説明

誘導加熱調理器

【課題】複数の加熱部で同時に調理するとき、所定の定格電力を超えないように制御して、使用者に対し不便さを与えないようにした誘導加熱調理器を提供する。
【解決手段】本体の上面に設けられたトッププレートと、このトッププレート上に載せられた金属製鍋を加熱する複数の加熱コイルと、この加熱コイルに電力を供給するインバータと、加熱手段を有するグリル部と、このグリル部へ電力を供給するグリル電力供給部と、を有する誘導加熱調理器において、グリル部の加熱手段への出力要求が、複数の加熱コイルのいずれかに対する出力要求よりも遅い場合、先に電力が供給された加熱コイルとその設定された電力に応じてグリル部の加熱手段へ電力を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の加熱部を備えた誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、誘導加熱調理器の需要が伸びている。誘導加熱調理器の誘導加熱部は、熱効率が高いこと、ガスコンロ並み以上の火力が得られること、炎を出さず、かつ消し忘れタイマー等の機能があり安全であること、天面がフラットで清掃が容易であること等が評価され、ガステーブルからの代換えとして、魚焼き等を行うグリル部と鍋等の加熱を行う2口以上の加熱コイルによる誘導加熱部を組み合わせた誘導加熱調理器の需要が伸びている。
【0003】
このような従来の誘導加熱調理器では、それぞれの加熱部(グリル部と誘導加熱部)はできるだけ高出力が安定して得られることが調理性能上望ましいが、一般家庭の電源事情(電源容量,配線容量,コンセントの種類等)の制約や、法律上の制約から、機器全体の最大の総合電力が所定の値に収まる範囲の製品としている。このため、トッププレート手前側の左右に2つ設けられた加熱コイルによる誘導加熱部と、トッププレート中央後側に設けられたラジエントヒータ(電熱ヒータ)による加熱部と、本体正面に引き出し自在に設けられたグリル部を加熱する電熱ヒータによる加熱部を備え、ラジエントヒータまたはグリル部の電熱ヒータによる加熱部が動作中の場合、機器の合計電力−電熱ヒータ加熱電力=誘導加熱部の出力(電力)として、誘導加熱部に割り当て可能な出力を求め、機器の総合電力が所定の値に収まるようにし、機器の総合電力の所定範囲内で誘導加熱部が許容される消費電力の範囲内で出力設定することを可能にしている。したがって、誘導加熱部はその許容範囲に対して0〜100%の範囲で広範囲に出力設定をすることが可能であり、加熱調理に際しては、高出力で短時間に調理することができるとともに、誘導加熱の特徴である熱交換効率の高い出力による調理の仕上がりが実現できるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−347026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術において、使用者が複数の加熱部を使い複数の調理を行おうとした場合、その電力の組み合わせによっては、グリル部が使用できないことがあった。
【0006】
このためトッププレート部の加熱部の調理が終わってからグリル部で、例えば魚焼き等を行うと、全ての調理が終わるまで長時間掛かってしまい、先に出来た料理が冷えてしまい食味を著しく損なってしまう。
【0007】
忙しい朝は、グリル部での魚焼きを含めて全ての加熱部を使用して一度に食卓に料理を運び、又、お弁当を作るなど、使用率が非常に高いものである。更には、夕食では家族そろって食卓を囲むためにも多くの料理が一度にできる必要がある。このように、複数の加熱部を有していながら使用できない加熱部があることは使用者に対して調理時に著しい不便さを与え、苦痛を与えてしまうという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、加熱コイルを有する複数の誘導加熱部とシーズヒータのような発熱体を加熱手段として有するグリル部とを備えた誘導加熱調理器において、多くの加熱部を並行して使用できる誘導加熱調理器を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために本発明の誘導加熱調理器は、本体の上面に設けられたトッププレートと、このトッププレート上に載せられた金属製鍋を加熱する複数の加熱コイルと、この加熱コイルに電力を供給するインバータと、加熱手段を有するグリル部と、このグリル部へ電力を供給するグリル電力供給部と、を有する誘導加熱調理器において、前記グリル部の加熱手段への出力要求が、前記複数の加熱コイルのいずれかに対する出力要求よりも遅い場合、先に電力が供給された加熱コイルとその設定された電力に応じて前記グリル部の加熱手段へ電力を供給するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の誘導加熱部とグリル部とを備えた誘導加熱調理器において、多くの加熱部を並行して使用でき、使用者は調理時に不便さを感じることなく快適に調理することが出来、非常に使い勝手が良いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例を示す誘導加熱調理器をシステムキッチンに組み込んだ状態の外観斜視図である。図1において、誘導加熱調理器の本体1はトッププレート2の下に設けられている。このトッププレート2は、耐熱性の高い結晶化ガラスからなる。トッププレート2に被加熱物である調理用の鍋等の調理器具が載置される。
【0012】
トッププレート枠3は、トッププレート2の周囲の端部を覆っている。トッププレート2との間にはシール材(図示せず)が充填していてトッププレート2の周りに固着している。シール材によりトッププレート2の上に液体がこぼれても、本体1内部に水が漏れない水密構造を持つ。
