説明

車両用バッテリ冷却装置

【課題】簡易かつ省スペースの車両用バッテリ冷却装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載される複数のバッテリ101を収納すると共に、底壁部に内部の空気が排出される空気排出口23a、23bが形成されたバッテリケース20と、車両の前後方向に延びる2本の前後フレーム11と、車両の車幅方向に延び、2本の前後フレーム11に接続する2本のクロスメンバ12と、前後フレーム11とクロスメンバ12とで囲まれる空間Sの下方を封鎖する下プレート15と、空気を流通させるファン41と、を備え、バッテリケース20は、空間Sの上方であって、右の前後フレーム11側にずれて配置され、ファン41は、バッテリケース20からはみ出た空間Sの部分の上方に配置されており、ファン41が作動すると、バッテリケース20内の空気は、空気排出口23a、23b、空間Sを順に介してファン41に吸引される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車やハイブリッド車には、加速時等に燃料電池をアシストするため充電電力を放電したり、回生時に回生電力を充電する高圧バッテリ装置が搭載される。高圧バッテリ装置は、リチウムイオン等の二次電池からなる複数のバッテリを、バッテリケースに収納し、燃料電池自動車等の車両に搭載される。
そして、複数のバッテリは充放電すると、その温度が上昇し、このような温度上昇によるバッテリの性能劣化を防止するため、ファンを利用して空気を流通させ、バッテリを冷却する車両用バッテリ冷却装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3640846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような車両用バッテリ冷却装置では、構成の簡易化、省スペース化における改善が望まれている。
そこで、本発明は、簡易かつ省スペースの車両用バッテリ冷却装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、車両に搭載される複数のバッテリを収納すると共に、底壁部に内部の空気が排出される空気排出口が形成されたバッテリケースと、車両の前後方向に延びる2つの第1フレームと、車両の車幅方向に延び、前記2つの第1フレームに接続する少なくとも2つの第2フレームと、前記2つの第1フレームと前記少なくとも2つの第2フレームとで囲まれる空間の下方を封鎖する下プレートと、前記バッテリケース内に前記バッテリを冷却する空気を流通させるファンと、を備え、前記バッテリケースは、前記空間の上方であって、車幅方向において前記2つの第1フレームの一方側にずれて配置され、前記ファンは、車幅方向において前記バッテリケースからはみ出た前記空間の部分の略上方に配置されており、前記ファンが作動すると、前記バッテリケース内の空気は、前記空気排出口、前記空間を順に介して当該ファンに吸引される
ことを特徴とする車両用バッテリ冷却装置である。
である。
【0006】
このような車両用バッテリ冷却装置によれば、ファンが作動すると、バッテリケース内の空気は、バッテリケースの底壁部に形成された空気排出口、2つの第1フレームと少なくとも2つの第2フレームとで囲まれる空間を順に介して、ファンに吸引される。
【0007】
すなわち、バッテリケースの下方において、2つの第1フレームと少なくとも2つの第2フレームとで囲まれ、下プレートで封鎖されることで形成された空間を、バッテリケースから排出された空気の排出流路として利用することができる。つまり、バッテリケースの空気排出口に、空気の排出流路を構成するダクトを取り付ける必要はない。これにより、車両用バッテリ冷却装置の部品点数を削減すると共に、車両用バッテリ冷却装置の構成を簡易にし、軽量化することができる。
【0008】
また、バッテリケースは、前記空間の上方であって、車幅方向において2つの第1フレームの一方側にずれて配置されており、そして、ファンが、車幅方向においてバッテリケースからはみ出た前記空間の部分の略上方に配置されているので、車両用バッテリ冷却装置の外形において、大きく凸する部分は形成されておらず、コンパクトにまとめられ、省スペース化、つまり、体積効率が高められている。
これにより、車両用バッテリ冷却装置を、スペースが制限される車両に、容易に搭載することができる。
【0009】
また、前記下プレートには、前記空間と外部とを連通させる連通孔が形成されており、当該連通孔は、車幅方向において、前記空気排出口を挟んで、前記ファンの反対側に配置されていることを特徴とする車両用バッテリ冷却装置である。
