説明

走行システムと、これに用いられる移動装置、記憶媒体及びデータ構造

【課題】ステーションが多数である場合等でも、移動装置の記憶容量を大幅に小さくでき、新たなステーションを追加した場合等に、容易に対応できるようにする。
【解決手段】走行ライン5上の所定の基準位置の近傍には、記憶媒体7a〜7hが設けられる。各記憶媒体には、各ステーション3a〜3eについてのステーション情報が記憶されている。該ステーション情報は、各ステーションへ移動するためには、基準位置からどの方向に進むべきかについての情報である。移動装置11は、いずれのステーションへ行くべきかを示す目的地情報が入力可能であるとともに、基準位置に移動装置11が位置する時に記憶媒体からステーション情報を読み取り可能な読取装置15と、目的地情報とステーション情報とに基づいて移動装置の進行方向を制御する制御装置17と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の走行ラインと、走行ラインの複数の位置にそれぞれ設けられた複数のステーションと、走行ラインに沿って移動する移動装置と、を備えた走行システムに関する。また、本発明は、上記走行システムで用いられる移動装置、記憶媒体及びデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記走行システムには、例えば、自動倉庫搬送システムがある。この場合、ステーションには、物品を入出庫させる入出庫ステーションと、搬入された物品を収納する収納ステーションとがある。搬入時に、移動装置は、入出庫ステーションで搬入した物品を受け取る動作を行い、所定の収納ステーションまで移動しここで物品を引き渡す動作を行う。搬出時に、移動装置は、収納ステーションで物品を受け取る動作を行い、入出庫ステーションまで移動しここで物品を搬出のために引き渡す動作を行う。
【0003】
ステーションは、上述のように移動装置が物品の受け渡し等の所定の動作を行う場所である。
【0004】
走行ラインは、例えば、磁気誘導方式のものがある。この場合、床面にはラインに沿って磁石を配置し、移動装置には磁気センサを設ける。移動装置の磁気センサは、走行ライン上の磁石を検出する。検出された磁気に基づいて、移動装置の制御装置は、走行ラインからのずれ量を求め、このずれ量に基づいて移動装置の操舵制御を行う。これにより、磁気を検出しながら走行ラインに沿って移動装置を走行させることができる。
【0005】
移動装置は、上述の操舵制御を行う制御装置や、制御データを記憶する記憶装置を有する。制御データは、目的地のステーションまで移動するためのルート情報や、目的地のステーションまでの距離情報や、目的地のステーションにおいて行うべき動作などを含むものである。移動装置は、このような制御データに基づいて、目的地のステーションまで移動し、目的地のステーションにおいて所定の動作を行う。なお、通常、複数の移動装置が走行システムにおいて使用される。
【0006】
上述したような走行システムは、例えば、下記特許文献1、2に搬送台車システムとして記載されている。
【0007】
特許文献1では、搬送台車システムにおいて、ステーションに停止するための停止用制御データを、搬送台車の代わりに、IDタグに記憶させている。IDタグは、停止位置となるステーションの手前に設けられている。また、IDタグには、停止用制御データが搬送台車に読み取り可能に記憶されている。搬送台車は、IDタグを通過する時に停止用制御データを読み取り、この制御データを用いてステーションにて停止する動作を行う。
また、特許文献1では、ステーションで物品の受け渡し動作を行うための移載用制御データを、搬送台車の代わりに、上記IDタグに記憶させている。搬送台車は、IDタグを通過する時に移載用の制御データを読み取り、この制御データを用いてステーションにて移載動作を行う。
【0008】
特許文献2には、搬送台車システムにおいて、搬送台車が微速走行なしにステーションで停止できるようにするため、被検出用マークを設けている。このマークは、停止位置の手前から停止位置自体にかけて設けられている。搬送台車は、このマークから自身の位置と残走行距離を求めて走行制御を行い、微速走行なしに停止位置で停止する。
【特許文献1】特開2005−202463 「搬送台車システム」
【特許文献2】特開2005−202464 「搬送台車システム」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、2を含めた従来の走行システムにおいては、ステーションが多数である場合や、走行ラインに多数の分岐点が存在する場合には、次の問題が生じる。
