説明

車両挙動制御装置

【課題】走行中にドアが開いてしまった場合に、フェールセーフ動作が可能な車両挙動制御装置を提供する。
【解決手段】車両のドア6の開閉を検出する検出手段7Bと、ヨーレートを発生させる挙動デバイス4L、4Rと、前記検出手段7Bが前記ドア6の開放を検出した場合に、前記車両に、前記ドア6の開放方向と反対方向の慣性力が発生するように、前記挙動デバイス4L、4Rを制御する制御手段8と、を備えることを特徴とする車両挙動制御装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両挙動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の旋回性等を向上させる目的で、後輪のトー角を制御する4輪操舵装置が種々提案されている。例えば、低速走行時には、前輪と後輪のトー角を逆位相にして最小回転半径を小さくすることができ、高速走行時には、前輪と後輪のトー角を同位相にして車線変更等の際の操縦性を高めることができる。また、左右の後輪のトー角を独立に制御する技術として、油圧機構によるアクチュエータを用いたもの、油圧機構に代えて送りねじ機構によるアクチュエータを用いたものも提案されている。
【0003】
また、車両のドア(スライドドアを含む)は、稀に走行中に開くことがある。例えば、ドアを閉めたつもりでいて、その後、何かしらの振動で開いてしまう場合等である。このように不意にドアが開放すると、車載していた荷物が車両から転落するおそれがある。
【0004】
そこで、このような走行中の不意のドアの開放に対しては、事前にドアがしっかりと閉じられていないことを知らせる警告が出る技術が提案されている。また、走行中のドアの開閉を抑制する技術も提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−206674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように走行中の不意のドアの開放に対して、走行中のドアの開閉を抑制する技術等は提案されているが、それでもフェールセーフ動作が可能なようにしておくことが望ましい。
【0007】
そこで、本発明は、走行中にドアが開いてしまった場合に、フェールセーフ動作が可能な車両挙動制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、車両のドアの開閉を検出する検出手段と、ヨーレートを発生させる挙動デバイスと、前記検出手段が前記ドアの開放を検出した場合に、前記車両に、前記ドアの開放方向と反対方向の慣性力が発生するように、前記挙動デバイスを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする車両挙動制御装置である。
【0009】
このような車両挙動制御装置によれば、制御手段は、検出手段がドアの開放を検出した場合に、車両に、ドアの開放方向と反対方向の慣性力が発生するように、挙動デバイスを制御する。このように挙動デバイスを制御することによって、走行中にドアが開いてしまった場合に、フェールセーフ動作がなされる。
【0010】
また、前記挙動デバイスは、駆動力配分装置、制動力配分装置、後輪操舵装置、前輪操舵を制御する装置のいずれか一つであることを特徴とする車両挙動制御装置である。
【0011】
このような車両挙動制御装置によれば、挙動デバイスが駆動力配分装置、制動力配分装置、後輪操舵装置、前輪操舵を制御する装置のいずれか一つであることから、車両に適切なヨーレートを発生させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、走行中にドアが開いてしまった場合に、フェールセーフ動作が可能な車両挙動制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
≪第1実施形態≫
本発明の第1実施形態について、図1から図6を参照して説明する。
図1は第1実施形態に係る車両挙動制御装置を備えた四輪自動車の全体概念図である。
【0014】
≪車両挙動制御装置の構成≫
図1に示すように、車両挙動制御装置1Aは、後輪2L、2Rのトー角をそれぞれ独立にアクチュエータ3によって変更させるトー角変更装置4L、4R、車速センサ5、ドア6の開閉を検出するドアセンサ7A、これらを電子制御するECU(Electronic Control Unit、電子制御装置)8等を含んで構成されている。
【0015】
<トー角変更装置>
次に図2、図3を参照しながらトー角変更装置の構成を説明する。
図2は左後輪側のトー角変更装置の平面図であり、図3はトー角変更装置のアクチュエータの構造を示す概略断面図である。
