説明

車両用サスペンション取り付け構造及び組み付け方法

【課題】車体前部において車体前後方向に延びる左右一対のフロントフレームと、これらのフロントフレームを車幅方向に連結し、サスペンションが取り付けられるサスペンションクロスメンバとを有する車両用サスペンション取り付け構造において、フロントフレームの段差を少なくし、かつフロントフレームの断面積を拡大可能な車両用サスペンションの取り付け構造を提供する。
【解決手段】サスペンション20を、サスペンションクロスメンバ31に、フロントフレーム13よりも車幅方向内側で取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サスペンションの取り付け構造及び組み付け方法に関し、車両用サスペンションの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
車両用サスペンションの取り付け構造として、例えば、特許文献1〜3には、車体前部において車体前後方向に延びる左右一対のフロントフレームを車幅方向に連結するサスペンションクロスメンバを設け、該サスペンションクロスメンバにサスペンションを取り付けたものが開示されている。特許文献4には、その構造がより詳しく開示されており、該文献によれば、サスペンションクロスメンバは、車幅方向両端部がフロントフレームの下面に取り付けられ、これらの端部に、サスペンションアームの車幅方向内端部が取り付けられている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【特許文献2】特開2005−028911号公報
【特許文献3】特開2005−029057号公報
【特許文献4】特開2003−118630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フロントフレームは、前部側がフロアパネルよりも高い位置に配置され、後部側が下方にキックダウンして、フロアパネル下面に設けられた左右一対のフロアフレームに接続される場合があるが、フロントフレームに衝撃荷重が作用したときのことを想定すると、前記キックダウンによる段差が小さく、かつフロントフレームの断面積が大きいのが好ましい。
【0005】
しかし、フロントフレームの直下方には、前述のようにサスペンションクロスメンバへのサスペンションアームの取り付け部が設けられており、フロントフレームの前部側を低くすると、この取り付け位置が低くなりサスペンションアームの地上高を十分確保できなくなる。すなわち、フロントフレームの前部側を低くするのは限度がある。
【0006】
そこで、本発明は、フロントフレームの前部側を低くしつつ、その断面積を拡大可能な車両用サスペンションの取り付け構造、及び該サスペンションの組み付け方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車体前部において車体前後方向に延びる左右一対のフロントフレームと、これらのフロントフレームを車幅方向に連結し、サスペンションが取り付けられるサスペンションクロスメンバとを有する車両用サスペンション取り付け構造であって、前記サスペンションは、前記サスペンションクロスメンバに、前記フロントフレームよりも車幅方向内側で取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両用サスペンション取り付け構造において、前記サスペンションは、車幅方向に延びて、車幅方向外端部が車輪に連結されるサスペンションアームを有しており、該サスペンションアームの車幅方向内端部が、フロントフレームよりも車幅方向内側で前記サスペンションクロスメンバに連結されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の車両用サスペンション取り付け構造において、前記サスペンションアームは、上下に離間して配置されたアッパーアームとロアアームとで構成されており、アッパーアームは、フロントフレームの上方で車幅方向に延びて、車幅方向内端部がフロントフレームよりも車幅方向内側で前記サスペンションクロスメンバに連結され、ロアアームは、フロントフレームの下方で車幅方向に延びて、車幅方向内端部がフロントフレームよりも車幅方向内側で前記サスペンションクロスメンバに連結されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用サスペンション取り付け構造において、前記サスペンションクロスメンバは、前記左右のフロントフレームの下部間を連結していると共に、該左右のフロントフレームの上部間を、平面視でサスペンションクロスメンバと重なる位置において車幅方向に連結する連結クロスメンバが設