説明

赤外線検出素子の製造方法

【課題】集積化が容易で検出感度の向上が可能な赤外線2次元イメージセンサの製造方法を提供する。
【解決手段】強誘電体膜から成る赤外線検出容量CFのうち、容量部分100は、引出配線102および104により支持されて、溝部330の両側のSi基板に対して保持される。下部電極は、引出配線102と結合し、上部電極は、引出配線104と結合する。容量部分100の平面形状は、長方形形状から、対角線方向に互いに対向する106の部分および108の部分を除いた形状となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、強誘電体薄膜材料を用いて、対象物体から放出される赤外線強度を検出する赤外線検出素子の構成および赤外線検出素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[赤外線検出素子の背景技術]
室温の物体や人体からは、波長10μm付近の赤外線(熱線)が輻射されており、これを計測することにより、それらの存在や温度の情報が非接触で得られ、自動扉、侵入警戒器、電子レンジの調理モニタ、科学計測等のさまざまな応用がなされている。
【0003】
こういった計測において、一番のキーデバイスは赤外センサであり、量子型赤外センサと熱型赤外センサの2種類に大きく分けられる。
【0004】
量子型赤外センサは、感度が大きく検知能力に優れているが、冷却が必要なため装置が大型になるといった点で実用性に問題があるが、熱型赤外センサは、感度が量子型赤外センサよりは少し劣るものの室温動作が可能であるというメリットがあり、実用性に富んでいる。
【0005】
強誘電体材料は、図26に示すような分極および誘電率の双方の温度依存性を有し、これらの特性を熱型赤外線センサとして使用することができる。前者の効果は、従来の焦電(PE)ボロメータに関し、後者は、誘電ボロメータ(DB)に関する。
【0006】
したがって、熱型赤外センサとして、焦電効果を用いるもの、抵抗ボロメータ、誘電ボロメータ、サーモパイル、ゴーレイセル等、数多くのものが提案されている。たとえば、焦電効果を用いた赤外線イメージセンサが、非特許文献1に開示されている。
【0007】
特に、電界を印加して誘電率の温度変化を検知する誘電ボロメータは、他のセンサより感度が高く、チョッパを設ける必要がない等の優れた特徴を有しており実用的見地から期待されている。
【0008】
さらに、より高度な赤外線センシングとして、物体や風景の温度分布を非接触で得られる赤外線イメージセンサ(サーモグラフィー)への応用が期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Proc.8th IEEE Int.Symp.Appl.Ferroelectronics(1992)pp.1−10(「PYROELECTRIC IMAGING」Bemard M.Kulwicki et.al.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
赤外イメージングのためには、焦電セラミックとシリコンFET(電界効果型トランジスタ)とのアレイをバンプで結合したり、薄膜微小抵抗ボロメータをマイクロブリッジ構造上に形成し、シリコンFETアレイと結合した室温動作赤外線撮像素子が試作されている。
【0011】
これらの素子においてはさらに、感度や画素数の増加による高分解能化等の高機能化が期待されている。しかし、従来の焦電型赤外センサや抵抗ボロメータ型赤外センサの検出では感度が限られており、あるいは、画素数も十分とはいえない。
【0012】
図27は、このような従来のシリコンFETアレイと結合した赤外線検出素子の画素セル20の断面構造を示す図である。
【0013】
図27を参照して、画素セル20は、Si基板300上に堆積されたシリコン酸化膜304と、シリコン酸化膜304の開口部に形成されたMOSトランジスタTr1と、MOSトランジスタTr1に隣接して形成され、下部電極308(Pt/Ti積層膜)、強誘電体膜310(BST膜)および上部電極312(Al膜)とからなる赤外線検出容量CFと、Si基板300の裏面側から赤外線検出容量CFの直下部分の所定深さまで開口する溝部330とを含む。
【0014】
MOSトランジスタTr1は、シリコン酸化膜304の開口部のSi基板主表面に形成され、基板の導伝型とは逆極性の不純物領域であるソース/ドレイン領域320および324と、ソース/ドレイン領域320および324に挟まれるSi基板主表面に形成されたチャネル層322と、チャネル層直上のSi基板主表面に堆積されたゲート酸化膜302およびゲート酸化膜302上に形成されたポリシリコンゲート電極314とを含む。
【0015】
下部電極308は、シリコン酸化膜304の上部に堆積され層間絶縁膜となるシリコン窒化膜306上に堆積される。下部電極308は、ソース/ドレイン領域320とコンタクトしている。
【0016】
ゲート電極314上には、下部電極308と同一の配線層により形成された引出し配線316が設けられ、下部電極308と同一の配線層により形成された引出し配線318とソース/ドレイン領域324とがコンタクトしている。
【0017】
溝部330を設けるのは、画素セル20が熱型赤外センサであって、その温度上昇が出力信号強度に直接影響することから、熱伝導の大きいSi基板300への熱のロスをできるだけ減少させるためである。
【0018】
したがって、溝部330とシリコン酸化膜304との間に残されるSi基板厚は、プロセス上、可能な限り薄くすることが望ましい。一方、画素セル20間で、この残存Si基板厚がばらつくのは、好ましくない。このために、Si基板の表面側には、溝部330を裏面側からエッチングする際のエッチングストッパ層が形成される。たとえば、基板表面側からホウ素(B)等のイオン(たとえば、濃度3×1016cm-3以上)を注入しておくことで、Siのエッチングレートが減少することを利用する。
次に、図27に示した画素セル20の製造方法を、その第1〜第12工程のフローを断面図に従って説明する。
【0019】
図28〜図39は、上記第1〜第12工程をそれぞれ示す断面図である。
図28を参照して、第1工程においては、Si基板300をRCA洗浄の後、その表面に熱酸化によりシリコン酸化膜304を形成する。
【0020】
