説明

超臨界処理装置及び超臨界処理方法

【課題】パターン倒れの発生や、処理用の液体を構成する物質の基板内への取り込みを抑えた超臨界処理装置及び超臨界処理方法を提供する。
【解決手段】処理容器は超臨界流体により処理が行われる基板を収容し、液体供給部は処理容器内にフッ素化合物を含む処理用の液体を供給する。流体排出部は処理容器から超臨界流体を排出し、熱分解成分排除部は前記処理容器内または前記液体供給部から供給される液体内から、当該液体の熱分解を促進する成分を排除する一方、加熱部は、ハイドロフルオロエーテルまたはハイドロフルオロカーボンであるフッ素化合物を含む前記処理用の液体を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば表面にパターンが形成された半導体ウエハなどの基板を超臨界流体により処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板である例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)表面に、LSIをはじめとする大規模で高性能な半導体デバイスを製作するにあたっては、ウエハ表面に極微細なパターンを形成することが必要となる。このパターンは、表面にレジストを塗布したウエハを露光、現像、洗浄する各種工程を経てレジストをパターニングし、さらに当該ウエハをエッチングすることによりレジストパターンをウエハに転写して形成される。そしてこのエッチングの後にはウエハ表面のごみや自然酸化膜を除去するために、ウエハを洗浄する処理が行われている。
【0003】
洗浄処理は、例えば図12(a)に模式的に示すように、表面にパターン11が形成されたウエハWを例えば薬液やリンス液などの処理液101内に浸漬したり、ウエハW表面に処理液101を供給したりすることにより実行される。ところが、半導体デバイスの高集積化に伴い、洗浄処理を行った後、処理液を乾燥させる際に、レジストやウエハ表面のパターン11が倒れるパターン倒れの発生が問題となってきている。
【0004】
パターン倒れは、洗浄処理を終え、ウエハW表面に残った液体を乾燥させる際に、パターン11の左右の処理液が不均一に乾燥すると、このパターン11を左右に引っ張る毛細管力のバランスが崩れて処理液の多く残っている方向へとパターン11が倒れる現象である。図12(b)には、パターン11の形成されていない左右外方領域の処理液の乾燥が完了する一方、パターン11の隙間には処理液が残存している状態を示している。この結果、パターン11間に残存する処理液から受ける毛細管力により、左右両側のパターン11が内側へ向けて倒れてしまう。こうしたパターン倒れの発生は、半導体製造技術を応用して製造されるMEMS(Micro-Electro-Mechanical System)の分野などでも問題となってきている。
【0005】
パターン倒れを引き起こす毛細管力は、洗浄処理後のウエハWを取り巻く例えば大気雰囲気とパターン11の間に残存する処理液との間の液体/気体界面にて働く処理液の表面張力に起因する。このことから、気体や液体との間で界面を形成しない超臨界状態の流体(超臨界流体)を利用して処理液を乾燥する処理方法(以下、超臨界処理という)が着目されている。
【0006】
この手法では、図13(a)に示すように例えば密閉された容器内にてウエハW表面の液体を超臨界流体102で置換した後、容器から徐々に超臨界流体102を放出する。これにより、ウエハWの表面が処理液→超臨界流体→大気雰囲気に順に置換され、液体/気体界面を形成せずにウエハW表面から処理液を除去することができ、パターン倒れの発生を抑えることができる。
【0007】
超臨界処理に用いられる流体としては二酸化炭素やハイドロフルオロエーテル(HydroFluoro Ether:以下、HFEという)、ハイドロフルオロカーボン(HydroFluoro Carbon:以下、HFCという)などが用いられるが、超臨界状態の二酸化炭素は処理液との混和性が低く、処理液から超臨界流体への置換がしにくい場合もある。一方、HFEやHFCといったフッ素化合物は処理液との混和性は良好であるが、これらのフッ素化合物の中には超臨界状態となる高温、高圧下で熱分解し、例えばフッ化水素(HF)の状態でフッ素原子を放出してしまう場合がある。
【0008】
例えば図13(a)に示すようにウエハWの表面にSiO膜12が形成されている場合には、フッ素化合物からフッ素原子が放出されると図13(b)に示すようにSiO膜12がエッチングされてしまうおそれがある。またフッ素原子がウエハWやパターン11などの半導体デバイス中に取り込まれてデバイスの特性を低下させる要因ともなる。特に超臨界処理が行われる雰囲気中に酸素や水分が存在する場合には、これらの成分がフッ素化合物の熱分解を促進する成分となって、SiO膜12がエッチングやデバイス中へのフッ素原子の取り込みが発生しやすくなる。
【0009】
ここで特許文献1には、HCFCFOCHCF、CFCHFCFOCHCF、CFCHFCFOCHCFCFなどのHFEと溶剤との混合溶液を超臨界状態とし、洗浄処理が行われた後の基板にこの超臨界流体を作用させて基板を乾燥させる技術が記載されている。しかしながら当該特許文献1に記載の技術においてはHFEからのフッ素原子の放出といった問題については着目されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−303316:0035段落〜0038段落
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、パターン倒れの発生や、処理用の液体を構成する物質の基板内への取り込みを抑えた超臨界処理装置及び超臨界処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る超臨界処理装置は、超臨界流体により基板に対して処理を行う密閉可能な処理容器と、
この処理容器内にフッ素化合物を含む処理用の液体を供給する液体供給部と、
前記処理容器から前記超臨界流体を排出する流体排出部と、
前記処理容器内または前記液体供給部から供給される液体内から、当該液体の熱分解を促進する成分を排除するための熱分解成分排除部と、
前記処理容器内に供給された前記液体を加熱する加熱部と、を備え、
前記フッ素化合物は、ハイドロフルオロエーテルまたはハイドロフルオロカーボンであることを特徴とする。
【0013】
前記超臨界処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記熱分解成分排除部は、前記液体供給部から供給される前の処理用の液体内に不活性ガスを供給してバブリングを行うバブリング部を備えたこと。
(b)前記熱分解成分排除部は、前記処理容器内に不活性ガスを供給する第1のガス供給部を備えたこと。
(c)(b)の場合に、基板の搬入を終えて処理容器を密閉したときにこの処理容器から前記処理用の液体の熱分解を促進する成分を排除するために、密閉前に当該処理容器内に前記不活性ガスを供給するように前記熱分解成分排除部を制御する制御部を備えたこと。
(d)(b)または(c)の場合に、前記処理容器から処理用の液体の熱分解を促進する成分を排除するために、この処理容器への基板の搬入を終えて処理容器を密閉した後、当該処理容器内に前記不活性ガスを供給するように前記熱分解成分排除部を制御する制御部を備えたこと。
(e)前記処理容器は、搬入出口を介して基板の搬入出が行われる筐体内に収容され、前記熱分解成分排除部は、さらに当該処理容器を取り巻く雰囲気から前記液体の熱分解を促進する成分を排除するために、この筐体部内に不活性ガスを供給する第2のガス供給部を備えたこと。
(f)(b)〜(e)の場合に、前記不活性ガスは、露点が−50℃以下の窒素ガスであること。
【0014】
(g)前記フッ素化合物は、酸素原子から見てα位に位置する炭素原子の炭素−炭素結合が1個以下、β位に位置する炭素原子の炭素−炭素結合が2個以下であるフルオアルキル基から構成されるハイドロフルオロエーテルであること。
