説明

車両のパワートレイン配設構造

【課題】排気系補機がエンジン本体の熱影響を受けること等を防止しつつ、パワートレインを車両の後方側に配設して操縦安定性を向上できるようにする。
【解決手段】車室1とエンジンルーム2を区画するダッシュパネル3に、車体の後方側に凹入する凹入部5が設けられるとともに、この凹入部5内に、車輪を駆動するパワートレイン11の一部が配設された車両において、上記パワートレイン11は、エンジンルーム2内に縦置き式に配設されるエンジン本体12と、その後方に接続されたトランスミッション13とを備え、上記エンジン本体12の前方に、エンジン冷却用の熱交換器18と、エンジン本体12から車体の前方側に延びる排気管とが配設されるとともに、この排気管に設けられた排気系補機27が上記熱交換器18の前方に配設された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室とエンジンルームを区画するダッシュパネルに車体の後方側に凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両のパワートレイン配設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車室と、その前方にダッシュパネルにより区画されたエンジンルームとが設けられ、上記エンジンルーム内に配設されたエンジン本体等を有するパワートレインにより後輪が駆動されるように構成された後輪駆動車両において、エンジン本体の排気管をエンジンの前方を経由して後方に延びるように配設するとともに、この排気管に設けられた排気ガス浄化用のキャタライザー(キャタリスト)を上記パワートレインの前方側において車幅方向に延びるように配設し、かつ上記キャタライザーの前方側にラジエータと冷却ファンとを有するエンジン冷却用の熱交換器(クーリングユニット)を配設することが行われている。
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているように、エンジン本体の排気管に設けられた排気ガス浄化用のキャタライザー(キャタリスト)を、上記パワートレインの前方側において車幅方向に延びるように配設した場合には、上記キャタライザーをパワートレインの後方側に配設した場合に比べ、パワートレインを車体の後方側に位置させることができるため、車両の走行時におけるヨー慣性モーメントを低減して操縦安定性を向上させることが可能である。しかし、上記のように排気ガス浄化用のキャタライザーからなる排気系補機を上記パワートレインの前部近傍に配設するとともに、その前方側にラジエータと冷却ファンとを有するエンジン冷却用の熱交換器を配設した場合には、エンジンの始動直後に上記排気系補機を早期に加熱して活性化することができるが、車両の走行時にエンジン本体の熱影響を受けて上記排気系補機が過度に加熱され易く、この排気系補機が早期に熱劣化し、あるいは適正反応温度を維持することが困難である等の問題があった。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、排気系補機がエンジン本体の熱影響を受けること等を防止しつつ、パワートレインを車両の後方側に配設して操縦安定性を向上させることができる車両のパワートレイン配設構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、車室とエンジンルームを区画するダッシュパネルに、車体の後方側に凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に、車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両において、上記パワートレインは、エンジンルーム内に縦置き式に配設されるエンジン本体と、その後方に接続されたトランスミッションとを備え、上記エンジン本体の前方に、エンジン冷却用の熱交換器と、エンジン本体から車体の前方側に延びる排気管とが配設されるとともに、この排気管に設けられた排気系補機が上記熱交換器の前方に配設されたものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両のパワートレイン配設構造において、車両の走行風を上記排気系補機に案内してこの排気系補機を冷却する冷却手段を備えたものである。
【0007】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機と熱交換器との間に遮熱手段が設けられたものである。
【0008】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記熱交換器に、熱交換器本体とこの熱交換器本体に冷却風を供給する冷却ファンとが設けられるとともに、この冷却ファンの上端部または下端部が熱交換器本体の上方または下方の少なくとも一方にオフセットして配設され、このオフセット部分の前方に上記排気系補機が配設されたものである。
【0009】
請求項5に係る発明は、上記請求項4に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機の設置部と冷却ファンのオフセット部分とを繋ぐように冷却風の導風ダクトが設けられたものである。
【0010】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機の前方に、エンジンオイル用のクーラが配設されたものである。