トー角変更装置4L、4Rは、車両の左右の後輪2L、2Rにそれぞれ取り付けられるものであり、図2では、左後輪2Lを例にとりトー角変更装置4Lを示している。トー角変更装置4Lは、アクチュエータ3、駆動装置(駆動手段)9を備えている。
なお、図2は、左側の後輪2Lのみを示しているが、右側の後輪2Rについても同様(対称)にして取り付けられている。
【0016】
図2に示すように、車体のリアサイドフレーム11にほぼ車幅方向に延びるクロスメンバ12の車幅方向端部が弾性支持されている。そして、ほぼ車体前後方向に延びるトレーリングアーム13の前端がクロスメンバ12の車幅方向端部近くで支持されている。トレーリングアーム13の後端に後輪2Lが固定されている。
トレーリングアーム13は、クロスメンバ12に装着される車体側アーム13aと、後輪2Lに固定される車輪側アーム13bとが、ほぼ鉛直方向の回動軸13cを介して連結されて構成されている。これにより、トレーリングアーム13が車幅方向へ変位することが可能となっている。
【0017】
アクチュエータ3は、その一端が車輪側アーム13bの回動軸13cより前方側の前端部にボールジョイント16を介して取り付けられ、他端がクロスメンバ12にボールジョイント17を介して取り付けられている。
【0018】
図3に示すように、アクチュエータ3は、電動機31、減速機構33、送りねじ部35等を備えて構成されている。
電動機31は、正逆両方向に回転可能なブラシモータやブラシレスモータ等で構成されている。
減速機構33は、例えば、2段のプラネタリギア(図示せず)等が組み合わされて構成されている。
【0019】
送りねじ部35は、円筒形状に形成されたロッド35aと、このロッド35aの内部に挿入されて円筒形状をし、内周側にスクリュー溝35bが形成されたナット35cと、スクリュー溝35bと噛合してロッド35aを軸方向に移動可能に支持するスクリュー軸35dとを備えて構成されている。
送りねじ部35は、電動機31及び減速機構33とともに細長形状のほぼ円筒形状のケース本体34内に収容されている。また、ケース本体34の送りねじ部35側にはブーツ36がケース本体34の端部とロッド35aの端部との間を蓋うように取り付けられており、ケース本体34の端部から露出したロッド35aの外周面に埃や異物が付着したり、ケース本体34の内部に外部から埃や異物や水が侵入しないようになっている。
【0020】
減速機構33の一端が電動機31の出力軸と連結され、他端がスクリュー軸35dと連結されている。電動機31からの動力が、減速機構33を介してスクリュー軸35dに伝達されてスクリュー軸35dが回転することで、ロッド35aがケース本体34に対して図示左右方向(軸方向)に伸縮自在に動作するようになっている。スクリュー軸35dとナット35cのスクリュー溝35bとの噛合の摩擦力により、電動機31が通電されて駆動されていない状態においても、後輪のトー角が一定に保持される。
【0021】
また、アクチュエータ3には、ロッド35aの位置(伸縮量)を検出するストロークセンサ38が設けられている。このストロークセンサ38は、例えば、マグネットが内蔵され、磁気を利用して位置を検出できるようになっている。このように、ストロークセンサ38を用いて位置を検出することにより、後輪2L、2Rのトーイン、トーアウトの舵角(トー角)を個別に高精度に検出できるようになっている。
【0022】
このように構成されたアクチュエータ3は、ロッド35aの先端に設けられたボールジョイント16がトレーリングアーム13の車輪側アーム13b(図2参照)に回動自在に連結され、ケース本体34の基端(図3において右側の端)に設けられたボールジョイント17がクロスメンバ12(図2参照)に回動自在に連結されている。電動機31の動力によってスクリュー軸35dが回転してロッド35aが伸びる(図3の左方向)と、車輪側アーム13bが車幅方向外側(図2の左方向)に押圧されて、後輪2Lが左方向に旋回し、またロッド35aが縮む(図3の右方向)と、車輪側アーム13bが車幅方向内側(図2の右方向)に引かれて、後輪2Lが右方向に旋回する。
【0023】
なお、アクチュエータ3のボールジョイント16が取り付けられる場所は、ナックル等後輪2Lのトー角を変更できる位置であれば、車輪側アーム13bに限定されるものではない。また、第1実施形態においてトー角変更装置4L、4Rはセミトレーリングアーム型独立懸架方式のサスペンションに対して適用した場合の例で示したがそれに限定されるものではなく、他の懸架方式のサスペンションにも適用できる。
例えば、ダブルウイッシュボーン式サスペンションのサイドロッドや、ストラット式サスペンションのサイドロッドに前記アクチュエータ3を組み込むことによっても実現できる。
【0024】
