説明

車両用動力伝達装置の制御装置

【課題】1つの電磁弁によって所定の油圧式摩擦係合要素およびロックアップ機構を選択的に制御できる油圧制御回路を備え、ロックアップクラッチのロックアップ開始を早めることができる動力伝達装置の制御装置を提供する。
【解決手段】前進用クラッチC1にモジュレータ圧PLPMが供給される期間と、ロックアップ開始に備えてリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを低下させる制御が実行される期間とが少なくとも一部重複されるため、その重複した期間分だけリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUの低下開始が早められるに従い、ロックアップクラッチ26のロックアップ開始を早めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用動力伝達装置の制御装置に係り、特に、1つの電磁弁によって所定の油圧式摩擦係合要素およびロックアップクラッチを選択的に制御できる油圧制御回路を備えた車両用動力伝達装置の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用動力伝達装置において、1つの電磁弁によって所定の油圧式摩擦係合要素およびロックアップクラッチを選択的に制御できる油圧制御回路を備えたものが知られている。特許文献1に記載の動力伝達装置の制御装置がその一例である。特許文献1においては、ソレノイドバルブ140がオフの場合には、クラッチシフトバルブ150のスプール151が左方に移動すると共に、ロックアップシフトバルブ170のスプール171が右方に移動し、リニアソレノイドバルブ130により作り出された制御圧が、クラッチシフトバルブ150を介して前進用クラッチ65もしくは後進用ブレーキ66に供給される。一方、ソレノイドバルブ140がオンの場合には、クラッチシフトバルブ150のスプール151が右方に移動すると共に、ロックアップシフトバルブ170のスプール171が左方に移動し、リニアソレノイドバルブ130の制御圧がロックアップ制御バルブ180に供給され、このロックアップ制御バルブ180で作り出される係合容量制御圧がロックアップシフトバルブ170を介してロックアップ機構50に供給される。上記のように構成されることで、前進用クラッチ65もしくは後進用ブレーキ66およびロックアップ機構50が、1つのリニアソレノイドバルブ130によって制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−248725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1において、前進用クラッチ65もしくは後進用ブレーキ66に供給される油圧は、クラッチシフトバルブ150によって、リニアソレノイドバルブ130から作り出された制御圧またはライン圧に切り替えられる。例えば車両発進時などでは、発進時のショックを抑制するためリニアソレノイドバルブ130の制御圧が前進用クラッチ65もしくは後進用ブレーキ66に供給されるようにクラッチシフトバルブ150が切り替えられ、リニアソレノイドバルブ130の制御圧によって前進用クラッチ65もしくは後進用ブレーキ66のトルク容量が滑らかに増加するように制御される(ガレージ制御)。一方、通常走行時では、前進用クラッチ65もしくは後進用ブレーキ66の滑りを防止するため、前進用クラッチ65もしくは後進用ブレーキ66にライン圧が供給されるようにクラッチシフトバルブ150が切り替えられる。
【0005】
ここで、上記ガレージ制御が終了すると、ロックアップシフトバルブ170のスプール位置を切り替えることで、リニアソレノイドバルブ130の制御圧によるロックアップ機構50のロックアップ制御が可能となるが、ガレージ制御終了直後は、前進用クラッチ65もしくは後進用ブレーキ66の係合圧がリニアソレノイドバルブ130の制御圧によって昇圧されるに従い、リニアソレノイドバルブ130の制御圧が高圧状態となっている。この状態でロックアップ機構50のロックアップ制御が開始されると、高圧の制御圧によって作り出される係合容量制御圧の影響で、ロックアップ機構50が急係合されてショックが発生する。これを防止するため、リニアソレノイドバルブ130の制御圧が低圧となるまで、ロックアップシフトバルブ170の切替を待つ必要があり、ロックアップ機構50のロックアップ開始が遅れ、結果として、燃費が悪化する可能性があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、1つの電磁弁によって所定の油圧式摩擦係合要素およびロックアップクラッチを選択的に制御できる油圧制御回路を備えた車両用動力伝達装置の制御装置において、ロックアップクラッチのロックアップ開始を早めることで燃費性を向上することができる動力伝達装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)出力圧が連続的に制御される電磁弁と、所定の油圧式摩擦係合要素に該電磁弁の出力圧に応じた係合圧が供給される第1位置および該油圧式摩擦係合要素にライン圧が供給される第2位置の何れかの切替位置に切り替える第1切替バルブと、前記出力圧によるロックアップクラッチのロックアップ制御が実施されるロックアップオン位置および該出力圧によるロックアップ制御が遮断されるロックアップオフ位置の何れかの切替位置に切り替える第2切替バルブとを、含む油圧制御回路を備えた車両用動力伝達装置の制御装置であって、(b)前記油圧式摩擦係合要素を係合させて、前記出力圧による