(1)移動装置は、どのようなルートで各ステーションへ移動するかについての走行データを記憶しておかなければならない。そのため、記憶容量が膨大となってしまう。
(2)新たなステーションを追加した場合、既設のステーションの一部を除去した場合、又は、走行ラインを変更した場合、その度に、全ての移動装置の上記ルート情報を書き換える必要が生じ、書き換え作業に多大な労力と時間が必要となる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、ステーションが多数である場合等でも、移動装置の記憶容量を大幅に小さくでき、新たなステーションを追加した場合等に、容易に対応できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明によると、所定の走行ラインと、該走行ラインの複数の位置にそれぞれ設けられた複数のステーションと、前記走行ラインに沿って移動する移動装置と、を備えた走行システムであって、前記走行ライン上の所定の基準位置の近傍には、記憶媒体が設けられており、各記憶媒体には、各ステーションについてのステーション情報が記憶されており、該ステーション情報は、各ステーションへ移動するためには、前記基準位置からどの方向に進むべきかについての情報であり、前記移動装置は、いずれのステーションへ行くべきかを示す目的地情報が入力可能であるとともに、前記基準位置に前記移動装置が位置する時に前記記憶媒体から前記ステーション情報を読み取り可能な読取装置と、前記目的地情報と前記ステーション情報とに基づいて移動装置の進行方向を制御する制御装置と、を有する、ことを特徴とする走行システムが提供される。
【0012】
上記走行システムでは、例えば、移動装置が走行指示や走行方向指示の入力を受け走行を開始することで基準位置に至った時に、目的地のステーションへの方向を示すステーション情報を得ることができる。そして、移動装置は、この情報に基づいて目的地のステーションまで移動することができる。従って、移動装置に各ステーションまでのルート情報を記憶する必要がなくなるので、ステーションが多数である場合等でも、移動装置の記憶容量を大幅に小さくできる。
また、新たなステーションを追加した場合等には、単に記憶媒体の情報の一部を書き換えるだけでよい。よって、走行システムに使用される移動装置が多数であっても、全ての移動装置に対して新たに情報を記憶させる必要がなくなるので、ステーションの追加等があっても、容易に対応できる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によると、前記走行ラインは、少なくとも1つの分岐点を有しており、前記記憶媒体は、前記各分岐点の近傍にそれぞれ設けられており、前記分岐点近傍の前記記憶媒体に記憶された前記ステーション情報は、各ステーションへ移動するためには、該分岐点からどの方向に進むべきかについての情報である。
【0014】
これにより、移動装置は、分岐点に至る度にステーション情報を得ることができるので、適切なルートを通って目的地のステーションへ辿りつくことができる。
【0015】
また、本発明の好ましい実施形態によると、前記記憶媒体は、前記走行ライン上の複数の基準位置の近傍に、それぞれ設けられており、各記憶媒体には、該記憶媒体に記憶される各ステーション情報が示す進行方向ごとに、当該基準位置から次の基準位置までの走行速度情報及び距離情報の少なくともいずれかが記憶されており、前記読取装置は、前記基準位置に前記移動装置が位置する時に、前記記憶媒体から前記走行速度情報及び距離情報の少なくともいずれかを読み取り可能である。
【0016】
上記構成により、制御装置は、読み取った前記走行速度情報及び距離情報の少なくともいずれかに基づいて、移動装置の走行速度制御、次の基準位置に到達したことの確認などを行うことが可能になる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によると、前記移動装置は、走行ラインに沿って前記基準位置から複数の方向に移動可能であり、前記移動装置は、前記基準位置から、前記複数の方向のうち1以上の方向へは常に前進し、前記複数の方向の残りの方向へは常に後進するようになっており、前記複数の方向のうち1以上の方向を第1方向群とし、前記複数の方向の残りの方向を第2方向群として、前記ステーション情報において、少なくとも第1方向群及び第2方向群を用いて前記複数の方向を定めている。
【0018】
このように、移動装置は、基準位置における複数の方向のうち1以上の方向(第1方向群)へは常に前進し、残りの方向(第2方向群)へは常に後進するようにした場合には、基準位置から各ステーションへ向かう方向を第1方向群及び第2方向群を用いて容易に定めることができる。
