説明

車両の制御装置

【課題】エンジンストール発生時にラチェッティングの発生を防止することができる車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】摩擦係合要素の係合によりシフトレンジが切り替えられる変速機12と、変速機12の出力軸をロックするロック状態とロック状態を解除するアンロック状態とを油圧によって切り替えるパーキングロック機構17とを備え、アンロック状態を電気的に維持する車両の制御装置において、エンジン11のエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ61を有し、パーキングロック機構17がアンロック状態を電気的に維持し、かつ、エンジン回転数に基づいてENG−ECU1によりエンジンストールと判定された場合に、電源ECU4がクランキングを禁止するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧により駆動するパーキングロック機構を備えた車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両の制御装置として、油圧によりパーキングロック機構をロック状態とアンロック状態とに切り替えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された従来のパーキングロック機構は、バルブ内を上下動するピストンの一端にパーキングロックポールが連結されており、ピストンがバルブ上端に移動するとパーキングロックポールがパーキングギヤに係合し、ピストンがバルブ下端に移動するとパーキングロックポールがパーキングギヤから離隔するようになっている。
【0003】
このパーキングロックポールには捩りコイルばねが設けられており、捩りコイルバネは、ピストンをバルブ下端からバルブ上端の方向に付勢しており、ピストンをバルブ上端に引き上げてパーキングロックポールをパーキングギヤに係合させるようにしている。一方、ピストンが油圧により捩りコイルバネの付勢力に抗してバルブ下端方向へ押圧しており、パーキングポールがパーキングギヤから離隔するように押圧されている。
【0004】
また、バルブには電磁石が設けられており、油圧によりピストンが捩りコイルバネの付勢力に抗して下動すると、電磁石が通電されてピストンがバルブ下端位置に保持される。そして、パーキングロック機構がアンロック状態に切り替えられた場合には、走行中のエンジンストールに起因した油圧の低下によりパーキングロックポールがパーキングギヤに接触して、ラチェッティングが生じないように電気的にアンロック状態が維持されるようになっている。
【特許文献1】特表2002−533631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の車両の制御装置にあっては、エンジンストールが発生し、ピストンをバルブ下端に押圧している油圧が低下した場合でも、電気的にパーキングロック機構のアンロック状態を維持できるが、エンジンを再始動させるためにクランキングが実施されると、電圧降下が生じる。この結果、電磁石が通電されなくなり、アンロック状態を維持できず、パーキングポールがパーキングギヤに接触してラチェッティングが発生してしまう可能性があった。
このため、特に走行中にエンジンストールが発生し、ニュートラルレンジで惰行中にクランキングが実施されると、パーキングロックポールがパーキングギヤに接触してラチェッティングが発生してしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、エンジンストール発生時にラチェッティングの発生を防止することができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両の制御装置は、上記目的を達成するため、(1)内燃機関に連結され、摩擦係合要素の係合により動力伝達状態が切り替えられる変速機と、前記変速機の出力軸をロックするロック状態と前記ロック状態を解除するアンロック状態とを油圧によって切り替えるパーキングロック機構とを備え、前記アンロック状態を電気的に維持する車両の制御装置において、前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、前記運転状態検出手段に検出された前記内燃機関の運転状態に基づいて走行中の前記内燃機関の停止状態を判定する停止状態判定手段と、前記パーキングロック機構がアンロック状態を電気的に維持し、かつ前記停止状態判定手段により前記内燃機関の停止状態と判定された場合に、クランキングを禁止するクランキング禁止手段とを備えるよう構成する。
【0008】
この構成により、パーキングロック機構によりアンロック状態が維持されているときに、走行中に内燃機関が停止して油圧が低下した場合に、クランキングの実施が禁止されるため、クランキングによる電圧降下が防止されて、アンロック状態が電気的に維持され続ける。したがって、内燃機関が停止した場合に、ニュートラルレンジで惰行中にパーキングロック機構のアンロック状態が解除されてロック状態となることがないため、ラチェッティングの発生を防止することができる。
【0009】
上記(1)に記載の車両の制御装置において、(2)前記車両の車速を検出する車速検出手段を備え、前記クランキング禁止手段は、前記車速検出手段により検出された前記車速が予め定められた速度以上の場合に、前記クランキングを禁止するよう構成する。
【0010】
この構成により、例えば、予め定められた速度をパーキングロック機構のパーキングギヤの強度を保証することができる保証速度に設定すれば、車速が保証速度以上の場合にクランキングが禁止されてパーキングロック機構のアンロック状態が維持されるため、保証速度以上でラチェッティングが生じることがなく、パーキングギヤの破損を防止することができる。
【0011】
上記(1)または(2)に記載の車両の制御装置において、(3)前記変速機の摩擦係合要素の係合状態に基づいて、前記動力伝達状態が動力伝達を行う伝達状態か前記動力伝達を遮断する遮断状態かを判定する動力伝達状態判定手段を備え、前記クランキング禁止手段は、前記動力伝達状態判定手段により前記遮断状態と判定された場合に、前記クランキングを禁止するよう構成する。