この熱酸化の条件としては、例えば、1000℃、酸素流量 5l/minの条件下で5分間の酸化の後、さらに、1000℃、酸素流量 5l/min、水素流量 4.5l/minの条件下で180分の酸化を行なう。このような条件での熱酸化により、たとえば、〜650nmの酸化膜が形成される。
【0021】
また、基板裏面にアラインメントマーク301をドライエッチング等の異方性エッチングにより形成する。
【0022】
図29を参照して、第2工程ではシリコン酸化膜304の所定領域303をエッチングにより開口する。後に説明するようにこの領域303にMOSトランジスタTR1が形成される。
【0023】
図30を参照して、レジストパターン305をマスクとしてMOSトランジスタTR1のチャネル部322へ、その導伝型に対応したイオン種のイオン注入を行った後、活性化のためのアニールを行う。
【0024】
図31を参照して、Si基板に対して熱酸化により、ゲート酸化膜302を堆積した後、CVD(Chemical Vaper Deposition )法等によりゲート電極となるポリシリコン307を堆積する。
【0025】
図32を参照して、RIE(Reactive Ion Eyching)等の異方性エッチングによりポリシリコン307をパターニングして、エッチングすることによりゲート電極314が形成される。
【0026】
図33を参照して、ゲートパターンをマスクとして開口部303上およびシリコン酸化膜304上に堆積しているゲート酸化膜302をエッチング除去した後、ゲート電極314およびシリコン酸化膜304をマスクとしてソース/ドレイン領域320および324の不純物拡散を行う。
【0027】
図34を参照して、CVD法等によりシリコン窒化膜306を堆積する。
このようなシリコン窒化膜306の形成条件としては、780℃、SiCl22 0.015l/min、NH3 0.060l/min、26.7Pa、60minの条件を用いると、たとえば、約300nmのシリコン窒化膜が堆積される。
【0028】
図35を参照して、ウエハ裏面にレジストでパターニングをし、シリコン窒化膜およびシリコン酸化膜をエッチング除去する。その後、基板裏面側からTMAH22%のエッチャントで、100℃、180minという条件で異方性ウエットエッチングによりSi基板300の赤外線検出容量CF直下に溝部330を形成する。この溝部の開口寸法は、たとえば、数十μm×数十μmの大きさである。また、エッチングされる深さは、約250μmである。
また、赤外線検出容量CFの直下のSi基板厚は、たとえば、0〜50μmの範囲であり、上述のとおり、機械的強度の許す限り薄ければ薄いほどよい。
つまり、好ましくは、赤外線検出容量CFの直下にはSi基板が存在しなくなるまでエッチング除去することが望ましい。
【0029】
図36を参照して、MOSトランジスタTR1のソース/ドレイン領域320および324ならびにゲート電極314上に開口するコンタクトホール(接続孔)をRIE等により形成する。
【0030】
図37を参照して、レジストによるパターニングを行ない、スパッタリング法ないし真空蒸着法による成膜の後、アセトンおよび超音波洗浄によるリフトオフ法等により下部電極308ならびに引出し配線316および318となるPt/Ti積層膜を形成する。rfスパッタによる成膜の場合、Tiの成膜時は、Ar 0.00532l/min、0.6Pa、RFパワー500Wの条件で3min間成膜し、Ptの成膜時は、Ar 0.00532l/min、0.6Pa、RFパワー200Wの条件で8min間成膜を行なう。この条件では、Ti膜厚は、60nmであり、Pt膜厚は、160nmである。
【0031】
続いて、図38を参照して、レーザーアブレーション法等により強誘電体膜310のBST膜等を堆積する。レーザーアブレーションにより強誘電体膜を堆積することで、低基板温度での成膜が可能であり、FETアレイが形成されている基板へのダメージを低く押さえることができる。
【0032】
図39を参照して、上部電極となるAl膜312をスパッタリング法あるいは真空蒸着法等により所定パターンに形成する。
以上の工程により、図27に示したような断面構造を有する画素セル20が形成される。
【0033】
図27に示したような画素セル20は、電界誘起焦電効果による誘電ボロメータであって、誘電率の温度変化を利用することにより、赤外線センサとして動作する。
【0034】
以上、説明したとおり、赤外線検出容量CF直下のSi基板基板厚は、望ましくは、0μmとすることが望ましい。
【0035】
このためには、例えば、図39までの工程終了後、ウエハ裏面からシリコン窒化膜およびシリコン酸化膜をマスクとして、Si基板をドライエッチングする。SF6ガス0.0075l/min。13.3Pa、RFパワー50Wの条件で約30minエッチングすればよい。
【0036】
ただし、溝部330をSi基板裏面から、Si基板の表面までエッチングしてしまうと、以下に説明するような問題が生じる。
【0037】
図40は、このように赤外線検出容量CF直下のSi基板厚を0μmまで、完全にエッチング除去した場合の状態を示す平面図であり、図41は、図40のQ−Q´断面を示す断面図である。
【0038】
このように、赤外線検出容量CF直下にはSi基板が残らないようにエッチング除去した後に溝部上に保持される部分を「メンブレン」と呼び、このような構成を「メンブレン構造」と呼ぶことにする。
【0039】
ただし、このようなメンブレン構造とした場合、赤外線検出容量CFが、下地絶縁膜、下部電極、強誘電体薄膜、上部電極等から成る多層膜構造であるために、それらの膜ストレス等の影響により、図41に示すように、メンブレンがひずんでしまうという問題がある。
【0040】
また、このような膜ストレスを緩和するために、互いに逆方向のストレスを有する膜を多層化することも可能であるが、ちょうどストレスを相互にキャンセルするように積層することは、積層膜の各層において、膜厚やストレス値を厳密に管理・制御することが必要となり、いたずらにプロセスを複雑化させてしまう。
【0041】
さらに、Si基板の裏面からエッチングにより溝部330を形成することとすると、このエッチングに相当時間をようするために、エッチャントにより強誘電体薄膜の特性が劣化してしまう場合があるという問題もあった。