(h)前記フッ素化合物は、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)プロパンからなる群から選択される少なくとも一つのハイドロフルオロエーテルを含んでいること。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハイドロフルオロエーテル(HFE)やハイドロフルオロカーボン(HFC)などのフッ素化合物を用いると共に、処理系からフッ素化合物の熱分解を促進する因子を排除することにより当該フッ素化合物の分解が促進されにくい条件の下で超臨界処理を行う。このため、基板表面にパターンが形成されている場合にはパターン倒れの発生を抑え、またフッ素化合物を構成するフッ素原子の基板内への取り込みを抑えて、高品質の処理結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ウエハの洗浄処理装置の一例を示す縦断側面図である。
【図2】実施の形態に係る超臨界処理装置の縦断側面図である。
【図3】前記超臨界処理装置への処理液及び不活性ガスの供給、排出系統を示す説明図である。
【図4】前記超臨界処理装置にて実行される動作の流れを示すフロー図である。
【図5】前記超臨界処理装置へのウエハの搬入動作を示す第1の説明図である。
【図6】前記搬入動作を示す第2の説明図である。
【図7】前記超臨界処理装置にて行われる超臨界処理の内容を示す説明図である。
【図8】前記超臨界処理装置への不活性ガスなどの供給タイミングの例を示す説明図である。
【図9】前記超臨界処理装置への不活性ガスなどの供給タイミングの他の例を示す説明図である。
【図10】実施例に係るHFEの構造式である。
【図11】比較例に係るHFEの構造式である。
【図12】パターン倒れの発生の様子を示す説明図である。
【図13】超臨界流体を利用した処理の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態として、洗浄処理が行われた後のウエハに対して、ウエハに付着した処理液をフッ素化合物、例えばHFEの超臨界流体により除去する超臨界処理装置について説明する。本実施の形態に係る超臨界処理装置の具体的な構成を説明する前に、洗浄処理の一例としてスピン洗浄によりウエハを1枚ずつ洗浄する枚葉式の洗浄装置について簡単に説明しておく。
【0018】
図1は、枚葉式の洗浄装置2を示す縦断側面図である。洗浄装置2は、処理空間を形成するアウターチャンバー21内に配置されたウエハ保持機構23にてウエハWをほぼ水平に保持し、このウエハ保持機構23を鉛直軸周りに回転させることによりウエハWを回転させる。そして回転するウエハWの上方にノズルアーム24を進入させ、その先端部に設けられたノズル241から薬液及びリンス液を予め定められた順に供給してウエハWの表面の洗浄処理が行われる。また、ウエハ保持機構23の内部にも薬液供給路231が形成されており、ここから供給された薬液及びリンス液によってウエハWの裏面洗浄が行われる。
【0019】
洗浄処理は、例えばアルカリ性の薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)によるパーティクルや有機性の汚染物質の除去→リンス液である脱イオン水(DeIonized Water:DIW)によるリンス洗浄→酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid))による自然酸化膜の除去→DIWによるリンス洗浄の順に行われ、これらの薬液はアウターチャンバー21内に配置されたインナーカップ22やアウターチャンバー21に受け止められて排液口221、211より排出される。またアウターチャンバー21内の雰囲気は排気口212より排気されている。
【0020】
洗浄処理を終えたウエハWの表面には、例えばウエハ保持機構23の回転を停止した状態でウエハW表面に例えばIPA(IsoPropyl Alcohol)などの液体を供給して、ウエハWに残存しているDIWと置換する。そしてさらにウエハW表面に、例えば後述の超臨界処理装置にて使用するHFEと同種のHFEを供給してIPAをHFEで置換し、ウエハW表面がHFEの液体で液盛りされた状態とする。HFEが液盛りされたウエハWは、例えばウエハ保持機構23に設けられた不図示の受け渡し機構により外部の搬送装置に受け渡され、洗浄装置2より搬出される。
【0021】
ここでウエハW表面のDIWを一旦IPAで置換する理由は、後述するようにHFEが超臨界状態となったとき、水分が残存していると、この水分がHFEの熱分解を促進してしまうためである。そこで、DIWをIPAで置換してウエハW表面の水分をできるだけ排除し、その後、このIPAをHFEにて置換することにより超臨界処理装置内に持ち込まれる水分をできるだけ少なくしている。ここでIPAなどのアルコールにも超臨界状態におけるHFEの熱分解を促進する作用が存在するが、水分と比較するとその促進作用は小さい。また、例えばDIWの排除に十分な量のHFEを使用することができるような場合などには、IPAによる置換を省略して直接ウエハW表面のDIWをHFEにより置換してもよい。
【0022】
洗浄装置2での洗浄処理を終えたウエハWは表面にHFEの液盛りがされた状態のまま超臨界処理装置に搬送され、表面に付着した処理液を除去する超臨界処理が行われる。以下、本実施の形態に係る超臨界処理装置3の構成について図2、図3を参照しながら説明する。
【0023】
超臨界処理装置3は、ウエハWに対する超臨界処理が行われる上部容器31並びにその底板32と、この上部容器31内にウエハWを格納する機構と、上部容器31に処理用の液体であるHFEを供給して超臨界状態とするための機構とを備えている。
【0024】
上部容器31及び底板32は、本実施の形態の処理容器に相当し、ウエハWを格納すると共に超臨界状態のHFEを用いてウエハW表面に付着した液体(本例では洗浄装置2にて液盛りされたHFE)を除去する超臨界処理が行われる。上部容器31は、ウエハWに対する超臨界処理が行われる処理空間30を成す凹部が例えば下面側に形成された扁平な円盤形状の耐圧容器であり、例えばステンレススチールなどから構成される。上部容器31の下面側に設けられた凹部は、例えば扁平な円盤状に形成され、後述するウエハWの載置台321と嵌合して例えば直径300mmのウエハWを格納する処理空間30を上部容器31と底板32との間に形成する。ここで上部容器31は、よりよくは金、プラチナなどによる貴金属コーティング、テフロン(登録商標)コーティング、ポリイミド、エポキシ樹脂などによる樹脂コーティングを施すことによりHFEからのフッ素原子の放出を抑えることができる。
【0025】
図2に示すように、上部容器31には、処理空間30の側面に向かって開口する3つの流路311、312、313が形成されている。311は処理空間30内に処理用の液体であるHFEを液体の状態で供給するHFE供給路、312は処理空間30から超臨界のHFEを排出するHFE排出路、313は処理空間30から処理前後に処理空間30内の雰囲気を排出するための排出路である。
【0026】
図3に示すようにHFE供給路311は、閉止弁421の介設されたHFE供給ライン42を介してHFE供給部4に接続されている。これらHFE供給部4からHFE供給路311に至るまでの各機器は、処理空間30(処理容器内)へHFEを供給する本実施の形態の液体供給部に相当する。また、HFE排出路312は閉止弁431及び冷却部432の介設されたHFE回収ライン43を介してHFE供給部4に接続されていてHFEをリサイクルすることができる。冷却部432は、例えば超臨界状態や気体の状態で処理空間30から排出されたHFEを冷却し、液体の状態で回収する役割を果たす。そしてHFE排出路312からHFE供給部4に至るまでの各機器は、本実施の形態の流体排出部に相当している。
【0027】
