説明

路車間通信システム、及び車載用装置

【課題】交差する道路の各方向に異なる内容の情報を伝達することが可能であるとともに、車両の進入角度に応じた情報の伝達が可能である路車間通信システムを提供する。
【解決手段】本発明の路車間通信システムは、車載用装置を搭載した車両と、路側機とを含んでいる。路側機が備える送信制御部は、車両の進入角度に応じて車両へ伝達する情報である伝達情報を生成する。そして伝達情報に対応する進入角度と伝達情報とを関係付けた関係情報を生成して送信する。車載用装置が備える受信制御部は、この電波を受信するよう電波受信装置を制御する。また車載用装置が備える角度算出部は、路側機が設けられた道路に対する車両の進入角度を、GPS装置を用いて算出する。また車載用装置が備える情報抽出部は、受信電波に含まれる関係情報を取得し、角度算出部により進入角度を算出し、算出された進入角度に関係付けられている伝達情報を関係情報より抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路側機から車両に対して情報配信を行うための路車間通信システム、及び車載用装置に関するものであり、特に情報を受信した車載用装置が、その車両に必要な情報のみを抽出することが可能な路車間通信システム、及び車載用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、路側に設置された路側機と、車両に搭載された車載用装置との間で通信を行うことにより様々なサービスを提供する路車間通信システムが実用化されている。特にITS(Intelligent Transport System)と呼ばれる情報通信技術を用いて、歩行者、車両、及び路側機の間で各種情報を利用するシステムの開発が進められている。
【0003】
ITSは主に、安全性、輸送効率、快適性の向上を目的としている。具体的には例えば、自動料金収受システム、運転支援、交通管理の最適化、道路管理の効率化、緊急車両の運行支援等が考えられている。代表的なシステムとしては、高速道路のETC(Electronic Toll Collection)等が実用化されている。
【0004】
上記のサービスを実現するための技術として、車両が搭載する無線通信装置により車両間で通信する車車間通信がある。また、道路脇等に設置された無線通信装置である路側機と、車両の無線通信装置とが通信する路車間通信がある。
【0005】
上記に関連して特許文献1においては、車車間及び路車間の通信に関して、安定した接続状態の維持を図ることを目的とした移動通信システムが開示されている。このシステムは、車両に搭載した移動無線局が、ヘッダに情報を付加することにより通信を中継転送する手段を備えている。これにより、通信相手との間に遮蔽物等が存在する状態であっても、他の移動無線局による中継転送により通信状態の維持を図っている。
【0006】
また特許文献2においては、車車間通信における混信を低減することを目的とした通信開始順設定システムが開示されている。このシステムは、複数車両の中の一車両を車車間通信開始車両として特定し得る要求信号を発信する第一通信機を含んでいる。また、各車両に各々設けられた第二通信機を含んでいる。
【0007】
車両は、第二通信機で受信した要求信号を用いて、自身に車車間通信の通信開始許可権が与えられているか否かを判定する。そして通信開始許可権が与えられている場合のみ、自身の車両情報を発信機から他車両に発信し、車車間通信を行う。これにより、通信量を低減している。
【0008】
また特許文献3においては、道路上の定地点に固有な情報を提供するシステムが開示されている。このシステムでは、地点を認識するための伝達媒体が道路上又は道路近辺の構造物に取付けられている。車両がこの地点を通過すると、磁気、電波、音波、光等の伝達媒体を利用し、車両に搭載された検知装置でこの地点を検出する。
【0009】
さらGPS受信機により、この地点の緯度、経度を測定し、車両に搭載された情報ベースで、緯度、経度によりこの地点の付随情報を検索し、ドライバに提供する。又は、付随情報として識別番号だけを検索、提供する。この場合、その他の付随情報は、路車間通信で複数の地点の付随情報をまとめて提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−219409号公報
【特許文献2】特開2008−131456号公報
