起き上がり予兆検知装置
【課題】ベッドの起き上がり動作を早く正確に検出することができる起き上がり予兆装置を提供する。
【解決手段】本発明は、ベッドに温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを具備する複数のセンサセットを設ける。そして、複数のセンサセットからのセンサ値に対してクラスタリング処理を実行し(S33)、最もヘッドボードに近いクラスタを選出する(S34)。その後、選出したクラスタの重心座標を算出し(S35)、この算出された重心座標が属する領域を判定し(S36)、重心座標が属する領域が変化し、起き上がり予兆動作の際の領域遷移に沿って起き上がり予兆状態に遷移した場合(S37〜S38)に、起き上がり予兆を検知する。
【解決手段】本発明は、ベッドに温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを具備する複数のセンサセットを設ける。そして、複数のセンサセットからのセンサ値に対してクラスタリング処理を実行し(S33)、最もヘッドボードに近いクラスタを選出する(S34)。その後、選出したクラスタの重心座標を算出し(S35)、この算出された重心座標が属する領域を判定し(S36)、重心座標が属する領域が変化し、起き上がり予兆動作の際の領域遷移に沿って起き上がり予兆状態に遷移した場合(S37〜S38)に、起き上がり予兆を検知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起き上がり予兆検知装置に関し、特に、ベッドで人体が起き上がることを検知する起き上がり予兆検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療関係の分野においては、患者により、ベッドで起き上がることが危険を伴なう場合がある。このような事情から、患者がベッドで起き上がる予兆を検知するための装置が種々開発されている。
このような装置として、ベッドのヘッドボードの上部に距離を計測するセンサを設け、このセンサによって所定の距離が検出された場合に、人体が起き上がる予兆を検知する起き上がり予兆検知装置がある(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
また、ベッド上での人体をセンシングする例があるが(例えば、非特許文献2、非特許文献3参照。)、これらは近年着目されている睡眠時間無呼吸症候群をターゲットとしているために、観測対象は「呼吸の状態」であり、起き上がり予兆検知については着目していない。
【0004】
【非特許文献1】”枯れた技術に生きるアイデア”、ITメディアニュース、平成18年1月10日検索<http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0510/25/news093.html>
【0005】
【非特許文献2】”非接触・無拘束呼吸モニタリングシステムの開発”、慶応義塾大学 理工学部 中島 真人、平成18年1月10日検索<http://www.njima.elec.keio.ac.jp/gazotoku2005/gazotoku-2005-10.pdf>
【0006】
【非特許文献3】”睡眠時の無拘束センシング技術及び睡眠評価技術”、阪井 英隆 他、平成18年1月10日検索<http://www.sanyo.co.jp/giho/no73/pdf/7312.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、距離を検知するだけのセンサを利用した場合、人物と物体とを区別することができないため、例えば、寝返りの際には布団にセンサが反応して誤報が発生する可能性がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ベッド上の起き上がり動作を正確に早く検知することができる起き上がり予兆検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の発明によれば、温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを有する複数のセンサセットと、前記複数のセンサセットに含まれる温度センサ又は距離センサからのセンサデータに基づいて、ベッド上の人体を検知したセンサセットを選択する手段と、前記選択されたセンサセットの位置と、前記選択されたセンサセットに含まれる距離センサによって測定された距離とに基づいて、クラスタリング処理を実行して、ベッド上の人体の頭の重心座標を算出する手段と、起き上がり予兆の状態を含む複数の状態と、状態遷移条件とを互いに関連付けて記憶する状態遷移テーブルと、前記算出された重心座標が前記起き上がり予兆の状態の直前の状態に対応する状態遷移条件を満たし、起き上がり予兆の状態に遷移したことを検出する手段と、前記起き上がり予兆の状態に遷移したことが検出された場合に、人体の起き上がり予兆を報知する手段とを具備することを特徴とする起き上がり予兆検知装置、である。
【0009】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記状態遷移条件は、前記ベッド上の座標系で定義された複数の領域と、前記算出された重心座標との関係が定義されていることを特徴とする起き上がり予兆検知装置、である。
本発明の第3の発明によれば、温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを有し、前記ベッドから異なる高さにそれぞれ設けられた複数のセンサセットと、前記複数のセンサセットに含まれる温度センサ又は距離センサからのセンサデータに基づいて、ベッド上の人体を検知したセンサセットを選択する手段と、前記選択されたセンサセットの温度センサによる人体の検知時間が、所定の検知時間条件を満たすことを検出する手段と、所定の検知時間条件を満たすことが検出された場合に、人体の起き上がり予兆を報知する手段とを具備することを特徴とする起き上がり予兆検知装置、である。
【0010】
本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、前記起き上がり予兆を報知する手段は、所定の検知時間条件を満たすことが検出された場合に、この所定の検知時間条件を満たすことを検出したセンサセットに含まれる距離センサによる測定された距離が所定の測定距離条件を満たす場合に、起き上がり予兆を報知することを特徴とする起き上がり予兆検知装置、である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベッド上の起き上がり動作を正確に早く検知することができる起き上がり予兆検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る起き上がり予兆検知装置について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る起き上がり予兆検知装置が使用される環境の一例を示す図である。
同図において、ベッド1の側面の枠には、人体が起き上がる動作の際に使用する補助部材としての手すり2が取り付けられている。また、人体がベッド1に横たわった際の頭側のベッドの側面にはヘッドボード3が取り付けられており、足側のベッド1の側面にはフットボード4が取り付けられている。
【0013】
このヘッドボード3及びヘッドボードを含む面5には、距離センサ及び温度センサを有するセンサセット(図示せず)が取り付けられ、このセンサセットからの出力に基づいて、本発明の実施の形態に係る起き上がり予兆検知処理が行なわれる。
距離センサは、スポット型もしくはスポット型に近い形状の領域を計測範囲とするセンサであり、温度センサは、距離センサの計測領域と一致、若しくは類似する領域の温度の変化や温度を計測するセンサである。センサセットは、距離計測結果と、温度変化の有無或いは温度計測結果とを対にして出力する。
【0014】
距離を計測するセンサの例としては、光電センサ、超音波距離センサがあり、温度変化を検知するセンサとしては焦電センサがあり、温度を検知するセンサとしてはサーモパイルがある。
図2はセンサセットの取り付け方向を説明するための図である。同図に示すように、センサセット11は、その検知方向がベッド1のマット6に対して平行になるように取り付けられる。
【0015】
図3乃至図11は、センサセットの配置を説明するための図である。
図3は、ヘッドボード3の中央に1つのセンサセット11を設けた例である。なお、任意の位置に1つ以上のセンサセットを設置しても良い。図4はヘッドボード3の上辺に沿って平行に複数のセンサセット11を配置した場合を示す図であり、図5はヘッドボード3のセンサセットの列を横方向に複数配置した場合を示す図である。
【0016】
図6は、ヘッドボード3に複数のセンサセット11を正方格子状に配置した場合を示す図であり、図7は、ヘッドボードに複数のセンサセット11を六方細密格子状に配置した場合を示す図であり、図8は、図3及び図4に示したセンサセット11を組み合わせた場合を示す図である。なお、センサセットの配置の仕方は、種々考えることができる。センサセット11は、ベッド上の人体を計測することができるように取り付けられる。
【0017】
また、センサセットを組み合わせて配置してもよい。図9は、複数のセンサセットを組み合わせた場合のセンサ群15の配置を説明するための図である。同図において、センサ群15は、ヘッドボード3の横方向の中心付近であって、人体の頭の高さ付近に配置され、かつ計測範囲が扇状になるように配置されている。図10は、図9に示したセンサ群15が取り付けられたヘッドボード3の上面図である。図11は、図9及び図10に示したセンサ群15をヘッドボード3の横方向の中心付近に垂直方向に配置した場合を示す図である。
