説明

車両の無線通信システム

【課題】車両に設けられる2つの制御装置を通じて各別に行われる通信制御を通じて2つの通信機から無線信号をそれぞれ送信する場合であれ、無線通信システムとしての適切な動作を確保することのできる車両の無線通信システムを提供する。
【解決手段】この車両の無線通信システムは、スマート制御装置11e及びRFID制御装置12cによる通信制御を通じて送信機11a及びリーダライタ12aから無線信号を送信する車載装置10と携帯機20,21との間で無線信号の授受を行うことにより車両ドアのアンロックを行う。ここでは、送信機11aから送信される無線信号を受信する受信機12dを車載装置10に設ける。また、RFID制御装置12cは、受信機12dを通じて送信機11aから無線信号が送信されているか否かを監視しつつ、同無線信号が送信されていない期間にリーダライタ12aから無線信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機と車両との間の無線通信を通じて車両の各種制御を実行する車両の無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の無線通信システムの一つとして、例えば携帯機(電子キー)を所持したユーザが車両ドアに接近することにより車両ドアのアンロックなどが自動的に実行される、いわゆるスマートエントリシステムが周知である。このスマートエントリシステムでは、車両に搭載された送信機から例えば車両ドアの周辺に設定された通信エリアにリクエスト信号を送信する。また、このスマートエントリシステムでは、送信機から送信されるリクエスト信号を受信するとともに、受信したリクエスト信号に対してIDコード(識別コード)などの情報を含む応答信号を送信する携帯機をユーザが所持する。すなわち、携帯機を所持したユーザが通信エリアに進入することによって、同携帯機から応答信号が送信される。そしてこのシステムにおいて、携帯機から送信された応答信号は車両に搭載された受信機によって受信されるとともに、受信機は、受信した応答信号を車両に搭載された車載装置に伝達する。この車載装置は、伝達された応答信号に含まれるIDコードと自身に記憶されているIDコードとの照合を行い、この照合を通じて互いのIDコードが一致している旨を判断すると、車両ドアのアンロックを実行する。
【0003】
一方、上述した無線通信システムには、このようなスマートエントリシステムの他、例えばRFID(Radio Frequency Identification)技術を利用してユーザが所持する携帯機と車載装置との間で無線通信を行うことにより車両ドアのアンロックなどを実行する、いわゆるRFIDシステムもある。このRFIDシステムでは、ICチップやアンテナ、メモリなどの各種電子部品が組み込まれたRFタグを携帯機に内蔵するとともに、このRFタグのメモリに、上記IDコードなどの各種データを記憶させるようにしている。また、車載装置には、このRFタグに記憶されている各種データの読み込みや書き込みなどを無線通信を通じて行うリーダライタが設けられている。そして、このシステムでは、リーダライタから例えば車両のドアノブの周辺に設定された通信エリアにリクエスト信号を送信する。すなわち、この通信エリアに携帯機が進入することによって、同携帯機がリクエスト信号を受信する。ここで、上記上記RFタグが、例えば電池を内蔵しないパッシブタイプのものである場合、携帯機では、受信したリクエスト信号によってRFタグに電力が供給されて同RFタグが動作する。また、このリクエスト信号を介してRFタグにIDコードを要求する旨の指令が送信されて、RFタグは、この要求指令に基づき、内蔵するメモリに記憶されているIDコードを含む応答信号を生成してこれをリーダライタに送信する。車載装置では、送信された応答信号をリーダライタ介して受信すると、同応答信号に含まれるIDコードと同車載装置内のメモリに記憶されているIDコードとの照合を行い、この照合を通じて互いのIDコードが一致している旨を判断すると車両ドアのアンロックなどを実行する。
【0004】
ところで、このようなスマートエントリシステム及びRFIDシステムの双方を車両に搭載しようとする場合、それらのシステムで使用される無線通信が互いに干渉するおそれがあり、こうした無線通信の干渉に起因して各システムが正常に動作しなくなるおそれがある。具体的には、例えば送信機から送信されるリクエスト信号をリーダライタが受信してしまうような状況では、リーダライタの誤動作を招き、ひいてはRFIDシステムが正常に動作しなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、このような無線通信システムにあっては、例えば特許文献1に見られるように、送信機からリクエスト信号を送信している期間はリーダライタによる無線信号の受信を一時的に停止するようにしている。これにより、リクエスト信号の受信に基づくリーダライタの誤動作を防止することができるようになるため、各システムを適切に動作させることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−332547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の無線通信システムにあっては、スマートエントリシステム及びRFIDシステムの双方の動作を統括的に司る一つの制御装置を車両に搭載しているため、一方のシステムの通信状況に基づいて他方のシステムの通信制御を行うことは容易である。すなわち、このような一つの制御装置によって各システムを協働させることのできる構成であれば、上述のように送信機からリクエスト信号を送信している期間はリーダライタによる無線信号の受信を一時的に停止するといった制御を容易に行うことが可能である。
【0008】
一方、市場に出ている車両には、上述した2つのシステムのうち、スマートエントリシステムのみが搭載されているものが多い。そして、このようなスマートエントリシステムのみが搭載されている車両に上述したRFIDシステムを搭載する場合には、同システムに必要な装置、例えば上記リーダライタや、同リーダライタを通じた各種通信制御を実行するRFID制御装置などを後付けで車両に搭載することが考えられる。すなわちこの場合、車両には、スマートエントリシステムの通信制御を司るスマート制御装置と、RFIDシステムの通信制御を司るRFID制御装置とが併設されることとなる。
【0009】