【0042】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、集積化が容易で検出感度の向上が可能な赤外線2次元イメージセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0043】
請求項1記載の赤外線検出素子の製造方法は、基板の主表面上に第1の引出配線および下部電極金属層を形成するステップと、下部電極金属層上に強誘電体層を積層するステップと強誘電体層上に第1の絶縁膜を堆積するステップと、第1の絶縁層上に上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップと、下部電極直下の基板を、基板の主表面側から異方性ウェットエッチングすることにより、下部電極、強誘電体層および上部電極層が第1および第2の引出配線により支持されるように、溝部を形成するステップとを備える。
【0044】
請求項2記載の赤外線検出素子の製造方法は、請求項1記載の赤外線検出素子の製造方法の構成に加えて、上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップの後に、第2の絶縁膜を堆積するステップをさらに備える。
【0045】
請求項3記載の赤外線検出素子の製造方法は、基板の主表面上にMgO膜を形成するステップと、MgO膜上に第1の引出配線および下部電極金属層を形成するステップと、下部電極金属層上に強誘電体層を積層するステップと、強誘電体層上に上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップと、下部電極直下の基板を、基板の主表面側から異方性ウェットエッチングすることにより、下部電極、強誘電体層および上部電極層が第1および第2の引出配線により支持されるように、溝部を形成するステップとを備える。
【0046】
請求項4記載の赤外線検出素子の製造方法は、請求項3記載の赤外線検出素子の製造方法の構成に加えて、上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップの後に、絶縁膜を堆積するステップをさらに備える。
【0047】
請求項5記載の赤外線検出素子の製造方法は、基板の主表面上に第1の絶縁膜を堆積し、所定の形状を含む平面形状にパターニングするステップと、第1の絶縁膜の所定の形状の直下の基板を、基板の主表面側から異方性ウェットエッチングすることにより、所定の形状部分が基板の主表面に対して支持されるメンブレンを構成するように、溝部を形成するステップと、メンブレンに対して第1の引出配線および下部電極金属層を形成するステップと、下部電極金属層上に強誘電体層を積層するステップと、強誘電体層上に第2の絶縁膜を堆積するステップと、第2の絶縁膜上に上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップとを備える。
【0048】
請求項6記載の赤外線検出素子の製造方法は、請求項5記載の赤外線検出素子の製造方法の構成に加えて、上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップの後に、第3の絶縁膜を堆積するステップをさらに備える。
【0049】
請求項7記載の赤外線検出素子の製造方法は、基板の主表面上に第1の絶縁膜を堆積するステップと、第1の絶縁膜上にMgO膜を形成し、第1の絶縁膜およびMgO膜を所定の形状を含む平面形状にパターニングするステップと、第1の絶縁膜の所定の形状の直下の基板を、基板の主表面側から異方性ウェットエッチングすることにより、所定の形状部分が基板の主表面に対して支持されるメンブレンを構成するように、溝部を形成するステップと、メンブレン上に第1の引出配線および下部電極金属層を形成するステップと、下部電極金属層上に強誘電体層を積層するステップと強誘電体層上に上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップとを備える。
【0050】
請求項8記載の赤外線検出素子の製造方法は、請求項7記載の赤外線検出素子の製造方法の構成に加えて、上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップの後に、第2の絶縁膜を堆積するステップをさらに備える。
【発明の効果】
【0051】
本発明の画素セルにより、室温で高感度かつ簡易な構成の赤外線検出回路を実現することができ、それを2次元に配列した2次元センサアレイにより、高感度かつ高密度画素の室温動作赤外線2次元イメージセンサを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1の赤外線2次元イメージセンサ1000の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】図1の画素セル20の構成を示す回路図である。
【図3】図2に示した回路をシリコン(Si)などの半導体基板上に集積回路として形成する際の平面パターンを示す平面図である。
【図4】図3に示した平面図のP−P´断面を示す断面図である。
【図5】図3に示した赤外線検出容量CF部分および溝部330(GV)の平面パターンの詳細を説明するための図である。
【図6】図5のR−R´平面を示す断面図である。
【図7】実施の形態2の赤外線検出容量CF部分および溝部330(GV)の平面パターンの詳細を説明するための図である。
【図8】実施の形態3の赤外線検出容量CF部分および溝部330(GV)の平面パターンの詳細を説明するための図である。
【図9】実施の形態4の赤外線検出容量CFの断面構造を示す図である。
【図10】図9に示す構造の製造方法の工程のうち、第1〜第3工程のフローを示す断面図である。
【図11】図9に示す構造の製造方法の工程のうち、第4〜第6工程のフローを示す断面図である。
【図12】実施の形態4の製造方法の変形例1の第1〜第3工程のフローを示す断面図である。
【図13】実施の形態4の製造方法の変形例1の製造方法の工程のうち、第4〜第6工程のフローを示す断面図である。
【図14】実施の形態4の製造方法の変形例2の第1〜第3工程のフローを示す断面図である。
【図15】実施の形態4の製造方法の変形例2の製造方法の工程のうち、第4〜第6工程のフローを示す断面図である。
【図16】実施の形態4の製造方法の変形例3の第1〜第3工程のフローを示す断面図である。
