車両のサスペンションアーム取付構造
【課題】サスペンションアームの取付剛性の向上と機械加工の省略による生産性と組付性の向上及びコストダウンを図ることができる車両のサスペンションアーム取付構造を提供する。
【解決手段】アルミ製サスペンションメンバ4と、ブッシュ38を介してサスペンションメンバ4に揺動可能に取り付けられるサスペンションアームと、を有する車両の前記サスペンションアームの取付構造として、前記ブッシュ38を、サスペンションメンバ4に固定される軸38A及び外筒38Bと、これらの軸38Aと外筒38Bの間に充填された弾性部材38Cとで構成し、サスペンションメンバ4に下向きの取付面4g−1を形成し、ブッシュ38の軸38Aの前記外筒38Bから突出する両端部に平坦な締付固定部38aを形成し、該締付固定部38aを前記サスペンションメンバ4の取付面4g−1に下方から締付固定する構成を採用する。
【解決手段】アルミ製サスペンションメンバ4と、ブッシュ38を介してサスペンションメンバ4に揺動可能に取り付けられるサスペンションアームと、を有する車両の前記サスペンションアームの取付構造として、前記ブッシュ38を、サスペンションメンバ4に固定される軸38A及び外筒38Bと、これらの軸38Aと外筒38Bの間に充填された弾性部材38Cとで構成し、サスペンションメンバ4に下向きの取付面4g−1を形成し、ブッシュ38の軸38Aの前記外筒38Bから突出する両端部に平坦な締付固定部38aを形成し、該締付固定部38aを前記サスペンションメンバ4の取付面4g−1に下方から締付固定する構成を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンルームの下方に配置されるアルミ製サスペンションメンバの左右両端部に揺動可能に支持される左右のサスペンションアームの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルームの下方に配置されるサスペンションメンバは、左右のサスペンションアームを上下に揺動可能に支持するとともに、エンジンルームの左右両側に車両前後方向に沿って配置された一対のエプロンサイドメンバを連結して車体の剛性を高めるための部材である。
【0003】
従来、上記サスペンションメンバは板金のプレス成形品を溶接することによって構成されており、その左右両端部にブラケットを溶接してサスペンションアームの取付部とし、左右の各取付部にブッシュを介して左右の各サスペンションアームを揺動可能に支持する構成が採用されていた。このような構成においては、サスペンションメンバの左右の各取付部を構成するブラケットには前後に相対向する縦壁が形成され、これらの縦壁の間に左右の各サスペンションアームに設けられたブッシュを配置し、縦壁とブッシュの内筒を貫通するボルトを締め付けることによって左右の各サスペンションアームがサスペンションメンバの左右両端部にそれぞれ揺動可能に支持されていた。
【0004】
ところで、近年、軽量化や生産性の向上等の目的のためにサスペンションメンバを軽量なアルミニウム合金で鋳造(ダイキャスト等)によって一体成形することが行われている。斯かるアルミ製サスペンションメンバにおいては、その左右両端の前後に相対向する一対の取付壁を略垂直下方に向かってそれぞれ一体に突設し、各一対の取付壁の間に左右の各サスペンションアームに設けられたブッシュを配置し、取付壁とブッシュの内筒を貫通するボルトを締め付けることによって左右の各サスペンションアームをサスペンションメンバの左右両端部にそれぞれ揺動可能に支持する取付構造が採用されていた。
【0005】
上記取付構造を採用する場合、一対の取付壁には外力に対する十分な剛性が必要であるため、各取付壁の厚さを厚くして剛性を高める必要がある。
【0006】
ところで、一対の取付壁間へのサスペンションアームの支持部の挿入を可能とするためには、該支持部と取付壁との間に隙間が必要となるため、前述のように各取付壁の剛性を高めると、ボルトによってサスペンションアームの支持部を締め付けても、取付壁が殆ど変形しないために前記隙間を吸収することができず、サスペンションアームの支持にガタツキが発生するという問題があった。
【0007】
そこで、特許文献1には、図10の部分側断面図に示すように、サスペンションメンバ104に一体に形成された一対の取付壁104A,104Bのうち、一方の取付壁104Aの肉厚を他方の取付壁104Bの肉厚よりも薄くする等することによって、該一方の取付壁104Aの剛性を他方の取付壁104Bのそれよりも低くする提案がなされている。尚、図10において、130はサスペンションアームの取付部、131は該取付部130に圧入されたブッシュ、132はサスペンションアームの取付部130をブッシュ131を介してサスペンションメンバ104の取付壁104A,104Bに締め付けるボルト、133はボルトの端部に螺着されたナットである。
【0008】
又、特許文献2には、図11の破断側面図に示すように、サスペンションメンバ204に一体に形成された取付壁(ブラケット)204A,204B間における側壁204Cの高さを車両前方(図11の左方)に向かって漸次小さく形成することによって前方側の取付壁204Aを撓み変形し易くする提案がなされている。尚、図11において、230はサスペンションアーム、231はブッシュ、232はボルト、233はナットである。
【0009】
ところで、サスペンションメンバの一対の取付壁へのサスペンションアームの取付部の取り付けを確実に行うためには、これら一対の取付壁の内面と外面は互いに平行な平面を形成する必要があるが、アルミ製サスペンションメンバにあっては、成形時の成形型の抜き勾配を確保する関係で取付壁をその内面と外面が平行となるよう成形することは不可能であった。このため、従来はサスペンションメンバの取付壁のテーパ状の内面と外面を機械加工によって互いに平行な面とすることが行われており、加工工数の増加とコストアップを免れないという問題があった。
【0010】
そこで、例えば特許文献1には、成形型の鋳抜き方向を本来の抜き勾配分だけ片側に降ることによって、図10に示すように、一方の取付壁104Bの外面を最初から垂直面とし、該外面への機械加工(二次加工)を省略する提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−014737号公報
