説明

車両と対象物体との距離を求める装置および少なくとも2つの送受信手段の間隔を求める方法

【課題】信号を送信し対象物体から反射したエコーを受信する送受信手段と、反射エコーの受信信号に基づき距離d,d,k,x,yを求める電子ユニットを用いて、車両と対象物体との距離を求める際、各送受信手段の間隔を少なくとも同じ精度を維持しながらいっそう簡単に捕捉できるようにする。
【解決手段】電子ユニットは、送受信手段の種々の感度で、および前記対象物体に対し一定の距離で、反射エコーの受信信号を捕捉し、種々の感度で受け取った受信信号に対し平均値を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号を送信し対象物体から反射したエコーを受信する少なくとも2つの送受信手段と、少なくとも1つの反射エコーの受信信号に基づき距離を求める電子ユニットとを備えた、車両と対象物体との距離を求める装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、少なくとも2つの送受信手段たとえば反射エコーの受信信号に基づき距離が求められるようにした、たとえば請求項1から3のいずれか1項記載の車両と物体との距離を求める装置の少なくとも2つの送受信手段の距離を求める方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公報DE-A-101 38 001 Alから、信号を送信し外部の物体により反射したエコーを受信するための複数の送受信ユニットを備えたエコー信号監視装置が知られている。この装置は、受信したエコーに基づき監視装置から外部の対象物体までの距離を推定する評価ユニットを有している。さらにこの装置は、反射したエコーに基づき複数の送受信ユニット相互間の相対位置を計算する動作状態を有している。
【0004】
この場合、各送受信ユニット間の間隔測定の精度を向上させる目的で、エコー伝播時間が繰り返し測定され、距離測定のため繰り返し行われた測定の平均値形成が行われる。その際に有利なことにこのエコー信号監視装置を、繰り返し行われる上述の測定の実行中、ゆっくりと動かすことができる。
【特許文献1】DE-A-101 38 001 Al
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、各送受信手段の間隔を少なくとも同じ精度を維持しながらいっそう簡単に捕捉できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によればこの課題は、電子ユニットは、たとえば送受信手段相互間の間隔を計算するために、これらの送受信手段の種々の感度で、および対象物体に対し一定の距離で、反射エコーの受信信号を捕捉し、種々の感度で受け取った受信信号に対し平均値を形成することを特徴とする、車両と対象物体との距離を求める装置によって解決される。
【0007】
さらに本発明の課題は、反射エコーの受信信号を前記送受信手段の種々の感度で対象物体までの距離が一定の距離のときに捕捉し、該受信信号に対し平均値を形成することを特徴とする方法によって解決される。
【0008】
従属請求項には本発明の有利な実施形態が示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まずは本発明が前提とするのは、車両と対象物体との距離を求める装置であって、この装置には、信号を送信し対象物体から反射したエコーを受信する少なくとも2つの送受信手段と、少なくとも1つの反射エコーの受信信号に基づき対象物体と車両との距離を求める電子ユニットが設けられている。
【0010】
そして本発明の基本的な着想によれば、電子ユニットは以下のように構成されている。すなわち、たとえば送受信手段相互の間隔の計算のために、送受信手段の種々の感度で反射エコーの受信信号を対象物体までの等しい距離について捕捉し、それらの受信信号に対し平均値を形成するように構成されている。
【0011】
平均値形成により改善が得られるようにするためには、規定のやり方の測定が1つの精確な平均値を中心に分散するようにしなければならない。1つの可能性として挙げられるのは、DE 101 38 001 Alで提案されているようにセンサを前後にいくらか動かすことである。ただし実際にはこれを実現するのは非常に難しい。本発明の基礎とする着想は、センサの感度を反射エコーたとえば超音波エコーの受信時に変化させることで、やはり同じ効果を達成できることである。その結果として、受信したパルス経過特性のそれぞれ異なるレベルが測定値として利用されるようになり、これにより測定値において望ましい規定の分散が生じるようになる。
【0012】
殊に有利な実施形態によれば、送受信手段の感度を変化させるためにトリガ閾値を設定することができる。このことは、アナログ受信信号をディジタル信号に変換する内部回路を、調整可能な閾値によってトリガできるように構成することによって実現できる。
【0013】
対象物体までの測定時の距離は変化しないにもかかわらず、有利には距離に依存する感度特性曲線がロードされ、これにより測定距離ごとにセンサの感度つまりはトリガ閾値のレベルが規定される。送受信手段の間隔が同じままでこのやり方を実行すれば、送受信手段の種々の感度が得られる。種々の感度で測定することにより、測定値の望ましい分散を得ることができる。これらの測定値に対し既知のやり方で平均値形成が適用され、これにより感度を同じままにして平均値を形成するのに比べ、精度を著しく高めることができるようになる。
【0014】
このやり方によれば、車両と対象物体との距離を求める装置が1cmよりも精密な測定を行えなえず、各センサ相互間の間隔測定時に数〜数10cmの誤差を引き起こす場合でも、mm領域の分解能を達成できる。
【0015】
これにより、静止したターゲットにおいて相応の時間を用いて、慣用の距離測定をそれ相応に精密にすることができる。
【0016】
有利には、間隔たとえば送受信手段相互の間隔を反射エコーの受信信号に基づき求めるようにした車両と対象物体との距離を捕捉する装置のための、少なくとも2つの送受信手段たとえば多数の送受信手段の間隔を求める方法において、核となる着想は、反射エコーの信号を送受信手段の種々の感度で対象物体までの距離が一定のときに捕捉し、それらの信号に対し平均値を形成することにある。種々の感度で測定することにより、平均値形成後にかなり高い精度の測定値が供給される測定値分散が得られる。
【0017】
次に、図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【実施例】
【0018】
図1には、センサ3,4,5を備えた車両2(フロント部分のみ示す)の前に位置する壁1を上から見た様子が略示されている。センサ3,4,5はたとえば、信号一例として超音波信号を送信することができ、同一のセンサまたは隣り合うセンサによるエコーを受信することができる。
【0019】
各センサの距離x,yは、車両が図1に示されているように直線状の壁1の前に位置している場合には、互いに隣り合うセンサ1,2もしくは2,3について受信したダイレクトなエコーまたはクロスしたエコーを評価することで、理論的には簡単に求めることができる。
【0020】
図1には、一例として3つのセンサ3,4,5を備えたシステムに関する状況が描かれており、ここではセンサ3とセンサ4との間の距離xが求められる。
【0021】
慣用の幾何学的考察により、次式を導き出すことができる。
【0022】
【数1】

