説明

車両外装用吸音材および該車両外装用吸音材を製造する方法

【課題】異物が付着し難く、加熱容易で成型性に優れ、安価に製造することのできる車両外装用吸音材及び製造方法を提供する。
【解決手段】車両外装用吸音材10は、主繊維とバインダ繊維とを含む不織布20を含む。車両外装用吸音材10は、不織布20の表面20aにパウダ状樹脂が付与されて不織布20とパウダ状樹脂とが加熱されて圧縮され冷却されることによって形成された樹脂層30を有する。樹脂層30にはパウダ状樹脂の一部が粒子状態で残存し(粒子残存部30b)ポーラスとなっている。この車両外装用吸音材10の不織布20は、積層された二種の不織布22、24から構成されていても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両外装用吸音材およびこの車両外装用吸音材を製造する方法に関する。特に、自動車のタイヤハウスのタイヤ側に取り付けられるフェンダライナとして好適な車両外装用吸音材およびこの車両外装用吸音材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車用の吸音材として、フェルト材と難燃性樹脂層とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この吸音材は、フェルト材2に難燃性樹脂の高粘性ラテックスをコーティングさせ、フェルト材2の表面に難燃性樹脂層5を形成されると共に繊維単独層8を残存させて中・高音域で高い吸音性を実現している。
【0004】
他の自動車外装用吸音材として、耐水性フィルムと不織布とを備えるものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
特許文献2に記載の自動車外装用吸音材11は、シート状の繊維ウェブ21の表面に耐水性フィルム22を密着させた状態でプレス成形し、互いに接着される。
【0006】
他の従来技術として、不織布を含む外装材において、一方の表面が所定の表面粗さや摩擦係数であるものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
特許文献3によれば、第1繊維集合体と第2繊維集合体とが重ね合わされ、加熱されプレス成形されることにより、タイヤハウス側層23とタイヤ側層22とを備える外装材が製造される。
【特許文献1】特許第3568936号公報(第3−5頁、図2)
【特許文献2】特許第3675359号公報(第2−4頁、図1)
【特許文献3】特開2004−359066号公報(第9−10、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、車両の外装に用いられる吸音材には、水や埃、泥などの異物が付着しないことが望ましい。特に、タイヤハウスに設けられるフェンダライナを雪の多い地域で用いる場合、一旦フェンダライナに水や泥、雪、氷などが付着すると、その付着物に更に雪が付着したり、その付着物の周りに氷が成長したりして好ましくない。
【0009】
特許文献1に記載の吸音材を製造する場合、フェルト材2に粘性の高い難燃材(ラテックス)をコーティングして加熱し、プレスして成型する。しかしながら、このような難燃性樹脂層5の層は加熱された際に熱を通しにくい。従って、加熱プレスによって成型し難いという問題がある。
【0010】
特許文献2に記載の吸音材は、シート状の繊維ウェブ21の表面に耐水性フィルム22を密着させた状態でプレス成形することにより耐水性フィルム22を繊維ウェブ21の表面に接着すると共に自動車のボディに沿った形状に成型させているが、耐水性フィルム22は熱を通し難く、成型性が悪いという問題があった。更に、既製のフィルムは高価であり、製品のコスト増大にもなっていた。
【0011】
特許文献3に記載の外装材は、第1繊維集合体と第2繊維集合体とが重ね合わされ、加熱されプレス成形されたものであり、一方の表面の表面粗さの平均偏差や摩擦係数を所定値以下に制限したものである。しかしながら、この外装材では、外部に面する部分が繊維集合体からなり、繊維の毛羽立ちの低減には限界があった。
【0012】
本発明は、上述のような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、吸音性能を維持したまま、水、泥、埃、雪などの異物が付着し難く、加熱容易で成型性に優れ、安価に製造することのできる車両外装用吸音材、及びこのような車両外装用吸音材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の車両外装用吸音材は、主繊維とバインダ繊維とを含み、前記不織布が該不織布の表面に付与されたパウダ状樹脂が加熱されることにより形成した樹脂層を備え、前記樹脂層が前記パウダ状樹脂の一部が粒子状態で残存しポーラスであることを特徴としている。
【0014】
本発明の別の車両外装用吸音材は、前記不織布の繊維の一部が前記樹脂層を貫通して該樹脂層の表面から露出している。
【0015】
本発明の別の車両外装用吸音材は、前記パウダ状樹脂の一部が前記不織布層内に入り込んで粒子状態で残存し、該不織布層内の粒子状態のパウダ状樹脂の表面が不織布層の主繊維及び/又はバインダ繊維と融着している。
【0016】