【0018】
図9乃至図11のように、複数のセンサセット11を組み合わせたセンサ群15を使用する場合、センサを特定箇所に集約することができるので配線が容易になり、広い領域の計測が可能となる。なお、センサセット11或いはセンサ群15は、ヘッドボード3に埋め込んでも良いし、治具を用いてヘッドボード3の表面に取り付けても良い。
【0019】
また、ヘッドボード3或いはヘッドボード3を含む面5に取り付けられたセンサセット11と電気的に接続され、センサセット11のセンサデータに基づいて起き上がり予兆検知を行なう起き上がり予兆判定装置が設けられている。
図12は、判定装置20の構成を示す図である。
【0020】
同図に示すように、判定装置20は、センサ信号取得部21、記録部22、判定部23及び処理実行部24を具備している。
センサ信号取得部21は、各センサセット11に含まれる温度センサによって検知される温度(或いは温度変化)及び距離センサによって検知される距離を取得し、記録部22に記憶する。
【0021】
記録部22は、図13に示すように、センサID、センサ信号取得部21によって取得されたセンサセットからのセンサデータ(温度(又は温度変化)、距離)、判定用データ(領域情報、状態遷移テーブルなど)を格納する。
センサIDは、センサを特定するための識別情報であり、センサからのセンサデータとともに取得される。
【0022】
判定用データは、本発明の実施の形態の起き上がり予兆検知処理を行なう際に使用される情報などを格納するものであり、各実施の形態において判定の際に必要とされる情報が格納される。
例えば、頭とみなせる領域の重心座標の遷移で起き上がり予兆を検知する方式の場合、各センサセット11の設置座標を特定するための情報(三次元座標の原点、軸の方向は任意に定められる。例えば、図1参照。)、各領域の範囲を示す情報と、起き上がり予兆の際の遷移順序を規定する状態遷移テーブルなどが記録される。また、各遷移に要する最短滞在時間、最長滞在時間が規定されている場合には、これらの値も記録される。
【0023】
なお、判定用データの記録部22への記録方法は、手動で設定しても良いし、自動で設定してもよい。手動で設定する方法の例としては、予め領域情報や、起き上がり予兆時の領域遷移順序を示す状態遷移テーブル、遷移に要する最短滞在時間、最長滞在時間などを用意しておき、それらを判定装置20に入力する。
【0024】
自動で設定する場合の例としては、利用者に起き上がり動作を行なってもらい、その際のセンサセットのセンサデータを用いる。例えば、領域を自動的に分割するために、頭と思われる領域の重心座標とその移動速度を算出し、速度が速い区間の中間地点を領域の境界地点とする(二次元での領域分割を実施する場合、中間地点での重心座標の軌跡の垂直二等分線を領域の境界線とする。三次元での領域分割を実施する場合、中間地点での重心座標の軌跡を垂線とする平面を、領域の境界面とする。)。
【0025】
また、センサセットの反応時間を計測し、前後に数秒程度の余裕を持たせ、それぞれセンサ反応最短時間と最長時間として記録する。センサデータは、時間と関連付けて記録してもよく、この時間と対応付けて記録されるセンサデータは一定個数若しくは一定時間長のみ記録されるもののし、前に記録されたセンサデータは新規なセンサデータの取得や時間の経過とともに削除されていくものとする。
【0026】
判定部23は、センサ信号取得部21によって取得されたセンサデータ及び記録部22に記憶されたデータを使用して起き上がり予兆判定処理を行ない、その判定結果を処理実行部24に出力する。処理実行部24は、判定部23により起き上がり予兆が検知された場合に、外部装置31に対して起き上がり予兆を検知したことを報知させる。
【0027】
なお、判定装置20は、ロジック回路を用いて実現してもよいし、センサからの信号を受信する回路を備え、判定処理を行なうプログラムを搭載したコンピュータとして実現してもよい。
<起き上がり予兆検知処理の前処理>
起き上がり予兆検知処理の前処理として、人体を計測しているセンサセットの出力値のみを起き上がり予兆検知処理に利用するため、センサを選別する処理を実施する。温度変化を示すセンサを用いる場合、温度変化を示すセンサが反応しているセンサセットの距離センサの値を用いる。
【0028】
温度を検知するセンサを用いる場合、予め定めた温度範囲内の値を示す温度センサセットの距離センサの値を用いる。ただし、「人体の温度に近い範囲」については予め指定する。なお、予め条件に合うセンサセットのセンサデータのみを記録部22に記録しても良いし、全センサセットのデータを記録部22に記録しておき、起き上がり予兆判定の際に、前処理として利用する情報を選別してもよい。
【0029】
図14は、温度変化を検知する温度センサを利用する場合に、起き上がり予兆判定の際に利用するセンサデータを選択する前処理を説明するためのフローチャートである。同図において、全てのセンサセットのセンサデータを読み込み(S1)、全てのセンサセットのセンサデータについて、温度変化を示す温度センサが反応しているか否かの判断が行なわれる(S2)。S2において、反応していないと判断された場合には、当該センサデータを削除して(S3)、反応している場合には削除は行なわれない。このようにして、起き上がり予兆検知処理の際に使用されるセンサデータが選択される。
【0030】
図15は、温度を検知する温度センサを利用する場合に、起き上がり予兆判定の際に利用するセンサデータを選択する前処理を説明するためのフローチャートである。同図において、全てのセンサセットのセンサデータを読み込み(S11)、全てのセンサセットのセンサデータについて、読み込まれたセンサデータによって示される温度が予め規定した範囲内か否かの判断が行なわれる(S12)。S12において、範囲外と判断された場合には、当該センサデータを削除して(S13)、範囲内の場合には削除は行なわれない。このようにして、起き上がり予兆検知処理の際に使用されるセンサデータが選択される。
【0031】
また、計算量や誤報の確率を減らすために、予め起き上がり予兆を検知する際の人体(特に頭)が通過する範囲を定めて、この範囲内の値を示す距離センサのみを起き上がり予兆検知に用いる前処理を追加してもよい。
図16は、所定の距離センサの値のみを起き上がり予兆検知処理に使用する場合の前処理を説明するためのフローチャートである。同図において、全てのセンサセットのセンサデータを読み込み(S21)、センサセットに含まれる距離センサの距離によって測定された値が予め定められた範囲内か否かの判断が行なわれる(S22)。範囲外と判断された場合には、当該センサデータを削除して(S23)、範囲内の場合には削除は行なわれない。このようにして、起き上がり予兆検知処理の際に使用されるセンサデータが選択される。
<重心座標の遷移を利用した起き上がり予兆検知>
図17は、前処理を使用したセンサデータに対して行なわれる重心座標の遷移を利用した起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
【0032】
ここでは、前提として、センサセット11は、ヘッドボード3及びその延長面上に正方格子状、六方細密格子状のように、面的な広がりをもって配置されているものとする。また、各センサセットに含まれる温度センサ及び距離センサの設置座標については、既知であり、予め記録部22に記録されているものとする。
【0033】
まず、重心座標が属する領域情報を初期化した後(S31)、人体を計測しているセンサデータの読み込みを行なう(S32)。その後、人体を計測しているセンサセットの距離センサにより計測された距離と、当該距離センサの設置座標とに基づいて、クラスタリングを実施する(S33)。
【0034】
次に、クラスタリング処理の結果、最もヘッドボード3に近いクラスタを「頭」とみなして選出し(S34)、この選出されたクラスタの三次元重心座標を算出する(S35)。その後、この算出された三次元重心座標が属する領域の判定を行なう(S36)。
【0035】
この領域は、予め試行により、ベッドの上方の空間を頭が上がる際に通過する領域を複数の領域に分割して、この分割された領域の座標を示す情報を記録部22に記録しておく。また、起き上がり予兆動作の際には、頭がそれらの分割された領域をどのような順序で通過するのかを示す状態遷移テーブルを記録部22に予め記録する。
【0036】
S36において領域の判定が行なわれた後、重心座標が属する領域が変化したか否かの判断が行なわれる(S37)。S37において、重心座標が変化していないと判断された場合にはS32の処理に戻る。
一方、S37において重心座標が変化していると判断された場合には、人体の起き上がり予兆動作の際の領域遷移に沿っているか否かの判断が行なわれる(S38)。S38において、領域遷移に沿っていないと判断された場合には、S31の処理に戻る。この領域遷移に沿っているか否かの判断は、状態遷移テーブルによって定義された状態遷移条件に基づいて判断される。状態遷移条件は、ベッド上の座標系で定義された複数の領域と、算出された重心座標との関係で定義される。
【0037】
図19は、状態遷移テーブルを示す図であり、図20は、図19に示した状態遷移テーブルによって規定される状態遷移図である。同図において、起き上がり予兆ではない状態J1において、重心座標が領域Aに属する場合、起き上がり予兆中(初期)の状態J2に遷移する。起き上がり予兆中(初期)の状態J2において、重心座標が領域Bに属する場合、起き上がり予兆中(中期)の状態J3に遷移する。起き上がり予兆中(中期)の状態J3において、重心座標が領域Cに属する場合、起き上がり予兆中(後期)の状態J4に遷移する。起き上がり予兆中(後期)の状態J4において、重心座標が領域Dに属する場合、起き上がり予兆状態J5に遷移する。S38においては、図19に示した状態遷移テーブルを参照して、起き上がり予兆動作の際の領域遷移に沿っているか否かの判断が行なわれる。