【特許文献2】特開2007−001394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1において提案されているように一方の取付壁104Aの肉厚を薄くしてその剛性を低く抑えたり、特許文献2において提案されているように取付壁(ブラケット)204A,204B間における側壁204Cの高さを車両前方に向かって漸次小さく形成することによって前方側の取付壁204Aを撓み変形し易くすると、サスペンションアーム230の取付剛性が低下するという問題がある。
【0013】
又、特許文献1,2において提案された取付構造においても、機械加工(二次加工)は不可欠であり、加工工数が増えてコストアップを免れないという問題がある。
【0014】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、サスペンションアームの取付剛性の向上と機械加工の省略による生産性と組付性の向上及びコストダウンを図ることができる車両のサスペンションアーム取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、アルミニウム合金によって一体成形され、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状を有するアルミ製サスペンションメンバと、
端部に設けられたブッシュを介して前記サスペンションメンバに揺動可能に取り付けられるサスペンションアームと、
を有する車両の前記サスペンションアームの取付構造として、
前記ブッシュを、前記サスペンションメンバに固定される軸及び外筒と、これらの軸と外筒の間に充填された弾性部材とで構成し、
前記サスペンションメンバに下向きの取付面を形成し、
前記ブッシュの軸の前記外筒から突出する両端部に平坦な締付固定部を形成し、該締付固定部を前記サスペンションメンバの取付面に下方から締付固定したことを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記サスペンションメンバの取付面を当該サスペンションメンバの車体への取付部近傍に形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記サスペンションメンバの左右両端部の前後2箇所に前記取付面をそれぞれ形成するとともに、前後の取付面間に前記ブッシュが配置される凹部を形成し、該凹部に、取付面に対して垂直方向に延びるリブを立設し、該リブを前記ブッシュの外筒の端面に当接してこれの動きを規制するストッパとして構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、ブッシュの軸の外筒から突出する両端部に形成された平坦な締付固定部をサスペンションメンバの取付面に下方から締付固定するようにしたため、縦方向の一対の取付壁間にサスペンションアームの取付部を挟み込む従来の取付構造のように少なくとも一方の取付壁の剛性を下げて取付部のガタツキを無くす構成を採用する必要がなく、サスペンションアームをサスペンションメンバの取付面にガタツキ無く確実に取り付けることができ、サスペンションアームの取付剛性を高めることができる。又、サスペンションメンバの取付面を型によって一体成形することができ、その取付面の機械加工も不要であるため、サスペンションメンバの生産性を高めてコストダウンを図ることができる。更に、ブッシュの軸に形成された締付固定部をサスペンションメンバの取付面に下方から締付固定することによってサスペンションアームを作業性良く組み付けることができるため、その組付性が高められる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、サスペンションメンバの取付面を当該サスペンションメンバの剛性の高い車体への取付部近傍に形成したため、サスペンションアームの取付剛性が更に高められる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、前後の取付面間の凹部に、取付面に対して垂直方向に延びるリブを立設し、該リブをブッシュの外筒の端面に当接してこれの動きを規制するストッパとして構成したため、簡単な構成でブッシュのガタツキを防ぐことができる。又、アルミ製サスペンションメンバの成形時に成形型によって凹部とリブを同時に簡単に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両の車体前部構造を示す側面図である。
【図2】車両のサスペンション系の構成を示す分解斜視図である。
【図3】サスペンションメンバの平面図である。
【図4】サスペンションメンバの底面図である。
【図5】サスペンションメンバの正面図である。
【図6】サスペンションメンバの左側面図である。
【図7】本発明に係るサスペンションアーム取付構造を示す分解斜視図である。
【図8】本発明に係るサスペンションアームの組付要領を示す取付部を斜め下方から見た斜視図である。
【図9】本発明に係るサスペンションアーム取付構造を示す部分側断面図である。
【図10】サスペンションアームの従来の取付構造を示す側断面図である。
【図11】サスペンションアームの従来の取付構造を示す破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は車両の車体前部構造を示す側面図、図2は同車両のサスペンション系の構成を示す分解斜視図、図3はサスペンションメンバの平面図、図4は同サスペンションメンバの底面図、図5は同サスペンションメンバの正面図、図6は同サスペンションメンバの左側面図、図7は本発明に係るサスペンションアーム取付構造を示す分解斜視図、図8はサスペンションアームの組付要領を示す取付部を斜め下方から見た斜視図、図9はサスペンションアームの取付構造を示す部分側断面図である。
【0024】
図1に示すように、車両前部のエンジンルームSには左右一対のエプロンサイドメンバ1(図1には一方のみ図示)が車両前後方向(図1の左右方向)に沿って配設されており、これらのエプロンサイドメンバ1の下方には左右一対のエプロンロアメンバ2(図1には一方のみ図示)が車両前後方向に沿って配設されている。そして、左右一対のエプロンロアメンバ2の前端には、車幅方向(図1の紙面垂直方向)に配されたラジエータサポートロアメンバ3が架設されており、同エプロンロアメンバ2の後端にはエンジンルームSの下部に配置されたサスペンションメンバ4が連結されている。
【0025】
上記各エプロンサイドメンバ1は、前後の第1及び第2水平部1A,1Bと両水平部1A,1Bを連結する斜めの傾斜部1Cとで構成されており、その前端には変形することによって衝撃を吸収するクラッシュボックス5が取り付けられている。そして、左右の各クラッシュボックス5の前端には、車幅方向に沿う上下一対のパイプ材6を有するアッパバンパメンバ7が連結されており、該アッパバンパメンバ7の車両前方にはバンパフェイシア8が配設されている。
