説明

車両乗員保護手段を作動するための方法及び装置

本発明は、運転状態データを検出するセンサシステムと、衝突前にトリガされ、作動位置に移行することができる可逆的乗員保護手段(4)とを有する車両(1)における、乗員保護手段(4)を予防的にトリガするための方法及び装置に関する。本発明によれば、少なくとも1つの危機的な運転状態が発生する場合には乗員保護手段(4)をトリガする制御信号(SS)が起動され、前記危機的な運転状態がもはや存在せず、かつ少なくとも1つの検出された制御可能な運転操作を表す少なくとも1つの他の条件に従って、制御信号(SS)は起動解除され、それにより乗員保護手段の初期状態へのリセットが開始される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転状態データを感知するセンサシステムと、衝突前にトリガされ、作動位置に移行することができる可逆的な車両乗員保護手段とを有する車両における、特に可逆的な車両乗員保護手段を作動するための方法及び装置に関する。これに関連して、車両乗員保護手段をトリガするための制御信号が、危機的な運転状態又は危機的な運転状況が存在すると起動され、車両の危機的な状態が終了すると起動解除される。
【背景技術】
【0002】
危機的な運転状況又は運転状態は、例えば、車両の緊急制動操作、オーバステア又はアンダステア、例えば車両のスリップを意味する。そのような危機的な状況においては、車両乗員を保護するための予防措置が起動され、危険が過ぎたら再び起動停止される。危機的な状況を特定して予防措置を開始するための情報は、例えば、ブレーキアシスト又は車両運動ダイナミクス制御システムのセンサなどのセンサによって供給される。これらのシステムは、車両のスリップ又は緊急制動などの危機的な運転状況を早期に検出でき、例えば、可逆的シートベルト・プリテンショナーを予防的に作動させるために、フラグ又は状態ビットとして制御信号を生成又は設定できる。
【0003】
従来技術では、この点に関して特許文献1において、運転状態データを感知する運転状態センサシステムと、衝突前にトリガされ、作動位置に移行することができる可逆的な車両乗員保護手段とを有する自動車における、可逆的な車両乗員保護手段の作動方法が開示されている。これに関連して、「緊急制動」状態に対して運転状態データが監視され、「緊急制動」状態が検出される場合には車両乗員保護手段が作動される。データ処理装置が、「オーバステア」状態及び「アンダステア」状態をさらに検出する。データ処理装置が、「緊急制動状態」状態、「オーバステア」状態及び/又は「アンダステア」状態を検出すると、可逆的な車両乗員保護手段が作動される。危機的な運転状態の終了後には、作動された車両乗員保護システムは起動停止される。
【0004】
車両における安全性への要求が高まっており、危機的な運転状況における予防措置として制御可能な及び可逆的な車両乗員保護手段の数が増加するに従って、運転状態又は運転操作の分化した評価が必要となる。
【0005】
可逆的シートベルト・プリテンショナー作動用の制御信号は、危機的な運転状況が特定される場合に短期間のみ設定されるとしても、車両運動ダイナミクスと、シートベルト・プリテンショナーを解除するための物理的及び機械的な解除条件とが満たされて、関連する解除信号が設定されるまで、シートベルト・プリテンショナーは、引張られたままである。短期間のみ設定される可逆的シートベルト・プリテンショナー作動用の制御信号は、さらなる車両乗員保護手段を作動する、例えば車両の運動に関して動的であるシートを作動するのには不適切である。なぜなら、シートはリセット条件が満たされるまで続く継続的な作動を要するからである。
【0006】
【特許文献1】独国特許発明第101 21 386C1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車両乗員保護手段の信頼できて正確な制御を可能とする、冒頭に述べた種類の改良された方法及び装置を規定するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1において特定される特徴を有する方法によって達成される。装置に関しては、この目的は、本発明に従って請求項13の特徴によって達成される。
【0009】
本発明の有利な実施形態は従属請求項の主題である。
【0010】
