説明

車両用制御装置

【課題】高価な部品を必要とせず、簡素な構成により車両の誤発進を防止し得る技術を提供すること。
【解決手段】車両用制御装置1は、車両の車高が一定値を超える変化を生じたか否かを判定する車高変化判定部21と、車高変化判定部により車高が一定値を超えたと判定されたときに、車両のギアポジションに基づいて車両の進行方向を判定する第1の進行方向判定部22と、第1の進行方向判定部による判定結果を示す進行方向データを記憶する不揮発メモリ11と、車両のギアポジションに基づいて車両の進行方向を判定する第2の進行方向判定部24と、不揮発メモリから進行方向データを読み出し、当該進行方向データにより示される車両の進行方向と第2の進行方向判定部により判定された車両の進行方向とが同一であるときに、車両の誤発進を防ぐための制御信号を出力する制御信号出力部25を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の誤発進を防止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者が不注意などによりアクセルとブレーキを踏み間違うことを原因に車両を誤発進させる事例が増えている。多くの事例では、ブレーキを踏もうとしたところにアクセルを踏んでしまったという単純なミスが要因となっている。このような車両の誤発進を防止するための技術の先行例は、例えば特開2007−2911号公報(特許文献1)、特開2010−18148号公報(特許文献2)、特開2010−23769号公報(特許文献3)などに開示されている。
【0003】
特許文献1、2に開示の先行例は、概略的には、運転者の顔の向きや姿勢等の情報から予測される車両の進行方向と、運転者が選択したギアポジションの位置により識別される車両の進行方向を照合し、両者が一致しない場合には車両の移動に制限をかけるというものである。しかしながら、これらの先行例では運転者を撮像するためのカメラや撮像された画像から運転者の顔の向き等を検出する情報処理装置などが必要となり、これを実現できるのは一定以上の装備を持つ車両に限られるという不都合がある。また、運転者の顔の向き等と車両の実際の進行方向が異なる場合も少なくない。例えば、車両後方を映し出すモニターが備わった車両の場合には、車両の後退時にも運転者の顔が正面を向いている場合が多い。このような場合に、先行例では誤発進を防止することが困難である。
【0004】
一方、特許文献3に開示の先行例は、概略的には、車両の進行方向に障害物があるときに、アクセルペダル踏下時のわずかな時間内でこれを検出し、障害物と車両の距離に基づき、必要以上のアクセルが踏み込まれたと判断されるときに車両の移動に制限をかけるというものである。しかしながら、この先行例では車両の進行方向に存在する障害物を検出するためのセンサが必要となりコスト増につながるという不都合がある。また、アクセルペダルの踏み込み具合を比較的高精度に、かつ微小時間内に検出することが必要となり、誤発進の判定精度がアクセルペダルセンサの精度に依存するという不都合もある。近年ではアクセルペダルの電子制御化が進んでいるものの、例えば小型の車両等においては依然としてワイヤー式のアクセルペダルを用いているものが多い。このような場合には、アクセルペダルの踏み込み具合の検出精度を確保し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−2911号公報
【特許文献2】特開2010−18148号公報
【特許文献3】特開2010−23769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明に係る具体的態様は、高価な部品を必要とせず、簡素な構成により車両の誤発進を防止し得る技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の車両用制御装置は、車両と接続して用いられ、当該車両の誤発進を防ぐための制御信号を出力する車両用制御装置であって、(a)前記車両の車高が一定値を超える変化を生じたか否かを判定する車高変化判定部と、(b)前記車高変化判定部により前記車高が一定値を超えたと判定されたときに、前記車両のギアポジションに基づいて前記車両の進行方向を判定する第1の進行方向判定部と、(c)前記第1の進行方向判定部による判定結果を示す進行方向データを記憶する不揮発メモリと、(d)前記車両のギアポジションに基づいて前記車両の進行方向を判定する第2の進行方向判定部と、(e)前記不揮発メモリから前記進行方向データを読み出し、当該進行方向データにより示される前記車両の進行方向と前記第2の進行方向判定部により判定された前記車両の進行方向とが同一であるときに、前記車両の誤発進を防ぐための制御信号を出力する制御信号出力部を備える。
【0008】
車両の誤発進が起こるシーンの多くは駐車場における駐停車時であり、かつ多くの駐車場では車輪止めとしての縁石等が設けられており、通常、運転者はこの縁石にタイヤが軽く当たるまで車両を進めてから駐停車する。このことは前進しながら駐車する場合(いわゆる前向き駐車)、後退しながら駐車する場合のいずれでも同様である。