ただし、このように各制御装置を併設すると、上述した特許文献1に記載のシステムと異なり、スマート制御装置が送信機を介してリクエスト信号を送信する送信制御と、RFID制御装置がリーダライタを介してリクエスト信号を送信する送信制御とがそれぞれ独立して行われる。このため、仮に送信機からリクエスト信号が送信されるタイミングとリーダライタからリクエスト信号が送信されるタイミングとが重複するようなことがあると、それぞれの無線信号が互いに干渉してしまい、例えば送信機から送信されたリクエスト信号を携帯機が受信することができないなどの通信障害が生じるおそれがある。そしてこのような通信障害が生じると、例えばスマートエントリシステムで専用に使用される携帯機しかユーザが所持していなかったような場合に、ユーザが車両ドアをアンロックすることができなくなるなど、無線通信システムとして要求される機能にも支障をきたしかねない。
【0010】
なお、このような課題は、スマートエントリシステムに後付けでRFIDシステムを搭載した車両の無線通信システムに限らず、これら2つのシステムが初めから併設されている車両の無線通信システムにも共通する課題である。
【0011】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両に設けられる2つの制御装置を通じて各別に行われる送信制御を通じて2つの通信機から携帯機に対してリクエスト信号をそれぞれ送信する場合であれ、無線通信システムとしての適切な動作を確保することのできる車両の無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両に設けられる第1及び第2の制御装置による送信制御を通じて第1及び第2の通信機から所定の周期をもって間欠的にリクエスト信号をそれぞれ送信する車載装置と、同リクエスト信号を受信したときに前記車載装置に対して応答信号を送信する携帯機とを有し、同応答信号を前記第1の通信機、あるいは前記第2の通信機で受信することにより車両制御にかかる各種処理が実行される車両の無線通信システムであって、前記車載装置には、前記第1の通信機から送信されるリクエスト信号を受信する受信機が設けられ、前記第2の制御装置は、前記受信機を通じて前記第1の通信機から前記リクエスト信号が送信されているか否かを監視しつつ、前記第1の通信機から前記リクエスト信号が送信されていない期間に前記第2の通信機から前記リクエスト信号を間欠的に送信することを要旨としている。
【0013】
同システムによるように、第1の通信機から送信されるリクエスト信号を受信する受信機を車載装置に設けることとすれば、第2の制御装置は、この受信機を通じて第1の通信機からリクエスト信号が送信されているか否かを監視することが可能となる。そして、第2の制御装置が、第1の通信機からリクエスト信号が送信されているか否かを監視しつつ、第1の通信機からリクエスト信号が送信されていない期間に第2の通信機からリクエスト信号を送信することとすれば、各通信機からそれぞれ送信されるリクエスト信号の干渉を回避することができるようになるため、携帯機が各通信機から送信されるリクエスト信号を適切に受信することができるようになる。このため、無線通信システムとしての適切な動作を確保することができるようになる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の無線通信システムにおいて、前記第2の制御装置は、前記第1の通信機から前記リクエスト信号が送信されていない期間に、前記第2の通信機と前記携帯機との間で前記リクエスト信号及び前記応答信号の授受を行うものであることを要旨としている。
【0015】
同システムによれば、携帯機から第2の通信機に送信される応答信号と、第1の通信機から送信されるリクエスト信号との干渉を回避することもできるため、携帯機から送信される応答信号を第2の通信機で適切に受信することができるようになる。このため、無線通信システムとしての適切な動作をより的確に確保することができるようになる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両の無線通信システムにおいて、前記第2の制御装置は、前記第1の通信機と前記携帯機との間で前記リクエスト信号及び前記応答信号の授受が行われていない期間に、前記第2の通信機から前記リクエスト信号を間欠的に送信するものであることを要旨としている。
【0017】
同システムによれば、携帯機から第1の通信機に送信される応答信号と、第2の通信機から送信されるリクエスト信号との干渉を回避することもできるため、携帯機から送信される応答信号を第1の通信機で適切に受信することができるようになる。このため、無線通信システムとしての適切な動作をより的確に確保することができるようになる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の車両の無線通信システムにおいて、前記第2の制御装置は、前記第1の通信機と前記携帯機との間で前記リクエスト信号及び前記応答信号の授受が行われていない期間に、前記第2の通信機と前記携帯機との間で前記リクエスト信号及び前記応答信号の授受を行うものであることを要旨としている。
【0019】
同システムによれば、上述した携帯機から第2の通信機に送信される応答信号と第1の通信機から携帯機に送信されるリクエスト信号との干渉、並びに携帯機から第1の通信機に送信される応答信号と第2の通信機から携帯機に送信されるリクエスト信号との干渉の双方を回避することができるため、無線通信システムとしての適切な動作をさらに的確に確保することができるようになる。
【0020】
そしてこの場合、具体的には、請求項5に記載の発明によるように、
・前記第2の通信機からの前記リクエスト信号の間欠的な送信が、前記第1の通信機が前記リクエスト信号を送信する際に要する時間を第1の送信時間とするとき、前記受信機を通じて前記リクエスト信号の受信を検知してから前記第1の送信時間が経過するまで待機した後に開始されるといった構成を採用すれば、第1の通信機からリクエスト信号が送信されていない期間に第2の通信機からリクエスト信号を送信する。
といった構成、あるいは、請求項6に記載の発明によるように、
・前記第2の通信機からの前記リクエスト信号の間欠的な送信が、前記第2の通信機が前記リクエスト信号を送信する際に要する時間を第2の送信時間と、また、前記第1の通信機から前記リクエスト信号が間欠的に送信される周期を第1の送信周期とするとき、前記受信機を通じて前記リクエスト信号の受信を検知してから前記第1の送信周期が経過するよりも前記第2の送信時間だけ前の時点、もしくはその時点よりも前の時点で停止される。
といった構成、あるいは、請求項7に記載の発明によるように、
・前記第2の通信機からの前記リクエスト信号の間欠的な送信が、前記第1の通信機と前記携帯機との間で前記リクエスト信号及び前記応答信号を授受する際に要する時間を第1の送受信時間とするとき、前記受信機を通じて前記リクエスト信号の受信を検知してから前記第1の送受信時間が経過するまで待機した後に開始される。
といった構成、あるいは、請求項8に記載の発明によるように、