【図17】実施の形態4の製造方法の変形例3の製造方法の工程のうち、第4〜第6工程のフローを示す断面図である。
【図18】実施の形態5による、図9に示す構造の製造方法の工程のうち、第1〜第3工程のフローを示す断面図である。
【図19】実施の形態5の製造方法の工程のうち、第4〜第5工程のフローを示す断面図である。
【図20】実施の形態5の製造方法の変形例1の第1〜第3工程のフローを示す断面図である。
【図21】実施の形態5の製造方法の変形例1の製造方法の工程のうち、第4〜第5工程のフローを示す断面図である。
【図22】実施の形態5の製造方法の変形例2の第1〜第3工程のフローを示す断面図である。
【図23】実施の形態5の製造方法の変形例2の製造方法の工程のうち、第4〜第5工程のフローを示す断面図である。
【図24】実施の形態5の製造方法の変形例3の第1〜第3工程のフローを示す断面図である。
【図25】実施の形態5の製造方法の変形例3の製造方法の工程のうち、第4〜第5工程のフローを示す断面図である。
【図26】強誘電体材料の分極および誘電率の双方の温度依存性を示す図である。
【図27】従来のシリコンFETアレイと結合した赤外線検出素子の画素セル20の断面構造を示す図である。
【図28】従来の画素セル20の製造フロー中の第1工程を示す断面図である。
【図29】従来の画素セル20の製造フロー中の第2工程を示す断面図である。
【図30】従来の画素セル20の製造フロー中の第3工程を示す断面図である。
【図31】従来の画素セル20の製造フロー中の第4工程を示す断面図である。
【図32】従来の画素セル20の製造フロー中の第5工程を示す断面図である。
【図33】従来の画素セル20の製造フロー中の第6工程を示す断面図である。
【図34】従来の画素セル20の製造フロー中の第7工程を示す断面図である。
【図35】従来の画素セル20の製造フロー中の第8工程を示す断面図である。
【図36】従来の画素セル20の製造フロー中の第9工程を示す断面図である。
【図37】従来の画素セル20の製造フロー中の第10工程を示す断面図である。
【図38】従来の画素セル20の製造フロー中の第11工程を示す断面図である。
【図39】従来の画素セル20の製造フロー中の第12工程を示す断面図である。
【図40】赤外線検出容量CF直下のSi基板厚を0μmまで、完全にエッチング除去した場合の状態を示す平面図である。
【図41】図40のQ−Q´断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1の赤外線2次元イメージセンサ1000の構成を示す概略ブロック図である。
【0054】
赤外線2次元イメージセンサ1000は、外部からの制御信号(タイミング信号、アドレス信号等を含む)を受ける制御信号入力端子2と、外部制御信号に応じて赤外線2次元イメージセンサ1000の動作を制御する信号を出力する制御回路10と、画素セル20がマトリックス状に配列されたセンサアレイ16と、制御回路10に制御されて、センサアレイ16中の行の選択を行う行セレクタ12と、制御回路10により制御されてセンサアレイ16中の列の選択を行う列セレクタ14と、センサアレイ16の列に対応して設けられ、選択された画素セルからの信号を増幅するオペアンプ22と、センサアレイの列に対応して設けられオペアンプ22からの信号の高周波ノイズの除去を行う帯域透過フィルタ24と、制御回路10により制御されて、帯域透過フィルタ24からの信号を選択的に出力端子4に与えるマルチプレクサ26とを含む。
【0055】
制御回路10は、外部からの制御信号に応じて、行セレクタ12の動作を制御する信号CLK1と、列セレクタ14の動作を制御する信号CLK2と、マルチプレクサ26の動作を制御する信号SCとを出力する。
【0056】
図2は、図1の画素セル20の構成を示す回路図である。
画素セル20は、第1の駆動信号SD1が与えられるノード202と、第2の駆動信号SD2が与えられるノード204と、ノード202と204との間に直列に接続される抵抗体R1および参照容量CRと、ノード202と204との間に直列に接続される抵抗体R2および赤外線検出容量CFと、抵抗体R1と参照容量CRとの接続ノードn1と画素セル20の第1の出力ノードnt1との間に直列に接続されるトランジスタTr1およびTr2と、抵抗体R2と赤外線検出容量CFとの接続ノードn2と画素セル20の第2の出力ノードnt2との間に直列に接続されるトランジスタTr3およびTr4とを含む。
トランジスタTr1およびTr3は、行セレクタ12からの信号Sxに応じて導通または非導通状態となり、トランジスタTr2およびTr4は、列セレクタ14からの信号Syに応じて導通または非導通状態となる。
【0057】
出力ノードnt1およnt2からは、それぞれ互いに相補な信号OUTおよび/OUTが出力される。
【0058】
また、抵抗体R1およびR2としては、特に限定されないが、たとえば、注入抵抗やポリシリコン薄膜を用いることが可能である。もちろん、他の金属材料等の薄膜を抵抗体R1およびR1として用いることが可能である。
【0059】
また、参照容量としては、特に限定されないが、赤外線が入射しないように遮蔽した赤外線検出容量と同様の強誘電体薄膜を用いたキャパシタとしたり、シリコン酸化膜を金属電極で挟んだ構造を用いることが可能である。
【0060】
さらに、赤外線検出容量としては、好ましくは、強誘電体材料、たとえば、(Ba1-x Srx )TiO3 (以下、BSTと呼ぶ)の薄膜を用いることが可能である。ただし、赤外線を吸収したことによる温度変化にともなって誘電率の変化する材料であれば、BSTに限定されるものではない。
【0061】
この赤外線検知感度は、従来の電界印加なしの純粋の焦電効果を用いた場合に比べて、数十倍であり、抵抗型ボロメータに比べても約5倍と大きなものとなる。さらに、誘電率を電界を加えて測定するためチョッパが必要なくなるという利点もある。
【0062】
さらに、参照容量との差動をとることにより格段に感度を向上させることが可能な構成を比較的簡単な構造で実現できるため、二次元アレイとした場合にも高解像度を実現しやすいとの特徴を有する。
【0063】
図3は、図2に示した回路をシリコン(Si)などの半導体基板上に集積回路として形成する際の平面パターンを示す平面図であり、図4は、図3に示した平面図のP−P´断面を示す断面図である。
【0064】