本発明の別の車両外装用吸音材は、前記不織布の主繊維はポリエチレンテレフタレート繊維からなり、前記バインダ繊維は前記主繊維のポリエチレンテレフタレート繊維よりも融点が低い低融点ポリエチレンテレフタレート繊維及び/又は低融点ポリプロピレン繊維からなる。なお、主繊維のポリエチレンテレフタレート繊維や、前記バインダ繊維の低融点ポリエチレンテレフタレート繊維及び/又は低融点ポリプロピレン繊維は主としてこれらの材料を含んでいることを意味し、本発明の効果を奏する範囲内で他の材料を用いることが可能である。
【0017】
本発明の別の車両外装用吸音材は、前記パウダ状樹脂がポリエチレンパウダであり、該ポリエチレンパウダの付与量が50〜300g/mである。
【0018】
更に本発明の別の車両外装用吸音材は目付が300〜500g/mであり、前記不織布が、前記主繊維としてのポリエチレンテレフタレート繊維が20〜50質量%、前記バインダ繊維としての低融点ポリプロピレン繊維又は低融点ポリエチレンテレフタレート繊維が50〜80質量%である。
【0019】
本発明の別の車両外装用吸音材は目付が100〜300g/mであり、前記不織布は、前記主繊維としてのポリエチレンテレフタレート繊維が50〜70質量%、前記バインダ繊維としての低融点ポリプロピレン繊維及び低融点ポリエチレンテレフタレート繊維が30〜50質量%である。
【0020】
本発明の別の車両外装用吸音材は、前記ポリエチレンパウダの密度が0.910〜0.965g/cm3であり、好ましくは0.910〜0.954g/mである。
【0021】
本発明の別の車両外装用吸音材は、前記樹脂層と反対側の面に貼り合わされた第2の不織布を備える。この二種の不織布、即ち樹脂層側の不織布(第1の不織布)と第2の不織布はそれぞれの異なる空隙率を有することが好ましい。異なる空隙率を有していれば二種の不織布それぞれが異なる音域のノイズを吸収でき、より優れた吸音効果を発揮できる。
【0022】
本発明の別の車両外装用吸音材は、前記第2の不織布は目付が500〜1500g/mであり、前記第2の不織布の主繊維がポリエチレンテレフタレート繊維からなり、前記第2の不織布のバインダ繊維が前記主繊維のポリエチレンテレフタレート繊維よりも融点が低い低融点ポリエチレンテレフタレート繊維及び/又は低融点ポリプロピレン繊維からなる。なお、第2の不織布の主繊維のポリエチレンテレフタレート繊維や、バインダ繊維の低融点ポリエチレンテレフタレート繊維及び/又は低融点ポリプロピレン繊維は主としてこれらの材料を含んでいることを意味し、本発明の効果を奏する範囲内で他の材料を用いることが可能である。
【0023】
本発明の別の車両外装用吸音材は、前記第2の不織布は、前記主繊維としてのポリエチレンテレフタレート繊維が30〜50質量%、前記バインダ繊維としての低融点ポリプロピレン繊維及び/又は低融点ポリエチレンテレフタレート繊維が50〜70質量%である。
【0024】
また、本発明の車両外装用吸音材を製造する方法は、主繊維とバインダ繊維とを含む不織布の表面にパウダ状樹脂を付与するステップと、前記不織布と前記付与されたパウダ状樹脂とを加熱して該パウダ状樹脂の一部を粒子状態のまま残存させつつ溶融させるステップと、前記加熱された不織布とパウダ状樹脂とを圧縮し、前記粒子状態のパウダ状樹脂が残存したポーラスな樹脂層を前記不織布に形成するステップと、を含む。ここで「パウダ状樹脂を付与」とは、粉体を第1の不織布に一定量堆積させることであり、樹脂パウダのみを散布しても良いし、樹脂パウダを溶媒に混ぜて塗布しても良い。加熱するステップ及び圧縮するステップ(工程)は必ずしも明確に分ける必要はなく、同時進行的に行うことも可能であるが、好ましくは、加熱工程の後に圧縮し、圧縮と同時に車両外装用吸音材の表面を冷却する。このように圧縮工程時に表面の冷却を行えば、表面の形状維持性を確保して全体の冷却は後に行えばよいため、生産効率を向上させることができる。ポーラスな樹脂層は、半溶融後にパウダ粒子間に形成した微細孔によって、或いは溶融後に形成した微細孔によって実現される。この微細孔は、通気可能であり且つ撥水性を維持できる大きさ、密度となる。
【0025】
本発明の別の車両外装用吸音材を製造する方法は、前記パウダ状樹脂を付与するステップの前に、二種の不織布を貼り合わせることにより前記不織布を形成するステップを更に含む。この貼り合わせは、ニードリングや接着剤による接着、又はその両方を用いること等によって実施することができる。
【0026】
本発明の別の車両外装用吸音材を製造する方法は、前記加熱するステップで、前記パウダ状樹脂の融点より25〜50℃高い温度で50〜100秒間加熱する。
【0027】
更に本発明の別の車両外装用吸音材を製造する方法は、前記パウダ状樹脂がポリエチレンパウダであり、該ポリエチレンパウダの付与量が50〜300g/mである。
【0028】
更に本発明の別の車両外装用吸音材を製造する方法は、前記ポリエチレンパウダの密度は0.910〜0.965g/cm3であり、好ましくは0.910〜0.954g/cm3である。
【発明の効果】
【0029】