【0010】
このような車両用バッテリ冷却装置によれば、下プレートには、前記空間と外部(車両外)とを連通させる連通孔が形成されているので、例えば、バッテリケース内や前記空間において結露水が生成したとしても、この結露水を前記連通孔から外部に排出することができる。
【0011】
また、連通孔は、車幅方向において、バッテリケースの空気排出口を挟んで、ファンの反対側に配置されているので、ファンが作動した場合において、外部の空気が連通孔を介して前記空間に吸引される量が少なくなる。すなわち、バッテリケース内の空気を吸引するためにファンを作動した場合における吸引ロスを少なくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易かつ省スペースの車両用バッテリ冷却装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図16を参照して説明する。
本実施形態に係る車両用バッテリ冷却装置1は、図示しない燃料電池自動車(車両)に搭載されており、そのリアシート下に配置されている。車両用バッテリ冷却装置1に先立って、冷却対象である複数のバッテリ101について説明する。
【0014】
≪複数のバッテリ≫
複数のバッテリ101は、燃料電池自動車に搭載される燃料電池スタック(図示しない)をアシストするため充電電力を放電したり、走行モータ等からの回生電力を充電する二次電池である。このようなバッテリ101は、例えばリチウムイオン型の二次電池から構成され、その外形は円柱状を呈し、その長手方向(軸方向)は、燃料電池自動車の前後方向に沿って配置され、図示しない端子を介して、電気的に直列で接続されている。バッテリ101の本数は、例えば、燃料電池自動車に搭載される電動式の走行モータ(図示しない)の定格出力に基づいて決定される。
【0015】
そして、複数のバッテリ101は、後記するバッテリケース20内における4つのケース内流路P1〜P4(図8、図9参照)に対応して、第1バッテリ群111と、第2バッテリ群112と、第3バッテリ群113と、第4バッテリ群114とに区分けされている。
【0016】
ケース内流路P1〜P4とは、バッテリケース20内において、複数のバッテリ101を冷却するための空気が流れる流路であり、後記する保持パネル21によって、バッテリケース20における空気の流路が、4つに形式的に分割されることで形成されたものである。
そして、バッテリケース20内において、第1バッテリ群111及びケース内流路P1は右前に、第2バッテリ群112及びケース内流路P2は左前に、第3バッテリ群113及びケース内流路P3は右後に、第4バッテリ群114及びケース内流路P4は左後に、それぞれ配置されている(図8、図9参照)。
【0017】
第1バッテリ群111、第2バッテリ群112、第3バッテリ群113及び第4バッテリ群114は、それぞれ、20本のバッテリ101から構成されている。そして、各バッテリ群111〜114は、7本のバッテリ101から形成される下段バッテリ層と、6本のバッテリ101から形成される中段バッテリ層と、7本のバッテリ101から形成される上段バッテリ層とを備えている(図11、図12参照)。また、各バッテリ群111〜114において、バッテリ101が保持パネル21で保持されることにより、バッテリ101は所定間隔を隔てつつ、バッテリ101が千鳥状となるように積層されている。
すなわち、各バッテリ群111〜114を構成するバッテリ101は、同数かつ同配列となっている。
【0018】
そして、第1バッテリ群111と第2バッテリ群112、第3バッテリ群113と第4バッテリ群114は、後記するバッテリケース20の中心線A2の両側(支柱部材27の両側)において、対称でそれぞれ配置されている。
【0019】
≪車両用バッテリ冷却装置の構成≫
図1〜図3に示すように、車両用バッテリ冷却装置1は、2本の前後フレーム11(第1フレーム)及び2本のクロスメンバ12(第2フレーム)と、バッテリケース20と、ファン41と、吸気ダクト50と、温度センサ61(図16参照)と、ECU70(Electronic Control Unit、電子制御装置、図16参照)とを備えている。
【0020】
<前後フレーム、クロスメンバ>
2本の前後フレーム11、及び、2本のクロスメンバ12は、燃料電池自動車の車体フレームの一部を構成する部材である。2本の前後フレーム11は、燃料電池自動車の前後方向に延びると共に、車幅方向の両外側に配置されている(図2参照)。2本のクロスメンバ12は、燃料電池自動車の車幅方向に延びると共に、所定間隔を隔てて配置され、その両端は2本の前後フレーム11、11にそれぞれ接続されている(図3参照)。