HFE供給部4には、HFEを処理容器側へ向けて圧送するための圧送ガス供給ライン401が設けられている。圧送ガス供給ライン401は、例えば不図示の開閉弁により後述の排気ライン412を閉じた状態で、HFE供給部4を構成する貯槽内に圧送ガスである例えば窒素ガスを供給することにより、内部のHFEを処理容器へ向けて送り出すことができる。HFEの供給量は例えば圧送ガス供給ライン401から供給される窒素ガス量の増減により調整することができる。ここで処理容器に対してHFEを供給する手法は圧送ガスを用いる場合に限定されず、例えばHFE供給ライン42送液ポンプを介設し、この送液ポンプによりHFEの供給を行ってもよい。
【0028】
また排出路313の出口側は閉止弁441及びガス捕集部442を介して排出ライン44に接続されており、この排出ライン44は例えば工場の除害設備に接続されている。ガス捕集部442は例えば活性炭が充填された吸着カラムとして構成され、処理空間30から排出されたガス中に含まれるHFEを吸着する機能を備えている。活性炭に吸着されたHFEは、例えばガス捕集部442を排出ライン44に対してオフラインの状態にして当該ガス捕集部442にスチームを通流させ、活性炭からHFEを脱着させてこのスチームを冷却することにより回収することができる。
以上のように本例では、HFE供給路311、HFE排出路312、排出路313をHFE供給路311側に設けた例を示したが、これらの流路311、312、313を底板32側に設けてもよいことは勿論である。
【0029】
図2に示すように上部容器31は、例えば十字状に交差した梁状の押さえ部材381を介して上部容器31の全体を収容する筐体38の上面に固定されている。押さえ部材381は処理空間30内の超臨界流体から受ける力に抗して上部容器31を下方側に向けて押さえつける役割を果たしている。
【0030】
底板32は上部容器31の凹部を下面側から塞いで、ウエハWを収容する処理空間30を形成すると共に、ウエハWを保持する役割を果たす。底板32は、例えばステンレススチールなどから構成され、上部容器31の凹部の開口面よりも例えばひとまわり大きな円板状の部材として形成されている。底板32の上面には上部容器31の凹部内に嵌合可能な円板状に形成された例えばステンレススチール製の載置台321が固定されている。図2に示すように、載置台321の上面にはウエハWの載置領域323をなす凹部が形成されている。
【0031】
また底板32は、支持棒351とその駆動機構352とからなる底板昇降機構35によって昇降自在に構成されており、既述の洗浄装置2より洗浄処理を終えたウエハWを搬送する不図示の搬送装置との間でウエハWの受け渡しを行う下方側の受け渡し位置と、上部容器31の凹部を塞いで処理空間30を形成し、ウエハWに対して超臨界処理を行う処理位置との間を移動することができる。図中、34は昇降時に底板32の昇降軌道をガイドするガイド部材であり、ガイド部材34は底板32の周方向に沿って例えば3箇所にほぼ等間隔で配置されている。
【0032】
ここで超臨界処理を実行中の処理空間30内の圧力は、例えば絶対圧で3MPaもの高圧となり、底板32には下向きの大きな力が働くため、底板32の下方には底板32の底面を支持する支持機構33が設けられている。支持機構33は、底板32の底面を支持して処理空間30を密閉すると共に、底板32の昇降動作に合わせて昇降する支持部材331と、この支持部材331の昇降軌道をなすガイド部材332と、例えば油圧ポンプなどから構成される駆動機構333とから構成される。支持機構33についても例えば既述のガイド部材34と同様に、底板32の周方向に沿って例えば3箇所にほぼ等間隔で配置されている。
【0033】
底板32の中央部には、外部の搬送装置との間でウエハWの受け渡しをするためのリフター361が設けられている。リフター361は底板32及び載置台321のほぼ中央を上下方向に貫通し、その上端部にはウエハWをほぼ水平に保持するための例えば円板状に形成されたウエハ保持部363が固定されていると共に、下端部にはリフター361の駆動機構362が設けられている。
【0034】
載置台321の上面側中央部には、上述のウエハ保持部363を格納する凹部が設けられており、底板32とは独立してリフター361を昇降させることにより、この底板32からウエハ保持部363を突没させて、ウエハWを外部の搬送装置と底板32上の載置領域323との間で受け渡すことができる。ここで図2に示すようにウエハ保持部363の上面は、底板32の凹部内に格納されたとき、載置領域323である載置台321の上面と面一となる。
【0035】
さらに底板32の内部には、処理空間30内に供給されたHFEを例えば200℃に昇温すると共に、この流体の膨張を利用して処理空間30内を例えば3MPaに昇圧して処理液を超臨界状態とするための例えば抵抗発熱体からなるヒーター322が埋設されている。図3に示すようにヒーター322は電源部6に接続されており、この電源部6から供給される電力により発熱して載置台321及びその上面に載置されたウエハWを介して処理空間30内のHFEを加熱することができる。ヒーター322は本実施の形態の加熱部に相当している。
【0036】
以上に説明した構成を備えた本実施の形態に係る超臨界処理装置3は、背景技術にて説明したHFEの熱分解によるフッ素原子の放出を抑制するために、超臨界処理用の流体として使用するHFEと装置との両面においてHFEの熱分解を促進する成分を排除するための特別な構成を採用している。
【0037】
HFEの熱分解を促進する成分を排除するために設けられた具体的な装置構成の説明に入る前に、HFEやHFCなどのフッ素化合物とこれらフッ素化合物の熱分解を促進する成分との関係について説明しておく。
【0038】
引火性の問題がなく毒性も低いフッ素系化合物の液体としては、ハイドロフルオエーテル(炭素、水素、フッ素、エーテル酸素で構成され、COC結合を有するもの)、ハイドロフルオロカーボン(炭素、水素、フッ素で構成される)がある。ハイドロフルオロエーテルとしては例えば、CFCFCHOCHFやCFCFOCHCF、COCH、COCH、COCHCH、(CFCFCF(OCH)CFCF、CHFCFOCHCF、CFCHFOCHFなどがあり、ハイドロフルオロカーボンとしては例えば、CH、C11H、C13H、CCHCH、C13CHCH、CFCHCFCH、c-C、CFCFCHFCHFCF、CFCHCHFなどがあり、これらは常温、常圧で液体である。また、これらのフッ素化合物は大気寿命が数年と短く(通常のパーフルオロカーボンは1000〜50000年)、環境的にも問題ない材料である。このハイドロフルオエーテルまたは、ハイドロフルオロカーボンを所定の温度、圧力下になるようにすると、これらのフッ素化合物は超臨界状態となり、その後、大気圧に減圧することにより液処理後のウエハWを乾燥する超臨界処理を実行することができる。
【0039】
ハイドロフルオエーテルの中で、特に沸点が50℃以上で臨界温度として200℃程度もしくはそれ以下となり、使いやすいハイドロフルオエーテル(フルオアルキル鎖はC6以下)として市販されているものに(表1)に示すものがある。

(表1) 代表的なハイドロフルオエーテルの沸点と臨界点(臨界温度、臨界圧力)


どのハイドロフルオロエーテルも超臨界状態とするには、温度は185℃以上で、ほぼ200℃の温度に昇温する必要がある。
【0040】
また、ハイドロフルオロカーボンの中で、特に沸点が50℃以上で市販されているものに(表2)に示すものがある。

(表2) 代表的なハイドロフルオロカーボンの沸点と臨界点(臨界温度、臨界圧力)

上表に記載のハイドロフルオロカーボンのなかには臨界温度は知られていないものもあるが、殆どのハイドロフルオロカーボンは(表1)に記載のハイドロフルオロエーテルと同様、臨界温度が200℃付近である。
【0041】
ハイドロフルオロエーテルやハイドロフルオロカーボンに代表されるフッ素化合物の液体は、一般に熱安定性が高いことが知られているが、本実施の形態で使用される超臨界状態を達成するための温度領域(200℃付近)では、酸素存在下において微量ではあるが酸化分解による酸分の発生が確認されることが判った。一方、実質的に酸素非存在下で同様の処理を実施すると酸分の発生は全く確認されず、酸化分解が進行していないことが判明した。