【0012】
この構成により、動力伝達が遮断され、ニュートラルレンジで惰行中にクランキングが禁止され、パーキングロック機構のアンロック状態が電気的に維持され続けるため、パーキングロック機構のアンロック状態が解除されてロック状態となることがなく、ラチェッティングの発生を防止することができる。
【0013】
また、上記(3)に記載の車両の制御装置において、(4)前記動力伝達状態判定手段により前記遮断状態と判定された場合に、前記変速機が前記動力伝達状態を前記遮断状態から前記伝達状態に切り替えるよう構成する。
【0014】
この構成により、動力伝達状態が遮断状態の場合に、遮断状態から伝達状態に切り替えられるため、内燃機関が車輪によって逆駆動されて油圧の低下が防止され、油圧低下によるラチェッティングを防止することができる。
【0015】
本発明に係る他の車両の制御装置は、上記目的を達成するため、(5)内燃機関に連結され、摩擦係合要素の係合により動力伝達状態が切り替えられる変速機と、前記変速機の出力軸をロックするロック状態と前記ロック状態を解除するアンロック状態とを油圧によって切り替えるパーキングロック機構とを備え、前記アンロック状態を電気的に維持する車両の制御装置において、前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、前記運転状態検出手段に検出された前記内燃機関の運転状態に基づいて走行中の前記内燃機関の停止状態を判定する停止状態判定手段と、前記変速機の摩擦係合要素の係合状態に基づいて、前記動力伝達状態が動力伝達を行う伝達状態か前記動力伝達を遮断する遮断状態かを判定する動力伝達状態判定手段と、前記停止状態判定手段により前記内燃機関の停止状態と判定され、前記動力伝達状態判定手段により前記遮断状態と判定された場合に、前記変速機が前記遮断状態から前記伝達状態に前記動力伝達状態を切り替えるよう構成する。
【0016】
この構成により、走行中に内燃機関が停止したときに、動力伝達状態が遮断状態の場合に、動力伝達状態が遮断状態から伝達状態に切り替えられるため、内燃機関が車輪によって逆駆動されて油圧の低下が防止され、パーキングロック機構のアンロック状態がロック状態に切り替えられるのを防止することができる。したがって、内燃機関が停止した場合に、ニュートラルレンジの惰行中に油圧の低下に起因したラチェッティングの発生を防止することができる。
【0017】
上記(5)に記載の車両の制御装置において、(6)前記車両の車速を検出する車速検出手段を備え、前記変速機は、前記車速検出手段により検出された前記車速が予め定められた速度以上の場合に、前記変速機が前記遮断状態から前記伝達状態に前記動力伝達状態を切り替えるよう構成する。
【0018】
この構成により、例えば、予め定められた速度をパーキングロック機構のパーキングギヤが噛み合うエンゲージ速度に設定すれば、車速が、ラチェッティングが生じるエンゲージ速度以上の場合に動力伝達状態が遮断状態から伝達状態に切り替えられ、内燃機関が車輪によって逆駆動されて油圧の低下が防止されるため、エンゲージ速度以上で油圧が低下してパーキングロック機構がアンロック状態からロック状態に切り替えられることがなく、ラチェッティングの発生を防止することができる。
【0019】
本発明に係る他の車両の制御装置は、上記目的を達成するため、(7)内燃機関に連結され、摩擦係合要素の係合により動力伝達状態が切り替えられる変速機と、前記変速機の出力軸をロックするロック状態と前記ロック状態を解除するアンロック状態とを油圧によって切り替えるパーキングロック機構とを備え、前記アンロック状態を電気的に維持する車両の制御装置において、前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、前記運転状態検出手段に検出された前記内燃機関の運転状態に基づいて走行中の前記内燃機関の停止状態を判定する停止状態判定手段と、前記変速機の摩擦係合要素の係合状態に基づいて、前記動力伝達状態が動力伝達を行う伝達状態か前記動力伝達を遮断する遮断状態かを判定する動力伝達状態判定手段と、前記停止状態判定手段により前記内燃機関の停止状態と判定され、前記動力伝達状態判定手段により前記伝達状態と判定された場合に、前記変速機が前記伝達状態から前記遮断状態に前記動力伝達状態を切り替えるのを禁止する切替禁止手段とを備えるよう構成する。
【0020】
この構成により、走行中に内燃機関が停止したときに、動力伝達状態が伝達状態の場合に、伝達状態から遮断状態への動力伝達状態の切り替えを禁止することにより、内燃機関が車輪によって逆駆動されて油圧の低下が防止され、パーキングロック機構のアンロック状態がロック状態に切り替えられるのを防止することができる。したがって、内燃機関が停止した場合に、ニュートラルレンジの惰行中に油圧の低下に起因したラチェッティングの発生を防止することができる。
また、動力伝達状態が伝達状態の場合には、クランキングが禁止されているため、クランキングの実施によるラチェッティングの発生を防止することができる。
【0021】
上記(7)に記載の車両の制御装置において、(8)前記車両の車速を検出する車速検出手段を備え、前記切替禁止手段は、前記車速検出手段により検出された前記車速が予め定められた速度以上の場合に、前記変速機が前記伝達状態から前記遮断状態に前記動力伝達状態を切り替えるのを禁止するよう構成する。
【0022】
この構成により、例えば、予め定められた速度をパーキングロック機構のパーキングギヤが噛み合うエンゲージ速度に設定すれば、車速が、ラチェッティングが生じるエンゲージ速度以上の場合に伝達状態から遮断状態への動力伝達状態の切り替えが禁止されるため、エンゲージ速度以上で油圧が低下してパーキングロック機構のアンロック状態がロック状態に切り替えられることがなく、ラチェッティングの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、エンジンストール発生時にラチェッティングの発生を防止することができる車両の制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両の制御装置の概略ブロック構成図である。
【0025】