【0019】
また、上記目的を達成するため、本発明によると、所定の走行ラインに沿って移動し、該走行ラインの複数の位置にそれぞれ設けられた複数のステーション間を移動可能な移動装置であって、前記走行ライン上の所定の基準位置の近傍には、記憶媒体が設けられており、各記憶媒体には、各ステーションについてのステーション情報が記憶されており、該ステーション情報は、各ステーションへ移動するためには、前記基準位置からどの方向に進むべきかについての情報であり、いずれのステーションへ行くべきかを示す目的地情報が入力可能であるとともに、前記基準位置に前記移動装置が位置する時に前記記憶媒体から前記ステーション情報を読み取り可能な読取装置と、前記目的地情報と前記ステーション情報とに基づいて移動装置の進行方向を制御する制御装置と、を有する、ことを特徴とする移動装置が提供される。
【0020】
また、上記目的を達成するため、本発明によると、所定の走行ラインと、該走行ラインの複数の位置にそれぞれ設けられた複数のステーションと、前記走行ラインに沿って移動する移動装置と、を備える走行システムに設けられる記憶媒体であって、前記走行ライン上の所定の基準位置の近傍に設けられて使用されるものであり、前記複数のステーションにそれぞれ対応する複数のステーション情報を記憶し、各ステーション情報は、対応するステーションへ移動するためには、前記基準位置からどの方向に進むべきかについての情報であり、前記基準位置の近傍に設けられた状態において、該基準位置に前記移動装置が位置する時に、前記移動装置の読取装置は前記ステーション情報を読取可能であり、前記移動装置の制御装置は、いずれのステーションへ行くべきかを示す入力目的地情報と前記ステーション情報とに基づいて移動装置の進行方向を制御する、ことを特徴とする記憶媒体が提供される。
【0021】
また、本発明によると、複数の記憶媒体であってこれら記憶媒体は、走行ライン上の互いに異なる前記基準位置の近傍にそれぞれ設けられ、各記憶媒体には、前記複数のステーション情報がそれぞれ記憶される複数の記憶領域が設けられ、これら複数の記憶領域の位置は、ステーションによって定められているとともに、前記複数の記憶媒体の間で同じであり、前記移動装置の記憶装置には、前記読取装置により読み取られた前記複数のステーション情報が、それぞれ記憶される複数の記憶領域が設けられ、各記憶媒体の前記複数の記憶領域の位置と前記記憶装置の前記複数の記憶領域の位置とは1対1に対応している、ことを特徴とする複数の記憶媒体が提供される。
【0022】
上記発明では、各記憶媒体の複数の記憶領域の位置は、それぞれ複数のステーション情報に1対1に対応するととともに、移動装置の記憶装置に設けられる複数の記憶領域の位置にも1対1に対応する。これにより、制御装置は、目的地のステーションへ移動するための方向制御を行う時に、目的地のステーションによって定まる位置の記憶領域にアクセスすることで、方向制御に必要なステーション情報を記憶装置から抽出することができる。
【0023】
さらに、上記目的を達成するため、本発明によると、所定の走行ラインに沿って移動し、該走行ラインの複数の位置にそれぞれ設けられた複数のステーション間を移動可能な移動装置に用いられるデータ構造であって、前記走行ライン上の所定の基準位置の近傍に設けられる記憶媒体に記憶されて使用されるものであり、各ステーションにそれぞれ対応する複数の記憶領域を有し、これら各記憶領域には、対応するステーションについてのステーション情報が記憶されており、該ステーション情報は、各ステーションへ移動するためには、前記基準位置からどの方向に進むべきかについての情報であり、前記基準位置の近傍に設けられた状態において、該基準位置に前記移動装置が位置する時に、移動装置の読取装置は前記ステーション情報を読取可能であり、移動装置の制御装置は、いずれのステーションへ行くべきかを示す入力目的地情報と前記ステーション情報とに基づいて移動装置の進行方向を制御する、ことを特徴とするデータ構造が提供される。
【発明の効果】
【0024】
上述した本発明によると、ステーションが多数である場合等でも、移動装置の記憶容量を大幅に小さくでき、新たなステーションを追加した場合等に、容易に対応できるようにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態による走行システム10の構成図である。図1の例では、走行システム10は自動倉庫設備である。図1の走行システム10は、複数のステーション3a〜3eと、走行ライン5と、IDタグ7a〜7hと、管理コンピュータ9と、移動装置11と、を備える。
【0027】