・前記第2の通信機からの前記リクエスト信号の間欠的な送信が、前記第2の通信機と前記携帯機との間で前記リクエスト信号及び前記応答信号を授受する際に要する時間を第2の送受信時間と、また、前記第1の通信機から前記リクエスト信号が間欠的に送信される周期を第1の送信周期とするとき、前記受信機を通じて前記リクエスト信号の受信を検知してから前記第1の送信周期が経過するよりも前記第2の送受信時間だけ前の時点、もしくはその時点よりも前の時点で停止される。
といった構成を採用すれば、請求項1〜4に記載の発明の実現も容易となる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、請求項5に記載の車両の無線通信システムにおいて、前記第2の制御装置は、前記受信機を通じて前記リクエスト信号の受信を検知する際にその受信時間を計測し、同計測値から前記第1の送信時間を学習することを要旨としている。
【0022】
こうした無線通信システムにあっては、第1の通信機がリクエスト信号を送信する際に要する時間である第1の送信時間が第1の制御装置によって可変設定される場合があるため、この第1の送信時間を固定値として、例えば第2の制御装置が内蔵するメモリなどに予め記憶させておくことが難しいことがある。この点、上記システムによれば、このように第1の制御装置が第1の送信時間を可変設定したとしても、第2の制御装置は、これに対応して第1の送信時間を学習することができるため、第1の送信時間の変化に柔軟に対応しつつ、第2の通信機からリクエスト信号を送信する送信制御を適切に実行することができるようになる。
【0023】
請求項10に記載の発明は、請求項6又は8に記載の車両の無線通信システムにおいて、前記第2の制御装置は、前記受信機を通じて前記リクエスト信号の受信を検知する際にその検知する周期を計測し、同計測値から前記第1の送信周期を学習することを要旨としている。
【0024】
こうした無線通信システムにあっては、第1の通信機からリクエスト信号が送信される周期である第1の送信周期が第1の制御装置によって可変設定される場合もあるため、この第1の送信周期を固定値として、例えば第2の制御装置が内蔵するメモリなどに予め記憶させておくことが難しいこともある。この点、上記システムによれば、このように第1の制御装置が第1の送信周期を可変設定したとしても、第2の制御装置は、これに対応して第1の送信周期を学習することができるため、第1の送信周期の変化に柔軟に対応しつつ、第2の通信機からリクエスト信号を送信する送信制御を適切に実行することができるようになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかる車両の無線通信システムによれば、車両に設けられる2つの制御装置を通じて各別に行われる送信制御を通じて2つの通信機から携帯機に対してリクエスト信号をそれぞれ送信する場合であれ、無線通信システムとしての適切な動作を確保することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかる車両の無線通信システムの一実施形態についてそのシステム構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態の無線通信システムを搭載した車両の平面構造を示す平面図。
【図3】同実施形態の無線通信システムのRFID制御装置によるRFID用リクエスト信号を送信する制御の処理手順を示すフローチャート。
【図4】(a)〜(d)は、同実施形態の無線通信システムの動作例を示すタイミングチャート。
【図5】(a)〜(d)は、同実施形態の無線通信システムの変形例についてその動作例を示すタイミングチャート。
【図6】(a)〜(d)は、同実施形態の無線通信システムの他の変形例についてその動作例を示すタイミングチャート。
【図7】(a)〜(d)は、同実施形態の無線通信システムの他の変形例についてその動作例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明にかかる車両の無線通信システムを具体化した一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。図1は、本実施形態にかかる車両の無線通信システムのシステム構成をブロック図として示したものであり、また、図2は、同無線通信システムが搭載された車両の平面構造を示したものである。はじめに、これら図1及び図2を参照して、この無線通信システムの構成、動作を説明する。
【0028】
図1に示されるように、この無線通信システムでは、スマートエントリシステムで専用に使用される携帯機20と車両に搭載される車載装置10との間で、上述したスマートエントリシステムにかかる各種通信制御が実行される。また、この無線通信システムでは、ユーザによって携帯電話として使用される携帯機21の内部にRFタグ21aが内蔵されており、同RFタグ21aと車載装置10との間で、上述したRFIDシステムに基づく各種通信制御が実行される。なお、このRFタグ21aも、ICチップやメモリ、アンテナなど、RFID通信に必要な各種電子部品が埋め込まれたものである。また、このRFタグ21aは、電池を内蔵することなく、車載装置10から送信される無線信号(無線電波)から電源電圧を得ることで動作する、いわゆるパッシブタイプのものである。
【0029】
一方、車載装置10には、第1の通信機として、送信アンテナ11bを介してスマート用リクエスト信号Ssrを送信する送信機11aとともに、上記携帯機20から送信されるスマート用応答信号Ssqを受信アンテナ11dを介して受信する受信機11cが設けられている。ちなみに、図2に示されるように、送信アンテナ11bは、車両のドアノブ16の内部に収容されており、また、受信アンテナ11dは、車両の内部に配設されている。これらのうち、前者の送信アンテナ11bは、車両ドアの周辺に設定された通信エリアAに所定の信号強度のスマート用リクエスト信号Ssrを送信する部分として機能する。そして、図1に示されるように、この車載装置10には、マイクロコンピュータを中心に構成される第1の制御装置としてのスマート制御装置11eが設けられており、このスマート制御装置11eが、送信機11aによる上記スマート用リクエスト信号Ssrの送信制御、並びに受信機11cを介して受信されるスマート用応答信号Ssqの処理を統括的に実行する。
【0030】
また、車載装置10には、例えば車両ドアのロック/アンロックを実行するためのドアロックアクチュエータや車載エンジンなどの制御対象14を制御する車両制御装置13も設けられている。この車両制御装置13は、例えばCAN(Controller Area Network)などの車内LAN15によって上記スマート制御装置11eと接続されており、これらの制御装置は車内LAN15を通じて各種データの授受を行う。
【0031】
