説明

車両の変速制御装置

【課題】 自車位置から勾配切り替わり地点までの間の道路勾配が上り勾配である場合に、自動変速機構による減速動作が運転者に違和感を与えないように適切に変速制御する。
【解決手段】 道路情報を取得する道路情報取得手段8と、勾配切り替わり地点の情報を取得した際に当該地点での推奨車速を決定する推奨車速決定手段17と、勾配切り替わり地点での推奨車速及び所定の減速量に基づいて、勾配切り替わり地点までの間の各地点での車速を地点推奨車速として演算する地点推奨車速演算手段29と、地点推奨車速よりも高い車速であって、勾配切り替わり地点までの距離が長いほど地点推奨車速との差が大きい制御判定車速を演算する制御判定車速演算手段30と、勾配切り替わり地点までの道路の勾配が上り勾配であって、各地点での実車速が当該各地点での前記制御判定車速以下である場合には、自動変速機構3の減速動作を制限する減速制限手段31と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の進行方向の道路情報に基づいて自動変速機構の変速制御を行う車両の変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置が備える道路情報に基づいて、自動変速機構の変速制御を行う技術として、例えば下記の特許文献1には、以下のような車両の変速制御装置に関する技術が開示されている。この車両の変速制御装置は、駆動源に駆動連結される入力軸、及び、該入力軸の入力を変速して出力する出力軸を備える自動変速機構と、道路情報及び車両状態情報に基づいて前記自動変速機構を制御する自動変速機構制御装置とを有する。そして、この自動変速機構制御装置は、カーブの形状や車両位置からカーブまでの距離等に基づいて必要減速加速度を演算する。そして、この必要減速加速度と車速等に応じてコーナに対する推奨入力軸回転数を演算して変速比を決定することにより、必要減速加速度に応じた減速を行うことができるように前記自動変速機構の変速制御を行う。またこの際、前記自動変速機構制御装置は、道路勾配推定処理を実行し、推定した道路勾配に基づいて、コーナに対する推奨入力軸回転数の補正を行う。ここで、道路勾配の推定は、アクセル開度、車速、車両の実加速度等に基づいて行われる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−194202号公報(第7−8頁、第10図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の車両の変速制御装置は、基本的に、カーブの形状や車両位置からカーブまでの距離等に基づいて演算した必要減速加速度に応じて、カーブに向かって一定の減速加速度で減速するように自動変速機構の変速制御を行うものであり、それを道路勾配に基づいて補正するものとなっている。したがって、例えば、自車位置とカーブとの間に上り勾配から下り勾配に切り替わる勾配切り替わり地点が存在する場合にも、必要減速加速度に応じて上り勾配でも減速制御が行われることになる。
【0005】
しかし、上り勾配では自動変速機構の減速制御がなくても重力の影響により減速することから、上り勾配で大きな減速制御を行うことは、運転者の感覚に合致しない場合がある。例えば、上り勾配の後に下り勾配があり、この下り勾配の途中にカーブ等の目標減速点が存在する場合に、上り勾配の領域で大きな減速制御が入ることは、運転者の感覚に合致しないことが多い。また、このような上り勾配の領域が長い場合には、その間に運転者のブレーキ操作や上り勾配の影響等によって車速が変化する可能性が高いので、減速が必要な点に対して大きく離れた位置から自動変速機構の減速制御を行うことは適切ではない。一方、カーブ等の減速が必要な点においては適切に減速する必要があるので、上り勾配において一律に減速制御を行わないようにすることも適切ではない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、自車位置から勾配切り替わり地点までの間の道路勾配が上り勾配である場合に、自動変速機構による減速動作が運転者に違和感を与えないように適切に変速制御を行うことが可能な車両の変速制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る車両の変速制御装置の特徴構成は、車両の進行方向の道路情報を取得する道路情報取得手段と、前記道路情報取得手段により前記進行方向に存在する道路の勾配切り替わり地点の情報を取得した際に、前記勾配切り替わり地点での推奨車速を決定する推奨車速決定手段と、前記勾配切り替わり地点での推奨車速及び所定の減速量に基づいて、車両位置から前記勾配切り替わり地点までの間の各地点での車速を地点推奨車速として演算する地点推奨車速演算手段と、前記地点推奨車速よりも高い車速であって、前記勾配切り替わり地点までの距離が長いほど前記地点推奨車速との差が大きい制御判定車速を演算する制御判定車速演算手段と、前記勾配切り替わり地点までの道路の勾配が上り勾配であって、前記各地点での実車速が当該各地点での前記制御判定車速以下である場合には、自動変速機構の減速動作を制限する減速制限手段と、を備える点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、車両の進行方向に道路の勾配切り替わり地点が存在する場合であって、勾配切り替わり地点までの間の道路勾配が上り勾配であるときには、勾配切り替わり地点までの距離が長いほど前記地点推奨車速との差が大きい制御判定車速に従って、当該制御判定車速以下の車速である場合には自動変速機構の減速動作を制限することになる。すなわち、自車位置から勾配切り替わり地点までの間の上り勾配の距離が長いほど、勾配切り替わり地点で推奨車速になるための各地点での地点推奨車速に対する実車速の差が大きくても自動変速機構の減速動作が制限されることになる。したがって、勾配切り替わり地点までの間の上り勾配において自動変速機構の減速動作が運転者の感覚に合致するように適切に制限されることになり、運転者に違和感を与えることを防止できる。
一方、自車位置が勾配切り替わり地点に近づくほど、各地点での地点推奨車速に対する実車速の差が少なくても自動変速機構の減速動作が許可されるようになるので、勾配切り替わり地点において推奨車速に近くなるように適切に自動変速機構の減速動作を行わせることができる。
【0009】
ここで、前記勾配切り替わり地点までの道路の勾配が下り勾配である場合、又は当該勾配が上り勾配であっても前記各地点での実車速が当該各地点での前記制御判定車速より高い場合には、前記勾配切り替わり地点で前記推奨車速となるために必要な減速加速度の大きさに応じた変速比となるように前記自動変速機構を制御して減速動作を行う減速制御手段を備える構成とすると好適である。
【0010】
これにより、各地点での地点推奨車速に対する実車速の差が大きく、実車速が制御判定車速より高い場合には、勾配切り替わり地点で推奨車速となるために必要な減速加速度の大きさに応じて自動変速機構が制御されることになるので、勾配切り替わり地点において実車速が推奨車速に近づくように適切に自動変速機構の減速動作を行わせることができる。
また、前記勾配切り替わり地点までの間の道路勾配が下り勾配であるときには、自動変速機構の減速動作が制限されず、勾配切り替わり地点で推奨車速となるために必要な減速加速度の大きさに応じて自動変速機構が制御されることになるので、勾配切り替わり地点において実車速が推奨車速に近づくように適切に自動変速機構の減速動作を行わせることができる。
【0011】
また、前記地点推奨車速演算手段は、車両位置から前記勾配切り替わり地点までの間の各地点での車速を規定する線であって、前記勾配切り替わり地点で前記推奨車速と一致し、前記各地点での減速量が所定の推奨減速量以下となる推奨減速線を演算し、該推奨減速線に基づいて前記地点推奨車速を決定し、前記制御判定車速演算手段は、前記推奨減速線よりも高い車速を規定する線であって、前記勾配切り替わり地点までの距離が長いほど前記推奨減速線との車速差が大きい制御判定減速線を演算し、該制御判定減速線に基づいて前記制御判定車速を決定する構成とすると好適である。