【0011】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機の近傍に、この排気系補機を加熱するための温熱ヒータが配設されたものである。
【0012】
請求項8に係る発明は、上記請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機が排気ガス浄化用のキャタライザーからなるものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機をエンジン本体の前方側に配設するとともに、上記パワートレインの一部をダッシュパネル凹入部内に配設することにより、エンジンルーム内において縦置き式に配設された重量物である上記エンジン本体およびトランスミッションを、可及的に車両の後方側に位置させることができるため、車両の重心を車両の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して走行安定性を向上させることができる。また、上記パワートレインを車両の後方側に位置させることによりスペース的に余裕が生じたエンジンルーム内において上記熱交換器の前方に排気系補機を配設したため、この排気系補機の熱影響が車室内に及ぶのを効果的に防止できるとともに、車両の走行時に高温状態となるエンジン本体の熱影響が上記排気系補機に及ぶのを熱交換器によって阻止できる等の利点がある。
【0014】
請求項2に係る発明では、車両の走行風を上記排気系補機の設置部に案内することにより上記排気系補機を効率よく冷却することができるため、この排気系補機に熱害が発生するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0015】
請求項3に係る発明では、車両の走行時に、熱交換器においてエンジン冷却水の熱交換が行われることにより発生した熱の影響が、排気系補機に及ぶのを上記遮熱手段によって効果的に阻止できるという利点がある。
【0016】
請求項4に係る発明では、車両の走行時に、エンジンルーム内に導入されるとともに、上記冷却ファンの吸引力に応じてその速度が増大された走行風を、上記排気系補機の設置部に対して積極的に供給することができるため、この排気系補機を効率よく冷却してその熱劣化等を、より効果的に防止することができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、上記排気系補機の設置部と冷却ファンのオフセット部分とを繋ぐように導風ダクトを設けたため、上記冷却ファンの作動時に生じる吸引力を上記排気系補機の設置部に効果的に作用させることにより、車両の走行時に、エンジンルーム内に導入された走行風を上記排気系補機の設置部に対し積極的に供給し、この排気系補機をより効果的に冷却することができる。
【0018】
請求項6に係る発明では、車両の走行時に、高温状態となるエンジン本体の熱影響が上記エンジンオイル用のクーラに及ぶのを上記熱交換器によって阻止することができるため、上記クーラが早期に熱劣化し、あるいはエンジンオイルの冷却性能が低下すること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0019】
請求項7に係る発明では、エンジンの始動直後等において上記温熱ヒータにより排気系補機を加熱して早期に活性化させることができる等の利点がある。
【0020】
請求項8に係る発明では、温度変化に応じて活性状態が顕著に変化するとともに、高温に加熱されると熱劣化を生じ易く、かつ活性状態で熱を発生する傾向がある上記排気ガス浄化用のキャタライザーを、エンジン冷却用の熱交換器の前方側に配設したため、上記排気ガス浄化用のキャタライザーからなる排気系補機がエンジン本体の熱影響によって早期に熱劣化するのを防止できるとともに、適正反応温度よりも高温に加熱されて排気ガスの浄化性能が低下するのを効果的に防止できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1〜図3は、本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第1実施形態を示している。上記車両には、車室1とエンジンルーム2を区画するダッシュパネル3が設けられるとともに、このダッシュパネル3の下端部にフロアパネル4の前端部が接続されている。上記ダッシュパネル3の車幅方向中央部には、車体の後方側に凹入する凹入部5が形成され、かつ上記フロアパネル4の車幅方向中央部には、上方に向けて膨出するトンネル部6が形成されている。
【0022】
上記エンジンルーム2の上面部には、ボンネット7が開閉可能に設置されている。このボンネット7の前端部下方には、走行風取入用の開口部を有するフロントグリル9が配設されるとともに、その上部後方に、バンパレインフォースメント10が車幅方向に延びるように設置されている。また、上記エンジンルーム2の後方部には、図外の後部車輪を駆動するパワートレイン11が配設されている。このパワートレイン11は、縦置き式に配設されたロータリエンジン等からなるエンジン本体12と、その後方に接続されたトランスミッション13とを有している。そして、上記エンジン本体12の後部が、ダッシュパネル3に形成された凹入部5内に配設されるとともに、上記トランスミッション13およびこれに接続されたプロペラシャフト14と、パワープラントフレーム15とが上記トンネル部6内に配設されている。
【0023】