本発明による方法は、特に、制御信号によって衝突前に起動され、作動位置に移行することができ、各危機的な運転状態が終了する場合にのみ、少なくとも1つの感知された、特に制御可能な運転操作又は運転状態を表す少なくとも1つのさらなる条件に応じて起動停止(非活動化)される、可逆的な車両乗員保護手段を提供する。
【0011】
この方法の利点は、実質的に起こりうる危機的な運転状況全て、例えば車両のスリップ、横転又は緊急制動を考慮し、かつ例えばシートベルト・プリテンショナー及び/又は車両の運動に関して動的であるシートなど複数の異なる車両乗員保護手段を分化して作動させるトリガ信号として、制御信号が複数の制御可能な車両乗員保護システムに好適であることである。これに関連して、制御可能な運転操作及び特にその予防措置が車両システムの作動状態にある閉ループ又は開ループ制御によって起動されるまで、トリガ制御信号が設定される。これにより車両乗員保護を改善する。さらに、種々の運転状況を考慮しそれゆえ改良される、種々の車両乗員保護手段の分化した作動を、運転者は妥当であると認識する。
【0012】
好ましい一実施形態においては、車両運動ダイナミクス制御システムが、感知されるさらなる運転操作に関して時間及び/又は状態の関数として監視される。特に、車両運動ダイナミクス制御システムは非起動(起動していない状態)に関して監視される。これに関連して、車両運動ダイナミクス制御システムが、少なくとも1秒間の予め設定された時間起動していないかどうか確認される。換言すると、車両運動ダイナミクス制御システムの介入が、例えば少なくとも1秒間発生していないかどうか確認される。そうである場合、危機的でない運転状況又は危機的でないので制御可能な運転操作が検出されるので、1つ以上車両乗員保護システムの予防的なトリガに対する制御信号をリセットできる(起動停止される)。
【0013】
危機的な運転状況又は危機的な運転操作を検知するために、種々の車両運動ダイナミクス制御システム、例えばブレーキ制御装置、特にアンチロック・ブレーキ・システム(略してABSと称する)、電子式制動力配分手段(略してBFDMと称する)、電子安定化プログラム(略してESPと称する)、トラクション制御装置(略してTCと称する)が、起動停止及び/又は起動に関して監視される。さらに、制御信号をリセットするために、これらのシステムの1つにおいて少なくとも1秒、介入が起こっていないかどうか確認される。これにより、再び存在する制御可能な運転操作又は運転状態、及びこれらから派生する車両使用者の危機感覚を十分に良好に検出ができる。
【0014】
さらなる条件として、ヨーレートが、予め設定された第1の閾値へ達しないかどうか監視される。少なくとも1秒間予め設定した閾値に達しないと、危機的でない運転状態又は危機的でない運転操作が検出され、制御信号が解除される。第1の閾値は、車両速度の関数として選択され、例えば高速において低減される。これにより高速におけるリセットを促進する。なぜなら、運転者は比較的高い速度においてはかなり注意深く運転することが実験的に判明したからである。
【0015】
さらに又はその代わりに、さらなる場合においては、さらなる条件として、車両の車輪が静止しているかどうか及びヨーレートの予め設定された第2の閾値に引き続き達しないかどうか確認することが可能である。それゆえ、車輪が静止している場合の車両のスリップ又は回転に対して、ヨーレートはまた評価変数として監視される。しかしながら、異なる閾値を選択することによって、路面が滑りやすい場合に起こり得る、車両が垂直軸の周りを回転する一方で車輪が静止しているという、特定の状況に個別に適応できる。
【0016】
閾値へ達しないことは、好ましくは予め設定された時間、特に少なくとも1秒間監視される。予め設定した閾値に少なくとも1秒間達しないと、危機的でない運転状況であると特定されて、制御信号がリセットされる。他方、ヨーレートの閾値を超えると、車両の回転又はスリップが特定される。
【0017】
制御信号のリセットに対するさらなる条件として、運転者によってトリガされる部分制動操作及び例えばブレーキアシストシステムの自動部分制動操作が発生していないかどうか確認することが可能である。自動部分制動操作は、周囲の検知に応じて自動的にトリガされる、特に緊急な制動操作であると理解される。運転者によってトリガされる部分制動操作又は緊急制動の場合には、運転者の操作によって危険な状況又は緊急事態が存在すると結論付けられる。このようにするために、制動圧力、ブレーキペダルの作動速度及びアクセルペダルが解除される速度などの少なくとも1つのパラメータを使用して制動プロセスを評価する。少なくとも1秒間、運転者によってトリガされる部分制動操作及び自動部分制動操作が存在しない場合には、危機的でない運転状態であると特定されて、制御信号は解除されるか又はリセットされる。