さらに、この車載装置10には、上記携帯機21とRFID通信方式で無線通信を行うためのRFID装置12が後付けで搭載されており、このRFID装置12も、端子12gを介して車内LAN15に接続されている。このRFID装置12には、第2の通信機として、RFIDアンテナ12bを介してRFID用リクエスト信号Srrを送信するとともに、上記携帯機21から送信されるRFID用応答信号Srqを受信するリーダライタ12aが設けられている。ちなみに、図2に示されるように、RFIDアンテナ12bも、車両のドアノブ16の内部に収容されており、同ドアノブ16の近傍に設定された通信エリアB、すなわち上記通信エリアAよりも狭いエリアに所定の信号強度のRFID用リクエスト信号Srrを送信する。そして、図1に示されるように、このRFID装置12には、マイクロコンピュータを中心に構成される第2の制御装置としてのRFID制御装置12cが設けられており、このRFID制御装置12cが、リーダライタ12aによるRFID用リクエスト信号Srrの送信制御、並びに同リーダライタ12aを通じて受信されるRFID用応答信号Srqの処理を統括的に実行する。また、このRFID制御装置12cは、上記端子12gを介して接続される車内LAN15を通じてスマート制御装置11e及び車両制御装置13と各種データの授受を行う。
【0032】
そして、この無線通信システムでは、車載装置10と携帯機20との間の無線通信をポーリング方式で行うようにしている。すなわち、上記送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrを所定の周期をもって間欠的に通信エリアAに送信するとともに、この通信エリアAにユーザが所持する携帯機20が進入したときに車載装置10と携帯機20との間で信号授受が実行される。具体的には、まず、送信機11aから送信されたスマート用リクエスト信号Ssrが携帯機20によって受信されるとともに、携帯機20では、スマート用リクエスト信号Ssrの受信に基づき、内蔵するメモリに記憶されているIDコードを含むスマート用応答信号Ssqを生成してこれを車載装置10に送信する。このようにスマート用応答信号Ssqが送信されることにより、上記受信機11cでは、これを受信アンテナ11dを介して受信するとともに、このスマート用応答信号Ssqを上記スマート制御装置11eに伝達する。これにより、スマート制御装置11eでは、伝達されたスマート用応答信号Ssqに含まれるIDコードと同制御装置11eが内蔵するメモリに予め記憶されているIDコードとの照合を行う。そして、この照合を通じて互いのIDコードが一致することを条件に携帯機20の認証が成立した旨を判断して、車両ドアをアンロックする旨の指令を上記車内LAN15を介して車両制御装置13に伝達する。車両制御装置13では、こうして車両ドアをアンロックする旨の指令が伝達されると、制御対象14であるドアロックアクチュエータを駆動させて車両ドアのアンロックを実行する。
【0033】
一方、同無線通信システムでは、車載装置10と携帯機21との間の無線通信もポーリング方式で行うようにしている。すなわち、上記リーダライタ12aからRFID用リクエスト信号Srrを所定の周期をもって間欠的に通信エリアBに送信するとともに、この通信エリアBにユーザが所持する携帯機21が進入したときに車載装置10と携帯機21との間で信号授受が実行される。具体的には、まず、リーダライタ12aから送信されたRFID用リクエスト信号Srrが携帯機21によって受信されるとともに、携帯機21では、このRFID用リクエスト信号SrrによってRFタグ21aに電力が供給されて同RFタグ21aが動作する。また、このRFID用リクエスト信号Srrを介してRFタグ21aにIDコードを要求する旨の指令が送信されて、RFタグ21aは、この要求指令に基づき、内蔵するメモリに記憶されているIDコードを含むRFID用応答信号Srqを生成してこれを車載装置10に送信する。このようにしてRFID用応答信号Srqが送信されることにより、上記リーダライタ12aでは、これをRFIDアンテナ12bを介して受信するとともに、このRFID用応答信号SrqをRFID制御装置12cに伝達する。これにより、RFID制御装置12cでは、伝達されたRFID用応答信号Srqに含まれるIDコードと同制御装置12cが内蔵するメモリに予め記憶されているIDコードとの照合を行う。そして、この照合を通じて互いのIDコードが一致することを条件に携帯機21の認証が成立した旨を判断して、車両ドアをアンロックする旨の指令を上記端子12g及び車内LAN15を介して車両制御装置13に伝達する。車両制御装置13では、こうして車両ドアをアンロックする旨の指令が伝達されたときにも、制御対象14であるドアロックアクチュエータを駆動させて車両ドアのアンロックを実行する。
【0034】
ところで、このような無線通信システムにあっては、スマート制御装置11eがスマート用リクエスト信号Ssrを送信する制御と、RFID制御装置12cがRFID用リクエスト信号Srrを送信する制御とがそれぞれ独立して行われるため、各無線信号が重複して送信されることがある。一方、スマート用リクエスト信号Ssrの周波数は、一般に、LF帯の周波数(約130[kHz])に、また、RFID用リクエスト信号Srr及び応答信号Srqの周波数は、一般に、13.56[MHz]に設定されており、各無線信号は互いに干渉し易い周波数を有している。このため、上述のように、スマート用リクエスト信号Ssr及びRFID用リクエスト信号Srrが重複して送信されるようなことがあると、各無線信号が互いに干渉して通信障害が生じるおそれがある。具体的には、例えば携帯機20を所持したユーザが上記通信エリアAに進入したときに、上記送信機11a及びリーダライタ12aからスマート用リクエスト信号Ssr及びRFID用リクエスト信号Srrが同時に送信されたとする。このとき、携帯機20で受信されるスマート用リクエスト信号Ssrの信号強度よりもRFID用リクエスト信号Srrの信号強度の方が強い場合には、携帯機20ではスマート用リクエスト信号Ssrを受信することができなくなるおそれがある。なお、このような通信障害は、携帯機20が上記通信エリアBに近づくほど生じやすくなる。
【0035】
また、上述した無線通信システムにあっては、送信機11aの送信アンテナ11b、及びリーダライタ12aのRFIDアンテナ12bが共にドアノブ16の内部に配設されているため、互いに近接している。このため、送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrが送信されるタイミングと、携帯機21からリーダライタ12aにRFID用応答信号Srqが送信されるタイミングとが重複してしまうようなことがあるときにも、各無線信号が互いに干渉し、リーダライタ12aでRFID用応答信号Srqを受信することができなくなるおそれがある。
【0036】
そして、こういった通信障害が生じると、ユーザが車両ドアをアンロックすることができなくなるといった不都合が生じてしまい、無線通信システムとして要求される機能にも支障をきたしかねない。