ステーション3a〜3eには、外部から物品が搬入され外部へ物品を搬出するための入庫ステーションと、搬入された物品を収納する収納ステーションと、移動装置11に対し充電を行う充電ステーションと、がある。この他にも、ステーション3a〜3eには、移動装置11が待機するステーションや、移動装置11がメンテナンスを受けるためのステーションがあってもよい。
【0028】
走行ライン5は、複数のステーション3a〜3eを接続するように予め定められてものである。走行ライン5は、上述の磁気誘導方式のものであってよい。図1の例では、走行ライン5には複数の分岐点5f,5g,5hが存在する。
【0029】
IDタグ7a〜7hは、走行ライン5上の基準位置の近傍に設けられる。図1の例では、基準位置は各ステーション3a〜3eと、各分岐点5f,5g,5hである。なお、各分岐点5f,5g,5hは、図1において、実際に走行ライン5が分岐する位置よりもステーション3a側に少しずれた位置である。
各IDタグ7a〜7hには、各ステーション3a〜3eについてのステーション情報が記憶されている。ステーション情報は、走行ライン5に沿って各ステーション3a〜3eへ移動するためには、基準位置からどの方向に進むべきかについての情報である。
【0030】
管理コンピュータ9は、走行ライン5上を走行する複数の移動装置11と無線LANネットワークで接続されている。管理コンピュータ9は、いずれのステーションへ行くべきかを示す目的地情報を移動装置11に送信する。これにより、目的地情報が、移動装置11に入力される。なお、目的地情報は、オペレータが移動装置11の入力装置を用いて移動装置11に入力するなど、他の方法で移動装置11に入力されてもよい。
【0031】
移動装置11は、本実施形態では、走行ライン5に沿ってステーション間を移動し、ステーション間で物品を搬送する搬送装置である。
図2に示すように、移動装置11は、読取装置15と制御装置17とを有する。読取装置15は、基準位置に位置する時に、基準位置近傍のIDタグからステーション情報を無線通信により読み取る。制御装置17は、上記目的地情報と読み取ったステーション情報とに基づいて移動装置11の進行方向を制御する。
また、移動装置11は、読取装置15がIDタグから読み取った情報を一旦記憶する記憶装置18を有する。
なお、移動装置11は、走行車輪19と、駆動車輪21と、制御装置17に制御されることで駆動車輪21の向きを制御する操舵装置(図示せず)と、駆動車輪21を回転駆動させるための駆動モータ23とを有する。
【0032】
図3は、各IDタグ7a〜7hに記憶されるステーション情報を示している。図3において、ステーション3a〜3eをそれぞれST3a〜3eと略し、ステーション情報をST情報と略している。図3の例では、次のように、移動装置11の前進方向及び後進方向を用いてステーション情報が定められている。移動装置11は、図1の各破線矢印の方向へは常に前進し、図1の各破線矢印と反対方向へは常に後進するようになっている。これを利用して、図3において、図1の各破線矢印の方向を前進方向とし、図1の各破線矢印と反対方向を後進方向としている。即ち、これら固定された前進方向及び後進方向を用いて、各IDタグ7a〜7hから各ステーション3a〜3eへ向かう方向を定めている。
例えば、図1の分岐点5f(IDタグ7fの基準位置)では、まず、前進方向と後進方向とに区別することができる。そして、前進方向は2つの方向が存在するので、さらに左右方向を用いて、前進左方向と前進右方向とに分けることができる。このようにして、図3のIDタグ7fに示すように、分岐点5fにおける複数の方向を、前進方向、後進方向及び左右方向を用いて、前進左方向、前進右方向、後進方向により区別することができる。
【0033】
また、各IDタグ7a〜7hは、図3のように、各ステーション3a,3b,3c,3d,3eにそれぞれ対応する位置にある複数の記憶領域a,b,c,d,eを有する。これら各記憶領域a,b,c,d,eには、対応するステーション3a,3b,3c,3d,3eについてのステーション情報が記憶されている。これら複数の記憶領域a,b,c,d,eは、複数のIDタグ7a〜7hの間で同じ位置(アドレス)にすることができる。