【0009】
そこで、上記の車両用制御装置では、車両が縁石等に接触する際にその車高に短期的な変化を生じたことをトリガとし、そのときの車両の駐停車時の進行方向を不揮発メモリで保持しておく。その後、車両の発進時にギアポジションに基づいて進行方向を判断し、駐停車時の進行方向と比較することで、縁石等を乗り越える方向への誤発進が発生する徴候を察知して誤発進防止用の制御信号を出力する。車両側はこの誤発進防止用の制御信号を受けたときに、エンジン回転を抑制する、アクセルペダルからの信号を遮断する、ブレーキを作動させる等の方法により、または複数の方法を併用することにより、車両の誤発進を防止できる。車高を検出するためのセンサは通常車両に備わっているため、新たに追加する必要がない。また、縁石等に接触したか否かを識別できればよいため、車高センサにはそれほど高い検出精度が必要とされない。すなわち、車両側に備わっている車高センサの検出精度に影響されにくい。したがって、上記の車両用制御装置によれば、高価な部品を必要とせず、簡素な構成により車両の誤発進を防止することが可能となる。
【0010】
前記第2の進行方向判定部は、前記車両のエンジンが始動したときに前記車両の進行方向を判定してもよい。
【0011】
一般に、車両のエンジンを停止して駐車した後のエンジン始動時に誤発進を生じやすいので、その場合の誤発進だけを優先して判断できる。
【0012】
また、前記制御信号出力部は、前記車両のブレーキが解除された場合に前記制御信号を出力することも好ましく、前記車両のアクセルペダルが踏み込まれた場合に前記制御信号を出力することも好ましい。
【0013】
ブレーキやアクセルペダルの挙動を加味することで、誤発進防止用の制御信号を出力する必要性をより精度よく判断できる。
【0014】
また、前記車高変化判定部は、前記車両の車速が一定速度以下である場合に前記車高の変化を判定することも好ましい。
【0015】
それにより、駐停車時以外の通常走行時においては車高変化を検出する処理を実行しないようにし、低消費電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態の車両用制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】車両の駐停車時における車両用制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】駐停車時における車両の挙動を模式的に示した図である。
【図4】車両の発進時における車両用制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】発進時における車両の挙動を模式的に示した図である。
【図6】発進時における車両の挙動を模式的に示した図である。
【図7】車両の発進時における車両用制御装置の動作の変形例を示すフローチャートである。
【図8】車両の発進時における車両用制御装置の動作の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、一実施形態の車両用制御装置の構成を示すブロック図である。図1に示す車両用制御装置1は、演算部(演算装置)10とこれに接続された不揮発メモリ11を含んで構成されている。この演算部10は、他の用途(例えば車両用灯具の光軸調整)のために備わっている演算装置を兼用して実現されてもよい。また、不揮発メモリ11は、電力を供給しない間も記憶を保持するメモリ(記憶装置)であり、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)が好適に用いられる。
【0019】
図示のように、本実施形態の車両用制御装置1には車両側に備わった種々のセンサからの検出結果が入力される。図示の例では、イグニッションセンサ、車速センサ、ギアポジションセンサ、車高センサ、アクセルペダルセンサ、ブレーキペダルセンサ、ブレーキ圧センサのそれぞれからの検出結果が車両用制御装置1に入力される。
【0020】
上記した演算部10は、CPU、ROM、RAM等を含んだコンピュータシステムにおいて所定のプログラムを実行することにより実現されており、機能ブロックとして、車高変化判定部21、駐停車時進行方向判定部(第1の進行方向判定部)22、進行方向記録部23、発進時進行方向判定部(第2の進行方向判定部)24、誤発進防止用信号出力部(制御信号出力部)25を備える。
【0021】
車高変化判定部21は、車高センサの検出値に基づいて、車両の車高が一定値を超える変化を生じたか否かを判定する。詳細には、車高変化判定部21は、車両のタイヤが縁石等の車輪止めに当たったことによる車高の変化を抽出する。例えば、車高センサの検出値が所定のしきい値を超えた場合に、縁石等により車高が一定値を超える変化を生じたと判定することができる。
【0022】
なお、車高変化判定部21は、車速センサの検出値に基づいて車速が一定速度以下(例えば時速5km以下)である場合にのみ車高変化を判定してもよい。それにより、車両の通常走行時における判定処理を省略して消費電力を低減できる。