まず、構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る車両の制御装置は、エンジンECU(以下、ENG−ECUという)1と、電子制御式トランスミッションECU(以下、ECT−ECUという)2と、シフトバイワイヤECU(以下、SBW−ECUという)3と、電源ECU4とを備えている。また、ENG−ECU1はエンジン11に、ECT−ECU2は変速機12を制御する油圧制御装置13に、SBW−ECU3は切替駆動装置14に、電源ECU4はスタータモータ15にそれぞれ接続されている。また、油圧制御装置13は複数の油路を介して変速機12、オイルポンプ16、パーキングロック機構17に接続されている。
【0026】
ENG−ECU1、ECT−ECU2、SBW−ECU3および電源ECU4は、いずれもCPU(Central Processing Unit)を中心とするマイクロコンピュータを主体に構成された電気回路であり、CPUの他に、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、処理プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、A/D変替器等を含む入出力インターフェース回路およびタイマーを備え、車内LAN回線18または図示しないシリアル通信線等を介して電気的に相互に接続されている。
【0027】
ENG−ECU1は、エンジン11を統括制御するものであり、このエンジン11は、図示しないスロットルバルブ、インジェクタおよび点火プラグを有している。そして、ENG−ECU1は、車両の走行状況に応じて、スロットルバルブを介して気筒内に送り込まれる吸入空気量およびインジェクタにより気筒内に噴射される燃料の噴射量を決定し、適切なタイミングで点火プラグを駆動することによりエンジン11に動力を発生させるようになっている。
【0028】
ECT−ECU2は、ENG−ECU1から出力された制御信号に基づいて油圧制御装置13を介して変速機12を制御するようになっている。変速機12は、エンジン11の出力軸にトルクコンバータを介して連結し、車両の走行状況に応じた変速比に切り替えるようになっている。変速機12の内部には、変速比を選択するためのクラッチやブレーキ等の摩擦係合要素が設けられており、この摩擦係合要素の係合・解放に基づいて変速比を制御して、エンジン11から伝達される回転数やトルクを変化させるようになっている。変速機12の出力軸には、後述するパーキングギヤ37が固定されており、パーキングギヤ37は、パーキングロック機構17によって回転不能にロックされるロック状態と、ロック状態が解除されるアンロック状態とに切り替えられるようになっている。
【0029】
油圧制御装置13は、変速機12の摩擦係合要素に対する係合・解放を油圧制御により切り替えるソレノイドバルブ21と、パーキングロック機構17のロック状態・アンロック状態を油圧制御により切り替えるソレノイドバルブ22と、摩擦係合要素の駆動および油圧制御の元圧となるライン油圧によりシフトレンジを切り替えるためのシフトバルブ23とを備えている。ソレノイドバルブ21、22は、ECT−ECU2に電気的に接続されており、ECT−ECU2から出力された制御信号に基づいて摩擦係合要素の係合・解放やパーキングロック機構17のロック状態・アンロック状態を切り替えるよう制御している。なお、本実施形態におけるENG−ECU1から出力された制御信号とは、エンジン11の出力軸の回転数を含むものである。
【0030】
オイルポンプ16は、エンジン11のクランクシャフトの回転に応じて回転する図示しないロータを有しており、ロータの回転によりオイルパン内に貯留されているオイルを複数の油路を介して油圧制御装置13に圧送するようになっている。
【0031】
SBW−ECU3は、シフトレンジを選択するシフトレバー装置25に接続されており、シフトレバー装置25から出力された選択信号に基づいて切替駆動装置14を制御してシフトレンジを切り替えるようになっている。また、SBW−ECU3は、シフトレンジを表示するシフト表示装置26に接続されており、選択されたシフトレンジに応じてシフト表示装置26の表示を切り替えるようになっている。
【0032】
シフトレバー装置25は、シフトレバー27とパーキングボタン28とを有し、シフトレバー27の操作によりリバースレンジ、ニュートラルレンジ、ドライブレンジを選択でき、パーキングボタン28の押下によりパーキングレンジを選択できるようになっている。そして、シフトレバー装置25は、シフトレバー27の操作により選択されたシフトレンジに対応する選択信号をSBW−ECU3に出力するようになっている。
【0033】
また、SBW−ECU3は、シフトレンジに対応したシフト位置にシフトレバー27が一定時間保持されることによりシフトレンジを切り替えるよう切替駆動装置14を制御するようになっている。
切替駆動装置14は、油圧制御装置13のシフトバルブ23を駆動するアクチュエータを有し、アクチュエータの駆動によってシフトバルブ23を駆動させることにより、油圧制御装置13において各シフトレンジに対応したライン油圧を調整するとともに、変速段に対応した摩擦係合要素に油圧を供給するようになっている。
【0034】
電源ECU4は、スタータスイッチ24に接続されており、スタータスイッチ24を介して入力されたエンジン始動信号に基づいてスタータモータ15を作動させることにより、エンジン11のクランキングを行うようになっている。具体的には、エンジン始動信号が電源ECU4に入力されると、電源ECU4は、バッテリ19をスタータモータ15に接続して、スタータモータ15に電力を供給することにより、スタータモータ15を作動させるようになっている。
【0035】
ここで、図2を参照して、パーキングロック機構について詳細に説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態に係るパーキングロック機構およびパーキングロック機構の作動油の供給経路の模式図である。
【0036】
パーキングロック機構17は、シリンダ31と、シリンダ31内を往復動するピストン32と、ピストン32を固定したピストンロッド33およびパーキングロッド34を連結する連結部材35と、パーキングロッド34に押圧されることによりパーキングギヤ37に係合するパーキングロックポール36とを有している。