一方、移動装置11の記憶装置18には、各IDタグ7a〜7hの複数の記憶領域a,b,c,d,eに対応する複数の記憶領域a,b,c,d,eが設けられている(図4参照)。記憶装置18のこれら複数の記憶領域a,b,c,d,eの位置は、各IDタグ7a〜7hの記憶領域a,b,c,d,eの位置と1対1に対応する。即ち、IDタグの複数の記憶領域a,b,c,d,eに記憶された複数のステーション情報は、読取装置15に読み取られると、それぞれ対応する記憶装置18の記憶領域a,b,c,d,eに記憶される。具体的には、記憶装置18において、ステーション3aのステーション情報は常に記憶領域aに記憶され、ステーション3bのステーション情報は常に記憶領域bに記憶され、・・・ステーション3eのステーション情報は常に記憶領域eに記憶される。これにより、制御装置17は、移動装置11に入力された目的地情報がステーション3aを示している場合には記憶領域aにアクセスし、目的地情報がステーション3bを示している場合には記憶領域bにアクセスし、・・・目的地情報がステーション3eを示している場合には記憶領域eにアクセスする。このようにして、制御装置17は、目的地のステーションによって定まる位置の記憶領域a,b,c,d又はeにアクセスすることで、方向制御に必要なステーション情報を抽出することができる。
【0034】
次に、移動装置11の動作を図5に基づいて説明する。図5は、移動装置11の動作を示すフローチャートである。
【0035】
まず、ステップS1において、移動装置11が、ステーション3aに位置している時に、管理コンピュータ9からステーション3cを示す目的地情報を受信したと仮定する。
この場合、移動装置11はステーション3cに位置しているので、既に、読取装置15はIDタグ7aから複数のステーション情報を読み取っており、これら複数のステーション情報は記憶装置18の記憶領域a,b,c,d,eに記憶されている。従って、ステップS3へ進む。
ステップS3において、制御装置17は、記憶装置18の記憶領域cにアクセスし、ステーション3cのステーション情報(前進方向)を抽出する(図3参照)。このステーション情報に基づいて、制御装置17は、移動装置11の進行方向を制御して、当該ステーション情報が示す前進方向へ走行する。
その後、ステップS4において、移動装置11は分岐点5fに至るので、ステップS2へ行く。
ステップS2において、読取装置15がIDタグ7fから複数のステーション情報を読み取ると、これらステーション情報が記憶装置18の記憶領域a,b,c,d,eに記憶される。
続いて、ステップS3において、制御装置17は、記憶装置18の記憶領域cにアクセスし、ステーション3cのステーション情報(前進右方向)を抽出する(図3参照)。このステーション情報に基づいて、制御装置17は、移動装置11の進行方向を制御して、当該ステーション情報が示す前進右方向へ走行する。
その後、ステップS4において、移動装置11は分岐点5gに至るので、ステップS2へ戻る。
ステップS2において、読取装置15がIDタグ7gから複数のステーション情報を読み取ると、これらステーション情報が記憶装置18の記憶領域a,b,c,d,eに記憶される。
続いて、ステップS3において、制御装置17は、記憶装置18の記憶領域cにアクセスし、ステーション3cのステーション情報(前進左方向)を抽出する(図3参照)。このステーション情報に基づいて、制御装置17は、移動装置11の進行方向を制御して、当該ステーション情報が示す前進左方向へ走行する。
その後、ステップS4において、移動装置11はステーション3cに至るので、移動装置11は目的地のステーションcにおいて、所定の動作(例えば、物品の受け取り)を行い、ステップS1へ戻る。
【0036】
続いて、ステップS1において、移動装置11が、ステーション3cに位置している時に、管理コンピュータ9からステーション3bを示す目的地情報を受信したと仮定する。
この場合、移動装置11はステーション3cに到着した時に、読取装置15はIDタグ7cから複数のステーション情報を読み取っており、これら複数のステーション情報は記憶装置18の記憶領域a,b,c,d,eに記憶されている。従って、ステップS3へ進む。
ステップS3において、制御装置17は、記憶装置18の記憶領域bにアクセスし、ステーション3bのステーション情報(後進方向)を抽出する(図3参照)。このステーション情報に基づいて、制御装置17は、移動装置11の進行方向を制御して、当該ステーション情報が示す後進方向へ走行する。
その後、ステップS4において、移動装置11は分岐点5gに至るので、ステップS2へ行く。
ステップS2において、読取装置15がIDタグ7gから複数のステーション情報を読み取ると、これらステーション情報が記憶装置18の記憶領域a,b,c,d,eに記憶される。
続いて、ステップS3において、制御装置17は、記憶装置18の記憶領域bにアクセスし、ステーション3bのステーション情報(後進方向)を抽出する(図3参照)。このステーション情報に基づいて、制御装置17は、移動装置11の進行方向を制御して、当該ステーション情報が示す後進方向へ走行する。
その後、ステップS4において、移動装置11は分岐点5fに至るので、ステップS2へ戻る。