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、車体前部において車体前後方向に延びる左右一対のフロントフレームと、これらのフロントフレームを車幅方向に連結するサスペンションクロスメンバとを有する車両において、該サスペンションクロスメンバに、ダブルウィッシュボーン式のサスペンションを組み付ける方法であって、前記サスペンションクロスメンバに、サスペンションのロアアームの車幅方向内端部を連結する第1の工程と、第1の工程の実行後、サスペンションクロスメンバを下方から前記フロントフレームに取り付ける第2の工程と、第2の工程の実行後、サスペンションのアッパーアームの車幅方向内端部を、フロントフレームを上方から跨いでサスペンションクロスメンバに取り付ける第3の工程とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
次に、本発明の効果について説明する。
【0014】
まず、請求項1に記載の発明によれば、サスペンションは、サスペンションクロスメンバに、フロントフレームよりも車幅方向内側で取り付けられているから、フロントフレームの前部側を従来よりも低くすることができる。そして、その際、フロントフレームの上下幅を大きくして、その断面積を拡大することもできる。また、例えばフロントフレームの後部側にキックアップ部による段差がある場合は、その段差を小さくすることができる。したがって、フロントフレームに衝撃荷重が作用したときの耐力を向上させることができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、サスペンションは、車幅方向に延びて、車幅方向外端部が車輪に連結されるサスペンションアームを有している場合に、該サスペンションアームの車幅方向内端部が、フロントフレームよりも車幅方向内側でサスペンションクロスメンバに連結されているから、フロントフレームの直下方で連結されている場合よりも、サスペンションアームのアーム長を長くすることができる。したがって、サスペンション・ジオメトリの設定自由度が向上し、例えばキャンバの変化を小さくすることができる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記サスペンションアームが、上下に離間して配置されたアッパーアームとロアアームとを有するダブルウィッシュボーン式のものであるので、ストラット式等と比べて、車輪のキャンバ変化やロールセンタ等、サスペンション・ジオメトリの設定自由度を良好に確保することができる。しかも、アッパーアームは、フロントフレームの上方で車幅方向に延び、ロアアームは、フロントフレームの下方で車幅方向に延びているから、アッパーアームがフロントフレームの下方に設けられている場合よりも、アッパーアームとロアアームとの上下間隔を大きくすることができる。したがって、サスペンション・ジオメトリの設定自由度が一層向上し、例えばキャンバの変化を一層抑制することができる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記サスペンションクロスメンバは、前記左右のフロントフレームの下部間を連結していると共に、該左右のフロントフレームの上部間を、平面視でサスペンションクロスメンバと重なる位置において車幅方向に連結する連結クロスメンバが設けられているから、車両正面視で枠状の構造が形成され、車体における左右のサスペンション取り付け部間、ひいては車体前部の車幅方向剛性が向上する。したがって、設定されたサスペンション・ジオメトリによる走行特性を確実に発揮させることができる。
【0018】
また、請求項5に記載の発明によれば、まず、第1の工程として、前記サスペンションクロスメンバに、サスペンションのロアアームの車幅方向内端部を連結する。そして、第1の工程の実行後、第2の工程として、サスペンションクロスメンバを前記フロントフレームに取り付ける。そして、第2の工程の実行後、第3の工程として、サスペンションのアッパーアームの車幅方向内端部を、フロントフレームを上方から跨いでサスペンションクロスメンバに取り付ける。したがって、サスペンションのアッパーアームがフロントフレームの上方を通過し、ロアアームがフロントフレームの下方を通過するように構成されている場合でも、フロントフレームに、サスペンション及びサスペンションクロスメンバを容易に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る車両用サスペンション取り付け構造について説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態に係る車両の車体前部の要部の側面図、図2は同平面図、図3は同正面図である。本車両1は、車体前部に設けられたエンジンルーム2内に配置されたエンジン3により変速機4及び動力伝達機構5を介して後輪(図示せず)を駆動するFRタイプの車両であり、また、エンジン5が前輪6の軸心6aよりも後方に位置するフロントミッドシップタイプの車両として構成されている。