上記エンジン本体12の前方には、ラジエータ等からなる熱交換器本体16と、その後方側に位置する冷却ファン17等とを備えたエンジン冷却用の熱交換器18が、上記エンジン本体12の前面に近接した位置において所定角度の前傾姿勢で設置されている。上記熱交換器18の下方には、サスペンションクロスメンバ19が車幅方向に延びるよう設置され、このサスペンションクロスメンバ19により熱交換器18の下端部が支持されている。また、熱交換器18の上端部は、上記バンパレインフォースメント10の設置部から車体の後方側に延びるように配設されたフロントサイドフレーム20またはボンネット7の下面部を覆うように設置された遮蔽板21等により支持されている。
【0024】
上記エンジン本体12の一側面部には、排気ポートに連通する排気管22が接続されている。この排気管22は、エンジン本体12の一側面部から車体の前方側に延びる前方延長部23と、その前端部から上記熱交換器18の前面下方部を通って車幅方向に延びる第1側方延長部24と、その側端部においてU字状に折曲げられることにより熱交換器18の他端部側に向けて車幅方向に延びる第2側方延長部25と、その側端部から車体の後方側に延びる後方延長部26とを有し、この後方延長部26が上記トンネル部6内に導入されている。また、上記排気管22の第1側方延長部24には、排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機27が、上記熱交換器18の前方側において車幅方向に延びるように配設されている。
【0025】
上記フロントバンパの下方部とサスペンションクロスメンバ19の下端部との間には、エンジンルーム2の下面部を覆うことにより、床下を流れる空気の乱れを防ぐためのアンダカバー28が設置されている。このアンダカバー28は、上記フロントグリル9の下方部からエンジンルーム2内に導入された走行風を上記排気系補機27の設置部に案内することにより、この排気系補機27を車両の走行時に冷却する冷却手段としての機能をも有している。また、上記アンダカバー28の後方部には、上記排気系補機27の設置部に案内された走行風を下方に導出するための開口部29が形成されている。
【0026】
上記構成においてエンジンの始動直後には、エンジン冷却水がラジエータ等からなる熱交換器本体16に供給されるとともに、上記冷却ファン17が作動状態となって冷却風が熱交換器本体16に供給されることにより上記エンジン冷却水の熱交換が行われる。そして、この熱交換器本体16における熱交換によって発生した熱の一部が上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機27に供給され、この排気系補機27が加熱されてその活性化が促進される。
【0027】
また、上記車両の走行時には、フロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に導入された走行風が、上記遮蔽板21によって熱交換器18の設置部側に案内されるとともに、上記冷却ファン17の吸引力に応じて上記走行風が熱交換器18の設置部に供給されることにより、上記エンジン冷却水の熱交換が積極的に行われる。さらに、上記フロントグリル9の下方部からエンジンルーム2内に導入された走行風が、図1の矢印αに示すように上記アンダカバー28によって排気系補機27の設置部に案内され、この排気系補機27の温度が過度に上昇することがないように冷却される。
【0028】
上記のように車室1とエンジンルーム2を区画するダッシュパネル3に、車体の後方側に凹入する凹入部5が設けられるとともに、車輪を駆動するパワートレイン11の一部が上記凹入部5内に配設された車両において、上記パワートレイン11を構成するエンジン本体12の前方に、エンジン冷却用の熱交換器18と、エンジン本体12から車体の前方側に延びる排気管22とを配設するとともに、この排気管22に設けられた排気系補機27を上記熱交換器18の前方に配設した場合には、上記排気系補機27がエンジン本体12の熱影響を受けるのを抑制しつつ、パワートレイン11を車両の後方側に位置させて車両の走行時におけるヨー慣性モーメントを効果的に低減できる等の利点がある。
【0029】
すなわち、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機27をエンジン本体12の前方側に配設するとともに、上記パワートレイン11を構成するエンジン本体12の後部を上記凹入部5内に配設することにより、エンジンルーム2内において縦置き式に配設された重量物である上記エンジン本体12およびトランスミッション13を、可及的に車両の後方側に配設することができるため、車両の重心を車両の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して走行安定性を向上させることができる。
【0030】
また、上記パワートレイン11を車両の後方側に位置させることによりスペース的に余裕が生じたエンジンルーム2内において、大型のキャタライザーからなる排気系補機27を自由にレイアウトすることができるため、従来、車室フロアのトンネル部6内またはフロアパネル4の下方等に配設されていた下流側のキャタライザーを小型化し、あるいは省略することができる。したがって、上記下流側のキャタライザーにおいて発生した熱の影響が車室内に及ぶのを阻止するために断熱部材を設置する等の手段を講じることなく、上記キャタライザーの反応熱に応じて乗員の足元部分が加熱されること等を効果的に防止できるという利点がある。しかも、車室1内に配設された乗員用シートの下方に上記排気ガス浄化用のキャタライザーを配設した場合のように、乗員用シートを上方に位置させる必要がないため、車高を低くすることが可能である。
【0031】