【0038】
S38において、領域遷移に沿っていると判断された場合には、重心座標が属する領域情報を更新し(S39)、起き上がり予兆状態か否かの判断が行なわれる(S40)。すなわち、重心座標が属する領域を判定し、領域の遷移が予め状態遷移テーブルにより定めた状態遷移条件に沿って遷移して起き上がった状態に到達した場合に起き上がり予兆が検知されることになる。
【0039】
S40において起き上がり予兆状態ではないと判断された場合には、S32の処理に戻り、起き上がり予兆状態であると判断された場合には、判定部23は起き上がり予兆を検知したことを処理実行部24に通知する。処理実行部24は、判定部23から起き上がり予兆を検知したことが通知されると、外部装置31に対して起き上がり予兆を検知したことを報知させる。
【0040】
なお、三次元重心座標をそのまま使用するだけではなく、三次元座標を例えば、ヘッドボード面に射影して二次元座標とし、二次元平面内での重心座標の遷移を用いても良い。この場合、三次元空間での領域分割結果を二次元空間に射影した際に、複数の領域に属する二次元空間領域は新たな領域とみなし、この新たな領域を含めた状態で起き上がり予兆の際の重心座標の遷移を記述する。
【0041】
重心座標のわずかなぶれや、起き上がり予兆以外の動作、例えば、ベッドサイドテーブルに手をのばした場合の素早い手の動きなどによる誤検出を低減するために、重心座標が各状態に滞在するべき最短滞在時間を定めて、この最短滞在時間以下の時間で重心座標が次の状態に遷移した場合、この遷移を削除してもよい。
【0042】
重心座標が特定の状態に長く滞在している場合、例えば、起き上がり予兆途中の不安定な体制の状態の時の重心座標が長時間現れる場合には起き上がり予兆以外の動作であると判定してもよい。
図18、状態滞在時間の制限がある重心座標の遷移を利用した起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
【0043】
まず、重心座標が属する領域情報を初期化し(S51)、タイマのリセットを行ない(S52)、人体を計測しているセンサデータの読み込みを行なう(S53)。その後、人体を計測しているセンサセットの距離センサにより計測された距離と、当該距離センサの設置座標とに基づいて、クラスタリングを実施する(S54)。
【0044】
次に、クラスタリング処理の結果、最もヘッドボード3に近いクラスタを「頭」とみなして選出し(S55)、この選出されたクラスタの三次元重心座標を算出する(S56)。その後、この算出された三次元重心座標が属する領域の判定を行なう(S57)。
【0045】
この領域は、予め試行により、ベッドの上方の空間を頭が上がる際に通過する領域を複数の領域に分割して、この分割された領域の座標を示す領域情報を記録部22に記録しておく。また、起き上がり予兆動作の際には、頭がそれらの分割された領域をどのような順序で通過するのかを示す状態遷移テーブルを記録部22に予め記録する。
【0046】
S57において領域の判定が行なわれた後、重心座標が属する領域が変化したか否かの判断が行なわれる(S58)。S58において、重心座標が変化していないと判断された場合にはS53の処理に戻る。
一方、S58において重心座標が変化していると判断された場合には、最短、最長滞在時間の条件を満たしているか否かの判断が行なわれる(S59)。S59において、条件を満たしていないと判断された場合には、S51の処理に戻る。
【0047】
S59における最短、最長滞在時間の条件を満たしていると判断された場合には、人体の起き上がり予兆動作の際の領域遷移に沿っているか否かの判断が行なわれる(S60)。S60において、領域遷移に沿っていないと判断された場合には、S51の処理に戻る。この領域遷移に沿っているか否かの判断は、状態遷移テーブルによって定義された状態遷移条件に基づいて判断される。
【0048】
S60において、領域遷移に沿っていると判断された場合には、重心座標が属する領域情報を更新し(S61)、起き上がり予兆状態か否かの判断が行なわれる(S62)。すなわち、重心座標が属する領域を判定し、領域の遷移が予め状態遷移テーブルにより定めた状態遷移条件に沿って遷移して起き上がった状態に到達した場合に起き上がり予兆が検知されることになる。
【0049】
S62において起き上がり予兆状態ではないと判断された場合には、S52の処理に戻り、起き上がり予兆状態であると判断された場合には、判定部23は起き上がり予兆を検知したことを処理実行部24に通知する。処理実行部24は、判定部23から起き上がり予兆を検知したことが通知されると、外部装置31に対して起き上がり予兆を検知したことを報知させる。
【0050】
なお、ある時点でのサンプリングデータから算出した重心座標値ではなく、過去M回分の重心座標値の平均値や中間値を使って、領域判定を実施してもよい。重心座標値を算出する際に、ヘッドボードに近いセンサデータに大きな重みをおく重み付けを実施しても良い。
【0051】
さらに、クラスタの重心ではなく、クラスタの中間値や平均値を使っても良い。クラスタのサイズが予め定めた規定値以下の場合は、頭以外の物体が検知されている可能性が高いため、このクラスタを破棄する前処理を加えてもよい。クラスタのサイズが予め定められた規定位置以上の場合、頭以外の物体を検知していたり、頭と布団や肩をまとめてクラスタリングしている可能性が高いため、このクラスタを破棄する前処理を加えてもよい。
<センサセットの設置座標を工夫した起き上がり予兆検知処理>
本実施の形態においては、センサセットの設置座標を工夫する。ベッド上に布団をかけた上体で人体が横になっている場合に、マット面から布団が最も高くなっている部分の高さを計測する。計測する手段は、メジャーを使用しても良いし、レンズファインダを使用しても良い。この際、1回の計測結果を使用しても良いが、複数回計測して、見落としミスを減らしたいのなら最低値、誤反応を減らしたいのなら最高値、計測毎の計測結果の変化によるチューニング程度のばらつきを減らしたいのなら平均値や中間値を利用しても良い。
【0052】
高さ計測によって取得した布団の高さをH(F)とする。ヘッドボード及びその延長面上に、マットからH(F)以上の高さの部分に、マット面に対して垂直方向のセンサセットの列を、マットの面と平行な方向に複数配置する。最も早いタイミングで起き上がり予兆を検知したい場合、列状に配置したセンサセットの1つ以上が反応した場合を頭があがったとして判定し、起き上がり予兆を検知する。
【0053】
図21は、このようにセンサセットの列を配置した場合のセンサセンサセットが一定時間以上反応した場合における起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
全てのセンサセット用のタイマを初期化し(S71)、S72〜S76の繰り返し処理を行なう。すなわち、センサセットのセンサデータを読み込み(S72)、このセンサセットのタイマが稼働中か否かの判断が行なわれる(S73)。
【0054】
S73において、タイマが稼働中ではないと判断された場合には、当該センサセットが反応しているか否かの判断が行なわれ(S74)、反応していないと判断された場合には、次のセンサセットについてS72の処理に移る。一方、S74において、センサセットが反応していると判断された場合には、そのセンサセット用のタイマを開始し(S75)、次のセンサセットについてS72の処理に移る。
【0055】
S73において、タイマが稼働中であると判断された場合には、当該センサセットが反応しているか否かの判断が行なわれ(S76)、反応していると判断された場合には、次のセンサセットについてS72の処理に移る。一方、S76において、センサセットが反応していないと判断された場合には、そのセンサセット用のタイマを停止し(S77)、反応継続時間が規定範囲内(例えば、反応最短時間以上か)か否かの判断が行なわれる(S78)。
【0056】
S78において、規定範囲内ではないと判断された場合には、次のセンサセットについてS72の処理に移る。一方、規定範囲内であると判断された場合には、起き上がり予兆が検知される。判定部23は起き上がり予兆を検知したことを処理実行部24に通知する。処理実行部24は、判定部23から起き上がり予兆を検知したことが通知されると、外部装置31に対して起き上がり予兆を検知したことを報知させる。予め試行により、「起き上がり予兆の時に頭が通過する位置は、ヘッドボードからどの程度の距離にあるのか(距離センサの計測結果が示す値の範囲)」を定めて、列状に配置したセンサセットの1つ以上の距離計測結果の値が、予め定められた範囲内の値となった場合を起き上がり予兆と検知しても良い。
【0057】
図22は、センサセットに含まれる距離センサの距離に基づいて行なわれる起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
全てのセンサセット用のタイマを初期化し(S81)、S82〜S88の繰り返し処理を行なう。すなわち、センサセットのセンサデータを読み込み(S82)、このセンサセットのタイマは稼働中か否かの判断が行なわれる(S83)。
【0058】
S83において、タイマが稼働中ではないと判断された場合には、当該センサセットが反応しているか否かの判断が行なわれ(S84)、反応していないと判断された場合には、次のセンサセットについてS82の処理に移る。一方、S84において、センサセットが反応していると判断された場合には、当該センサセットの距離センサによる計測値が規定範囲内の値か否かの判断が行なわれ(S85)、規定範囲内の値であると判断された場合には、そのセンサセット用のタイマを開始し(S86)、次のセンサセットについてS82の処理に移る。S85において、当該センサセットの距離センサによる計測値が規定範囲内の値ではないと判断された場合には、次のセンサセットについてS82の処理に移る。