【0021】
この車両1の車体前部には、エンジンルーム2と車室7とを仕切るダッシュパネル11が設けられていると共に、該ダッシュパネル11の下端から後方に延び、車体の床面を構成するフロアパネル12が設けられている。ダッシュパネル11の下部側及びフロアパネル12には、車体前後方向に延び、かつ上方に膨出するトンネル部12aが形成されている。そして、前記エンジン3の後部側、変速機4、及び動力伝達機構5はこのトンネル部12a内に収容されている。
【0022】
ダッシュパネル11の前方には、車体前後方向に延びる左右一対のフロントフレーム13,13が設けられている。フロントフレーム13は、車体前後方向に延びる略四角形の閉断面を形成している。また、フロントフレーム13の前部側は、フロアパネル12よりも高い位置で車体前後方向に延びており、該フロントフレーム13の後部には、ダッシュパネル11の下部及びフロアパネル12の前部の湾曲部12bに沿うように、キックアップ部13aが設けられている。そして、その後端部は、フロアパネル12の下面側において車体前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム14,14に接続されている。
【0023】
左右のフロントフレーム13,13の前端部の間には、第1クロスメンバ30が設けられている。
【0024】
左右のフロントフレーム13,13の前後方向略中間部の間には、前輪6,6用フロントサスペンション20,20が取り付けられるサスペンションクロスメンバ31が設けられている。
【0025】
このサスペンションクロスメンバ31は、車幅方向に延びる車幅方向延設部31aと、該車幅方向延設部31aの左右の端部から後方に延び、後端部がフロアパネル12に固定される後方延設部31b,31bと、車幅方向延設部31aの左右の端部から上方に延びる上方延設部31c,31cと、該上方延設部31c,31cの上下方向中間部から車幅方向外方に突出し、フロントフレーム13,13の下面部13b,13bにボルト32,32により固定される外方突出部31d,31dとを有し、左右のフロントフレーム13,13の下部間を連結している。
【0026】
また、サスペンションクロスメンバ31の左右の上方延設部31c,31cの上部間を、平面視で車幅方向延設部31aと重なる位置において連結する第2クロスメンバ33が設けられている。これによれば、前記左右のフロントフレーム13,13の上部間が、第2クロスメンバ33により連結され、車両正面視で枠状の構造が形成される。
【0027】
フロントサスペンション20は、ダブルウィッシュボーン式のものであり、前輪6を回転自在に支持するホイールサポート21と、上下に離間して配置され、サスペンションクロスメンバ31の上方延設部31cの上端部及び下端部とホイールサポート21とを連結するアッパアーム22及びロアアーム23と、緩衝装置24とを有している。
【0028】
アッパアーム22は、V字状形状をしており、車幅方向内端部22a,22aが、サスペンションクロスメンバ31の上方延設部31cの上端部に、車体前後方向に延びる軸部材25を中心として回動可能に取り付けられている。なお、軸部材25は、頭部とは反対の端部側にナット26螺合用のねじ部が形成されたボルトにより構成されている。一方、車幅方向外端部22bは、ホイールサポート21に形成された上方延設部21aの上端部にボールジョイントを介して取り付けられている。
【0029】
ロアアーム23は、アッパアーム22同様、V字状形状をしており、車幅方向内端部23a,23aが、サスペンションクロスメンバ31の上方延設部31cの下端部に、車体前後方向に延びる軸部材27を中心として回動可能に取り付けられている。なお、軸部材27は、頭部とは反対の端部側にナット28螺合用のねじ部が形成されたボルトにより構成されている。一方、車幅方向外端部23bは、ホイールサポート21に形成された下方延長部21bの下端部にボールジョイントを介して取り付けられている。
【0030】
緩衝装置24は、ダンパやコイルスプリング等で構成される一般的なものであり、図示しないが、例えば、これらの上端部が車体に固定され、ダンパの下端部がロアアーム23に取り付けられ、コイルスプリングの下端部がダンパの側面に固定されている。
【0031】