図3および図4を参照して、画素セル20は、図27に示した従来の赤外線検出素子の構成と異なる点は、まず、溝部330が、Si基板300の裏面側から赤外線検出容量CFの直下部分まで開口していることである。さらに、後に説明するするように、赤外線検出容量CFおよび溝部330の部分の平面形状が異なることである。
【0065】
その他の点は、図27に示した構成と同様であるので、同一部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0066】
なお、図3中で領域GVは、溝部330をエッチング形成する際の平面パターンであり、領域GVを囲む領域GESは、溝部330を裏面側からエッチングする際のエッチングストッパ層を形成する領域を意味する。すなわち、上述のとおり、基板表面側からホウ素(B)等のイオン(たとえば、濃度3×1016cm-3以上)を注入しておくことで、Siのエッチングレートが減少することを利用する。
【0067】
また、図3において、辺S−S´に対して鏡像対称に画素セル20に隣接する画素セルが形成される。
【0068】
強誘電体膜として用いる、BST[(Ba1-x Srx )TiO3 ]は、レーザーアブレーション法により(100)面のSi基板上に堆積されたPt/Ti/SiO2 積層構造上に約1μmの厚さ形成したものである。
【0069】
BSTのBa/Srの組成比によりキュリー温度Tcはかなり変動するが、組成比〜2(x=0.33)付近で、キュリー温度Tcは25℃〜30℃となり、その付近で誘電率は大きく変化する。最大変動部の付近では、変化率は約100/K(K:ケルビン)に達し、相対変化量に換算すると約10%変動する。
【0070】
図5は、図3に示した赤外線検出容量CF部分および溝部330(GV)の平面パターンの詳細を説明するための図であり、図6は、図5のR−R´平面を示す断面図である。
【0071】
図5にしめすように、赤外線検出容量CFのうち、容量部分100は、引出配線102および104により支持されて、溝部330の両側のSi基板に対して保持される。したがって、この容量部分100は、上述したメンブレン構造となっている。たとえば、下部電極308は、引出配線102と結合し、上部電極312は、引出配線104と結合する。
【0072】
ここで、容量部分100の平面形状は、長方形形状から、対角線方向に互いに対向する106の部分および108の部分(点線で示す)を除いた形状となっている。このような形状とすることにより、容量部分100は、積層構造ではあるものの、これら積層膜のストレスの影響が緩和される。したがって、図6に示すように、赤外線検出容量CFの直下のSi基板が存在しない場合でも、従来の構造のように、メンブレン部分がひずんでしまうことがない。
【0073】
つまり、メンブレン部分をひずませないようにするために、積層膜のストレスとして許容される範囲が広がるので、プロセスを簡略化した上で、高感度な赤外線検出素子を実現することが可能となる。
【0074】
[実施の形態2]
図7は、実施の形態2の赤外線検出容量CF部分および溝部330(GV)の平面パターンの詳細を説明するための図であり、実施の形態1の図5と対比される図である。
【0075】
実施の形態1の赤外線検出容量CF部分の構成と異なる点は、容量部(メンブレン)100の中央部分に、スリット部120が設けられていることである。
【0076】
すなわち、容量部100において、このスリット部120には、貫通孔が形成されており、実施の形態1の場合よりも、さらに積層膜のストレスによるメンブレン部の歪を抑制することが可能となっている。
【0077】
したがって、積層膜のストレスとして許容される範囲が広がるので、プロセスを簡略化した上で、高感度な赤外線検出素子を実現することが可能となる。
【0078】
[実施の形態3]
図8は、実施の形態3の赤外線検出容量CF部分および溝部330(GV)の平面パターンの詳細を説明するための図であり、実施の形態2の図7と対比される図である。
【0079】
実施の形態2の図7の構成と異なる点は、引き出し線102および104が、容量部100を支持する個所が、Si基板300に近い側の頂点部分となっていることと、この支持個所の近傍に切り込み部分120および122が設けられる構成となっていることである。
【0080】
このような形状とすることでも、実施の形態2の場合と同様に、積層膜のストレスによるメンブレン部の歪を抑制することが可能である。
【0081】
[実施の形態4]
以上説明した、実施の形態1〜3においては、赤外線検出容量CF直下のSi基板300は、その裏面からのエッチングにより完全に除去される構成となっていた。
【0082】
しかしながら、熱伝導の大きいSi基板300への熱のロスをできるだけ減少させることで、赤外線検出素子の感度を向上させるという観点からは、溝部330は、必ずしも、Si基板300の裏面側からエッチング除去する必要はない。
【0083】
実施の形態4の赤外線検出素子では、赤外線検出容量CF直下のSi基板300を基板表面側からエッチングすることにより除去することを特徴とする。
【0084】
この場合、赤外線検出容量CFの平面形状としては、図40で説明した従来の赤外線検出容量部CFの平面パターンまたは実施の形態1〜3で説明した平面形状を用いることが出来る。ただし、実施の形態1〜3で説明した平面形状を用いれば、メンブレン構造部の歪を抑制するための効果が相乗的に発揮される。
【0085】
この時、実施の形態2および3のように、容量部100の中央にスリット部120が存在すれば、基板表面側から、赤外線検出容量部CF直下のSi基板300のエッチングが促進されるという効果がある。
【0086】
このような構成とすることで、以下の説明でも明らかとなるように、Si基板300をエッチングするために、エッチャントに基板が浸される時間を減少させることができるため、強誘電体膜の膜質の劣化を抑制することが可能となる。
【0087】
図9は、実施の形態4の赤外線検出容量CFの断面構造を示す図であり、実施の形態1の図4と対比される図である。
【0088】
実施の形態4においては、Si基板300の表面側から溝部332が形成されている点を除いては、実施の形態1と同様であるので、同一部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0089】