【0059】
S83において、タイマが稼働中であると判断された場合には、当該センサセットが反応しているか否かの判断が行なわれ(S87)、反応していると判断された場合には、当該センサセットの計測値が規定範囲内の値か否かの判断が行なわれ、指定範囲内であると判断された場合には、次のセンサセットについてS82の処理に移る。
【0060】
一方、S87において、センサセットが反応していないと判断された場合及びS88において計測値が規定範囲内の値ではないと判断された場合には、そのセンサセット用のタイマを停止し(S89)、反応継続時間が規定範囲内(例えば、反応最短時間以上か)か否かの判断が行なわれる(S90)。
【0061】
S90において、規定範囲内ではないと判断された場合には、次のセンサセットについてS82の処理に移る。一方、規定範囲内であると判断された場合には、起き上がり予兆が検知される。判定部23は起き上がり予兆を検知したことを処理実行部24に通知する。処理実行部24は、判定部23から起き上がり予兆を検知したことが通知されると、外部装置31に対して起き上がり予兆を検知したことを報知させる。
したがって、本発明の実施の形態によれば、センサセットを所定の高さに取り付けるとともに、当該センサセットからのセンサデータに対して前処理を施した後に、起き上がり予兆検知処理を行なうので、ベッド上の人体の起き上がり予兆を正確に検知することができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0063】
また、実施形態に記載した手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウエア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布することもできる。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウエア手段(実行プログラムのみならずテーブルやデータ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウエア手段を構築し、このソフトウエア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書でいう記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部あるいはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスクや半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係る起き上がり予兆検知装置が使用される環境の一例を示す図である。
【図2】センサセットの取り付け方向を説明するための図である。
【図3】ヘッドボードの中央に1つのセンサセットを設けた例である。
【図4】ヘッドボードの上辺に沿って平行に複数のセンサセットを配置した場合を示す図である。
【図5】ヘッドボードの上辺に沿って平行に複数のセンサセットの列を配置した場合を示す図である。
【図6】ヘッドボードに複数のセンサセットを正方格子状に配置した場合を示す図である。
【図7】ヘッドボードに複数のセンサセットを六方細密格子状に配置した場合を示す図である。
【図8】図3及び図4に示したセンサセットを組み合わせた場合を示す図である。
【図9】複数のセンサセットを組み合わせた場合のセンサ群の配置を説明するための図である。
【図10】図9に示したセンサ群が取り付けられたヘッドボードの上面図である。
【図11】図9及び図10に示したセンサ群をヘッドボードの横方向の中心付近に垂直方向に配置した場合を示す図である。
【図12】判定装置の構成を示す図である。
【図13】記録部を示す図である。
【図14】温度変化を検知する温度センサを利用する場合に、起き上がり予兆判定の際に利用するセンサデータを選択する前処理を説明するためのフローチャートである。
【図15】温度を検知する温度センサを利用する場合に、起き上がり予兆判定の際に利用するセンサデータを選択する前処理を説明するためのフローチャートである。
【図16】所定の距離センサの値のみを起き上がり予兆検知処理に使用する場合の前処理を説明するためのフローチャートである。
【図17】前処理を使用したセンサデータに対して行なわれる重心座標の遷移を利用した起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
【図18】状態滞在時間の制限がある重心座標の遷移を利用した起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
【図19】状態遷移テーブルを示す図である。
【図20】図19に示した状態遷移テーブルによって規定される状態遷移図である。
【図21】センサセットの温度センサが一定時間以上反応した場合における起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
【図22】センサセットに含まれる距離センサの距離に基づいて行なわれる起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1…ベッド、2…手すり、3…ヘッドボード、4…フッドボード、5…ヘッドボードを含む面、6…マット、11…センサセット、15…センサセット、21…センサ信号取得部、22…記録部、23…判定部、24…処理実行部、31…外部装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、起き上がり予兆検知装置に関し、特に、ベッドで人体が起き上がることを検知する起き上がり予兆検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療関係の分野においては、患者により、ベッドで起き上がることが危険を伴なう場合がある。このような事情から、患者がベッドで起き上がる予兆を検知するための装置が種々開発されている。
このような装置として、ベッドのヘッドボードの上部に距離を計測するセンサを設け、このセンサによって所定の距離が検出された場合に、人体が起き上がる予兆を検知する起き上がり予兆検知装置がある(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
また、ベッド上での人体をセンシングする例があるが(例えば、非特許文献2、非特許文献3参照。)、これらは近年着目されている睡眠時間無呼吸症候群をターゲットとしているために、観測対象は「呼吸の状態」であり、起き上がり予兆検知については着目していない。
【0004】
【非特許文献1】”枯れた技術に生きるアイデア”、ITメディアニュース、平成18年1月10日検索<http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0510/25/news093.html>
【0005】
【非特許文献2】”非接触・無拘束呼吸モニタリングシステムの開発”、慶応義塾大学 理工学部 中島 真人、平成18年1月10日検索<http://www.njima.elec.keio.ac.jp/gazotoku2005/gazotoku-2005-10.pdf>
【0006】
【非特許文献3】”睡眠時の無拘束センシング技術及び睡眠評価技術”、阪井 英隆 他、平成18年1月10日検索<http://www.sanyo.co.jp/giho/no73/pdf/7312.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、距離を検知するだけのセンサを利用した場合、人物と物体とを区別することができないため、例えば、寝返りの際には布団にセンサが反応して誤報が発生する可能性がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ベッド上の起き上がり動作を正確に早く検知することができる起き上がり予兆検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の発明によれば、温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを有する複数のセンサセットと、前記複数のセンサセットに含まれる温度センサ又は距離センサからのセンサデータに基づいて、ベッド上の人体を検知したセンサセットを選択する手段と、前記選択されたセンサセットの位置と、前記選択されたセンサセットに含まれる距離センサによって測定された距離とに基づいて、クラスタリング処理を実行して、ベッド上の人体の頭の重心座標を算出する手段と、起き上がり予兆の状態を含む複数の状態と、状態遷移条件とを互いに関連付けて記憶する状態遷移テーブルと、前記算出された重心座標が前記起き上がり予兆の状態の直前の状態に対応する状態遷移条件を満たし、起き上がり予兆の状態に遷移したことを検出する手段と、前記起き上がり予兆の状態に遷移したことが検出された場合に、人体の起き上がり予兆を報知する手段とを具備することを特徴とする起き上がり予兆検知装置、である。
【0009】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記状態遷移条件は、前記ベッド上の座標系で定義された複数の領域と、前記算出された重心座標との関係が定義されていることを特徴とする起き上がり予兆検知装置、である。