【0026】
又、左右一対の前記クラッシュボックス5の車幅方向内面には垂直に延びるランプサポートブレース9がそれぞれ取り付けられており、両ランプサポートブレース9の前端には、車幅方向に沿う上下一対のパイプ材10を有するロアバンパメンバ11が連結されており、該ロアバンパメンバ11の車両前方にはバンパフェイシア12が配設されている。ここで、バンパフェイシア8とバンパフェイシア12はラジエータ用の空気取入口を間に配置して一体に形成されている。
【0027】
次に、前記サスペンションメンバ4の構成を図2〜図6に基づいて以下に説明する。
【0028】
サスペンションメンバ4は、アルミニウム合金による鋳造(ダイキャスト等)によって一体成形される部材であって、略水平な上壁4Aと、該上壁4Aの前端縁と後端縁からそれぞれ略垂直下方に延びる前壁4B及び後壁4Cによって下方が開放された断面形状を有している。ここで、図2及び図5に示すように、サスペンションメンバ4の前壁4Bの中央にはトルクロッド13(図2参照)が貫通するための矩形の貫通孔14が形成され、前壁4Bの右側寄りには、不図示のエンジンから車両後方へと延びる排気管15が通過するための半円状の切欠き16が形成されている。尚、サスペンションメンバ4の切欠き16の周縁には補強リブ17が一体に形成されている。
【0029】
又、アルミ製サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右両端前側には車体取付部を構成する支柱4bがそれぞれ立設されており、図3及び図4に示すように、各支柱4bの上端部には円孔状のボルト挿通孔18がそれぞれ上下方向に貫設されている。又、サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右両端の後端角部には同じく車体取付部を構成する取付座4c(図3参照)が形成されており、図3及び図4に示すように、各取付座4cには円孔状のボルト挿通孔19がそれぞれ上下方向に貫設されている。
【0030】
而して、サスペンションメンバ4は、左右の前記支柱4bに形成されたボルト挿通孔18に下方から挿通するボルト20(図2参照)を図1に示す左右一対の各エプロンサイドメンバ1の第1水平部1Aの後端下面に締め付けるとともに、前記取付座4cに形成されたボルト挿通孔19に下方から挿通するボルト21(図2参照)を図1に示すように左右一対の各エプロンサイドメンバ1の斜面部1Cの後端に締め付けることによって、左右のエプロンサイドメンバ1に取り付けられる。
【0031】
ところで、サスペンションメンバ1の上部には図2に示すスタビライザ22とステアリングギヤボックス23が取り付けられるが、サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右には、図2及び図3に示すように、スタビライザ22を取り付けるための取付座4dが形成され、これらの車両前方の左右にはステアリングギヤボックス23を取り付けるための取付座4e,4fが形成されている。そして、各取付座4dには各2つのネジ孔24が形成され、取付座4eには各2つのネジ孔25が形成され、各取付座4fには各2つのネジ孔25がそれぞれ形成されている。
【0032】
而して、図2に示すように、スタビライザ22は、押え部材26に挿通する各2本のボルト27をサスペンションメンバ4の上壁4Aに形成された取付座4eのネジ孔24にねじ込むことによって左右2箇所がサスペンションメンバ4の上壁4Aに車幅方向に沿って取り付けられる。又、ステアリングギヤボックス23は、2本のボルト28をサスペンションメンバ4の取付座4eのネジ孔25にねじ込むとともに、各2本のボルト29をサスペンションメンバ4の上壁4Aに形成された取付座4fのネジ孔25にねじ込むことによって左右2箇所がサスペンションメンバ4の上壁4Aの上面に車幅方向に沿って取り付けられる。
【0033】
又、図2、図7及び図8に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端には平面視Y字状を成す左右一対のサスペンションアーム30(図には一方のみ図示)の内端部の前後が上下に揺動可能に取り付けられる。尚、左右の各サスペンションアーム30の外側端部は、ボールジョイント31を介して不図示の前輪ナックルに回動可能に枢着されており、各前輪ナックルには左右の不図示の各前輪がそれぞれ回転可能に支持されるとともに、前記ステアリングギヤボックス23から左右に延びるタイロッド32の端部がボールジョイント33を介して連結されている。
【0034】
ここで、本発明に係るサスペンションアーム30の取付構造について説明する。
【0035】
サスペンションメンバ4の左右両端部の各前方部分には、図6〜図9に示すように、前後2つのボス4gが一体に形成されており、各ボス4gの下面は平坦な下向きの取付面4g−1を構成している。そして、各ボス4gにはネジ孔34がそれぞれ上下方向に貫設されている。そして、図9に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端の各前方部分に前後に形成された取付面4g−1の間には凹部35が形成されており、該凹部35には、取付面4g−1に対して垂直方向に延びるリブ4hが一方のボス4gに接近した状態で立設されている。リブ4hは、その先端が後述するブッシュ38の外筒38Bよりもブッシュ38の軸38Aに接近する高さに立設され、ブッシュ38が取り付けられた状態でリブ4hの先端は、外筒38Bの側方(ブッシュ38の軸方向の側方)に配置される。ここで、図4及び図6に示すように、サスペンションメンバ4の左右の取付面4g−1は、当該サスペンションメンバ4の車体への取付部である左右の前記支柱4bの近傍に形成されている。詳細には、後側に形成されたボス4gは、前記支柱4bの直下に形成されており、ボス4gに形成されたネジ孔34は、その上側開口を前記支柱4b内に配置している。
【0036】
又、図6〜図8に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端の各後方部には偏平な矩形筒状の取付部4Dがそれぞれ形成されており、図7に示すように、各取付部4Dの底面には円孔状のボルト挿通孔36が形成され、上面には円柱状のボス4iが一体に立設されている。そして、各ボス4iにはネジ孔37が上下方向に貫設されている。
【0037】
