説明

車両情報収集システム及び車両情報収集方法

【課題】通信コストを低く抑えた車両情報収集システムを提供する。
【解決手段】ユーザコンピュータは、要求するイベント情報に係る膨大な車両情報を収集するために、センタシステムを介してイベント情報の内容を取得し、このイベント情報に関わる膨大な車両情報を関連情報として、可搬式記憶媒体やセンタシステム経由でない無線LANなどの通信ネットワークを介して取得する。このように取得したイベント情報と関連情報とを関連付ける(再構成する)ために、ユーザコンピュータはそれらの情報の関連を示すリンク情報をイベント情報と関連情報とにそれぞれ対応させて取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両情報を収集する車両情報収集システム及び車両情報収集方法に係り、特に車両情報の収集に必要な通信コストを低くした車両情報収集システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車内システムの電気・電動化が進むにともない、車両の駆動、制動、走行などの各部を制御するECU(Electronic Control Unit)が有する制御情報を車内LAN(Local Area Network)を介して収集することが容易になってきている。既に車両に搭載されているカーナビゲーション装置の中には車内LANから収集した制御情報をカーナビゲーションに使用しているものもある。また携帯通信網を介して車両の位置情報などと一緒に制御情報を車両情報としてセンタに送信することで、ドライバへのエコ運転アドバイスや渋滞情報提供、車両メンテナンスなどに活用するといったサービスも既に開始されている。
【0003】
このようなカーナビゲーション装置ならびにセンタサービスに制御情報を活用する車両情報応用サービスは今後さらに発展し、扱う情報量も多くなる。一方携帯通信網を用いて車両情報を送信する場合、送信する情報量が多くなるにつれて通信コストも高くなる。逆に、情報量が少ないと提供サービスの内容も限定される。
【0004】
こうした背景を鑑みて、無線パケット通信を用いて車両情報をセンタに送信する技術がある。(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-310896
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される技術は、車両内に発生した事象がECUまたはセンサによって検出されたときのみに無線パケット通信を用いて車両情報をセンタに送信し、従量課金によりデータ送信の低コスト化を図っている。ところが特許文献1では、センタ側で必要となるデータは全て無線通信を介して送信されるので、ある事象の発生時に、この事象に関連する、時間的に事象発生前後のECUが持つデータやセンサのデータをセンタ側が必要とした場合、これらのデータは全て無線通信を介してセンタに送信されることになる。ECUが持つデータやセンサのデータは、数ミリ秒から数10ミリ秒単位で更新される。たとえば数10秒分の情報が必要とされると、無線通信を介して送信するデータ量は膨大になり、通信の低コスト化を図ることが困難になる。送信するデータ量を少なくするために、事象発生時のデータのみをセンタに送信すると、データ量不足から事象の発生要因や事象の正当性までを把握できない場合が発生し、提供できるサービスに限界を生じる。
【0007】
そこで本発明の課題は、通信コストを低く抑えつつサービスの多様化にも対応しうるための車両情報収集システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両情報収集システム及びその収集方法は、次のような態様である。センタシステムは、ユーザコンピュータと通信ネットワークを介して接続し、無線通信網を介して車両システムと接続する。センタシステムは、車両情報を収集するためのユーザコンピュータからの通信ネットワークを介したリクエストに応答して、そのリクエストを車両システムに送信し、車両システムからのリクエストに対応した第1の車両情報(イベント情報)と、第1の車両情報に関連する第2の車両情報(関連情報)との関連を示すリンク情報とを受信し、受信した第1の車両情報とリンク情報とをユーザに送信する。車両システムは、センタシステムからのリクエストに対応した第1の車両情報と第2の車両情報とを収集し、第1の車両情報と第2の車両情報との関連を示すリンク情報を生成し、第1の車両情報とリンク情報とをセンタシステムに送信し、第2の車両情報とリンク情報とを蓄積する。ユーザコンピュータは、センタシステムから第1の車両情報とリンク情報とを受信し、車両システムに蓄積された第2の車両情報とリンク情報とを取得し、センタシステムから受信したリンク情報と車両システムから取得したリンク情報との対応関係を用いて、リクエストに対応した第1の車両情報と第2の車両情報とを再構成する。