また、アクチュエータ3には、駆動装置9が一体に取り付けられている。駆動装置9は、アクチュエータ3のケース本体34に固定され、ストロークセンサ38と図示しないコネクタ等を介して接続されている。また、左右の駆動装置9、9同士の間と、駆動装置9、9とECU8との間とは通信回線で接続されている。
駆動装置9には、車両に搭載された図示しないバッテリ等の電源から電力が供給される。また、ECU8にも前記とは別系統でバッテリ等の電源から電力が供給される。
【0025】
図4はトー角変更装置の駆動装置のブロック図である。
図4に示すように、駆動装置9は、アクチュエータ制御部(以下、ACT制御部と略記する)21とドライバ22とで構成されている。
【0026】
ACT制御部21は、CPU(Central Processing Unit)等を有して構成され、目標電流算出部(目標電流算出手段)21a、補正電流設定部21b等を備えている。
目標電流算出部21aは、ECU8から入力される信号に基づいて、目標電流信号(目標電流)を算出してドライバ22に出力する。目標電流信号とは、アクチュエータ3を所望の作動量(後輪2Lを所望のトー角にする伸縮量)に設定するのに必要な電流信号である。補正電流設定部21bは、ストロークセンサ38から入力される位置情報に基づいて目標電流信号を補正するための補正電流信号を目標電流算出部21aに出力する。また、目標電流算出部21aは、補正電流信号を目標電流信号に加算あるいは減算し、補正後の目標電流信号をドライバ22に出力する。
なお、前記したACT制御部21の構成は一例であり、補正電流設定部21bを目標電流算出部21a内に含めて、補正電流設定部21bの処理を目標電流算出部21a内で行うようにしてもよい。
【0027】
ドライバ22は、電動機制御信号生成部22a、電動機駆動回路22b等を備えている。電動機制御信号生成部22aは、ACT制御部21から目標電流信号が入力され、電動機駆動回路22bに電動機制御信号を出力する。この電動機制御信号は、電動機31に供給する電流値と電流を流す方向を含む信号である。電動機駆動回路22bは、FET(Field Effect Transistor)のブリッジ回路等で構成され、電動機制御信号に基づいて電動機31に電動機電圧を印加する。
【0028】
<車速センサ>
車速センサ5は、車両の車速を検出するセンサであって、車両の適所に設けられている。そして、車速センサ5はECU8と接続されており、ECU8は車両の車速を検知するようになっている。
【0029】
<ドアセンサ>
ドアセンサ7Aは、ドア6の開閉を検知する、具体的に第1実施形態では、半ドアを検出するセンサであって、車両の適所に設けられている。そして、ドアセンサ7AはECU8と接続されており、ECU8は、車両のドア6が閉まっている状態、または半ドアの状態であることを検知するようになっている。なお、このドアセンサ7Aは、ドア6の個数に応じて、複数個設けられている。
【0030】
<ECU>
ECU8は、アクチュエータ3の作動量を指示する機能を有し、通信回線を介してアクチュエータ3に設けられた駆動装置9と接続されている。また、ECU8は、CPU等を有して構成され、アクチュエータ3から離れた別の場所(例えば、トランクルーム付近)に設けられたボックス(図示せず)等に収納されている。
【0031】
また、ECU8は、アクチュエータ3を所望の作動量(後輪2Lのトー角を所望の角度に設定する伸縮量)に設定するための信号を、駆動装置9のACT制御部21に出力する。また、ECU8は、車速センサ5及びドアセンサ7Aと接続され、車速センサ5によって車両の車速が検出され、ドアセンサ7Aによって車両のドア6の開閉状態が検出されるように構成されている。
さらに、ドアセンサ7Aから得られるドア6の開閉状態に基づいて、車両に、ドア6の開放方向と反対方向の慣性力(ヨーレート、重力)が発生するように、左右それぞれの後輪2L、2Rのトー角を所望の角度で独立に制御できるようになっている。
【0032】
このように構成された第1実施形態の車両挙動制御装置1Aでは、ECU8がアクチュエータ3を所望の作動量に設定するための指令をACT制御部21に出力することによって、ACT制御部21は目標とする目標電流信号を算出し、この目標電流信号をドライバ22に出力する。ドライバ22は、受け取った目標電流信号に基づいて電動機31を、正方向または逆方向に所定の回転速度で駆動する駆動信号を生成して電動機31に出力する。これにより、アクチュエータ3のロッド35aが、トレーリングアーム13を車幅方向外側または内側に移動させることで伸縮して、後輪2Lが左旋回または右旋回する。