【0023】
駐停車時進行方向判定部22は、車高変化判定部21により車両の車高が一定値を超えたと判定されたときに、ギアポジションセンサの検出値を取得し、それにより示されるギアポジションに基づいて車両の進行方向を判定する。本実施形態では、車両の進行方向は「前進」または「後退」の何れかと判定される。
【0024】
進行方向記録部23は、駐停車時進行方向判定部22による判定結果を示す進行方向データを不揮発メモリ11に記録する。この進行方向データは、エンジンオフ等により電力供給が停止した後も不揮発メモリ11に保持される。
【0025】
発進時進行方向判定部24は、ギアポジションセンサの検出値を取得し、それにより示される車両のギアポジションに基づいて車両の進行方向を判定する。上記同様、車両の進行方向は「前進」または「後退」の何れかと判定される。
【0026】
なお、発進時進行方向判定部24は、イグニッションセンサの検出値に基づいて、車両のエンジンが停止し、その後始動したことを検出したことを検出し、それをトリガとして車両の進行方向を判定してもよい。同様に、ブレーキペダルセンサおよびアクセルペダルセンサの各検出値に基づいて、ブレーキの踏み込み後にアクセルの踏み込みがされたこと(つまり、車両が停車状態から発進したこと)を検出し、それをトリガとして車両の進行方向を判定してもよい。それにより、駐停車時以外の判定処理を省略して消費電力を低減できる。
【0027】
誤発進防止信号出力部25は、不揮発メモリ11から進行方向データを読み出し、当該進行方向データにより示される車両の進行方向と発進時進行方向判定部24により判定された車両の進行方向とが同方向であるときに、車両の誤発進を防ぐための制御信号である誤発進防止信号を出力する。
【0028】
本実施形態の車両用制御装置1はこのような構成を備えており、次にその動作について詳細に説明する。
【0029】
図2は、車両の駐停車時における車両用制御装置1の動作を示すフローチャートである。また、図3は、駐停車時における車両の挙動を模式的に示した図である。
【0030】
車高変化判定部21は、車速センサの検出値に基づいて車速が一定速度以下(例えば時速5km以下)であるか否かを判定する(ステップS10)。車速が一定速度を超える場合には(ステップS10;NO)、車高変化判定部21は、車高判定処理を実行しない。なお、このステップは省略し得る。
【0031】
車速が一定速度以下である場合には(ステップS10;YES)、車高変化判定部21は、車高センサの検出値(車高センサ値)を読み取る(ステップS11)。
【0032】
次いで車高変化判定部21は、車高センサから読み取った検出値に基づいて、車両の車高が一定値を超える変化を生じたか否かを判定する(ステップS12)。例えば、図3(a)に示すように後退時の車両100のタイヤが縁石等の車輪止め102に当たったときや、図3(b)に示すように前進時の車両100のタイヤが縁石等の車輪止め102に当たったときに、車両に備わった各車高センサ101からの検出値に基づいて、車高変化を検出できる。
【0033】
なお、車高変化判定部21は、車高センサから読み取った検出値に対して微分演算を行ってもよい。それにより、車高の変化をより容易に検出することができる。
【0034】
車高センサの検出値が一定値を超えたと車高変化判定部21が判定した場合に(ステップS12;YES)、駐停車時進行方向判定部22は、ギアポジションに基づいて車両の進行方向(本例では「前進」または「後退」)を判定する(ステップS13)。図3(a)に示した状況においては車両の進行方向が「後退」と判定され、図3(b)に示した状況においては車両の進行方向が「前進」と判定される。
【0035】
進行方向記録部23は、駐停車時進行方向判定部22による判定結果を示す進行方向データを不揮発メモリ11に記録する(ステップS14)。
【0036】
その後、例えば車両のエンジンがオフ(停止)とされる(ステップS15)。エンジンオフ後も、不揮発メモリ11に記録された進行方向データは保持される。
【0037】
図4は、車両の発進時における車両用制御装置1の動作を示すフローチャートである。
【0038】
例えば、車両のエンジンがオン(始動)とされると(ステップS20)、誤発進防止信号出力部25は、不揮発メモリ11から進行方向データを読み取る(ステップS21)。
【0039】
また、車両のエンジンがオンとされると、発進時進行方向判定部24は、ギアポジションセンサの検出値を取得し、それにより示される車両のギアポジションに基づいて車両の進行方向を判定する(ステップS22)。
【0040】
次いで、誤発進防止信号出力部25は、読み出した進行方向データにより示される車両の進行方向が「前進」であるか否かを判定する(ステップS23)。
【0041】
車両の進行方向が「前進」である場合に(ステップS23;YES)、誤発進防止信号出力部25は、発進時進行方向判定部24により判定された車両の進行方向が「前進」であるか否か、すなわちギアポジションが前進方向のものであるか否かを判定する(ステップS24)。