本発明の第3の発明によれば、温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを有し、前記ベッドから異なる高さにそれぞれ設けられた複数のセンサセットと、前記複数のセンサセットに含まれる温度センサ又は距離センサからのセンサデータに基づいて、ベッド上の人体を検知したセンサセットを選択する手段と、前記選択されたセンサセットの温度センサによる人体の検知時間が、所定の検知時間条件を満たすことを検出する手段と、所定の検知時間条件を満たすことが検出された場合に、人体の起き上がり予兆を報知する手段とを具備することを特徴とする起き上がり予兆検知装置、である。
【0010】
本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、前記起き上がり予兆を報知する手段は、所定の検知時間条件を満たすことが検出された場合に、この所定の検知時間条件を満たすことを検出したセンサセットに含まれる距離センサによる測定された距離が所定の測定距離条件を満たす場合に、起き上がり予兆を報知することを特徴とする起き上がり予兆検知装置、である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベッド上の起き上がり動作を正確に早く検知することができる起き上がり予兆検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る起き上がり予兆検知装置について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る起き上がり予兆検知装置が使用される環境の一例を示す図である。
同図において、ベッド1の側面の枠には、人体が起き上がる動作の際に使用する補助部材としての手すり2が取り付けられている。また、人体がベッド1に横たわった際の頭側のベッドの側面にはヘッドボード3が取り付けられており、足側のベッド1の側面にはフットボード4が取り付けられている。
【0013】
このヘッドボード3及びヘッドボードを含む面5には、距離センサ及び温度センサを有するセンサセット(図示せず)が取り付けられ、このセンサセットからの出力に基づいて、本発明の実施の形態に係る起き上がり予兆検知処理が行なわれる。
距離センサは、スポット型もしくはスポット型に近い形状の領域を計測範囲とするセンサであり、温度センサは、距離センサの計測領域と一致、若しくは類似する領域の温度の変化や温度を計測するセンサである。センサセットは、距離計測結果と、温度変化の有無或いは温度計測結果とを対にして出力する。
【0014】
距離を計測するセンサの例としては、光電センサ、超音波距離センサがあり、温度変化を検知するセンサとしては焦電センサがあり、温度を検知するセンサとしてはサーモパイルがある。
図2はセンサセットの取り付け方向を説明するための図である。同図に示すように、センサセット11は、その検知方向がベッド1のマット6に対して平行になるように取り付けられる。
【0015】
図3乃至図11は、センサセットの配置を説明するための図である。
図3は、ヘッドボード3の中央に1つのセンサセット11を設けた例である。なお、任意の位置に1つ以上のセンサセットを設置しても良い。図4はヘッドボード3の上辺に沿って平行に複数のセンサセット11を配置した場合を示す図であり、図5はヘッドボード3のセンサセットの列を横方向に複数配置した場合を示す図である。
【0016】
図6は、ヘッドボード3に複数のセンサセット11を正方格子状に配置した場合を示す図であり、図7は、ヘッドボードに複数のセンサセット11を六方細密格子状に配置した場合を示す図であり、図8は、図3及び図4に示したセンサセット11を組み合わせた場合を示す図である。なお、センサセットの配置の仕方は、種々考えることができる。センサセット11は、ベッド上の人体を計測することができるように取り付けられる。
【0017】
また、センサセットを組み合わせて配置してもよい。図9は、複数のセンサセットを組み合わせた場合のセンサ群15の配置を説明するための図である。同図において、センサ群15は、ヘッドボード3の横方向の中心付近であって、人体の頭の高さ付近に配置され、かつ計測範囲が扇状になるように配置されている。図10は、図9に示したセンサ群15が取り付けられたヘッドボード3の上面図である。図11は、図9及び図10に示したセンサ群15をヘッドボード3の横方向の中心付近に垂直方向に配置した場合を示す図である。
【0018】
図9乃至図11のように、複数のセンサセット11を組み合わせたセンサ群15を使用する場合、センサを特定箇所に集約することができるので配線が容易になり、広い領域の計測が可能となる。なお、センサセット11或いはセンサ群15は、ヘッドボード3に埋め込んでも良いし、治具を用いてヘッドボード3の表面に取り付けても良い。
【0019】
また、ヘッドボード3或いはヘッドボード3を含む面5に取り付けられたセンサセット11と電気的に接続され、センサセット11のセンサデータに基づいて起き上がり予兆検知を行なう起き上がり予兆判定装置が設けられている。
図12は、判定装置20の構成を示す図である。
【0020】
同図に示すように、判定装置20は、センサ信号取得部21、記録部22、判定部23及び処理実行部24を具備している。
センサ信号取得部21は、各センサセット11に含まれる温度センサによって検知される温度(或いは温度変化)及び距離センサによって検知される距離を取得し、記録部22に記憶する。
【0021】
記録部22は、図13に示すように、センサID、センサ信号取得部21によって取得されたセンサセットからのセンサデータ(温度(又は温度変化)、距離)、判定用データ(領域情報、状態遷移テーブルなど)を格納する。
センサIDは、センサを特定するための識別情報であり、センサからのセンサデータとともに取得される。
【0022】
判定用データは、本発明の実施の形態の起き上がり予兆検知処理を行なう際に使用される情報などを格納するものであり、各実施の形態において判定の際に必要とされる情報が格納される。
例えば、頭とみなせる領域の重心座標の遷移で起き上がり予兆を検知する方式の場合、各センサセット11の設置座標を特定するための情報(三次元座標の原点、軸の方向は任意に定められる。例えば、図1参照。)、各領域の範囲を示す情報と、起き上がり予兆の際の遷移順序を規定する状態遷移テーブルなどが記録される。また、各遷移に要する最短滞在時間、最長滞在時間が規定されている場合には、これらの値も記録される。
【0023】
なお、判定用データの記録部22への記録方法は、手動で設定しても良いし、自動で設定してもよい。手動で設定する方法の例としては、予め領域情報や、起き上がり予兆時の領域遷移順序を示す状態遷移テーブル、遷移に要する最短滞在時間、最長滞在時間などを用意しておき、それらを判定装置20に入力する。
【0024】
自動で設定する場合の例としては、利用者に起き上がり動作を行なってもらい、その際のセンサセットのセンサデータを用いる。例えば、領域を自動的に分割するために、頭と思われる領域の重心座標とその移動速度を算出し、速度が速い区間の中間地点を領域の境界地点とする(二次元での領域分割を実施する場合、中間地点での重心座標の軌跡の垂直二等分線を領域の境界線とする。三次元での領域分割を実施する場合、中間地点での重心座標の軌跡を垂線とする平面を、領域の境界面とする。)。
【0025】
また、センサセットの反応時間を計測し、前後に数秒程度の余裕を持たせ、それぞれセンサ反応最短時間と最長時間として記録する。センサデータは、時間と関連付けて記録してもよく、この時間と対応付けて記録されるセンサデータは一定個数若しくは一定時間長のみ記録されるもののし、前に記録されたセンサデータは新規なセンサデータの取得や時間の経過とともに削除されていくものとする。
【0026】
判定部23は、センサ信号取得部21によって取得されたセンサデータ及び記録部22に記憶されたデータを使用して起き上がり予兆判定処理を行ない、その判定結果を処理実行部24に出力する。処理実行部24は、判定部23により起き上がり予兆が検知された場合に、外部装置31に対して起き上がり予兆を検知したことを報知させる。
【0027】
なお、判定装置20は、ロジック回路を用いて実現してもよいし、センサからの信号を受信する回路を備え、判定処理を行なうプログラムを搭載したコンピュータとして実現してもよい。
<起き上がり予兆検知処理の前処理>
起き上がり予兆検知処理の前処理として、人体を計測しているセンサセットの出力値のみを起き上がり予兆検知処理に利用するため、センサを選別する処理を実施する。温度変化を示すセンサを用いる場合、温度変化を示すセンサが反応しているセンサセットの距離センサの値を用いる。
【0028】
温度を検知するセンサを用いる場合、予め定めた温度範囲内の値を示す温度センサセットの距離センサの値を用いる。ただし、「人体の温度に近い範囲」については予め指定する。なお、予め条件に合うセンサセットのセンサデータのみを記録部22に記録しても良いし、全センサセットのデータを記録部22に記録しておき、起き上がり予兆判定の際に、前処理として利用する情報を選別してもよい。
【0029】
図14は、温度変化を検知する温度センサを利用する場合に、起き上がり予兆判定の際に利用するセンサデータを選択する前処理を説明するためのフローチャートである。同図において、全てのセンサセットのセンサデータを読み込み(S1)、全てのセンサセットのセンサデータについて、温度変化を示す温度センサが反応しているか否かの判断が行なわれる(S2)。S2において、反応していないと判断された場合には、当該センサデータを削除して(S3)、反応している場合には削除は行なわれない。このようにして、起き上がり予兆検知処理の際に使用されるセンサデータが選択される。