【0012】
これにより、車両位置から前記勾配切り替わり地点までの間の各地点での減速量が所定の推奨減速量以下となるようにしつつ、各地点での地点推奨車速を適切に決定することができる。また、前記勾配切り替わり地点までの距離が長いほど前記地点推奨車速との差が大きくなるように、制御判定車速を適切に決定することができる。
【0013】
また、前記推奨減速線は、前記各地点での車両の減速加速度が所定の推奨減速加速度となる車速を規定する線とすることができる。
これにより、勾配切り替わり地点で推奨車速となるように所定の推奨減速加速度で減速を行った場合における、自車位置から勾配切り替わり地点までの間の各地点での理想的な車速を適切に定めることができる。
【0014】
またこの際、前記制御判定減速線は、前記推奨減速加速度よりも大きい減速加速度となる車速を規定する線とすることができる。
これにより、前記推奨減速加速度を基準として、勾配切り替わり地点までの距離が長いほど前記推奨減速線との車速差が大きい制御判定減速線を適切に定めることができる。
【0015】
また、前記推奨減速線は、前記各地点での車両の速度減少率が所定の推奨速度減少率となる車速を規定する線とすることもできる。
これにより、勾配切り替わり地点で推奨車速となるように所定の推奨速度減少率で減速を行った場合における、自車位置から勾配切り替わり地点までの間の各地点での理想的な車速を適切に定めることができる。
【0016】
また、前記制御判定減速線は、前記勾配切り替わり地点までの距離に比例する車速幅を前記推奨減速線に規定される前記各地点での車速に加算してなる構成としても好適である。
これにより、前記推奨減速線に規定される車速に対する車速幅を基準として、勾配切り替わり地点までの距離が長いほど前記推奨減速線との車速差が大きい制御判定減速線を適切に定めることができる。
【0017】
また、前記勾配切り替わり地点より先の道路形状に応じて減速制御の目標点である目標減速点を決定する目標減速点決定手段と、前記目標減速点での推奨車速である第一推奨車速を決定する第一推奨車速決定手段と、を備え、前記勾配切り替わり地点での推奨車速を第二推奨車速とし、該第二推奨車速を決定する前記推奨車速決定手段は第二推奨車速決定手段とし、該第二推奨車速決定手段は、前記第一推奨車速と前記勾配切り替わり地点から前記目標減速点までの距離とに基づいて前記第二推奨車速を決定する構成とすると好適である。
【0018】
この構成によれば、車両の進行方向に道路の勾配切り替わり地点が存在する場合に、当該勾配切り替わり地点より先の道路形状に応じて目標減速点を決定するとともに前記目標減速点での推奨車速である第一推奨車速を決定する。更に、前記目標減速点で前記第一推奨車速となるための勾配切り替わり地点での第二推奨車速を決定する。そして、勾配切り替わり地点での第二推奨車速に基づいて上記制御を行うので、勾配切り替わり地点より先の道路形状に合わせて適切に減速を行うことができるように、勾配切り替わり地点に到達するまでの自動変速機構の変速制御を行うことができる。したがって、勾配切り替わり地点の周辺においても当該勾配の切り替わりを考慮して適切な自動変速機構の変速制御を行うことができる。
【0019】
また、前記道路情報取得手段は、前記勾配切り替わり地点の情報として、上り勾配と下り勾配との切り替わり地点の情報を取得する構成とすると好適である。
【0020】
このとき、勾配切り替わり地点までの道路の勾配が上り勾配である場合には、勾配切り替わり地点より先の道路は下り勾配であることになり、そのような勾配切り替わり地点に到達するまでの上り勾配において自動変速機構の減速動作を適切に制限することになる。したがって、上り勾配の後に下り勾配があり、この下り勾配の道路形状に応じて減速が必要な場合に、上り勾配の領域で大きな減速制御が入ることを防止でき、運転者に違和感を与えることを防止できる。
【0021】
また、前記車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、道路上の各地点の勾配情報を含む道路情報が格納された道路情報データベースとを備え、前記道路情報取得手段は、前記位置情報取得手段により取得された位置情報に示される位置から前記進行方向の一定距離内の道路情報を前記道路情報データベースから取得する構成とすると好適である。
これにより、道路情報の取得のための演算処理負荷を軽減しつつ、適切に道路情報を取得することができる。
【0022】
本発明に係る車両の特徴構成は、上記特徴構成を備えた変速制御装置と、この変速制御装置により決定された変速比となるように制御される自動変速機構と、を備える点にある。
【0023】
この特徴構成によれば、車両は、自車位置から勾配切り替わり地点までの間の上り勾配の距離が長いほど、勾配切り替わり地点で推奨車速になるための理想的な減速線である前記推奨減速線に規定される車速に対する実車速の差が大きくても自動変速機構の減速動作を制限することになる。したがって、勾配切り替わり地点までの間の上り勾配において車両の減速動作が運転者の感覚に合致するように適切に制限されることになり、運転者に違和感を与えることを防止できる。一方、自車位置が勾配切り替わり地点に近づくほど、前記推奨減速線に規定される車速に対する実車速の差が少なくても自動変速機構の減速動作を許可するようになるので、勾配切り替わり地点において推奨車速に近くなるように適切に減速することができる。
【0024】
本発明に係る車両の変速制御方法の特徴構成は、車両の進行方向の道路情報を取得する道路情報取得工程と、前記道路情報取得工程により前記進行方向に存在する道路の勾配切り替わり地点の情報を取得した際に、前記勾配切り替わり地点での推奨車速を決定する推奨車速決定工程と、前記勾配切り替わり地点での推奨車速及び所定の減速量に基づいて、車両位置から前記勾配切り替わり地点までの間の各地点での車速を地点推奨車速として演算する地点推奨車速演算工程と、前記地点推奨車速よりも高い車速であって、前記勾配切り替わり地点までの距離が長いほど前記地点推奨車速との差が大きい制御判定車速を演算する制御判定車速演算工程と、前記勾配切り替わり地点までの道路の勾配が上り勾配であって、前記各地点での実車速が当該各地点での前記制御判定車速以下である場合に自動変速機構の減速動作を制限するための減速制限工程と、を備える点にある。
【0025】
この特徴構成によれば、自車位置から勾配切り替わり地点までの間の上り勾配の距離が長いほど、勾配切り替わり地点で推奨車速になるための各地点での地点推奨車速に対する実車速の差が大きくても自動変速機構の減速動作が制限されることになる。したがって、勾配切り替わり地点までの間の上り勾配において自動変速機構の減速動作が運転者の感覚に合致するように適切に制限されることになり、運転者に違和感を与えることを防止できる。
一方、自車位置が勾配切り替わり地点に近づくほど、各地点での地点推奨車速に対する実車速の差が少なくても自動変速機構の減速動作が許可されるようになるので、勾配切り替わり地点において推奨車速に近くなるように適切に自動変速機構の減速動作を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る変速制御装置1及びこれが搭載される車両2の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る変速制御装置1は、車両2に搭載され、自動変速機構3の変速制御を行う。以下に、この図1に従って、本実施形態に係る変速制御装置1の各部の構成について説明する。なお、この変速制御装置1の各機能部は、CPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウエア又はソフトウエア(プログラム)或いはその両方で実装されて構成されている。
【0027】