【0021】
各前後フレーム11の高さ寸法と、各クロスメンバ12の高さ寸法とは、略等しくなるように設計されている(図10参照)。そして、2本の前後フレーム11、11と、2本のクロスメンバ12、12とで囲まれた空間Sが形成されており、この空間Sは、バッテリケース20から排出された空気の流路として機能している(図11、図12参照)。
また、対向するクロスメンバ12、12の中間位置において、前後フレーム11、11を接続するように、中間部材13が設けられている(図3、図9参照)。
【0022】
<下プレート>
下プレート15は、板状の部品であって、2本の前後フレーム11及び2本のクロスメンバ12の下面に取り付けられており、空間Sの下方を封鎖している(図10〜図12参照)。
下プレート15には、空間Sと車外(外部)とを連通する2つの連通孔15aが形成されている(図11、図12参照)。これにより、空間Sにおいて、結露水等の水分が生成しても、結露水等が連通孔15aを通って車外に排出されるようになっている。
【0023】
また、連通孔15a、15aは、車幅方向において右側に配置されている。すなわち、連通孔15a、15aは、バッテリケース20内の空気が排出される空気排出口23a、23bを挟んで、右側に配置されたファン41の反対側に配置されている(図11、図12参照)。つまり、ファン41から、空気排出口23a(23b)、連通孔15aの順で遠ざかるように配置されている。なお、空気排出口23a、23bは、車幅方向におけるバッテリケース20の略中央に形成されている。
これにより、ファン41を作動しても、連通孔15a、15bを介して車外の空気が、空間Sに吸気されにくくなっており、バッテリ101の冷却効率が低下しないようになっている。
【0024】
<バッテリケース>
バッテリケース20は、水や埃等から保護するため、複数のバッテリ101を収納する容器である。このようなバッテリケース20は、6枚の保持パネル21と、2枚の上パネル22と、4枚の底パネル23と、2枚の側パネル24と、3本の支柱部材27と、2つの第1ダミー部材28とを備えている(図1、図3参照)。
【0025】
バッテリケース20は、前後フレーム11、11及びクロスメンバ12、12で囲まれた空間Sの上方であって、右側、つまり、右の前後フレーム11側にずれて配置されている(図11、図12参照)。すなわち、車幅方向におけるバッテリケース20の中心線A2は、2本の前後フレーム11、11の間を通る燃料電池自動車の中心線A1から、右にずれている。
そして、バッテリケース20の左側であって、平面視においてバッテリケース20からはみ出た空間Sの略上方には、スペースが形成されており、このスペースにファン41が配置されている(図11、図12参照)。これにより、車両用バッテリ冷却装置1の省スペース化が図られている。
【0026】
[支柱部材]
3本の支柱部材27は、バッテリケース20の中心線A2(図8参照)上であって、後記する空気排出口23a、23bの近傍であるクロスメンバ12、12及び中間部材13の上面に、それぞれ立設されている(図2、図9参照)。そして、各支柱部材27の上端は、上パネル22にL字形ブラケット(図示しない)等を介して、それぞれ固定されている(図11、図12参照)。
【0027】
ここで、本実施形態では、バッテリケース20の底壁部は、2本のクロスメンバ12及び中間部材13と、4枚の底パネル23とを備えて構成されている。また、バッテリケース20の上壁部は2枚の上パネル22を備えて構成されている。そして、3本の支柱部材27は、バッテリケース20の上壁部と底壁部とを接続しており、前記上壁部と前記底壁部との間を所定距離に保持しつつ、バッテリケース20の剛性を高めている。
【0028】
[保持パネル]
6枚の保持パネル21は、3本の支柱部材27の車幅方向の両側において、対称で配置されている。各保持パネル21には、上段に7つ、中段に6つ、下段に7つの貫通孔21aが形成されており、合計20の貫通孔21aは、高さ方向において、千鳥状で配置されている。そして、各貫通孔21aには、バッテリ101がそれぞれ差し込まれている。
これにより、複数のバッテリ101が、所定間隔を隔てつつ千鳥状で積層された状態で、バッテリケース20内に収納されるようになっている。
【0029】
また、前後方向の中間に配置された保持パネル21、21によって、バッテリケース20内の空気流路は、前側のケース内流路P1、P2と、後側のケース内流路P3、P4とに仕切られている。