【特許文献3】特開2001−357493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら特許文献1〜特許文献3においては、路車間通信システムにおける通信精度の向上や、情報提供の効率化、多機能化については開示されているが、システムの構成要素の簡略化については開示も示唆もなされていない。
【0012】
通常、路車間通信システムにおいては、路側機と受信側のそれぞれに共通した地図情報を予め記録しておく必要がある。また、道路リンクIDについても、共通の規約に基づいて生成された情報を、両方に記録しておく必要がある。このため、システムを利用できる車両が限定され、汎用性の点で不利である。
【0013】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、交差点に一つ設置された路側機から車両へ情報伝達を行う路車間通信システムにおいて、交差する道路の各方向に異なる内容の情報を伝達することが可能であるとともに、地図情報を備えていない車両に対しても、その車両の進入角度に応じた情報の伝達が可能である路車間通信システム、及び車載用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために本発明の路車間通信システムは、電波受信装置及びGPS(Global Positioning System)装置を含む車載用装置を搭載した車両と、前記電波受信装置が受信可能な電波を送信する電波送信装置を備える路側機とを含む路車間通信システムにおいて、前記路側機が、前記路側機の設置された道路に対する前記車両の進入角度に応じて前記車両へ伝達する情報である伝達情報を生成し、前記伝達情報に対応する前記進入角度と前記伝達情報との対応関係を示す関係情報を生成し、前記伝達情報及び前記関係情報を含む電波を送信するよう前記電波送信装置を制御する送信制御部を備え、前記車載用装置が、前記電波を受信するよう前記電波受信装置を制御する受信制御部と、前記道路に対する前記車両の進入角度を前記GPS装置を用いて算出する角度算出部と、前記受信制御部により前記電波が受信された場合に、前記電波に含まれる前記関係情報を取得し、前記角度算出部により前記進入角度を算出し、算出された前記進入角度に関係付けられている前記伝達情報を前記関係情報より抽出する情報抽出部とを備えることを特徴としている。
【0015】
この構成によると、本発明の路車間通信システムは、電波受信装置及びGPS装置を含む車載用装置を搭載した車両を含んでいる。また、電波受信装置が受信可能な電波を送信する電波送信装置を備える路側機を含んでいる。路側機が備える送信制御部は、路側機の設置された道路に対する車両の進入角度に応じて車両へ伝達する情報である、伝達情報を生成する。そして伝達情報に対応する進入角度と伝達情報とを関係付けた関係情報を生成する。そして関係情報を含む電波を送信するよう、電波送信装置を制御する。また、車載用装置が備える受信制御部は、路側機からの電波を受信するよう電波受信装置を制御する。また車載用装置が備える角度算出部は、路側機が設けられた道路に対する車両の進入角度を、GPS装置を用いて算出する。また車載用装置が備える情報抽出部は、受信制御部により電波が受信された場合に、電波に含まれる関係情報を取得し、角度算出部により進入角度を算出し、算出された進入角度に関係付けられている伝達情報を関係情報より抽出する。これにより受信側の車載用装置は、自車の進行方向に応じて、自車に必要な伝達情報のみを抽出することができる。
【0016】
また上記の目的を達成するために本発明の路車間通信システムは、前記車載用装置が、表示部又は音声出力部と、前記情報抽出部により抽出された前記伝達情報を示す画像又は音声を生成し、前記画像又は前記音声を出力するよう前記表示部又は前記音声出力部を制御する報知部とを備える。
【0017】
この構成によると、車載用装置は、表示部又は音声出力部を備えている。また、情報抽出部により抽出された伝達情報を示す画像又は音声を生成し、生成した画像又は音声を出力するよう表示部又は音声出力部を制御する報知部を備えている。これにより受信側の車載用装置は、自車の進行方向に応じて、自車の運転手に対して必要な報知のみを行うことができる。
【0018】
また上記の目的を達成するために本発明の路車間通信システムは、前記送信制御部が、前記道路に対する前記車両の進入角度を90度毎に四つの範囲に分割し、分割した四範囲のそれぞれに前記伝達情報を関係付けることにより前記関係情報を生成し、前記情報抽出部が、前記角度算出部により算出された前記進入角度が前記四範囲のいずれに含まれるかを判別し、判別された一範囲に関係付けられている前記伝達情報を前記関係情報より抽出する。