ロケーション部4は、GPS受信機5、方位センサ6、及び距離センサ7からの情報を取得する。ここで、GPS受信機5は、図示しないGPS衛星からの信号を受信する装置であり、受信した信号に基づいてGPS受信機5の位置(緯度及び経度)や日時等の各種情報を取得する。方位センサ6は、地磁気センサやジャイロセンサ、或いは、ハンドルの回転部に取り付けた光学的な回転センサや回転型の抵抗ボリューム、車輪部に取り付ける角度センサ等により構成され、自車両の方位を検知する。距離センサ7は、車輪の回転数を検知する車速センサや自車両の加速度を検知するヨー・Gセンサと、検知された加速度を2回積分する回路との組み合わせ等により構成され、自車両の移動距離を検知する。そして、ロケーション部4は、これらのGPS受信機5、方位センサ6及び距離センサ7から取得した情報に基づいて、公知の方法により自車両の位置及び方位を特定する演算を行う。そして、このロケーション部4により特定された自車両の位置及び方位は、自車位置情報及び自車方位情報として道路情報取得部8及びナビゲーション用演算処理部9に出力される。
本実施形態においては、このロケーション部4が、本発明における「位置情報取得手段」を構成する。
【0028】
道路情報取得部8は、ロケーション部4から出力された自車位置情報及び自車方位情報を取得し、これらの情報に基づいて地図データベース10から道路情報D1を取得する処理を行う。すなわち、道路情報取得部8は、車両2の進行方向の道路情報D1であって、自車位置情報に示される位置から予め設定された探索範囲内の道路情報D1を地図データベース10から取得する。ここで、探索範囲は、自車位置からの距離によって規定することとし、その距離は、例えば200〔m〕や1〔km〕等に設定することができる。
【0029】
地図データベース10には、道路情報D1を含む地図情報が格納されている。図2は、地図データベース10に格納されている地図情報の内容を示す説明図である。この図に示すように、ここでは、地図情報として、道路ネットワークレイヤX1、道路情報レイヤX2、背景レイヤX3が格納されている。この地図データベース10は、例えば、ハードディスクドライブ、DVD−ROMを備えたDVDドライブ、CD−ROMを備えたCDドライブ等のように、情報を記憶可能な記録媒体とその駆動手段とを有する装置をハードウエア構成として備えている。
本実施形態においては、この地図データベース10が、本発明における「道路情報データベース」を構成する。
【0030】
道路ネットワークレイヤX1は、道路間の接続情報を示すレイヤである。具体的には、緯度及び経度で表現された地図上の位置情報を有する多数のノードNの情報と、2つのノードNを連結して道路を構成する多数のリンクKの情報とを有して構成されている。また、各リンクKは、そのリンク情報として、道路の種別(高速道路、有料道路、国道、県道等の種別)やリンク長さ等の情報を有している。
道路情報レイヤX2は、道路ネットワークレイヤX1に関連付けられて格納され、道路の詳細な情報を示すレイヤである。具体的には、道路ネットワークレイヤX1に関連付けられた各ノードNの情報、及び2つのノードNの間(リンクK上)に配置されて緯度及び経度で表現された地図上の位置情報を有する多数の形状補完点Sの情報を有して構成されている。また、この道路情報レイヤX2に格納されている各ノードN及び各形状補完点Sの情報は、各ノードN及び各形状補完点Sの位置における道路の勾配情報D2及び幅員情報を有している。またこの他にも、この道路情報レイヤX2には、例えば道路のカント(バンク)や車線数等の各種情報が、各ノードN及び各形状補完点Sに関連付けて格納されている。なお、以下の説明においては、煩雑さを避けるためにノードN及び形状補完点Sの両方を含めてノードNと呼ぶこととし、特に断らない限り、ノードNというときには形状補完点Sも含むものとする。
背景レイヤX3は、道路ネットワークレイヤX1及び道路情報レイヤX2に関連付けられて格納され、道路及びその周辺に設けられた各種地物や背景等の情報を示すレイヤである。この背景レイヤX3に格納された情報は、ナビゲーション用演算処理部9による地図表示等に用いられる。
【0031】
上記道路情報取得部8は、地図データベース10から探索範囲内に含まれる各ノードNの位置情報、及び各ノードNに関連付けられて格納されている道路の勾配情報D2、道路の種別や幅員などの道路特性情報等を道路情報D1として取得する。また、道路情報取得部8は、ナビゲーション用演算処理部9において、マップマッチング、誘導経路の探索、自車位置表示、地図表示、経路案内等のナビゲーション装置としての処理を行うために必要な地図情報を地図データベース10から取得する処理も行う。そして、道路情報取得部8により取得された道路情報D1及びこれを含む地図情報は、ナビゲーション用演算処理部9へ出力される。
本実施形態においては、この道路情報取得部8が、本発明における「道路情報取得手段」を構成する。
【0032】
ナビゲーション用演算処理部9は、上記のとおり、ロケーション部4から自車位置情報及び自車方位情報を取得するとともに、この自車位置情報及び自車方位情報に基づいて道路情報取得部8により地図データベース10から道路情報D1を含む地図情報を取得する。そして、ナビゲーション用演算処理部9は、取得された地図情報に基づいて、公知の手法によるマップマッチングを行い、ロケーション部4から出力された自車位置情報が地図情報に含まれる道路上に位置し、自車方位情報が当該道路に沿った方向となるように修正を行う。また、ナビゲーション用演算処理部9は、マップマッチングにより修正された自車位置情報及び自車方位情報と、取得した地図情報とを用いて、地図上に自車マークを重ねて表示する自車位置表示、地図表示、自車位置と目的地とを結ぶ誘導経路を探索して案内する経路案内等を行うための演算処理を行う。ここでは、ナビゲーション用演算処理部9は、液晶モニタ等の表示装置11やスピーカ及びアンプ等の音声出力装置12等に接続されており、これらを用いて演算結果の表示や音声出力等を行う構成となっている。また、目的地の設定や検索等の入力操作は、表示装置11と一体的に設けられたタッチパネルや図示しないリモートコントローラ等により行われる。
【0033】
また、ナビゲーション用演算処理部9は、勾配切り替わり地点情報取得部13を備えている。この勾配切り替わり地点情報取得部13は、道路情報取得部8により取得した道路情報D1に基づいて、勾配切り替わり地点の有無及び勾配切り替わり地点の位置の情報を取得する処理を行う。本実施形態においては、勾配切り替わり地点情報として、上り勾配と下り勾配との切り替わり地点の情報を取得することとする。具体的には、勾配切り替わり地点情報取得部13は、道路情報取得部8により取得された自車位置から所定の探索範囲内の道路情報D1に含まれる各ノードNを順に特定ノードとし、当該特定ノードに対して車両2の進行方向の前後に隣接する2個のノードNに関連付けられている道路の勾配情報D2を取得する。そして、特定ノードの前後に隣接する2個のノードNの勾配情報D2の一方が上り勾配を示しており、他方が下り勾配を示している場合には、それらのノードNに挟まれた特定ノードを勾配切り替わり地点として認識する。また、この特定ノードの位置情報が、勾配切り替わり地点の位置情報となる。この勾配切り替わり地点の情報は、変速機構制御部14に出力される。
【0034】
なお、勾配切り替わり地点情報取得部13による勾配切り替わり地点の認識方法は、上記のものに限定されない。すなわち、例えば車両2の進行方向の前後に互いに隣接する2個のノードNについて、関連付けられている道路の勾配情報D2を取得する。そして、これらの隣接する2個のノードNの勾配情報D2の一方が上り勾配を示しており、他方が下り勾配を示している場合には、それらのノードNの中間地点のノードNが存在しない位置を勾配切り替わり地点として認識することも可能である。また、地図データベース10に格納されている道路情報D1として、前記特定ノードが勾配切り替わり地点であることを示す情報も予め格納しておき、勾配切り替わり地点情報取得部13は、この情報を抽出して取得することにより勾配切り替わり地点を認識する構成としてもよい。
【0035】