【0030】
図15は、温度を検知する温度センサを利用する場合に、起き上がり予兆判定の際に利用するセンサデータを選択する前処理を説明するためのフローチャートである。同図において、全てのセンサセットのセンサデータを読み込み(S11)、全てのセンサセットのセンサデータについて、読み込まれたセンサデータによって示される温度が予め規定した範囲内か否かの判断が行なわれる(S12)。S12において、範囲外と判断された場合には、当該センサデータを削除して(S13)、範囲内の場合には削除は行なわれない。このようにして、起き上がり予兆検知処理の際に使用されるセンサデータが選択される。
【0031】
また、計算量や誤報の確率を減らすために、予め起き上がり予兆を検知する際の人体(特に頭)が通過する範囲を定めて、この範囲内の値を示す距離センサのみを起き上がり予兆検知に用いる前処理を追加してもよい。
図16は、所定の距離センサの値のみを起き上がり予兆検知処理に使用する場合の前処理を説明するためのフローチャートである。同図において、全てのセンサセットのセンサデータを読み込み(S21)、センサセットに含まれる距離センサの距離によって測定された値が予め定められた範囲内か否かの判断が行なわれる(S22)。範囲外と判断された場合には、当該センサデータを削除して(S23)、範囲内の場合には削除は行なわれない。このようにして、起き上がり予兆検知処理の際に使用されるセンサデータが選択される。
<重心座標の遷移を利用した起き上がり予兆検知>
図17は、前処理を使用したセンサデータに対して行なわれる重心座標の遷移を利用した起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
【0032】
ここでは、前提として、センサセット11は、ヘッドボード3及びその延長面上に正方格子状、六方細密格子状のように、面的な広がりをもって配置されているものとする。また、各センサセットに含まれる温度センサ及び距離センサの設置座標については、既知であり、予め記録部22に記録されているものとする。
【0033】
まず、重心座標が属する領域情報を初期化した後(S31)、人体を計測しているセンサデータの読み込みを行なう(S32)。その後、人体を計測しているセンサセットの距離センサにより計測された距離と、当該距離センサの設置座標とに基づいて、クラスタリングを実施する(S33)。
【0034】
次に、クラスタリング処理の結果、最もヘッドボード3に近いクラスタを「頭」とみなして選出し(S34)、この選出されたクラスタの三次元重心座標を算出する(S35)。その後、この算出された三次元重心座標が属する領域の判定を行なう(S36)。
【0035】
この領域は、予め試行により、ベッドの上方の空間を頭が上がる際に通過する領域を複数の領域に分割して、この分割された領域の座標を示す情報を記録部22に記録しておく。また、起き上がり予兆動作の際には、頭がそれらの分割された領域をどのような順序で通過するのかを示す状態遷移テーブルを記録部22に予め記録する。
【0036】
S36において領域の判定が行なわれた後、重心座標が属する領域が変化したか否かの判断が行なわれる(S37)。S37において、重心座標が変化していないと判断された場合にはS32の処理に戻る。
一方、S37において重心座標が変化していると判断された場合には、人体の起き上がり予兆動作の際の領域遷移に沿っているか否かの判断が行なわれる(S38)。S38において、領域遷移に沿っていないと判断された場合には、S31の処理に戻る。この領域遷移に沿っているか否かの判断は、状態遷移テーブルによって定義された状態遷移条件に基づいて判断される。状態遷移条件は、ベッド上の座標系で定義された複数の領域と、算出された重心座標との関係で定義される。
【0037】
図19は、状態遷移テーブルを示す図であり、図20は、図19に示した状態遷移テーブルによって規定される状態遷移図である。同図において、起き上がり予兆ではない状態J1において、重心座標が領域Aに属する場合、起き上がり予兆中(初期)の状態J2に遷移する。起き上がり予兆中(初期)の状態J2において、重心座標が領域Bに属する場合、起き上がり予兆中(中期)の状態J3に遷移する。起き上がり予兆中(中期)の状態J3において、重心座標が領域Cに属する場合、起き上がり予兆中(後期)の状態J4に遷移する。起き上がり予兆中(後期)の状態J4において、重心座標が領域Dに属する場合、起き上がり予兆状態J5に遷移する。S38においては、図19に示した状態遷移テーブルを参照して、起き上がり予兆動作の際の領域遷移に沿っているか否かの判断が行なわれる。
【0038】
S38において、領域遷移に沿っていると判断された場合には、重心座標が属する領域情報を更新し(S39)、起き上がり予兆状態か否かの判断が行なわれる(S40)。すなわち、重心座標が属する領域を判定し、領域の遷移が予め状態遷移テーブルにより定めた状態遷移条件に沿って遷移して起き上がった状態に到達した場合に起き上がり予兆が検知されることになる。
【0039】
S40において起き上がり予兆状態ではないと判断された場合には、S32の処理に戻り、起き上がり予兆状態であると判断された場合には、判定部23は起き上がり予兆を検知したことを処理実行部24に通知する。処理実行部24は、判定部23から起き上がり予兆を検知したことが通知されると、外部装置31に対して起き上がり予兆を検知したことを報知させる。
【0040】
なお、三次元重心座標をそのまま使用するだけではなく、三次元座標を例えば、ヘッドボード面に射影して二次元座標とし、二次元平面内での重心座標の遷移を用いても良い。この場合、三次元空間での領域分割結果を二次元空間に射影した際に、複数の領域に属する二次元空間領域は新たな領域とみなし、この新たな領域を含めた状態で起き上がり予兆の際の重心座標の遷移を記述する。
【0041】
重心座標のわずかなぶれや、起き上がり予兆以外の動作、例えば、ベッドサイドテーブルに手をのばした場合の素早い手の動きなどによる誤検出を低減するために、重心座標が各状態に滞在するべき最短滞在時間を定めて、この最短滞在時間以下の時間で重心座標が次の状態に遷移した場合、この遷移を削除してもよい。
【0042】
重心座標が特定の状態に長く滞在している場合、例えば、起き上がり予兆途中の不安定な体制の状態の時の重心座標が長時間現れる場合には起き上がり予兆以外の動作であると判定してもよい。
図18、状態滞在時間の制限がある重心座標の遷移を利用した起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
【0043】
まず、重心座標が属する領域情報を初期化し(S51)、タイマのリセットを行ない(S52)、人体を計測しているセンサデータの読み込みを行なう(S53)。その後、人体を計測しているセンサセットの距離センサにより計測された距離と、当該距離センサの設置座標とに基づいて、クラスタリングを実施する(S54)。
【0044】
次に、クラスタリング処理の結果、最もヘッドボード3に近いクラスタを「頭」とみなして選出し(S55)、この選出されたクラスタの三次元重心座標を算出する(S56)。その後、この算出された三次元重心座標が属する領域の判定を行なう(S57)。
【0045】
この領域は、予め試行により、ベッドの上方の空間を頭が上がる際に通過する領域を複数の領域に分割して、この分割された領域の座標を示す領域情報を記録部22に記録しておく。また、起き上がり予兆動作の際には、頭がそれらの分割された領域をどのような順序で通過するのかを示す状態遷移テーブルを記録部22に予め記録する。
【0046】
S57において領域の判定が行なわれた後、重心座標が属する領域が変化したか否かの判断が行なわれる(S58)。S58において、重心座標が変化していないと判断された場合にはS53の処理に戻る。
一方、S58において重心座標が変化していると判断された場合には、最短、最長滞在時間の条件を満たしているか否かの判断が行なわれる(S59)。S59において、条件を満たしていないと判断された場合には、S51の処理に戻る。
【0047】
S59における最短、最長滞在時間の条件を満たしていると判断された場合には、人体の起き上がり予兆動作の際の領域遷移に沿っているか否かの判断が行なわれる(S60)。S60において、領域遷移に沿っていないと判断された場合には、S51の処理に戻る。この領域遷移に沿っているか否かの判断は、状態遷移テーブルによって定義された状態遷移条件に基づいて判断される。
【0048】
S60において、領域遷移に沿っていると判断された場合には、重心座標が属する領域情報を更新し(S61)、起き上がり予兆状態か否かの判断が行なわれる(S62)。すなわち、重心座標が属する領域を判定し、領域の遷移が予め状態遷移テーブルにより定めた状態遷移条件に沿って遷移して起き上がった状態に到達した場合に起き上がり予兆が検知されることになる。
【0049】
S62において起き上がり予兆状態ではないと判断された場合には、S52の処理に戻り、起き上がり予兆状態であると判断された場合には、判定部23は起き上がり予兆を検知したことを処理実行部24に通知する。処理実行部24は、判定部23から起き上がり予兆を検知したことが通知されると、外部装置31に対して起き上がり予兆を検知したことを報知させる。
【0050】
なお、ある時点でのサンプリングデータから算出した重心座標値ではなく、過去M回分の重心座標値の平均値や中間値を使って、領域判定を実施してもよい。重心座標値を算出する際に、ヘッドボードに近いセンサデータに大きな重みをおく重み付けを実施しても良い。
【0051】