ここで、サスペンションクロスメンバ31の上方延設部31cは、フロントフレーム13の車幅方向内側に位置するように形成されている。また、上方延設部31cは、フロントフレーム13の上端よりも上方にまで延び、アッパアーム22は、上方延設部31cへの上端部にフロントフレーム13よりも上方において取り付けられている。そして、アッパアーム22は、フロントフレーム13の上方を通過して車幅方向に延び、ロアアーム23は、フロントフレーム13の下方を通過して車幅方向に延びている。すなわち、アッパアーム22及びロアアーム23の車幅方向内端部22a,22a,23a,23aは、フロントフレーム13よりも車幅方向内側で前記サスペンションクロスメンバ31に連結されている。
【0032】
次に、本実施の形態に係る車両のサスペンション構造の作用、効果について説明する。
【0033】
まず、本実施の形態に係るサスペンション20においては、アッパアーム22及びロアアーム23の車幅方向内端部22a,22a,23a,23aが、サスペンションクロスメンバ31に、フロントフレーム13よりも車幅方向内側で取り付けられているから、図4に示すように、フロントフレーム13の前部側を従来よりも低くすることができる。したがって、キックアップ部13aの段差を小さくすることができる。また、フロントフレーム13の上下幅Hを大きくして、その断面積を拡大することもできる。したがって、フロントフレーム13に衝撃荷重が作用したときの耐力を向上させることができる。
【0034】
また、前述のようにアッパアーム22及びロアアーム23の車幅方向内端部22a,22a,23a,23aがフロントフレーム13よりも車幅方向内側でサスペンションクロスメンバ31に連結されていることにより、フロントフレーム13の直下方で連結されている場合よりも、アッパアーム22及びロアアーム23のアーム長(車幅方向長)を長くすることができる。例えば、従来においては、図5(a)に示すように、アッパアーム122及びロアアーム123のアーム長は、L1′及びL2′であったが、本実施の形態においては、図5(b)に示すように、アッパアーム22及びロアアーム23のアーム長を、L1′,L2′よりも長いL1,L2とすることができる。
【0035】
また、本実施の形態によれば、このようにアッパアーム22及びロアアーム23のアーム長(車幅方向長)を長くすることができるので、前輪6のキャンバ変化やロールセンタ等、サスペンション・ジオメトリについての設定自由度が向上する。なお、本実施の形態に係るサスペンション20は、前述のように上下に離間して配置されたアッパーアーム22とロアアーム23とを有するダブルウィッシュボーン式のものであり、もともと設定自由度は比較的大きいが、より一層設定自由度が向上するものである。
【0036】
その一例について説明すると、従来においては、図5(a)に示すように、アッパアーム122及びロアアーム123の車幅方向内端部122a,123aはフロントフレーム113の直下方に位置している。したがって、アッパアーム122の車幅方向内端部122aは、フロントフレーム113の下面部113bよりも高い位置に設けることができず、また、ロアアーム123の車幅方向内端部123aは、地上Grからの高さの関係上、所定以下の高さに設けることはできない。つまり、これらのアーム122,123の車幅方向内端部122a,123aの上下間隔を大きくするのは制約がある。一方、これらのアーム122,123の車幅方向外端部122b,123bの上下間隔は、前輪106の支持剛性上、一定以上の間隔を確保する必要がある。したがって、例えばロアアーム123をほぼ水平に設けた場合、アッパアーム122は車幅方向外方上りとなり、イニシャル状態において、アッパアーム122の車幅方向延長線とロアアーム123の車幅方向延長線との交点VC1′(以下、瞬間中心という)と、前輪接地中心点W′とにより車幅中心ライン上に規定されるロールセンタRC1′は、地上Grから比較的高い位置となっている。
【0037】
これに対し、本実施の形態においては、図5(b)に示すように、アッパーアーム22はフロントフレーム13の上方で車幅方向に延び、ロアアーム23はフロントフレーム13の上方で車幅方向に延びているから、アッパーアーム22とロアアーム23との上下間隔を従来よりも大きくすることができる。したがって、イニシャル状態において、前述のようにして求められる瞬間中心VC1を前輪6から車幅方向内方に遠くし、ロールセンタRC1を、従来よりも低くすることができる。
【0038】
一方、車体が所定量沈み込んだ状態では、本実施の形態及び従来例のいずれにおいても、瞬間中心VC2,VC2′がいずれも前輪6,106側に接近し、ロールセンタVC2,VC2′が低くなるが、この場合においても、本実施の形態のロールセンタVC2を、従来のVC2′よりも低くすることができる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、前述のようにサスペンション・ジオメトリの設定自由度が大きくなり、キャンバ変化を、従来におけるβよりも小さなαとすることができる。