【0009】
本発明の他の態様は、リクエストは車両情報を収集する収集条件とセンタシステムで収集する第1の車両情報とを含み、センタシステムは、リクエストに対応して収集すべき車両情報のリストを予め保持し、リクエストに対応する収集すべき車両情報をリクエストに付加して車両システムに送信する。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、センタシステムがリストとして保持する車両情報は、第1の車両情報とリンク情報とを含む。
【0011】
本発明のさらに他の態様は、車両システムは、ネットワークを介して接続する無線通信装置、カーナビゲーション装置および車載ゲートウェイ装置を含む。無線通信装置は、センタシステムからのリクエストに対応して、制御情報及び他の情報から収集した第1の車両情報をセンタシステムに送信する。カーナビゲーション装置は、センタシステムからのリクエストに対応した制御情報及び他の情報を第2の車両情報及びリンク情報として蓄積し、他の情報を無線通信装置へ送信する。車載ゲートウェイ装置は、センタシステムからのリクエストに対応して、車両電子制御装置からの制御情報を取得し、ネットワークを介して無線通信装置及びカーナビゲーション装置に、取得した制御情報を送信する。
【0012】
本発明のさらに他の態様は、他の情報はカーナビゲーション装置から取得した情報である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両情報をセンタシステムとカーナビゲーション装置に分離して収集し、センタシステムに収集する車両情報の送信に無線通信を用いるので、収集する車両情報量が増大に伴う通信コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両情報収集システムの構成例である。
【図2】車両情報収集システムにおけるデータフローである。
【図3】センタシステムのソフトウェア構成例である。
【図4】無線通信装置とカーナビゲーション装置と車載ゲートウェイ装置のソフトウェア構成例である。
【図5】ユーザのリクエストに従って収集する車両情報を車両に設定するための車両情報収集システムの全体処理フローである。
【図6】車両から集めた車両情報をセンタシステムとカーナビゲーション装置に分けて収集するための車両情報収集システムの全体処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について説明する。図1は、車両システムとセンタシステムとを含む車両情報収集システムの構成例である。センタシステムには、ユーザが無線通信網及びインターネットなどの公共網またはカーメーカ独自の専用網などの通信ネットワーク160を介してアクセスできる。
【0016】
車両システムは、無線通信装置112とカーナビゲーション装置111と車載ゲートウェイ装置100とが情報系LAN110を介して接続されており、また各種ECUと車載ゲートウェイ装置100は、制御系LAN120を介して接続されている。エアバッグなどの車両に搭載される安全装置124は、制御系LAN120とハードワイヤを介して無線通信装置112に接続されている。
【0017】
制御系LAN120にはECU間で車両制御に必要な制御情報(ECUによる制御対象への制御指令や制御対象の状態を示す情報)が流れており、たとえばエンジンECU121からはイグニッションオン/オフや加減速情報や車両速度が、メータECU122からは走行距離やガソリン使用量が、ミッションECUからはシフト位置といった情報が送信されている。これらの制御情報を、車載ゲートウェイ装置120に予め収集する車両情報として設定しておくことにより、無線通信装置112及びカーナビゲーション装置111でも車載ゲートウェイ装置120を通して収集することができる。
【0018】