また、ストロークセンサ38によって検出されたアクチュエータ3の実際の位置情報が通信回線を介してACT制御部21に出力される。ACT制御部21では、補正電流信号を目標電流信号に加算または減算して、補正後の目標電流信号を、ドライバ22を介して電動機31に送ることで電動機31の位置が修正される。左右の後輪2L、2Rを独立に制御する具体例としては、車両の旋回時に外輪側のみをトー制御することで旋回性を高めることが可能になる。
【0033】
≪車両挙動制御装置の動作≫
次に、車両挙動制御装置1Aの動作について、図5を主に参照しながら説明する。なお、当該動作は、所定時間(例えば、10ms)毎に繰り返し行われている。
【0034】
ステップS1において、車速センサ5により車両の車速を検出する。
【0035】
ステップS2において、ECU8は、この車速が所定値以上であるか否かを判定する。ここでいう所定値とは、極めて低速、例えば、5km/hであり、走行中にドア6が突然開いても荷物が車両から転落しない等の支障をきたさない車速の上限値であって、事前試験やシミュレーションにより求められ、ECU8に予め記憶されている。また、低車速でアクチュエータを動かすと路面反力が大きいので、システムに大きな負荷がかかるといった点や低車速では期待するような反対方向の慣性力が得られないといった点をも考慮して決めている。
車両の車速が、この所定値以上である場合(S2・Yes)、ECU8の処理はステップS3に進む。一方、車両の車速が、この所定値より小さい場合(S2・No)、ECU8の処理はリターンを介して、スタートに戻る。
【0036】
ステップS3において、ドアセンサ7Aによりドア6の状態、すなわち、ドア6の開閉を検知する。
【0037】
ステップS4において、ECU8は、このドア6が開放しているか否かを判定する。具体的に、第1実施形態では、ドアセンサ7Aは、半ドアを検出するセンサであることから、当該ドアセンサ7Aの検知結果に基づいて、車両のドア6が閉まっている状態であるか、または半ドアの状態であるかを判定する。なお、第1実施形態では、半ドアの状態が、開放している状態である。
車両のドア6が、開放している場合(S4・Yes)、ECU8の処理はステップS5に進む。一方、車両のドア6が、開放していない(閉まっている)場合(S4・No)、ECU8の処理はリターンを介して、スタートに戻る。
【0038】
ステップS5において、ECU8は、車両に、ドア6の開放方向と反対方向の慣性力が発生するように、左右それぞれの後輪2L、2Rのトー角を所望の角度で独立に制御する。すなわち、アクチュエータ3を所望の作動量に設定する。
具体的には、図6に示すように、右側のドア6が半ドアである(ドア6の開放方向は右方向である)場合、通常警報が発せられる。
第1実施形態では、フェールセーフ動作を行うことで、乗員に半ドアであることを気づかせるために、車両に、ドア6の開放方向と反対方向である左方向の慣性力が発生するように、アクチュエータ3を所望の作動量に設定する。つまり、後輪2L、2Rが右方向に旋回するように、アクチュエータ3の作動量を設定する。
このアクチュエータ3の作動量は、車両の車速と操向ハンドルの操作角等に基づくものであって、事前試験やシミュレーションにより求められ、ECU8に予め記憶されている。
そして、このアクチュエータ3を所望の作動量に設定するための信号がECU8から駆動装置9に入力されることによって、トー角変更装置は、ロッド35aが縮み(図3の右方向)、車輪側アーム13bが車幅方向内側(図2の右方向)に引かれて、後輪2Lが右方向に旋回するようになる。
その後、ECU8の処理は、リターンを介して、スタートに戻る。
【0039】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態について、図7及び図8を参照して説明する。
第2実施形態に係る車両挙動制御装置1Bは、半ドアを検出するドアセンサ7Aに代えて、半ドアよりも開放した状態を検出するドアセンサ7Bを備えている。ドアセンサ7Bは、車両の適所に設けられている。
【0040】
そして、ドアセンサ7BはECU8と接続されており、ECU8は、車両のドア6が閉まっている状態、または半ドアよりも開放した状態であることを検知するようになっている。
【0041】
そして、第2実施形態では、ECU8は、車両に、ドア6の開放方向と反対方向の慣性力が発生するように、左右それぞれの後輪2L、2Rのトー角を所望の角度で独立に制御する。すなわち、アクチュエータ3を所望の作動量に設定する。
具体的には、図8に示すように、右側のドア6が半ドアよりも開放した状態になった(ドア6の開放方向は右方向である)場合、荷物が車両から転落しないようにするため、車両に、ドア6の開放方向と反対方向である左方向の慣性力が発生するように、アクチュエータ3を所望の作動量に設定する。つまり、後輪2L、2Rが右方向に旋回するように、アクチュエータ3の作動量を設定する。