本発明のひとつの車両外装用吸音材は、主繊維とバインダ繊維とを含み、前記不織布が該不織布の表面に付与されたパウダ状樹脂が加熱されることにより形成した樹脂層を備え、前記樹脂層が前記パウダ状樹脂の一部が粒子状態で残存しポーラスとなっている。この樹脂層には、前記パウダ状樹脂の一部が粒子状態で残存しているので、これにより粒子間に微細孔が形成されて通気可能な層となる。この微細孔を通じて、外部からの音を不織布に吸収させることができる。また、樹脂層は外装材として異物が付着しにくい性質(特に撥水性)を備える。従って、この車両外装用吸音材は、撥水性が高く且つ吸音性が高い。一般に、樹脂層の表面を平滑にするためには、特別の工程を必要とし製造コストが増大する。しかしながら、この車両外装用吸音材の樹脂層はその表面を滑らかにする必要がないので、廉価且つ製造容易である。
【0030】
本発明の別の車両外装用吸音材は、前記不織布の繊維の一部が前記樹脂層を貫通して該樹脂層の表面から露出している。このような繊維の周囲には微細孔が形成されやすく、樹脂層の通気性の確保がより容易になる。
【0031】
本発明の別の車両外装用吸音材は、前記パウダ状樹脂の一部が前記不織布層内に入り込んで粒子状態で残存し、該不織布層内の粒子状態のパウダ状樹脂の表面が不織布層の主繊維及び/又はバインダ繊維と融着している。パウダ状樹脂が粒子状態のまま主繊維及び/又はバインダ繊維と融着することで、通気性を確保したまま硬さを向上させることが容易になる。
【0032】
本発明のひとつの車両外装用吸音材によれば、前記不織布の主繊維はポリエチレンテレフタレート繊維からなり、前記バインダ繊維は前記主繊維のポリエチレンテレフタレート繊維よりも融点が低い低融点ポリエチレンテレフタレート繊維及び/又は低融点ポリプロピレン繊維からなる。ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)は入手容易且つ安価であり、製造コストを低減することができる。
【0033】
本発明のひとつの車両外装用吸音材によれば、前記パウダ状樹脂がポリエチレンパウダであり、該ポリエチレンパウダの付与量が50〜300g/mである。ポリエチレンは入手容易且つ安価であり、層になった後の撥水性が高いため、車両外装用吸音材の表面層として好適である。また、冷却後に樹脂層に適当な微細孔を形成させるための温度コントロールなど、製造管理が容易であり、本発明の車両外装用吸音材に適する。また、このようにポリエチレンパウダの付与量を50〜300g/mとすると、撥水性が高くて異物付着性が低い、高硬度でポーラスな層を形成することができる。
【0034】
本発明のひとつの車両外装用吸音材によれば、前記不織布の目付が300〜500g/mであり、前記主繊維としてのポリエチレンテレフタレート繊維が20〜50質量%、前記バインダ繊維としての低融点ポリプロピレン繊維又は低融点ポリエチレンテレフタレート繊維が50〜80質量%である。このような車両外装用吸音材は、不織布の目付およびバインダ繊維の比率をこの範囲内で調整すると不織布の硬度、剛性、撥水性が高くなり、着雪や着氷は離脱しやくなる。また、車体側に第2の不織布を設けた場合でも、着雪や着氷が当該第2の不織布に到達しにくくなるので着雪や着氷が離脱しやすい。従って、特に寒冷地用として優れている。
【0035】
本発明のひとつの車両外装用吸音材によれば、前記不織布の目付が100〜300g/mであり、前記主繊維としてのポリエチレンテレフタレート繊維が50〜70質量%であり、前記バインダ繊維としての低融点ポリプロピレン繊維及び低融点ポリエチレンテレフタレート繊維が30〜50質量%である。このような車両外装用吸音材は、前述の寒冷地用に適した車両外装用吸音材と比べて目付が小さくバインダ繊維の比率も低いので、安価に製造することができる。従って、寒冷地と比べて高い硬度、剛性、撥水性が要求されない温暖地用として特に優れている。
【0036】
本発明のひとつの車両外装用吸音材によれば、前記ポリエチレンパウダの密度が0.910〜0.965g/cm3である。このような範囲内の密度のポリエチレンパウダは、流動性が高いので、樹脂層の管理が容易であり、より高品質な車両外装用吸音材を製造することができる。更にこのような密度範囲のポリエチレンパウダを用いれば加熱後も粒子状態のパウダを残存させやすく、ポーラスな樹脂層の形成に適している。この観点から、更に好ましい前記ポリエチレンパウダの密度は0.910〜0.954g/cm3である。
【0037】
本発明のひとつの車両外装用吸音材は、前記樹脂層と反対側の面に貼り合わされた第2の不織布を備える。このように不織布を二層構造とすれば、車体側の第2の不織布の組成、および樹脂層側の第1の不織布の組成を個別に調整することができる。そして、この二層構造によって、車両外装用吸音材としての吸音性、保型性、衝撃吸収性などの特性をより適当に調整することができる。
【0038】
本発明のひとつの車両外装用吸音材によれば、前記第2の不織布は目付が500〜1500g/mであり、前記第2の不織布の主繊維はポリエチレンテレフタレート繊維からなり、前記第2の不織布のバインダ繊維は前記主繊維のポリエチレンテレフタレート繊維よりも融点が低い低融点ポリエチレンテレフタレート繊維及び/又は低融点ポリプロピレン繊維からなる。このように目付が500〜1500g/mであれば、車体側に位置する第2の不織布層は吸音性、成形性に優れたものとなる。また、前記第2の不織布の主繊維として採用されているポリエチレンテレフタレート繊維、並びに、バインダ繊維として採用されている低融点ポリエチレンテレフタレート繊維及び/又は低融点ポリプロピレン繊維は、それぞれ入手容易且つ安価である。
【0039】