【0037】
シリンダ31には、延在方向の一端側にソレノイドバルブ22に接続された油孔41が形成され、延在方向の他端側に電磁コイル42が巻回されたアンロック保持部43が取り付けられている。電磁コイル42は、ECT−ECU2に接続されており、ECT−ECU2により電磁コイル42への通電が制御されるようになっている。シリンダ31の延在方向の中間位置には、ストッパ44が設けられており、ピストン32の往復動がシリンダ31の延在方向中間部で規制されるようになっている。
【0038】
また、シリンダ31内の油孔41側の端部は、パーキングロックポール36をパーキングギヤ37に係合させるロック位置47に規制しており、シリンダ31内のストッパ44を設けた中間部は、パーキングロックポール36をパーキングギヤ37から離隔させるアンロック位置48に規制している。
そして、パーキングロック機構17は、ロック位置47とアンロック位置48との間でピストン32をシリンダ31内で往復動させることにより、ロック状態とアンロック状態とを切り替えるようになっている。
【0039】
ピストン32は、ピストンロッド33の途中部分に固定されており、シリンダ31内に油孔41を通じてオイルが供給される油圧室51を画成している。そして、ピストン32は、ソレノイドバルブ22の駆動に応じて、油圧室51内のオイルの供給および排出が制御されて、シリンダ31内をロック位置47とアンロック位置48との間を往復動するようになっている。
【0040】
ピストンロッド33は、一部がシリンダ31外に延び出した状態でシリンダ31に挿入されており、シリンダ31の外側に位置する端部には連結部材35が回動自在に連結され、シリンダ31の内側に位置する端部には磁石52が設けられている。磁石52は、ピストン32の移動に応じてシリンダ31内を往復動するようになっており、ピストン32がアンロック位置48に移動すると、電磁コイル42で囲われた空間に進入し、ピストン32がロック位置47に移動すると、電磁コイル42で囲われた空間から外れるようになっている。そして、磁石52は、アンロック位置48にピストン32が位置した状態で、ECT−ECU2によって電磁コイル42が通電されることにより、電磁力により引き止められてピストン32がアンロック位置48に保持されるようになっている。
【0041】
連結部材35は、中間部の支軸39を中心に回動自在に構成されており、一端部がピストンロッド33に回動自在に連結され、他端部がパーキングロッド34に回動自在に連結されている。よって、ピストン32がロック位置47に移動すると連結部材35を介してパーキングロッド34の先端がパーキングロックポール36側に押し込まれ、ピストン32がアンロック位置48に移動すると連結部材35を介してパーキングロッド34の先端がパーキングロックポール36から引き離されるようになっている。また、連結部材35の支軸39には、スプリング55が設けられており、スプリング55はパーキングロッド34をパーキングロックポール36に押し当てる方向に付勢している。
【0042】
パーキングロッド34には、先端部にパーキングカム56が設けられており、このパーキングカム56がパーキングロックポール36に押し当てられることによりパーキングロックポール36がパーキングギヤ37に係合するようになっている。
パーキングカム56は、断面積が先端に向けて縮小するように外周面がテーパ状に形成されており、パーキングロックポール36の下部に押し当てられることにより、パーキングロックポール36をパーキングギヤ37に向けて押し上げるようになっている。
【0043】
パーキングロックポール36は、パーキングギヤ37の外周に対向する位置に設けられ、支軸58を中心として揺動するようになっている。また、パーキングロックポール36には、パーキングギヤ37に係合する爪部59が形成されており、この爪部59がパーキングギヤ37に係合されることで、変速機12の出力軸が回転不能にロックされるようになっている。
【0044】
ここで、パーキングロック機構17のアンロック動作およびロック動作について簡単に説明する。パーキングロックポール36の爪部59がパーキングギヤ37に係合しているロック状態において、ECT−ECU2からアンロック信号が出力されると、ソレノイドバルブ22によりシリンダ31内に油圧が加えられ、ピストン32がアンロック位置48側に向かって移動し始める。ピストン32がアンロック位置48側に向かって移動し始めると、スプリング55の付勢力に抗するようにしてパーキングカム56がパーキングロックポール36の下部から引き離され、パーキングロックポール36が支軸58を中心として下方に揺動し、爪部59がパーキングギヤ37から外れるようになっている。
【0045】
そして、ピストン32がアンロック位置48に到達すると、爪部59がパーキングギヤ37から完全に外れ、ピストンロッド33に設けられた磁石52が電磁コイル42で囲われた空間に侵入する。この状態で、電磁コイル42が通電されて、磁石52が電磁力により電磁コイル42で囲われた空間内に保持され、爪部59がパーキングギヤ37から完全に外れたアンロック状態が維持されるようになっている。
【0046】
このように、パーキングロック機構17のアンロック状態は、油圧によりピストン32がアンロック位置48に押し付けられるとともに、電磁力により磁石52が保持されることで、アンロック状態が維持されるようになっている。すなわち、パーキングロック機構17は、シリンダ31内の油圧が低下した場合でも、電気的にアンロック状態を保持する構成となっている。
【0047】
一方、このアンロック状態において、ECT−ECU2からロック信号が出力されると、電磁コイル42の通電が停止されるとともに、ソレノイドバルブ22によりシリンダ31内が減圧され、ピストン32がロック位置47側に向かって移動し始める。ピストン32がロック位置47側に向かって移動し始めると、スプリング55の付勢力によりパーキングカム56がパーキングロックポール36の下部に押し当てられ、パーキングロックポール36が支軸58を中心として上方に揺動して、爪部59がパーキングギヤ37に接近するようになっている。