【0019】
この構成によると、路側機の備える送信制御部は、道路に対する車両の進入角度を90度毎に四つの範囲に分割し、分割した四範囲のそれぞれに伝達情報を関係付けることにより、関係情報を生成する。また車載用装置の備える情報抽出部は、角度算出部により算出された角度が四範囲のいずれに含まれるかを判別し、判別された一範囲に関係付けられている伝達情報を、関係情報より抽出する。
【0020】
また上記の目的を達成するために本発明の路車間通信システムは、前記送信制御部が、ITS(Intelligent Transportation Systems)を用いて取得した前記道路の交通状況に基づいて前記伝達情報及び前記関係情報を生成する。
【0021】
この構成によると、路側機の備える送信制御部は、ITSを用いて取得した交通状況、例えば路車間通信により検出した交差点接近中の車両数等に基づいて、伝達情報及び関係情報を生成する。
【0022】
また上記の目的を達成するために本発明の車載用装置は、電波受信装置及びGPS装置を含む車載用装置において、路側機の設けられた道路への進入角度に応じて前記路側機から車両へ伝達される情報である伝達情報と、前記伝達情報に対応する前記進入角度との対応関係を示した関係情報を含む電波を受信するよう前記電波受信装置を制御する受信制御部と、前記道路に対する前記車両の進入角度を前記GPS装置を用いて算出する角度算出部と、前記受信制御部により前記電波が受信された場合に、前記電波に含まれる前記関係情報を取得し、前記角度算出部により前記進入角度を算出し、算出された前記進入角度に関係付けられている前記伝達情報を前記関係情報より抽出する情報抽出部とを備えることを特徴としている。
【0023】
また上記の目的を達成するために本発明の車載用装置は、表示部又は音声出力部と、前記情報抽出部により抽出された前記伝達情報を示す画像又は音声を生成し、前記画像又は前記音声を出力するよう前記表示部又は前記音声出力部を制御する報知部とを備える。
【0024】
また上記の目的を達成するために本発明の車載用装置は、前記関係情報が、前記道路に対する前記車両の進入角度を90度毎に四つの範囲に分割して四範囲のそれぞれに前記伝達情報を関係付けた構成をしており、前記情報抽出部が、前記角度算出部により算出された前記進入角度が前記四範囲のいずれに含まれるかを判別し、判別された一範囲に関係付けられている前記伝達情報を前記関係情報より抽出する。
【0025】
この構成によると、上述の路車間通信システムに含まれる車載用装置と同等の作用を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、路側機から車両へ送信される情報の中に、交差点への車両進入角度に応じた伝達情報を格納し、全方位に送信する。また受信側の車両は、交差点へ進入する角度をGPS装置により算出し、自車に必要な伝達情報を抽出して報知する。このため、同じ情報を受信する車両であっても、その進入角度に応じて異なる内容の報知を行うことが可能である。
【0027】
また本発明によれば、受信側の車両がGPS装置を用いて進入角度を算出し、受信情報の中から必要な情報を抽出する。このため、路側機と車載用装置との両方に共通の地図情報や管理ID等を持たせ、車両単位で送受信管理を行う必要がない。また、ナビゲーション機能を備えない車両であっても、交差点への進入角度に応じた報知を実施することが可能である。
【0028】
また本発明によれば、一つの路側機を用いて、交差点の四方向へ伝達情報をブロードキャストする。このため、四方向の道路を走行する車両に対して四つの路側機を設ける場合と比較して、コストの面で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の車載用装置の装置構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の情報処理装置の装置構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の路車間通信システムのシステム構成を示すブロック図である。
【図4】関係情報の構造を示すテーブル図である。
【図5】道路状況を模式的に示した模式図である。
【図6】関係情報の受信処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。
〈1.路車間通信システムの構成について〉