【0042】
そこで予備的な実験として(表3)に示したハイドロフルオロエーテルやハイドロフルオロカーボンについての熱安定性試験を行った。試験は、SUS−304製耐圧容器中に試料である各ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボンの液体を仕込み、(表3)に示す条件下にて200℃、72時間の熱安定性試験を実施した。ここで耐圧容器内には気相雰囲気が形成されるように容器には、当該容器の容積よりも少ない量の試料を仕込み、この気相雰囲気中に約20vol%の酸素が存在する雰囲気と、酸素濃度が50volppm未満の雰囲気(いずれも残部は窒素ガス)との2条件にて試験を行った。なお、熱安定性試験の試料として使用した各種フッ素化合物はアルゴンガスを試料液中にバブリングすることにより溶存酸素の量を(表3)に示す程度まで低減した。
試験後の試料を同量の水で抽出する操作を行い、抽出水のpH及びフッ素イオン濃度を測定することで酸分、Fイオン分の増加を評価した結果を(表3)に示す。

(表3) 熱安定性試験結果

【0043】
(表3)の結果から、(1)水分濃度の値にかかわらず、雰囲気中の酸素濃度が低ければpHは7程度と酸分の発生は抑制されており、(2)CFCHOCFCHF、C13Hでは酸素濃度が50ppm以下であれば、pHは7で酸分発生は確認されない、(3)COCHでは酸素濃度を50ppm以下とすれば酸分発生は抑制されるが、pHは6〜7なので完全に抑制されたわけではないことがわかる。
【0044】
以上に示した熱安定性試験の結果から、HF(酸分)の発生を抑制するためには、気相雰囲気中の酸素濃度を下げればよいことがわかった。気相雰囲気中の酸素濃度が高い場合には、当該酸素がフッ素系化合物の液体に溶解し、フッ素系液体の酸化分解を促進してしまうものと考えられる。従って、フッ素系化合物の液体そのものの溶存酸素を低減するとともに、処理容器内の処理雰囲気中の酸素を低減することが重要となる。
【0045】
さらに、上述の各フッ素化合物は高価であるため、図3に示す例えば活性炭吸着式の既述のガス捕集部442などによって回収し、環境中への排出を抑制している。活性炭により捕集されたフッ素化合物は、スチーム脱着により回収される。そこでこの脱着処理時におけるフッ素化合物の熱安定性を調べるため、活性炭存在下に120℃で72時間熱処理した時の安定性を試験後の酸分及びFイオン分を分析で評価した。
【0046】
結果として後述の実施例に示すように、COCHでは酸分160ppm、Fイオン分45ppmと分解によるHFの生成が確認された。一方、CFCHOCFCHF(図10(a))、CFCHOCFCHFCF(図10(b))、CFCHFCFOCHCFCF(図10(c))は分解しにくく、例えば、CFCHOCFCHFは上記と同条件(120℃)での安定性試験では酸分、Fイオン分ともに検出限界(酸分1ppm、Fイオン分0.02ppm)以下であることが確認された。
【0047】
上述の安定性試験に用いたCOCHは、分岐構造を持つ(CFCFCFOCH(図11(a))と直鎖構造を持つCFCFCFCFOCHの混合物であるが、COCHにてHFの生成が確認された理由は、COCHにおいて、エーテル酸素のα位またはβ位に位置するフルオアルキル鎖中の炭素が分岐構造を有する(CFCFCFOCHが含まれていることにより、分岐炭素に結合するフッ素原子が、HFとして脱離しやすいことに起因すると推定される。HFが脱離しやすいハイドロフルオロエーテルは、図11(a)に示したものに限らず、例えば図11(b)や図11(c)に示した、エーテル酸素のα位またはβ位に位置するフルオアルキル鎖中の炭素が分岐構造を有するハイドロフルオロエーテルも分解してHFを放出しやすいことが分かっている。
【0048】
ここで図10(a)〜図10(c)に記載の臨界処理に好適なハイドロフルオロエーテルと、図11(a)〜図11(c)に記載の熱分解しやすいハイドロフルオロエーテルとの化学構造を比較すると、熱分解しやすいハイドロフルオロエーテルにおいては、酸素原子に結合する各フルオアルキル基の少なくとも一方側において、酸素原子から見てα位またはβ位にある炭素原子にてハイドロフルオロ基が分岐していることが分かる。
【0049】
これに対して超臨界状態で安定な図10(a)〜図10(c)に示すハイドロフルオロエーテルでは、このような分岐は存在せず、酸素原子から見てα位、β位の炭素原子のいずれにおいてもハイドロフルオロ基は直鎖状となっている。これを各位置における炭素原子の炭素−炭素結合の数で表現すると、熱的に安定なハイドロフルオロエーテルは、酸素原子から見てα位に位置する炭素原子の炭素−炭素結合の数が1個以下(0個を含む)であり、β位に位置する炭素原子の炭素−炭素結合の数が2個以下(0個を含む)であるフルオアルキル基から構成されているといえる。そしてこのような構造を有するハイドロフルオロエーテルは、超臨界状態や活性炭からのスチーム脱着の際に分解しにくく、本実施の形態に係る超臨界処理に好適なハイドロフルオロエーテルであるといえる。
【0050】
また熱分解しにくいCFCHOCFCHF、CFCHOCFCHFCF、CFCHFCFOCHCFCFの中では、CFCHOCFCHF(1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン)が最も臨界点が低く、使いやすいハイドロフルオロエーテルであるといえる。以下、本実施の形態に係る超臨界処理装置3においてもHFE供給部4からはCFCHOCFCHFが供給されるものとして説明を行う。
【0051】
以上の検討結果から、熱分解しにくいフッ素化合物の液体(実施の形態に係る超臨界処理装置3においてはハイドロフルオロエーテル(HFE))を用い、当該液体中の溶存酸素や超臨界処理が行われる処理雰囲気中の酸素を排除することによってHFEの熱分解を抑え、HFEから放出されたHFによるウエハWのエッチングや半導体デバイス中へのフッ素原子の取り込みなどの問題の発生を抑えている。
【0052】
本実施の形態の超臨界処理装置3に設けられているHFEの熱分解を抑えるための具体的な構成の説明に入る前に、HFE中の溶存酸素を低減し、処理容器内から酸素を排除する手法について検討しておく。まず、処理用の液体中の溶存酸素抑を低減する方法として、例えば、密閉可能な容器に上記フッ素化合物の液体を入れて、液体中に不活性ガスを導入してバブリングすることにより当該液体中に溶存している酸素を追い出す手法が挙げられる。バブリングの時間は例えば5分〜10分程度でよく、容器を密閉して、外部から酸素(空気)が混入しないように多少加圧状態とすることで溶存酸素濃度を低減することができる。
バブリングに用いる不活性ガスとしては窒素、ヘリウム、アルゴンなどを用いることができるが、アルゴンは酸素に比較して比重が大きく酸素置換効率の観点から好ましく、窒素ガスはコストの観点から好ましい。
【0053】
また、密閉可能な容器にフッ素化合物の液体を入れて、融点付近まで冷却後、減圧脱気して系内から酸素などの溶存ガスを除去したのちに、容器を密閉して、外部から酸素(空気)が混入しないようにすることでも溶存酸素を抑制することができる。
また、例えばHFEを専用の回収容器にて回収する装置構成を採用する場合などには、回収容器にアルゴンなどの不活性ガスを導入して回収液中の溶存酸素を低減させることも効率的である。
【0054】
次に超臨界処理が行われる処理雰囲気から酸素を排除する手法について検討すると、HFEを貯留した密閉容器(例えば図3のHFE供給部4に相当する)を超臨界処理装置3の処理容器(本例では上部容器31及び底板32)に接続するとともに、当該処理容器内に不活性ガスである窒素やアルゴンなどを導入して酸素濃度を低下させておく。この後、処理容器にウエハWを搬入し、容器を密閉後、密閉容器から処理容器へ配管を通してHFEを導入する。例えば処理容器が密閉されるまで不活性ガスは導入したままの状態とし、処理容器内への酸素混入を防止する。密閉後は窒素の導入を停止して処理容器の温度を臨界点まで上昇させて処理を実行する。