そして、上記のようにラジエータ等からなる熱交換器本体16と冷却ファン17等を備えたエンジン冷却用の熱交換器18の前方側に、排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機27を配設したため、車両の走行時に高温状態となるエンジン本体12の熱影響が上記排気系補機27の設置部に及ぶのを上記熱交換器18によって阻止することができる。したがって、車両の走行時に、上記排気系補機27がエンジン本体12の熱影響によって早期に熱劣化したり、あるいは適正反応温度よりも高温に加熱されて排気ガスの浄化性能が低下したりするのを効果的に防止することができる。さらに、従来は車体の前端部近傍に配設されていた重量物である上記熱交換器18をエンジン本体12の前方位置まで後退させて配置することにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを、より低減することができるため、さらに顕著な走行安定性の向上効果的が得られるという利点がある。
【0032】
また、上記第1実施形態に示すように、フロントグリル9の下端部とサスペンションクロスメンバ19の下端部との間に、エンジンルーム2の下面部を覆うアンダカバー28等からなる冷却手段を設置することにより、上記フロントグリル9の下方部からエンジンルーム2内に導入された走行風を、図1の矢印αに示すように、上記排気系補機27の設置部に案内するように構成した場合には、車両の走行時に上記排気系補機27が走行風によって効率よく冷却されるため、この排気系補機27に熱害が発生するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0033】
特に、上記第1実施形態では、ボンネット7の下面部を覆うように熱交換器18の取付部となる遮蔽板21を設置したため、車両の走行時に上記フロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に導入された走行風を上記遮蔽板21により上記熱交換器18の設置部に案内することができる。したがって、上記のように熱交換器18を従来よりも車両の後方側に配設した場合においても、熱交換器18の熱交換機能、つまりエンジン冷却水の冷却機能を充分に発揮できるという利点がある。
【0034】
図4および図5は、本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第2実施形態を示している。この第2実施形態では、エンジン本体12の前方側に配設された上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機27と、上記ラジエータ等からなる熱交換器本体16および冷却ファン17等を備えた熱交換器18との間に遮熱手段30が設けられている点が、上記第1実施形態と異なっている。具体的には、断熱性を有する板材等からなる遮熱手段30で排気系補機27の上面部および背面部が覆われることにより、上記熱交換器18において熱交換が行われることにより発生した熱が排気系補機27に及ぶことが確実に防止されるようになっている。
【0035】
上記構成によれば、車両の走行時に、熱交換器18においてエンジン冷却水の熱交換が行われることにより発生した熱の影響が、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機27に及ぶのを上記遮熱手段30によって効果的に阻止することができるとともに、上記フロントグリル9の下方部からエンジンルーム2内に導入された走行風を上記遮熱手段30の案内作用により排気系補機27の設置部に効率よく供給することができる。したがって、上記排気系補機27が熱交換器18の熱影響を受けて早期に熱劣化したり、あるいは適正反応温度よりも高温に加熱されて排気ガスの浄化性能が低下したりするのを効果的に防止できるという利点がある。
【0036】
図6は、本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第3実施形態を示している。この第3実施形態は、熱交換器18を構成する冷却ファン17の下端部を熱交換器本体16の下方にオフセットさせて配設し、このオフセット部分の前方に上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機27を配設したものである。また、この排気系補機27の設置部を覆うように断熱性を有する板材等からなる冷却風の案内板31が配設されるとともに、この案内板31に、排気系補機27の設置部と冷却ファン17のオフセット部分とを繋ぐ導風ダクト32が設けられ、車両の走行時に、フロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に導入された走行風の一部が上記導風ダクト32を介して冷却ファン17の設置部に案内されるようになっている。
【0037】
上記のように冷却ファン17の下端部を熱交換器本体16の下方にオフセットさせることにより、熱交換器本体16の下方に位置させた冷却ファン17の下端部前方に上記排気系補機27を配設した場合には、車両の走行時に、フロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に導入されるとともに、上記冷却ファン17の吸引力に応じてその速度が増大された走行風が、上記排気系補機27の設置部に対して積極的に供給されることになる。したがって、車両の走行時に、上記排気系補機27を効率よく冷却してその熱劣化および浄化性能の低下を、より効果的に防止することができる。
【0038】