図3は、本発明の一実施形態に係る路車間通信システムの構成を示すブロック図である。本システムは少なくとも、車両1、路側機2、及びGPS衛星3を含むように構成されている。
【0031】
車両1は、後述する車載用装置100が搭載された車両であり、路側機2が設けられた道路を走行するために用いられる。
【0032】
路側機2は、路側に設けられ、車両1が搭載する車載用装置100に対して所定の情報を送信するための送信機である。路側機2はその内部に、情報処理装置200を備えている。情報処理装置200は、後述する路車間通信情報(図4)の生成、記録、送信を行うための各種情報処理を行う。なお、情報処理装置200の詳細については後述する。
【0033】
GPS衛星3は、衛星軌道上に配置され、特定の電波(例えば1.575GHzのL1電波等)を地上のGPS受信機に対して送信する。これにより、位置情報を算出するための各種情報、例えばGPS衛星3の座標情報や、電波の伝搬時間を計測するための時刻情報等を送信する。
〈2.車載用装置の構成について〉
図1は、本発明の一実施形態に係る車載用装置100の内部構成示すブロック図である。なお本実施形態の車載用装置100は、車両1に搭載されて路車間通信システムの一部を構成する電子機器である。
【0034】
図1のブロック図に示すように、本発明の車載用装置100は少なくとも、制御部11、GPSアンテナ12(=GPS装置)、測位航法装置13(=GPS装置)、LCD(Liquid Crystal Display)14(=表示部)、表示制御部15、操作部16、スピーカ17(=音声出力部)、フラッシュメモリ18、アンテナ19(=電波受信装置)、及び通信制御部20(=電波受信装置)を含むように構成されている。
【0035】
制御部11は、車載用装置100の各部材の駆動を有機的に制御して、交通情報の取得処理や表示処理等を統括制御するものである。また制御部11は、制御部11が備える演算処理装置上で所定のプログラムを実行することにより実現される機能部として、受信制御部11a〜報知部11dを備えている。なお、各機能部が実施する処理の詳細については後述する。
【0036】
GPSアンテナ12は、GPS衛星3から発せられる特定の電波(例えば1.575GHzのL1電波等)を受信するための受信機である。GPSアンテナ12は、複数のGPS衛星3から各GPS衛星3の座標情報等を含む信号を受信することが可能である。
【0037】
測位航法装置13は、GPSアンテナ12で受信した信号をデコードして緯度経度情報を生成する測位装置と、ジャイロ及び車速センサにより速度情報、姿勢角情報を生成する航法装置とからなる装置である。
【0038】
LCD14は、ナビゲーション装置100が保持する各種情報、例えば交通情報やメニュー画面等を表示する装置である。表示制御部15は、画像情報をLCD14の信号フォーマットにあわせた信号にエンコードした後、D/A変換を行い、画像信号を出力する。表示制御部15から出力された画像信号はLCD14に送られ、画像として表示される。
【0039】
操作部16は、車両1の運転手がナビゲーション装置100に対する各種指示、例えば目的地入力等を行うための入力インタフェースである。操作部16は、例えば複数のプッシュボタンやタッチセンサ等を含むように構成されている。或いは、LCD14の表面にタッチパネルを設けることにより、操作入力を受け付ける形態でもよい。
【0040】
スピーカ17は、車両1の搭乗者に対して各種情報を含む音声を出力する音声出力装置である。本実施形態では特に、車両1が交差点に接近した場合において報知音声を出力するのに用いられる。
【0041】
メモリ18は、各種情報を記録するための媒体である。メモリ18は例えばナビゲーション処理に用いられる地図情報や、音声情報を記録するのに用いられる。また本実施形態では、路側機2より受信した交通情報等を記録するのに用いられる。
【0042】
アンテナ19は、路側機2から送信されてくる電波の受信を行うためのものであり、例えば複数のダイバーシティアンテナ等が用いられる。通信制御部20は、アンテナ19により受信した電波の復調を行う。なお通信制御部20は、アンテナ19を用いて電波を送信するための送信制御機能も備える形態でもよい。
〈3.情報処理装置の構成について〉
図2は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置200の内部構成示すブロック図である。なお本実施形態の情報処理装置200は、路側機2に内蔵されて路車間通信システムの一部を構成する電子機器である。