前記ロックアップクラッチのロックアップを開始する場合には、前記第1切替バルブの切替位置を前記第1位置から第2位置へ切り替えると共に、前記ロックアップクラッチのロックアップ開始に備えて該出力圧を低下させる制御を実行した後、前記第2切替バルブを前記ロックアップオン位置へ切り替えるものであり、(c)前記第1切替バルブが前記第2位置へ切り替えられることで、前記油圧式摩擦係合要素に前記ライン圧が供給される期間と、前記電磁弁の出力圧を低下させる制御が実行される期間との少なくとも一部が重複されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用動力伝達装置の制御装置において、(a)前記第1切替バルブおよび前記第2切替バルブは、それぞれ独立して切替可能に構成され、(b)前記第2切替バルブは、前記第1切替バルブが前記第2位置に切り替えられた後、所定時間経過後に前記ロックアップオン位置に切り替えられることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用動力伝達装置の制御装置において、(a)前記第1切替バルブおよび前記第2切替バルブは、それぞれ独立して切替可能に構成され、(b)前記第2切替バルブは、前記第1切替バルブが前記第2位置に切り替えられた後、前記電磁弁の出力圧が所定圧まで低下すると前記ロックアップオン位置に切り替えられることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記油圧式摩擦係合要素の係合圧が、該油圧式摩擦係合要素の回転が同期される油圧に到達した時点以降に、前記第1切替バルブが前記第2位置へ切り替えられることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項2の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記所定時間は、作動油の油温が低下するに従って長くなることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、請求項3の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記所定圧は、ロックアップ制御開始時において車速の変化率が予め設定されている所定値を越えない油圧範囲において、高圧側の閾値近傍に設定されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至6のいずれか1の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記電磁弁の出力圧を低下させる制御は、該電磁弁の指示圧を一時的に零にするものであることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至7のいずれか1の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記第2切替バルブが前記ロックアップオン位置に切り替えられる直前に、前記電磁弁の出力圧を低下させる制御が停止されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、前記油圧式摩擦係合要素を係合させて、前記出力圧による前記ロックアップクラッチのロックアップを開始する場合には、前記第1切替バルブの切替位置が前記第1位置から第2位置へ切り替えられるため、油圧式摩擦係合要素にライン圧が供給され、その油圧式摩擦係合要素の係合圧が昇圧されて係合される。このとき、油圧式摩擦係合要素に前記ライン圧が供給される期間と、前記ロックアップ開始に備えて前記電磁弁の出力圧を低下させる制御が実行される期間との少なくとも一部が重複されるため、その重複した期間分だけ電磁弁の出力圧の低下開始が早められるに従い、ロックアップクラッチのロックアップ開始を早めることができる。また、油圧式摩擦係合要素を係合する際に実施される昇圧がライン圧によって実行されるため、前記出力圧を低下させる制御を開始する時点での油圧が、その出力圧によって昇圧を実施する場合に比べて低圧となる。したがって、出力圧を低下させる時間が短縮化されるため、ロックアップクラッチのロックアップ開始を早めることができる。上記より、ロックアップクラッチのロックアップ開始が早められるに従い、燃費性が向上する。
【0016】
また、請求項2にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、前記第2切替バルブは、前記第1切替バルブが前記第2位置に切り替えられた後、所定時間経過後に前記ロックアップオン位置に切り替えられてロックアップが開始される。このとき、出力圧を低下させる制御を開始する時点での油圧が、出力圧によって昇圧を実施する場合に比べて低圧であるため、その所定時間を短縮することができ、ロックアップ開始を早めることができる。
【0017】
また、請求項3にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、前記第2切替バルブは、前記第1切替バルブが前記第2位置に切り替えられた後、前記電磁弁の出力圧が所定圧まで低下すると前記ロックアップオン位置に切り替えられてロックアップが開始される。このとき、出力圧を低下させる制御を開始する時点での油圧が従来に比べて低圧であるため、その所定圧まで低下する時間が従来に比べて短くなるに従い、ロックアップ開始を早めることができる。
【0018】