変速機構制御部14は、自動変速機構の変速制御を行う制御部である。ここでは、変速機構制御部14は、目標減速点決定部15、第一推奨車速決定部16、第二推奨車速決定部17、地点推奨車速演算部29、制御判定車速演算部30、減速制限部31、及び変速比決定部18を備えている。また、この変速機構制御部14には、入力軸回転数センサ19、車速センサ20、アクセルセンサ21及びブレーキセンサ22が接続されている。そして、変速機構制御部14は、ナビゲーション用演算処理部9から出力される道路情報D1と、入力軸回転数センサ19、車速センサ20、アクセルセンサ21及びブレーキセンサ22から出力される情報とに基づいて、自動変速機構3が適切な変速比となるように変速制御を行う。この変速機構制御部14による自動変速機構3の変速制御については、後に具体例に従って詳細に説明する。
【0036】
なお、本実施形態においては、この変速比決定部18及び変速機構制御部14が、本発明における「減速制御手段」を構成する。また、この変速機構制御部14の目標減速点決定部15が本発明における「目標減速点決定手段」を構成し、第一推奨車速決定部16が本発明における「第一推奨車速決定手段」を構成する。また、この変速機構制御部14の第二推奨車速決定部17が本発明における「推奨車速決定手段(第二推奨車速決定手段)」を構成し、地点推奨車速演算部29が本発明における「地点推奨車速演算手段」を構成し、制御判定車速演算部30が本発明における「制御判定車速演算手段」を構成し、減速制限部31が本発明における「減速制限手段」を構成する。
【0037】
自動変速機構3は、その入力軸3aが、トルクコンバータやクラッチ等の駆動力伝達機構23を介してエンジン24に接続されている。また、自動変速機構3は、その出力軸3bが、ディファレンシャルギヤ25を介して駆動輪26に接続されている。したがって、駆動力伝達機構23を介してエンジン24により回転駆動される入力軸3aの回転は、自動変速機構3により変速されて出力軸3bから出力され、ディファレンシャルギヤ25を介して駆動輪26に伝達される。
本実施形態においては、自動変速機構3として無段変速機構を用いることとする。この無段変速機構としては、例えばベルト式CVT(Continuously Variable Transmission)やトロイダル型CVT等が用いられる。
【0038】
入力軸回転数センサ19は、自動変速機構3の入力軸3aの回転数を検出するセンサである。車速センサ20は、自動変速機構3の出力軸3bの回転数を検出し、これに基づいて車速を検出するセンサである。アクセルセンサ21は、アクセルペダル27の開度を検出するセンサである。ブレーキセンサ22は、ブレーキペダル28の踏力を検出するセンサである。
【0039】
次に、本実施形態に係る変速制御装置1の動作について具体例に基づいて説明する。図3は、本実施形態に係る変速制御装置1の全体の制御動作を示すフローチャートであり、図4は、本実施形態に係る変速制御装置1による自動変速機構3の減速制限動作を示すフローチャートであり、図5は、本実施形態に係る変速制御装置1による自動変速機構3の変速制御の動作を示すフローチャートである。ここでは、図6に示すように、車両2の進行方向に道路Rの勾配が上り勾配から下り勾配に切り替わる勾配切り替わり地点Paがあり、この勾配切り替わり地点Paの先にカーブCがある場合を例として説明する。
【0040】
図3に示すように、本実施形態に係る変速制御装置1は、まず、ナビゲーション用演算処理部9において自車位置情報がマップマッチングにより修正された状態、すなわちマップマッチング中の状態か否かについて判断する。そして、自車位置情報がマップマッチング中でない場合には(ステップ#01:NO)、車両の進行方向の道路情報D1を取得することができないので以降の処理は行わない。自車位置情報がマップマッチング中である場合には(ステップ#01:YES)、ナビゲーション用演算処理部9は、自車位置情報を取得する(ステップ#02)。
【0041】
そして、ナビゲーション用演算処理部9は、道路情報取得部8により自車位置から所定の探索範囲内の道路情報D1を取得する(ステップ#03)。ここで取得された道路情報D1は、変速機構制御部14へ出力される。そして、変速機構制御部14は、目標減速点決定部15において、自車位置を基点とする減速制御の目標点である目標減速点Pbを決定する(ステップ#04)。
【0042】
図7は、目標減速点Pbの決定方法を示す図である。この図に示すように、自車位置を基点とする目標減速点Pbの決定に際しては、まず、探索範囲内の道路情報D1に含まれる各ノードNi(iは自然数)における推奨車速vbi(iは自然数)を決定する。ここで、推奨車速vbiは、各ノードNiでの道路Rの形状、具体的には道路Rの曲率半径に基づいて車両2に作用する旋回横加速度が所定の推奨横加速度となる車速に決定する。ここで、推奨横加速度は、車両2が安定して旋回することができ、運転者に不快感を与えないことを基準として定めることとし、例えば0.2〔G〕(Gは重力加速度)とすると好適である。図8は、道路Rの曲率半径と推奨車速との関係を表したマップを示す図である。このマップでは、道路Rの曲率半径が非常に小さい領域では一定の低い車速を規定しており、それ以外の領域では、道路Rの曲率半径に応じて旋回横加速度が推奨横加速度(ここでは0.2〔G〕)となる車速を規定している。各ノードNiにおける推奨車速vbiは、この図8に示すマップに従って決定される。ここで、各ノードNiでの道路Rの曲率半径は、各ノードNiの位置とその前後に隣接するノードNの位置を通る円を演算し、その円の半径を各ノードNiでの道路Rの曲率半径とすることにより算出する。
【0043】
また、自車位置での実車速Vは、車速センサ20により検出することができる。そして、この実車速Vと、自車位置から各ノードNiまでの距離Li(iは自然数)と、各ノードNiにおける推奨車速vbiとに基づいて、各ノードNiに対する必要減速加速度Gi(iは自然数)を算出する。具体的には、図7に示すように、自車位置から各ノードNiまでの距離Liの間に実車速Vから各ノードNiでの推奨車速vbiに減速するために必要な必要減速加速度Giを次の式(1)により算出する。
Gi=(V−vbi)/(2×Li)・・・(1)
なお、自車位置から各ノードNiまでの距離Liは、探索範囲内の道路情報D1に含まれる各ノードNの位置情報に基づいて、自車位置から各ノードNiまでの道路Rに沿った方向の距離(道なり距離)を算出することにより求める。
【0044】
そして、探索範囲内の各ノードNiの中で必要減速加速度Giの値が最大となるノードNiを目標減速点Pbとして決定する。なお、図7に示す例では、自車位置から各ノードN1、N2、N3(図6参照)までの車速の変化が3本の減速加速度曲線で示されている。ここで、各減速加速度曲線は必要減速加速度G1、G2及びG3に対応しており、減速加速度曲線の曲率が大きいほど、すなわち曲がり方がきついほど必要減速加速度が大きいことを示している。したがって、図7に示す例では、ノードN2に対する必要減速加速度G2が最大であり、よって、ノードN2が目標減速点Pbとなる。なお、図7に示す例では、3個のノードN1〜N3についてのみ演算を行っているが、実際にはこれ以上の数のノードNiが演算対象となる場合が多い。
【0045】
次に、変速機構制御部14の第一推奨車速決定部16において、目標減速点Pbでの推奨車速である第一推奨車速V1を決定する(ステップ#05)。ここで、第一推奨車速V1は、目標減速点Pbでの道路Rの曲率半径に基づいて車両2に作用する旋回横加速度が所定の推奨横加速度となる車速に決定する。したがって、この第一推奨車速V1の値は、上記図8に示すマップに従って決定した各ノードNiにおける推奨車速vbiのうち、目標減速点Pbについてのものに等しくなる。よって、図7に示す例では、ノードN2が目標減速点Pbとなっているので、第一推奨車速V1は、推奨車速vb2と等しくなる。
【0046】
次に、ナビゲーション用演算処理部9の勾配切り替わり地点情報取得部13は、取得した道路情報D1に基づいて自車位置から目標減速点Pbまでの間の勾配切り替わり地点Paの有無の情報を取得する(ステップ#06)。本実施形態においては、上記のとおり、各ノードNの前後のノードNにおける道路の勾配情報D2に基づいて上り勾配と下り勾配との切り替わり地点を勾配切り替わり地点Paとする。よって、図6に示す例では、車両2の進行方向における上り勾配から下り勾配に切り替わる地点が勾配切り替わり地点Paとなる。