【0043】
図2のブロック図に示すように、本発明の情報処理装置200は少なくとも、制御部21、メモリ22、アンテナ23(=電波送信装置)、及び通信制御部24(=電波送信装置)を含むように構成されている。
【0044】
制御部21は、情報処理装置200の各部材の駆動を有機的に制御して、交通情報の生成処理や送信処理等を統括制御するものである。また制御部21は、制御部21が備える演算処理装置上で所定のプログラムを実行することにより実現される機能部として、送信制御部21aを備えている。なお、送信制御部21aが実施する処理の詳細については後述する。
【0045】
メモリ22は、各種情報を記録するための媒体である。メモリ22は例えば、車両1に送信するための路車間通信情報や、道路交通情報等を記録するのに用いられる。
【0046】
アンテナ23は、車両1に搭載されているアンテナ19が受信可能な周波数の電波を発信する発信器である。通信制御部24は、上記の電波を用いて送信する情報の変調処理や、アンテナ23により送信する電波の送信制御を行う。
〈4.路車間通信情報について〉
図4は、本発明の一実施形態に係る路車間通信システムにおいて用いられる路車間通信情報(=関係情報)の一例を示すテーブル図である。路車間通信情報は、路側機2の送信制御部21aにより生成される。
【0047】
図4に示すように本実施形態の路車間通信情報は、「進入角度」と「情報内容」との二項目が関係付けられて存在する構造をしている。「進入角度」は、車両1が、路側機が設置された道路に対して進入する角度を示している。「情報内容」は、路車間通信情報を受信した車両1が、その運転手に対して報知を行うための伝達情報を示している。
【0048】
なお、以下の説明では路側機が設置された道路を交差点として説明を行うが、路側機が設置されている道路であれば交差点に限定する必要はない。
【0049】
「進入角度」については、路側機2から見た進入角度の区分けは交差点毎に異なるので、路側機2毎に予め設定しておく。本実施形態では、北を0度とし、時計回りに0度から359度まで表現するものとする。そして図5に示すように、十字の交差点の進入角度を四等分する。進入角は45度〜134度、135度〜224度、225度〜314度、315度〜44度に区分けされている。
【0050】
図5の例では、路側機2が設けられた交差点に対して、車両1aが180度の方向から進入しようとしている。また車両1bが、90度の方向から進入しようとしている。従って車両1aに対しては、右方向から他車両が接近していることを報知する必要がある。また車両1bに対しては、左方向から他車両が接近していることを報知する必要がある。
【0051】
上記の交通状況をITS等により検知した路側機2の送信制御部21aは、「情報内容」に含める伝達情報を上記の検知結果に基づいて、図4のように生成する。本実施形態では進入角度を90度毎に四分割して管理しているため、四つの「情報内容」に含めるための伝達情報が生成される。
【0052】
送信制御部21aは、生成した伝達情報を含む路車間通信情報を、700MHz帯の電波等を用いて送信する。なお上記の送信処理は、例えば100ミリ秒毎に、路側機2からその周囲の車両1へブロードキャスト送信することにより行われる。伝播距離は数百メートルである。
【0053】
これを受けた車両1は、受信した路車間通信情報を用いた報知処理を行う。この報知処理の詳細について、次に説明する。
〈5.路車間通信情報を用いた報知処理について〉
ここで、本発明の一実施形態に係る車載用装置100が実施する報知処理の概要を、図6のフロー図を用いながら説明する。図6に示す処理フローは、車載用装置100が稼働状態となった時点で開始される。
【0054】
本処理の開始後、受信制御部11aはステップS110において、アンテナ19が路側機2より、路車間通信情報を含む所定の電波を受信したか否かの判定を行う。電波の受信を検知していない場合、つまり路側機2の設けられた交差点の近傍に位置しない場合、再びステップS110へ移行し、継続して監視を行う。
【0055】
電波の受信を検知した場合、角度算出部11bはステップS120において、GPSアンテナ12及び測位航法装置13を用いて位置情報の取得を行う。さらに角度算出部11bはステップS130において、取得した位置情報から、路側機2が設けられた交差点に対する進入角度を計算する。
【0056】
例えば車両1が北上しながら走行している場合、図5に示す車両1aの状態となるため、進入角度は180度となる。また車両1が西進しながら走行している場合、図5に示す車両1bの状態となるため、進入角度は90度となる。