他方、図7に示すように、左右の各サスペンションアーム30(図7には一方のみ図示)の車幅方向内端部の前側には車両前後方向に開口する円筒状のボス30aが一体に形成され、このボス30aにはブッシュ38が車両前後方向に圧入されている。ここで、ブッシュ38は、図9に示すように、サスペンションメンバ4に固定される軸38A及び外筒38Bと、これらの軸38Aと外筒38Bの間に充填されたゴム等の弾性部材38Cとで構成されており、軸38Aの外筒38Bから突出する両端部には平坦な締付固定部38aが形成されている。そして、軸38Aの各締付固定部38aには円孔状のボルト挿通孔39がそれぞれ貫設されている。
【0038】
又、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側には円孔状の嵌合孔30bが形成されており、この嵌合孔30bにはブッシュ40が上下方向に圧入されている。尚、図示しないが、ブッシュ40は、ブッシュ38と同様に内外二重筒状の内筒と外筒の間にゴム等の弾性部材を充填して構成されている。
【0039】
而して、各サスペンションアーム30は以下の要領によってサスペンションメンバ4に上下に揺動可能に取り付けられる。
【0040】
即ち、図8及び図9に示すように、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の前側に形成されたボス30aとこれに圧入されたブッシュ38を前後2つの取付面4g−1間に形成された凹部35に嵌め込み(詳細には、ブッシュ38の外筒38Bを一方のボス4gとリブ4hの間に配置する)、ブッシュ38の軸38Aの両端に形成された平坦な締付固定部38aをサスペンションメンバ4の前後の取付面4g−1に下方から押し当て、該締付固定部38aに形成されたボルト挿通孔39に下方から挿通するボルト41をサスペンションメンバ4の取付面4g−1に形成されたネジ孔34にねじ込むことによって、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の前側がブッシュ38の軸38Aを中心として上下に揺動可能に取り付けられる。
【0041】
又、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側に形成された嵌合孔30bに圧入されたブッシュ40をサスペンションメンバ4に形成された矩形筒状の取付部4Dの内部に挿入し、取付部4Dの底面に形成されたボルト挿通孔36に下方から挿通するボルト42をブッシュ40の内筒に通し、このボルト42の先端を取付部4Dの上面に立設されたボス4iのネジ孔37にねじ込むことによって、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側がブッシュ40の弾性部材の弾性変形によって上下に揺動可能に取り付けられる。
【0042】
以上において、本実施の形態では、ブッシュ38の軸38Aの外筒38Bから突出する両端部に形成された平坦な締付固定部38aをサスペンションメンバ4の取付面4g−1に下方から締付固定するようにしたため、縦方向の一対の取付壁間にサスペンションアームの取付部を挟み込む従来の取付構造のように少なくとも一方の取付壁の剛性を下げて取付部のガタツキを無くす構成を採用する必要がなく、サスペンションアーム30をサスペンションメンバ4の取付面4g−1にガタツキ無く確実に取り付けることができ、サスペンションアーム30の取付剛性を高めることができる。
【0043】
又、サスペンションメンバ4の取付面4g−1を型によって一体成形することができ、その取付面4g−1の機械加工も不要であるため、サスペンションメンバ4の生産性を高めてコストダウンを図ることができる。
【0044】
更に、ブッシュ38の軸38Aに形成された締付固定部38aをサスペンションメンバ4の取付面4g−1に下方から締付固定することによってサスペンションアーム30を作業性良く組み付けることができるため、その組付性が高められる。
【0045】
又、本実施の形態では、サスペンションメンバ4の取付面4g−1を当該サスペンションメンバ4の剛性の高い車体への取付部である支柱4bの近傍に形成したため、サスペンションアーム30の取付剛性が更に高められる。
【0046】
更に、本実施の形態では、サスペンションメンバ4の左右両端の前方に形成された前後2つの取付面4g−1間の凹部35に、取付面4g−1に対して垂直方向に延びるリブ4hを立設したため、該リブ4hにブッシュ38の外筒38Bの端面が当接して該外筒38Bの動きが規制される。このようにリブ4hがブッシュ38の外筒38Bの軸方向の動きを規制するストッパとして機能するため、簡単な構成でブッシュ38の可動範囲を規制してサスペンションアーム30の動きを所望の性能とすることができる。又、アルミ製サスペンションメンバ4の成形時に成形型によって凹部35とリブ4hを同時に簡単に形成することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 エプロンサイドメンバ
4 アルミ製サスペンションメンバ
4A サスペンションメンバの上壁
4B サスペンションメンバの前壁
4C サスペンションメンバの後壁
4g サスペンションメンバのボス
4g−1 サスペンションメンバの取付面
4h サスペンションメンバのリブ
30 サスペンションアーム
35 サスペンションメンバの凹部
38 ブッシュ
38A ブッシュの軸
38B ブッシュの外筒
38C ブッシュの弾性部材
38a ブッシュの締付固定部
39 ボルト挿通孔
41,42 ボルト
S エンジンルーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンルームの下方に配置されるアルミ製サスペンションメンバの左右両端部に揺動可能に支持される左右のサスペンションアームの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルームの下方に配置されるサスペンションメンバは、左右のサスペンションアームを上下に揺動可能に支持するとともに、エンジンルームの左右両側に車両前後方向に沿って配置された一対のエプロンサイドメンバを連結して車体の剛性を高めるための部材である。
【0003】
従来、上記サスペンションメンバは板金のプレス成形品を溶接することによって構成されており、その左右両端部にブラケットを溶接してサスペンションアームの取付部とし、左右の各取付部にブッシュを介して左右の各サスペンションアームを揺動可能に支持する構成が採用されていた。このような構成においては、サスペンションメンバの左右の各取付部を構成するブラケットには前後に相対向する縦壁が形成され、これらの縦壁の間に左右の各サスペンションアームに設けられたブッシュを配置し、縦壁とブッシュの内筒を貫通するボルトを締め付けることによって左右の各サスペンションアームがサスペンションメンバの左右両端部にそれぞれ揺動可能に支持されていた。