無線通信装置112は、無線通信網150を介してセンタと接続し、車両内で得られた制御情報やカーナビゲーション装置111から得られた位置情報や絶対時間情報などの車両情報をセンタに送信する。また安全装置124の作動情報などもハードワイヤを介して無線通信装置112が即座に検知し、車両情報としてセンタに送信される。ここで無線通信装置112とは、例えばDCM(Data Communication Module)である。また情報系ネットワーク110は例えばCAN(Controller Area Network)、IEEE1394、MOST(Media−Oriented Systems Transport)である。また制御系ネットワーク120は例えばCAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、FlexRayである。
【0019】
センタシステム140は、無線通信網150と公共網/専用網160を介してユーザ130からアクセスされる。ユーザ130は、例えばカーメーカ/ディーラ、車両オーナー、警察などに設置されるPCのようなコンピュータシステムであり、車両情報収集システムから収集した車両情報に基づいてサービスを提供する。例えば、カーメーカ/ディーラは本システムを用いて車両のメンテナンスに必要な車両情報を車両から収集し、高精度で高信頼なメンテナンスサービスを提供する。また車両から収集したCO2削減量に応じた排出権取引、次期車両開発へのフィードバック、ドライバへのエコ運転アドバイスなどのサービスを提供する。また例えば、車両オーナーは、車両情報に基づいて燃費のよい運転をしているか否かを確認する。また例えば、警察は車両情報に基づいて車両事故発生の要因調査を行う。センタシステム140では、こうしたユーザ130からの多様なサービスに係る要求を受け付け、無線通信網150を介して車両に車両情報収集を要求し、またその応答としてイベント情報を車両から受け取る。ユーザ130は、車両が応答したイベント情報をセンタシステム140から通信ネットワーク160を介して受け取ると共に、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの可搬式記憶媒体170または公共網/専用網160以外の通信ネットワーク(たとえば、無線LAN)を介して車両が蓄積した関連情報を受け取る。関連情報とは、センタシステム140経由のイベント情報に関連した情報である。
【0020】
図2は、車両情報収集システムにおけるデータフロー図である。ユーザ130は、サービスに必要となる車両情報の収集条件と、収集条件に合致した場合にユーザ130にその内容を通知するイベント情報とをセットでリクエスト201としてセンタシステム140に送信する。換言すると、リクエスト201に含まれるイベント情報はたとえば「車両速度」であり、ユーザ130に通知されるその内容とは60km/hr(車両速度の値)である。以下、特に区別しなくても理解される場合は、イベント情報及びその内容のいずれもイベント情報と呼ぶ。
【0021】
センタシステム140ではリクエスト201を受け取ると、リクエスト201内の収集条件およびイベント情報から収集設定情報およびリンク設定情報を抽出し、リクエスト201と収集設定情報とリンク設定情報とをセットにして、車両情報を収集するための設定情報を書き換えるためのリプログラミングデータ(図2及び以下では、リプロデータと記載)202を車両に送信する。リプロデータ202は、予め車両とセンタシステム140が無線通信を介して常時接続されている場合であれば、センタシステム140がイベント的に送信する。常時接続されていない場合は、車両内の無線通信装置112によるセンタシステム140へのポーリングにより、車両がリプロデータ202を取得する。
【0022】
車両内の無線通信装置112はリプロデータ202を受け取ると、リプロデータ202内にセットされているリクエスト201とリンク設定情報を抽出・保持し、リプロデータ202を情報系LAN110に送信する。カーナビゲーション装置111はリプロデータ202を受け付けると、リプロデータ202内の収集設定情報とリンク設定情報を抽出・保持する。車載ゲートウェイ装置100はリプロデータ202内の収集設定情報とリンク設定情報を抽出・保持する。
【0023】