そして、ピストン32がロック位置47に到達すると、爪部59がパーキングギヤ37に係合し、スプリング55の付勢力によりロック状態が維持されるようになっている。
【0048】
図1に戻り、車内LAN回線18には、エンジン回転数センサ61、シフトポジションセンサ62および車速センサ63が接続されている。
エンジン回転数センサ61は、所定角度単位のクランク回転からエンジン回転数を検出して電気信号に変換し、ENG−ECU1に出力するようになっている。そして、ENG−ECU1は、エンジン回転数センサ61から出力された出力結果、例えば、エンジン回転数の急激な低下等に基づいて、走行中にエンジンストールが発生しているか否かを判定するようになっている。つまり、本実施の形態では、エンジン回転数センサ61が本発明に係る運転状態検出手段を構成し、ENG−ECU1が本発明に係る停止状態判定手段を構成している。
【0049】
シフトポジションセンサ62は、変速機12内の摩擦係合要素の係合状態を検出して電気信号に変換し、ECT−ECU2に出力するようになっている。そして、ECT−ECU2は、出力された電気信号に基づいて、変速機12のシフトレンジを判定するようになっている。つまり、本実施の形態では、ECT−ECU2が本発明に係る動力伝達状態判定手段を構成している。
【0050】
車速センサ63は、車両の走行速度または車輪の回転速度を検出して電気信号に変換し、ECT−ECU2および電源ECU4に出力するようになっている。つまり、本実施の形態では、車速センサ63が本発明に係る車速検出手段を構成している。
【0051】
また、ECT−ECU2のROMには、パーキングレンジ許可速度Vspおよびニュートラルレンジ許可速度Vsnが記憶されており、パーキングレンジ許可速度Vspは、エンジンストール発生時にシフトレンジをパーキングレンジに切替可能な速度を示し、ニュートラルレンジ許可速度Vsnは、エンジンストール発生時にニュートラルレンジに切替可能な速度を示している。そして、ECT−ECU2は、車速センサ63から出力された車速とパーキングレンジ許可速度Vspおよびニュートラルレンジ許可速度Vsnとを比較して、シフトレンジの切り替えを許可するようになっている。なお、パーキングレンジ許可速度Vspは、パーキングロックポール36がパーキングギヤ37に噛み合い可能なエンゲージ速度であり、パーキングロックポール36とパーキングギヤ37との間でラチェッティングが生じない速度である。
【0052】
また、電源ECU4のROMには、保証速度Vcが記憶されており、保証速度Vcは、ラチェッティングが発生しても、パーキングギヤ37が破損しない速度を示している。そして、電源ECU4は、車速センサ63から出力された車速と保証速度Vcとを比較して、クランキングを禁止するようになっている。つまり、本実施の形態では、電源ECU4が、本発明に係るクランキング禁止手段を構成している。なお、上記パーキングレンジ許可速度Vsp、ニュートラルレンジ許可速度Vsnおよび保証速度Vcは、Vsn<Vsp<Vcの関係を有している。
【0053】
ここで、図3を参照してエンジンストール発生時におけるクランキング制御処理について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態に係るクランキング制御処理を示すフローチャートである。なお、以下のフローが開始される前に、シフトレンジがパーキングレンジ以外に設定されており、車両が走行しているものとする。
【0054】
最初に、ENG−ECU1が、走行中にエンジン回転数センサ61の検出結果に基づいてエンジンストールが発生していると判定すると(ステップS11でYes)、ENG−ECU1が、車速センサ63の検出結果に基づいて車両停止状態か否かを判定する(ステップS12)。
【0055】
次に、ENG−ECU1が、車両停止状態と判定すると(ステップS12でYes)、電源ECU4が、所定の条件を満たすことによりクランキングを許可する(ステップS13)。なお、所定の条件とは、例えば、エンジン回転数が300回転以下、フットブレーキON、イグニッションスイッチON等のことをいう。
【0056】
一方、ENG−ECU1が、車両停止状態ではないと判定すると(ステップS12でNo)、ECT−ECU2が、シフトポジションセンサ62の検出結果に基づいてシフトレンジがニュートラルレンジであるか否かを判定する(ステップS14)。
【0057】
次に、ECT−ECU2が、シフトレンジをニュートラルレンジと判定すると(ステップS14でYes)、電源ECU4が、車速センサ63に検出された車速とROMに記憶された保証速度Vcとを比較し、車速が保証速度Vc以下であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0058】
次に、電源ECU4が、車速を保証速度Vcより速いと判定すると(ステップS15でNo)、車速が保証速度Vc以下になるまでクランキングを禁止する(ステップS16)。そして、電源ECU4が、車速を保証速度Vc以下と判定すると(ステップS15でYes)、所定の条件を満たすことでクランキングを許可する(ステップS17)。
【0059】
このように、車速が保証速度Vcより速い場合にクランキングが禁止されてパーキングロック機構17のアンロック状態が維持されるため、保証速度Vc以上でラチェッティングが生じることがなく、パーキングギヤ37の破損を防止することができる。
【0060】
一方、ステップS14において、ECT−ECU2が、シフトレンジをニュートラルレンジではないと判定すると(ステップS14でNo)、シフトポジションセンサ62の検出結果に基づいてシフトレンジがドライブレンジまたはリバースレンジか否かを判定する(ステップS18)。
【0061】
次に、ECT−ECU2が、シフトレンジをドライブレンジまたはリバースレンジではないと判定すると(ステップS18でNo)、シフトポジションセンサ62の故障と判定して処理を終了する。
【0062】
一方、ECT−ECU2が、シフトレンジをドライブレンジまたはリバースレンジと判定すると(ステップS18でYes)、シフトレンジをニュートラルレンジおよびパーキングレンジに切り替えるのを禁止するとともに、車速センサ63により検出された車速とROMに記憶されたニュートラルレンジ許可速度Vsnとを比較し、車速がニュートラルレンジ許可速度Vsn以下であるか否かを判定する(ステップS19)。