【0042】
ギアポジションが前進方向のものである場合には(ステップS24;YES)、進行方向データにより示される車両の進行方向と現時点での車両の進行方向が同方向であるので、誤発進防止信号出力部25は、車両の誤発進を防ぐための制御信号である誤発進防止信号を出力する(ステップS25)。
【0043】
一方、車両の進行方向が「後退」である場合に(ステップS23;NO)、誤発進防止信号出力部25は、発進時進行方向判定部24により判定された車両の進行方向は「後退」であるか否か、すなわちギアポジションは後退方向のものであるか否かを判定する(ステップS26)。
【0044】
ギアポジションが後退方向のものである場合には(ステップS26;YES)、進行方向データにより示される車両の進行方向と現時点での車両の進行方向が同方向であるので、誤発進防止信号出力部25は、車両の誤発進を防ぐための制御信号である誤発進防止信号を出力する(ステップS27)。
【0045】
車両側は、この誤発進防止信号を受けたときに、エンジン回転を抑制する、アクセルペダルからの信号を遮断する、ブレーキを作動させる等の方法により、または複数の方法を併用することにより、車両の誤発進を防止できる。
【0046】
進行方向データにより示される車両の進行方向と現時点での車両の進行方向が同方向ではない場合には(ステップS24またはステップS26;NO)、進行方向データにより示される車両の進行方向と現時点での車両の進行方向が異なるので、誤発進防止信号出力部25は、誤発進防止信号を出力しない。
【0047】
図5および図6は、発進時における車両の挙動を模式的に示した図である。例えば図5(a)〜図5(c)に示すように、車両100が車輪止め102に対して前進しながら接触して駐停車し、その後さらに前進しようとした場合に、車両用制御装置1から車両に対して誤発進防止信号が出力される。また、図6(a)〜図6(c)に示すように、車両100が車輪止め102に対して後退しながら接触して駐停車し、その後の発進時にさらに後退しようとした場合にも、車両用制御装置1から車両に対して誤発進防止信号が出力される。本実施形態の車両用制御装置1は、図5(a)または図6(a)に示すように車両の近隣に建物等の障害物103が存在する場合だけでなく、図5(b)または図6(b)に示すように車両の近隣に深い段差104が存在する場合や、図5(c)または図6(c)に示すように車両の近隣に歩行者105が存在する場合など幅広いシチュエーションに対応可能である。
【0048】
図7は、車両の発進時における車両用制御装置1の動作の変形例を示すフローチャートである。上記した図4に示したフローチャートとの相違点は、ステップS28、ステップS29が追加された点のみであるので、以下にこの相違点を説明する。
【0049】
ギアポジションが前進方向のものである場合には(ステップS24;YES)、さらに誤発進防止信号出力部25は、ブレーキペダルセンサの検出値に基づいて車両のブレーキが解除されたか否かを判定する(ステップS28)。そして、ブレーキが解除された場合に(ステップS28;YES)、誤発進防止信号出力部25は、車両の誤発進を防ぐための制御信号である誤発進防止信号を出力する(ステップS25)。
【0050】
また、ギアポジションが後退方向のものである場合においても(ステップS26;YES)、さらに誤発進防止信号出力部25は、ブレーキペダルセンサの検出値に基づいて車両のブレーキが解除されたか否かを判定する(ステップS29)。そして、ブレーキが解除された場合に(ステップS29;YES)、誤発進防止信号出力部25は、車両の誤発進を防ぐための制御信号である誤発進防止信号を出力する(ステップS27)。
【0051】
ブレーキが解除されていない場合には(ステップS28またはステップS29;NO)、車両の進行が制限されている状態であるので、誤発進防止信号出力部25は、誤発進防止信号を出力しない。
【0052】
このように、ギアポジションによる進行方向の判定に加え、ブレーキの踏み込み状況を判定してもよい。それにより、誤発進防止信号を出力すべきか否かの判断精度をより高めることができる。
【0053】
図8は、車両の発進時における車両用制御装置1の動作の変形例を示すフローチャートである。上記した図4に示したフローチャートとの相違点は、ステップS30、ステップS31が追加された点のみであるので、以下にこの相違点を説明する。
【0054】
ギアポジションが前進方向のものである場合には(ステップS24;YES)、さらに誤発進防止信号出力部25は、アクセルペダルセンサの検出値に基づいて車両のアクセルペダルが踏み込まれたか否かを判定する(ステップS30)。そして、アクセルペダルが踏み込まれた場合に(ステップS30;YES)、誤発進防止信号出力部25は、車両の誤発進を防ぐための制御信号である誤発進防止信号を出力する(ステップS25)。
【0055】
