説明

走行型作業機及び乗用型芝刈機

【課題】組み立て作業やメンテナンス作業の容易性に優れた燃料用配管装置を提供する。
【解決手段】燃料タンク11とエンジン6とは、供給管路15と戻し管路16とで接続されている。エンジン6はディーゼルエンジンであり、燃料系補機として、燃料吸引ポンプ18、フィルター装置19、燃料噴射ポンプ20を備えている。供給管路15及び戻し管路16とも、金属パイプ30,33とその両端に接続された可撓性ホース31,32,34,35とで構成されている。供給管路15及び戻し管路16の両端部がフレキシブルな可撓性ホース31,32,34,35から成っているため、全体を金属パイプで構成した場合に比べて組み立てやメンテナンスの作業を容易に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、エンジンを搭載した走行型作業機及び乗用型芝刈機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンを搭載した走行型作業機は多種類存在している。例えばトラクタ、コンバイン、田植機、乗用型芝刈機、荷物運搬台車等である。これらの走行型作業機には当然ながら燃料タンクが搭載されており、燃料タンクとエンジンとは管路で接続されている(例えば特許文献1)。
【0003】
燃料タンクの燃料は燃料吸引ポンプで吸引されており、エンジンがディーゼルエンジンである場合は、燃料はフィルターを介して噴射ポンプに送られて、噴射ポンプから各気筒の噴射弁に送られる。また、ディーゼルエンジンでは燃料はエンジンに過剰供給されており、余剰燃料は戻し管路を介して燃料タンクに戻るようになっている。
【特許文献1】実開平7−37756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、燃料タンクとエンジンとを結ぶ管路はその全体が鋼管のような金属パイプから成っており、金属パイプの端部は継手で燃料タンクや燃料吸引ポンプに接続されている。
【0005】
しかし、管路は複雑に曲がりくねっていることが殆どであるため、管路の全体を金属パイプのみで構成すると、金属パイプの曲げ加工に手間がかかるのみでなく、金属パイプの取り付けや燃料タンク又は燃料吸引ポンプへの接続が厄介であり、このため作業機の組み立て作業やメンテナンスに手間がかかるという問題があった。
【0006】
本願発明は、この問題を解消することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため請求項1の発明は、走行機体にエンジンと燃料タンクとを搭載しており、燃料タンクとエンジンとを管路で接続している走行型作業機において、前記管路を、走行機体に固定した金属パイプと、前記金属パイプの一端又は両端に接続した可撓性ホースとで構成している。なお、金属パイプとしては鋼管や銅管、或いはアルミ管等を使用できるが、経済性と強度との点からは鋼管が好適である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記走行機体は前後方向に延びる左右一対のサイドフレームを備えており、前記管路を構成する金属パイプの大部分が車体フレームの内側に配置されている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2の走行型作業機を乗用型芝刈機に適用したもので、この芝刈機は、前記走行機体に運転席を設けており、前記エンジンは燃料噴射ポンプを備えていて運転席の前方に配置され、運転席の下方にはロータリーモアが配置され、ロータリーモアの後方には当該ロータリーモアで刈られた芝を後方にガイドするダクトが配置されており、前記燃料タンクは前記ダクトの上方でかつ運転席の後方に配置されており、前記燃料タンクの底面の高さ位置が前記エンジンにおける燃料噴射ポンプよりも高くなっている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれかにおいて、前記エンジンは燃料噴射方式のディーゼルエンジンである一方、前記管路は、燃料を燃料タンクからエンジンに送る供給管路と燃料をエンジンから燃料タンクに戻す戻し管路との2つの管路から成っており、これら両管路が金属パイプとその両端に接続した可撓性ホースとで構成されている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれかにおいて、前記エンジンは燃料タンクから燃料を吸引する燃料吸引ポンプを備えており、燃料吸引ポンプに、供給管路を構成する可撓性ホースが接続されている。