また、請求項4にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、前記油圧式摩擦係合要素の係合圧が、該油圧式摩擦係合要素の回転が同期される油圧に到達した時点以降に、前記第1切替バルブが前記第2位置へ切り替えられるため、第1切替バルブが第2位置に切り替えられて油圧式摩擦係合要素にライン圧が供給された際のショックが抑制される。
【0019】
また、請求項5にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、前記所定時間は、作動油の油温が低下するに従って長くなるため、油温の低下に応じて低下する油圧の応答性を考慮に入れて、油温の変化に影響されることなくロックアップ開始時の電磁弁の出力圧を略一定とすることができる。
【0020】
また、請求項6にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、前記所定圧は、ロックアップ制御開始時において車速の変化率が予め設定されている所定値を越えない油圧範囲において、高圧側の閾値近傍に設定されているため、ロックアップ制御開始時の車速の変動を抑制させつつ、ロックアップクラッチのロックアップを速やかに開始させることができる。
【0021】
また、請求項7にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、前記電磁弁の出力圧を低下させる制御は、その電磁弁の指示圧を一時的に零にするものであるため、電磁弁の出力圧を速やかに低下させることができる。
【0022】
また、請求項8にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、前記第2切替バルブが前記ロックアップオン位置に切り替えられる直前に、前記電磁弁の出力圧を低下させる制御が停止されるため、電磁弁によるロックアップ開始直前における出力圧の低下勾配が緩やかとなり、出力圧の一時的な落ち込みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が適用された車両用動力伝達装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の車両用動力伝達装置などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。
【図3】図2の油圧制御回路のうち、主にロックアップクラッチのロックアップ制御、およびシフトレバーの操作に伴う前進用クラッチおよび後進用ブレーキの係合油圧制御に関連する要部を示す油圧回路図である。
【図4】図2の電子制御装置の制御作動を機能的に示す機能ブロック線図である。
【図5】図4の電子制御装置の制御作動の要部すなわちガレージ制御開始からロックアップ制御開始までの時間を短縮することができる制御作動を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5のフローチャーに基づいて制御されるリニアソレノイドバルブの出力圧の状態を示すタイムチャートである。
【図7】従来のガレージ制御からロックアップ制御に切替える際の制御作動を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、好適には、前記車両用動力伝達装置は、複数組の遊星歯車装置の回転要素が係合装置によって選択的に連結されることにより複数のギヤ段(変速段)が択一的に達成される例えば前進4段、前進5段、前進6段、さらにはそれ以上の変速段を有する種々の遊星歯車式自動変速機、動力伝達部材として機能する伝動ベルトが有効径が可変である一対の可変プーリに巻き掛けられ変速比が無段階に連続的に変化させられる所謂ベルト式無段変速機、或いは、共通の軸心まわりに回転させられる一対のコーンとその軸心と交差する回転中心回転可能な複数個のローラがそれら一対のコーンの間で狭圧されそのローラの回転中心と軸心との交差角が変化させられることによって変速比が可変とされた所謂トラクション型無段変速比などにより構成される。
【0025】
また、好適には、前記油圧式摩擦係合要素は、車両発進時に係合される発進クラッチである。このようにすれば、発進クラッチの係合圧が電磁弁の出力圧によって制御されることで、滑らかな車両発進が可能となる。
【0026】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0027】
図1は、本発明が適用された車両用動力伝達装置10の構成を説明する骨子図である。この車両用動力伝達装置10は横置き型自動変速機であって、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の動力源としてエンジン12を備えている。内燃機関にて構成されているエンジン12の出力は、エンジン12のクランク軸、流体式伝動装置としてのトルクコンバータ14から前後進切替装置16、ベルト式の無段変速機(CVT)18、減速歯車装置20を介して差動歯車装置22に伝達され、左右の駆動輪24L、24Rへ分配される。
【0028】
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、およびトルクコンバータ14の出力側部材に相当するタービン軸34を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それ等のポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tの間にはロックアップクラッチ26が設けられており、油圧制御回路100(図3参照)内のロックアップリレーバルブ104(図3参照)などによって係合側油室および開放側油室と連通する油路が切り換えられることにより、係合または開放されるようになっている。たとえばロックアップクラッチ26が完全係合させられることによって、ポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tは一体回転させられる。また、ポンプ翼車14pには、無段変速機18の変速制御やベルト挟圧力制御、ロックアップクラッチ26の係合開放制御等を実施するための元圧を発生させる機械式のオイルポンプ28が連結されており、エンジン12の回転と連動して作動させられる。