さらに、最前側の保持パネル21には、前カバー31が取り付けられる(図3、図8参照)。一方、最後側の保持パネル21には、後カバー32が取り付けられる。
【0030】
[底パネル]
4枚の底パネル23は、バッテリケース20の底壁部を構成する部品であって、前後フレーム11とクロスメンバ12と中間部材13とに取り付けられている(図2、図9参照)。車幅方向において配列する2枚の底パネル23、23は、所定間隔にて離れており、2枚の底パネル23、23の間が、空気排出口23a又は空気排出口23bとなっている。すなわち、4枚の底パネル23等から構成されるバッテリケース20の底壁部には、前側の空気排出口23aと、後側の空気排出口23bとが形成されている(図9参照)。
なお、バッテリケース20の底壁部を、1枚の底パネルで構成してもよい。
【0031】
そして、バッテリケース20の下方の空間Sは、前側の空気排出口23aを介して、バッテリケース20内の前側の2本のケース内流路P1、P2と連通しており(図11参照)、また、後側の空気排出口23bを介して、バッテリケース20内の後側のケース内流路P3、P4と連通している(図12参照)。
【0032】
さらに、後側の空気排出口23bは、前側の空気排出口23aよりも大きく設計されている(図9参照)。
これにより、前側のケース内流路P1、P2から排出される空気が流れる流路の抵抗は、後側のケース内流路P3、P4から排出される空気が流れる流路の抵抗よりも、大きくなっている。すなわち、前側のケース内流路P1、P2から排出される空気が受ける圧力損失は、後側のケース内流路P3、P4から排出される空気が受ける圧力損失よりも、大きくなっている。
そのため、前側の2本のケース内流路P1、P2に配置されるバッテリ101は、後側の2本のケース内流路P3、P4に配置されるバッテリ101よりも、冷却されにくく、高温となるように構成されている。
【0033】
[底パネル−第2ダミー部]
各底パネル23には、上方に向かって盛り上がった半円柱状の第2ダミー部23cが複数形成されている(図11、図12参照)。第2ダミー部23cは、各バッテリ群111〜114の下方において、仮想的にバッテリ101が配列している状況を形成するための部分であり、半円柱状の第2ダミー部23cの半径は、円柱状のバッテリ101の半径と略等しくなるように形成されている。
【0034】
そして、第2ダミー部23cは、車幅方向において、各バッテリ群111〜114の下段において隣り合うバッテリ101、101の間に対応して配置されている。また、第2ダミー部23cとバッテリ101との距離は、隣り合うバッテリ101間の距離と等しくなるように設計されている。
これにより、バッテリケース20内であって底パネル23の近傍を流れる空気が、下段のバッテリ101の外周面に沿って流れ、このバッテリ101を好適に冷却するようになっている(図14参照)。
【0035】
[側パネル]
側パネル24、24は、車幅方向において対向して配置され、バッテリケース20の一対の側壁部を形成する部品である(図8、図9参照)。各側パネル24には4つの空気導入口24aが形成されており(図10参照)、2つの空気導入口24aは側パネル24の前側に、他の2つの空気導入口24aは側パネル24の後側に配置されている。
【0036】
そして、バッテリケース20の前側においては、一対の側パネル24のそれぞれ前側に配置された2つの空気導入口24aから、前側の2本のケース内流路P1、P2に、空気がそれぞれ導入されるようになっている(図9参照)。
一方、バッテリケース20の後側においては、一対の側パネル24のそれぞれ後側に配置された4つの空気導入口24aから、後側の2本のケース内流路P3、P4に、空気が導入されるようになっている。
【0037】
また、空気導入口24aは、高さ方向において、各バッテリ群111〜114の側パネル24に向かって凸する下段のバッテリ101、上段のバッテリ101に対応して配置されている(図11、図12参照)。そして、空気導入口24aからの空気が、下段の凸するバッテリ101、上段の凸するバッテリ101の中央に向かって導入されるようになっている。
これにより、下段又は上段で凸するバッテリ101の外周面に沿って、空気が流れ、この凸するバッテリ101も好適に冷却されるようになっている(図13参照)。
【0038】
[上パネル]
2枚の上パネル22は、バッテリケース20の上壁部を構成する部品であって、支柱部材27、保持パネル21、及び、側パネル24に取り付けられており、ケース内流路P1〜P4の上方を封鎖している。そして、2枚の上パネル22の上面には、上カバー(図示しない)が取り付けられる。