【0047】
そして、探索範囲内の道路情報D1に勾配切り替わり地点Paが含まれている場合には(ステップ#07:YES)、勾配切り替わり地点Paの位置情報を取得する(ステップ#08)。取得された勾配切り替わり地点Paの位置情報は、変速機構制御部14へ出力される。
【0048】
次に、変速機構制御部14の第二推奨車速決定部17において、第一推奨車速V1と勾配切り替わり地点Paから目標減速点Pbまでの距離Lc(図6参照)とに基づいて勾配切り替わり地点Paでの推奨車速である第二推奨車速V2を決定する(ステップ#09)。本実施形態においては、第二推奨車速V2は、勾配切り替わり地点Paから目標減速点Pbまでの距離Lcを所定の推奨減速加速度で減速した場合に、目標減速点Pbにおいて第一推奨車速V1となる車速に決定する。ここで、距離Lcは、図6に示すように、探索範囲内の道路情報D1に含まれる各ノードNの位置情報に基づいて、勾配切り替わり地点Paから目標減速点Pbまでの道路Rに沿った方向の距離(道なり距離)を算出することにより求める。また、推奨減速加速度は、車両2が安定して減速することができ、運転者に不快感を与えないことを基準として定めることとし、例えば0.2〔G〕(Gは重力加速度)とすると好適である。
【0049】
図9は、推奨減速加速度(ここでは0.2〔G〕)で減速した場合の区間距離と車速との関係を表したマップを示す図である。第二推奨車速V2は、このマップを用いて決定することができる。すなわち、第一推奨車速V1及び勾配切り替わり地点Paから目標減速点Pbまでの距離Lcは既に定まっている。よって、図9に示すマップ上において第一推奨車速V1に対応する区間距離を表す横軸上の点を目標減速点Pbとし、その点から距離Lcだけ戻った点が勾配切り替わり地点Paとなる。そして、この勾配切り替わり地点Paに対応する車速が第二推奨車速V2となる。したがって、勾配切り替わり地点Paから目標減速点Pbまでの距離Lcが短いほど、第一推奨車速V1と第二推奨車速V2との差は小さくなる。
【0050】
次に、ナビゲーション用演算処理部9において、自車位置情報及び道路情報取得部8により取得した道路情報D1に含まれる各ノードNの勾配情報D2に基づいて、自車位置の道路勾配が上り勾配か否かについて判断する(ステップ#10)。この自車位置の道路勾配が上り勾配か否かの情報は、変速機構制御部14へ出力される。
【0051】
そして、自車位置の道路勾配が上り勾配である場合には(ステップ#10:YES)、変速機構制御部14の地点推奨車速演算部29において、勾配切り替わり地点Paでの第二推奨車速V2及び所定の減速量に基づいて、自車位置から勾配切り替わり地点Paまでの間の各地点での推奨車速を地点推奨車速として演算する(ステップ#11)。ここでは、地点推奨車速演算部29は、自車位置から勾配切り替わり地点Paまでの間の各地点での地点推奨車速を規定する推奨減速線M1の演算を行う。すなわち、この推奨減速線M1により規定される車速を各地点での地点推奨車速とする。図10は、減速制御線M1の演算結果の一例を示す図である。この推奨減速線M1は、自車位置から勾配切り替わり地点Paまでの間の各地点での車速を規定する線であって、勾配切り替わり地点Paで第二推奨車速V2と一致し、自車位置から勾配切り替わり地点Paまでの間の各地点での減速量が所定の推奨減速量以下となる減速線である。本実施形態においては、前記減速量として減速加速度を用いることとしている。すなわち、この推奨減速線M1は、車両位置から勾配切り替わり地点Paまでの間の各地点での減速加速度が所定の推奨減速加速度以下となる車速を規定する線としている。ここで、推奨減速加速度は、車両2が安定して減速することができ、運転者に不快感を与えないことを基準として定めることとし、例えば0.2〔G〕(Gは重力加速度)とすると好適である。なお、ここでは、減速制御線M1により規定される現在位置での地点推奨車速はV0である。
【0052】
次に、変速機構制御部14の制御判定車速演算部30において、地点推奨車速よりも高い車速であって、勾配切り替わり地点Paまでの距離が長いほど地点推奨車速との差が大きい制御判定車速を演算する(ステップ#12)。ここでは、制御判定車速演算部30は、自車位置から勾配切り替わり地点Paまでの間の各地点での制御判定車速を規定する制御判定減速線M2の演算を行う。すなわち、この制御判定減速線M2により規定される車速を各地点での制御判定車速とする。図11は、制御判定減速線M2の演算結果の一例を示す図である。制御判定減速線M2は、推奨減速線M1よりも高い車速を規定する線であって、勾配切り替わり地点Paまでの距離が長いほど推奨減速線M1との車速差が大きい減速線である。本実施形態においては、制御判定減速線M2は、推奨減速線M1を規定するための前記推奨減速線加速度よりも大きい第二減速加速度となる車速を規定する線としている。ここで、制御判定減速線M2により規定される現在位置での制御判定車速はVxである。そして、この制御判定減速線M2以下の車速域は、自動変速機構3による減速動作が制限される減速動作制限域A1となる。図11においては、減速動作制限域A1にはハッチングを施している。一方、この制御判定減速線M2より高い車速域は、自動変速機構3による減速動作が行われる減速制御域A2となる。したがって、前記第二減速加速度は、自動変速機構3の減速動作を制限する減速動作制限域A1が適切になることを基準として定める。本例では、前記推奨減速線加速度は0.2〔G〕であるので、これよりも大きい第二減速加速度としては、例えば0.25〔G〕等とすることができる。
【0053】
なお、この第二減速加速度は、自動変速機構3の減速動作を制限したい範囲に合わせて、前記推奨減速線加速度よりも大きい任意の値を設定することができる。また、図11に示す例では、制御判定減速線M2は勾配切り替わり地点Paにおいて車速V2と一致するように規定しているが、これに限定されるものではなく、勾配切り替わり地点Paにおいて車速V2よりも高い車速となるように規定することも好適な実施例の一つである。
また、制御判定減速線M2を規定する第二減速加速度を、例えば道路Rの勾配角度に基づいて変化する値とすることも好適な実施例の一つである。すなわち、上り勾配の間に運転者のブレーキ操作が行われる可能性や上り勾配の影響による減速の程度等は、上り勾配の角度によって変化するので、これに応じた減速加速度により制御判定減速線M2を規定することにより、運転者の感覚により一層合致する制御とすることが可能となる。
【0054】
次に、変速機構制御部14の減速制限部31において、車両2の現在位置での実車速Vが、制御判定減速線M2に規定される現在位置での制御判定車速Vx以下であるか否かについて判定する(ステップ#13)。そして、実車速Vが、制御判定減速線M2に規定される現在位置での制御判定車速Vx以下である場合、すなわち実車速Vが図11の減速動作制限域A1内にある場合には(ステップ#13:YES)、減速制限部31は、自動変速機構3の減速動作を制限するための処理を行う(ステップ#14)。
【0055】
図4は、ステップ#14の自動変速機構3の減速動作を制限する処理の具体的内容を示すフローチャートである。この図に示すように、減速制限部31は、まず、アクセルセンサ21により検出されるアクセル開度が閉状態か否かについて判断する(ステップ#21)。そして、アクセル開度が閉状態である場合には(ステップ#21:YES)、減速制限部31は自動変速機構3の減速動作を制限する決定をし、変速機構制御部14は自動変速機構3の変速比を現在の変速比に固定する制御を行う(ステップ#22)。一方、アクセル開度が閉状態でない場合、すなわち、運転者によりアクセルペダル27が踏まれている場合には(ステップ#21:NO)、運転者に減速の意思がないと判断することができるので、変速機構制御部14は、自動変速機構3に対して通常の走行時用の制御を行う(ステップ#23)。そして、このステップ#14の処理が終了した後はステップ#01へ戻る。
【0056】