【0040】
加えて、サスペンションクロスメンバ31は、左右のフロントフレーム13,13の下部間を連結していると共に、該左右のフロントフレーム13,13を、平面視でサスペンションクロスメンバ31と重なる位置において車幅方向に連結する第2クロスメンバ33が設けられているから、車両正面視で枠状の構造が形成されることとなり、車体における左右のサスペンション取り付け部周辺、ひいては車体前部の車幅方向剛性が向上する。したがって、設定されたサスペンション・ジオメトリによる走行特性を確実に発揮させることができる。
【0041】
次に、前記サスペンション20の組み付け方法について説明する。
【0042】
なお、サスペンション20として、ホイールサポート21にアッパアーム22及びロアアーム23が取り付けられた状態のものを用いる。
【0043】
まず、第1の工程として、図6に示すように、サスペンションクロスメンバ31の上方延設部31cの下端部に、サスペンション20のロアアーム23の車幅方向内端部23aを軸部材27及びナット28により取り付ける。
【0044】
次に、第1の工程の実行後、第2の工程として、サスペンションクロスメンバ31をフロントフレーム13に取り付ける。詳しくは、サスペンションクロスメンバ31を、左右のフロントフレーム13,13の下方において左右の上方延設部31c,31cがこれらのフロントフレーム13,13の間に位置するように配置し、その状態で上方に移動させる。そして、外方突出部31d,31dとフロントフレーム13,13の下面部13b,13bとが当接したら、図3のように、該サスペンションクロスメンバ31をフロントフレーム13,13にボルト32,32により固定する。
【0045】
ここで、フロントフレーム13の内側面部13cは、下部側ほど車幅方向外方に位置するように傾斜している。すなわち、左右のフロントフレーム13,13の内側面部13c,13cの間隔が、下部側ほど広くなるように形成されており、上端間においてはX1、下端側においてはX1よりも大きいX2とされている。一方、サスペンションクロスメンバ31の左右の上方延設部31c,31cの上端部外端間の長さYは、左右のフロントフレーム13,13の内側面部13c,13cの上端の間隔X1よりも若干小さい程度の間隔とされている。また、サスペンションクロスメンバ31の左右の上方延設部31c,31cの外縁31e,31eはフロントフレーム13の内側面部13c,13cに対応する形状とされている。これによれば、サスペンションクロスメンバ31を車体の下方から上方に移動させてフロントフレーム13に組み付ける際、左右の上方延設部31c,31cが左右のフロントフレーム13,13の内側面部13c,13cの下端部間に入りやすくなる。また、入ったのちは、内側面部13c,13cにより、上方延設部31c,31cをガイドすることも可能となる。したがって、サスペンションクロスメンバ31の組み付けを容易に行うことができる。
【0046】
第2の工程の実行後、第3の工程として、サスペンション20のアッパーアーム22,22の車幅方向内端部22a,22aを、フロントフレーム13,13を上方から跨がせて、サスペンションクロスメンバ31の上方延設部31c,31cの取付凹部31f,31fに嵌める。そして、軸部材27を挿通し、端部にナット28を螺合する。
【0047】
このような組み付け方法によれば、サスペンション20のアッパーアーム22がフロントフレーム13の上方を通過し、ロアアーム23がフロントフレーム13の下方を通過するような構成の場合でも、サスペンション20及びサスペンションクロスメンバ31をフロントフレーム13に容易に取り付けることができる。
【0048】
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0049】
この第2の実施の形態に係る車両1′においては、フロントフレームの断面形状が第1の実施の形態とは異なっている。すなわち、図7に示すように、フロントフレーム13′の内側面部13c′は、縦面部13c1′と、下部側ほど車幅方向外方に位置するように傾斜する傾斜面部13c2′とで構成されている。そして、これに伴って、サスペンションクロスメンバ31′の上方延設部31c′の外縁31e′もこれに対応する形状とされている。このような構成によれば、第1の実施の形態と比較して、フロントフレーム13′の断面積を大型化しつつ、第1の実施の形態同様の効果を得ることができる。
【0050】