本発明のひとつの車両外装用吸音材によれば、前記第2の不織布は、前記主繊維としてのポリエチレンテレフタレート繊維が30〜50質量%であり、前記バインダ繊維としての低融点ポリプロピレン繊維及び/又は低融点ポリエチレンテレフタレート繊維が50〜70質量%である。このように外部側に位置する第1の不織布と比較して、車体側に位置する第2の不織布(層)の主繊維の割合が高く目付も大きくなっている車両外装用吸音材は、吸音性、保型性、衝撃吸収性に優れたものである。
【0040】
本発明のひとつによれば、車両外装用吸音材を製造する方法が、主繊維とバインダ繊維とを含む不織布の表面にパウダ状樹脂を付与するステップと、前記不織布と前記付与されたパウダ状樹脂とを加熱して該パウダ状樹脂の一部を粒子状態のまま残存させつつ溶融させるステップと、前記加熱された不織布とパウダ状樹脂とを圧縮し、前記粒子状態のパウダ状樹脂が残存したポーラスな樹脂層を前記不織布に形成するステップと、を含む。この製造方法では、主繊維とバインダ繊維とを含む不織布の表面にパウダ状樹脂を付与しこれを加熱させてポーラスな樹脂層を形成するので、付与量や粒子径、密度を適宜選択することにより、完成品の表面の撥水性や通気性の調整が容易である。パウダ状樹脂(樹脂パウダ)は樹脂フィルムよりも安価であり、製造コスト低減にも寄与する。また、この製造方法は、前記不織布と付与されたパウダ状樹脂とを加熱するので、このパウダ状樹脂が溶融し製品全体に熱が伝導しやすく、圧縮及び/又は成型が容易になる。更に、前記加熱された不織布とパウダ樹脂層とを成型すると、この際パウダ状樹脂が溶融しているので成型加工性が良い。例えば、樹脂フィルムは立体的に成型しようとしても伸張性が悪いが、本発明のようにパウダ状樹脂を採用すれば、パウダ状樹脂が加熱工程で溶融しているので成型加工性に優れる。この車両外装用吸音材によれば、外部に面する前記樹脂層に繊維が含まれており、しかもその表面が粗表面であるにもかかわらず、水、泥、埃、雪などの異物が付着し難い。しかも樹脂層の表面を滑らかにする必要がないので、製造容易である。そして、この製造方法によれば、微細孔を備え通気可能な樹脂層を形成できるので、外部音を微細孔を介して不織布に吸収させることができる車両外装用吸音材を製造することができる。
【0041】
本発明のひとつの車両外装用吸音材の製造方法では、前記パウダ状樹脂を付与するステップの前に、二種の不織布を貼り合わせることにより前記不織布を形成するステップを更に含む。これによれば、車体側の第2の不織布の組成、および樹脂層側の第1の不織布の組成を個別に調整することができる。そして、この二層構造によって、吸音性、保型性、衝撃吸収性などの特性をより適当に調整して車両外装用吸音材を製造することができる。例えば、表面に近い第1の不織布のバインダ繊維の割合をより高くして撥水性と硬さを向上させ、第2の不織布は主繊維の割合をより高くして吸音性、衝撃吸収性を向上させることができる。
【0042】
本発明のひとつの車両外装用吸音材の製造方法では、前記加熱するステップにおいて、前記パウダ状樹脂の融点より25〜50℃高い温度で50〜100秒間加熱する。これにより、製造後の樹脂層に微細孔が形成されるよう、パウダ状樹脂を適度に溶融させることができる。すなわちこの方法によれば、樹脂パウダの表面付近を適度に溶融させて溶融/半溶融状態とすることができ、圧縮成型後に冷却すると樹脂パウダ間の隙間に微細孔が形成してポーラスな樹脂層が形成される。
【0043】
本発明のひとつの車両外装用吸音材の製造方法では、前記パウダ状樹脂がポリエチレンパウダであり、該ポリエチレンパウダの付与量が50〜300g/mである。このような範囲で付与されたポリエチレンパウダにより形成された樹脂層は撥水性に優れているので、樹脂層が微細孔を有し粗面であっても異物が付着し難い車両外装用吸音材を製造することができる。
【0044】
本発明のひとつの車両外装用吸音材の製造方法では、前記ポリエチレンパウダの密度は0.910〜0.965g/cm3である。密度がこのような範囲内のポリエチレンパウダは流動性が高く、品質管理も容易である。この観点から、より好ましいポリエチレンパウダの密度の範囲は0.910〜0.954g/cm3である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図を参照して本発明に係る車両外装用吸音材をその製造方法と併せて説明する。本発明の車両外装用吸音材は、車両において吸音性及び表面の異物に対する非付着性(特に撥水性)を要求される部位の外装材として用いられる。特に、自動車のタイヤハウスに取り付けられるフェンダライナに好適なものである。
【0046】
図1に示すように、本発明の一実施形態であるフェンダライナ(車両外装用吸音材)10は、主繊維とバインダ繊維とを含む不織布20を有している。この不織布20の表面には、撥水性を有するポーラスな樹脂層30が形成されている。樹脂層30は、パウダ状樹脂が不織布20の表面20aに付与された後、このパウダ樹脂が不織布20と共に加熱され圧縮されることにより形成される。より詳細には、樹脂層30はパウダ状樹脂が溶融して形成された融着樹脂部30aと、パウダ状樹脂が粒子状態のまま残存した粒子残存部30bとを有する。これら融着樹脂部30a及び粒子残存部30bは、樹脂層30全体にわたって分布している。このように、樹脂層30にはパウダ状樹脂が完全に溶融せずに粒子として残存しているのでこの粒子間に隙間が形成され、これにより樹脂層30がポーラスとなっている。更に、この実施例では、不織布20の繊維の一部が樹脂層30を貫通し樹脂層30の表面から露出している(露出繊維21)。このように不織布20から樹脂層30を貫通する露出繊維21は、その周囲に微細孔が形成されやすく、通気性を確保することがより容易となる。