【0055】
ここでフッ素化合物(ハイドロフルオロエーテルやハイドロフルオロカーボン)の熱分解は、これまでに検討した酸素の存在下で顕著となるばかりでなく、水やアルコールなどの存在下でも発生する。特に、酸化分解しやすい構造のフッ素化合物の液体を超臨界処理の処理液として使う場合には、これら水やアルコールを低減することは、溶存酸素の影響ほど顕著ではないにしろ重要である。これは、水やアルコールがプロトン(水素イオン)供給源となって、HFが生成しやすくなることに起因する。
【0056】
特に水の存在はフッ素化合物の熱分解を引き起こし易く、それ故、超臨界処理が行われる雰囲気中からは水分を排除し、その進入を制限することが望ましい。特に、処理対象のウエハWや処理容器の内壁に吸着した水分子や、高湿度環境はフッ素化合物の熱分解を引き起こす要因となり、これら水分子は除去することが好ましい。そこで例えば、既述のようにウエハWの液処理を終えたあと、ウエハW表面に残存するDIWをIPAやHFEで置換したり、また処理容器にウエハWを搬入するまえに処理容器内を十分に乾燥した空気や窒素で置換させ水分を除去したりするとよい。さらにはウエハWを処理容器に搬入した後も、十分に露点の低い乾燥空気や乾燥窒素で処理容器内の雰囲気を置換、パージし水分を除去することが望ましい。また、処理容器が設けられた超臨界処理装置3内の雰囲気、例えば図2に示した筐体38内の雰囲気を低湿度にして外部からの水分の浸入を抑えてもよい。
【0057】
一方、ウエハWの搬入出の際に処理容器が例えば大気に開放された状態となると、その内壁に水分が吸着することも懸念され、次のウエハWを処理する際の問題となる。そこで超臨界処理用のフッ素化合物の液体を導入するまでの期間中に処理対象のウエハWや処理容器の内部を加温しておいて水分の吸着を抑制することも好ましい対策である。具体的には、処理容器の内壁(天板、側壁、底部など)、や基板保持台(図2に示す載置台321)を温調し、水分の吸着を抑えることも考えられる。
【0058】
以上に検討した結果を踏まえ、本実施の形態に係る超臨界処理装置3は、(A)HFE中の溶存酸素を低減し、(B)超臨界処理が行われる処理容器(上部容器31及び底板32)内の処理空間30から酸素や水分を排除し、また(C)処理容器の壁面などへの水分の吸着を抑えるための各種の構成を備えることによりHFEの熱分解を抑えている。これらは本実施の形態の熱分解成分排除部に相当している。以下、熱分解成分排除部の具体的な装置構成について説明する。
【0059】
まず(A)のHFE中の溶存酸素を低減する熱分解成分排除部として、HFE供給部4には、その内部に貯留されているHFEから溶存酸素を排除するためのバブリング部41が設けられている。バブリング部41は、例えば円管の管壁に多数の小孔を配置した散気管などとして構成され、不活性ガス(本例では窒素ガス)を供給する不活性ガス供給ライン411と接続されている。
【0060】
不活性ガス供給ライン411から供給された窒素ガスがバブリング部4を介してHFE供給部4内のHFE中に分散供給され、これによりHFE中の窒素ガスの気泡内に溶存酸素を拡散させることにより溶存酸素の排除が実行される。図中、412はバブリング後の窒素ガスをHFE供給部から排気する排気ライン412である。
【0061】
また(B)の処理容器(上部容器31及び底板32)内の処理空間30から酸素や水分の排除を行う熱分解成分排除部として、超臨界処理装置3は処理空間30内にHFEが供給されていない期間中、当該処理空間30内に不活性ガスを供給するための機構を備えている。例えば処理空間30へHFEを供給するHFE供給路311には、閉止弁421の上流側に設けられた切替弁422を介して処理空間30内に不活性ガスを供給するための不活性ガスライン45と、既述のHFE供給ライン42とが切り替え可能に接続されている。
【0062】
不活性ガスライン45には例えば露点が−50℃以下、好ましくは−60℃に調節され、例えば酸素濃度がサブppmオーダーで酸素を殆ど含まない高純度窒素ガスが供給され、当該窒素ガスを処理空間30へと供給することができる。不活性ガスを加熱した状態で処理空間30に供給する理由は、後述するようにヒーター314、322により加熱された状態となっている上部容器31や載置台321の加熱状態を維持するためである。また不活性ガスとして供給される窒素ガス中の水分はできるだけ少ない方が好ましいので、露点の下限値は特別に設ける必要はなく、処理空間30に供給された不活性ガスは、例えば既述の排出路313を介して排出ライン44へと排出されるようになっている。
【0063】
次いで(C)の処理容器の壁面への水分の吸着を抑える熱分解成分排除部として、超臨界処理装置3は超臨界処理を行っていない期間中もこれら上部容器31、載置台321を構成する部材を加熱する機能を備えている。本例に係る超臨界処理装置3では、例えば上部容器31については、例えば底板32内に設けられた既述のヒーター322を利用して載置台321を加熱することができるようになっている。
【0064】
一方、上部容器31についても例えば抵抗発熱体からなるヒーター314が埋設されており、図3に示すように電源部6から供給される電力によりヒーター314を発熱させて上部容器31を加熱することができる。また既述のように、不活性ガスを供給する不活性ガスライン45にも例えば抵抗発熱体を巻きつけることなどにより構成されるヒーター452が設けられていて、不活性ガス(窒素ガス)を例えば100℃に加熱して、処理空間30内に熱エネルギーを持ち込み、上部容器31や載置台321の表面を加熱することができる。
【0065】
上述の各ヒーター322、314、452は、処理容器(上部容器31及び底板32)の加熱部に相当するが、処理空間30を形成する上部容器31、載置台321を加熱するためにこれら3種類のヒーター322、314、452を全て設ける必要はない。例えばいずれか1つまたは2つのヒーター322、314、452を用いて加熱を実行してもよい。
【0066】
さらに図2に示すように、上部容器31、底板32を格納する筐体38の天井部には、当該筐体38に不活性ガスを通流させるための不活性ガス供給室39が設けられており、この不活性ガス供給室39も処理空間30内から酸素や水分の排除を行う(B)の熱分解成分排除部の一つを構成している。不活性ガス供給室39には、例えば露点を−50℃以下の−60℃に調節した窒素ガスが供給される。
【0067】
不活性ガス供給室39に供給された不活性ガスは、筐体38の天井面に設けられた多数の給気孔391を介して筐体38内に供給され、例えば筐体38の下部側の側壁面に設けられた排気部383より排気されるようになっている。かかる構成により、筐体38内には上方側から下方側へ向けて流れる不活性ガスのダウンフローが形成され、例えばウエハWの搬入出の際に底板32を受け渡し位置まで降下させて処理空間30を開放した際に、処理空間30内に酸素や水分が取り込まれるのを抑えることができる。
【0068】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理装置3は、図2、図3に示すように制御部7が接続されている。制御部7は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には当該超臨界処理装置3の作用、つまり、超臨界処理装置3内に上はウエハWを搬入し、HFEを用いて超臨界処理を行い、搬出するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。
【0069】