【0029】
前後進切替装置16は、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1とダブルピニオン型の遊星歯車装置16pとを主体として構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸34はサンギヤ16sに一体的に連結され、無段変速機18の入力軸36はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介して非回転部材であるハウジングに選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。なお、前進用クラッチC1が本発明の油圧式摩擦係合要素に対応している。
【0030】
そして、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が開放されると、前後進切換装置16は一体回転状態とされることによりタービン軸34が入力軸36に直結され、前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が開放されると、前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、入力軸36はタービン軸34に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に開放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル状態(動力伝達遮断状態)になる。
【0031】
無段変速機18は、入力軸36に設けられた入力側部材である有効径が可変の駆動側プーリ(プライマリプーリ、プライマリシーブ)42と、出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変の従動側プーリ(セカンダリプーリ、セカンダリシーブ)46と、それ等の可変プーリ42、46に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えており、可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。
【0032】
可変プーリ42および46は、入力軸36および出力軸44にそれぞれ固定された固定回転体42aおよび46aと、入力軸36および出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた可動回転体42bおよび46bと、それらの間のV溝幅を変更する推力を付与する油圧アクチュエータとしての駆動側油圧アクチュエータ(プライマリプーリ側油圧アクチュエータ)42cおよび従動側油圧アクチュエータ(セカンダリプーリ側油圧アクチュエータ)46cとを備えて構成されており、駆動側油圧アクチュエータ42cへの作動油の油圧が油圧制御回路100によって制御されることにより、両可変プーリ42、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)が連続的に変化させられる。
【0033】
図2は、図1の車両用動力伝達装置10などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御や無段変速機18の変速制御およびベルト挟圧力制御やロックアップクラッチ26のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や無段変速機18およびロックアップクラッチ26の油圧制御用等に分けて構成される。
【0034】
電子制御装置50には、エンジン回転速度センサ52により検出されたクランク軸回転角度(位置)ACR(°)およびエンジン12の回転速度(エンジン回転速度)Neに対応するクランク軸回転速度を表す信号、タービン回転速度センサ54により検出されたタービン軸34の回転速度(タービン回転速度)Ntを表す信号、入力軸回転速度センサ56により検出された無段変速機18の入力回転速度である入力軸36の回転速度(入力軸回転速度)Ninを表す信号、車速センサ(出力軸回転速度センサ)58により検出された無段変速機18の出力回転速度である出力軸44の回転速度(出力軸回転速度)Noutすなわち出力軸回転速度Noutに対応する車速Vを表す車速信号、スロットルセンサ60により検出されたエンジン12の吸気配管32に備えられた電子スロットル弁30のスロットル弁開度θTHを表すスロットル弁開度信号、冷却水温センサ62により検出されたエンジン12の冷却水温TWを表す信号、CVT油温センサ64により検出された無段変速機18等の油圧制御回路100の油温TCVTを表す信号、アクセル開度センサ66により検出されたアクセルペダル68の操作量であるアクセル開度Accを表すアクセル開度信号、フットブレーキスイッチ70により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無BONを表すブレーキ操作信号、レバーポジションセンサ72により検出されたシフトレバー74のレバーポジション(操作位置)PSHを表す操作位置信号、油圧センサ75により検出される従動側油圧アクチュエータ46cのベルト狭圧Pdを表すベルト狭圧信号などが供給されている。