【0057】
次に情報抽出部11cはステップS140において、上記で算出された進入角度と図4に示す路車間通信情報とを参照し、報知に用いる伝達情報を抽出する。
【0058】
例えば図5の例では、車両1aは進入角度が180度、つまり135度〜224度の範囲内であるため、車両1aにおいては二行目の「右から車が来ます」が伝達情報として抽出される。また車両1bは進入角度が90度、つまり45度〜134度の範囲内であるため、一行目の「左から車が来ます」が伝達情報として抽出される。
【0059】
次に報知部11dはステップS150において、情報抽出部11cにより抽出された伝達情報を用いた報知を行う。例えば、伝達情報を示すテキスト画像を生成してLCD14に表示する。或いは、伝達情報を示す音声を生成してスピーカ17より出力する。報知が完了すると、再びステップS110へ移行する。
【0060】
なお、情報抽出部11cにより抽出された伝達情報が空情報である場合、つまり図4における「情報内容」に何も情報が含まれていない場合、報知を実施しない形態でもよいし、所定の固定メッセージを報知する形態でもよい。固定メッセージとしては例えば、「接近車両はありません」等を用いる。
【0061】
以上に説明した実施形態によれば、路側機2から送信される路車間通信情報の中に、交差点への進入角度に応じて区分けした伝達情報を格納し、全方位に送信する。また受信側の車両1は、交差点へ進入する角度を測位航法装置13等により算出し、自車に必要な伝達情報をのみを抽出して報知する。
【0062】
このため、交差点の各方向を走行する車両において、走行方向に応じて異なる内容の報知を行うことが可能である。また、路側機2と車載用装置100との両方に共通の地図情報や交通情報管理用のID等を持たせる必要がない。このため、車載用装置100がナビゲーション機能を備えない場合であっても、交差点への進入角度に応じた報知を実施することが可能である。
[その他の実施の形態]
以上、好ましい実施の形態及び実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0063】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
【0064】
(A)上記実施形態では、本発明の各種処理に関わる車載用装置100及び情報処理装置200の各種機能部が、マイクロプロセッサ等の演算処理装置上で所定のプログラムを実行することにより実現されているが、各種機能部が複数の回路により実現される形態でもよい。
【0065】
(B)上記実施形態では、ナビゲーション装置100の内部にGPS装置が収容されている形態を例に説明したが、必ずしも同一筐体である必要はない。例えばナビゲーション装置100とGPS装置とが互いに通信部を備え、通信部を介してデータ転送を行うことにより、上記と同様の動作をさせる形態であってもよい。
【0066】
(C)上記実施形態では、路車間通信情報を用いた報知を行う地点の一例として交差点を例に説明を行っているが、これ以外の形状の道路において、進入角度に応じた報知の実施を行う形態でもよい。例えば三叉路や工事中道路等において実施する形態でもよい。
【0067】
(D)上記実施形態では、送信制御部21aがITSを用いて検知した交通状況から伝達情報及び路車間通信情報を生成しているが、これ以外の手段により交通状況を検知する形態でもよい。例えば路側機2が撮像装置を備え、道路を撮像し、撮像画像を解析することにより交通状況を検知する形態でもよい。また路側機2が、広域通信網に接続可能な通信部を備え、広域通信網を介して交通状況を検知する形態でもよい。
【0068】
(E)上記実施形態では、送信制御部21aが実施する路車間通信情報の生成及び送信を所定期間毎に行っているが、路車間通信情報の生成は車両1の検知時のみ行い、新たな車両1が検知されない限りは、送信のみを所定期間毎に行う形態でもよい。
【0069】
(F)上記実施形態では、進入角度の算出にGPS装置を用いる記載としたが、この他にも、WiFi(無線LAN)による測位や、携帯電話やPHS基地局による測位、さらには電子コンパスによる測位(方位算出)を用いることもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 車両
2 路側機
3 GPS衛星
100 車載用装置
11 制御部
11a 受信制御部
11b 角度算出部