無線通信装置112とカーナビゲーション装置111と車載ゲートウェイ装置100は、リプロデータ202から各々が抽出・保持したリクエスト201と収集設定情報とリンク設定情報とから車両情報収集テーブルを生成し、これに従って制御系LAN及び情報系LANまたはハードワイヤからの情報、または自身が保持する情報を収集する。車両情報収集テーブルは収集する車両情報の一覧であり、LANに流れている車両情報の場合、収集対象のデータを含むメッセージの識別子とメッセージ内のデータ位置(データのバイト及びビット位置)とデータサイズとを含む一覧である。またLANに流れてない車両情報の場合、収集対象のデータの格納先(ECU、無線通信装置、カーナビゲーション装置、または車載ゲートウェイ装置)とデータ識別情報とを含む一覧である。これらの車両情報収集テーブルの情報は、リプロデータ202内の収集設定情報及びリンク設定情報に含まれる。
【0024】
車載ゲートウェイ装置100は、例えばエンジンECU121、メータECU122、ミッションECU123などが送信する制御情報203を、制御系LAN120から車両情報収集テーブルに基づいて収集し、情報系LANに転送する。制御情報203がECUに格納されている場合には、制御系LAN120を介してECUに問合せて、制御情報203を収集する。問合せには、たとえばDiagOnCANなどの既存プロトコルを用いる。
【0025】
カーナビゲーション装置111は、車載ゲートウェイ装置100が送信した制御情報203を、生成した車両情報収集テーブルにもとづいて情報系LAN110を介して収集して自身が保持する大容量記憶装置に蓄積する。また自身が保持する位置情報などのカーナビゲーション情報(図2ではナビ情報と記載)204が収集対象の車両情報として車両情報収集テーブルに登録されている場合には、これも合わせて蓄積する。カーナビゲーション装置111がこれらの車両情報を蓄積する際には、自身が保持する収集設定情報とリンク設定情報に基づき、関連情報+リンク情報のフォーマットにて蓄積する。
【0026】
無線通信装置112は、生成した車両情報収集テーブルにもとづいて車載ゲートウェイ装置100が送信する制御情報203、カーナビゲーション装置111が送信するカーナビゲーション情報204などを情報系LAN110から収集する。また生成した車両情報収集テーブルに自身がハードワイヤを介して接続されている安全装置124からの情報が登録されている場合にはこれも収集する。
【0027】
無線通信装置112は、収集したこれらの車両情報が、保持しているリクエスト201に含まれる収集条件に合致している場合、リクエスト201に含まれるイベント情報に従って必要に応じて車両情報を加工し、レスポンス205をセンタシステム140に送信する。レスポンス205は、イベント情報とリンク情報とをセットにして送信される。レスポンス205に含まれるイベント情報は、前述のようにリクエスト201に含まれるイベント情報の内容などの加工された情報であり、リンク情報は無線通信装置112に保持されているリンク設定情報に基づいて設定された情報である。
【0028】
センタシステム140はレスポンス205を受け取ると、レスポンス205に対応するリクエスト201を発行したユーザ130宛にレスポンス205を公共網/専用網160を介して送信する。リクエスト201を受け取ったときのセンタシステム140の動作説明として省略したが、センタシステム140はリクエスト201とそのリクエストを発行したユーザの識別子とを対応付けたユーザ情報を保持しておき、このユーザ情報を用いてセンタシステム140はリクエスト201を発行したユーザ130を認識する。ユーザ130は、レスポンス205を受信するとイベント情報の内容を確認する。またユーザ130は、必要に応じてカーナビゲーション装置111が蓄積した関連情報とリンク情報とを、可搬式記憶媒体170や通信ネットワークなどを用いて取り出し、リンク情報を使ってイベント情報と関連情報を対応付けて保持する。
【0029】
図3は、センタシステム140のソフトウェア構成例である。リクエスト受信部301は、ユーザ130からのリクエスト201を受信すると、ユーザ130のユーザ識別情報とリクエスト番号を対応付けてユーザ情報として登録する。ユーザ識別情報は、例えばIPアドレスや車台番号などであり、センタシステム140がユーザ130にレスポンス205を送信する際の送信先を特定するために利用する。リクエスト番号は、ユーザ130が送信したリクエスト201に対してセンタシステム140が付与する番号であり、センタシステム140内で一意に決定される。リクエスト番号は、センタシステム140がユーザ130からリクエスト201を受信したタイミングで決定する。これは例えばリクエスト種別とリクエストの受信通番から生成される。ユーザ識別情報及びリクエスト種別は、図示されていないが、リクエスト201に含まれている。リクエスト種別には、さらに車種を示す情報が含まれている。リクエスト受信部301は、ユーザ登録を終えると、リクエスト201を収集設定情報抽出部302に通知する。