【0013】
トッププレート枠3は本体1にも固定されている。本体1をシステムキッチン10に取り付ける際は、トッププレート枠3で本体1を吊り下げて設置する。
【0014】
トッププレート枠3の後枠部に開口する吸気部1aは、本体1の後部に設けられた吸排気通路と連通して、本体1内の制御部ユニット(図示せず)や加熱コイル6の冷却用の空気を吸気する。
【0015】
吸気部1aと同様に、トッププレート枠3の後枠部に開口する排気部1bは、制御部ユニット(図示せず)や加熱コイル6などを冷却した空気やグリル部5からの排煙を排気する。
【0016】
トッププレート2の上面に設けられた複数の鍋位置表示部4は、トッププレート2の下部に配置される加熱コイル6(図示せず)の真上になる位置に設けられた表示部である。
【0017】
複数の加熱コイル6は、トッププレート2の下であって本体1の上部に略水平に設けられている。トッププレート2の前面よりである手前左側に加熱コイル6aが、トッププレート2の前面よりである手前右側に加熱コイル6bが、加熱コイル6aと加熱コイル6bとの間の奥寄りであるトッププレート2の中央後側に加熱コイル6cが設けられている。トッププレート2に載置された調理用の鍋等を誘導加熱する。
【0018】
鍋位置表示部4aはトッププレート2手前左側に配置される加熱コイル6aに対応して設けられ、鍋位置表示部4bはトッププレート2手前右側に配置される加熱コイル6bに対応して設けられ、鍋位置表示部4cはトッププレート2中央後側に配置される加熱コイル6cに対応して設けられている。
【0019】
トッププレート2の手前側左右の加熱コイル6a,6bは、炒め物や揚げ物など比較的大きい出力が必要な調理用である。本実施例においては、夫々最大消費電力3.0kW の加熱出力(火力)を有している。
【0020】
また、トッププレート2の中央後側に配置された加熱コイル6cは、保温や煮込み料理、炊飯調理など、調理時の作業がそれ程必要なく、且つ手前側左右の加熱コイル6a,
6bに比べて比較的出力が弱い調理用である。本実施例においては、加熱コイル6cは、最大消費電力1.6kW の加熱出力(火力)を有している。
【0021】
本実施例では、トッププレート2の手前側左右の加熱コイル6a,6bは、直径約200
mmとし、調理用鍋でよく使用される直径200mm程度の鍋を効率よく加熱できる大きさにしている。そして、加熱コイル6a,6bの真上のトッププレート2上面に設けられた鍋位置表示部4a、4bは、加熱コイル6a,6bの直径と略同一の大きさの表示である。
【0022】
また、トッププレート2中央後側の加熱コイル6cは、直径約140mmとし、小形の調理鍋を効率よく加熱することが出来る大きさにしている。そして、加熱コイル6cの真上のトッププレート2上面に設けられた鍋位置表示部4cは加熱コイル6cの直径と略同一の大きさの表示である。
【0023】
なお、本実施例において誘導加熱調理器本体1の大きさは、本体1を組み込むシステムキッチン10のカウンタートップに設けられた取付け穴の開口部寸法に合わせてある。この開口部寸法は、JISでは幅560mm,奥行き460mmである。
【0024】
トッププレート2の大きさは、取付け穴の開口寸法に応じた幅600mm,奥行き400mm程度の大きさであり、この範囲内に直径の大きさが200mmの加熱コイル6a,6bを手前側左右に間隔を100mm空けて配置し、中央後側に直径140mmの加熱コイル6cを配置した。
【0025】
グリル部5は、加熱コイル6の下方で本体1内の左側または右側(本実施例では左側)に設けている。このグリル部5は矩形状の箱体であり、中に入れられた被加熱物を加熱する加熱手段を有する。本実施例において、この加熱手段は1.2kW の加熱出力を有するシーズヒータ(図示せず)である。更にグリル部5は、取っ手5bを備えた扉5aと、この扉5aと供に本体1の前面から出し入れ可能な受皿(図示せず)と、を備える。
【0026】
受皿には被加熱物を載せる網(図示せず)を置いて加熱調理を行う。グリル部5は、この網の上に魚やピザ,グラタン等の被加熱物である調理物を載せてグリル調理する。グリル部5で調理する場合、匂いや煤煙がグリル部5内で発生する。それらが排気部1bから室内に排気され室内の空気を汚すことを防ぐため、グリル部5からの排気を触媒により浄化する仕組みを備えても良い。触媒は加熱を要するため、0.3kW のヒータ(図示せず)が組み込まれている。したがって、触媒を備えたグリル部5で調理を行う場合は、合計
1.5kW の電力消費となる。
【0027】
パネル操作部7は、グリル部5の横に位置である本体1の右側前面に設けている。図2に示すように誘導加熱調理器の電源の入り切りを行う電源切/入スイッチ7aと、グリル部5の加熱手段であるシーズヒータの入り切りを行う切/スタートキー7bで構成されている。パネル表示部7cは、パネル操作部7で操作した内容を使用者にわかり易く表示する。
【0028】
上面操作部8は、トッププレート2の手前に設けられたプレート枠3の前枠部に設けられている。本実施例ではプレート枠3の前枠部に設けてあるが、トッププレート2に設けるようにしてもよい。
【0029】
図3に示された上面操作部8は、加熱コイル6a,6b,6cの夫々に対応した上面操作部8a,8b,8cからなる。上面操作部8a,8b,8cには図4に示すように、夫々の加熱コイル6a,6b,6cの通電をオンオフするときに押す切/スタートキー401と、夫々の加熱コイル6a,6b,6cの出力(出力)やタイマー値、自動調理を設定
(選択)するときに押す設定キー402と、夫々の加熱コイル6a,6b,6cのタイマー時間を設定する時に押すタイマーキー403と、夫々の加熱コイル6a,6b,6cの自動調理を設定する時に押すメニューキー404が設けられている。
【0030】