一方、自車位置の道路勾配が上り勾配でない場合(ステップ#10:NO)、又は実車速Vが制御判定減速線M2に規定される現在位置での制御判定車速Vxより高い場合、すなわち実車速Vが図11の減速制御域A2内にある場合には(ステップ#13:NO)、減速制限部31は、自動変速機構3に減速動作を行わせることが必要と判断し、変速機構制御部14は、第二推奨車速V2を目標車速として自動変速機構3の変速制御を行う(ステップ#15)。この自動変速機構3の変速制御は、「変速制御(1)」とし、図5に示すフローチャートに基づいて後に詳細に説明する。その後、処理はステップ#01へ戻る。
【0057】
また、探索範囲内の道路情報D1に勾配切り替わり地点Paが含まれていない場合には(ステップ#07:NO)、変速機構制御部14は、ステップ#05により決定された第一推奨車速V1目標車速として自動変速機構3の変速制御を行う(ステップ#16)。ここで、道路情報D1に勾配切り替わり地点Paが含まれていない場合としては、自車位置が既に勾配切り替わり地点Paを通過した場合及び当初から探索範囲内の道路情報D1に勾配切り替わり地点Paが含まれていない場合の双方が含まれる。このステップ#16の自動変速機構3の変速制御は、「変速制御(2)」とし、図5に示すフローチャートに基づいて後に詳細に説明する。その後、自車位置情報に示される自車位置が目標減速点Pbを通過したか否かについて判断する(ステップ#17)。自車位置が目標減速点Pbを通過していない場合には(ステップ#17:NO)、処理はステップ#01へ戻る。そして、自車位置が目標減速点Pbを通過したときに(ステップ#17:YES)、処理は終了する。
【0058】
次に、自動変速機構3の変速制御について図5に示すフローチャートに基づいて説明する。この図に示すように、ステップ#15の「変速制御(1)」では、変速機構制御部14の変速比決定部18は、まず、第二推奨車速V2を目標車速として勾配切り替わり地点Paまでの必要減速加速度Gaを算出する(ステップ#31)。具体的には、自車位置情報に示される自車位置から勾配切り替わり地点Paまでの距離La(図6参照)と、勾配切り替わり地点Paでの推奨車速である第二推奨車速V2と、自車位置での車速である実車速V(図6参照)とに基づいて、自車位置から勾配切り替わり地点Paまでの距離Laの間に実速度Vから第二推奨車速V2となるために必要な必要減速加速度Gaを次の式(2)により算出する。
Ga=(V−V2)/(2×La)・・・(2)
なお、自車位置から勾配切り替わり地点Paまでの距離Laは、図6に示すように、道路情報D1に含まれる各ノードNの位置情報に基づいて、自車位置から勾配切り替わり地点Paまでの道路Rに沿った方向の距離(道なり距離)を算出することにより求める。
【0059】
次に、変速比決定部18は、自車位置での実車速Vと勾配切り替わり地点Paまでの必要減速加速度Gaとから自動変速機構3の入力軸3aの推奨回転数である推奨入力軸回転数を決定する(ステップ#32)。図12は、推奨入力軸回転数を決定するためのマップを示す図である。このマップにおいて、直線γmaxは自動変速機構3の変速比を最大に設定した場合(最も低速側の変速比に設定した場合)の自動変速機構3の入力軸回転数と車速との関係を示しており、直線γminは自動変速機構3の変速比を最小に設定した場合(最も高速側の変速比に設定した場合)の自動変速機構3の入力軸回転数と車速との関係を示している。また、線γ1は必要減速加速度が1〔G〕である場合の車速と推奨入力軸回転数との関係を示しており、線γ2は必要減速加速度が0.2〔G〕である場合の車速と推奨入力軸回転数との関係をしている。必要減速加速度が0.2〔G〕から1〔G〕の間にある場合には、適宜線γ1と線γ2との間の値が選択される。したがって、このマップによれば、自車位置での実車速Vと勾配切り替わり地点Paまでの必要減速加速度Gaとに応じた推奨入力軸回転数が決定される。この際、必要減速加速度が大きいほど、推奨入力軸回転数は高くなる。そして、推奨入力軸回転数が高いほど、後述するように、自動変速機構3の変速比が大きくなり、アクセル閉状態におけるエンジンブレーキが強く作用して減速することになる。ここで、車速は自動変速機構3の出力軸3bの回転数に比例しており、車速センサ20により検出される。なお、この図12のマップにおいて、横軸の車速及び縦軸の推奨入力軸回転数として示される数値は、一例であり、適宜変更することが可能である。
【0060】
次に、アクセルセンサ21により検出されるアクセル開度が閉状態か否かについて判断する(ステップ#33)。アクセル開度が閉状態でない場合、すなわち、運転者によりアクセルペダル27が踏まれている場合には(ステップ#33:NO)、運転者に減速の意思がないと判断することができるので、変速機構制御部14は、自動変速機構3に対して通常の走行時用の制御を行う(ステップ#34)。一方、アクセル開度が閉状態である場合には(ステップ#33:YES)、運転者に減速の意思があると判断することができる。そこで、変速比決定部18は、必要減速加速度Gaに応じてエンジンブレーキによる減速を行うべく、ステップ#32で決定された推奨入力軸回転数と、車速センサ20により検出される自動変速機構3の出力軸3bの回転数である実出力軸回転数とから、目標変速比を決定する(ステップ#35)。具体的には、次の式(3)により算出する。
(目標変速比)=(推奨入力軸回転数)/(実出力軸回転数)・・・(3)
【0061】
そして、変速比決定部18は、ステップ#35で決定した目標変速比に従って、自動変速機構3の変速比が目標変速比と一致するように自動変速機構3の変速制御を行う(ステップ#36)。これにより処理は終了する。
【0062】
この「変速制御(1)」では、推奨入力軸回転数が高いほど目標変速比は大きい値となり、目標変速比が大きいほどエンジンブレーキが強く作用するので、大きな減速加速度で減速することになる。そして、上記のとおり、推奨入力軸回転数は必要減速加速度に応じて決定されており、必要減速加速度は、第二推奨車速V2を目標車速して決定されているので、自動変速機構3の変速比が目標変速比と一致するように変速制御を行うことにより、車両2の実車速Vが、勾配切り替わり地点Paにおいて第二推奨車速V2に近づくように減速させる減速加速度を得ることができる。
【0063】
一方、ステップ#16の「変速制御(2)」では、変速機構制御部14の変速比決定部18は、まず、第一推奨車速V1を目標車速として目標減速点Pbまでの必要減速加速度Gbを算出する(ステップ#37)。具体的には、自車位置情報に示される自車位置から目標減速点Pbまでの距離Lb(図6参照)と、目標減速点Pbでの推奨車速である第一推奨車速V1と、自車位置での車速である実車速V(図6参照)とに基づいて、自車位置から目標減速点Pbまでの距離Lbの間に実速度Vから第一推奨車速V1となるために必要な必要減速加速度Gbを次の式(4)により算出する。
Gb=(V−V1)/(2×Lb)・・・(4)
なお、自車位置から目標減速点Pbまでの距離Lbは、図6に示すように、道路情報D1に含まれる各ノードNの位置情報に基づいて、自車位置から目標減速点Pbまでの道路Rに沿った方向の距離(道なり距離)を算出することにより求める。
【0064】
その後、処理はステップ#32へ進み、以降は上記「変速制御(1)」と同様の処理を行う。すなわち、変速比決定部18は、自車位置での実車速Vと目標減速点Pbまでの必要減速加速度Gbとから自動変速機構3の入力軸3aの推奨回転数である推奨入力軸回転数を決定する(ステップ#32)。この推奨入力軸回転数の決定は、図12に示されるマップに従って行う。次に、アクセルセンサ21により検出されるアクセル開度が閉状態か否かについて判断し(ステップ#33)、アクセル開度が閉状態でない場合には(ステップ#33:NO)、変速機構制御部14は、自動変速機構3に対して通常の走行時用の制御を行う(ステップ#34)。一方、アクセル開度が閉状態である場合には(ステップ#33:YES)、変速比決定部18は、必要減速加速度Gbに応じてエンジンブレーキによる減速を行うべく、ステップ#32で決定された推奨入力軸回転数と、車速センサ20により検出される自動変速機構3の出力軸3bの回転数である実出力軸回転数とから、目標変速比を決定する(ステップ#35)。この目標変速比は、上記の式(3)により算出する。そして、変速比決定部18は、決定した目標変速比に従って、自動変速機構3の変速比が目標変速比と一致するように自動変速機構3の変速制御を行う(ステップ#36)。これにより処理は終了する。