【0030】
収集設定情報抽出部302は、リクエスト種別毎の収集設定情報をデータベースとして管理・保持する。データベースに保持されるリクエスト種別毎の収集設定情報は、リクエスト種別毎に収集すべき車両情報を車種別にリスト化されている。収集設定情報抽出部302は、リクエスト受信部301からリクエスト201を受け取ると、リクエスト201内にあるリクエスト種別に対応する収集設定情報をデータベースから抽出する。収集設定情報抽出部302は、抽出した収集設定情報から車種に対応した収集設定情報をさらに抽出し、リクエスト201をリンク設定情報抽出部303に通知する。
【0031】
リンク設定情報抽出部303は、リクエスト種別毎のリンク設定情報をデータベースとして管理・保持する。データベースに保持されるリクエスト種別毎のリンク設定情報は、リクエスト種別毎にイベント情報と関連情報とを結び付けるリンク情報として収集すべき車両情報を車種別にリスト化されている。リンク設定情報抽出部303は、リクエスト受信部301からリクエスト201を受け取ると、リクエスト201内にあるリクエスト種別に対応するリンク設定情報をデータベースから抽出する。リンク設定情報抽出部302は、リクエスト種別毎のリンク設定情報から車種に対応したリンク設定情報を抽出し、リクエスト201をリプロデータ生成部304に通知する。
【0032】
リプロデータ生成部304は、リクエスト201と収集設定情報抽出部302が抽出した収集設定情報とリンク設定情報抽出部303が抽出したリンク設定情報とから、車両に設定するリプロデータ202を生成する。
【0033】
レスポンス受信部305は、車両の無線通信装置112から送信されたレスポンス205を受信すると、レスポンス205に記載されているリクエスト番号からユーザ識別情報を検索して抽出し、ユーザ応答部306に通知する。
【0034】
ユーザ応答部306は、レスポンス受信部305が抽出したユーザ識別情報に従ってレスポンス205をユーザ130に送信する。
【0035】
図4に、車両に搭載される装置である無線通信装置112、カーナビゲーション装置111及び車載ゲートウェイ装置100のソフトウェア構成例を示す。
【0036】
図4(A)は、無線通信装置112のソフトウェア構成例である。リプロデータ受信部401は、センタシステム140から送信されたリプロデータ202を受信すると、リプロデータ送信部402を介して情報系LAN110にリプロデータ202を送信するとともにリプロデータ202を収集情報設定部403に通知する。収集情報設定部403は、リプロデータ202からリクエスト201とリンク設定情報とを抽出し、これらの情報から車両情報収集テーブルを生成する。
【0037】
条件判定部404は、リクエスト201内の収集条件に従って情報系LAN110を介して収集した制御情報203及びナビ情報204及び自身が保持する安全装置124の作動情報を条件判定し、判定結果としての合否が合の場合に収集情報加工部405に通知する。収集情報加工部405では、リクエスト201内のイベント情報で指定された加工方法に従って前記収集した情報を加工し、リンク情報とセットにしてレスポンス205を生成し、センタシステム140に送信する。例えばCO2削減量を測定するサービスの場合、収集条件としてイグニッションオフが指定され、イベント情報としてCO2総排出量(=α×ガソリン使用量×1トリップあたりの走行距離)が指定される。αは、CO2排出係数であり、例えば0.602である。レスポンス205に含まれるイベント情報はCO2総排出量の値である。またリンク情報としては例えばイグニッションオンの回数、位置情報が指定されている。位置情報は、車両の位置情報であり、カーナビゲーション装置111から情報系LAN110を介して取得する。
【0038】
図4(B)は、カーナビゲーション装置111のソフトウェア構成例である。リプロデータ受信部411は、リプロデータ202を情報系LANを介して受信すると収集情報設定部412に通知する。収集情報設定部412は、リプロデータ202から収集設定情報とリンク設定情報を抽出し、これらの情報から車両情報収集テーブルを生成する。関連情報受信部413は、情報系LAN110に流れている制御情報203や自身が保持するナビ情報204を車両情報収集テーブルに従って収集し、関連情報+リンク情報のフォーマットで自身が保持する大容量記憶装置414に蓄積する。