設定キー402は、図5に示すように、夫々の加熱コイル6a,6b,6cに対し段階的な出力を設定することが出来る。図5において、加熱コイル6a,6bは最大出力が
3.0kW となっているが、同じ加熱コイル6a,6bを用いても、加熱対象の材質により最大出力が変わる場合、例えば磁性材料からなる調理鍋と非磁性材料からなる調理鍋とで最大出力が変わる場合は、それぞれの最大出力に応じて段階的な出力を設定するようにしてもよい。
【0031】
また、図示はしないが、タイマーキー403を押すと、タイマー制御の設定要求が制御部713に発せられ、設定時間を段階的なタイマー値として設定することができる。
【0032】
また、メニューキー404を押すと、自動調理設定処理が開始する。そして、設定キー402を操作することで、図6に示す4種類の自動調理機能が基本的に設けられていて、これらが表示され、選択可能となる。
【0033】
自動調理機能は、被加熱物である調理鍋の温度を制御して行うプログラムが制御部に記憶されていて、本実施例の場合は保温,炊飯,揚げ物,湯沸しである。図6中、トッププレート2の中央後ろ側に設けられた加熱コイル6cは、設定された最大出力(1.6kW)と自動調理で求められる最大出力との関係で、保温と炊飯とが自動調理を設定可能であるが、加熱コイル6cはこの他にも煮込みの設定が可能である。また、加熱コイル6cよりも設定最大消費電力が大きい、トッププレート2の前側左右に設けられた加熱コイル6a,6bについては、それぞれ鉄やステンレスを加熱する場合には3.0kW の最大消費電力で出力させることができるので、本実施例で挙げる自動調理メニュー(保温,煮込み,炊飯,揚げ物,湯沸し)のいずれも設定最大出力が低いことからいずれの自動調理も設定可能である。
【0034】
例えば、自動調理メニューの保温を設定すると、入力された設定キー402に対応する加熱コイル6は、加熱出力がその自動調理メニューの間、最大0.5kW の出力に設定される。
【0035】
同様に他の自動調理メニューが設定された場合、炊飯では最大1.1kW 、揚げ物では最大1.8kW 、湯沸しでは最大2kW の出力に設定される。
【0036】
自動設定メニューが設定された加熱コイル6は、後記する温度検出器711により調理鍋の温度を検知して、その温度に応じて出力を調整し、設定された自動調理の制御プログラムに従い調理(加熱処理)を実行する。
【0037】
加熱コイル6cにおける煮込みの自動調理は、炊飯の自動調理に求められる最大出力よりも小さくてよい。煮込み調理は、沸騰温度まで加熱する出力が必要である。しかし、一旦被加熱物が沸騰すると、それ以降は沸騰温度を維持する出力は不要である。鍋の大きさや材質に影響されるが、鍋の中の被調理物を沸騰温度まで加熱するに要した出力よりも少ない出力で十分である。
【0038】
ここまでに自動調理と加熱コイル6との関係について述べたが、設定最大消費電力が他の加熱コイル6a,6bに比べて小さい加熱コイル6cは、トッププレート2の奥に設けられており、吸気部1aや排気部1bに対して近接した場所にある。そのため、鍋で炊飯をしようとすると必ず蓋から飛まつ(泡)が飛び散ることから、特に吸気部1aから本体内に飛まつが浸入する可能性がある。
【0039】
また、炊飯自動調理を行わないようにすると、加熱コイル6cで行う他の自動調理で保温や煮込みを設定したとしても1.1kW 未満の電力しか加熱コイル6cで拘束されず、他の加熱コイル6a,6bやグリル部5へ振り分けられる電力が多くなるため、加熱コイル6cでは自動調理による炊飯機能を設定しないようにしてもよい。
【0040】
上面表示部9は、図3に示すように、トッププレート2の手前側であって各加熱コイルの上面操作部8と対応する位置に設けられている。上面操作部8で操作した出力の設定値や、自動調理メニューの内容や、調理のタイマー時間等を、上面操作部8のそばで使用者にわかり易く表示するものである。
【0041】
なお、上面操作部8a,8b,8cと上面表示部9a,9b,9cは、設定する加熱コイル6a,6b,6cとの対応関係を分かり易くするため、加熱コイル6a,6b,6cから真直ぐ手前側のトッププレート2の辺部に直線状に並べて設けた。
【0042】
図7は、誘導加熱調理器の回路ブロック図である。図7において、誘導加熱調理器に入力する商用電源の交流701は、グリル部5の加熱手段であるシーズヒータ702と、加熱コイル6a,6b,6cの出力(電力)を制御する駆動回路であるインバータ回路703,704,705とに供給される。オンオフ回路706はグリル部5の加熱手段であるシーズヒータ702をオンオフ制御して電力を供給する。
【0043】
上面操作回路部707は上面操作部8と接続し入力された情報を信号に変えて制御部
713へ送信する。上面表示回路部708は制御部713からの表示信号を上面表示部9で表示する。パネル操作回路部709はパネル操作部7での入力を制御部713に送る信号に変える。パネル表示回路部710は制御回路713の出力をパネル表示部で表示する。
【0044】
温度検出器711は、トッププレート2の下方に設けられており、夫々の加熱コイル
6a,6b,6cで加熱される調理用鍋の温度を、トッププレート2を介して検出する。設定された自動調理メニューによる自動調理時に、この温度検出器711で検出した温度情報に基づき、加熱コイルの出力を調節して、鍋が所定の温度となるように制御する。報知部712は制御部713の出力に基づき使用者にブザー音等により報知する。
【0045】
制御部713は、マイクロコンピュータで構成された制御手段である。この制御部713は、上面操作回路部707やパネル操作回路部711の操作信号や、温度検出器711の出力信号を入力して、上面表示回路部708や、パネル表示回路部710に表示信号を出力する。グリル部5の加熱手段であるシーズヒータ702をオンオフするオンオフ回路