なお、本実施の形態に係るサスペンションは、前述のようにダブルウィッシュボーン式のものであるが、本発明は、ロアアームのみを有するマクファーソン・ストラット式のものにも適用可能である。そして、その場合においても、フロントフレームの前部側を低くし、かつその断面積を大きくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る車両用サスペンション取り付け構造によれば、フロアフレームを低い位置に設け、かつフロアフレームの断面を拡大することができ、車両産業に広く利用される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両の車体前部の要部の側面図である。
【図2】同平面図である(便宜上ロアアームは省略している)。
【図3】同正面図である。
【図4】図3におけるサスペンション周辺の要部拡大図である。
【図5】サスペンション・ジオメトリの比較説明図である。
【図6】サスペンション組み付けの説明図である。
【図7】第2の実施の形態についての図3相当の図である。
【符号の説明】
【0053】
1,1′ 車両
6,6′ 車輪
13,13′ フロントフレーム
20 サスペンション
21 ホイールサポート
22 アッパアーム
22a,22a 車幅方向内端部
23 ロアアーム
23a,23a 車幅方向内端部
31,31′ サスペンションクロスメンバ
33 第2クロスメンバ(連結クロスメンバ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部において車体前後方向に延びる左右一対のフロントフレームと、これらのフロントフレームを車幅方向に連結し、サスペンションが取り付けられるサスペンションクロスメンバとを有する車両用サスペンション取り付け構造であって、
前記サスペンションは、前記サスペンションクロスメンバに、前記フロントフレームよりも車幅方向内側で取り付けられていることを特徴とする車両用サスペンション取り付け構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車両用サスペンション取り付け構造において、
前記サスペンションは、車幅方向に延びて、車幅方向外端部が車輪に連結されるサスペンションアームを有しており、
該サスペンションアームの車幅方向内端部が、フロントフレームよりも車幅方向内側で前記サスペンションクロスメンバに連結されていることを特徴とする車両用サスペンション取り付け構造。
【請求項3】
前記請求項2に記載の車両用サスペンション取り付け構造において、
前記サスペンションアームは、上下に離間して配置されたアッパーアームとロアアームとで構成されており、
アッパーアームは、フロントフレームの上方で車幅方向に延びて、車幅方向内端部がフロントフレームよりも車幅方向内側で前記サスペンションクロスメンバに連結され、
ロアアームは、フロントフレームの下方で車幅方向に延びて、車幅方向内端部がフロントフレームよりも車幅方向内側で前記サスペンションクロスメンバに連結されていることを特徴とする車両用サスペンション取り付け構造。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用サスペンション取り付け構造において、
前記サスペンションクロスメンバは、前記左右のフロントフレームの下部間を連結していると共に、
該左右のフロントフレームの上部間を、平面視でサスペンションクロスメンバと重なる位置において車幅方向に連結する連結クロスメンバが設けられていることを特徴とする車両用サスペンション取り付け構造。
【請求項5】
車体前部において車体前後方向に延びる左右一対のフロントフレームと、これらのフロントフレームを車幅方向に連結するサスペンションクロスメンバとを有する車両において、該サスペンションクロスメンバに、ダブルウィッシュボーン式のサスペンションを組み付ける方法であって、
前記サスペンションクロスメンバに、サスペンションのロアアームの車幅方向内端部を連結する第1の工程と、
第1の工程の実行後、サスペンションクロスメンバを下方から前記フロントフレームに取り付ける第2の工程と、
第2の工程の実行後、サスペンションのアッパーアームの車幅方向内端部を、フロントフレームを上方から跨いでサスペンションクロスメンバに取り付ける第3の工程とを有していることを特徴とする車両用サスペンション組み付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−113529(P2009−113529A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285670(P2007−285670)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】