【0065】
以上の図3〜5のフローチャートに示す処理は、所定の時間間隔で繰り返し行われる。したがって、当初から探索範囲内の道路情報D1に勾配切り替わり地点Paが含まれていない場合を除けば、車両2がその勾配切り替わり地点Paを通過するまではステップ#08〜#15の処理が繰り返し行われることになる。そして、自車位置の道路勾配が上り勾配であって(ステップ#10:YES)、実車速Vが図11の制御判定減速線M2に規定される現在位置での制御判定車速Vx以下である場合(ステップ#13:YES)には、自動変速機構3の減速動作が制限される(ステップ#14)ので、車両2は減速されず、惰性で走行することになる。一方、自車位置の道路勾配が下り勾配である場合(ステップ#10:NO)、又は実車速Vが制御判定減速線M2に規定される現在位置での制御判定車速Vxより高い場合(ステップ#13:NO)には、勾配切り替わり地点Paでの推奨車速である第二推奨車速V2を目標車速として自動変速機構3の変速制御が行われ、車両2は減速される。
【0066】
ここで、実車速Vが制御判定減速線M2に規定される現在位置での制御判定車速Vxより高い場合(ステップ#13:NO)としては、自動変速機構3の減速動作が制限された結果(ステップ#14)として車両2が減速されないまま勾配切り替わり地点Paに近づくことにより、図11に示すように、制御判定減速線M2に規定される現在位置での制御判定車速Vxが低い値になり、実車速Vが現在位置での制御判定車速Vxを上回った場合も含まれる。すなわち、制御判定減速線M2は勾配切り替わり地点Paまでの距離が短くなるほど推奨減速線M1との車速差が小さくなるように設定されているので、勾配切り替わり地点Paから離れた位置で自動変速機構3の減速動作が制限されていた場合でも、上り勾配の影響やブレーキ操作等により減速されないまま勾配切り替わり地点Paに近づくと、最終的には第二推奨車速V2を目標車速とする減速動作が行われることになる。したがって、運転者に違和感を与えることを防止しつつ、最終的には車両2は適切な車速となるように制御される。
【0067】
そして、車両2が勾配切り替わり地点Paを通過した場合には、探索範囲内の道路情報D1に勾配切り替わり地点Paが含まれないことになる(ステップ#07:NO)。したがって、目標減速点Pbでの推奨車速である第一推奨車速V1を目標車速として自動変速機構3の変速制御が行われ、車両2は目標減速点Pbにおいて適切な車速となるように減速される。また、当初から探索範囲内の道路情報D1に勾配切り替わり地点Paが含まれていない場合にも、目標減速点Pbでの推奨車速である第一推奨車速V1を目標車速として自動変速機構3の変速制御が行われ、車両2は目標減速点Pbにおいて適切な車速となるように減速される。なお、図3〜5のフローチャートに示す処理が繰り返し行われる時間間隔は、例えば、10〜50ms程度とすることができる。
【0068】
また、図3〜5のフローチャートに示す処理は、所定の時間間隔で繰り返し行われることから、ステップ#15の「変速制御(1)」または、ステップ#16の「変速制御(2)」の処理を行う際に、道路Rの勾配角度によって自動変速機構3の変速制御に対する車両2の減速の程度が異なる場合であっても、実際の車両2の減速の程度に応じて実車速Vと目標車速である第一推奨車速V1又は第二推奨車速V2との差と、自車位置と勾配切り替わり地点Pa又は目標減速点Pbとの距離との関係が変化し、それに応じて必要減速加速度Ga又はGbも変化する。したがって、勾配角度によって異なる車両2の減速の程度に応じて、勾配切り替わり地点Pa又は目標減速点Pbにおいてと目標車速である第一推奨車速V1又は第二推奨車速V2となるように、適切に自動変速機構3の変速制御が行われることになる。本実施形態においては、特に上り勾配と下り勾配とで自動変速機構の変速制御に対する車両の減速の程度が大きく異なることから、上り勾配と下り勾配との切り替わり地点を勾配切り替わり地点Paとして制御を行うこととしている。
【0069】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態においては、推奨減速線M1の減速量を減速加速度とする場合について説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。すなわち、推奨減速線M1は勾配切り替わり地点Paにおいて当該地点での推奨車速である第二推奨車速V2となるように減速するための各地点での地点推奨車速を規定する線であればよい。したがって、例えば、図13に示すように、推奨減速線M1を、自車位置から勾配切り替わり地点Paまでの各地点での車両2の速度減少率が所定の推奨速度減少率となる車速を規定する線とすることも好適な実施形態の一つである。ここで、推奨速度減少率は、車両2が安定して減速することができ、運転者に不快感を与えないことを基準として定めることとし、例えば車両2が1m進む毎に1〔km/時〕減速する速度減少率とすると好適である。
【0070】
(2)また、上記実施形態においては、制御判定減速線M2も減速加速度により規定する場合について説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。すなわち、制御判定減速線M2は、推奨減速線M1よりも高い車速を規定し、勾配切り替わり地点Paまでの距離が長いほど推奨減速線M1との車速差が大きい減速線であればよい。したがって、例えば、図14に示すように、制御判定減速線M2を、勾配切り替わり地点Paまでの距離に比例する車速幅を推奨減速線M1に規定される各地点での地点推奨車速に加算してなる線とすることも好適な実施形態の一つである。ここで、勾配切り替わり地点Paまでの距離に比例する車速幅は、自動変速機構3の減速動作を制限する減速動作制限域A1が適切になることを基準として定めることとし、例えば勾配切り替わり地点Paまでの距離1m毎に0.4〔km/時〕増加する速度幅とすると好適である。
なお、図14に示す例では、減速量を速度減少率とする推奨減速線M1を基準とする場合について示したが、図10に示すように減速量を減速加速度とする推奨減速線M1を基準とし、勾配切り替わり地点Paまでの距離に比例する車速幅を推奨減速線M1に規定される各地点での地点推奨車速に加算してなる線を制御判定減速線M2とすることも好適な実施形態の一つである。
【0071】
(3)上記実施形態においては、自動変速機構3の減速動作を制限する処理として、自動変速機構3の変速比を固定する場合について説明したが、減速動作の制限の方法はこれに限定されるものではない。したがって、自動変速機構3の減速動作を制限する処理として、例えば、自動変速機構3の変速比が大きくなる側(低速側)に変更されることを禁止し、変速比が小さくなる側(高速側)に変更されることは許容する制御とすることも好適な実施形態の一つである。また、例えば、自動変速機構3の変速比が大きくなる側(低速側)に変更されることを、一定の範囲内まで許容するとともに当該範囲以上の変更を禁止する制御とすることも可能である。
【0072】
(4)上記実施形態においては、上り勾配と下り勾配との切り替わり地点を勾配切り替わり地点とする場合について説明したが、本発明に係る勾配切り替わり地点は、このようなものに限定されない。すなわち、本発明に係る勾配切り替わり地点としては、道路の勾配が切り替わることにより自動変速機構の変速制御が変化する点が対象となる。したがって、例えば、道路の勾配が予め定めた所定角度以上変化している点を勾配切り替わり地点とすることも好適な実施形態の一つである。
【0073】
(5)上記実施形態においては、自動変速機構3として無段変速機構を用いる場合について説明したが、自動変速機構3の構成はこれに限定されるものではなく、有段の変速機構を用いることも好適な実施形態の一つである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係る変速制御装置及びこれが搭載される車両の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施形態に係る変速制御装置の地図データベースに格納されている地図情報の内容を示す説明図