【0063】
ECT−ECU2が、車速をニュートラルレンジ許可速度Vsn以下と判定すると(ステップS19でYes)、ドライブレンジまたはリバースレンジからニュートラルレンジへの切り替えを許可する(ステップS20)。そして、シフトレンジが一定時間内にニュートラルレンジに切り替えられると(ステップS21でYes)、電源ECU4が所定の条件を満たすことでクランキングを許可する(ステップS22)。
【0064】
ステップS19において、ECT−ECU2が、車速がパーキングレンジ許可速度Vsnより速いと判定すると(ステップS19でNo)、車速センサ63に検出された車速とROMに記憶されたパーキングレンジ許可速度Vspとを比較し、車速がパーキングレンジ許可速度Vsp以下であるか否かを判定する(ステップS23)。
【0065】
ECT−ECU2が、車速をパーキングレンジ許可速度Vsp以下と判定すると(ステップS23でYes)、ドライブレンジまたはリバースレンジからパーキングレンジへの切り替えを許可する(ステップS24)。そして、シフトレンジが一定時間内にパーキングレンジに切り替えられると(ステップS25でYes)、電源ECU4が所定の条件を満たすことでクランキングを許可する(ステップS26)。
【0066】
一方、ステップS23において、ECT−ECU2が、車速をパーキングレンジ許可速度Vspより速いと判定した場合(ステップS23でNo)、または、ステップS21、ステップS25においてシフトレンジが一定時間内にニュートラルレンジ、パーキングレンジに切り替えられなかった場合(ステップS21でNo、ステップS25でNo)、シフトレンジをパーキングレンジおよびニュートラルレンジに切り替えるのを禁止する(ステップS27)。つまり、本実施の形態では、ECT−ECU2が本発明に係る切替禁止手段を構成している。また、このとき、シフトレンジがパーキングレンジおよびニュートラルレンジに切り替えられないため、クランキングが禁止される。
【0067】
このように、車速がパーキングレンジ許可速度Vspより速い場合にドライブレンジまたはリバースレンジからニュートラルレンジおよびパーキングレンジへの切り替えが禁止されるため、エンジン11が車輪によって逆駆動されることによりエンゲージ速度であるパーキングレンジ許可速度Vsp以上で油圧が低下することを防止することができる。このため、車速がパーキングレンジ許可速度Vspより速い場合に、パーキングロック機構17がアンロック状態からロック状態に切り替わることがなく、ラチェッティングの発生を防止することができる。
【0068】
以上のように、本発明の実施の形態に係る車両の制御装置は、パーキングロック機構17によりアンロック状態が維持されているときに、エンジンストールが発生して油圧が低下し、シフトレンジがニュートラルレンジの場合に、クランキングの実施が禁止されるため、クランキングによる電圧降下が防止されて、アンロック状態が電気的に維持され続ける。したがって、エンジンストールが発生した場合に、ニュートラルレンジで惰行中にパーキングロック機構17のアンロック状態が解除されてロック状態となることがないため、ラチェッティングの発生を防止することができる。
【0069】
また、本発明の実施の形態に係る車両の制御装置は、エンジンストールが発生したときに、シフトレンジがドライブレンジまたはリバースレンジの場合に、シフトレンジをドライブレンジまたはリバースレンジからニュートラルレンジおよびパーキングレンジへの切り替えを禁止することにより、エンジン11が車輪によって逆駆動されて油圧の低下が防止される。このため、エンジンストールが発生した場合に、パーキングロック機構17のアンロック状態がロック状態に切り替えられるのが防止され、ニュートラルレンジの惰行中に油圧の低下に起因したラチェッティングの発生を防止することができる。
また、シフトレンジがニュートラルレンジの場合には、クランキングが禁止されているため、クランキングの実施によるラチェッティングの発生を防止することができる。
【0070】
なお、本発明の第1の実施の形態においては、ステップS21においてシフトレンジがニュートラルレンジに切り替えられた場合には、ステップS22に移行するのではなく、ステップS15に移行するようにしてもよい。
【0071】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る車両の制御装置の構成は、上述した第1の実施の形態に係る車両の制御装置と同一であり、シフトレンジがエンジンストール発生時にニュートラルレンジの場合に強制的にドライブレンジまたはリバースレンジに切り替えることについてのみ相違する。したがって、同一の構成については、第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0072】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るクランキング制御処理を示すフローチャートである。なお、以下のフローが開始される前に、シフトレンジがパーキングレンジ以外に設定されており、車両が走行しているものとする。
【0073】
最初に、ENG−ECU1が、走行中にエンジン回転数センサ61の検出結果に基づいてエンジンストールが発生していると判定すると(ステップS31でYes)、ENG−ECU1が、車速センサ63の検出結果に基づいて車両停止状態か否かを判定する(ステップS32)。
【0074】
次に、ENG−ECU1が、車両停止状態と判定すると(ステップS32でYes)、電源ECU4が所定の条件を満たすことによりクランキングを許可する(ステップS33)。なお、所定の条件とは、例えば、エンジン回転数が300回転以下、フットブレーキON、イグニッションスイッチON等のことをいう。
【0075】
一方、ENG−ECU1が、車両停止状態ではないと判定すると(ステップS32でNo)、ECT−ECU2が、シフトポジションセンサ62の検出結果に基づいてシフトレンジがニュートラルレンジであるか否かを判定する(ステップS34)。
【0076】