また制御部7は、処理空間30内から酸素や水分を除去するための第1のガス供給部(切替弁422など)を制御して、予め設定された期間中、処理空間30内に不活性ガスを供給する制御部として機能し、また処理容器(上部容器31及び底板32)の加熱部(ヒーター322、314、452)を制御して、予め設定された期間中に上部容器31や載置台321を加熱する制御部として機能するためのプログラムが記録されている。これらの各プログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0070】
以下、図4のフロー図及び図5〜図7の各動作説明図を参照しながら超臨界処理装置3の作用について説明する。まず超臨界処理装置3が稼動を開始すると(スタート)、処理空間30を閉じた状態とし、不活性ガスライン45から当該処理空間30内に不活性ガスを供給する。また、各ヒーター322、314、452をオンにして上部容器31、載置台321の温度を不図示の温度検出部からの温度検出結果に基づいて例えば100℃に調節した状態で待機する(ステップS101、図5(a))。
【0071】
処理空間30を閉じた状態で不活性ガスを供給することで、処理空間30内に存在していた酸素及び水分が排除され、また上部容器31や載置台321を加熱することによって、これらの部材31、321に吸着していた水分が脱離して処理空間30内にHFEの熱分解を促進する成分が排除された雰囲気が形成される。
また、図5〜図7の各図では不活性ガス供給室39の記載を省略してあるが、不活性ガス供給室39からは給気孔391を介して不活性ガスが供給されており、筐体38内には不活性ガスのダウンフローが常時形成されている。
【0072】
この状態で待機している超臨界処理装置3に対して、洗浄装置2にて液処理を終え、HFEが液盛りされた状態のウエハWが筐体38の側面に設けられた搬入出口382を介して搬入されて来る。超臨界処理装置3は、図5(b)に示すように、底板32を下方側の受け渡し位置まで移動させると共に、閉止弁421を閉止し、不活性ガスライン45からの不活性ガスの供給を停止する(ステップS102)。このとき支持機構33の支持部材331は底板32の移動に合わせて下降し、またウエハ保持部363の上面がウエハWの搬送経路の下方側に位置するようにリフター361を動作させる。なお、図5(a)〜図6(b)では図示の便宜上、支持機構33とガイド部材34とを一組ずつ示してある。
【0073】
外部の搬送装置の搬送アーム82に載置されたウエハWが超臨界処理装置3内に搬入され、ウエハWの中心部がリフター361の上方に到達したら、図6(a)に示すようにリフター361を上昇させて搬送アーム82と交差させ、ウエハWをウエハ保持部363上に保持して搬送アーム82を筐体38の外に退出させる(ステップS103)。そして図6(b)に示すように、ガイド部材34にてガイドさせながら底板32を上昇させてリフター361のウエハ保持部363を載置台321の凹部内に格納し、ウエハWを載置台321上に載置すると共に、載置台321を上部容器31の開口部に嵌合させてウエハWを処理空間30内に収容する(ステップS104)。このとき支持機構33の支持部材331は底板32の動作に合わせて上昇し、底板32の底面を支持固定する。
【0074】
このように処理空間30内への不活性ガスの供給を停止して、処理空間30を開放しウエハWの搬入を行っても、筐体38内には不活性ガスのダウンフローが形成されているので、筐体38側から処理空間30内に酸素や水分が入り込むことは殆どなく、処理空間30内からはHFEの熱分解を促進する成分を排除した状態が維持されている。ここでウエハWの搬入に際して不活性ガスライン45からの不活性ガスの供給を停止するのは、ウエハWに加熱された不活性ガスが直接吹き付けられてウエハW表面に液盛りされたHFEが乾燥するのを防止するためである。但し、後述するように処理空間30内への不活性ガスの供給、停止タイミングは種々変更することができる。
【0075】
そして図7(a)に示すように、切替弁422をHFE供給ライン42側に切り替え、HFE供給路311及び排出路313の閉止弁421、441を開として(同図中「O」と記してある)、HFE供給路311から処理空間30内へのHFEの供給を開始すると共に処理空間30内の雰囲気を排出路313側へ排出して処理空間30内の雰囲気をHFEに置換する(ステップS105)。
【0076】
そして処理空間30内に所定量、例えば処理空間30の容量の80%程度のHFEを供給したら、HFE供給路311、HFE排出路312並びに排出路313の閉止弁421、431、441を閉として(図7(b)中に「S」と記してある)、処理空間30を密閉する(ステップS106)。そして処理空間30内の温度が例えば200℃となるように底板32のヒーター322の出力を上げると、密閉した処理空間30内でHFEが加熱され、HFEが膨張して処理空間30内が例えば3MPaまで昇圧され、やがてHFEが超臨界状態となる(図7(c)、ステップS107)。
【0077】
HFEが超臨界状態となることによりウエハWの表面の液体が超臨界流体に状態変化してウエハWを乾燥させる超臨界処理が実行される。液体から超臨界流体の状態変化に際しては、液体/超臨界流体間に界面が形成されないので、ウエハW上のパターン11に毛細管力が働かず、パターン倒れを発生させずにウエハWを乾燥させることができる。また超臨界処理に用いられているHFEは既述のようにバブリングにより溶存酸素が排除されていること、またHFE自体の熱安定性が高いこと、処理空間30内に酸素や水分が殆ど存在しないためHFEの熱分解が促進されにくい状態となっていることから、当該超臨界処理に伴うHFEからのフッ素原子の放出は殆ど発生しない。従って、ウエハW表面に形成されたSiO膜12などの膜をエッチングしたり、ウエハWやパターン11などの半導体デバイス中にフッ素原子が取り込まれたりすることを抑制しながらウエハWを乾燥させることができる。
【0078】
その後、所定時間が経過したら、図7(d)に示すようにHFE排出路312の閉止弁431を開として処理空間30内からHFEを排出する(ステップS108)。HFE回収ライン43側へ排出されたHFEは冷却部432で冷却されてHFE供給部4へと回収される。この操作により処理空間30内が脱圧されて、内部の圧力が大気圧と同程度になったら、図7(e)に示すようにHFE排出路312の閉止弁431を閉、HFE供給路311と排出路313の閉止弁421、441を開とすると共に、切替弁422を切り替えて不活性ガスライン45からの不活性ガスの供給を開始する(ステップS109)。処理空間30内に残存していたHFEは、排出ライン44上に設けられたガス捕集部442にて捕集される。
【0079】
次いで底板32を降下させ、処理空間30を開放した後、搬入時とは搬入時とは逆の経路で超臨界処理装置3からウエハWを搬出し一連の動作を終える(ステップS110)。そしてウエハWが搬出されたら底板32を上昇させ、処理空間30を閉じた後、上部容器31、載置台321の温度が100℃となるように各ヒーター322の出力を調節して次のウエハWの搬入を待つ(ステップS101)
【0080】
本実施の形態に係る超臨界処理装置3によれば以下の効果がある。超臨界処理を開始する前までに処理容器(上部容器31及び底板32)内からHFEの熱分解を促進する成分を排除し、またHFE内からも溶存酸素を排除しておくと共に、熱分解しにくい性質を持ったHFEを用いることによりHFEの分解が促進されにくい条件の下で超臨界処理を行う。このため、ウエハW表面に形成されたパターン11のパターン倒れの発生を抑え、またHFEを構成するフッ素原子のウエハW内への取り込みを抑えて、高品質の処理結果を得ることができる。
【0081】
既述の(A)〜(C)の熱分解成分排除部は、これらのうち少なくとも一つを備えていれば、その熱分解成分排除部によるHFEの熱分解を促進する成分の排除能力に応じて本発明の効果を得ることができるが、特に(A)のHFE中の溶存酸素の低減と、(B)の処理空間30からの酸素や水分の排除が効果的である。
【0082】