【0018】
車両運動ダイナミクス制御システム及び/又はセンサシステムの1つの取得された運転状態データ、及びその閾値の下方及び/又は上方への逸脱の監視によって、車両のオーバステア、アンダステア及び/又は緊急制動を危機的な運転状態として特定することが可能である。例えば、このようにするために、かじ取り角、車両速度、車輪速度、ヨーレート、横加速度、前後加速度、生じた全加速度又は実摩擦係数における変化が、特に予め設定された時間に対する、閾値の上方への逸脱及び/又は下方への逸脱に関して感知及び監視される。
【0019】
危機的な運転状況が発生する場合には、作動された制御信号によって、車両乗員を保護するために少なくとも1つの可逆的な車両乗員保護システムを予防措置として起動することが可能である。可逆的な車両乗員保護手段は、衝突時に車両乗員へかかる圧力を低減するための手段である。これに関連して、保護手段を、初期状態から動作状態へ繰り返し切替え、かつ動作状態から初期状態へリセットできる。例えば電動シート調節装置、可逆的シートベルト・プリテンショナー、車両の開口部用の電動調節装置及び/又は電気的に調整可能な衝撃保護装置が可逆的な車両乗員保護手段として起動される。
【0020】
本発明による装置は制御ユニットを有し、それにより、少なくとも1つの危機的な運転状態が存在する場合には、少なくとも1つの車両乗員保護手段をトリガする制御信号が起動され得、かつ各危機的な運転状態が終了する場合にかつ少なくとも1つの感知された運転操作を表す少なくとも1つのさらなる条件に応じて起動停止され得る。制御ユニットは、オーバステア、アンダステア又は緊急制動の危機的な運転状態の1つが存在するかどうか継続的に確認する。そうである場合、1つ以上の可逆的な車両乗員保護システムが起動される。特に、緊急制動、アンダステア及びオーバステアの危機的な状態の2つ以上が同時に存在する場合の車両乗員保護手段の起動は、危険の組み合わせに対しても適応される。トリガされ設定された制御信号をリセットすることによって車両乗員保護手段を停止するために、特定された危機的な運転状況の終了に加えて、車両の制御可能な運転操作を示す少なくとも1つのさらなる条件を使用する。
【0021】
特定の一実施形態においては、制御ユニットは、特定された状態に対応する制御信号を出力する。このようにして、制御信号及びそれに関連する、「オーバステア」、「アンダステア」又は「緊急制動」の状態に関する情報は、他の車両装置にも、例えば車両の他の操作機能にわたり開ループ及び/又は閉ループ制御を実施するために利用できる。
【0022】
装置は好ましくはデータバスを有し、及び制御ユニットは制御信号をデータバスに送信する。それゆえ制御信号及び「オーバステア」、「アンダステア」又は「緊急制動」の状態に関する情報が統一インターフェースを介して呼び出される。
【0023】
本発明を、例示された実施形態を参照して以下詳細に説明する。
【0024】
互いに対応する部分は、全図において同じ参照符号が与えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、概略的なブロック回路図において、車両運動ダイナミクス制御システム2を装備する車両1を示す。例えば、車両1は、車両運動ダイナミクス制御システム2として、例えばアンチロック・ブレーキ・システム、トラクション制御装置、エレクトロニック・スタビリティ・プログラム、電子式制動力配分手段及び/又はブレーキ制御装置などのシステムの1つ以上を備える。
【0026】
車両1は、制御ユニット3に接続された少なくとも1つの可逆的な車両乗員保護手段4も有する。例えばシートベルト・プリテンショナー、電動シート調節装置、車両の開口部用の電動調節装置及び/又は電気的に調整可能な衝撃保護装置が車両乗員保護手段4の役目を果たす。1つ以上の車両乗員保護手段4は可逆的である。すなわちそれらを、初期状態から動作状態へ繰り返し切替え、再びリセットできる。
【0027】
制御ユニット3を、例えば、データバス及び/又は制御ラインを経由して車両運動ダイナミクス制御システム2及び/又は車両乗員保護手段4へ接続する。
【0028】