706や、加熱コイル6a,6b,6cの出力を複数段階に調整するインバータ回路703,704,705には制御信号を出力している。
【0046】
次に、上記説明した加熱コイル6の制御について詳細を説明する。図12は、図7に示した加熱コイル6a,6b,6c、インバータ703,704,705、の具体的回路図である。三つの加熱コイル6は共に同様であるので、一つを示して説明する。
【0047】
インバータ703について説明する。交流電源117から供給された交流を整流手段
102で直流に変換し、スイッチング素子103,105の直列体で構成するスイッチング部に接続する。スイッチング素子103,105にはそれぞれ逆並列にダイオード104,106が接続され、スイッチング素子103,105の接続点と直流電圧の基準点間に加熱コイル13と共振コンデンサ107で構成する共振回路部が接続される。また、スイッチング素子103,105にはそれぞれスナバコンデンサ108,109が接続されている。
【0048】
スイッチング素子103、105をそれぞれ排他的に高周波でオンオフすることによって、加熱コイル101と共振コンデンサ107で構成する共振回路部に高周波共振電流を供給し、加熱コイル101近傍に配置した負荷を加熱する。
【0049】
制御部110は、制御手段713(図7)から負荷に印加する目標となる電力レベル指示を入力し、インバータの出力電力が目標値になるようスイッチング部103,105を制御する。
【0050】
入力電流変換手段112は交流電源117から入力する電流を検出する検出手段111の出力信号を適切なレベルに変換してインバータ制御部110に出力する。
【0051】
入力電圧検出手段113は交流電源117の電圧を検出し適切なレベルに変換して制御手段110に出力する。
【0052】
インバータ電流検出手段115は共振回路部に流れる電流を検出する検出手段114の出力信号を適切なレベルに変換してインバータ制御部110に出力する。
【0053】
インバータ制御部110はこれらの信号を入力し、負荷に投入される電力であるインバータ電力の計算、負荷の状態、加熱の適否等を判断し、スイッチング素子103,105を排他的にオンオフ制御するための信号を出力し、レベル変換部116によってスイッチング素子103、105に対して適切な駆動レベルに変換し、スイッチング素子103,105を駆動する。また、インバータ制御部110はこれらの状態を制御手段713に出力する。
【0054】
次に、以上の構成による動作を説明する。例えば使用者が、トッププレート2手前左側の加熱コイル6aにより調理する場合で説明する。
【0055】
まず、被調理物を入れた金属製鍋が加熱コイル6a上の鍋位置表示部4aの中心に置かれ、パネル操作部7の電源切/入スイッチ7aが電源入状態になると、誘導加熱調理器の運転が開始する。
【0056】
次に上面操作部8aの加熱コイル6aの出力を設定する設定キー402で出力要求に合わせて、図5に示す段階的な火力(出力)を、数値及び/または要求火力に合わせて増減する目盛などで上面表示部9aに順に表示する。
【0057】
使用者の操作により表示された要求火力は、表示状態でそのまま数秒放置すると確定された設定出力としてその出力を制御部713が設定する。
【0058】
次に、上面操作部8aの切/スタートキー401からの加熱開始の入力を制御部713が検知すると、設定された出力となるように制御部713からインバータ回路703に電力を供給して加熱処理を開始する。
【0059】
インバータ制御部110は、入力電流変換手段112とインバータ電流検出手段115との検出結果より、金属製鍋が加熱可能な鍋なのか、また材質は磁性体なのか非磁性体なのかを検出する。インバータ制御部110は、加熱に不適当であると判断したらインバータ回路703に加熱停止を命令する。また、インバータ制御部110は、加熱に適当であると判断したら、材質に合わせた共振周波数で加熱するように、共振コンデンサ107を金属製鍋の材質に合わせて切り替え(詳細な回路は図示せず)、スイッチング素子103,105を駆動する。
【0060】
使用者の手動による調理が終了した場合、上面操作部8aの切/スタートキー401から切り入力がなされ、この加熱切り要求を制御部713が受けると、加熱コイル6aの加熱を停止する。加熱コイル6aの使用後、他の操作が無ければ、パネル操作部7の電源切/入スイッチ7aの電源切操作により電源を切る。
【0061】
調理タイマーの設定の場合は、調理中に、該当する加熱コイル6に対応する上面操作部8のタイマーキー403の入力により、制御部713はタイマー設定入力待ち状態になる。
【0062】
タイマー設定入力待ち状態になると、対応する上面表示部9はタイマー値入力画面に切り替わる。設定キー402によりタイマー値が入力されると、その入力に従ったタイマー値を上面表示部9に順に表示する。
【0063】
表示内容が変わらないまま、言い換えると新たなタイマー値の入力が設定キー402から無い場合、数秒間経過を監視する。所定時間の経過後、制御部713は報知部412よりブザーを鳴らし、新たなタイマー値の入力がない場合、制御部713は最終入力タイマー値を決定値として設定する。そして、制御部713はその設定された時間、タイマーを起動する。調理タイマーによりその設定時間を計時し、設定時間が終了すると該当する加熱コイル6の通電を停止するよう制御部713はインバータ回路に指令を出し、加熱コイル6の加熱が停止し、また報知部712により設定時間の終了としてブザーを鳴らして報知する。
【0064】
グリル部5で魚等を焼く場合、使用者は網の上に被加熱物を載せ、網をグリル部5に収納した後、パネル操作部7の電源切/入スイッチ7aを入れる。電源切/入スイッチ7aの電源入操作により他の加熱手段と供に、グリル部5でも加熱準備状態となる。
【0065】