【0039】
図4(C)は、車載ゲートウェイ装置100のソフトウェア構成例である。リプロデータ受信部421は、リプロデータ202を情報系LANを介して受信すると収集情報設定部422に通知する。収集情報設定部422は、リプロデータ202から収集設定情報とリンク設定情報を抽出し、これらの情報から車両情報収集テーブルを生成する。制御情報受信部423は、制御系LAN120に流れている制御情報203を車両情報収集テーブルに従って受信する。また制御系LAN120に流れていない制御情報を収集する場合にはECUに問合せることによって収集する。収集した制御情報203は制御情報送信部424を介して情報系LANに送信される。
【0040】
図5は、ユーザ130が車両情報収集のためのリクエスト201をセンタシステム140に送信してから車両内の無線通信装置112、カーナビゲーション装置111、車載ゲートウェイ装置100が各種設定情報を設定するまでの車両情報収集システム全体としての処理フローである。ユーザ130は、享受したいサービスに対して車両情報の収集条件とイベントを指定しリクエスト201をセンタシステム140に送信する(ステップ501)。収集条件とイベントは、例えばセンタシステム140が準備したフォーマットに従ってユーザ130が指定する。
【0041】
センタシステム140は、ユーザ130からリクエスト201を受信すると、ユーザ識別情報とリクエスト番号を登録する(ステップ502)。リクエスト種別から対応する収集設定情報を抽出し(ステップ503)、リンク設定情報を抽出する(ステップ504)。収集設定情報とリンク設定情報を抽出すると、これら各情報をリクエスト201とセットにしてリプロデータ202を生成する(ステップ505)。
【0042】
無線通信装置112は、リプロデータ202を受信すると(ステップ506)、リプロデータ202からリクエスト201とリンク設定情報を抽出して車両情報収集テーブルを生成し(ステップ507)、リプロデータ202を情報系LANに送信する(ステップ508)。
【0043】
カーナビゲーション装置111は、リプロデータ202を受信するとリプロデータ202から収集設定情報とリンク設定情報を抽出して、車両情報収集テーブルを生成する(ステップ509)。車載ゲートウェイ装置100は、リプロデータ202を受信するとリプロデータ202から収集設定情報とリンク設定情報を抽出して、車両情報収集テーブルを生成する(ステップ510)。
【0044】
図6は、車載ゲートウェイ装置100が制御情報を収集してからユーザにイベント情報と関連情報が渡るまでの車両情報収集システム全体としての処理フローである。車載ゲートウェイ装置100は、制御系LAN120から、またはECUへの問合せにより、車両情報収集テーブルを用いて制御情報203を受信すると、制御情報203を情報系LAN110に送信する(ステップ601)。
【0045】
カーナビゲーション装置111は、車載ゲートウェイ装置100から情報系LAN110に送信された制御情報203と自身が保持するナビ情報204を車両情報収集テーブルに従って収集し、リンク設定に従って関連情報とリンク情報を所定のフォーマットにて自身が保持する大容量記憶装置に蓄積する(ステップ602)。
【0046】
無線通信装置112は、情報系LAN110を介して制御情報203とハードワイヤを介して安全装置の作動情報を収集し、収集条件に従って条件判定を行う(ステップ603)。条件判定が合の場合にはイベント情報として指定されている加工方法に従って収集した情報を加工し、リンク設定に従ってリンク情報を付与してレスポンス205をセンタシステム140に送信する(ステップ604)。
【0047】
センタシステム140は、無線通信装置112から受信したレスポンス205に含まれるリクエスト番号に基づいてユーザ識別情報を検索・抽出し、ユーザ130にレスポンス205を送信する(ステップ605)。
【0048】
ユーザ130は、センタシステム140からレスポンス205を受け取ると、カーナビゲーション装置111が蓄積した関連情報とリンク情報とからなるアカウンタビリティ206を可搬式記憶媒体170を用いて取り出し(ステップ606)、レスポンス205に含まれるイベント情報(加工情報)とアカウンタビリティ206に含まれる関連情報とをリンク情報を用いて再構成することによりサービスに対応した関連付けされた車両情報を取得する(ステップ607)。
【0049】