【0037】
なお、スマート用リクエスト信号Ssr及びRFID用リクエスト信号Srrの干渉を回避するために、以下のような方法を採用することも考えられる。すなわち、送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrを送信する度に、その旨をスマート制御装置11eが車内LAN15を介してRFID制御装置12cに逐次通知するようにする。そして、RFID制御装置12cは、車内LAN15を介して通知される情報に基づいて、スマート用リクエスト信号Ssrが送信されるタイミングと干渉しないタイミングでRFID用リクエスト信号Srrを送信するといった方法である。しかしながら、このような方法を採用した場合には、車内LAN15に流れる情報量が大きくなりすぎるため、例えば車内LAN15に接続される他のシステムの通信遅延などの問題が生じ、現実的ではない。
【0038】
そこで、図1に示されるように、本実施形態の無線通信システムでは、送信機11aから送信されるスマート用リクエスト信号Ssrを受信アンテナ12eを介して受信する受信機12dを車載装置10に、より具体的には上記RFID装置12に設けるようにしている。ちなみに、図2に示されるように、受信アンテナ12eは、例えば車両ドアの内部などに設けられている。また、受信機12dは、スマート用リクエスト信号Ssrと同等の周波数帯域、すなわちLF帯の周波数(約130[kHz])を有する無線電波を受信するとともに、受信した無線電波の電波強度を、内蔵するRSSI回路12fを通じて検出する。一方、この無線通信システムでは、この受信機12dの検出信号をRFID制御装置12cに取り込むようにしている。そして、RFID制御装置12cでは、受信機12dを通じて検出される無線電波の電波強度に基づいて送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrが送信されているか否かを監視しつつ、スマート用リクエスト信号Ssrが送信されていない期間に、リーダライタ12aと携帯機21との間でRFID用リクエスト信号Srr及び応答信号Srqの授受を行う。
【0039】
図3は、RFID制御装置12cを通じて実行されるRFID用リクエスト信号Srrを送信する制御についてその手順をフローチャートとして示したものである。なお、この図3に示される処理は、実際には所定の演算周期をもって繰り返し実行される。
【0040】
同図3に示されるように、この制御では、はじめに、上記送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrが送信されているか否かが判断される(ステップS1)。具体的には、上記受信機12dを通じて検出される無線電波の電波強度が所定の強度以上であることをもって送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrが送信されている旨が判断される。そして、送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrが送信されている旨が判断された場合には(ステップS1:YES)、送信機11aがスマート用リクエスト信号Ssrを送信する際に要する送信時間S1よりも余裕時間α1だけ長い時間P1(=S1+α1)だけ待機する(ステップS2)。具体的には、ステップS1でスマート用リクエスト信号Ssrの送信が検知された時点からの経過時間がRFID制御装置12cの内部タイマを通じて計測されるとともに、この経過時間が上記待機時間P1に達するまで待機する。なお、送信時間S1及び余裕時間α1の各値は、RFID制御装置12cに内蔵されるメモリに記憶されている。その後、続くステップS3の処理として、RFID用リクエスト信号Srrがリーダライタ12aから送信周期T2をもって間欠的に送信されるとともに、スマート用リクエスト信号Ssrの送信が検知されてから一定時間が経過したか否かが判断される(ステップS4)。具体的には、送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrが間欠的に送信される周期をT1、リーダライタ12aと携帯機21との間で上記RFID用リクエスト信号Srr及び応答信号Srqを授受する際に要する時間をS2、余裕時間をα2とするとき、上記内部タイマを通じて計測される経過時間が一定時間P2(=T1−(S2+α2))に達したことをもって、一定時間が経過した旨が判断される。なお、送信周期T1,T2、送受信時間S2、並びに余裕時間α2の各値も、RFID制御装置12cに内蔵されるメモリに記憶されている。そして、上記ステップS3のRFID用リクエスト信号Srrの間欠送信処理は、スマート用リクエスト信号Ssrの送信が検知されてから一定時間が経過していない期間(ステップS4:NO)に限って継続される。そして、一定時間が経過した場合には(ステップS4:YES)、上記リーダライタ12aからのRFID用リクエスト信号Srrの送信を中止し(ステップS5)、RFID制御装置はこの一連の処理を終了する。
【0041】
図4(a)〜(d)は、こうした制御に基づく無線通信システムの動作例として、送信機11a、受信機11c、受信機12d、及びリーダライタ12aで送受信される無線信号の推移を示したものであり、以下、同図4(a)〜(d)を参照して、この無線通信システムの動作を詳述する。なお、図4(b)では、スマート用リクエスト信号Ssrを携帯機20が受信したとするときに同携帯機20から送信されるスマート用応答信号Ssqを破線で示すとともに、図4(d)では、RFID用リクエスト信号Srrを携帯機21が受信したとするときに同携帯機21から送信されるRFID用応答信号Srqを破線で示している。また、同図4では、上記送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrが送信される第1の送信周期をT1で示すとともに、上記リーダライタ12aからRFID用リクエスト信号Srrが送信される第2の送信周期をT2で示している。さらに、同送信機11aがスマート用リクエスト信号Ssrを送信する際に要する第1の送信時間をS1で示すとともに、同リーダライタ12aと携帯機21との間で上記RFID用リクエスト信号Srr及び応答信号Srqを授受する際に要する第2の送受信時間をS2で示している。
【0042】
例えばいま、送信機11aから第1の送信周期T1をもってスマート用リクエスト信号Ssrが送信されているとするときに(図4(a))、時刻t1でこのスマート用リクエスト信号Ssrが受信機12dによって受信されたとする(図4(c))。このとき、時刻t1から上記待機時間P1(=S1+α1)だけ経過した時刻t2で、リーダライタ12aからのRFID用リクエスト信号Srrの間欠的な送信が開始される(図4(d))。このため、リーダライタ12aからのRFID用リクエスト信号Srrの間欠的な送信を開始する際に、同リーダライタ12aから最初に送信されるRFID用リクエスト信号Srrとスマート用リクエスト信号Ssrとの干渉を略完全に回避することもできるようになる。したがって、スマート用リクエスト信号Ssrを携帯機20で適切に受信することができるようになる。