ここで図4から図7を参照して説明した作用説明においては、図8(a)に模式的に示すように、処理空間30からHFE回収ライン43へ向けてHFEが排出されて内部の圧力が低下した後、次のウエハWが搬入されるまでの期間中、処理空間30内に不活性ガスを供給して処理空間30内にHFEの熱分解成分が排除された雰囲気を形成した例を示したが、不活性ガスを供給する期間はこれに限られるものではない。以下に説明する図8(a)〜図8(b)、図9(a)〜図9(b)におて、最上段のカラムは処理空間30内の雰囲気を右方向へ進行する時間軸に沿って示し、2段目のカラムは筐体38側の雰囲気を示している。これら2つのカラムの下方側には、各タイミングに対応する処理空間30の開閉状態(底板32を降下させた状態を「開」、底板32を上昇させて処理空間30を密閉した状態を「閉」とする)、HFE供給路311側の切替弁422の切り替え先、並びにHFE供給路311側、排出ライン44(排出路313)側、HFE回収ライン(HFE排出路312)側の各閉止弁421、441、431の開閉状態を示している。
【0083】
例えば図8(b)に示すように、ウエハWの搬入出動作を行うときにだけ処理空間30に不活性ガスを供給してもよい。図8(b)に示した例ではウエハWを搬出するために開放した処理空間30は、次のウエハWが搬入されるまで開放したままの状態となっているが、例えばウエハWを搬出した後、処理空間30を閉じ、処理空間30が開放されるウエハWの搬入期間だけ処理空間30に不活性ガスを供給して外部からの酸素や水分の進入を防いでもよい。図8(b)、図9(a)〜図9(b)の各図では、筐体38内の雰囲気を示すカラムの表示を省略してあるが、図8(a)の場合と同様に筐体38内には不活性ガスのダウンフローを形成してもよい。また本例のようにウエハWが搬入された後に処理空間30内の雰囲気が不活性ガスで置換される場合には筐体38内に形成するダウンフローを例えば露点が−50℃以下の乾燥空気として水分のみを排除することにより、窒素ガスの使用量を削減してもよいし、さらには筐体38内を通常の大気雰囲気としてもよい。
【0084】
また図9(a)に示すようにウエハWの搬入を終え、処理空間30を閉じて、当該処理空間30内に存在する酸素や水分を追い出すのに十分な量の不活性ガスを短時間供給した後、HFEを供給してもよい。このように、(1)HFEの導入開始前までに処理空間30からHFEの熱分解を促進する成分が排除されていること、(2)HFEの導入開始前までにウエハW表面のHFEが乾燥していないこと、の条件が満たされていれば本発明の効果を得ることができる。
【0085】
従って、図9(b)に示すように、処理空間30内のHFEを排出してから、次の処理を行うためにHFEの供給を開始するまでの期間中、継続的に処理空間30内に不活性ガスを供給してもよい。筐体38側に不活性ガスのダウンフローが形成されている場合には、処理空間30を開放してウエハWを搬入している期間中は、筐体38側から処理空間30内に不活性ガスが流れ込むこととなるのでさらに好ましい。
【0086】
また各ヒーター322、314、452にて上部容器31、載置台321を加熱する期間についても不活性ガスの供給期間と同様に、(1)ウエハWの搬入を終えて処理空間30を密閉し、HFEの導入が開始される前までに処理空間30内からHFEの熱分解を促進する成分が排除されていること、(2)HFEの導入開始前までにウエハW表面のHFEが乾燥していないことの条件を満たすように設定すれば本発明の効果を得ることができる。
【0087】
このとき上部容器31、載置台321から脱離させた水分を処理空間30内に滞留させないように、上部容器31、載置台321の加熱と並行して、または加熱の後に処理空間30内にパージガスを通流させるパージガス供給部を設け、脱離した水分を排出する操作を組み合わせることが好ましい。ここで水分を排出するために用いられるパージガスは、水分の含有量が少ないガスであることが好ましいが、既述の−50℃以下程度にまで露点調整されたガスでなくてもよい。
【0088】
この他、処理容器(上部容器31、底板32)内への不活性ガスの供給は、処理空間30を閉じた状態で行う場合に限られず、例えば底板32を降下させて処理空間30を開放した状態で不活性ガスの供給を行ってもよい。
そして超臨界処理装置3は処理空間30内にHFEの熱分解を促進する成分が排除された雰囲気を形成するために、処理空間30内に不活性ガスを供給し、上部容器31、載置台321を加熱し、また不活性ガス供給室39から筐体38内に不活性ガスを供給する各構成の全てを乾燥雰囲気形成部として備えている場合に限らず、これらの構成を1つまたは2つ組み合わせて乾燥雰囲気を形成するようにしてもよい。
【0089】
以上に説明した各種の実施の形態では、ウエハWに対して超臨界処理を行うためのフッ素化合物を含む処理用の液体としてHFEを採用した例を示したが、本発明を適用可能な処理用の液体はHFEに限られない。フッ素化合物を含む処理用の液体として例えばHFC(ハイドロフルオロカーボン)をもよい。この場合においても(A)HFC中の溶存酸素を低減し、(B)超臨界処理が行われる処理空間30から酸素や水分を排除し、また(C)処理容器の壁面などへの水分の吸着を抑える熱分解成分排除部を備えた超臨界処理装置3を用いることなどにより、HFCの熱分解を抑えてフッ素原子のウエハW内への取り込みを抑えつつ、ウエハWを乾燥することができる。
【実施例】
【0090】
(実験1) ガス捕集部442に用いる活性炭の存在下でのHFEの熱分解性を調べた。
A.実験条件
(実施例1−1) 図10(a)に示すCFCHOCFCHF(1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタンを活性炭の存在下で120℃、大気圧の条件下で72時間熱処理し、当該HFE中に放出されたフッ素イオン濃度及び酸分濃度を計測した。
(実施例1−2) 図10(b)に示すCFCHOCFCHFCF(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパンを(実施例1−1)と同様の熱処理を行い、フッ素イオン濃度及び酸分濃度を計測した。
(実施例1−3) 図10(c)に示すCFCHFCFOCHCFCF(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)プロパンを(実施例1−1)と同様の熱処理を行い、フッ素イオン濃度及び酸分濃度を計測した。
(比較例1−1) 図11(a)に示す(CFCFCFOCH(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−メトキシ−2−トリフルオロメチルプロパン)を(実施例1−1)と同様の熱処理を行い、フッ素イオン濃度及び酸分濃度を計測した。
(比較例1−2) 図11(b)に示す(CFCFCFOCHCH(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−エトキシ−2−トリフルオロメチルプロパン)を(実施例1−1)と同様の熱処理を行い、フッ素イオン濃度及び酸分濃度を計測した。
(比較例1−3) 図11(c)に示す(CFCFCF(OCH)CFCF(1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロ−2−トリフルオロメチル−3−メトキシペンタン)を(実施例1−1)と同様の熱処理を行い、フッ素イオン濃度及び酸分濃度を計測した。
【0091】
B.実験結果
(実施例1−1)〜(実施例1−3)の各HFEでは、活性炭の存在下で熱処理を行ってもフッ素イオン、酸分は検出限界(フッ素イオン0.02ppm、酸分1ppm)以下であった。一方、(比較例1−1)ではフッ素イオン濃度が45ppm、酸分が160ppmであり、(比較例1−2、1−3)でも同等程度のフッ素イオン、酸分が計測された。従って、活性炭の存在下でも各実施例に係るHFEは熱的安定性が高く、比較例に係るHFEは実施例のHFEと比較して熱的安定性が低いといえる。
【0092】