なお、バッテリケース20の上壁部を、1枚の上パネルで構成してもよい。
【0039】
[上パネル−第2ダミー部]
各上パネル22には、下方に向かって盛り上がった半円柱状の第2ダミー部22cが複数形成されている(図11、図12参照)。第2ダミー部22cは、各バッテリ群111〜114の上方において、仮想的にバッテリ101が配列している状況を形成するための部分であり、半円柱状の第2ダミー部22cの半径は、円柱状のバッテリ101の半径と略等しくなるように形成されている。
【0040】
そして、第2ダミー部22cは、車幅方向において、上パネル22の近傍に配置される各バッテリ群111〜114の上段の隣り合うバッテリ101、101の間に対応して配置されている。また、第2ダミー部23cとバッテリ101との距離は、隣り合うバッテリ101間の距離と等しくなるように設計されている。
これにより、バッテリケース20内であって上パネル22の近傍を流れる空気が、上段のバッテリ101の外周面に沿って流れ、このバッテリ101を好適に冷却するようになっている。
【0041】
[第1ダミー部材]
2本の第1ダミー部材28は、図5に示すように、各バッテリ群111〜114の支柱部材27側(空気排出口23a、23b側)において、仮想的にバッテリ101が配列している状況を形成するための細長の部品であり、断面が半円弧状を呈し、外形が半円柱状を呈している。そして、2本の第1ダミー部材28は、支柱部材27の両側にそれぞれ取り付けられている。
なお、第1ダミー部材28、28間の隙間は、4本の細長片29によって、塞がれている(図5、図15参照)。
【0042】
第1ダミー部材28は、高さ方向において、各バッテリ群111〜114の支柱部材27側(空気排出口23a、23b側)において、中段の凹んだ部分に対応して配置されている(図11、図12参照)。
これにより、この凹んだ部分に形成される細長の空間に、空気が優先的に流れ込むことは防止され、空気が整流されるようになっている。そのため、空気が、下段及び上段の支柱部材27側のバッテリ101の外周面に沿って流れ、このバッテリ101も効率的に冷却されるようになっている(図15参照)。
【0043】
<ファン、排気ダクト>
ファン41は、バッテリ101を冷却するための空気の流れを発生させるため、空間S及びバッテリケース20内の空気を吸引する機器であり、本実施形態では、バッテリケース20の下流に配置されている。ファン41は、車幅方向において、バッテリケース20からはみ出た空間Sの略上方であって、左側の前後フレーム11に取り付けられている((図8参照)。
【0044】
また、バッテリケース20が右側にずれたことで形成された空間Sの2つの開口と、ファン41の吸気口とは、第1排気ダクト42によって接続されている(図8、図11、図12参照)。また、ファン41の空気吐出口には、第2排気ダクト43が接続されている。
【0045】
そして、ファン41が作動すると、第1排気ダクト42を介して空間Sの空気、各ケース内流路P1〜P4の空気が吸引されるようになっている。その結果、外部の空気が、吸気ダクト50を介して、バッテリケース20の車幅方向の両側から、ケース内流路P1〜P4に導入されるようになっている。これにより、バッテリケース20内において、車幅方向に多数のバッテリ101を配列し、高さ方向の寸法を小さくすることが可能となっている。
【0046】
<吸気ダクト>
吸気ダクト50は、外部の空気を4つのケース内流路P1〜P4に導くためのダクトであり、図6に示すように、上流端に吸気口51aを有する吸気部51と、吸気部51の下流で二股に分岐した右分岐部52及び左分岐部53と、を備えている。右分岐部52は、右側に配置されており、その下流端は右側の側パネル24に形成された4つの空気導入口24aに接続されている。左分岐部53は、左側に配置されており、その下流端は左側の側パネル24に形成された4つの空気導入口24aに接続されている(図8参照)。
【0047】
そして、吸気口51aは、外部の熱源(ブレーキのディスク等)から遠ざかるように、例えばトランク内から吸気するように配置されている。これにより、外部の熱源により暖められていない空気を、バッテリケース20内に導入することができ、バッテリ101を効率的に冷却可能となっている。
【0048】
また、左分岐部53は、右分岐部52よりも長くなるように構成されている(図8参照)。
これにより、左側の2本のケース内流路P2、P4に向かう空気が流れる流路(左分岐部53)の抵抗は、右側の2本のケース内流路P1、P3に向かう空気が流れる流路(右分岐部52)の抵抗よりも大きくなっている。すなわち、左側の2本のケース内流路P2、P4に向かう空気が受ける圧力損失は、右側の2本のケース内流路P1、P3に向かう空気が受ける圧力損失よりも、大きくなっている。