【0043】
その後、上記スマート用リクエスト信号Ssrが受信機12dによって受信された時刻t1の時間から一定時間P2が経過した時点で、すなわち時刻t1から第1の送信周期T1が経過する時刻t4よりも所定時間(S2+α2)だけ前の時刻t3で、リーダライタ12aからのRFID用リクエスト信号の間欠的な送信が一旦中止される(図4(d))。このため、リーダライタ12aから最後に送信されるRFID用リクエスト信号Srrに対して携帯機21から同リーダライタ12aにRFID用応答信号Srqが送信されたとしても、同応答信号Srqと送信機11aから送信されるスマート用リクエスト信号Ssrとの干渉も回避することができるようにもなる。したがって、携帯機21から送信されるRFID用応答信号Srqをリーダライタ12aで受信することができないといった不都合を回避することができるようになる。換言すれば、携帯機21から送信されるRFID用応答信号Srqをリーダライタ12aで適切に受信することができるようになる。
【0044】
このように、本実施形態にかかる無線通信システムによれば、スマート用リクエスト信号SsrとRFID用リクエスト信号Srrとの干渉、並びに同じくスマート用リクエスト信号SsrとRFID用応答信号Srqとの干渉を略完全に回避することができるようになる。このため、無線通信システムとしての適切な動作を的確に確保することができるようになる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態にかかる車両の無線通信システムによれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)送信機11aから送信されるスマート用リクエスト信号Ssrを受信する受信機12dを車載装置10に設けるようにした。そして、RFID制御装置12cが、受信機12dを通じてスマート用リクエスト信号Ssrの受信を検知してから待機時間P1(=S1+α1)が経過するまで待機してから、リーダライタ12aからのRFID用リクエスト信号Srrの間欠的な送信を開始するようにした。これにより、RFID用リクエスト信号Srrとスマート用リクエスト信号Ssrとの干渉を略完全に回避することもできるようになるため、スマート用リクエスト信号Ssrを携帯機20で適切に受信することができるようになる。したがって、無線通信システムとしての適切な動作を確保することができるようになる。
【0046】
(2)受信機12dを通じてスマート用リクエスト信号Ssrの受信を検知してから一定時間P2(=T1−(S2+α2))が経過した時点でリーダライタ12aからのRFID用リクエスト信号Srrの送信を停止するようにした。これにより、RFID用応答信号Srqとスマート用リクエスト信号Ssrとの干渉を回避することができるようになるため、携帯機21から送信されるRFID用応答信号Srqをリーダライタ12aで適切に受信することができるようになる。このため、無線通信システムとしての適切な動作をより的確に確保することができるようになる。
【0047】
(3)送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrが送信されているか否かの監視を、受信機12dを通じて検出される無線電波の信号レベルに基づいて行うようにした。これにより、送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrが送信されているか否かを容易に監視することができるようになる。
【0048】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・携帯機20から送信されるスマート用応答信号Ssqの有する周波数によっては、同スマート用応答信号Ssqとリーダライタ12aから送信されるRFID用リクエスト信号とが互いに干渉する無線通信システムもある。そしてこのような無線通信システムにあっては、先の図4に示されるように、受信機11cでスマート用応答信号Ssqを受信するタイミングと、リーダライタ12aからRFID用リクエスト信号Srrが送信されるタイミングとが重複するようなことがあると、スマート用応答信号Ssqを受信機11cで適切に受信することができなくなるおそれがある。そこで、先の図4に対応する図として図5を示すように、送信機11a及び受信機11cと携帯機20との間でスマート用リクエスト信号Ssr及び応答信号Srqを授受する際に要する時間を第1の送受信時間S3とするとき、上記待機時間P1を(S3+α1)に設定するようにしてもよい。このような構成によれば、スマート用応答信号SsqとRFID用リクエスト信号Srrとの干渉を略完全に回避することができるため、携帯機20から送信されるスマート用応答信号Ssqを受信機11cで適切に受信することができるようになる。
【0049】
・上記実施形態では、送信機11aの送信アンテナ11bとリーダライタ12aのRFIDアンテナ12bとが互いに近接していたが、これに代えて、例えば送信アンテナ11bの配設位置を適宜変更することにより、送信アンテナ11bとRFIDアンテナ12bとを互いに離間させて配置するようにしてもよい。これにより、上述したRFID用応答信号Srqとスマート用リクエスト信号Ssrとの干渉を回避することができるようになる。そしてこのような無線通信システムにあっては、以下のような構成を採用することが有効である。すなわち、先の図4に対応する図として図6を、また、先の図5に対応する図として図7をそれぞれ示すように、リーダライタ12aがRFID用リクエスト信号Srrを送信する際に要する第2の送信時間をS4とするとき、上記一定時間P2を(T1−(S4+α2))に設定するようにしてもよい。このような構成を採用しても、図6に例示する構成であれば、上述した実施形態の(1)で示した効果を、また、図7に例示する構成であれば、この(1)で示した効果に加え、スマート用応答信号SsqとRFID用リクエスト信号Srrとの干渉を略完全に回避することができるといった効果を得ることはできる。
【0050】
・無線通信システムによっては、上記第1の送信時間S1や第1の送信周期T1がスマート制御装置11eによって可変設定される場合もあるため、これら第1の送信時間S1及び第1の送信周期T1を固定値としてRFID制御装置12cのメモリに予め記憶させておくことが難しいこともある。このため、RFID制御装置12cが受信機12dを通じてスマート用リクエスト信号Ssrの受信を検知する際にその受信時間を計測し、同計測値から第1の送信時間S1を学習するようにしてもよい。また、RFID制御装置12cが受信機12dを通じてスマート用リクエスト信号Ssrの受信を検知する際にその周期を計測し、同計測値から第1の送信周期T1を学習するようにしてもよい。このような構成であれば、スマート制御装置11eが第1の送信時間S1、あるいは第1の送信周期T1を可変設定したとしても、RFID制御装置12cはそれらの変化に柔軟に対応することができるようになる。