以上説明したように、本実施形態はユーザ(コンピュータ)は、要求するイベント情報に係る膨大な車両情報を収集するために、センタシステムを介してイベント情報の内容を取得し、このイベント情報に関わる膨大な車両情報を関連情報として、可搬式記憶媒体やセンタシステム経由でない無線LANなどの通信ネットワークを介して取得する。このように取得したイベント情報と関連情報とを関連付ける(再構成する)ために、ユーザ(コンピュータ)はそれらの情報の関連を示すリンク情報をイベント情報と関連情報とにそれぞれ対応させて取得する。
【0050】
以上のように本実施形態によれば、ユーザが享受したいサービスに必要な車両情報をセンタシステムとカーナビゲーション装置に分離して収集し、センタシステムに収集する車両情報の送信に無線通信を用いるので、収集する車両情報量の増大に伴う通信コストの肥大化を防止することができる。
【0051】
また本実施形態によれば、分離して集めた車両情報間をサービスに関連性の高い情報で関連付けることにより、分離された車両情報を、関連性を持たせた状態で再構成することが可能になる。具体的には、サービスに対応した例えば位置情報などの情報を用いてイベント情報とカーナビゲーション装置に蓄積した関連情報とを関連付けるので、ユーザはサービスに必要な詳細な車両情報を容易に収集することが可能になる。
【0052】
さらに本実施形態によれば、車両情報をイベント情報と関連情報に分けて収集することが可能なため、例えば車両のCO2削減量を実際の走行データからイベント情報として収集し、この値の正当性を関連情報を用いて証明するといったことも可能になる。これにより例えばカーメーカは自社で目標とするCO2削減量の一部をドライバに委ねることが可能になる。言い換えると、車両が送信したCO2削減量がカーナビゲーション装置に蓄積された関連情報によってその正当性が証明されるので、カーメーカはドライバからCO2削減量を買い取ることも可能であり、またドライバのエコ運転への動機付けにもなる。
【符号の説明】
【0053】
100:車載ゲートウェイ装置、110:情報系LAN、111:カーナビゲーション装置、112:無線通信装置、120:制御系LAN、130:ユーザコンピュータ、140:センタシステム、150:無線通信網、160:通信ネットワーク、170:可搬式記憶媒体、201:リクエスト、202:リプロデータ、203:制御情報、204:ナビ情報、205:レスポンス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報を収集するためのユーザコンピュータからの通信ネットワークを介したリクエストに応答して、前記リクエストを車両システムに送信し、前記車両システムからの前記リクエストに対応した第1の車両情報と、前記第1の車両情報に関連する第2の車両情報との関連を示すリンク情報とを受信し、受信した前記第1の車両情報と前記リンク情報とを前記ユーザコンピュータに送信するセンタシステムと、
前記センタシステムと無線通信網を介して接続し、前記センタシステムからの前記リクエストに対応した前記第1の車両情報と前記第2の車両情報とを収集し、前記第1の車両情報と前記第2の車両情報との関連を示す前記リンク情報を生成し、前記第1の車両情報と前記リンク情報とを前記センタシステムに送信し、前記第2の車両情報と前記リンク情報とを蓄積する車両システムと、
前記センタシステムと前記センタシステムから前記第1の車両情報と前記リンク情報とを前記通信ネットワークを介して受信し、前記車両システムに蓄積された前記第2の車両情報と前記リンク情報とを取得し、前記センタシステムから受信した前記リンク情報と前記車両システムから取得した前記リンク情報との対応関係を用いて、前記リクエストに対応した前記第1の車両情報と前記第2の車両情報とを再構成する前記ユーザコンピュータとを有する車両情報収集システム。
【請求項2】
前記リクエストは前記車両情報を収集する収集条件と前記センタシステムで収集する前記第1の車両情報とを含み、
前記センタシステムは、前記リクエストに対応して収集すべき車両情報のリストを予め保持し、前記リクエストに対応する収集すべき車両情報を前記リクエストに付加して前記車両システムに送信することを特徴とする請求項1記載の車両情報収集システム。
【請求項3】
前記センタシステムがリストとして保持する前記車両情報は、前記第1の車両情報、および、前記第1の車両情報と前記第2の車両情報とを関連付ける前記リンク情報を含むことを特徴とする請求項2記載の車両情報収集システム。
【請求項4】