次に、ECT−ECU2が、シフトレンジをニュートラルレンジと判定すると(ステップS34でYes)、シフトレンジをニュートラルレンジからドライブレンジまたはリバースレンジに切り替え(ステップS35)、ステップS36に移行する。
【0077】
ステップS35において、ECT−ECU2が、シフトレンジをニュートラルレンジからドライブレンジまたはリバースレンジに切り替えた場合、または、ステップS34において、ECT−ECU2が、シフトレンジをニュートラルレンジではないと判定した場合(ステップS34でNo)、シフトポジションセンサ62の検出結果に基づいてシフトレンジがドライブレンジまたはリバースレンジか否かを判定する(ステップS36)。
【0078】
次に、ECT−ECU2が、シフトレンジをドライブレンジまたはリバースレンジではないと判定すると(ステップS36でNo)、シフトポジションセンサ62の故障と判定して処理を終了する。
【0079】
一方、ECT−ECU2が、シフトレンジをドライブレンジまたはリバースレンジと判定すると(ステップS36でYes)、シフトレンジをニュートラルレンジおよびパーキングレンジに切り替えるのを禁止するとともに、車速センサ63により検出された車速とROMに記憶されたニュートラルレンジ許可速度Vsnとを比較し、車速がニュートラルレンジ許可速度Vsn以下であるか否かを判定する(ステップS37)。
【0080】
ECT−ECU2が、車速をニュートラルレンジ許可速度Vsn以下と判定すると(ステップS37でYes)、ドライブレンジまたはリバースレンジからニュートラルレンジへの切り替えを許可する(ステップS38)。そして、シフトレンジが一定時間内にニュートラルレンジに切り替えられると(ステップS39でYes)、電源ECU4が所定の条件を満たすことでクランキングを許可する(ステップS40)。
【0081】
ステップS37において、ECT−ECU2が、車速がパーキングレンジ許可速度Vsnより速いと判定すると(ステップS37でNo)、車速センサ63に検出された車速とROMに記憶されたパーキングレンジ許可速度Vspとを比較し、車速がパーキングレンジ許可速度Vsp以下であるか否かを判定する(ステップS41)。
【0082】
ECT−ECU2が、車速をパーキングレンジ許可速度Vsp以下であると判定すると(ステップS41でYes)、ドライブレンジまたはリバースレンジからパーキングレンジへの切り替えを許可する(ステップS42)。そして、シフトレンジが一定時間内にパーキングレンジに切り替えられると(ステップS43でYes)、電源ECU4が所定の条件を満たすことでクランキングを許可する(ステップS44)。
【0083】
一方、ステップS41において、ECT−ECU2が、車速がパーキングレンジ許可速度Vspより速いと判定した場合(ステップS41でNo)、または、ステップS39、ステップS43において、シフトレンジが一定時間内にニュートラルレンジ、パーキングレンジに切り替えられない場合(ステップS39でNo、ステップS43でNo)、シフトレンジをパーキングレンジおよびニュートラルレンジに切り替えるのを禁止する(ステップS45)。つまり、本実施の形態では、ECT−ECU2が本発明に係る切替禁止手段を構成している。また、このとき、シフトレンジがパーキングレンジおよびニュートラルレンジに切り替えられないため、クランキングが禁止される。
【0084】
このように、車速がパーキングレンジ許可速度Vspより速い場合にドライブレンジまたはリバースレンジからニュートラルレンジおよびパーキングレンジへの切り替えが禁止されるため、エンジン11が車輪によって逆駆動されることによりエンゲージ速度であるパーキングレンジ許可速度Vsp以上で油圧が低下することを防止することができる。このため、車速がパーキングレンジ許可速度Vspより速い場合に、パーキングロック機構17がアンロック状態からロック状態に切り替わることがなく、ラチェッティングの発生を防止することができる。
【0085】
以上のように、本発明の実施の形態に係る車両の制御装置は、シフトレンジがニュートラルレンジの場合にエンジンストールが発生すると、シフトレンジがニュートラルレンジから強制的にドライブレンジへ切り替えられるため、エンジン11が車輪によって逆駆動されて油圧の低下が防止される。このため、エンジンストールが発生した場合に、パーキングロック機構17のアンロック状態がロック状態に切り替えられるのが防止され、ニュートラルレンジの惰行中に油圧の低下に起因したラチェッティングの発生を防止することができる。
【0086】
なお、上記の各実施形態においては、ニュートラルレンジ許可速度Vsnとパーキングレンジ許可速度Vspとを異なる速度としたが、同一の速度にしてもよい。また、上記の各実施形態においては、シフトレンジがパーキングレンジか否かを、変速機12内に設けられたシフトポジションセンサ62により判定しているが、パーキングロック機構17のシリンダ31内にセンサを設けてシフトレンジがパーキングレンジか否かを判定するようにしてもよい。
【0087】
また、上記の各実施の形態においては、エンジン回転数センサ61により本発明における運転状態検出手段を構成したが、エンジン11の燃焼圧を検出する燃焼圧センサをさらに備えて、燃焼圧の低下とエンジン回転数センサによって検出されたエンジン回転数とに基づいてエンジンストールを判定する構成としてもよい。
【0088】
以上説明したように、本発明に係る車両の制御装置は、エンジンストール発生時にラチェッティングの発生を防止することができ、油圧により駆動するパーキングロック機構を備えた車両の制御装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両の制御装置の概略ブロック構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るパーキングロック機構およびパーキングロック機構の作動油の供給経路の模式図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るクランキング制御処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るクランキング制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1 ENG−ECU(停止状態判定手段)