【0051】
・上記実施形態では、待機時間P1に対しては余裕時間α1を、また、一定時間P2に対しては余裕時間α2を設けるようにしたが、これらの余裕時間α1,α2を省略してもよい。余裕時間α1を省略すれば、RFID用リクエスト信号Srrの送信時期を早めることができるため、RFIDシステムの応答性を向上させることができるようになる。また、余裕時間α2を省略すれば、RFID用リクエスト信号Srrの送信回数を増やすことが可能となるため、この場合にも、RFIDシステムの応答性を向上させることができるようになる。
【0052】
・上記実施形態では、スマートエントリシステムで使用される携帯機20と、RFIDシステムで使用される携帯機21とが別体であったが、例えば携帯機20の機能を携帯機21に持たせることでこれらを一体にした携帯機を用いても良い。
【0053】
・上記実施形態では、本発明にかかる車両の無線通信システムを、スマートエントリシステムに後付けでRFIDシステムを搭載した車両の無線通信システムに適用するようにしたが、例えばスマートエントリシステム及びRFIDシステムの双方が初めから併設されている車両の無線通信システムであっても適用することは可能である。
【0054】
・上記実施形態では、送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrが送信されているか否かの判断を、受信機12dを通じて検出される無線電波の電波強度に基づいて行うようにした。これに代えて、例えば次のような方法を採用してもよい。まず、受信機12dでは、LF帯の無線電波を受信したときにこれをRFID制御装置12cに伝達する。RFID制御装置12cでは、この伝達されたLF帯の無線電波の信号解析を行うことにより、受信した無線電波がスマート用リクエスト信号Ssrであるか否かを判断する。そして、受信した無線電波がスマート用リクエスト信号Ssrである旨を判断したときに、送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrが送信されている旨を判断するようにしてもよい。こうした方法を採用すれば、送信機11aからスマート用リクエスト信号Ssrが送信されているか否かをより正確に判断することができるようになる。
【0055】
・上記実施形態では、本発明にかかる車両の無線通信システムを、スマートエントリシステム及びRFIDシステムが搭載された車両の無線通信システムに適用するようにした。これに代えて、例えば携帯機に内蔵されたトランスポンダと車載装置に搭載されたイモビライザとの間で無線通信を行うことにより車両ドアのアンロックを実行するトランスポンダシステム、及び上述したスマートシステムの双方が搭載される車両の無線通信システムに適用してもよい。また、スマートエントリシステム、RFIDシステム、及びトランスポンダシステムの3つのシステムが搭載される車両の無線通信システムに適用してもよい。要は、車両に設けられる2つの制御装置による通信制御を通じて2つの通信機から所定の周期をもって間欠的に無線信号を送信する車載装置と携帯機との間の無線通信を通じて車両制御にかかる各種処理を実行する車両の無線通信システムであれば、本発明にかかる車両の無線通信システムを適用することは可能である。
【0056】
・上記実施形態では、本発明にかかる車両の無線通信システムを、車両ドアのアンロックを行うための無線通信システムに適用するようにしたが、例えば車載エンジンの始動許可を行う無線通信システムに適用することも可能である。具体的には、送信機11a及びリーダライタ12aを車室内に配設した上で、送信機11a及びリーダライタ12aから車室内に設定された所定の通信エリアに上記スマート用リクエスト信号Ssr及びRFID用リクエスト信号Srrを送信する。そして、携帯機20、あるいは携帯機21が車室内の通信エリアに進入したときに、携帯機20,21と車載装置10との間で無線通信を行って同携帯機20,21の認証を行い、認証が成立したときに車載エンジンの始動許可を行う。さらに、車両ドアのアンロック、並びに車載エンジンの始動許可の双方を行う車両の無線通信システムに本発明にかかる無線通信システムを適用することも可能である。要は、車載装置10と携帯機20,21との間で無線信号を授受することにより車両制御にかかる各種処理を実行する車両の無線通信システムであればよい。
(付記)
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
【0057】
(イ)請求項1〜10のいずれか一項に記載の車両の無線通信システムにおいて、前記第1の通信機は、車両ドアの周辺に設定された通信エリア、あるいは車室内に設定された通信エリアに前記携帯機が進入することを条件に同携帯機と前記無線信号の授受を行うものであるとともに、前記第1の制御装置は、前記第1の通信機を通じて受信される前記携帯機から送信される無線信号に基づいて前記携帯機の認証を行うものであり、更に前記第2の通信機は、RFID通信方式で前記携帯機と前記無線信号の授受を行うものであるとともに、前記第2の制御装置は、前記第2の通信機を通じて受信される前記携帯機から送信される無線信号に基づいて同携帯機の認証を行うものであり、前記車載装置は、前記第1及び第2の制御装置を通じてそれぞれ行われる前記携帯機の認証に基づいて前記車両制御にかかる各種処理を実行することを特徴とする車両の無線通信システム。同システムによれば、車両ドアに周辺に設定された通信エリア、あるいは車室内に設定された通信エリアに携帯機が進入することを条件に車両制御にかかる各種制御を実行する、いわゆるスマートエントリシステムを第1の通信機及び第1の制御装置によって実現することができるようになる。また、車載装置と携帯機との無線通信をRFID通信方式で行うことにより車両制御にかかる各種制御を実行する、いわゆるRFIDシステムを第2の通信機及び第2の制御装置によって実現することができるようになる。ところで、このようにスマートエントリシステム及びRFIDシステムの双方が搭載されている無線通信システムにあっては、前述のように、各通信機から送信される無線信号が互いに干渉し易い。したがって、このような無線通信システムに、上述のシステムを適用することの意義は大きい。
【0058】