次にパネル操作部7の切/スタートキー7bを押されると、グリル部5への加熱要求があったと判断して、制御部713は、オンオフ回路706にグリル部5のシーズヒータ
702に通電して、網に載せられた被加熱物の加熱を開始する。図示はしないが、グリル部5の加熱庫内には、温度検出器711が設けられ、その温度センサの検知結果を制御部713で受信し、被加熱物の加熱状態を判断し加熱庫内の温度調節をしながらグリル部5の加熱調理を行う。
【0066】
加熱庫内の被加熱物によっては温度調節処理が異なる。図2には示されていないが、例えば、魚焼き調理の場合は、被加熱物である魚の焼きの進み具合に応じて加熱量を変化させる。庫内の温度変化が少なくなったのを検知したら制御部713にてシーズヒータ702への通電を停止する。使用者は調理が終了したら、他の調理が無い時には、電源切/入スイッチ7aを押して電源を切る。このように、グリル部5はその調理対象によって要求出力に幅がある。従って、設定最大出力を予め確保しておく必要がある。本実施例では、以下に述べるようにグリル部5の設定最大出力を1.5kW とした。
【0067】
次に、加熱コイル6による自動調理について説明する。例えば加熱コイル6bで揚げ物調理する場合は、油を入れた天ぷら鍋が加熱コイル6b上の鍋位置表示部4bの中心に置かれ、使用者によりパネル操作部7の電源切/入スイッチ7aが電源入となると、加熱コイル6bが加熱準備状態になる。
【0068】
次に上面操作部8bのメニューキー404の入力により自動調理モードが設定され、続けて上面操作部8bの設定キー402の入力により、制御部713は自動調理メニューを表示部9bに順に表示す。
【0069】
自動調理メニューの揚げ物表示状態が数秒間維持されていると、言い換えるならば、設定キー402の操作により揚げ物調理が選択されたまま所定時間維持されると、その自動調理メニューを制御部713は設定する。
【0070】
次に上面操作部8bの切/スタートキー401が押されることにより、設定された揚げ物調理の開始要求が制御部713に対して入力されると、制御部713は別に設定された予熱温度と合わせて、加熱コイル6bのインバータ回路704に予熱処理を要求して、インバータ回路704から電力が供給され加熱コイル6bは予熱を開始する。
【0071】
温度検出器711による温度情報により、油温が設定した温度に到達したと制御部713が判断したら、制御部713は報知部712に対して報知要求を行い、予熱が終了するとのブザーを鳴らし使用者に知らせる。
【0072】
揚げ物調理中は、調理の進行に合わせて温度検出器711からの温度情報に基づき、所定の油温を維持するように制御部713からインバータ回路704に指令し、加熱コイル6bへの電力を調節する。
【0073】
揚げ物調理が終わったら、使用者の操作により上面操作部8bの切/スタートキー401が押され、この入力により制御部713は加熱を停止する。他に調理が行われていなければ、使用者はパネル操作部7の電源切/入スイッチ7aを押して電源を切る。
【0074】
次に、誘導加熱調理器全体の消費電力を所定の定格電力を超えないようにする制御について図8,図9,図10により説明する。図8は各加熱部の出力設定の例を説明する図、図9は設定キー操作時に機器全体の消費電力が所定の定格電力を超えないようにする制御を説明するフローチャート、図10はグリル調理スタート時に機器全体の消費電力が所定の定格電力を超えないようにする制御を説明するフローチャートである。尚、図8中、シーズヒータとはグリル部5の加熱手段である。
【0075】
図8の例1は、加熱コイル6cを上面操作部8cの設定キー402により設定可能な最大出力の1.6kW に設定して調理を開始した場合である。
【0076】
加熱コイル6cでの加熱開始後に、加熱コイル6bが、上面操作部8bの設定キー402により設定可能な最大出力の3.0kW に設定された場合、加熱コイル6cの1.6kW と加熱コイル6bの要求出力3.0kW との合計出力が4.6kW である。これは、本実施例における定格出力である5.8kW 以内である。よって制御部713は、加熱コイル6bの当該出力要求を受け入れる。そして、制御部713は上面表示部9bには3.0
kWに相当する表示を行い、加熱コイル6bへの電力供給をインバータ回路704に要求して、使用者は調理を開始する。
【0077】
さらに加熱コイル6aで調理しようとして出力設定を1.1kW を超える設定にしようとすると、機器全体の消費電力が所定の定格電力の5.8kW を超えないように制御部
713で制御するため、加熱コイル6aの出力を設定する設定キー402の操作は1.1kWを超える出力要求は受け付けず、上面表示部9aには1.1kW より大きな出力を表示させない。各加熱コイル6は設定可能な火力が離散的に設定されているため、この場合は、定格電力の5.8kW に対して1.2kW は設定されない。
【0078】
したがって加熱コイル6aの出力は1.1kW までしか設定することが出来ない。すなわち図9に示すように、制御部713は、ステップ901で所定の定格電力5.8kW から現在調理中の合計の出力を引いた値より設定出力が大きい場合は、ステップ902でその設定出力を受け付けず、表示しないようにする。
【0079】
ステップ901で所定の定格電力5.8kW から現在調理中の合計の出力を引いた値より設定出力が大きくない場合は、ステップ903でその設定出力を受け付けるようにし、使用者には1.1kW を超えない設定となるように誘導する。
【0080】
このように、トッププレート2上で3口の加熱コイル6a,6b,6cにより同時に調理しようとする場合、設定最大火力出力が異なる2口の加熱コイル6では設定可能な最大出力で調理することが可能であり、残り1口の加熱コイル6では調節した出力で調理することができる。
【0081】