さらに、クラスタの重心ではなく、クラスタの中間値や平均値を使っても良い。クラスタのサイズが予め定めた規定値以下の場合は、頭以外の物体が検知されている可能性が高いため、このクラスタを破棄する前処理を加えてもよい。クラスタのサイズが予め定められた規定位置以上の場合、頭以外の物体を検知していたり、頭と布団や肩をまとめてクラスタリングしている可能性が高いため、このクラスタを破棄する前処理を加えてもよい。
<センサセットの設置座標を工夫した起き上がり予兆検知処理>
本実施の形態においては、センサセットの設置座標を工夫する。ベッド上に布団をかけた上体で人体が横になっている場合に、マット面から布団が最も高くなっている部分の高さを計測する。計測する手段は、メジャーを使用しても良いし、レンズファインダを使用しても良い。この際、1回の計測結果を使用しても良いが、複数回計測して、見落としミスを減らしたいのなら最低値、誤反応を減らしたいのなら最高値、計測毎の計測結果の変化によるチューニング程度のばらつきを減らしたいのなら平均値や中間値を利用しても良い。
【0052】
高さ計測によって取得した布団の高さをH(F)とする。ヘッドボード及びその延長面上に、マットからH(F)以上の高さの部分に、マット面に対して垂直方向のセンサセットの列を、マットの面と平行な方向に複数配置する。最も早いタイミングで起き上がり予兆を検知したい場合、列状に配置したセンサセットの1つ以上が反応した場合を頭があがったとして判定し、起き上がり予兆を検知する。
【0053】
図21は、このようにセンサセットの列を配置した場合のセンサセンサセットが一定時間以上反応した場合における起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
全てのセンサセット用のタイマを初期化し(S71)、S72〜S76の繰り返し処理を行なう。すなわち、センサセットのセンサデータを読み込み(S72)、このセンサセットのタイマが稼働中か否かの判断が行なわれる(S73)。
【0054】
S73において、タイマが稼働中ではないと判断された場合には、当該センサセットが反応しているか否かの判断が行なわれ(S74)、反応していないと判断された場合には、次のセンサセットについてS72の処理に移る。一方、S74において、センサセットが反応していると判断された場合には、そのセンサセット用のタイマを開始し(S75)、次のセンサセットについてS72の処理に移る。
【0055】
S73において、タイマが稼働中であると判断された場合には、当該センサセットが反応しているか否かの判断が行なわれ(S76)、反応していると判断された場合には、次のセンサセットについてS72の処理に移る。一方、S76において、センサセットが反応していないと判断された場合には、そのセンサセット用のタイマを停止し(S77)、反応継続時間が規定範囲内(例えば、反応最短時間以上か)か否かの判断が行なわれる(S78)。
【0056】
S78において、規定範囲内ではないと判断された場合には、次のセンサセットについてS72の処理に移る。一方、規定範囲内であると判断された場合には、起き上がり予兆が検知される。判定部23は起き上がり予兆を検知したことを処理実行部24に通知する。処理実行部24は、判定部23から起き上がり予兆を検知したことが通知されると、外部装置31に対して起き上がり予兆を検知したことを報知させる。予め試行により、「起き上がり予兆の時に頭が通過する位置は、ヘッドボードからどの程度の距離にあるのか(距離センサの計測結果が示す値の範囲)」を定めて、列状に配置したセンサセットの1つ以上の距離計測結果の値が、予め定められた範囲内の値となった場合を起き上がり予兆と検知しても良い。
【0057】
図22は、センサセットに含まれる距離センサの距離に基づいて行なわれる起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
全てのセンサセット用のタイマを初期化し(S81)、S82〜S88の繰り返し処理を行なう。すなわち、センサセットのセンサデータを読み込み(S82)、このセンサセットのタイマは稼働中か否かの判断が行なわれる(S83)。
【0058】
S83において、タイマが稼働中ではないと判断された場合には、当該センサセットが反応しているか否かの判断が行なわれ(S84)、反応していないと判断された場合には、次のセンサセットについてS82の処理に移る。一方、S84において、センサセットが反応していると判断された場合には、当該センサセットの距離センサによる計測値が規定範囲内の値か否かの判断が行なわれ(S85)、規定範囲内の値であると判断された場合には、そのセンサセット用のタイマを開始し(S86)、次のセンサセットについてS82の処理に移る。S85において、当該センサセットの距離センサによる計測値が規定範囲内の値ではないと判断された場合には、次のセンサセットについてS82の処理に移る。
【0059】
S83において、タイマが稼働中であると判断された場合には、当該センサセットが反応しているか否かの判断が行なわれ(S87)、反応していると判断された場合には、当該センサセットの計測値が規定範囲内の値か否かの判断が行なわれ、指定範囲内であると判断された場合には、次のセンサセットについてS82の処理に移る。
【0060】
一方、S87において、センサセットが反応していないと判断された場合及びS88において計測値が規定範囲内の値ではないと判断された場合には、そのセンサセット用のタイマを停止し(S89)、反応継続時間が規定範囲内(例えば、反応最短時間以上か)か否かの判断が行なわれる(S90)。
【0061】
S90において、規定範囲内ではないと判断された場合には、次のセンサセットについてS82の処理に移る。一方、規定範囲内であると判断された場合には、起き上がり予兆が検知される。判定部23は起き上がり予兆を検知したことを処理実行部24に通知する。処理実行部24は、判定部23から起き上がり予兆を検知したことが通知されると、外部装置31に対して起き上がり予兆を検知したことを報知させる。
したがって、本発明の実施の形態によれば、センサセットを所定の高さに取り付けるとともに、当該センサセットからのセンサデータに対して前処理を施した後に、起き上がり予兆検知処理を行なうので、ベッド上の人体の起き上がり予兆を正確に検知することができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0063】
また、実施形態に記載した手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウエア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布することもできる。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウエア手段(実行プログラムのみならずテーブルやデータ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウエア手段を構築し、このソフトウエア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書でいう記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部あるいはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスクや半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係る起き上がり予兆検知装置が使用される環境の一例を示す図である。
【図2】センサセットの取り付け方向を説明するための図である。
【図3】ヘッドボードの中央に1つのセンサセットを設けた例である。
【図4】ヘッドボードの上辺に沿って平行に複数のセンサセットを配置した場合を示す図である。
【図5】ヘッドボードの上辺に沿って平行に複数のセンサセットの列を配置した場合を示す図である。
【図6】ヘッドボードに複数のセンサセットを正方格子状に配置した場合を示す図である。
【図7】ヘッドボードに複数のセンサセットを六方細密格子状に配置した場合を示す図である。
【図8】図3及び図4に示したセンサセットを組み合わせた場合を示す図である。
【図9】複数のセンサセットを組み合わせた場合のセンサ群の配置を説明するための図である。
【図10】図9に示したセンサ群が取り付けられたヘッドボードの上面図である。
【図11】図9及び図10に示したセンサ群をヘッドボードの横方向の中心付近に垂直方向に配置した場合を示す図である。
【図12】判定装置の構成を示す図である。
【図13】記録部を示す図である。
【図14】温度変化を検知する温度センサを利用する場合に、起き上がり予兆判定の際に利用するセンサデータを選択する前処理を説明するためのフローチャートである。
【図15】温度を検知する温度センサを利用する場合に、起き上がり予兆判定の際に利用するセンサデータを選択する前処理を説明するためのフローチャートである。
【図16】所定の距離センサの値のみを起き上がり予兆検知処理に使用する場合の前処理を説明するためのフローチャートである。
【図17】前処理を使用したセンサデータに対して行なわれる重心座標の遷移を利用した起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
【図18】状態滞在時間の制限がある重心座標の遷移を利用した起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
【図19】状態遷移テーブルを示す図である。
【図20】図19に示した状態遷移テーブルによって規定される状態遷移図である。
【図21】センサセットの温度センサが一定時間以上反応した場合における起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