車両運動ダイナミクス制御システム2は、例えば車両1の実ヨーレート、設定値のヨーレート、横加速度、前後加速度、速度、車輪速度などの車両状態データを複数のセンサS1〜S3により判断する。センサシステムすなわちセンサS1〜S3として、例えば加速度センサ、かじ取り角センサ、ヨーレートセンサ、横加速度センサ及び/又は回転速度センサが設けられ、かつそれらは適宜組み合わせられて、さらなる運転状態データの取得のために評価される。
【0029】
例えば車両のオーバステアもしくはアンダステア又は緊急制動などの危機的な運転状況又は危機的な運転状態が、設定値と取得された運転状態データの実際値との間のずれから、又は予め設定した閾値の上方への逸脱及び/又は下方への逸脱から判断される。例えば、車両運動ダイナミクス制御システム2によって、車両の後部側の向きが急に変わって危険な運転状態が起こり得る場合に車両1のオーバステアを特定する。
【0030】
そのような危機的な運転状況を検出すると、制御ユニット3によって1つ以上の車両乗員保護手段4が作動される。これは、例えばオーバステアの場合には、車両運動ダイナミクス制御システム2の操作変数Gを評価することによる。操作変数Gの値が高いことは、例えば、車両の強いオーバステア状態又は強いオーバステア状態の恐れがあることを示し、制御信号SSが設定される。
【0031】
図2においては、制御ユニット3による制御信号SSの設定及びリセットの例示的な時間図が、この点に関して示される。
【0032】
第1の信号「危機的な運転状態」は、例えば、ブレーキペダルが高い作動速度で押されると生じる比較的短いパルスを示し、それは危機的な前後方向ダイナミクスを示す。危機的な横方向ダイナミクスは、例えば、急カーブの走行時、すなわち高い横加速度がある時に、運転者がハンドルをさらに切り、その結果、車両が前輪よりも外側に押し出される過度のアンダステアの場合に示されるであろう。運転者は迅速に運転操作を補正するので、危機的な状態を示すパルスは、図2に示すように短期間のみであろう。このパルスは非常に短い、すなわち1サイクルにのみ設定され得るので、可逆的シートベルト・プリテンショナーのトリガにはおそらく十分であろうが、種々の他の車両乗員保護手段4、例えば車両の運動に関して動的であるシートの作動には十分でない。このパルスのリセットは、危険な状態をもやり過ごしたことを必ずしも意味しない。
【0033】
本発明によれば、制御信号(SS)をトリガして、危機的な状態に対して短パルスによって車両乗員保護手段をトリガするが、そのトリガする運転状態の終了後にかつ制御可能な運転操作を示す少なくとも1つのさらなる条件に応じて制御信号SS(運転状況を評価するためのフラグとも称す)のリセットが行われる。これにより確実に、車両の運転状態が再び運転者の制御下にあることが確かになるまで車両乗員保護手段を作動位置に置くことができる。このために、例えば車両の「アンダステア」又は「オーバステア」の運転状態に対して再び設定された制御信号SS又はフラグは、運転者にとって運転状況がもはや危機的ではないと、もっともらしく分類されるまで、設定される。
【0034】
この状況では、制御信号SSを以下の場合にリセットする。
トリガをもたらした危機的な運転状況がもはや当てはまらない(図2の第1の信号プロフィール)とき、及び
制御可能な運転操作が存在することを示す、少なくとも1つのさらなる条件、
例えば図2において情報信号IS1及び/又はIS2の一方又は両方がもはや起動されていない、
が存在するとき。
【0035】
情報信号IS1及びIS2は、例えば、両条件がもはや当てはまらない場合にのみ、制御信号SSがリセットされるように、論理的に組み合わされ得る制御信号SSの延長のための条件を示す。そのような条件の感知と再び発生した制御可能な運転操作の判断についての、複数の例示的な実施形態を以下説明する。
【0036】
例えば情報信号IS1は、車両運動ダイナミクス制御システムの起動停止から、例えば1秒の特定の待機時間がまだ終了していないことを示し得る。それゆえ運転状況は、少なくとも1秒間ABS及びESPの制御が発生しない場合にのみに、危機的でないと分類される。それゆえ、危機的でない運転状況の存在に対して、例えばABS制御およびESP制御などの車両運動ダイナミクス制御システム2の介入が、少なくとも1秒間発生していないかどうかを確認する必要がある。
【0037】
情報信号IS2は、例えば、車両が依然として高横加速度において走行しているかどうかを示し得る。それゆえ、車輪が回転している走行車両の場合には、感知されたヨーレートの絶対値が少なくとも1秒間予め設定した閾値未満であるかどうか確認される。