以下、図9に示す構造の製造方法をそのフローを示す断面図について説明するが、図9に示す矢印Vの方向から見た断面図により説明をすることとする。
【0090】
図10は、上述した、図9に示す構造の製造方法の工程のうち、第1〜第3工程のフローを示す断面図である。
【0091】
なお、以下の説明では、説明の簡単のために、トランジスタ部分の製造工程については省略し、赤外線検出容量CFの形成フローのみを説明することとする。
【0092】
まず、図10(a)に示すようなSi基板300の表面上に、図10(b)に示すように、従来の方法と同様な熱酸化法により、シリコン酸化膜(SiO2膜)304を形成する。その上に、下部電極となる金属膜308、たとえば、Pt/Ti積層膜を、従来の方法と同様に、RFスパッタ+リフトオフにより形成する。
【0093】
つづいて、図10(c)に示すように、レーザアブレーション法等により、BST膜などの強誘電体薄膜310を堆積する。
【0094】
図11は、図9に示す構造の製造方法の工程のうち、第4〜第6工程のフローを示す断面図である。
【0095】
つづいて、図11(d)に示すように、強誘電体膜上に、CVD法等によりシリコン酸化膜(SiO2膜)311を形成する。その上に、上部電極となる金属膜312、たとえば、Al膜を、真空蒸着+リフトオフにより形成する。
【0096】
つぎに、図11(e)に示すように、上部電極金属膜312をマスクとして、シリコン酸化膜311および強誘電体膜310をエッチング除去する。
【0097】
最後に、図11(f)に示すように、図3のGV領域に相当する領域で開口するレジストパターンをSi基板表面に形成し、表面側からエッチングを行ない、赤外線検出容量CF直下のSi基板を除去して、溝部332を形成する。
【0098】
このときのエッチングは、TMAH22%のエッチャントで、100℃という条件で所定時間の異方性ウエットエッチングを行なうことにより、Si基板300の赤外線検出容量CF直下に溝部332が形成される。
【0099】
以上のような工程により、表面側から、赤外線検出容量CF直下のSi基板300の除去を行ない、かつ、強誘電体膜の劣化を防止することで、赤外線検出素子の感度を向上させることが可能となる。
【0100】
しかも、強誘電体膜310上にCVD法によるシリコン酸化膜を積層することで、強誘電体膜310のストレスが緩和され、メンブレン部の歪が小さくなるという効果も奏する。
【0101】
[実施の形態4の変形例1]
図12は、実施の形態4の製造方法の変形例1であって、図9に示す構造の製造方法の工程のうち、第1〜第3工程のフローを示す断面図であり、図13は、実施の形態4の製造方法の変形例1の製造方法の工程のうち、第4〜第6工程のフローを示す断面図である。
【0102】
実施の形態4の製造方法と異なる点は、図13(e)に示す第5工程において、上部電極金属膜312をマスクにシリコン酸化膜および強誘電体膜をエッチングした後に、図13(f)に示す第6工程において、さらにその上層にCVD法によりシリコン酸化膜313を形成してパターニングした後に、赤外線検出容量CF直下のSi基板300を基板表面側からエッチングする構成となっている点である。
【0103】
このような製造方法とすることで、さらにCVD成膜のシリコン酸化膜313がメンブレン部の積層構造の最上層に含まれることにより、全体としてのストレスが緩和され、メンブレン部の歪が一層減少するという効果がある。
【0104】
さらに、CVD成膜のシリコン酸化膜313が、赤外線吸収膜として作用して感度が向上するという効果もある。このような赤外線吸収膜としては、シリコン窒化膜(SiN膜)やSOG(Spin On Glass)膜でも同様の効果がある。
【0105】
[実施の形態4の変形例2]
図14は、実施の形態4の製造方法の変形例2であって、図9に示す構造の製造方法の工程のうち、第1〜第3工程のフローを示す断面図であり、図15は、実施の形態4の製造方法の変形例2の製造方法の工程のうち、第4〜第6工程のフローを示す断面図である。
【0106】
実施の形態4の製造方法と異なる点は、図14(b)に示す第2工程において、Si基板300上に形成されたシリコン酸化膜の上にさらにMgO膜305が積層されることと、強誘電体膜310上にはシリコン酸化膜311が積層されないことである。
【0107】
ここで、MgOの成膜条件としては、ターゲットにMgOを用いて、酸素流量20sccm、Ar流量50sccm、ガス圧1Pa、RF電力200Wの条件下で、スパッタリングにより成膜する。
【0108】
その他の点は、実施の形態4の製造方法と基本的に同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0109】
このような製造方法とすることで、MgO膜305がメンブレン部の積層構造中に含まれることにより、全体としてのストレスが緩和され、メンブレン部の歪が一層減少するという効果がある。
【0110】
さらに、強誘電体膜の配向性が良くなり特性が向上して、感度がよくなるという効果もある。
【0111】
[実施の形態4の変形例3]
図16は、実施の形態4の製造方法の変形例3であって、図9に示す構造の製造方法の工程のうち、第1〜第3工程のフローを示す断面図であり、図17は、実施の形態4の製造方法の変形例3の製造方法の工程のうち、第4〜第6工程のフローを示す断面図である。
【0112】
実施の形態4の製造方法と異なる点は、図16(b)に示す第2工程において、Si基板300上に形成されたシリコン酸化膜の上にさらにMgO膜305が積層されることと、強誘電体膜310上にはシリコン酸化膜311が積層されないことである。
【0113】
さらに、実施の形態4の製造方法と異なる他の点は、図17(e)に示す第5工程において、上部金属電極312をマスクに強誘電体膜310をエッチングした後に、図17(f)に示す第6工程において、さらにその上層にCVD法によりシリコン酸化膜を形成してパターニングした後に、赤外線検出容量CF直下のSi基板300を基板表面側からエッチングする構成となっている点である。
【0114】
その他の点は、実施の形態4の製造方法と基本的に同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0115】
このような製造方法とすることで、メンブレン部の全体としてのストレスが緩和され、メンブレン部の歪が一層減少するという効果がある。