【0047】
この実施例において不織布20は、二種の不織布すなわち第1の不織布22と第2の不織布24とを貼り合わせた構成となっており、第1の不織布22側に樹脂層30が形成されている。ここで、第1の不織布22にはパウダ状樹脂が粒子状態のまま入り込んでおり(樹脂粒子30c)、この樹脂粒子30cの表面は溶融して第1の不織布22の繊維に融着している。樹脂粒子30cが粒子状態のまま第1の不織布22に存在しその繊維に融着することにより、通気性を確保しつつ硬度を高めることができる。本実施例では、樹脂粒子30cは第1の不織布22の境界面20bにまで入り込んでいるが、この樹脂粒子30cは第1の不織布22の任意の中間部まで入り込んでいる構成であっても良く、また、第2の不織布24にまで入り込んでいても良い。
【0048】
ここではフェンダライナ10は三層構造となっているが、それぞれの層の境界部は必ずしも明確でなくても良く、境界部において繊維やバインダが交絡や融合していても良い。このようなフェンダライナ10は、第2の不織布24側が例えばタイヤハウス(フェンダ)に取り付けられ、樹脂層30側が外部に面するようにして使用される。
【0049】
第1の不織布22は、その原材料として主繊維とバインダ繊維とを含んでいる。主繊維及びバインダ繊維の種類は特に限定されるものではなく、後の加熱工程でバインダ繊維が溶融してバインダとして機能し、主繊維が繊維として残存するものであれば良い。例えば、主繊維としてPET、雑綿、ナイロン、PP、アクリルなどを、バインダ樹脂として低融点PP、低融点PET、PE、エポキシなどを適宜採用することができる。好適には、主繊維がポリエチレンテレフタレート繊維からなり、且つ、バインダ繊維が低融点ポリプロピレン繊維と前記主繊維のポリエチレンテレフタレート繊維よりも融点が低い低融点ポリエチレンテレフタレート繊維とからなるものが第1の不織布22の原材料として採用される。ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)は入手容易且つ安価である点で好適であり、製造コストの低減を図ることができる。第1の不織布の目付を300〜500g/mとし、その主繊維としてのポリエチレンテレフタレート繊維を20〜50質量%、低融点ポリプロピレン繊維又は低融点ポリエチレンテレフタレート繊維を50〜80質量%の範囲から選択すれば、第1の不織布22の硬度、剛性、撥水性が高くなり、着雪や着氷が車体側の層(第2の不織布24)に到達しにくく、着雪や着氷は離脱しやくなるので、寒冷地に好適な車両外装用吸音材を製造することができる。このように、バインダ繊維を比較的高い割合で配合し目付を高くしておけば、仮に完成した樹脂層30にホールがあったり、クラックが発生したりしても、その下層である第1の不織布22の撥水性及び硬さが高くなるので、樹脂層30の欠陥部分にも異物が付着し難くなり、フェンダライナに好適である。他方、温暖地用の車両外装用吸音材としては、第1の不織布22の目付を100〜300g/mとし、前記主繊維としてのポリエチレンテレフタレート繊維を50〜70質量%、前記バインダ繊維としての低融点ポリプロピレン繊維及び低融点ポリエチレンテレフタレート繊維の合計を30〜50質量%の範囲内とする。このような範囲内で目付およびバインダ繊維の割合を調整すれば、前述の寒冷地用に適した車両外装用吸音材と比べて目付が小さくバインダ繊維の比率も低いので、安価に製造することができる。従って、寒冷地と比べて高い硬度、剛性、撥水性が要求されない温暖地用として特に好適である。図2のフローチャート及び図3の製造ライン概略図に示されるように、この第1の不織布22は、先ず主繊維とバインダ繊維とが混在(交絡)するようにニードリングによってシート状に形成される(ステップS1)。
【0050】
第2の不織布(層)24は、その原材料として主繊維とバインダ繊維とを含んでいる。第2の不織布24に用いられる主繊維及びバインダ繊維の種類も特に限定されるものではなく、後の加熱工程でバインダ繊維が溶融してバインダとして機能し、主繊維が繊維として残存するものであれば良いが、高い吸音性、保型性、衝撃吸収性を実現すべく、第1の不織布22と比し主繊維の配合割合が高くなっている。第2の不織布24の原材料としては、例えば、主繊維としてPET、雑綿、ナイロン、PP、アクリルなどを、バインダ樹脂として低融点PP、低融点PET、PE、エポキシなどを適宜採用することができる。好適には、主繊維としてポリエチレンテレフタレート繊維が、バインダ繊維として低融点ポリプロピレン繊維及び低融点ポリエチレンテレフタレート繊維が、それぞれ用いられる。これらの材料は入手容易且つ安価であり好適である。更に、この主繊維としてのポリエチレンテレフタレート繊維が30〜50質量%、前記バインダ繊維としての低融点ポリプロピレン繊維が10〜40質量%、低融点ポリエチレンテレフタレート繊維が10〜60%(バインダ繊維の合計は50〜70質量%)の範囲から選択される。特に車両の外部からみて最下層(即ち車体側)に位置する第2の不織布の主繊維の割合を高くすれば、その空隙率が高くなり、吸音性、保型性、衝撃吸収性に優れたものとなる。この第2の不織布24は、先ず主繊維とバインダ繊維とが混在(交絡)するようにニードリングによってシート状に形成される(ステップS2)。なお、第1の不織布22及び第2の不織布24をシート状に形成する工程(ステップS1及びS2)の順序は任意であり、並行して製造しても良い。図3に示したように、ステップS1及びS2以降の工程を含め一貫ラインで製造することも可能である。