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によると、管路は金属パイプと可撓性ホースとで構成されているため、金属パイプの曲げ加工の手間を従来に比べて軽減することができ、また、管路の接続作業の手間も軽減できる。また、メンテナンスに際して燃料タンクを若干持ち上げるといったことがあるが、本願発明では例えば金属パイプと燃料タンクとを可撓性ホースで接続しておくことにより、燃料タンクは可撓性ホースを接続したままで持ち上げるといったことも可能になり、このため、メンテナンス作業の手間の軽減にも貢献できる。
【0013】
請求項2のように構成すると、金属パイプは車体フレームで保護された状態になるため、横方向からの衝突に対する防御機能を格段に向上できる。請求項3のように構成すると、燃料タンクの燃料は重力によってエンジンに流れ勝手になるため、燃料タンクの送りを良好ならしめることができる(燃料に空気が混入することを防止できる)。ディーゼルエンジンのように燃料の供給管路と戻し管路とを備えている場合は、請求項4のように両方の管路を金属パイプと可撓性ホースとで構成するのが好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、作業機の一例としての乗用型芝刈機の燃料タンクに適用している。
【0015】
(1).芝刈機の概略
図1は芝刈機の概略側面図、図2は芝刈機の平面図、図3はカバー類やボンネット類を省略した状態での側面図、図4はカバー類やボンネット類を省略した状態での側面図である。まず、これら図1〜図4に基づいて芝刈機の概略を説明する。
【0016】
例えば図4に示すように、芝刈機は前後方向に長く延びる左右一対のサイドフレーム1を備えており、左右のサイドフレーム1を左右横長の連結杆2の群で連結することにより、走行機体の骨格を成す車体フレーム(シャーシ)3が構成されている。車体フレーム3は前輪4と後輪(駆動輪)5で支持されている。そして、車体フレーム3に、前から順に、エンジン6、操縦ハンドル7及び座席8を有する運転席9、後輪を駆動するための変速機構10、燃料タンク11を搭載している。また、運転席の下方にはロータリーモア12を配置している(図3では、ロータリーモア12の表示は省略している。)。
【0017】
車体フレーム3(サイドフレーム1)の後部は側面視で斜め上向きに傾斜しており、車体フレーム3の後部の下方に、ロータリーモア12で刈られた芝を後方にガイドする排出ダクト13を配置している。車体フレーム3の後端には、排出ダクト13から送られた芝を溜める籠状や網袋状等の集草体14が着脱自在に取り付けられている。
【0018】
本実施形態のエンジンは3気筒のディーゼルエンジンであり、気筒は車体の走行方向に並んでおり、また、燃料噴射用補器類は運転者から見て左側に集めて配置されている。そして、図4に一部を示すように、燃料タンク11とエンジン6とは、供給管路15と戻し管路16とで接続されている。以下、燃料用配管構造を図5以下の図面も参照して説明する。
【0019】
(2).燃料用配管の基本構造
図5は配管構造を簡略表示したブロック図であり、まず、この図5に基づいて基本構造を説明する。図5において太線の矢印は燃料の供給方向を示しており、細線の矢印は燃料の戻り方向を示している。
【0020】
既述のとおり、本実施形態のエンジン6は3気筒のディーゼルエンジンであり、燃料タンク11の燃料は供給管路15を経て燃料吸引ポンプ18に吸引され、燃料吸引ポンプ18からフィルター装置19を経て燃料噴射ポンプ20に圧送され、燃料噴射ポンプ20で霧化されて枝管21を経て各気筒22の燃料噴射弁23に送られる。
【0021】
燃料はエンジン6に過剰に供給されており、各燃料噴射弁23とフィルター装置19には余剰燃料を戻すための戻しポート24,25を設けている。各燃料噴射弁23からの戻り燃料及びフィルター装置19からの戻り燃料は、フレキシブルホース26を介してT型継手27に集まり、T型継手27から戻し管路16を経て燃料タンク11に戻る。燃料タンク11の下面には供給管路15に接続される排出口28を下向きに突設しており、燃料タンク11の上面には、戻し管路16に接続される流入口29を上向きに突設している。
【0022】