前記車両システムは、
前記センタシステムからの前記リクエストに対応して、制御情報及び他の情報から収集した前記第1の車両情報を前記センタシステムに送信する無線通信装置、
前記無線通信装置とネットワークを介して接続し、前記センタシステムからの前記リクエストに対応した前記制御情報及び前記他の情報を前記第2の車両情報及び前記リンク情報として蓄積し、前記ネットワークを介して前記他の情報を前記無線通信装置へ送信するカーナビゲーション装置、及び
前記無線通信装置及び前記カーナビゲーション装置と前記ネットワークを介して接続し、前記センタシステムからの前記リクエストに対応して、車両電子制御装置からの前記制御情報を取得し、前記ネットワークを介して前記無線通信装置及び前記カーナビゲーション装置に、前記取得した前記制御情報を送信する車載ゲートウェイ装置を有することを特徴とする請求項3記載の車両情報収集システム。
【請求項5】
前記他の情報は前記カーナビゲーション装置から取得した情報であることを特徴とする請求項4記載の車両情報収集システム。
【請求項6】
無線通信網を介して接続するユーザコンピュータとセンタシステムと車両システムとを有する車両情報収集システムにおける車両情報収集方法であって、
前記センタシステムは、車両情報を収集するための前記ユーザコンピュータからのリクエストに応答して、前記リクエストを車両システムに送信し、
前記車両システムは、前記センタシステムからの前記リクエストに対応した第1の車両情報と第2の車両情報とを収集し、前記第1の車両情報と前記第2の車両情報との関連を示すリンク情報を生成し、前記第1の車両情報と前記リンク情報とを前記センタシステムに送信し、前記第2の車両情報と前記リンク情報とを蓄積し、
前記センタシステムは、前記車両システムから前記第1の車両情報と前記リンク情報とを受信し、前記受信した第1の車両情報と前記リンク情報とを前記ユーザコンピュータに送信し、
前記ユーザコンピュータは、前記センタシステム前記第1の車両情報と前記リンク情報とを受信し、前記車両システムに蓄積された前記第2の車両情報と前記リンク情報とを取得し、前記センタシステムから受信した前記リンク情報と前記車両システムから取得した前記リンク情報との対応関係を用いて、前記リクエストに対応した前記第1の車両情報と前記第2の車両情報とを再構成することを有する車両情報収集方法。
【請求項7】
前記リクエストは前記車両情報を収集する収集条件と前記センタシステムで収集する前記第1の車両情報とを含み、
前記センタシステムは、前記リクエストに対応して収集すべき車両情報のリストを予め保持し、前記リクエストに対応する収集すべき車両情報を前記リクエストに付加して前記車両システムに送信することを特徴とする請求項6記載の車両情報収集方法。
【請求項8】
前記センタシステムがリストとして保持する前記車両情報は、前記第1の車両情報、および、前記第1の車両情報と前記第2の車両情報とを関連付ける前記リンク情報を含むことを特徴とする請求項7記載の車両情報収集方法。
【請求項9】
前記車両システムは、ネットワークを介して接続する無線通信装置、カーナビゲーション装置および車載ゲートウェイ装置を有し、
前記車載ゲートウェイ装置は、前記センタシステムからの前記リクエストに対応して、車両電子制御装置からの制御情報を取得し、前記ネットワークを介して前記無線通信装置及び前記カーナビゲーション装置に、前記取得した前記制御情報を送信し、
前記カーナビゲーション装置は、前記センタシステムからの前記リクエストに対応した前記制御情報及び他の情報を前記第2の車両情報及び前記リンク情報として蓄積し、前記ネットワークを介して前記他の情報を前記無線通信装置へ送信し、
前記無線通信装置は、前記センタシステムからの前記リクエストに対応して、前記制御情報及び前記他の情報から収集した前記第1の車両情報を前記センタシステムに送信することを特徴とする請求項8記載の車両情報収集方法。
【請求項10】
前記他の情報は前記カーナビゲーション装置から取得した情報であることを特徴とする請求項9記載の車両情報収集方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−191777(P2010−191777A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36579(P2009−36579)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】