2 ECT−ECU(動力伝達状態判定手段、切替禁止手段)
3 SBW−ECU
4 電源ECU(クランキング禁止手段)
11 エンジン(内燃機関)
12 変速機
13 油圧制御装置
15 スタータモータ
16 オイルポンプ
17 パーキングロック機構
31 シリンダ
32 ピストン
33 ピストンロッド
34 パーキングロッド
35 連結部材
36 パーキングロックポール
37 パーキングギヤ
42 電磁コイル
47 ロック位置
48 アンロック位置
52 磁石
55 スプリング
56 パーキングカム
61 エンジン回転数センサ(運転状態検出手段)
62 シフトポジションセンサ
63 車速センサ(車速検出手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に連結され、摩擦係合要素の係合により動力伝達状態が切り替えられる変速機と、前記変速機の出力軸をロックするロック状態と前記ロック状態を解除するアンロック状態とを油圧によって切り替えるパーキングロック機構とを備え、前記アンロック状態を電気的に維持する車両の制御装置において、
前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
前記運転状態検出手段に検出された前記内燃機関の運転状態に基づいて走行中の前記内燃機関の停止状態を判定する停止状態判定手段と、
前記パーキングロック機構がアンロック状態を電気的に維持し、かつ前記停止状態判定手段により前記内燃機関の停止状態と判定された場合に、クランキングを禁止するクランキング禁止手段とを備えたことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記車両の車速を検出する車速検出手段を備え、
前記クランキング禁止手段は、前記車速検出手段により検出された前記車速が予め定められた速度以上の場合に、前記クランキングを禁止することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記変速機の摩擦係合要素の係合状態に基づいて、前記動力伝達状態が動力伝達を行う伝達状態か前記動力伝達を遮断する遮断状態かを判定する動力伝達状態判定手段を備え、
前記クランキング禁止手段は、前記動力伝達状態判定手段により前記遮断状態と判定された場合に、前記クランキングを禁止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記動力伝達状態判定手段により前記遮断状態と判定された場合に、前記変速機が前記動力伝達状態を前記遮断状態から前記伝達状態に切り替えることを特徴とする請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
内燃機関に連結され、摩擦係合要素の係合により動力伝達状態が切り替えられる変速機と、前記変速機の出力軸をロックするロック状態と前記ロック状態を解除するアンロック状態とを油圧によって切り替えるパーキングロック機構とを備え、前記アンロック状態を電気的に維持する車両の制御装置において、
前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
前記運転状態検出手段に検出された前記内燃機関の運転状態に基づいて走行中の前記内燃機関の停止状態を判定する停止状態判定手段と、
前記変速機の摩擦係合要素の係合状態に基づいて、前記動力伝達状態が動力伝達を行う伝達状態か前記動力伝達を遮断する遮断状態かを判定する動力伝達状態判定手段と、
前記停止状態判定手段により前記内燃機関の停止状態と判定され、前記動力伝達状態判定手段により前記遮断状態と判定された場合に、前記変速機が前記遮断状態から前記伝達状態に前記動力伝達状態を切り替えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項6】
前記車両の車速を検出する車速検出手段を備え、
前記変速機は、前記車速検出手段により検出された前記車速が予め定められた速度以上の場合に、前記変速機が前記遮断状態から前記伝達状態に前記動力伝達状態を切り替えることを特徴とする請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
内燃機関に連結され、摩擦係合要素の係合により動力伝達状態が切り替えられる変速機と、前記変速機の出力軸をロックするロック状態と前記ロック状態を解除するアンロック状態とを油圧によって切り替えるパーキングロック機構とを備え、前記アンロック状態を電気的に維持する車両の制御装置において、
前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
前記運転状態検出手段に検出された前記内燃機関の運転状態に基づいて走行中の前記内燃機関の停止状態を判定する停止状態判定手段と、
前記変速機の摩擦係合要素の係合状態に基づいて、前記動力伝達状態が動力伝達を行う伝達状態か前記動力伝達を遮断する遮断状態かを判定する動力伝達状態判定手段と、
前記停止状態判定手段により前記内燃機関の停止状態と判定され、前記動力伝達状態判定手段により前記伝達状態と判定された場合に、前記変速機が前記伝達状態から前記遮断状態に前記動力伝達状態を切り替えるのを禁止する切替禁止手段とを備えたことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項8】
前記車両の車速を検出する車速検出手段を備え、
前記切替禁止手段は、前記車速検出手段により検出された前記車速が予め定められた速度以上の場合に、前記変速機が前記伝達状態から前記遮断状態に前記動力伝達状態を切り替えるのを禁止することを特徴とする請求項7に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−257093(P2009−257093A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103855(P2008−103855)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】