読取部
230 表示部
240 記憶部
250 通信部
260 制御部
270 カード変換部
2710 照合用基本コード生成手段
2720 照合用重複判定手段
2730 照合用識別コード生成手段
30 電気錠
310 電気錠コントローラ
50 IDカード
52 重複登録カード
54 登録カード
510 識別コードリスト
520 重複リスト
530 第1の付加コード
540 ソルト
550 カードデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体から識別情報を読み取る読取部と、前記識別情報に所定の演算を行って基本コードを生成する基本コード生成部と、前記基本コードに付加コードを含めた識別コードを記憶部に登録する登録部とを具備する記録媒体管理システムであって、
前記登録部は、
記録媒体の登録の際に、前記読取部が読み取った識別情報から基本コード生成部が生成した基本コードが前記記憶部に登録済の識別コードに含まれる基本コードと重複するか否かを判定する重複判定手段と、
前記重複判定手段にて重複していないと判定すると第1の付加コードを当該基本コードに付加した識別コードを生成し、前記重複判定手段にて重複していると判定すると前記第1の付加コードと異なる重複対策用付加コードを当該基本コードに付加して識別コードを生成する識別コード生成手段と、
前記識別コード生成手段にて生成された識別コードを前記記憶部に登録する登録手段と、を具備することを特徴とした記録媒体管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の記録媒体管理システムにおいて、
更に、記録媒体を照合する際に照合用識別コードを生成する照合用識別コード生成部と、照合用識別コードと前記記憶部に記憶されている識別コードを照合する照合部と、照合結果を出力する出力部とを有し、
前記登録手段は、前記重複判定手段にて重複していると判定された当該識別情報と当該重複対策用付加コードとを対応付けた重複リストを前記記憶部に記憶させ、
前記照合用識別コード生成部は、
前記読取部が読み取った識別情報が前記重複リストに含まれているか否かを判定する照合用重複判定手段と、
前記照合用重複判定手段にて含まれていると判定すれば、前記重複リストを参照し当該識別情報に合致した重複対策用付加コードを基本コードに付加して照合用識別コードとし、前記照合用重複判定手段にて含まれていないと判定すれば、前記第1の付加コードを基本コードに付加して照合用識別コードとする照合用識別コード生成手段とを有する記録媒体管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の記録媒体管理システムにおいて、
更に、記録媒体を照合する際に照合用識別コードを生成する照合用識別コード生成部と、照合用識別コードと前記記憶部に記憶されている識別コードを照合する照合部と、照合結果を出力する出力部とを有し、
前記登録手段は、前記重複判定手段にて重複していると判定された当該識別情報と当該識別コードとを対応付けた重複リストを前記記憶部に記憶させ、
前記照合用識別コード生成部は、
前記読取部が読み取った識別情報が前記重複リストに含まれているか否かを判定する照合用重複判定手段と、
前記照合用重複判定手段にて含まれていると判定すれば、前記重複リストを参照し当該識別情報に合致した識別コードを照合用識別コードとし、前記照合用重複判定手段にて含まれていないと判定すれば、前記第1の付加コードを基本コードに付加して照合用識別コードとする照合用識別コード生成手段とを有する記録媒体管理システム。
【請求項4】
前記所定の演算は、前記識別情報の桁数より小さい桁数の前記基本コードを生成する請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の記録媒体管理システム。
【請求項5】
前記所定の演算は、一方向性関数を含む請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の記録媒体管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−72844(P2010−72844A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238305(P2008−238305)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】