【図22】センサセットに含まれる距離センサの距離に基づいて行なわれる起き上がり予兆検知処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1…ベッド、2…手すり、3…ヘッドボード、4…フッドボード、5…ヘッドボードを含む面、6…マット、11…センサセット、15…センサセット、21…センサ信号取得部、22…記録部、23…判定部、24…処理実行部、31…外部装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを有する複数のセンサセットと、
前記複数のセンサセットに含まれる温度センサ又は距離センサからのセンサデータに基づいて、ベッド上の人体を検知したセンサセットを選択する手段と、
前記選択されたセンサセットの位置と、前記選択されたセンサセットに含まれる距離センサによって測定された距離とに基づいて、クラスタリング処理を実行して、ベッド上の人体の頭の重心座標を算出する手段と、
起き上がり予兆の状態を含む複数の状態と、状態遷移条件とを互いに関連付けて記憶する状態遷移テーブルと、
前記算出された重心座標が前記起き上がり予兆の状態の直前の状態に対応する状態遷移条件を満たし、起き上がり予兆の状態に遷移したことを検出する手段と、
前記起き上がり予兆の状態に遷移したことが検出された場合に、人体の起き上がり予兆を報知する手段と
を具備することを特徴とする起き上がり予兆検知装置。
【請求項2】
前記状態遷移条件は、前記ベッド上の座標系で定義された複数の領域と、前記算出された重心座標との関係が定義されていることを特徴とする請求項1記載の起き上がり予兆検知装置。
【請求項3】
温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを有し、前記ベッドから異なる高さにそれぞれ設けられた複数のセンサセットと、
前記複数のセンサセットに含まれる温度センサ又は距離センサからのセンサデータに基づいて、ベッド上の人体を検知したセンサセットを選択する手段と、
前記選択されたセンサセットの温度センサによる人体の検知時間が、所定の検知時間条件を満たすことを検出する手段と、
所定の検知時間条件を満たすことが検出された場合に、人体の起き上がり予兆を報知する手段と
を具備することを特徴とする起き上がり予兆検知装置。
【請求項4】
前記起き上がり予兆を報知する手段は、
所定の検知時間条件を満たすことが検出された場合に、この所定の検知時間条件を満たすことを検出したセンサセットに含まれる距離センサによる測定された距離が所定の測定距離条件を満たす場合に、起き上がり予兆を報知することを特徴とする請求項3記載の起き上がり予兆検知装置。
【請求項5】
温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを有する複数のセンサセットに含まれる温度センサ又は距離センサからのセンサデータに基づいて、ベッド上の人体を検知したセンサセットを選択し、
前記選択されたセンサセットの位置と、前記選択されたセンサセットに含まれる距離センサによって測定された距離とに基づいて、クラスタリング処理を実行して、ベッド上の人体の頭の重心座標を算出し、
起き上がり予兆の状態を含む複数の状態と、状態遷移条件とを互いに関連付けて記憶する状態遷移テーブルを参照して、前記算出された重心座標が前記起き上がり予兆の状態の直前の状態に対応する状態遷移条件を満たし、起き上がり予兆の状態に遷移したことを検出し、
前記起き上がり予兆の状態に遷移したことが検出された場合に、人体の起き上がり予兆を報知することを特徴とする起き上がり予兆検知装置における起き上がり予兆検知方法。
【請求項6】
前記状態遷移条件は、前記ベッド上の座標系で定義された複数の領域と、前記算出された重心座標との関係が定義されていることを特徴とする請求項5記載の起き上がり予兆検知方法。
【請求項7】
温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを有し、前記ベッドから異なる高さにそれぞれ設けられた複数のセンサセットに含まれる温度センサ又は距離センサからのセンサデータに基づいて、ベッド上の人体を検知したセンサセットを選択し、
前記選択されたセンサセットの温度センサによる人体の検知時間が、所定の検知時間条件を満たすことを検出し、
所定の検知時間条件を満たすことが検出された場合に、人体の起き上がり予兆を報知することを特徴とする起き上がり予兆検知装置における起き上がり予兆検知方法。
【請求項8】
前記起き上がり予兆を報知することは、
所定の検知時間条件を満たすことが検出された場合に、この所定の検知時間条件を満たすことを検出したセンサセットに含まれる距離センサによる測定された距離が所定の測定距離条件を満たす場合に、起き上がり予兆を報知することを特徴とする請求項7記載の起き上がり予兆検知方法。
【請求項1】
温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを有する複数のセンサセットと、
前記複数のセンサセットに含まれる温度センサ又は距離センサからのセンサデータに基づいて、ベッド上の人体を検知したセンサセットを選択する手段と、
前記選択されたセンサセットの位置と、前記選択されたセンサセットに含まれる距離センサによって測定された距離とに基づいて、クラスタリング処理を実行して、ベッド上の人体の頭の重心座標を算出する手段と、
起き上がり予兆の状態を含む複数の状態と、状態遷移条件とを互いに関連付けて記憶する状態遷移テーブルと、
前記算出された重心座標が前記起き上がり予兆の状態の直前の状態に対応する状態遷移条件を満たし、起き上がり予兆の状態に遷移したことを検出する手段と、
前記起き上がり予兆の状態に遷移したことが検出された場合に、人体の起き上がり予兆を報知する手段と
を具備することを特徴とする起き上がり予兆検知装置。
【請求項2】
前記状態遷移条件は、前記ベッド上の座標系で定義された複数の領域と、前記算出された重心座標との関係が定義されていることを特徴とする請求項1記載の起き上がり予兆検知装置。
【請求項3】
温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを有し、前記ベッドから異なる高さにそれぞれ設けられた複数のセンサセットと、
前記複数のセンサセットに含まれる温度センサ又は距離センサからのセンサデータに基づいて、ベッド上の人体を検知したセンサセットを選択する手段と、
前記選択されたセンサセットの温度センサによる人体の検知時間が、所定の検知時間条件を満たすことを検出する手段と、
所定の検知時間条件を満たすことが検出された場合に、人体の起き上がり予兆を報知する手段と
を具備することを特徴とする起き上がり予兆検知装置。
【請求項4】
前記起き上がり予兆を報知する手段は、
所定の検知時間条件を満たすことが検出された場合に、この所定の検知時間条件を満たすことを検出したセンサセットに含まれる距離センサによる測定された距離が所定の測定距離条件を満たす場合に、起き上がり予兆を報知することを特徴とする請求項3記載の起き上がり予兆検知装置。
【請求項5】
温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを有する複数のセンサセットに含まれる温度センサ又は距離センサからのセンサデータに基づいて、ベッド上の人体を検知したセンサセットを選択し、
前記選択されたセンサセットの位置と、前記選択されたセンサセットに含まれる距離センサによって測定された距離とに基づいて、クラスタリング処理を実行して、ベッド上の人体の頭の重心座標を算出し、
起き上がり予兆の状態を含む複数の状態と、状態遷移条件とを互いに関連付けて記憶する状態遷移テーブルを参照して、前記算出された重心座標が前記起き上がり予兆の状態の直前の状態に対応する状態遷移条件を満たし、起き上がり予兆の状態に遷移したことを検出し、
前記起き上がり予兆の状態に遷移したことが検出された場合に、人体の起き上がり予兆を報知することを特徴とする起き上がり予兆検知装置における起き上がり予兆検知方法。
【請求項6】
前記状態遷移条件は、前記ベッド上の座標系で定義された複数の領域と、前記算出された重心座標との関係が定義されていることを特徴とする請求項5記載の起き上がり予兆検知方法。
【請求項7】
温度或いは温度変化を検知する温度センサと、距離を測定する距離センサとを有し、前記ベッドから異なる高さにそれぞれ設けられた複数のセンサセットに含まれる温度センサ又は距離センサからのセンサデータに基づいて、ベッド上の人体を検知したセンサセットを選択し、
前記選択されたセンサセットの温度センサによる人体の検知時間が、所定の検知時間条件を満たすことを検出し、
所定の検知時間条件を満たすことが検出された場合に、人体の起き上がり予兆を報知することを特徴とする起き上がり予兆検知装置における起き上がり予兆検知方法。
【請求項8】
前記起き上がり予兆を報知することは、
所定の検知時間条件を満たすことが検出された場合に、この所定の検知時間条件を満たすことを検出したセンサセットに含まれる距離センサによる測定された距離が所定の測定距離条件を満たす場合に、起き上がり予兆を報知することを特徴とする請求項7記載の起き上がり予兆検知方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2007−330379(P2007−330379A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163495(P2006−163495)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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