【0049】
そのため、左側の2本のケース内流路P2、P4には、右側の2本のケース内流路P1、P2よりも、空気が流れ込みにくくなっている。その結果、左側の2本のケース内流路P2、P4に配置されるバッテリ101は、右側の2本のケース内流路P1、P3に配置されるバッテリ101よりも冷却されにくく、高温になりやすくなっている。
【0050】
さらに、右分岐部52及び左分岐部53は、吸気口51aに対して、後側の空気導入口24a、24aよりも、前側の空気導入口24a、24aが遠ざかるように構成されている(図9参照)。
これにより、前側の2本のケース内流路P1、P2には、後側の2本のケース内流路P3、P4よりも、空気が流れ込みにくくなっている。そのため、前側の2本のケース内流路P1、P2に配置されるバッテリ101は、後側の2本のケース内流路P3、P4に配置されるバッテリ101よりも冷却されにくく、高温になりやすくなっている。
【0051】
<バッテリの温度分布>
以上をまとめると、バッテリケース20の上流側では、外部からの空気は、(1)右後側のケース内流路P3に最も流れ込みやすく、(2)右前側のケース内流路P1、左後側のケース内流路P4、(3)左前側のケース内流路P2の順で流れ込みにくくなる構成となっている。
一方、バッテリケース20の下流側では、前側のケース内流路P1、P2の空気は、後側のケース内流路P3、P4の空気よりも、排出されにくくなっている。
【0052】
したがって、バッテリケース20内における空気の流量は、(1)右後側のケース内流路P3が最も大きく、(2)右前側のケース内流路P1、左後側のケース内流路P4、(3)左前側のケース内流路P2の順で小さくなる構成となっている。
【0053】
これにより、左前側のケース内流路P2に配置されたバッテリ101は、他のケース内流路P1、P3、P4に配置されたバッテリ101よりも冷却されにくく、高温になりやすい構成となっている。さらに詳細には、左前側のケース内流路P2に配置された複数のバッテリ101のうち、下流の空気排出口23bに近いバッテリ101の近傍には、それよりも上流に配置されたバッテリ101で加温された空気が流れるため、他のバッテリ101よりも高温になる傾向となる。
【0054】
<温度センサ>
温度センサ61は、バッテリ101の温度を検出するセンサであって、本実施形態では、左前側のケース内流路P2に配置されたバッテリ101のうち、前記したように空気排出口23bに近く、最も高温になりやすいバッテリ101に取り付けられている(図16参照)。そして、温度センサ61は、この最も高温になりやすいバッテリ101の温度を、ECU70に出力するようになっている。
【0055】
<ECU>
ECU70(制御手段)は、車両用バッテリ冷却装置を電子制御するユニットであり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されている。そして、ECU70は、温度センサ61を介して検出されるバッテリ101の温度に基づいて、ファン41のON/OFF、回転速度等を制御するようになっている。
【0056】
具体的に説明すると、例えば、ECU70には、ファン41をONする第1所定温度と、この第1所定温度よりも2〜5℃程度低く、ファン41をOFFする第2所定温度と、が予め記憶されている。そして、ECU70は、現在のバッテリ101の温度と、第1所定温度と、第2所定温度とに基づいて、ファン41のON/OFFを制御する。
また、ファン41をONするべき状態において、現在のバッテリ101の温度が高いほど、ファン41の回転速度を高め、空気の流量が増加するように制御する構成としてもよい。
【0057】
≪車両用バッテリ冷却装置の作用効果≫
このような車両用バッテリ冷却装置1によれば、次の作用効果を得る。
ファン41が作動すると、バッテリケース20内の空気は、空気排出口23a、23b、空間Sを順に介して、ファン41に吸引される(図11、図12参照)。すなわち、バッテリケース20の下方に2本の前後フレーム11と2本のクロスメンバ12とで囲まれ、下プレート15で封鎖されることで形成された空間Sを、空気の排出流路として利用することができる。これにより、排出流路を構成するダクトを設ける必要はなく、車両用バッテリ冷却装置1の部品点数を削減すると共に、構成を簡易にし、軽量化することができる。
【0058】