また、ギアポジションが後退方向のものである場合においても(ステップS26;YES)、さらに誤発進防止信号出力部25は、アクセルペダルセンサの検出値に基づいて車両のアクセルペダルが踏み込まれたか否かを判定する(ステップS31)。そして、アクセルペダルが踏み込まれた場合に(ステップS31;YES)、誤発進防止信号出力部25は、車両の誤発進を防ぐための制御信号である誤発進防止信号を出力する(ステップS27)。
【0056】
アクセルペダルが踏み込まれていない場合には(ステップS30またはステップS31;NO)、車両がほぼ進行しない状態であるので、誤発進防止信号出力部25は、誤発進防止信号を出力しない。
【0057】
このように、ギアポジションによる進行方向の判定に加え、アクセルペダルの踏み込み状況を判定してもよい。それにより、誤発進防止信号を出力すべきか否かの判断精度をより高めることができる。
【0058】
以上のような本実施形態によれば、車高を検出するためのセンサは通常車両に備わっているため、新たに追加する必要がない。また、縁石等に接触したか否かを識別できればよいため、車高センサにはさほどの高い検出精度が必要とされない。すなわち、車両側に備わっている車高センサの検出精度に影響されにくい。したがって、高価な部品を必要とせず、簡素な構成により車両の誤発進を防止することが可能となる。そして、車両側はこの誤発進防止用の制御信号を受けたときに、エンジン回転を抑制する、アクセルペダルからの信号を遮断する、ブレーキを作動させる等の方法により、または複数の方法を併用することにより、車両の誤発進を防止できる。
【0059】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。
【0060】
例えば、上記した実施形態ではエンジンのオン(始動)とオフ(停止)を検出していたが、これを省略してもよい。同様に、車速の検出を省略してもよい。
【0061】
また、車高センサなど上記の車両用制御装置の動作に必要なセンサの一部または全部が車両側に備わっていない場合には、当該センサを車両用制御装置の構成として備えるようにすればよい。
【0062】
また、上記した実施形態では、ギアポジションの位置で車両の進行方向を判断するが、その際に、ギアポジションが「ニュートラル」の場合には、その前のギアポジションの情報を使用して進行方向を判断するようにしてもよい。このようにすれば、例えばギアポジションが「ニュートラル」の場合に車両の進行方向を判断できなくなってしまうことを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0063】
1…車両用制御装置
10…演算部(演算装置)
11…不揮発メモリ
21…車高変化判定部
22…駐停車時進行方向判定部(第1の進行方向判定部)
23…進行方向記録部
24…発進時進行方向判定部(第2の進行方向判定部)
25…誤発進防止用信号出力部(制御信号出力部)
100…車両
101…車高センサ
102…車輪止め
103…障害物
104…段差
105…歩行者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と接続して用いられ、当該車両の誤発進を防ぐための制御信号を出力する車両用制御装置であって、
前記車両の車高が一定値を超える変化を生じたか否かを判定する車高変化判定部と、
前記車高変化判定部により前記車高が一定値を超えたと判定されたときに、前記車両のギアポジションに基づいて前記車両の進行方向を判定する第1の進行方向判定部と、
前記第1の進行方向判定部による判定結果を示す進行方向データを記憶する不揮発メモリと、
前記車両のギアポジションに基づいて前記車両の進行方向を判定する第2の進行方向判定部と、
前記不揮発メモリから前記進行方向データを読み出し、当該進行方向データにより示される前記車両の進行方向と前記第2の進行方向判定部により判定された前記車両の進行方向とが同一であるときに、前記車両の誤発進を防ぐための制御信号を出力する制御信号出力部、
を含む車両用制御装置。
【請求項2】
前記第2の進行方向判定部は、前記車両のエンジンが始動したときに前記車両の進行方向を判定する、
請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記制御信号出力部は、前記車両のブレーキが解除された場合に前記制御信号を出力する、
請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記制御信号出力部は、前記車両のアクセルペダルが踏み込まれた場合に前記制御信号を出力する、
請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記車高変化判定部は、前記車両の車速が一定速度以下である場合に前記車高の変化を判定する、
請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−91628(P2012−91628A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239534(P2010−239534)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】