【0004】
ところで、近年、軽量化や生産性の向上等の目的のためにサスペンションメンバを軽量なアルミニウム合金で鋳造(ダイキャスト等)によって一体成形することが行われている。斯かるアルミ製サスペンションメンバにおいては、その左右両端の前後に相対向する一対の取付壁を略垂直下方に向かってそれぞれ一体に突設し、各一対の取付壁の間に左右の各サスペンションアームに設けられたブッシュを配置し、取付壁とブッシュの内筒を貫通するボルトを締め付けることによって左右の各サスペンションアームをサスペンションメンバの左右両端部にそれぞれ揺動可能に支持する取付構造が採用されていた。
【0005】
上記取付構造を採用する場合、一対の取付壁には外力に対する十分な剛性が必要であるため、各取付壁の厚さを厚くして剛性を高める必要がある。
【0006】
ところで、一対の取付壁間へのサスペンションアームの支持部の挿入を可能とするためには、該支持部と取付壁との間に隙間が必要となるため、前述のように各取付壁の剛性を高めると、ボルトによってサスペンションアームの支持部を締め付けても、取付壁が殆ど変形しないために前記隙間を吸収することができず、サスペンションアームの支持にガタツキが発生するという問題があった。
【0007】
そこで、特許文献1には、図10の部分側断面図に示すように、サスペンションメンバ104に一体に形成された一対の取付壁104A,104Bのうち、一方の取付壁104Aの肉厚を他方の取付壁104Bの肉厚よりも薄くする等することによって、該一方の取付壁104Aの剛性を他方の取付壁104Bのそれよりも低くする提案がなされている。尚、図10において、130はサスペンションアームの取付部、131は該取付部130に圧入されたブッシュ、132はサスペンションアームの取付部130をブッシュ131を介してサスペンションメンバ104の取付壁104A,104Bに締め付けるボルト、133はボルトの端部に螺着されたナットである。
【0008】
又、特許文献2には、図11の破断側面図に示すように、サスペンションメンバ204に一体に形成された取付壁(ブラケット)204A,204B間における側壁204Cの高さを車両前方(図11の左方)に向かって漸次小さく形成することによって前方側の取付壁204Aを撓み変形し易くする提案がなされている。尚、図11において、230はサスペンションアーム、231はブッシュ、232はボルト、233はナットである。
【0009】
ところで、サスペンションメンバの一対の取付壁へのサスペンションアームの取付部の取り付けを確実に行うためには、これら一対の取付壁の内面と外面は互いに平行な平面を形成する必要があるが、アルミ製サスペンションメンバにあっては、成形時の成形型の抜き勾配を確保する関係で取付壁をその内面と外面が平行となるよう成形することは不可能であった。このため、従来はサスペンションメンバの取付壁のテーパ状の内面と外面を機械加工によって互いに平行な面とすることが行われており、加工工数の増加とコストアップを免れないという問題があった。
【0010】
そこで、例えば特許文献1には、成形型の鋳抜き方向を本来の抜き勾配分だけ片側に降ることによって、図10に示すように、一方の取付壁104Bの外面を最初から垂直面とし、該外面への機械加工(二次加工)を省略する提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−014737号公報
【特許文献2】特開2007−001394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1において提案されているように一方の取付壁104Aの肉厚を薄くしてその剛性を低く抑えたり、特許文献2において提案されているように取付壁(ブラケット)204A,204B間における側壁204Cの高さを車両前方に向かって漸次小さく形成することによって前方側の取付壁204Aを撓み変形し易くすると、サスペンションアーム230の取付剛性が低下するという問題がある。
【0013】
又、特許文献1,2において提案された取付構造においても、機械加工(二次加工)は不可欠であり、加工工数が増えてコストアップを免れないという問題がある。
【0014】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、サスペンションアームの取付剛性の向上と機械加工の省略による生産性と組付性の向上及びコストダウンを図ることができる車両のサスペンションアーム取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、アルミニウム合金によって一体成形され、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状を有するアルミ製サスペンションメンバと、
端部に設けられたブッシュを介して前記サスペンションメンバに揺動可能に取り付けられるサスペンションアームと、
を有する車両の前記サスペンションアームの取付構造として、
前記ブッシュを、前記サスペンションメンバに固定される軸及び外筒と、これらの軸と外筒の間に充填された弾性部材とで構成し、
前記サスペンションメンバに下向きの取付面を形成し、
前記ブッシュの軸の前記外筒から突出する両端部に平坦な締付固定部を形成し、該締付固定部を前記サスペンションメンバの取付面に下方から締付固定したことを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記サスペンションメンバの取付面を当該サスペンションメンバの車体への取付部近傍に形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記サスペンションメンバの左右両端部の前後2箇所に前記取付面をそれぞれ形成するとともに、前後の取付面間に前記ブッシュが配置される凹部を形成し、該凹部に、取付面に対して垂直方向に延びるリブを立設し、該リブを前記ブッシュの外筒の端面に当接してこれの動きを規制するストッパとして構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、ブッシュの軸の外筒から突出する両端部に形成された平坦な締付固定部をサスペンションメンバの取付面に下方から締付固定するようにしたため、縦方向の一対の取付壁間にサスペンションアームの取付部を挟み込む従来の取付構造のように少なくとも一方の取付壁の剛性を下げて取付部のガタツキを無くす構成を採用する必要がなく、サスペンションアームをサスペンションメンバの取付面にガタツキ無く確実に取り付けることができ、サスペンションアームの取付剛性を高めることができる。