【図3】本発明の実施形態に係る変速制御装置の全体の制御動作を示すフローチャート
【図4】本発明の実施形態に係る変速制御装置による自動変速機構の減速制限動作を示すフローチャート
【図5】本発明の実施形態に係る変速制御装置による自動変速機構の変速制御の動作を示すフローチャート
【図6】本発明の実施形態に係る変速制御装置の制御動作の説明のための車両の進行方向の道路の状態の一例を示す図
【図7】本発明の実施形態に係る変速制御装置による目標減速点の決定方法を示す図
【図8】本発明の実施形態に係る変速制御装置に用いる道路の曲率半径と推奨車速との関係を表したマップを示す図
【図9】本発明の実施形態に係る変速制御装置に用いる第二推奨車速を決定するためのマップを示す図
【図10】本発明の実施形態に係る変速制御装置による減速制御線の演算結果の一例を示す図(第一の例)
【図11】本発明の実施形態に係る変速制御装置による制御判定減速線の演算結果の一例を示す図(第一の例)
【図12】本発明の実施形態に係る変速制御装置に用いる推奨入力軸回転数を決定するためのマップを示す図
【図13】本発明の実施形態に係る変速制御装置による減速制御線の演算結果の一例を示す図(第二の例)
【図14】本発明の実施形態に係る変速制御装置による制御判定減速線の演算結果の一例を示す図(第二の例)
【符号の説明】
【0075】
1:変速制御装置
2:車両
3:自動変速機構
4:ロケーション部(位置情報取得手段)
8:道路情報取得部(道路情報取得手段)
10:地図データベース(道路情報データベース)
13:勾配切り替わり地点情報取得部
14:変速機構制御部(減速制御手段)
15:目標減速点決定部(目標減速点決定手段)
16:第一推奨車速決定部(第一推奨車速決定手段)
17:第二推奨車速決定部(推奨車速決定手段・第二推奨車速決定手段)
18:変速比決定部(減速制御手段)
29:推奨減速線演算部(地点推奨車速演算手段)
30:制御判定減速線演算部(制御判定車速演算手段)
31:減速制限部(減速制限手段)
D1:道路情報
Lc:勾配切り替わり地点から目標減速点までの距離
M1:推奨減速線
M2:制御判定減速線
Pa:勾配切り替わり地点
Pb:目標減速点
V0:現在位置での地点推奨車速
V1:第一推奨車速
V2:第二推奨車速
Vx:現在位置での制御判定車速

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向の道路情報を取得する道路情報取得手段と、
前記道路情報取得手段により前記進行方向に存在する道路の勾配切り替わり地点の情報を取得した際に、前記勾配切り替わり地点での推奨車速を決定する推奨車速決定手段と、
前記勾配切り替わり地点での推奨車速及び所定の減速量に基づいて、車両位置から前記勾配切り替わり地点までの間の各地点での車速を地点推奨車速として演算する地点推奨車速演算手段と、
前記地点推奨車速よりも高い車速であって、前記勾配切り替わり地点までの距離が長いほど前記地点推奨車速との差が大きい制御判定車速を演算する制御判定車速演算手段と、
前記勾配切り替わり地点までの道路の勾配が上り勾配であって、前記各地点での実車速が当該各地点での前記制御判定車速以下である場合には、自動変速機構の減速動作を制限する減速制限手段と、
を備える車両の変速制御装置。
【請求項2】
前記勾配切り替わり地点までの道路の勾配が下り勾配である場合、又は当該勾配が上り勾配であっても前記各地点での実車速が当該各地点での前記制御判定車速より高い場合には、前記勾配切り替わり地点で前記推奨車速となるために必要な減速加速度の大きさに応じた変速比となるように前記自動変速機構を制御して減速動作を行う減速制御手段を備える請求項1に記載の車両の変速制御装置。
【請求項3】
前記地点推奨車速演算手段は、車両位置から前記勾配切り替わり地点までの間の各地点での車速を規定する線であって、前記勾配切り替わり地点で前記推奨車速と一致し、前記各地点での減速量が所定の推奨減速量以下となる推奨減速線を演算し、該推奨減速線に基づいて前記地点推奨車速を決定し、
前記制御判定車速演算手段は、前記推奨減速線よりも高い車速を規定する線であって、前記勾配切り替わり地点までの距離が長いほど前記推奨減速線との車速差が大きい制御判定減速線を演算し、該制御判定減速線に基づいて前記制御判定車速を決定する請求項1又は2に記載の車両の変速制御装置。
【請求項4】
前記推奨減速線は、前記各地点での車両の減速加速度が所定の推奨減速加速度となる車速を規定する線である請求項3に記載の車両の変速制御装置。
【請求項5】
前記推奨減速線は、前記各地点での車両の速度減少率が所定の推奨速度減少率となる車速を規定する線である請求項3に記載の車両の変速制御装置。
【請求項6】
前記制御判定減速線は、前記推奨減速加速度よりも大きい減速加速度となる車速を規定する線である請求項4に記載の車両の変速制御装置。
【請求項7】
前記制御判定減速線は、前記勾配切り替わり地点までの距離に比例する車速幅を前記推奨減速線に規定される前記各地点での車速に加算してなる請求項3から5の何れか一項に記載の車両の変速制御装置。
【請求項8】
前記勾配切り替わり地点より先の道路形状に応じて減速制御の目標点である目標減速点を決定する目標減速点決定手段と、前記目標減速点での推奨車速である第一推奨車速を決定する第一推奨車速決定手段と、を備え、
前記勾配切り替わり地点での推奨車速を第二推奨車速とし、該第二推奨車速を決定する前記推奨車速決定手段は第二推奨車速決定手段とし、該第二推奨車速決定手段は、前記第一推奨車速と前記勾配切り替わり地点から前記目標減速点までの距離とに基づいて前記第二推奨車速を決定する請求項1から7の何れか一項に記載の車両の変速制御装置。
【請求項9】
前記道路情報取得手段は、前記勾配切り替わり地点の情報として、上り勾配と下り勾配との切り替わり地点の情報を取得する請求項1から8の何れか一項に記載の車両の変速制御装置。
【請求項10】
前記車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、道路上の各地点の勾配情報を含む道路情報が格納された道路情報データベースとを備え、
前記道路情報取得手段は、前記位置情報取得手段により取得された位置情報に示される位置から前記進行方向の一定距離内の道路情報を前記道路情報データベースから取得する請求項1から9の何れか一項に記載の車両の変速制御装置。
【請求項11】
前記請求項1から10の何れか一項に記載の変速制御装置と、この変速制御装置により決定された変速比となるように制御される自動変速機構と、を備える車両。
【請求項12】
車両の進行方向の道路情報を取得する道路情報取得工程と、
前記道路情報取得工程により前記進行方向に存在する道路の勾配切り替わり地点の情報を取得した際に、前記勾配切り替わり地点での推奨車速を決定する推奨車速決定工程と、
前記勾配切り替わり地点での推奨車速及び所定の減速量に基づいて、車両位置から前記勾配切り替わり地点までの間の各地点での車速を地点推奨車速として演算する地点推奨車速演算工程と、
前記地点推奨車速よりも高い車速であって、前記勾配切り替わり地点までの距離が長いほど前記地点推奨車速との差が大きい制御判定車速を演算する制御判定車速演算工程と、
前記勾配切り替わり地点までの道路の勾配が上り勾配であって、前記各地点での実車速が当該各地点での前記制御判定車速以下である場合に自動変速機構の減速動作を制限するための減速制限工程と、
を備える車両の変速制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−307938(P2006−307938A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129946(P2005−129946)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】