ここでxは求める距離である。また、kはクロスエコー区間の半分を表し、dもしくはdはそれぞれダイレクトエコー区間の半分を表す。
【0023】
求められた値d,dならびにkから、距離xを比較的簡単に計算することができる。
【0024】
ただしここで判明したのは、このやり方では重大な欠点が付随してしまうことである。エコー伝播距離を求めるためのエコー伝播時間の測定に誤りがあると、計算される距離xに大きい偏差が生じてしまう。たとえばエコー伝播距離の誤差が1cmであると、センサ間隔に7cmまで偏差が生じてしまう。1つのエコー区間よりも多い区間において測定誤差が生じると、この偏差はそれに応じて高まってしまい、その結果、さらに著しく大きい誤差が引き起こされる可能性がある。これにより、計算された距離xの結果が実際には利用できないものとなる。
【0025】
また、それ相応の平均値形成を伴う複数の測定によっても、測定におけるすべての境界条件が同じままだと、望ましい精度向上を得ることができない。なぜならば平均値形成による結果の向上は、個々の測定が互いに偏差し理論的に適正な値だけ変動している場合にのみ、達成できるからである。
【0026】
そしてこのことは、センサ3,4,5の受信感度を受信時に変化させることによって達成される。
【0027】
図2には、センサ信号6の振幅aの慣用の経過特性が時間tに関して示されている。
【0028】
あるエコーの伝播時間を求めるために、センサ信号6がまえもって定められた振幅値を超えたときの時点が定義される。
【0029】
受信感度を変化させる場合、様々な振幅値が利用される。受信感度が高く設定されているときには伝播時間はすでに比較的小さい振幅のときにとまるのに対し、受信感度が低く設定されているときには、エコーの伝播時間測定のための時間をとめるのに、比較的大きい振幅レベルが必要とされる。
【0030】
車両2と壁1との距離が一定であるときに実際の距離値を中心として測定値の分散が得られるようにするために、この状況を利用することができ、このような実際の距離値を分散した測定値の平均値形成により近似することができる。
【0031】
図2によれば、4つの振幅値a1,a2,a3,a4を設けることにより、距離測定のためにエコーの伝播時間d1,d2,kが測定される。一例としてそれぞれ4つの測定から、d1,d2,kについて平均値が求められる。これにより望ましい精度でセンサ3および4の間隔xを計算することができるし、あるいはそれ相応の測定によりセンサ4,5の間隔yを計算することができる。
【0032】
実際の使用において、本発明によるやり方をベースとして値xおよび値yを求めるために、壁1からの車両2の距離は40cm〜60cmの範囲で保証された。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】距離センサ間の間隔を求めるために複数の距離センサを備えた車両が壁の前に位置している様子を示す部分図
【図2】距離センサ信号の信号振幅の時間経過特性を示す図
【符号の説明】
【0034】
2 車両
3,4,5 センサ
6 センサ信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を送信し対象物体(1)から反射したエコーを受信する少なくとも2つの送受信手段(3,4,5)と、
少なくとも1つの反射エコーの受信信号に基づき距離(d,d,k,x,y)を求める電子ユニットとを備えた、
車両(2)と対象物体(1)との距離を求める装置において、
前記電子ユニットは、前記送受信手段(3,4,5)の種々の感度で、および前記対象物体(1)に対し一定の距離で、反射エコーの受信信号を捕捉し、種々の感度で受け取った受信信号に対し平均値を形成することを特徴とする、
車両(2)と対象物体(1)との距離を求める装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記送受信手段(3,4,5)の感度を変化させるためにトリガ閾値を調整可能であることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の装置において、
前記電子ユニットは、距離が同じときに種々の感度で測定するために、種々の距離に対する感度を基礎とすることを特徴とする装置。
【請求項4】
少なくとも2つの送受信手段(3,4,5)たとえば反射エコーの受信信号に基づき距離(x,y)が求められるようにした車両と物体との距離を求める装置の少なくとも2つの送受信手段(3,4,5)の距離を求める方法において、
反射エコーの受信信号を前記送受信手段(3,4,5)の種々の感度で対象物体までの距離が一定の距離のときに捕捉し、該受信信号に対し平均値を形成することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、
前記送受信手段の感度をトリガ閾値の調整により変化させることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の方法において、
距離が同じままのときに種々の感度で測定するために種々の距離に対する感度を利用することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−349681(P2006−349681A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164532(P2006−164532)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】