【0035】
また、電子制御装置50からは、エンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号SE、例えば電子スロットル弁30の開閉を制御するためのスロットルアクチュエータ76を駆動するスロットル信号や燃料噴射装置78から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号や点火装置80によるエンジン12の点火時期を制御するための点火時期信号などが出力される。また、無段変速機18の変速比γを変化させる為の変速制御指令信号ST、伝動ベルト48の挟圧力を調整させる為の挟圧力制御指令信号S、ロックアップクラッチ26の係合、開放、スリップ量を制御させる為のロックアップ制御指令信号SL/U、例えば油圧制御回路100内の前記ロックアップリレーバルブの弁位置を切り換える後述するソレノイドバルブ(第1ソレノイドバルブSL1、第2ソレノイドバルブSL2)を駆動するための指令信号やロックアップクラッチ26の係合力を調節するリニアソレノイドバルブSLUを駆動するための指令信号、ニュートラル制御時において前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1を開放乃至半係合させるための信号、ガレージ制御時において前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1の係合圧を調整するための信号などが油圧制御回路100へ出力される。
【0036】
図3は、油圧制御回路100のうち、主にロックアップクラッチ26のロックアップ制御、およびシフトレバー74の操作に伴う前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1の係合油圧制御に関連する要部を示す油圧回路図である。図3において、油圧制御回路100は、例えばエンジン12によって駆動されるオイルポンプ28から吐出された作動油の吐出圧を調圧してプライマリ圧PLを出力するリリーフ式の第1レギュレータバルブ104、第1レギュレータバルブ104の調圧時に排出される余剰油を元圧としてプライマリ圧PLよりも低圧であるセカンダリ圧PL2を出力する第2レギュレータバルブ106、第1レギュレータバルブ104によって調圧されたプライマリ圧PLを元圧にしてモジュレータ圧PLPMを調圧するライン圧調圧バルブ108、ライン圧調圧バルブ108によって調圧されたモジュレータ圧PLPMを元圧にソレノイドモジュレータ圧PSMを調圧するソレノイドモジュレータバルブ110、ソレノイドモジュレータバルブ110によって調圧されたソレノイドモジュレータ圧PSMを元圧にして第1切替圧PSL1を出力する第1ソレノイドバルブSL1、ソレノイドモジュレータバルブ110によって調圧されたソレノイドモジュレータ圧PSMを元圧にして第2切替圧PSL2を出力する第2ソレノイドバルブSL2、前記第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2の出力状態に従って前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1へ供給される作動油を切替えるクラッチアプライコントロールバルブ112、前記第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2の出力状態に従ってロックアップクラッチ26を開放状態(非作動状態)とする開放位置(ロックアップオフ位置、OFF位置)またはロックアップクラッチ26を係合状態(作動状態)とする係合位置(ロックアップオン位置、ON位置)の何れかに択一的に切り替えるロックアップリレーバルブ114、電子制御装置50から供給される駆動電流に対応した制御圧PSLUを出力するリニアソレノイドバルブSLU、ロックアップリレーバルブ114が係合位置に切り替えられた状態でリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUに従ってロックアップクラッチ26の係合力を制御するためのロックアップコントロールバルブ116、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が選択的に係合或いは開放されるようにシフトレバー74の操作に従って油路が機械的に切り換えられるマニュアルバルブ118等を備えている。なお、本実施例のクラッチアプライコントロールバルブ112が本発明の第1切替バルブに対応しており、ロックアップリレーバルブ114が本発明の第2切替バルブに対応しており、リニアソレノイドバルブSLUが本発明の電磁弁に対応しており、制御圧PSLUが本発明の電磁弁の出力圧に対応している。
【0037】
オイルポンプ28は、例えばベーンポンプや歯車ポンプで構成され、エンジン12の駆動に伴って駆動させられ、オイルパン120に貯留されている作動油を汲み上げて吐出ポート102から吐出する。
【0038】
第1レギュレータバルブ104は、ライン圧調圧バルブ108、駆動側プーリ42の駆動側油圧アクチュエータ42c、および従動側プーリ46の従動側アクチュエータ46c等の元圧となるプライマリ圧PLを調圧するためのリリーフ式の調圧弁である。なお、第1レギュレータバルブ104は、図示しないリニアソレノイドバルブの制御圧PSLSを受け入れる油室を備えており、制御圧PSLSによってプライマリ圧PLが最適な油圧に制御される。