特に、上記第3実施形態に示すように、上記排気系補機27の設置部と冷却ファン17のオフセット部分とを繋ぐように導風ダクト32を設けた場合には、上記冷却ファン17の作動時に生じる吸引力を上記排気系補機27の設置部に効果的に作用させることができるため、車両の走行時に、フロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に導入された走行風を上記排気系補機27の設置部に対し、より積極的に供給してこの排気系補機27をさらに効果的に冷却することができる。
【0039】
なお、上記冷却ファン17の上端部を熱交換器本体16の上方にオフセットさせることにより、熱交換器本体16の上方に位置させた冷却ファン17の上端部前方に上記排気系補機27を配設した構造としてもよく、あるいは冷却ファン17の上下両端部を熱交換器本体16の上方および下方にそれぞれオフセットさせることにより、熱交換器本体16の上方または下方に位置させた冷却ファン17の上端部前方および下端部前方の何れか一方に上記排気系補機27を配設した構造としてもよい。
【0040】
図7は、本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第4実施形態を示している。この第4実施形態は、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機27の前方に、エンジンオイル用のクーラ33が配設され、かつ上記排気系補機27の設置部と熱交換器18との間に断熱性を有する板材等からなる遮熱手段30が配設されたものである。この遮熱手段30の先端部には、上記クーラ33および排気系補機27の設置部前面を開閉可能に覆うフラップ34がヒンジ部材35を介して連設されるとともに、このヒンジ部材35を支点として上記フラップ34を揺動変位させる駆動シリンダ等からなる駆動手段36が上記バンパレインフォースメント10等に設けられている。
【0041】
エンジンの始動直後には、図7の仮想線で示すように、上記フラップ34の先端部が下降状態となってクーラ33および排気系補機27の設置部前面がフラップ34により閉止されている。そして、図外のエンジン温度センサ等から出力された検出信号に応じて上記クーラ33および排気系補機27の暖機が完了したことが確認された場合に、制御手段37から上記駆動手段36に作動指令信号が出力されることにより、図7の実線で示すように、フラップ34の先端部が上昇駆動されてクーラ33および排気系補機27の設置部前面が開放されるようになっている。
【0042】
上記第4実施形態では、排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機27の前方側にエンジンオイル用のクーラ33を配設したため、車両の走行時に高温状態となるエンジン本体12の熱影響が上記クーラ33に及ぶのを熱交換器18等によって阻止することにより、上記クーラ33がエンジン本体12の熱影響によって早期に熱劣化し、あるいはエンジンオイルの冷却性能が低下すること等を効果的に防止できるという利点がある。しかも、上記排気系補機27の設置部と熱交換器18との間に断熱性を有する板材等からなる遮熱手段30を配設するとともに、その先端部に上記クーラ33および排気系補機27の設置部前面を開閉可能に覆うフラップ34を配設し、エンジンの始動直後に、上記フラップ34の先端部を下降させてクーラ33および排気系補機27の設置部前面を閉止するように構成したため、上記冷却ファン17の吸引力等に応じてフロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に導入された空気が上記クーラ33および排気系補機27の設置部に供給されるのを防止することにより、これらが冷却されるのを抑制してエンジンの暖機と排気系補機27の活性化とを効果的に促進することができる。
【0043】
一方、車両の走行時に上記クーラ33および排気系補機27の暖機が完了したことがエンジン温度センサ等の検出信号に応じて確認された場合には、上記フラップ34の先端部を上昇させてクーラ33および排気系補機27の設置部前面を開放することにより、上記冷却ファン17の吸引力等に応じてフロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に導入された走行風を上記クーラ33および排気系補機27の設置部に供給することができる。したがって、車両の走行時に、上記排気系補機27およびエンジンオイル用のクーラ33を効率よく冷却することができるとともに、上記排気系補機27およびクーラ33が熱交換器18の熱影響を受けるのを遮熱手段30によって効果的に阻止できるという利点がある。
【0044】
図8は、本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第5実施形態を示している。この第5実施形態は、エンジン本体12から導出された温水を上記熱交換器本体16に導出する導出管38から分岐した分岐通路39と、この分岐通路39に設けられた開閉弁40,41および温熱ヒータ42と、開閉弁40,41を開閉させる制御信号を出力する制御手段37とを備え、上記温熱ヒータ42が排気系補機27の近傍に設置されたものである。上記制御手段37は、エンジンの始動直後に上記開閉弁40,41を開放状態として温熱ヒータ42に対して温水を供給し、かつ図外のエンジン温度センサ等から出力された検出信号に応じて上記クーラ33および排気系補機27の暖機が完了したことが確認された場合に、上記開閉弁40,41を閉止状態として温熱ヒータ42に対する温水の供給を停止するように構成されている。
【0045】