ステップS2において、読取装置15がIDタグ7fから複数のステーション情報を読み取ると、これらステーション情報が記憶装置18の記憶領域a,b,c,d,eに記憶される。
続いて、ステップS3において、制御装置17は、記憶装置18の記憶領域bにアクセスし、ステーション3bのステーション情報(前進左方向)を抽出する(図3参照)。このステーション情報に基づいて、制御装置17は、移動装置11の進行方向を制御して、当該ステーション情報が示す前進左方向へ走行する。
その後、ステップS4において、移動装置11はステーション3bに至るので、移動装置11は目的地のステーション3bにおいて、所定の動作(例えば、物品の引渡し)を行い、ステップS1へ戻る。
このようにして、移動装置11は、目的地情報を受信し目的地のステーションへ移動することができる。
【0037】
また、本実施形態において、各IDタグ7a〜7hには、記憶された各ステーション情報が示す方向ごとに、その方向へ進んだ場合において、当該IDタグの基準位置から次の基準位置までの走行速度情報を記憶させておくことができる。この場合、制御装置17は、IDタグから読み取った走行速度情報に基づいて、次の基準位置までの走行過程で移動装置11の走行速度を制御することができる。
【0038】
また、各IDタグ7a〜7hには、記憶された各ステーション情報が示す方向ごとに、距離情報も記憶させておくことができる。この距離情報は、当該IDタグの基準位置から次の基準位置までの距離を含む。
この場合、移動装置11には、駆動モータ23の回転角を検知する回転角センサを設け、制御装置17は、駆動モータ23の回転角を表わすパルスをカウントすることで移動装置11の走行距離を検知する。
これにより、制御装置17は、距離情報が示す上記距離と上記パルスカウントにより検知した走行距離に基づいて、次の基準位置で移動装置11を停止させる制御を行うことができる。また、制御装置17は、距離情報が示す上記距離と上記パルスカウントにより検知した走行距離に基づいて次の基準位置まで移動したと判断したにもかかわらず、次のステーション情報を読み取れない場合には、異常と判断し、走行を停止する制御を行ったり、異常を示す信号を管理コンピュータ9に送信して異常を通知することができる。
【0039】
また、上記距離情報は、当該IDタグの基準位置から走行速度を変化させる位置までの距離を含んでもよい。この走行速度を変化させる位置は、複数あってもよく、例えば、走行ライン5のカーブの手前の位置やカーブ終了の位置である。
従って、制御装置17は、上記距離情報、上記パルスカウントにより検知した走行距離及び上記走行速度情報に基づいて、上記距離情報に指定された位置において、上記走行速度情報に指定された走行速度に変化させる制御を行うことができる。これに対応し、上記各走行速度情報には、複数の走行速度が指定されていてよい。
【0040】
上記走行速度情報及び距離情報は、ステーション情報により指定される各方向ごとに定められる。
上記走行速度情報の場合について説明するが、距離情報の場合も同様である。ステーション情報には、図1の場合、前進方向、前進右方向、前進左方向、後進方向の4種類が存在する。従って、図6に示すように、各IDタグ7a〜7hに、これら4種類のステーション情報に対応する4つの走行速度情報用記憶領域f,g,h,iを設けておけばよい。これら4つの記憶領域f,g,h,iの位置は、ステーション情報の場合と同様に、前進方向、前進右方向、前進左方向、後進方向により定められるとともに、複数のIDタグ7a〜7hの間で同じにすることができる。一方、記憶装置18にも、4つの走行速度情報用記憶領域f,g,h,iを設けておく。各IDタグ7a〜7hの記憶領域f,g,h,iの位置と記憶装置18の記憶領域f,g,h,iの位置は1対1に対応する。これにより、制御装置17は、まず、記憶装置18から目的地情報に基づいてステーション情報を抽出し、次に、このステーション情報が示す走行方向により定まる位置の記憶領域f,g,h又はiにアクセスすることで、当該走行方向の速度制御に必要な走行速度情報を抽出することができる。距離情報の場合も同様であり、上述のように、距離情報のための4つの記憶領域を各ID及び記憶装置18に設けておく。
【0041】
各IDタグ7a〜7h及び記憶装置18には、他の情報を記憶するための別の記憶領域を設けることもできる。例えば、基準位置から各方向について、移動装置11に搭載された障害物センサの動作をオフにするかどうかを定めた情報であってもよい。基準位置から所定の方向の走行ライン5において、走行ライン5と壁面などが近接している場合には、障害物センサがこの壁面を障害物として検知しないようにすることができる。
【0042】