【0039】
第2レギュレータバルブ106は、ロックアップクラッチ26等に供給されるセカンダリ圧PL2を調圧するためのリリーフ式の調圧弁である。なお、第2レギュレータバルブ106は、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを受け入れる油室を備えており、制御圧PSLUによってセカンダリ圧PL2が最適な油圧に制御される。
【0040】
ライン圧調圧バルブ108は、第1レギュレータバルブ104によって調圧されたプライマリ圧PLを元圧にして、ラインモジュレータ圧PLPM(以下、モジュレータ圧PLPM)を調圧する調圧弁である。ライン圧調圧バルブ108は、軸方向に移動させられることにより油路の状態を切り替えるスプール弁子122と、プライマリ圧PLが入力される入力ポート124と、スプール弁子122の切替位置に応じて選択的に入力ポート124と連通される出力ポート126と、出力されたモジュレータ圧PLPMを受け入れるフィードバックポート128と、後進用ブレーキB1へ供給される油圧を受け入れる油室132と、スプール弁子122を図において下方に常時付勢するスプリング134とを、備えている。
【0041】
ライン圧調圧バルブ108では、下式(1)によって出力ポート126から出力されるモジュレータ圧PLPMが決定される。ここで、Fがスプリング134の付勢力を示し、PB1が後進用ブレーキB1に供給される作動油の油圧を示し、A1が油室132においてスプール弁子122が受ける受圧面積を示し、ΔAがフィードバックポート128内の油室に形成されているスプール弁子122の受圧面積差を示している。式(1)より、後進走行時は油圧PB1が供給されるため、モジュレータ圧PLPMが前進走行時のモジュレータ圧PLPMよりも高くなる。なお、ライン圧調圧バルブ108によって調圧されたモジュレータ圧PLPMは、リニアソレノイドバルブSLUの元圧、前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、駆動側油圧アクチュエータ42cの油圧を制御する図示しないリニアソレノイドバルブSLP、従動側油圧アクチュエータ46cの油圧を制御する図示しないリニアソレノイドバルブSLS等の元圧として使用される。なお、モジュレータ圧PLPMが本発明のライン圧に対応している。
LPM=(F+PB1×A1)/ΔA・・・・(1)
【0042】
ソレノイドモジュレータバルブ110は、ライン圧調圧バルブ108によって調圧されたモジュレータ圧PLPMを元圧にして、一定圧であるソレノイドモジュレータ圧PSMを調圧する。このソレノイドモジュレータバルブ110によって調圧されたソレノイドモジュレータ圧PSMが、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2の元圧として供給される。
【0043】
クラッチアプライコントロールバルブ112は、マニュアルバルブ118を介して前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1へ供給される作動油の供給状態を、ライン圧調圧バルブ108から出力されるモジュレータ圧PLPMまたはリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUの何れかに切替える切替弁として機能する。クラッチアプライコントロールバルブ112は、軸方向に移動させられることにより、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1に供給される作動油をライン圧調圧バルブ108から出力されるモジュレータ圧PLPMとするnormal位置(図において、左側)、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUとするfail/ガレージ位置(図において右側)のいずれかに位置させられるスプール弁子140と、ライン圧調圧バルブ108によって調圧されたモジュレータ圧PLPMが入力される第1入力ポート142と、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが入力される第2入力ポート144と、マニュアルバルブ118の入力ポート160に接続され、スプール弁子140の切替位置に応じて第1入力ポート142および第2入力ポート144の何れかと連通される第1出力ポート146と、図示しない調圧弁によって調圧された制御圧PLPM2が入力される第3入力ポート148と、従動側油圧アクチュエータ46cの油圧Pdが入力される第4入力ポート150と、駆動側油圧アクチュエータ42cに接続され、スプール弁子140の切替位置に応じて第3入力ポート148および第4入力ポート150の何れかと連通される第2出力ポート152と、スプール弁子140をnormal位置側に常時付勢するスプリング154と、スプール弁子140にfail/ガレージ位置側に向かう推力を付与するために第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1を受け入れる油室156と、スプール弁子140にnormal位置側に向かう推力を付与するために第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2を受け入れる油室158とを、備えている。なお、クラッチアプライコントロールバルブ112において、fail/ガレージ位置が本発明の第1位置に対応しており、normal位置が本発明の第2位置に対応している。