そして、供給管路15は、1本の金属パイプ30と、金属パイプ30の始端部30aに接続した始端側可撓性ホース31と、金属パイプ30の終端部30bに接続した終端側可撓性ホース32との三者から成っており、燃料タンク11の排出口28には始端側可撓性ホース31が外側からの嵌め込みによって接続されており、燃料吸引ポンプ18の流入口29には終端側可撓性ホース32が外側からの嵌め込みによって接続されている。可撓性ホース31,32は金属パイプ30に外側から嵌め込まれており、かつ、ホースボンドで固定されている。
【0023】
他方、戻し管路16も、1本の金属パイプ33と、金属パイプ33の始端部33aに接続した始端側可撓性ホース34と、金属パイプ33の終端部33bに接続された終端側可撓性ホース35との三者から成っており、T型継手27に始端側可撓性ホース34が外側からの嵌め込みによって接続され、燃料タンク11の流入口29には終端側可撓性ホース35が外側からの嵌め込みによって接続されている。
【0024】
各可撓性ホース31,32,34,35の両端部はホースバンド(図5では図示せず)で固定されている。可撓性ホース31,32,34,35の素材には特に限定はなく、例えばゴム系のものやビニル系のものなどを使用できる。
【0025】
供給管路15及び戻し管路16の両端部を可撓性ホース31,32,34,35で構成しているため、全体を金属パイプで一体に構成している場合に比べて金属パイプ30,33の加工が容易であり、また、接続・取り外しの作業も至極簡単に行えるのである。なお、供給管路15及び戻し管路16とも、金属パイプ30,33を複数本に分離構成して、それらを継手で接続することも可能である。可撓性ホース34,35が金属パイプ33に外側から嵌め込まれている点、ホースバンドで固定されている点は供給管路15と同じである。
【0026】
(3).具体的な配管形態
次に、供給管路15及び戻し管路16の具体的な配管形態を、図3,4及び図6以下の図面を参照して説明する。図6は図3のIV−IV視断面図、図7は芝刈機の後部の側面図、図8は燃料タンク11の側面図、図9は燃料タンク11の背面図、図10は芝刈機の前部の側面図、図11は部分的な平面図である。
【0027】
エンジン6と燃料タンク11とは前後に離反しているので、供給管路15及び戻し管路16は必然的に前後方向に長く伸びている。そして、供給管路15及び戻し管路16ともその全長の大部分は金属パイプ30,33で構成されており、この金属パイプ30,33は、運転席から見て左側に位置したサイドフレーム1の内側に配置されている。
【0028】
2本の金属パイプ30,33はその大部分の長さの範囲において平面視又は側面視で平行に延びるように配置されており、そして、図6に示すように、適宜な間隔を隔てた複数箇所がホルダー(クリップ)36によってサイドフレーム1に保持されている。ホルダー36はスナップ式になっており、サイドフレーム1に空けた穴に差し込むようになっている。金属パイプ30,33は、例えば線材を使用した縛り付けによってサイドフレーム1に固定すること、或いは、ねじ止め式のバンドで金属パイプ30,33をサイドフレーム1に固定するといったことも可能である。
【0029】
金属パイプ30,33は芝刈機の走行によって主として上下方向にバウンド(振動)する。この場合、2本の金属パイプ30,33がその略全長にわたって平面視で平行に延びていると、金属パイプ30,33が走行機体の振動に共振し易くなる場合があるが、本実施形態のように、金属パイプ30,31を平面視で平行に延びる状態と側面視で平行に延びる状態(平面視で重なっている状態)とに構成すると、両金属パイプ30,33が振動しにくくなるため、共振を抑制して振動による弊害を防止できる利点がある。
【0030】
図3及び図4に示すように、座席8の下方でかつ運転者から見て左側に位置したサイドフレーム1の内側面箇所には、エンジン6からの動力がドライブ軸(図示せず)を介して伝達される中継伝動ケース37が配置されており、中継伝動ケース37に設けたプーリ38からミッションケース(図示せず)にベルトを介して動力が伝達される。
【0031】
そして、供給管路15及び戻し管路16の金属パイプ30,33は、中継伝動ケース37との干渉を回避するため、中継伝動ケース37を内側に迂回するように曲げられている。
【0032】
図7に示すように、供給管路15における金属パイプ30の始端部30a及び戻し管路16における金属パイプ33の終端部33bは燃料タンク11の下方において近接しており、それら金属パイプ30,33の始端部30a及び終端部33bが、それぞれ燃料タンク11の排出口28及び流入口29に可撓性ホース31,32,34,35を介して接続されている。なお、戻し管路16の終端側可撓性ホース35は押さえ具39で燃料タンク11に固定されている。供給管路15の始端側可撓性ホース31は短いので固定する必要はない。