又、サスペンションメンバの取付面を型によって一体成形することができ、その取付面の機械加工も不要であるため、サスペンションメンバの生産性を高めてコストダウンを図ることができる。更に、ブッシュの軸に形成された締付固定部をサスペンションメンバの取付面に下方から締付固定することによってサスペンションアームを作業性良く組み付けることができるため、その組付性が高められる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、サスペンションメンバの取付面を当該サスペンションメンバの剛性の高い車体への取付部近傍に形成したため、サスペンションアームの取付剛性が更に高められる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、前後の取付面間の凹部に、取付面に対して垂直方向に延びるリブを立設し、該リブをブッシュの外筒の端面に当接してこれの動きを規制するストッパとして構成したため、簡単な構成でブッシュのガタツキを防ぐことができる。又、アルミ製サスペンションメンバの成形時に成形型によって凹部とリブを同時に簡単に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両の車体前部構造を示す側面図である。
【図2】車両のサスペンション系の構成を示す分解斜視図である。
【図3】サスペンションメンバの平面図である。
【図4】サスペンションメンバの底面図である。
【図5】サスペンションメンバの正面図である。
【図6】サスペンションメンバの左側面図である。
【図7】本発明に係るサスペンションアーム取付構造を示す分解斜視図である。
【図8】本発明に係るサスペンションアームの組付要領を示す取付部を斜め下方から見た斜視図である。
【図9】本発明に係るサスペンションアーム取付構造を示す部分側断面図である。
【図10】サスペンションアームの従来の取付構造を示す側断面図である。
【図11】サスペンションアームの従来の取付構造を示す破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は車両の車体前部構造を示す側面図、図2は同車両のサスペンション系の構成を示す分解斜視図、図3はサスペンションメンバの平面図、図4は同サスペンションメンバの底面図、図5は同サスペンションメンバの正面図、図6は同サスペンションメンバの左側面図、図7は本発明に係るサスペンションアーム取付構造を示す分解斜視図、図8はサスペンションアームの組付要領を示す取付部を斜め下方から見た斜視図、図9はサスペンションアームの取付構造を示す部分側断面図である。
【0024】
図1に示すように、車両前部のエンジンルームSには左右一対のエプロンサイドメンバ1(図1には一方のみ図示)が車両前後方向(図1の左右方向)に沿って配設されており、これらのエプロンサイドメンバ1の下方には左右一対のエプロンロアメンバ2(図1には一方のみ図示)が車両前後方向に沿って配設されている。そして、左右一対のエプロンロアメンバ2の前端には、車幅方向(図1の紙面垂直方向)に配されたラジエータサポートロアメンバ3が架設されており、同エプロンロアメンバ2の後端にはエンジンルームSの下部に配置されたサスペンションメンバ4が連結されている。
【0025】
上記各エプロンサイドメンバ1は、前後の第1及び第2水平部1A,1Bと両水平部1A,1Bを連結する斜めの傾斜部1Cとで構成されており、その前端には変形することによって衝撃を吸収するクラッシュボックス5が取り付けられている。そして、左右の各クラッシュボックス5の前端には、車幅方向に沿う上下一対のパイプ材6を有するアッパバンパメンバ7が連結されており、該アッパバンパメンバ7の車両前方にはバンパフェイシア8が配設されている。
【0026】
又、左右一対の前記クラッシュボックス5の車幅方向内面には垂直に延びるランプサポートブレース9がそれぞれ取り付けられており、両ランプサポートブレース9の前端には、車幅方向に沿う上下一対のパイプ材10を有するロアバンパメンバ11が連結されており、該ロアバンパメンバ11の車両前方にはバンパフェイシア12が配設されている。ここで、バンパフェイシア8とバンパフェイシア12はラジエータ用の空気取入口を間に配置して一体に形成されている。
【0027】
次に、前記サスペンションメンバ4の構成を図2〜図6に基づいて以下に説明する。
【0028】
サスペンションメンバ4は、アルミニウム合金による鋳造(ダイキャスト等)によって一体成形される部材であって、略水平な上壁4Aと、該上壁4Aの前端縁と後端縁からそれぞれ略垂直下方に延びる前壁4B及び後壁4Cによって下方が開放された断面形状を有している。ここで、図2及び図5に示すように、サスペンションメンバ4の前壁4Bの中央にはトルクロッド13(図2参照)が貫通するための矩形の貫通孔14が形成され、前壁4Bの右側寄りには、不図示のエンジンから車両後方へと延びる排気管15が通過するための半円状の切欠き16が形成されている。尚、サスペンションメンバ4の切欠き16の周縁には補強リブ17が一体に形成されている。
【0029】
又、アルミ製サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右両端前側には車体取付部を構成する支柱4bがそれぞれ立設されており、図3及び図4に示すように、各支柱4bの上端部には円孔状のボルト挿通孔18がそれぞれ上下方向に貫設されている。又、サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右両端の後端角部には同じく車体取付部を構成する取付座4c(図3参照)が形成されており、図3及び図4に示すように、各取付座4cには円孔状のボルト挿通孔19がそれぞれ上下方向に貫設されている。
【0030】
而して、サスペンションメンバ4は、左右の前記支柱4bに形成されたボルト挿通孔18に下方から挿通するボルト20(図2参照)を図1に示す左右一対の各エプロンサイドメンバ1の第1水平部1Aの後端下面に締め付けるとともに、前記取付座4cに形成されたボルト挿通孔19に下方から挿通するボルト21(図2参照)を図1に示すように左右一対の各エプロンサイドメンバ1の斜面部1Cの後端に締め付けることによって、左右のエプロンサイドメンバ1に取り付けられる。