【0044】
クラッチアプライコントロールバルブ112において、例えば第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が油室156に供給されると、スプール弁子140がスプリング154の付勢力に抗ってfail/ガレージ位置側(図において右側)に移動させられる。このとき、第2入力ポート144と第1出力ポート146とが連通させられ、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUがマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給される。また、第4入力ポート150と第2出力ポート152とが連通させられ、従動側油圧アクチュエータ46cの油圧Pdが駆動側油圧アクチュエータ42cに供給される。
【0045】
一方、第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が油室158に供給されると、スプール弁子140がnormal位置側(図において左側)に移動させられる。このとき、第1入力ポート142と第1出力ポート146とが連通させられ、モジュレータ圧PLPMがマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給される。また、第3入力ポート148と第2出力ポート152とが連通させられ、制御圧PLPM2が駆動側油圧アクチュエータ42cに供給される。
【0046】
また、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2共に出力される場合、第1切替圧PSL1および第2切替圧PSL2による推進力が互いに相殺され、スプリング154の付勢力によって、スプール弁子140がnormal位置側(図において左側)に移動させられる。したがって、モジュレータ圧PLPMがマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給されると共に、制御圧PLPM2が駆動側油圧アクチュエータ42cに供給される。
【0047】
また、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2共に出力されない場合には、スプリング154の付勢力によって、スプール弁子140がnormal位置側(図において左側)に移動させられる。したがって、モジュレータ圧PLPMがマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給されると共に、制御圧PLPM2が駆動側油圧アクチュエータ42cに供給される。このように、クラッチアプライコントロールバルブ112は、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2に応じて、マニュアルバルブ118の入力ポート160すなわち前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1に供給される係合圧がモジュレータ圧PLPMまたはリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUのいずれかに切り替えられる。
【0048】
マニュアルバルブ118において、入力ポート160には、クラッチアプライコントロールバルブ112の第1出力ポート146から出力された係合油圧Pa(制御圧PSLUまたはモジュレータ圧PLPM)が供給される。そして、シフトレバー74が「D」ポジション或いは「L」ポジションに操作されると、係合油圧Paが前進用出力ポート162を経て前進用クラッチC1に供給され、前進用クラッチC1が係合させられる。また、シフトレバー74が「R」ポジションに操作されると、係合油圧Paが後進用出力ポート164を経て後進用ブレーキB1に供給され、後進用ブレーキB1が係合させられる。また、シフトレバー74が「P」ポジションおよび「N」ポジションに操作されると、入力ポート160から前進用出力ポート162および後進用出力ポート164への油路がいずれも遮断され、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に開放させられる。
【0049】
トルクコンバータ14のロックアップクラッチ26は、係合側油路170を介して供給される係合側油室172内の油圧Ponと開放側油路174を介して供給される開放側油室176内の油圧Poffとの差圧ΔP(=Pon-Poff)によりフロントカバー178に摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチである。そして、トルクコンバータ14の運転条件としては、例えば差圧ΔPが負とされてロックアップクラッチ26が開放される所謂ロックアップオフ、差圧ΔPが零以上とされてロックアップクラッチ26が半係合される所謂スリップ状態、および差圧ΔPが最大値とされてロックアップクラッチ26が完全係合される所謂ロックアップオンの3条件に大別される。また、ロックアップクラッチ26のスリップ状態においては、差圧ΔPが零とされることによりロックアップクラッチ26のトルク分担がなくなって、トルクコンバータ14は、ロックアップオフと同様の運転状態とされる。
【0050】