【0033】
燃料タンク11は全体がエンジン6よりも高くなっている。従って、燃料は重力によって燃料噴射ポンプ20まで流れ勝手になっており、このため空気が燃料に混入することを防止してエンジントラブルを確実に防止できる。なお、燃料タンク11はその底面が少なくとも燃料噴射ポンプ20よりも高い高さになっていたらよい。
【0034】
図10,11に示すように、供給管路15における金属パイプ30の終端部30bと戻し管路16における金属パイプ33の始端部33aとは殆ど同じ位置に位置しており、これらに可撓性ホース32,34が接続されている。この場合、両金属パイプ30,33の終端部30bと始端部33aとは平面視で平行に延びている。
【0035】
本実施形態のように供給管路15の金属パイプ30と戻し管路16の金属パイプ33とを略全長にわたって平行に延びる状態に配置すると、全体としてスッキリとした配管構造になる利点がある。
【0036】
供給管路と戻し管路とを備えている場合、本願発明では、いずれか一方のみを金属パイプと可撓性ホースとで構成したらよい。また、本願発明はトラクタ等の他の作業機にも適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本願発明を適用した乗用型芝刈機の概略側面図である。
【図2】芝刈機の平面図である。
【図3】カバー類やボンネット類を省略した状態での側面図である。
【図4】カバー類やボンネット類を省略した状態での側面図である。
【図5】配管構造を簡略表示したブロック図である。
【図6】図4のVI−VI視断面図である。
【図7】芝刈機の後部の側面図である。
【図8】燃料タンクの側面図である。
【図9】燃料タンクの背面図である。
【図10】芝刈機の前部の側面図である。
【図11】部分的な平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 車体フレームの一部を構成するサイドフレーム
3 走行機体を構成する車体フレーム
4,5 車輪
6 エンジン
11 燃料タンク
12 ロータリーモア
15 供給管路
16 戻し管路
18 燃料吸引ポンプ
19 フィルター装置
20 燃料噴射ポンプ
22 気筒
30,33 供給管路
31,32,34,35 可撓性ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体にエンジンと燃料タンクとを搭載しており、燃料タンクとエンジンとを管路で接続している走行型作業機であって、
前記管路を、走行機体に固定した金属パイプと、前記金属パイプの一端又は両端に接続した可撓性ホースとで構成している、
走行型作業機。
【請求項2】
前記走行機体は前後方向に延びる左右一対のサイドフレームを備えており、前記管路を構成する金属パイプの大部分が車体フレームの内側に配置されている、
請求項1に記載した走行型作業機。
【請求項3】
前記走行機体に運転席を設けており、前記エンジンは燃料噴射ポンプを備えていて運転席の前方に配置され、運転席の下方にはロータリーモアが配置され、ロータリーモアの後方には当該ロータリーモアで刈られた芝を後方にガイドするダクトが配置されており、前記燃料タンクは前記ダクトの上方でかつ運転席の後方に配置されており、前記燃料タンクの底面の高さ位置が前記エンジンにおける燃料噴射ポンプよりも高くなっている、
請求項1又は2に記載した走行型作業機としての乗用型芝刈機。
【請求項4】
前記エンジンは燃料噴射方式のディーゼルエンジンである一方、前記管路は、燃料を燃料タンクからエンジンに送る供給管路と燃料をエンジンから燃料タンクに戻す戻し管路との2つの管路から成っており、これら両管路が金属パイプとその両端に接続した可撓性ホースとで構成されている、
請求項1〜3のうちのいずれかに記載した走行型作業機。
【請求項5】
前記エンジンは燃料タンクから燃料を吸引する燃料吸引ポンプを備えており、燃料吸引ポンプに、供給管路を構成する可撓性ホースが接続されている、
請求項1〜4のうちのいずれかに記載した走行型作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−302187(P2007−302187A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135006(P2006−135006)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】