【0051】
次に、第1の不織布22と第2の不織布24とを積層させ、貼り合わせる(ステップS3)。本発明の実施例では、第2の不織布24の一方の面と第1の不織布22の裏面とを重ね合わせ、積層された二層をニードリングしている。これにより、バインダ繊維による接着作用のみならず、交絡によって物理的に第1の不織布22と第2の不織布24とを接合させることができる。特に第2の不織布24はバインダ樹脂の割合が比較的低いので、交絡によって二層を接合することが可能なこの合わせニードリング工程は有用である。
【0052】
次に、この二層構造のシートの第1の不織布22にパウダ状樹脂を付与する(ステップS4)。具体的には、第1の不織布22の表面(即ち不織布20の表面)20aにパウダ状樹脂を付与する。このように樹脂フィルム等ではなくパウダ状樹脂を付与すれば、付与量やその粒子径、密度を適宜選択することにより、完成品の表面の撥水性の調整が容易である。更にパウダ状樹脂(樹脂パウダ)は樹脂フィルムよりも安価であり、コスト低減にも寄与する。パウダ状樹脂としては様々な樹脂を採用することができるが、第1の不織布22の主繊維及び第2の不織布24の主繊維より融点が低いものである必要がある。これによりパウダ状樹脂を溶融させても各主繊維は繊維として残存し、吸音性、衝撃吸収性などを発揮することが可能となる。このようなパウダ樹脂として、具体的には、例えば、PE、PP、EVA(エチレンビニルアセテート)などを用いることができる。パウダ状樹脂の密度は、任意の範囲から適宜選択することができるが好ましくは0.91以上0.965g/cm3以下、更に好ましくは0.91以上0.954 g/cm3以下である。このような密度の範囲のポリエチレンパウダは流動性が高いため、この付与工程S4において付与量を調整し易く、この結果、空隙率、撥水性の調整も容易で品質管理が容易である。また、このような密度の範囲のポリエチレンパウダは、後の加熱工程において部分的に粒子状態のまま残存させることが容易であり、ポーラスな樹脂層の形成が容易である。更に、粒子であるので加熱工程初期段階の溶融前において通気が可能であり熱が他の層にも伝わり易く、成型加工も容易になる。なお、パウダ状樹脂の付与と合わせ、シリコンオイルを散布すれば、製造後の車両外装用吸音材の樹脂層の撥水性をより向上させることができる。このように付与されたパウダ樹脂は、その一部が第1の不織布22に入り込んでいる。
【0053】
次に、第2の不織布、第1の不織布および付与されたパウダ樹脂層の三層構造となったシート体を加熱する(ステップS5)。加熱工程は、パウダ状樹脂が部分的に粒子状態を維持するように加熱温度・加熱時間を調整して行う。即ち、パウダ状樹脂の一部を溶融させ、残部が半溶融して隣接する粒子と表面で融着させる。更に、この加熱工程では、第1の不織布22のバインダ樹脂、および第2の不織布24のバインダ樹脂が溶融し、且つ、第1の不織布22の主繊維及び第2の不織布24の主繊維が溶融しない温度で加熱する。具体的には、例えば、前記パウダ状樹脂の融点より25〜50℃高い温度の範囲内で50〜100秒間加熱すると良い。特にパウダ状樹脂がポリエチレンパウダ(融点:約102℃)の場合、135〜145℃で65〜75秒間加熱すると良い。これにより、溶融した融着樹脂部30aの全面に粒子状態の粒子残存部30bが分布した状態となり、パウダ状樹脂が冷却した後には粒子状態を維持したパウダ粒子間に微細孔が形成され、ポーラスな樹脂層30が形成される。なお、この実施例では、樹脂層30を貫通し樹脂層30の表面から露出した露出繊維21が点在している。このような露出繊維21は、その周囲に微細孔が形成されやすく、通気性を確保することがより容易となる。パウダ状樹脂はこの加熱工程によって一旦半溶融又は溶融状態となるので、下層(第1の不織布22及び第2の不織布24)に熱が伝導し易く、成型が容易となる。他方、樹脂層30としてフィルムを使用すると高価であり、しかも熱伝導性が悪い。
【0054】
なお、パウダ状樹脂、第1の不織布22および第2の不織布24の単位面積当たりの質量は適宜調整できるが、例えば本発明の車両外装用吸音材をフェンダライナとして用いる場合、寒冷地用ではパウダ状樹脂を50〜300g/m2、第1の不織布22を300〜500 g/m2、第2の不織布24を500〜1500 g/m2の範囲内で調整すると良い。このような範囲内で調整すれば、第1の不織布22の硬度、剛性、撥水性が高くなる。また、第1の不織布の目付が高いため厚さも厚くなるので、着雪や着氷が第2の不織布24に到達しにくく、着雪や着氷が離脱しやすい。従って、寒冷地用として優れたものとなる。温暖地としては、パウダ状樹脂を50〜300g/m2、第1の不織布22を100〜300 g/m2、第2の不織布24を500〜1500 g/m2の範囲内で調整すると良い。このような範囲内で調整すれば、前述の寒冷地用に適した車両外装用吸音材と比べて目付が小さくバインダ繊維の比率も低いので、安価に製造することができる。従って、寒冷地と比べて高い硬度、剛性、撥水性が要求されない温暖地用として特に好適である。