従って、本実施例の場合、設定最大火力出力が異なる2口の加熱コイルは設定可能な最大出力で調理が可能となり、しかも残りの1口の加熱コイルでも調節した出力で調理が可能であるため、調理時に出力の制限による使いにくさによる不便さを感じることなく、快適に調理することが出来、使い勝手が非常に良い。
【0082】
図8の例2は、加熱コイル6cで自動調理の炊飯(設定最大出力1.1kW )調理を開始し、次に加熱コイル6bで設定可能な最大出力の3.0kW を設定して調理を開始し、次に加熱コイル6aで自動調理の揚げ物(設定最大出力1.8kW )を設定しようとする場合である。このときの機器全体の消費電力が5.9kWとなり所定の定格電力の5.8
kWを超えるため、制御部713は加熱コイル6aでの揚げ物の自動調理機能を設定できないように制御する。
【0083】
このように、調理中の出力及びこれから設定しようとする調理の出力は、手動の出力設定であればそのとき設定された出力とし、自動調理の場合は自動調理機能により出力が途中で変動するように制御された場合、その自動調理機能における最大出力(設定最大出力)で計算を行う。このようにすることにより、所定の定格電力を超えることを無くすことができる。この場合、加熱コイル6bでの設定出力を手動で下げた後(例えば、3.0kW を2.5kWに下げた場合)、加熱コイル6c及び加熱コイル6bの合計出力が3.6kWなので加熱コイル6aで揚げ物調理メニューを選択しても、5.4kW となり、この場合は、加熱コイル6aの揚げ物調理メニューの設定要求を制御部713は受け入れる。
【0084】
図8の例3は、加熱コイル6aで自動調理の湯沸し(設定最大出力2kW )を行い、加熱コイル6bで自動調理の揚げ物(設定最大出力1.8kW )を行い、さらに加熱コイル6cで炊飯(設定最大出力1.1kW )を行った例である。このときの機器全体の消費電力は最大4.9kW で所定の定格電力の5.8kW を超えることはない。
【0085】
このように、トッププレート2上で3口の加熱コイル6a,6b,6cにより同時に自動調理を行うことが可能であるため、使い勝手が非常に良い。
【0086】
いずれかの自動調理の設定において、最後の自動調理を設定する際の上面表示部9の表示について説明する。該当する加熱コイル6のメニューキー404が押され、自動調理モードになったときに、各自動調理メニューは予め設定最大出力が登録してあるので、制御部713は、上面表示部9に設定可能な自動メニューを表示させる。例3の場合、加熱コイル6bでの自動調理設定が最後であった場合は、保温,炊飯,揚げ物,湯沸しの各自動メニューを表示する。
【0087】
図8の例4は、グリル部5の加熱手段により魚等を調理する場合の例であり、加熱コイル6aで自動調理の炊飯(設定最大出力1.1kW )中に、グリル部5で魚焼き等の調理を開始する場合である。
【0088】
グリル部5の調理に際し、パネル操作部7の切/スタートキー7bが押され、グリル部5の出力要求が制御部713に対してあると、図10に示すように、ステップ101で加熱コイル6aの調理中を判定し、調理中であるためステップ102を実行する。
【0089】
加熱コイル6aは自動調理中(炊飯)であるためステップ103を実行し、加熱コイル6aの出力は1.6kW を超えていないので、次にステップ104を実行する。(所定の定格電力5.8kW )−(調理中の出力の合計1.1kW )が4.7kW であり、グリル部5の消費電力の1.5kW 以上であるので、制御部713は、グリル部5のステップ
105で加熱手段の切/スタートキー7bを受け付ける。
【0090】
次に加熱コイル6bの出力要求が制御部713に対してなされた場合、要求出力が2.4kWであると、機器の合計最大消費出力が5.0kW であるので定格電力5.8kW より小さい値である。それにより、この加熱コイル6bの出力要求を制御部713は受け入れ、インバータ回路704が要求出力2.4kW の出力を行うよう制御する。
【0091】
さらに加熱コイル6cに対応する上面操作部8cの切/スタートキー401からの加熱開始の入力を制御部713が検知すると、既に機器の合計最大消費出力が5.0kW となっているので、制御部713は上面表示部9cには出力として0.8kW の表示までしか行わない。
【0092】
そこで、加熱コイル6cに対する出力要求が0.8kW に設定されると、制御部713はインバータ回路705が0.8kW の出力を行うように制御する。この時の機器全体の消費電力は5.8kW となり、所定の定格電力の5.8kW を超えることはない。
【0093】
この場合、グリル部5は、被調理物がどのようなものであっても、設定最大出力が予め設定されているため、他の加熱コイル6とは異なり、一定の出力を確保する必要がある。この例4では定格電力に対してグリル部5の加熱に必要な要求出力が満たされたためグリル部5の出力要求を制御部713が受け入れ許可できた。
【0094】
このようにトッププレート2上の3口の加熱コイル6と、グリル部5とで同時に調理を行うことができるため、使い勝手が非常に良い。
【0095】
図8の例5は、加熱コイル6aの設定可能な最大出力3.0kW で加熱を行い、加熱コイル6bが出力2.4kW で加熱を行っているときに、グリル部5で魚焼き等の調理を要求する場合である。
【0096】
グリル部5で調理開始しようとして、使用者がパネル操作部7の切/スタートキー7bを押すと、制御部713にグリル部5の出力要求が入力される。制御部713では、図
10に示すように処理を実行し、この出力要求の可否を判断する。
【0097】
まず、加熱コイル6aが最大出力3.0kW で調理中(ステップ101)であるが、加熱コイル6aは自動調理中ではない(ステップ102)ので、ステップ106を実行する。
【0098】