(ロ)付記イに記載の車両の無線通信システムにおいて、前記第1の通信機は、前記車両ドアの周辺に設定された通信エリアに前記携帯機が進入することを条件に前記携帯機と前記無線信号の授受を行うものであるとともに、前記第2の通信機は、車両のドアノブの周辺に設定された通信エリアに前記携帯機が進入することを条件にRFID通信方式で前記携帯機と前記無線信号の授受を行うものであり、前記車両制御にかかる各種処理が、車両ドアのアンロックを実行する処理であることを特徴とする車両の無線通信システム。車両制御にかかる各種処理として車両ドアのアンロックを実行する処理を行う場合、スマートエントリシステムでは、車両ドアの周辺に設定されたエリアで車載装置と携帯機との間の無線通信が、また、RFIDシステムでは、車両のドアノブの周辺に設定されたエリアで車載装置と携帯機との間の無線通信が行われることが多い。このため、各システムの通信機から送信される無線信号が互いに干渉し易いといった実情がある。したがって、こうしたシステムに、上述のシステムを適用することは有効である。
【0059】
(ハ)請求項1〜10、付記イ、及び付記ロのいずれか一項に記載の車両の無線通信システムにおいて、前記受信機は、前記第1の通信機から送信される無線信号と同等の周波数帯域を有する無線電波を受信するとともに、受信した無線電波の電波強度を検出するものであって、前記第1の通信機から前記無線信号が送信されているか否かの監視が、前記受信機を通じて検出される無線電波の電波強度に基づいて行われることを特徴とする車両の無線通信システム。同システムによれば、受信機を通じて受信される無線電波の電波強度を監視するだけで、第1の通信機から無線信号が送信されているか否かを監視することができるようになる。このため、第1の通信機から無線信号が送信されているか否かを容易に監視することができるようになるため、上述のシステムを容易に実現することができるようになる。
【符号の説明】
【0060】
A…通信エリア、B…通信エリア、Srq…RFID用応答信号、Srr…RFID用リクエスト信号、Ssq…スマート用応答信号、Ssr…スマート用リクエスト信号、10…車載装置、11a…送信機、11b…送信アンテナ、11c…受信機、11d…受信アンテナ、11e…スマート制御装置、12…RFID装置、12a…リーダライタ、12b…RFIDアンテナ、12c…RFID制御装置、12d…受信機、12e…受信アンテナ、12f…RSSI回路、12g…端子、13…車両制御装置、14…制御対象、15…車内LAN、16…ドアノブ、20,21…携帯機、21…携帯機、21a…RFタグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられる第1及び第2の制御装置による送信制御を通じて第1及び第2の通信機から所定の周期をもって間欠的にリクエスト信号をそれぞれ送信する車載装置と、同リクエスト信号を受信したときに前記車載装置に対して応答信号を送信する携帯機とを有し、同応答信号を前記第1の通信機、あるいは前記第2の通信機で受信することにより車両制御にかかる各種処理が実行される車両の無線通信システムであって、
前記車載装置には、前記第1の通信機から送信されるリクエスト信号を受信する受信機が設けられ、前記第2の制御装置は、前記受信機を通じて前記第1の通信機から前記リクエスト信号が送信されているか否かを監視しつつ、前記第1の通信機から前記リクエスト信号が送信されていない期間に前記第2の通信機から前記リクエスト信号を間欠的に送信する
ことを特徴とする車両の無線通信システム。
【請求項2】
前記第2の制御装置は、前記第1の通信機から前記リクエスト信号が送信されていない期間に、前記第2の通信機と前記携帯機との間で前記リクエスト信号及び前記応答信号の授受を行うものである
請求項1に記載の車両の無線通信システム。
【請求項3】
前記第2の制御装置は、前記第1の通信機と前記携帯機との間で前記リクエスト信号及び前記応答信号の授受が行われていない期間に、前記第2の通信機から前記リクエスト信号を間欠的に送信するものである
請求項1に記載の車両の無線通信システム。
【請求項4】
前記第2の制御装置は、前記第1の通信機と前記携帯機との間で前記リクエスト信号及び前記応答信号の授受が行われていない期間に、前記第2の通信機と前記携帯機との間で前記リクエスト信号及び前記応答信号の授受を行うものである
請求項1に記載の車両の無線通信システム。
【請求項5】
前記第2の通信機からの前記リクエスト信号の間欠的な送信が、前記第1の通信機が前記リクエスト信号を送信する際に要する時間を第1の送信時間とするとき、前記受信機を通じて前記リクエスト信号の受信を検知してから前記第1の送信時間が経過するまで待機した後に開始される
請求項1又は2に記載の車両の無線通信システム。
【請求項6】
前記第2の通信機からの前記リクエスト信号の間欠的な送信が、前記第2の通信機が前記リクエスト信号を送信する際に要する時間を第2の送信時間と、また、前記第1の通信機から前記リクエスト信号が間欠的に送信される周期を第1の送信周期とするとき、前記受信機を通じて前記リクエスト信号の受信を検知してから前記第1の送信周期が経過するよりも前記第2の送信時間だけ前の時点、もしくはその時点よりも前の時点で停止される
請求項1又は3に記載の車両の無線通信システム。
【請求項7】
前記第2の通信機からの前記リクエスト信号の間欠的な送信が、前記第1の通信機と前記携帯機との間で前記リクエスト信号及び前記応答信号を授受する際に要する時間を第1の送受信時間とするとき、前記受信機を通じて前記リクエスト信号の受信を検知してから前記第1の送受信時間が経過するまで待機した後に開始される
請求項3又は4に記載の車両の無線通信システム。
【請求項8】
前記第2の通信機からの前記リクエスト信号の間欠的な送信が、前記第2の通信機と前記携帯機との間で前記リクエスト信号及び前記応答信号を授受する際に要する時間を第2の送受信時間と、また、前記第1の通信機から前記リクエスト信号が間欠的に送信される周期を第1の送信周期とするとき、前記受信機を通じて前記リクエスト信号の受信を検知してから前記第1の送信周期が経過するよりも前記第2の送受信時間だけ前の時点、もしくはその時点よりも前の時点で停止される
請求項2又は4に記載の車両の無線通信システム。
【請求項9】
前記第2の制御装置は、前記受信機を通じて前記リクエスト信号の受信を検知する際にその受信時間を計測し、同計測値から前記第1の送信時間を学習する
請求項5に記載の車両の無線通信システム。
【請求項10】
前記第2の制御装置は、前記受信機を通じて前記リクエスト信号の受信を検知する際にその検知する周期を計測し、同計測値から前記第1の送信周期を学習する
請求項6又は8に記載の車両の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−97363(P2011−97363A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249305(P2009−249305)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】