(実験2) (実施例1−1)に係るHFEを用いて各種パターン11の形成されたウエハWから液処理後の液体を除去する超臨界処理を行い、パターン倒れの発生の有無を確認した。
A.実験条件
(実施例2−1) シリコン酸化膜に梁構造のMEMSを形成したウエハWについて液処理後の超臨界処理を行った。
(実施例2−2) シリコン酸化膜に微細なパターン11を形成したウエハWについて液処理後の超臨界処理を行った。
(実施例2−3) 微細孔を有するポーラス酸化膜にパターン11を形成したウエハWについて液処理後の超臨界処理を行った。
B.実験結果
(実施例2−1)〜(実施例2−3)に係る各ウエハWについて、拡大観察を行ったところ、パターン倒れやポーラス酸化膜の微細孔へのダメージを発生することなく超臨界処理が行われていることを確認できた。
【符号の説明】
【0093】
W ウエハ
2 洗浄装置
3 超臨界処理装置
30 処理空間
31 上部容器
311 HFE供給路
312 HFE排出路
313 排出路
314 ヒーター
32 底板
321 載置台
322 ヒーター
39 不活性ガス供給室
392 エアドライヤ
4 HFE供給部
42 HFE供給ライン
43 HFE回収ライン
44 排出ライン
45 不活性ガスライン
451 エアドライヤ
452 ヒーター
6 電源部
7 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体により基板に対して処理を行う密閉可能な処理容器と、
この処理容器内にフッ素化合物を含む処理用の液体を供給する液体供給部と、
前記処理容器から前記超臨界流体を排出する流体排出部と、
前記処理容器内または前記液体供給部から供給される液体内から、当該液体の熱分解を促進する成分を排除するための熱分解成分排除部と、
前記処理容器内に供給された前記液体を加熱する加熱部と、を備え、
前記フッ素化合物は、ハイドロフルオロエーテルまたはハイドロフルオロカーボンであることを特徴とする超臨界処理装置。
【請求項2】
前記熱分解成分排除部は、前記液体供給部から供給される前の処理用の液体内に不活性ガスを供給してバブリングを行うバブリング部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の超臨界処理装置。
【請求項3】
前記熱分解成分排除部は、前記処理容器内に不活性ガスを供給する第1のガス供給部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の超臨界処理装置。
【請求項4】
基板の搬入を終えて処理容器を密閉したときにこの処理容器から前記処理用の液体の熱分解を促進する成分を排除するために、密閉前に当該処理容器内に前記不活性ガスを供給するように前記熱分解成分排除部を制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の超臨界処理装置。
【請求項5】
前記処理容器から処理用の液体の熱分解を促進する成分を排除するために、この処理容器への基板の搬入を終えて処理容器を密閉した後、当該処理容器内に前記不活性ガスを供給するように前記熱分解成分排除部を制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の超臨界処理装置。
【請求項6】
前記処理容器は、搬入出口を介して基板の搬入出が行われる筐体内に収容され、前記熱分解成分排除部は、さらに当該処理容器を取り巻く雰囲気から前記液体の熱分解を促進する成分を排除するために、この筐体部内に不活性ガスを供給する第2のガス供給部を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の超臨界処理装置。
【請求項7】
前記不活性ガスは、露点が−50℃以下の窒素ガスであることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか一つに記載の超臨界処理装置。
【請求項8】
前記フッ素化合物は、酸素原子から見てα位に位置する炭素原子の炭素−炭素結合が1個以下、β位に位置する炭素原子の炭素−炭素結合が2個以下であるフルオアルキル基から構成されるハイドロフルオロエーテルであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の超臨界処理装置。
【請求項9】
前記フッ素化合物は、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)プロパンからなる群から選択される少なくとも一つのハイドロフルオロエーテルを含んでいることを特徴とする請求項8に記載の超臨界処理装置。
【請求項10】
処理容器内にパターンの形成された基板を搬入する工程と、
前記処理容器内または当該処理容器に供給されるフッ素化合物を含んだ処理用の液体内から、当該液体の熱分解を促進する成分を排除する工程と、
前記基板の収容された処理容器内に、前記処理用の液体を供給する工程と、
前記処理容器を密閉し、当該処理容器内に供給された液体を加熱して得た超臨界流体により前記基板に対して処理を行う工程と、
前記処理容器を開放して超臨界流体を排出する工程と、を含み、
前記フッ素化合物は、ハイドロフルオロエーテルまたはハイドロフルオロカーボンであることを特徴とする超臨界処理方法。
【請求項11】
前記処理用の液体の熱分解を促進する成分を排除する工程は、この液体内に不活性ガスを供給してバブリングする工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の超臨界処理方法。
【請求項12】
前記処理用の液体の熱分解を促進する成分を排除する工程は、前記処理容器内に不活性ガスを供給する工程を含むことを特徴とする請求項10または11に記載の超臨界処理方法。
【請求項13】
前記不活性ガスを供給する工程は、基板の搬入を終えて処理容器を密閉したときにこの処理容器内から前記処理用の液体の熱分解を促進する成分を排除するために、密閉前に当該処理容器内に前記不活性ガスを供給することを特徴とする請求項12に記載の超臨界処理方法。
【請求項14】
前記不活性ガスを供給する工程は、前記処理容器から処理用の液体の熱分解を促進する成分を排除するために、この処理容器への基板の搬入を終えて処理容器を密閉した後、当該処理容器内に前記不活性ガスを供給することを特徴とする請求項12または13に記載の超臨界処理方法。
【請求項15】
前記処理容器は、搬入出口を介して基板の搬入出が行われる筐体内に収容され、前記不活性ガスを供給する工程は、さらに当該処理容器を取り巻く雰囲気から前記液体の熱分解を促進する成分を排除するために、前記処理容器を開放した状態で当該筐体内部に不活性ガスを供給する工程を含むことを特徴とする請求項12ないし14のいずれか一つに記載の超臨界処理方法。
【請求項16】
前記不活性ガスは、露点が−50℃以下の窒素ガスであることを特徴とする請求項12ないし15のいずれか一つに記載の超臨界処理方法。
【請求項17】
前記フッ素化合物は、酸素原子から見てα位に位置する炭素原子の炭素−炭素結合が1個以下、β位に位置する炭素原子の炭素−炭素結合が2個以下であるフルオアルキル基から構成されるハイドロフルオロエーテルであることを特徴とする請求項10ないし16のいずれか一つに記載の超臨界処理方法。
【請求項18】
前記フッ素化合物は、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)プロパンからなる群から選択される少なくとも一つのハイドロフルオロエーテルを含んでいることを特徴とする請求項17に記載の超臨界処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−187570(P2011−187570A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49567(P2010−49567)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】