本実施形態において、各ステーションのIDタグ7a〜7eには、当該ステーションで移動装置11が行うべき動作情報を記憶させておくこともできる。これにより、移動装置11は、目的地のステーションへ至ることで、当該ステーションにおいて行うべき動作情報を得ることができる。よって、記憶装置18に、各ステーションにおいて行うべき動作を記憶させておく必要がなくなる。
【0043】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、走行ライン5が磁気誘導式のものである場合について説明したが、他の方式の走行ライン5であってもよい。例えば、走行ライン5は、光学誘導式、電磁誘導方式、レーザ誘導方式であってもよい。また、走行ライン5は、移動装置11が走行するレールを用いたものでもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、走行システム10は、自動倉庫搬送システムであったが、他の走行システムであってもよい。例えば、薬品工場において移動装置11が走行ライン5に沿ってステーション間で所定の薬品を搬送する走行システムや、化学工場において移動装置11が走行ライン5に沿ってステーション間で所定の材料や製品を搬送する走行システムなどであってもよい。
【0046】
上記実施形態では、各ステーション3a〜3e及び各分岐点5f,5g,5hにそれぞれIDタグ7a〜7hを設けたが、各ステーション3a〜3eにIDタグを設けなくてもよい。この場合、例えば、分岐点3gからステーション3cへ到着した移動装置11が、次に、このステーション3cから他のステーションへ移動する場合、分岐点3gで得たステーション情報に基づいて分岐点3gへ戻ることができる。
【0047】
上記実施形態では、ステーション情報などを記憶させた記憶媒体としてIDタグを用いたが、IDタグの代わりに他の適切な記憶媒体を用いてもよい。なお、後からステーションを追加した場合にも対応できるように、各IDタグと記憶装置18の所望の箇所に空き記憶領域(即ち、使用しない記憶領域)を予め設けていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態による走行システムの構成を示す図である。
【図2】移動装置の構成を示す図である。
【図3】各IDタグの複数の記憶領域を示す図である。
【図4】記憶装置の複数の記憶領域を示す図である。
【図5】本発明の実施形態による移動装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】走行速度情報を記憶するための記憶領域を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
3a,3b,3c,3d,3e ステーション
5 走行ライン
5f,5g,5h 分岐点
7a,7b,7c,7d,7e,7f,7g,7h IDタグ(記憶媒体)
9 管理コンピュータ
10 走行システム
11 移動装置
15 読取装置
17 制御装置
18 記憶装置
19 走行車輪
21 駆動車輪
23 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走行ラインと、該走行ラインの複数の位置にそれぞれ設けられた複数のステーションと、前記走行ラインに沿って移動する移動装置と、を備えた走行システムであって、
前記走行ライン上の所定の基準位置の近傍には、記憶媒体が設けられており、
各記憶媒体には、各ステーションについてのステーション情報が記憶されており、
該ステーション情報は、各ステーションへ移動するためには、前記基準位置からどの方向に進むべきかについての情報であり、
前記移動装置は、いずれのステーションへ行くべきかを示す目的地情報が入力可能であるとともに、前記基準位置に前記移動装置が位置する時に前記記憶媒体から前記ステーション情報を読み取り可能な読取装置と、前記目的地情報と前記ステーション情報とに基づいて移動装置の進行方向を制御する制御装置と、を有する、ことを特徴とする走行システム。
【請求項2】
前記走行ラインは、少なくとも1つの分岐点を有しており、
前記記憶媒体は、前記各分岐点の近傍にそれぞれ設けられており、
前記分岐点近傍の前記記憶媒体に記憶された前記ステーション情報は、各ステーションへ移動するためには、該分岐点からどの方向に進むべきかについての情報である、ことを特徴とする請求項1に記載の走行システム。
【請求項3】
前記記憶媒体は、前記走行ライン上の複数の基準位置の近傍に、それぞれ設けられており、
各記憶媒体には、該記憶媒体に記憶される各ステーション情報が示す進行方向ごとに、当該基準位置から次の基準位置までの走行速度情報及び距離情報の少なくともいずれかが記憶されており、