11c 情報抽出部
11d 報知部
12 GPSアンテナ(GPS装置)
13 測位航法装置(GPS装置)
14 LCD(表示部)
15 表示制御部
16 操作部
17 スピーカ(音声出力部)
18 メモリ
19 アンテナ(電波受信装置)
20 通信制御部(電波受信装置)
200 情報処理装置
21 制御部
21a 送信制御部
22 メモリ
23 アンテナ(電波送信装置)
24 通信制御部(電波送信装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波受信装置及びGPS(Global Positioning System)装置を含む車載用装置を搭載した車両と、前記電波受信装置が受信可能な電波を送信する電波送信装置を備える路側機とを含む路車間通信システムにおいて、
前記路側機が、前記路側機の設置された道路に対する前記車両の進入角度に応じて前記車両へ伝達する情報である伝達情報を生成し、前記伝達情報に対応する前記進入角度と前記伝達情報との対応関係を示す関係情報を生成し、前記伝達情報及び前記関係情報を含む電波を送信するよう前記電波送信装置を制御する送信制御部を備え、
前記車載用装置が、前記電波を受信するよう前記電波受信装置を制御する受信制御部と、
前記道路に対する前記車両の進入角度を前記GPS装置を用いて算出する角度算出部と、
前記受信制御部により前記電波が受信された場合に、前記電波に含まれる前記関係情報を取得し、前記角度算出部により前記進入角度を算出し、算出された前記進入角度に関係付けられている前記伝達情報を前記関係情報より抽出する情報抽出部とを備えること
を特徴とする路車間通信システム。
【請求項2】
前記車載用装置が、表示部又は音声出力部と、
前記情報抽出部により抽出された前記伝達情報を示す画像又は音声を生成し、前記画像又は前記音声を出力するよう前記表示部又は前記音声出力部を制御する報知部とを備える、
請求項1に記載の路車間通信システム。
【請求項3】
前記送信制御部が、前記道路に対する前記車両の進入角度を90度毎に四つの範囲に分割し、分割した四範囲のそれぞれに前記伝達情報を関係付けることにより前記関係情報を生成し、
前記情報抽出部が、前記角度算出部により算出された前記進入角度が前記四範囲のいずれに含まれるかを判別し、判別された一範囲に関係付けられている前記伝達情報を前記関係情報より抽出する、
請求項1に記載の路車間通信システム。
【請求項4】
前記送信制御部が、ITS(Intelligent Transportation Systems)を用いて取得した前記道路の交通状況に基づいて前記伝達情報及び前記関係情報を生成する、
請求項1に記載の路車間通信システム。
【請求項5】
電波受信装置及びGPS装置を含む車載用装置において、
路側機の設けられた道路への進入角度に応じて前記路側機から車両へ伝達される情報である伝達情報と、前記伝達情報に対応する前記進入角度との対応関係を示した関係情報を含む電波を受信するよう前記電波受信装置を制御する受信制御部と、
前記道路に対する前記車両の進入角度を前記GPS装置を用いて算出する角度算出部と、
前記受信制御部により前記電波が受信された場合に、前記電波に含まれる前記関係情報を取得し、前記角度算出部により前記進入角度を算出し、算出された前記進入角度に関係付けられている前記伝達情報を前記関係情報より抽出する情報抽出部とを備えること
を特徴とする車載用装置。
【請求項6】
表示部又は音声出力部と、
前記情報抽出部により抽出された前記伝達情報を示す画像又は音声を生成し、前記画像又は前記音声を出力するよう前記表示部又は前記音声出力部を制御する報知部とを備える、
請求項5に記載の車載用装置。
【請求項7】
前記関係情報が、前記道路に対する前記車両の進入角度を90度毎に四つの範囲に分割して四範囲のそれぞれに前記伝達情報を関係付けた構成をしており、
前記情報抽出部が、前記角度算出部により算出された前記進入角度が前記四範囲のいずれに含まれるかを判別し、判別された一範囲に関係付けられている前記伝達情報を前記関係情報より抽出する、
請求項5に記載の車載用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−76347(P2011−76347A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226813(P2009−226813)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】