【0031】
ところで、サスペンションメンバ1の上部には図2に示すスタビライザ22とステアリングギヤボックス23が取り付けられるが、サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右には、図2及び図3に示すように、スタビライザ22を取り付けるための取付座4dが形成され、これらの車両前方の左右にはステアリングギヤボックス23を取り付けるための取付座4e,4fが形成されている。そして、各取付座4dには各2つのネジ孔24が形成され、取付座4eには各2つのネジ孔25が形成され、各取付座4fには各2つのネジ孔25がそれぞれ形成されている。
【0032】
而して、図2に示すように、スタビライザ22は、押え部材26に挿通する各2本のボルト27をサスペンションメンバ4の上壁4Aに形成された取付座4eのネジ孔24にねじ込むことによって左右2箇所がサスペンションメンバ4の上壁4Aに車幅方向に沿って取り付けられる。又、ステアリングギヤボックス23は、2本のボルト28をサスペンションメンバ4の取付座4eのネジ孔25にねじ込むとともに、各2本のボルト29をサスペンションメンバ4の上壁4Aに形成された取付座4fのネジ孔25にねじ込むことによって左右2箇所がサスペンションメンバ4の上壁4Aの上面に車幅方向に沿って取り付けられる。
【0033】
又、図2、図7及び図8に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端には平面視Y字状を成す左右一対のサスペンションアーム30(図には一方のみ図示)の内端部の前後が上下に揺動可能に取り付けられる。尚、左右の各サスペンションアーム30の外側端部は、ボールジョイント31を介して不図示の前輪ナックルに回動可能に枢着されており、各前輪ナックルには左右の不図示の各前輪がそれぞれ回転可能に支持されるとともに、前記ステアリングギヤボックス23から左右に延びるタイロッド32の端部がボールジョイント33を介して連結されている。
【0034】
ここで、本発明に係るサスペンションアーム30の取付構造について説明する。
【0035】
サスペンションメンバ4の左右両端部の各前方部分には、図6〜図9に示すように、前後2つのボス4gが一体に形成されており、各ボス4gの下面は平坦な下向きの取付面4g−1を構成している。そして、各ボス4gにはネジ孔34がそれぞれ上下方向に貫設されている。そして、図9に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端の各前方部分に前後に形成された取付面4g−1の間には凹部35が形成されており、該凹部35には、取付面4g−1に対して垂直方向に延びるリブ4hが一方のボス4gに接近した状態で立設されている。リブ4hは、その先端が後述するブッシュ38の外筒38Bよりもブッシュ38の軸38Aに接近する高さに立設され、ブッシュ38が取り付けられた状態でリブ4hの先端は、外筒38Bの側方(ブッシュ38の軸方向の側方)に配置される。ここで、図4及び図6に示すように、サスペンションメンバ4の左右の取付面4g−1は、当該サスペンションメンバ4の車体への取付部である左右の前記支柱4bの近傍に形成されている。詳細には、後側に形成されたボス4gは、前記支柱4bの直下に形成されており、ボス4gに形成されたネジ孔34は、その上側開口を前記支柱4b内に配置している。
【0036】
又、図6〜図8に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端の各後方部には偏平な矩形筒状の取付部4Dがそれぞれ形成されており、図7に示すように、各取付部4Dの底面には円孔状のボルト挿通孔36が形成され、上面には円柱状のボス4iが一体に立設されている。そして、各ボス4iにはネジ孔37が上下方向に貫設されている。
【0037】
他方、図7に示すように、左右の各サスペンションアーム30(図7には一方のみ図示)の車幅方向内端部の前側には車両前後方向に開口する円筒状のボス30aが一体に形成され、このボス30aにはブッシュ38が車両前後方向に圧入されている。ここで、ブッシュ38は、図9に示すように、サスペンションメンバ4に固定される軸38A及び外筒38Bと、これらの軸38Aと外筒38Bの間に充填されたゴム等の弾性部材38Cとで構成されており、軸38Aの外筒38Bから突出する両端部には平坦な締付固定部38aが形成されている。そして、軸38Aの各締付固定部38aには円孔状のボルト挿通孔39がそれぞれ貫設されている。
【0038】
又、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側には円孔状の嵌合孔30bが形成されており、この嵌合孔30bにはブッシュ40が上下方向に圧入されている。尚、図示しないが、ブッシュ40は、ブッシュ38と同様に内外二重筒状の内筒と外筒の間にゴム等の弾性部材を充填して構成されている。
【0039】
而して、各サスペンションアーム30は以下の要領によってサスペンションメンバ4に上下に揺動可能に取り付けられる。
【0040】
即ち、図8及び図9に示すように、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の前側に形成されたボス30aとこれに圧入されたブッシュ38を前後2つの取付面4g−1間に形成された凹部35に嵌め込み(詳細には、ブッシュ38の外筒38Bを一方のボス4gとリブ4hの間に配置する)、ブッシュ38の軸38Aの両端に形成された平坦な締付固定部38aをサスペンションメンバ4の前後の取付面4g−1に下方から押し当て、該締付固定部38aに形成されたボルト挿通孔39に下方から挿通するボルト41をサスペンションメンバ4の取付面4g−1に形成されたネジ孔34にねじ込むことによって、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の前側がブッシュ38の軸38Aを中心として上下に揺動可能に取り付けられる。
【0041】
又、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側に形成された嵌合孔30bに圧入されたブッシュ40をサスペンションメンバ4に形成された矩形筒状の取付部4Dの内部に挿入し、取付部4Dの底面に形成されたボルト挿通孔36に下方から挿通するボルト42をブッシュ40の内筒に通し、このボルト42の先端を取付部4Dの上面に立設されたボス4iのネジ孔37にねじ込むことによって、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側がブッシュ40の弾性部材の弾性変形によって上下に揺動可能に取り付けられる。