加熱コイル6aの出力3.0kW が1.6kW より大であるため、ステップ107を実行し、(所定の定格電力5.8kW )−(調理中の出力(加熱コイル6b,6c)の合計2.4kW )−1.6kW が、1.8kW となる。
【0099】
これは1.5kW より大きいためステップ108を実行する。ステップ108では加熱コイル6aの出力を自動的に3.0kW から特定値の1.6kW に減じることにより、ステップ105でグリル部5の加熱手段の切/スタートキー7bによるグリル部5の出力要求を制御部713が受け付ける。
【0100】
次に加熱コイル6cの出力要求が制御部713にあった場合、機器の合計最大消費電力は5.5kW であるため、制御部713は加熱コイル6cに対応する設定キー402を操作されても、上部表示部9cでは0.3kW の表示を行う。加熱コイル6cに対する設定火力が0.3kW に設定されたら、制御部713はインバータ回路705に当該要求火力が出力されるよう制御して、使用者は調理を行う。
【0101】
この時の合計消費電力は5.8kW となり、所定の定格電力5.8kW を超えない。なお、特定値の1.6kW はこの値に限定されるものではなく、誘導加熱調理器が設置される電気設備の電源容量に応じて適宜選定すれば良い。
【0102】
本実施例におけるこの特定値(1.6kW )は、出力が制限された加熱コイル6aにおいて、自動調理メニューとして揚げ物(設定最大出力1.8kW )と湯沸し(設定最大出力2.0kW )は行えない電力値である。
【0103】
しかし、少なくとも加熱コイル6aと同じ最大出力3.0kW を磁性体の鍋で出力可能な加熱コイル6bにおいては、グリル部5のシーズヒータ702に電力を供給しても、加熱コイル6a及び6bよりも最大出力が小さい加熱コイル6cの設定出力によっては、加熱コイル6bに予め設定した全ての自動調理メニューを実行できる出力を確保し供給できることが好ましい。
【0104】
具体的には、出力が制限された加熱コイル6aが1.6kW 及びグリル部5のシーズヒータ702の設定最大出力が1.5kW であり、これらを合わせると3.1kW である。これは、本実施例で想定する定格電力5.8kW に対して2.7kW の余裕がある。この余剰電力は、加熱コイル6bに予め設定された自動調理メニューの中で最大の設定火力を要求する湯沸し調理(2.0kW )を行い得る出力である。
【0105】
本実施例では、例え加熱コイル6aへの電力供給が行われていたときに、グリル部5のシーズヒータ702に電力を供給するように電力供給部であるオンオフ回路706に対する出力要求があったとしても、加熱コイル6aへの電力供給が制限された結果、加熱コイル6bでは全ての設定された自動調理(保温,炊飯,揚げ物,湯沸し)が行え、更に、加熱コイル6a及び6bよりも設定最大出力が小さい加熱コイル6cでも少なくとも一つの自動調理(保温)が可能となる。
【0106】
このように加熱コイル6aの出力を自動的に特定値の1.6kW に減じることにより、トッププレート2上の3口の加熱コイル6と、グリル部5で同時に調理を行うことができるため、使い勝手が非常に良い。
【0107】
また、グリル部5の加熱手段で魚焼き等の調理を開始しようとするとき、自動的に出力を減じる特定の加熱コイル6は、グリル部5の上に設けられたトッププレート2の手前左側の加熱コイル6aに特定しているため、使用者は出力が途中で変化しても調理の仕上がりに支障がない調理を予めこの特定の加熱コイル6aで行うことができるため、使い勝手が非常に良い。
【0108】
また、グリル部5の加熱手段で魚焼き等の調理を開始しようとするとき、自動的に出力が減じられた加熱コイルがあっても、機器としては、少なくとも一つの加熱コイルが設定された自動調理を全て行うことができるので、実質的な使い勝手に影響が少ない。
【0109】
なお、ステップ102で加熱コイル6aが自動調理中で、ステップ103でその自動調理中の加熱コイル6aの出力が1.6kW を超える場合はステップ109でグリル部5の加熱手段の切/スタートキー7bを受け付けないようにした。
【0110】
言い換えると、加熱コイル6aが特定値を超える設定最大出力で行われる自動調理中であれば、その自動調理を優先し、グリル部5の調理を制限するようにしている。このように、加熱コイル6aが自動調理中の場合は自動調理の仕上がりに影響が出ないように出力を自動的に減じないようにしている。
【0111】
また、ステップ107で(所定の定格電力5.8kW )−(調理中の加熱コイル6b,6cの出力の合計)−(加熱コイル6aの出力1.6kW )が1.5kW 以下の場合、グリル部5の加熱手段を動作させると合計の消費電力が所定の定格電力を超えるため、ステップ109でパネル操作部7の切/スタートキー7bを受け付けないようにして、所定の定格電力を超えないように制御している。
【0112】
また、ステップ101で加熱コイル6aが調理中でない場合、ステップ104で、(所定の定格電力5.8kW)−(調理中の加熱コイル6b,6cの出力の合計)が1.5kW以下の場合、グリル部5の加熱手段を動作させると合計の消費電力が所定の定格電力を超えるため、ステップ109でパネル操作部7の切/スタートキー7bを受け付けないようにして、所定の定格電力を超えないように制御している。
【0113】
このように、使用者が調理に応じた加熱部を使用する際に、日本人の多くが好む魚焼きやピザやグラタン等が調理できるグリル部5を優先して使用できるようにし、さらには自動調理も優先され、その他の加熱部の一つを自動的に電力を下げるように電力配分することで、全ての加熱部が使用できるようになり、多くの料理を一度に食卓に運ぶことができる。
【0114】
したがって、複数の料理を並行して調理できる。更には調理を数回に分ける必要がなくなる。そのため、使用者は調理時に不便さを感じることなく快適に調理することが出来、非常に使い勝手が良い。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の一実施例を示す誘導加熱調理器をシステムキッチンに組み込んだ状態の外観斜視図である。