また、バッテリケース20は、空間Sの上方であって、右の前後フレーム11側にずれて配置されており、そして、ファン41が、バッテリケース20からはみ出た空間Sの部分の略上方に配置されているので、車両用バッテリ冷却装置1の外形において、大きく凸する部分は形成されておらず、コンパクトにまとめることができる。
【0059】
さらに、バッテリケース20内や空間Sにおいて結露水等が生成したとしても、この結露水等を、下プレート15の連通孔15aを介して、車外に排出することができる。
さらにまた、連通孔15aは、空気排出口23a、23bを挟んで、ファン41の反対側に配置されているので、ファン41が作動しても、連通孔15aを介して吸引される車外の空気を少なくできる。これにより、ファン41の吸引ロスを少なくできる。
【0060】
また、ファン41が作動すると、バッテリケース20内の空気は、その底壁部に形成された空気排出口23a、23bを介してファン41に吸引され、排出される。そして、外部の空気は、吸気ダクト50を介して、対向する一対の側パネル24に形成された空気導入口24aを介して、バッテリケース20内に導入された後、バッテリ101を冷却する。
【0061】
すなわち、ファン41がバッテリケース20の空気排出口23a、23bの下流に配置された構成であるので、ファン41の作動熱を帯びた空気がバッテリケース20に導入されることはなく、バッテリ101を効率的に冷却することができる。そして、空気は、対向する空気導入口24a、24aを介してバッテリケース20内に導入されるので、複数のバッテリ101を効率的に冷却できる。
さらに、仮に、車両用バッテリ冷却装置1が水没し、バッテリケース20内及び空間Sに水が侵入したとしても、ファン41を正回転で作動させることで、この水を速やかに排出できる。
【0062】
さらにまた、吸気ダクト50の吸気口51aは、外部の熱源から離れて配置されるので、外部の熱源によってバッテリケース20への空気が暖められることはなく、その結果、バッテリ101を効率的に冷却することができる。
【0063】
また、各バッテリ群111〜114の凹んだ部分に対応して、支柱部材27の両側に、第1ダミー部材28、28が設けられているので、各バッテリ群111〜114の空気排出側において、空気が各バッテリ101の外周面に沿って流れる(図15参照)。そして、各ケース内流路P1〜P4の上流−下流−排出口間において、空気が受ける圧力損失を均等に近づけることができる。
これにより、各バッテリ群111〜114の空気排出口23a、23b側に配置されるバッテリ101も効率的に冷却することができる。そして、複数のバッテリ101を均等に冷却でき、複数のバッテリ101間の劣化のバラつきを抑えることができる。
【0064】
さらに、側パネル24の空気導入口24aは、空気導入口24a側に凸するバッテリ101に対応して形成され、空気導入口24aからの空気が前記凸するバッテリ101の中央に向かって導入され、その外周面に添って流れるので、この凸するバッテリ101も効率的に冷却することができる(図13参照)。
【0065】
さらにまた、底パネル23の内面には、複数の第2ダミー部23cが形成されているので、空気が下段のバッテリ101の外周面に沿って流れ、これを効率的に冷却できる(図14参照)。同様に、上パネル22の内面には、複数の第2ダミー部22cが形成されているので、上段のバッテリ101も効率的に冷却できる。
【0066】
また、左前側の第2バッテリ群112を構成するバッテリ101の温度が、最も高くなるように構成されているので、バッテリ101の温度を検出する温度センサ61の数を減らすことができる。
そして、ECU70が、温度センサ61が検出するバッテリ101の温度のみに基づいて、ファン41を制御することにより、複数のバッテリ101を好適に冷却し、劣化を防止できる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、これに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更することができる。
前記した実施形態では、バッテリケース20内の空気は、空間Sを介してファン41に吸引される構成としたが、その他例えば、ファン41をバッテリケース20の空気排出口23a、23bに直接取り付けて吸引する構成としてもよい。
【0068】
前記した実施形態では、吸気ダクト50の右分岐部52と左分岐部53との長さが異なり、左側のケース内流路P2、P4に導入される空気の流量を少なくしたが、その他例えば、左分岐部53を部分的に絞ったり、左側の空気導入口24aを小さくしてもよい。
また、バッテリケース20の左右及び前後において、ケース内流路P1〜P4に同流量で空気が導入されるように、吸気ダクト50の形状(長さ等)や空気導入口24aの大きさを設計してもよい。