【0116】
さらに、シリコン酸化膜が保護膜として作用して強誘電体膜の劣化が防止される。このような保護膜としては、シリコン窒化膜(SiN膜)やSOG(Spin On Glass)膜でも同様の効果がある。
【0117】
[実施の形態5]
実施の形態4においては、強誘電体膜を成膜し、赤外線検出容量CF部分を完成させた後に、Si基板の表面側から、赤外線検出容量CF直下のSi基板を除去して、図9に示した構造を形成した。
【0118】
この実施の形態4の製造方法は、従来の方法と比べて、強誘電体膜がSi基板のエッチャントに曝される時間は格段に短くなるものの、完全にこのエッチャントによる影響を除去はできない。
【0119】
実施の形態5の製造方法では、Si基板のエッチャントによる強誘電体膜の劣化を完全に抑制して、図9に示した構造を形成することを可能とする。ただし、赤外線検出容量CF部分の製造方法が異なる以外は、実施の形態4と同様である。
【0120】
図18は、上述した実施の形態5による、図9に示す構造の製造方法の工程のうち、第1〜第3工程のフローを示す断面図である。
【0121】
なお、以下の説明でも、説明の簡単のために、トランジスタ部分の製造工程については省略し、赤外線検出容量CFの形成フローのみを説明することとする。
【0122】
まず、図18(a)に示すようなSi基板300の表面上に、図18(b)に示すように、従来の方法と同様な熱酸化法により、シリコン酸化膜304を形成する。
【0123】
つづいて、図3のGV領域に相当する領域で開口するレジストパターンをSi基板表面に形成し、表面側からシリコン酸化膜304およびシリコン基板300のエッチングを行ない、赤外線検出容量CFが形成される領域直下のSi基板を予め除去して、溝部332を形成する。
【0124】
図19は、実施の形態5の製造方法の工程のうち、第4〜第5工程のフローを示す断面図である。
【0125】
次に、図19(d)に示すように、シリコン酸化膜304の上に、下部電極となる金属膜308、たとえば、Pt/Ti積層膜を、従来の方法と同様に、RFスパッタ+リフトオフにより形成する。つづいて、レーザアブレーション法等により、BST膜などの強誘電体薄膜310を堆積する。
【0126】
つづいて、図19(e)に示すように、強誘電体膜上に、CVD法等によりシリコン酸化膜(SiO2膜)311を形成する。その上に、上部電極となる金属膜312、たとえば、Al膜を、真空蒸着法+リフトオフにより形成する。
【0127】
以上のような工程により、表面側から、赤外線検出容量CF直下のSi基板300の除去を行ない、かつ、強誘電体膜に全く劣化を与えることなく、赤外線検出素子の感度を向上させることが可能となる。
【0128】
[実施の形態5の変形例1]
図20は、実施の形態5の製造方法の変形例1であって、図9に示す構造の製造方法の工程のうち、第1〜第3工程のフローを示す断面図であり、図21は、実施の形態5の製造方法の変形例1の製造方法の工程のうち、第4〜第5工程のフローを示す断面図である。
【0129】
実施の形態5の製造方法と異なる点は、図21(e)に示す第5工程において、上部金属電極のさらに上層にCVD法によりシリコン酸化膜313を形成する構成となっている点である。
【0130】
このような製造方法とすることで、CVD成膜のシリコン酸化膜313がメンブレン部の積層構造の最上層に含まれることにより、全体としてのストレスが緩和され、メンブレン部の歪が一層減少するという効果がある。
【0131】
また、CVD成膜のシリコン酸化膜313が赤外線吸収膜として作用して感度が向上するという効果もある。このような赤外線吸収膜としては、有機高分子膜でも同様の効果が得られる。
【0132】
[実施の形態5の変形例2]
図22は、実施の形態5の製造方法の変形例2であって、図9に示す構造の製造方法の工程のうち、第1〜第3工程のフローを示す断面図であり、図23は、実施の形態5の製造方法の変形例2の製造方法の工程のうち、第4〜第5工程のフローを示す断面図である。
【0133】
実施の形態5の製造方法と異なる点は、図22(b)に示す第2工程において、Si基板300上に形成されたシリコン酸化膜の上にさらにMgO膜が積層されることと、強誘電体膜310上にはシリコン酸化膜311が積層されないことである。
【0134】
ここで、MgOの成膜条件は、実施の形態4と同様である。
その他の点は、実施の形態4の製造方法と基本的に同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0135】
このような製造方法とすることで、MgO膜がメンブレン部の積層構造中に含まれることにより、全体としてのストレスが緩和され、メンブレン部の歪が一層減少するという効果がある。
【0136】
また、CVD成膜のシリコン酸化膜313が赤外線吸収膜として作用して感度が向上するという効果もある。このような赤外線吸収膜としては、有機高分子膜でも同様の効果が得られる。
【0137】
[実施の形態5の変形例3]
図24は、実施の形態5の製造方法の変形例3であって、図9に示す構造の製造方法の工程のうち、第1〜第3工程のフローを示す断面図であり、図25は、実施の形態5の製造方法の変形例3の製造方法の工程のうち、第4〜第5工程のフローを示す断面図である。
【0138】
実施の形態5の製造方法と異なる点は、図24(b)に示す第2工程において、Si基板300上に形成されたシリコン酸化膜の上にさらにMgO膜が積層されることと、強誘電体膜310上にはシリコン酸化膜311が積層されないことである。
【0139】
さらに、実施の形態5の製造方法と異なる点は、図25(e)に示す第5工程において、上部金属電極のさらに上層にCVD法によりシリコン酸化膜313を形成する構成となっている点である。
【0140】
その他の点は、実施の形態4の製造方法と基本的に同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0141】
このような製造方法とすることで、メンブレン部の全体としてのストレスが緩和され、メンブレン部の歪が一層減少するという効果がある。
【0142】
以上のように構成された画素セルにより、室温で高感度かつ簡易な構成の赤外線検出回路を実現することができ、それを2次元に配列した2次元センサアレイにより、高感度かつ高密度画素の室温動作赤外線2次元イメージセンサを実現することができる。