このアクチュエータ3の作動量は、車両の車速と操向ハンドルの操作角等に基づくものであって、事前試験やシミュレーションにより求められ、ECU8に予め記憶されている。
【0042】
このような車両挙動制御装置1Bによれば、ECU8は、ドアセンサ7Bがドア6の開放を検出した場合に、車両に、ドア6の開放方向と反対方向の慣性力が発生するように、トー角変更装置4L、4Rを制御する。このようにトー角変更装置4L、4Rを制御することによって、走行中にドア6が開いてしまった場合に、フェールセーフ動作がなされる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば、次のように変更することができ、また、次の構成を適宜組み合わせてもよい。
【0044】
前記した実施形態では、ヨーレートを発生する挙動デバイスとして、後輪操舵装置(トー角変更装置4L、4R)を例に説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その他の挙動デバイス、例えば、駆動力配分装置、制動力配分装置、前輪操舵を制御する装置を用いてもよい。このような挙動デバイスのいずれかを用いることによって、車両に適切なヨーレートを発生させることができる。
【0045】
前記した実施形態では、半ドアまたは半ドアよりも開放した状態を検出するドアセンサ7A、7Bをそれぞれ例に説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、半ドア及び半ドアよりも開放した状態を、段階別に(距離に応じて)、検出するカーテシスイッチを用いてもよい。具体的に、カーテシスイッチとは、第一段階では、半ドアを検出する機能を有するドアセンサであって、その後走行距離に応じて、第二段階では、半ドアよりも開放した状態を検出する機能を有するドアセンサである。
【0046】
前記した実施形態では、荷物が車両から転落しないようにするための慣性力が発生するように、アクチュエータ3を所望の作動量に設定したが、これに限定されるものではなく、ドア6が開放した後、当該ドア6を閉める(ロック状態にする)ための慣性力が発生するように、アクチュエータ3の作動量を設定してもよい。このようにアクチュエータ3の作動量を設定することによって、ドア6をロック状態にすることができる。
また、ドア6がスライドドアの場合には、荷物が車両から転落しないようにするための慣性力を発生させるのに加えて、制動手段によって減速重力(G)を発生させて、ドア6をロック状態(ロック)にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態に係る車両挙動制御装置を備えた四輪自動車の全体概念図である。
【図2】左後輪側のトー角変更装置の平面図である。
【図3】トー角変更装置のアクチュエータの構造を示す概略断面図である。
【図4】トー角変更装置の駆動装置のブロック図である。
【図5】車両挙動制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態に係るドア及び後輪の状態を示す模式図である。
【図7】第2実施形態に係る車両挙動制御装置を備えた四輪自動車の全体概念図である。
【図8】第2実施形態に係るドア及び後輪の状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0048】
1A、1B 車両挙動制御システム
2L、2R 後輪
3 アクチュエータ
4L、4R トー角変更装置
5 車速センサ
6 ドア
7A、7B ドアセンサ
8 ECU
9 駆動装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアの開閉を検出する検出手段と、
ヨーレートを発生させる挙動デバイスと、
前記検出手段が前記ドアの開放を検出した場合に、前記車両に、前記ドアの開放方向と反対方向の慣性力が発生するように、前記挙動デバイスを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項2】
前記挙動デバイスは、駆動力配分装置、制動力配分装置、後輪操舵装置、前輪操舵を制御する装置のいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の車両挙動制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−120499(P2010−120499A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295386(P2008−295386)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】