【0069】
前記した実施形態の構成に加えて、例えば、各バッテリ群111〜114の中段における側パネル24側の凹みに対応して、側パネル24の内面に半円柱状の第3ダミー部を設けてもよい。
【0070】
前記した実施形態では、ファン41がバッテリケース20の下流に配置された構成を例示したが、その他例えば、ファン41がバッテリケース20の上流に配置され、ファン41から吐出される空気が、バッテリケース20内に導入される構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施形態に係る車両用バッテリ冷却装置の斜視図である。
【図2】本実施形態に係る車両用バッテリ冷却装置の一部分解斜視図である。
【図3】本実施形態に係る車両用バッテリ冷却装置の分解斜視図である。
【図4】本実施形態に係る複数のバッテリの斜視図である。
【図5】本実施形態に係る支柱部材及び第1ダミー部材の斜視図である。
【図6】本実施形態に係る吸気ダクトの斜視図である。
【図7】本実施形態に係るファン及び排気ダクトの斜視図である。
【図8】本実施形態に係る車両用バッテリ冷却装置の平面図であり、上パネルを取り外した状態を示す。
【図9】本実施形態に係る車両用バッテリ冷却装置の平断面図であり、上パネル及びバッテリを取り外した状態を示す。
【図10】本実施形態に係る車両用バッテリ冷却装置の左側面図であり、ファン及び吸気ダクトを取り外した状態を示す。
【図11】図8のA−A線断面図である。
【図12】図8のB−B線断面図である。
【図13】本実施形態に係る車両用バッテリ冷却装置の要部の断面図である。
【図14】本実施形態に係る車両用バッテリ冷却装置の要部の断面図である。
【図15】本実施形態に係る車両用バッテリ冷却装置の要部の断面図である。
【図16】本実施形態に係る車両用バッテリ冷却装置の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 車両用バッテリ冷却装置
11 前後フレーム(第1フレーム)
12 クロスメンバ(第2フレーム)
15 下プレート
15a 連通孔
20 バッテリケース
22 上パネル(上壁部)
22c 第2ダミー部
23 底パネル(底壁部)
23a、23b 空気排出口
23c 第2ダミー部
24 側パネル(側壁部)
24a 空気導入口
27 支柱部材
28 第1ダミー部材
41 ファン
50 吸気ダクト
51a 吸気口
61 温度センサ(温度検出手段)
70 ECU(制御手段)
101 バッテリ
111 第1バッテリ群
112 第2バッテリ群
113 第3バッテリ群
114 第4バッテリ群
A1 燃料電池自動車の中心線
A2 バッテリケースの中心線
P1〜P4 ケース内流路
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される複数のバッテリを収納すると共に、底壁部に内部の空気が排出される空気排出口が形成されたバッテリケースと、
車両の前後方向に延びる2つの第1フレームと、
車両の車幅方向に延び、前記2つの第1フレームに接続する少なくとも2つの第2フレームと、
前記2つの第1フレームと前記少なくとも2つの第2フレームとで囲まれる空間の下方を封鎖する下プレートと、
前記バッテリケース内に前記バッテリを冷却する空気を流通させるファンと、
を備え、
前記バッテリケースは、前記空間の上方であって、車幅方向において前記2つの第1フレームの一方側にずれて配置され、
前記ファンは、車幅方向において前記バッテリケースからはみ出た前記空間の部分の上方に配置されており、
前記ファンが作動すると、前記バッテリケース内の空気は、前記空気排出口、前記空間を順に介して当該ファンに吸引される
ことを特徴とする車両用バッテリ冷却装置。
【請求項2】
前記下プレートには、前記空間と外部とを連通させる連通孔が形成されており、
当該連通孔は、車幅方向において、前記空気排出口を挟んで、前記ファンの反対側に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリ冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2009−119935(P2009−119935A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293737(P2007−293737)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】