さらに、以上説明してきたような本発明にかかる赤外線検出回路および赤外線2次元イメージセンサにより、室温動作可能で小型の赤外線イメージセンサが実現されることで、簡便な構成でサーモグラフィーを得ることができる。
【0143】
これは、病気の早期発見、機器の故障診断、ガス漏れ検知などの屋内での応用にとどまらず、都市や自然環境監視、火災監視、自動車用暗視野下での運転補助、構造物の非破壊診断、侵入警戒、資源探査、気象観測等の屋外での応用を含めて幅広く適用することが可能である。
【0144】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0145】
2 制御信号入力端子、4 出力端子、10 制御回路、12 行セレクタ、14 列セレクタ、16 センサアレイ、20 画素セル、22 オペアンプ、24 帯域透過フィルタ、26 マルチプレクサ、300 シリコン基板、302 ゲート酸化膜、304 シリコン酸化膜、305 MgO膜、306 シリコン窒化膜、308 下部電極、310 強誘電体薄膜、312 上部電極、314 ゲート電極、316,318 引出し配線、330,332 溝部、1000 赤外線2次元イメージセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線検出素子の製造方法であって、
基板の主表面上に第1の引出配線および下部電極金属層を形成するステップと、
前記下部電極金属層上に強誘電体層を積層するステップと
前記強誘電体層上に第1の絶縁膜を堆積するステップと、
前記第1の絶縁層上に上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップと、
前記下部電極直下の前記基板を、前記基板の主表面側から異方性ウェットエッチングすることにより、前記下部電極、前記強誘電体層および前記上部電極層が前記第1および第2の引出配線により支持されるように、溝部を形成するステップとを備える、赤外線検出素子の製造方法。
【請求項2】
前記上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップの後に、第2の絶縁膜を堆積するステップをさらに備える、請求項1記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項3】
赤外線検出素子の製造方法であって、
基板の主表面上にMgO膜を形成するステップと、
前記MgO膜上に第1の引出配線および下部電極金属層を形成するステップと、
前記下部電極金属層上に強誘電体層を積層するステップと
前記強誘電体層上に上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップと、
前記下部電極直下の前記基板を、前記基板の主表面側から異方性ウェットエッチングすることにより、前記下部電極、前記強誘電体層および前記上部電極層が前記第1および第2の引出配線により支持されるように、溝部を形成するステップとを備える、赤外線検出素子の製造方法。
【請求項4】
前記上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップの後に、絶縁膜を堆積するステップをさらに備える、請求項3記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項5】
赤外線検出素子の製造方法であって、
基板の主表面上に第1の絶縁膜を堆積し、所定の形状を含む平面形状にパターニングするステップと、
前記第1の絶縁膜の所定の形状の直下の前記基板を、前記基板の主表面側から異方性ウェットエッチングすることにより、前記所定の形状部分が前記基板の主表面に対して支持されるメンブレンを構成するように、溝部を形成するステップと、
前記メンブレンに対して第1の引出配線および下部電極金属層を形成するステップと、
前記下部電極金属層上に強誘電体層を積層するステップと
前記強誘電体層上に第2の絶縁膜を堆積するステップと、
前記第2の絶縁膜上に上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップとを備える、赤外線検出素子の製造方法。
【請求項6】
前記上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップの後に、第3の絶縁膜を堆積するステップをさらに備える、請求項5記載の赤外線検出素子の製造方法。
【請求項7】
赤外線検出素子の製造方法であって、
基板の主表面上に第1の絶縁膜を堆積するステップと、
前記第1の絶縁膜上にMgO膜を形成し、前記第1の絶縁膜および前記MgO膜を所定の形状を含む平面形状にパターニングするステップと、
前記第1の絶縁膜の所定の形状の直下の前記基板を、前記基板の主表面側から異方性ウェットエッチングすることにより、前記所定の形状部分が前記基板の主表面に対して支持されるメンブレンを構成するように、溝部を形成するステップと、
前記メンブレン上に第1の引出配線および下部電極金属層を形成するステップと、
前記下部電極金属層上に強誘電体層を積層するステップと
前記強誘電体層上に上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップとを備える、赤外線検出素子の製造方法。
【請求項8】
前記上部電極金属層および第2の引出配線を形成するステップの後に、第2の絶縁膜を堆積するステップをさらに備える、請求項7記載の赤外線検出素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2011−13224(P2011−13224A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177760(P2010−177760)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2000−164689(P2000−164689)の分割
【原出願日】平成12年6月1日(2000.6.1)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【出願人】(592111997)
【Fターム(参考)】