【0055】
加熱されたシート体は、圧縮成形される(ステップS6)。この圧縮工程では、少なくとも薄いシート状に圧縮成形されれば良いが、圧縮すると同時に取り付け部分の形状に沿うように成型しても良い。本実施例では、内部が水冷され圧縮面が冷却作用を有する圧縮機を用い、圧縮工程の際にフェンダライナ10の表面を冷却させる。このようにすれば、表面だけを冷却させて形状の安定性を確保して圧縮工程を終了させ、その後の別工程においてフェンダライナ10の全体を冷却することができるので、生産効率を高めることができる。なお、この圧縮工程を加熱しつつ実施して前述の加熱工程(ステップS5)を省略することも可能である。本発明によれば、圧縮工程においてパウダ状樹脂が溶融しているので成型加工性が良い。例えば、樹脂フィルムは立体的に成型しようとしても伸張性が悪いが、本発明のようにパウダ状樹脂を採用すれば、パウダ状樹脂が加熱工程で溶融しているので伸張性が高く成型加工性に優れる。
【0056】
そして、フェンダライナ10は空冷などの方法によって全体が冷却され(ステップS7)、裁断される(ステップS8)。製造されたフェンダライナ10は、外部に面する樹脂層30が粗表面であり且つポーラスであるにもかかわらず水、泥、埃、雪、氷などの異物が付着し難い。このように本発明の車両外装用吸音材によれば、樹脂層の表面を滑らかにする必要がないので製造が容易である。しかも、フェンダライナ10は、ポーラスな樹脂層30の微細孔を通じて吸音性に優れた車体側不織布層(第1の不織布層22及び第2の不織布24)に音を吸収させることができる。
【0057】
このように、本発明のフェンダライナ(車両外装用吸音材)は、撥水性および吸音性に優れており、しかも製造コストを抑えることができる。また、本発明の製造方法によれば、このような車両外装用吸音材を安価に且つ容易に製造することができる。
【実施例】
【0058】
図2及び3に基づき説明した製造方法に従って車両外装用吸音材10(試料2〜4)を製造した。
【0059】
本実施例では、樹脂層30のために用いられるパウダ状樹脂量だけを変えて、完成品の車両外装用吸音材10の撥水性試験を行った。具体的には、パウダ状樹脂としてのポリエチレンパウダの付与量をゼロ(試料1:比較例)、100g/m(試料2)、200g/m(試料3)、300g/m(試料4)としてそれぞれ比較した。
【0060】
試料1〜4の第1の不織布22の原材料としては、ポリエチレンテレフタレート繊維50%、バインダ繊維として低融点ポリプロピレン繊維50%のものを用いた。単位面積当たりの質量(目付)は、200g/m2とした。
【0061】
また、第2の不織布24の原材料としては、ポリエチレンテレフタレート繊維50%、バインダ繊維として低融点ポリプロピレン繊維10%及び低融点ポリエチレンテレフタレート繊維40%のものを用いた。
【0062】
試料2〜4では、樹脂層30を形成するためにポリエチレンパウダを使用したので、加熱の際に第1の不織布22及び第2の不織布24に熱が伝わり易く、製造容易であった。圧縮・成型に際し、樹脂層30の表面を滑らかにするための加工は行わなかった。圧縮・成型後、ポリエチレンパウダの一部の粒子は境界面20b近傍まで第1の不織布22に入り込み、その表面が溶融して第1の不織布22のバインダ繊維や主繊維と融着した(樹脂粒子30c)。樹脂層30は、粒子状態として残存したポリエチレンパウダ(粒子残存部30b)が形成されたので粒子残存部30b間に微細孔が残存し、通気可能であった。このように製造された車両外装用吸音材の一例の部分拡大写真を図4に示した。圧縮後のシートをA4サイズに裁断し、試料1については第1の不織布22の、試料2〜3については樹脂層30の撥水試験を行った。この撥水試験は以下の方法に従って行った。
(1)各試料の重量を測定する(基礎重量)。
(2)試料1については第1の不織布22の表面に、試料2〜3については樹脂層30の表面に、容器に入った10gの水を掛ける。
(3)5秒経過後に水を容器に戻す。
(4)各試料の重量(試験後重量)、及び容器に戻された水の重量を測定する。
【0063】
各試料の試験結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

この試験から、付与するポリエチレンパウダの単位面積当たりの量が多いほど撥水性に優れていることが分かった。特にポリエチレンパウダを200g/m以上付与したものは、車両外装用吸音材として用いたときに外部に面する樹脂層30がポーラスであっても、非常に高い撥水性を有することが確認された。すなわち、本発明の車両外装用吸音材の製造方法によれば、より容易に加熱・成型可能であり、撥水性の高い車両外装用吸音材を安価で製造することが可能である。そして、このように樹脂層がポーラスであると、外部からの音を車体側の第1の不織布層及び/又は第2の不織布に伝達し吸収させることができる。また、このような製造方法により製造された本発明の車両外装用吸音材は、ポーラスであるにも関わらず撥水性に優れ、特にフェンダライナに好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のフェンダライナ(車両外装用吸音材)の断面を示した模式図である。