【図2】同じく、パネル操作部の詳細図である。
【図3】同じく、誘導加熱調理器の上面図である。
【図4】同じく、上面操作部の詳細図である。
【図5】同じく、設定可能な出力を説明する図である。
【図6】同じく、設定可能な自動調理を説明する図である。
【図7】同じく、誘導加熱調理器の回路ブロック図である。
【図8】同じく、各加熱部の出力設定例を説明する図である。
【図9】同じく、設定キー操作時に機器全体の消費電力が所定の定格電力を超えないようにする制御を説明するフローチャートである。
【図10】同じく、グリル調理スタート時に機器全体の消費電力が所定の定格電力を超えないようにする制御を説明するフローチャートである。
【図11】同じく、誘導加熱調理器のインバータ回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0116】
1…本体、2…トッププレート、5…グリル部、6…加熱コイル、702…シーズヒータ、703,704,705…インバータ回路、713…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の上面に設けられたトッププレートと、このトッププレート上に載せられた金属製鍋を加熱する複数の加熱コイルと、この加熱コイルに電力を供給するインバータと、加熱手段を有するグリル部と、このグリル部へ電力を供給するグリル電力供給部と、を有する誘導加熱調理器において、
前記複数の加熱コイルのいずれかに対して電力が供給されているとき、前記グリル部の加熱手段へ電力の供給が要求されると、先に電力が供給された加熱コイルとその設定された電力に応じて、前記グリル部の加熱手段へ電力を供給する誘導加熱調理器。
【請求項2】
請求項1記載の誘導加熱調理器において、
前記先に電力が供給された加熱コイルの設定された電力が特定値よりも大きく、この特定値と他の加熱コイルへ供給されている電力とを定格電力から除いた電力が、前記グリル部の加熱手段の設定最大出力よりも大きなときは、前記先に電力が供給された加熱コイルに設定された電力を前記特定値に減じて、前記グリル部の加熱手段へ電力を供給する誘導加熱調理器。
【請求項3】
請求項2記載の誘導加熱調理器において、
前記特定値は、前記定格電力から、前記グリル部の加熱手段の設定最大出力と前記特定値とを除いた残りの電力が、前記設定された電力が減じられた加熱コイル以外の少なくとも一つの加熱コイルに対して、この加熱コイルに予め設定された自動調理の中で最も大きな最大設定出力よりも大きい電力となる値である誘導加熱調理器。
【請求項4】
請求項1記載の誘導加熱調理器において、前記先に電力が供給された加熱コイルが前記グリル部に近い加熱コイルであり、この前記グリル部に近い加熱コイルに供給された電力が特定値を超える場合、前記グリル部に近い加熱コイルの出力を前記特定値に減らし、前記グリル部の加熱手段へ電力を供給する誘導加熱調理器。
【請求項5】
請求項4記載の誘導加熱調理器において、前記グリル部に近い加熱コイルに供給する電力を特定値に減らしても、前記グリルの加熱手段の設定最大出力と前記グリル部に近い加熱コイルに供給された電力とを合わせた合計消費電力が定格電力を超える場合、前記グリル部の加熱手段に電力を供給しない誘導加熱調理器。
【請求項6】
請求項1記載の誘導加熱調理器において、前記複数の加熱コイルは少なくとも3個設けられた誘導加熱調理器。
【請求項7】
請求項1記載の誘導加熱調理器において、前記加熱コイルを前記トッププレートの手前側左右に2個、中央後側に1個配置し、前記特定の加熱コイルを前記グリル部の近くに配置した誘導加熱調理器。
【請求項8】
請求項1記載の誘導加熱調理器において、前記複数の加熱コイルのうち少なくとも一つは金属製鍋の種類によって前記インバータから供給される高周波電力の周波数が異なる誘導加熱調理器。
【請求項9】
本体の上面に設けられたトッププレートと、このトッププレート上に載せられた鍋を加熱する複数の加熱コイルと、この加熱コイルに電力を供給するインバータと、加熱手段を有するグリル部と、このグリル部へ電力を供給するグリル電力供給部と、を有する誘導加熱調理器において、
前記グリル部の加熱手段には設定最大出力で出力するための電力が供給され、前記複数の加熱コイルのうち、少なくとも一つの加熱コイルに対して、この加熱コイルに予め設定された自動調理の中で最も大きな設定最大電力よりも大きな電力を供給する誘導加熱調理器。
【請求項10】
請求項9記載の誘導加熱調理器において、
前記複数の加熱コイルのうち、少なくとも一つの加熱コイルは供給されていた設定出力よりも小さな電力が供給される誘導加熱調理器。
【請求項11】
本体の上面に設けられたトッププレートと、このトッププレート上に載せられた鍋を加熱する複数の加熱コイルと、この加熱コイルに電力を供給するインバータと、加熱手段を有するグリル部と、このグリル部へ電力を供給するグリル電力供給部と、を有する誘導加熱調理器において、
前記複数の加熱コイルは、本体の前面寄りに配置された2つの加熱コイルと、これら誘導加熱コイル間の奥寄りに配置された1つの加熱コイルと、を有し、前記奥寄りに配置された加熱コイルでは自動調理メニューとして炊飯機能を有していない誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−27638(P2008−27638A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196386(P2006−196386)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】