【0038】
基準として、定常状態の旋回の式:
=vvehicle * vGi [1]
を採用し、予め設定した閾値へ達しないことは、少なくとも1秒間、
ABS(vGi)<MIN(VGi_max,ay_max/vvehicle) [2]
(式中
=横加速度、
vehicle=車両速度、
Gi=ヨーレート、
ABS(vGi)=測定されたヨーレートの絶対値、
MIN(u,v)=独立変数u及びvのうちの最小量)
によって監視する。それゆえ閾値を、定数vGi_max=例えば60°/s及び速度依存項である定数ay,max=例えば6m/sの最小量から得る。それゆえ閾値は、車両速度が増加すると、減少する。
【0039】
車両の車輪が静止している場合でも(これは、車輪速度の評価によって検出できる)、車両が垂直軸の周りを回転している場合には、車両は危機的な運転状況にあり得る。このため、静止車輪の場合及び危機的でない運転状況の終了の場合に対しての同時の判断経路において、以下によってヨーレートが予め設定した閾値未満であるかどうか確認される:
ABS(vGi)<vGi_min [3]
式中、
ABS(vGi)=測定されたヨーレートの絶対値、
Gi_min=ヨーレートの予め設定された最小値、例えば10°/sである。
この比較的低い閾値においては、例えば滑りやすい路面上で車両が垂直軸の周りを回転し、しかも例えば、ABS及びESPがもはや制御できない場合でも車輪が回転しない、という事態が生じる場合、予防的にトリガされた保護手段のリセットに対する要件は、非常に高く設定される。ここで、車両は静止車輪によってスリップするので、ヨーレートは、存在する唯一の評価変数である。
【0040】
危機的な運転状況として緊急制動が発生する場合は、前記制動は運転者によって及び/又は予測的周辺検知システムによって制動がもたらされる自動的なブレーキ系を介してトリガされ、危機的な運転状況の終了及び制御信号SSのリセットに対する個別の条件として、運転者の緊急制動と自動的なブレーキ系の緊急制動の双方がもはや少なくとも1秒間作動状態にないかどうか確認される。制御信号SSのリセットに個別に又は組み合わせて使用される上述の種々の時間依存条件及び状態依存条件によって、自動制動介入がある場合には、制御信号SSが即座に中断されないことが保証される。これは、関連する情報信号IS1、IS2〜ISnによって表される少なくとも1つのさらなる車両運動ダイナミクス基準が危機的な状況の継続的な存在を示しており、目標にわずかに足りない時である。それゆえ、車両運動ダイナミクス基準が依然として満たされておらず、目標にわずかに足りない時には、プレセーフ(PRE−SAFE)措置、すなわち予防保護措置は即座に中断されない。
【0041】
緊急制動操作に続いて回避操作等が行われる場合、及びこの操作後にのみ制御可能な運転操作が行われる場合、制御信号SSも、予め設定された時間の終了後まで、例えば少なくとも1秒過ぎた後までリセットされない。それゆえ、危機的な運転状態が、最初は車両運動ダイナミクスの危険性によってではなく、むしろ緊急制動操作によってトリガされたにも関らず、車両運動ダイナミクスのリセット条件は、上述の時間条件の終了後まで作用しない。
【0042】
本発明においては等価の実施形態は、車両乗員保護手段のリセットは、先にトリガをもたらした同じ信号の起動解除によってではなく、上述したような同じリセット条件とされる別個のリセット信号によってもたらされる。
【0043】
当然、本発明の教示から実質的に逸脱することなく、待機時間1秒と明示される値を逸脱することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による装置のブロック回路図である。
【図2】本発明による方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1 車両
2 車両運動ダイナミクス制御システム
3 制御ユニット
4 車両乗員保護手段
G 操作変数
IS 情報信号
SS 制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転状態データを取得するセンサシステムと、衝突前にトリガされて作動位置に移行する可逆的な車両乗員保護手段(4)とを有する車両(1)における、車両乗員保護手段(4)の作動方法であって、
少なくとも1つの危機的な運転状態が存在すると、前記車両乗員保護手段(4)をトリガする制御信号(SS)が起動され、