前記読取装置は、前記基準位置に前記移動装置が位置する時に、前記記憶媒体から前記走行速度情報及び距離情報の少なくともいずれかを読み取り可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の走行システム。
【請求項4】
前記移動装置は、走行ラインに沿って前記基準位置から複数の方向に移動可能であり、
前記移動装置は、前記基準位置から、前記複数の方向のうち1以上の方向へは常に前進し、前記複数の方向の残りの方向へは常に後進するようになっており、
前記複数の方向のうち1以上の方向を第1方向群とし、前記複数の方向の残りの方向を第2方向群として、前記ステーション情報において、少なくとも第1方向群及び第2方向群を用いて前記複数の方向を定めている、ことを特徴とする請求項1に記載の走行システム。
【請求項5】
所定の走行ラインに沿って移動し、該走行ラインの複数の位置にそれぞれ設けられた複数のステーション間を移動可能な移動装置であって、
前記走行ライン上の所定の基準位置の近傍には、記憶媒体が設けられており、
各記憶媒体には、各ステーションについてのステーション情報が記憶されており、
該ステーション情報は、各ステーションへ移動するためには、前記基準位置からどの方向に進むべきかについての情報であり、
いずれのステーションへ行くべきかを示す目的地情報が入力可能であるとともに、前記基準位置に前記移動装置が位置する時に前記記憶媒体から前記ステーション情報を読み取り可能な読取装置と、前記目的地情報と前記ステーション情報とに基づいて移動装置の進行方向を制御する制御装置と、を有する、ことを特徴とする移動装置。
【請求項6】
所定の走行ラインと、該走行ラインの複数の位置にそれぞれ設けられた複数のステーションと、前記走行ラインに沿って移動する移動装置と、を備える走行システムに設けられる記憶媒体であって、
前記走行ライン上の所定の基準位置の近傍に設けられて使用されるものであり、
前記複数のステーションにそれぞれ対応する複数のステーション情報を記憶し、
各ステーション情報は、対応するステーションへ移動するためには、前記基準位置からどの方向に進むべきかについての情報であり、
前記基準位置の近傍に設けられた状態において、該基準位置に前記移動装置が位置する時に、前記移動装置の読取装置は前記ステーション情報を読取可能であり、
前記移動装置の制御装置は、いずれのステーションへ行くべきかを示す入力目的地情報と前記ステーション情報とに基づいて移動装置の進行方向を制御する、ことを特徴とする記憶媒体。
【請求項7】
複数の記憶媒体であり、各記憶媒体は請求項6に記載のものであって
これら記憶媒体は、走行ライン上の互いに異なる前記基準位置の近傍にそれぞれ設けられ、
各記憶媒体には、前記複数のステーション情報がそれぞれ記憶される複数の記憶領域が設けられ、
これら複数の記憶領域の位置は、ステーションによって定められているとともに、前記複数の記憶媒体の間で同じであり、
前記移動装置の記憶装置には、前記読取装置により読み取られた前記複数のステーション情報が、それぞれ記憶される複数の記憶領域が設けられ、
各記憶媒体の前記複数の記憶領域の位置と前記記憶装置の前記複数の記憶領域の位置とは1対1に対応している、ことを特徴とする複数の記憶媒体。
【請求項8】
所定の走行ラインに沿って移動し、該走行ラインの複数の位置にそれぞれ設けられた複数のステーション間を移動可能な移動装置に用いられるデータ構造であって、
前記走行ライン上の所定の基準位置の近傍に設けられる記憶媒体に記憶されて使用されるものであり、
各ステーションにそれぞれ対応する複数の記憶領域を有し、
これら各記憶領域には、対応するステーションについてのステーション情報が記憶されており、
該ステーション情報は、各ステーションへ移動するためには、前記基準位置からどの方向に進むべきかについての情報であり、
前記基準位置の近傍に設けられた状態において、該基準位置に前記移動装置が位置する時に、移動装置の読取装置は前記ステーション情報を読取可能であり、
移動装置の制御装置は、いずれのステーションへ行くべきかを示す入力目的地情報と前記ステーション情報とに基づいて移動装置の進行方向を制御する、ことを特徴とするデータ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−97500(P2008−97500A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281255(P2006−281255)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】