上記構成によれば、エンジンの始動後に、温度が早期に上昇する傾向にあるエンジン本体12から上記熱交換器本体16に供給される高温の冷却水(温水)を上記温熱ヒータ42に供給することにより、排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機27を早期に活性化させることができる。また、車両の走行時には、上記温熱ヒータ42への温水の供給を停止することにより、上記排気系補機27が過度に加熱されるのを防止できるという利点がある。
【0046】
なお、上記排気系補機27としては排気ガス浄化用のキャタライザー以外に、ターボチャージャー用の排気タービン等が考えられる。しかし、上記排気ガス浄化用のキャタライザーは、温度変化に応じて活性状態が顕著に変化するとともに、高温に加熱されると熱劣化を生じ易く、かつ活性状態で熱を発生する傾向がある。したがって、上記実施形態に示すように、エンジン冷却用の熱交換器18の前方側に、排気ガス浄化用のキャタライザーからなる排気系補機27を配設することにより、この排気系補機27がエンジン本体12の熱影響によって早期に熱劣化するのを防止できるとともに、適正反応温度よりも高温に加熱されて排気ガスの浄化性能が低下するのを効果的に防止できるように構成することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第1実施形態を示す側面断面図である。
【図2】上記パワートレイン配設構造の第1実施形態を示す平面断面図である。
【図3】上記パワートレイン配設構造の要部構成を示す正面図である。
【図4】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第2実施形態を示す側面断面図である。
【図5】上記パワートレイン配設構造の第2実施形態を示す平面断面図である。
【図6】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第3実施形態を示す側面断面図である。
【図7】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第4実施形態を示す側面断面図である。
【図8】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第5実施形態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 車室
2 エンジンルーム
11 パワートレイン
12 エンジン本体
13 トランスミッション
16 熱交換器本体
17 冷却ファン
18 熱交換器
27 排気系補機
28 アンダカバー(冷却手段)
30 遮熱手段
32 導風ダクト
33 クーラ
42 温熱ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室とエンジンルームを区画するダッシュパネルに、車体の後方側に凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に、車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両において、上記パワートレインは、エンジンルーム内に縦置き式に配設されるエンジン本体と、その後方に接続されたトランスミッションとを備え、上記エンジン本体の前方に、エンジン冷却用の熱交換器と、エンジン本体から車体の前方側に延びる排気管とが配設されるとともに、この排気管に設けられた排気系補機が上記熱交換器の前方に配設されたことを特徴とする車両のパワートレイン配設構造。
【請求項2】
車両の走行風を上記排気系補機に案内してこの排気系補機を冷却する冷却手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項3】
上記排気系補機と熱交換器との間に遮熱手段が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項4】
上記熱交換器に、熱交換器本体とこの熱交換器本体に冷却風を供給する冷却ファンとが設けられるとともに、この冷却ファンの上端部または下端部が熱交換器本体の上方または下方の少なくとも一方にオフセットして配設され、このオフセット部分の前方に上記排気系補機が配設されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項5】
上記排気系補機の設置部と冷却ファンのオフセット部分とを繋ぐように冷却風の導風ダクトが設けられたことを特徴とする請求項4に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項6】
上記排気系補機の前方に、エンジンオイル用のクーラが配設されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項7】
上記排気系補機の近傍に、この排気系補機を加熱するための温熱ヒータが配設されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項8】
上記排気系補機が排気ガス浄化用のキャタライザーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−18710(P2009−18710A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183203(P2007−183203)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】