各危機的な運転状態が終了すると、前記制御信号(SS)が起動解除され、前記車両乗員保護手段(4)の初期状態へのリセットが開始され、
前記制御信号(SS)は、少なくとも1つの感知された制御可能な運転操作を表す少なくとも1つのさらなる条件に応じて起動解除されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記制御可能な運転操作を感知するために、車両運動ダイナミクス制御システム(2)が、時間及び/又は状態の関数として、特に起動しないかどうか監視されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両運動ダイナミクス制御システム(2)が、予め設定された時間、特に少なくとも1秒間起動停止かどうか確認されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
車両運動ダイナミクス制御システム(2)として、ブレーキ制御装置、特にアンチロック・ブレーキ・システム、電子式制動力配分手段、電子安定化プログラム又はトラクション制御装置が、起動又は起動停止かどうかが監視されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記制御可能な運転操作を感知するために、ヨーレート(vGi)の絶対値が、第1の予め設定した閾値へ達しないかどうかが監視されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記制御可能な運転操作を感知するために、前記車両が静止車輪があるかどうかが監視され、静止車輪がある場合には、前記ヨーレート(vGi)の絶対値が第2の予め設定した閾値へ達しないかどうかが監視されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記予め設定した閾値に、予め設定された時間、特に1秒より長く達しないかどうか確認されることを特徴とする請求項5あるいは6に記載の方法。
【請求項8】
前記制御可能な運転操作を感知するために、運転者又は自動部分制動操作によってトリガされる部分制動操作が、時間及び/又は状態の関数として監視されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
運転者又は前記自動部分制動操作によってトリガされる前記部分制動操作が、予め設定された時間、特に少なくとも1秒間起動停止かどうか確認されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
オーバステア、アンダステアの状態又は緊急制動が、運転状態データを参照して、特にかじ取り角、前記車両の速度、車輪速度、ヨーレート、横加速度、前後加速度、生じた全加速度又は実摩擦係数における変化を参照して、危機的な運転状態であると特定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記車両乗員保護システム(4)が電動シート調節装置、可逆的シートベルト・プリテンショナー、車両の開口部用の電動調節装置又は電気的に調整可能な衝撃保護装置であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法を行うための装置であって、車両乗員保護手段(4)、及び少なくとも1つの危機的な運転状態が存在すると前記車両乗員保護手段(4)をトリガする制御信号(SS)を起動し得る制御ユニット(3)を有し、各危機的な運転状態が終了すると、少なくとも1つの感知された制御可能な運転操作を表す少なくとも1つのさらなる条件に応じて、前記制御信号(SS)は起動解除されて、前記車両乗員保護手段の前記初期状態へのリセットが開始される、ことを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−545569(P2008−545569A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511606(P2008−511606)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004592
【国際公開番号】WO2006/122742
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】