【図2】本発明のフェンダライナ(車両外装用吸音材)の製造方法を説明するフローチャートである。
【図3】本発明のフェンダライナ(車両外装用吸音材)の製造ラインを説明する模式図である。
【図4】本発明のフェンダライナ(車両外装用吸音材)の一実施例の部分拡大写真である。
【符号の説明】
【0066】
10 フェンダライナ(車両外装用吸音材)
20 不織布
20a 表面
20b 境界面
22 第1の不織布
30c 樹脂粒子
24 第2の不織布
30 樹脂層
30a 融着樹脂部
30b 粒子残存部
21 露出繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主繊維とバインダ繊維とを含む不織布を有する車両外装用吸音材であって、
前記不織布は、該不織布の表面に付与されたパウダ状樹脂が加熱されることにより形成した樹脂層を備え、
前記樹脂層は、前記パウダ状樹脂の一部が粒子状態で残存しポーラスであることを特徴とする車両外装用吸音材。
【請求項2】
前記不織布の繊維の一部が前記樹脂層を貫通して該樹脂層の表面から露出している請求項1に記載の車両外装用吸音材。
【請求項3】
前記パウダ状樹脂の一部が前記不織布層内に入り込んで粒子状態で残存し、該不織布層内の粒子状態のパウダ状樹脂の表面が不織布層の主繊維及び/又はバインダ繊維と融着している請求項1又は2に記載の車両外装用吸音材。
【請求項4】
前記不織布の主繊維はポリエチレンテレフタレート繊維からなり、
前記バインダ繊維は前記主繊維のポリエチレンテレフタレート繊維よりも融点が低い低融点ポリエチレンテレフタレート繊維及び/又は低融点ポリプロピレン繊維からなる請求項1又は2に記載の車両外装用吸音材。
【請求項5】
前記パウダ状樹脂はポリエチレンパウダであり、該ポリエチレンパウダの付与量が50〜300g/mである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両外装用吸音材。
【請求項6】
前記不織布は、目付が300〜500g/mであり、前記主繊維としてのポリエチレンテレフタレート繊維が20〜50質量%、前記バインダ繊維としての低融点ポリプロピレン繊維又は低融点ポリエチレンテレフタレート繊維が50〜80質量%である請求項4又は5に記載の車両外装用吸音材。
【請求項7】
前記不織布は、目付が100〜300g/mであり、前記主繊維としてのポリエチレンテレフタレート繊維が50〜70質量%、前記バインダ繊維としての低融点ポリプロピレン繊維及び低融点ポリエチレンテレフタレート繊維が30〜50質量%である請求項4又は5に記載の車両外装用吸音材。
【請求項8】
前記ポリエチレンパウダの密度が、0.910〜0.965g/cm3である請求項5乃至7のいずれか1項に記載の車両外装用吸音材。
【請求項9】
前記不織布の前記樹脂層と反対側の面に貼り合わされた第2の不織布を備える請求項1乃至8のいずれか1項に記載の車両外装用吸音材。
【請求項10】
前記第2の不織布は目付が500〜1500g/mであり、
前記第2の不織布の主繊維はポリエチレンテレフタレート繊維からなり、
前記第2の不織布のバインダ繊維は前記主繊維のポリエチレンテレフタレート繊維よりも融点が低い低融点ポリエチレンテレフタレート繊維及び/又は低融点ポリプロピレン繊維からなる請求項9に記載の車両外装用吸音材。
【請求項11】
前記第2の不織布は、前記主繊維としてのポリエチレンテレフタレート繊維が30〜50質量%、前記バインダ繊維としての低融点ポリプロピレン繊維及び/又は低融点ポリエチレンテレフタレート繊維が50〜70質量%である請求項10に記載の車両外装用吸音材。
【請求項12】
車両外装用吸音材を製造する方法であって、
主繊維とバインダ繊維とを含む不織布の表面にパウダ状樹脂を付与するステップと、
前記不織布と前記付与されたパウダ状樹脂とを加熱して該パウダ状樹脂の一部を粒子状態のまま残存させつつ溶融させるステップと、
前記加熱された不織布とパウダ状樹脂とを圧縮し、前記不織布に前記粒子状態のパウダ状樹脂が残存したポーラスな樹脂層を形成するステップと、
を含むことを特徴とする車両外装用吸音材の製造方法。
【請求項13】
前記パウダ状樹脂を付与するステップの前に、二種の不織布を貼り合わせることにより前記不織布を形成するステップを更に含む請求項12に記載の車両外装用吸音材の製造方法。
【請求項14】
前記加熱するステップでは、前記パウダ状樹脂の融点より25〜50℃高い温度で50〜100秒間加熱する請求項12又は13に記載の車両外装用吸音材の製造方法。
【請求項15】
前記パウダ状樹脂がポリエチレンパウダであり、該ポリエチレンパウダの付与量が50〜300g/mである請求項12乃至14のいずれか1項に記載の車両外装用吸音材の製造方法。
【請求項16】
前記ポリエチレンパウダの密度は0.910〜0.965g/cm3である請求項15に記載の車両外装用吸音材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−261359(P2007−261359A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87211(P2006−87211)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(597114247)丸昌夏山フエルト株式会社 (2)
【Fターム(参考)】