【0042】
以上において、本実施の形態では、ブッシュ38の軸38Aの外筒38Bから突出する両端部に形成された平坦な締付固定部38aをサスペンションメンバ4の取付面4g−1に下方から締付固定するようにしたため、縦方向の一対の取付壁間にサスペンションアームの取付部を挟み込む従来の取付構造のように少なくとも一方の取付壁の剛性を下げて取付部のガタツキを無くす構成を採用する必要がなく、サスペンションアーム30をサスペンションメンバ4の取付面4g−1にガタツキ無く確実に取り付けることができ、サスペンションアーム30の取付剛性を高めることができる。
【0043】
又、サスペンションメンバ4の取付面4g−1を型によって一体成形することができ、その取付面4g−1の機械加工も不要であるため、サスペンションメンバ4の生産性を高めてコストダウンを図ることができる。
【0044】
更に、ブッシュ38の軸38Aに形成された締付固定部38aをサスペンションメンバ4の取付面4g−1に下方から締付固定することによってサスペンションアーム30を作業性良く組み付けることができるため、その組付性が高められる。
【0045】
又、本実施の形態では、サスペンションメンバ4の取付面4g−1を当該サスペンションメンバ4の剛性の高い車体への取付部である支柱4bの近傍に形成したため、サスペンションアーム30の取付剛性が更に高められる。
【0046】
更に、本実施の形態では、サスペンションメンバ4の左右両端の前方に形成された前後2つの取付面4g−1間の凹部35に、取付面4g−1に対して垂直方向に延びるリブ4hを立設したため、該リブ4hにブッシュ38の外筒38Bの端面が当接して該外筒38Bの動きが規制される。このようにリブ4hがブッシュ38の外筒38Bの軸方向の動きを規制するストッパとして機能するため、簡単な構成でブッシュ38の可動範囲を規制してサスペンションアーム30の動きを所望の性能とすることができる。又、アルミ製サスペンションメンバ4の成形時に成形型によって凹部35とリブ4hを同時に簡単に形成することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 エプロンサイドメンバ
4 アルミ製サスペンションメンバ
4A サスペンションメンバの上壁
4B サスペンションメンバの前壁
4C サスペンションメンバの後壁
4g サスペンションメンバのボス
4g−1 サスペンションメンバの取付面
4h サスペンションメンバのリブ
30 サスペンションアーム
35 サスペンションメンバの凹部
38 ブッシュ
38A ブッシュの軸
38B ブッシュの外筒
38C ブッシュの弾性部材
38a ブッシュの締付固定部
39 ボルト挿通孔
41,42 ボルト
S エンジンルーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金によって一体成形され、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状を有するアルミ製サスペンションメンバと、
端部に設けられたブッシュを介して前記サスペンションメンバに揺動可能に取り付けられるサスペンションアームと、
を有する車両の前記サスペンションアームの取付構造であって、
前記ブッシュを、前記サスペンションメンバに固定される軸及び外筒と、これらの軸と外筒の間に充填された弾性部材とで構成し、
前記サスペンションメンバに下向きの取付面を形成し、
前記ブッシュの軸の前記外筒から突出する両端部に平坦な締付固定部を形成し、該締付固定部を前記サスペンションメンバの取付面に下方から締付固定したことを特徴とする車両のサスペンションアーム取付構造。
【請求項2】
前記サスペンションメンバの取付面を当該サスペンションメンバの車体への取付部近傍に形成したことを特徴とする請求項1記載の車両のサスペンションアーム取付構造。
【請求項3】
前記サスペンションメンバの左右両端部の前後2箇所に前記取付面をそれぞれ形成するとともに、前後の取付面間に前記ブッシュが配置される凹部を形成し、該凹部に、取付面に対して垂直方向に延びるリブを立設し、該リブを前記ブッシュの外筒の端面に当接してこれの動きを規制するストッパとして構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両のサスペンションアーム取付構造。
【請求項1】
アルミニウム合金によって一体成形され、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状を有するアルミ製サスペンションメンバと、
端部に設けられたブッシュを介して前記サスペンションメンバに揺動可能に取り付けられるサスペンションアームと、
を有する車両の前記サスペンションアームの取付構造であって、
前記ブッシュを、前記サスペンションメンバに固定される軸及び外筒と、これらの軸と外筒の間に充填された弾性部材とで構成し、
前記サスペンションメンバに下向きの取付面を形成し、
前記ブッシュの軸の前記外筒から突出する両端部に平坦な締付固定部を形成し、該締付固定部を前記サスペンションメンバの取付面に下方から締付固定したことを特徴とする車両のサスペンションアーム取付構造。
【請求項2】
前記サスペンションメンバの取付面を当該サスペンションメンバの車体への取付部近傍に形成したことを特徴とする請求項1記載の車両のサスペンションアーム取付構造。
【請求項3】
前記サスペンションメンバの左右両端部の前後2箇所に前記取付面をそれぞれ形成するとともに、前後の取付面間に前記ブッシュが配置される凹部を形成し、該凹部に、取付面に対して垂直方向に延びるリブを立設し、該リブを前記ブッシュの外筒の端面に当接してこれの動きを規制するストッパとして構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両のサスペンションアーム取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−81883(P2012−81883A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230199(P2010−230199)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
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