ロックアップリレーバルブ114は、ロックアップクラッチ26を作動および非作動とするための作動側および非作動側に切り替えられる切替弁である。ロックアップリレーバルブ114は、ロックアップクラッチ26の係合位置(ON位置、ロックアップオン位置:図において右側)および開放位置(OFF位置、ロックアップオフ位置:図において左側)を切替えるスプール弁子180と、そのスプール弁子180の一方の軸端側に設けられてスプール弁子180に開放位置(OFF位置)側へ向かう推力を付与するスプリング182と、スプール弁子180を開放位置(OFF位置)へ移動させるための第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1を受け入れる油室184と、スプール弁子180を係合位置(ON位置)側へ移動させるための第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2を受け入れる油室186と、第2レギュレータバルブ106によって調圧されたセカンダリ圧PL2が入力される入力ポート188と、ロックアップコントロールバルブ116の制御ポート212と連通される迂回ポート190と、係合側油路170と連通されている係合側ポート192と、開放側油路174と連通されている開放側ポート194とを、備えている。なお、ロックアップリレーバルブ114において、係合位置が本発明のロックアップオン位置に対応しており、開放位置が本発明のロックアップオフ位置に対応している。
【0051】
ロックアップコントロールバルブ116は、ロックアップクラッチ26を半係合状態とするスリップ位置(SLIP位置)、または完全係合状態とする完全係合位置(ON位置)の何れかに切替えるためのスプール弁子200と、そのスプール弁子200にスリップ位置(SLIP位置)側へ向かう推力を付与するスプリング202と、そのスプール弁子200をスリップ側位置へ向かって付勢するためにトルクコンバータ14の係合側油室172内の油圧Ponを受け入れる油室204と、そのスプール弁子200を完全係合位置(ON位置)へ向かって付勢するためにトルクコンバータ14の開放側油室176内の油圧Poffを受け入れる油室206と、スプール弁子200を完全係合位置へ向かって付勢するために制御圧PSLUを受け入れる油室208と、セカンダリ圧PL2が入力される入力ポート210と、ロックアップリレーバルブ114の迂回ポート190と連通される制御ポート212とを、備えている。
【0052】
このように構成されたロックアップリレーバルブ114およびロックアップコントロールバルブ116により、係合側油室172および開放側油室174への作動油圧の供給状態が切り換えられてロックアップクラッチ26の作動状態が切り替えられる。
【0053】
まず、ロックアップクラッチ26が開放状態を含むスリップ状態乃至ロックアップオン状態に切り換えられた場合を説明する。ロックアップリレーバルブ114において、第2ソレノイドバルブSL2の切替圧PSL2が油室186に供給されてスプール弁子180が係合位置(ON位置)へ移動させられ、入力ポート188に供給されたセカンダリ圧PL2が係合側ポート192から係合側油路1700を通り係合側油室172へ供給される。この係合側油室172へ供給されるセカンダリ圧PL2が油圧Ponとなる。同時に、開放側油室176は、開放側油路174を通り開放側ポート194から迂回ポート190を経てロックアップコントロールバルブ116の制御ポート212に連通させられる。そして、開放側油室176の油圧Poffがロックアップコントロールバルブ116によって調整されるに従い、差圧ΔP(=Pon-Poff)が調整されて、ロックアップクラッチ26の作動状態がスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り替えられる。
【0054】
具体的には、ロックアップリレーバルブ114のスプール弁子180が係合位置(ON位置)へ付勢されているときに、すなわちロックアップクラッチ26が係合側状態に切り換えられたときに、ロックアップコントロールバルブ116において、スプール弁子200を完全係合位置(ON位置)へ付勢させるための制御圧PSLUが油室208へ供給されずスプリング202の推力によってそのスプール弁子200がスリップ位置(SLIP位置)とされると、入力ポート210に供給されたセカンダリ圧PL2が制御ポート212から迂回ポート190を経て開放側ポート194から開放側油路172を通り開放側油室176へ供給される。これにより、油圧Ponと油圧Poffとが同圧とされることから差圧ΔPが零とされて、ロックアップリレーバルブ114が係合位置へ切り換えられた状態であっても、ロックアップクラッチ26がロックアップオフと同等の状態とされる。
【0055】
また、ロックアップリレーバルブ114のスプール弁子180が係合位置(ON位置)へ付勢されているときに、ロックアップコントロールバルブ116において、スプール弁子200を完全係合位置(ON位置)へ付勢するための予め定められた制御圧PSLUが(ロックアップオン時)が油室208へ供給されてスプール弁子200が完全係合位置へ付勢されると、入力ポート210から制御ポート212への油路が遮断され、開放側油室176にはセカンダリ圧PL2が供給されないと共に、開放側油室176内の作動油が制御ポート212を経てドレーンポートEXから排出される。これにより、油圧Poffが零とされることから差圧ΔPが最大とされてロックアップクラッチ26がロックアップオンとされる。
【0056】
また、ロックアップリレーバルブ114のスプール弁子180が係合位置(ON位置)へ付勢されているときに、ロックアップコントロールバルブ116において、スプール弁子200をスリップ位置(SLIP位置)と完全係合位置(ON位置)との間の状態へ位置させるための予め定められた制御圧PSLU が油室208へ供給されると、入力ポート210に供給されたセカンダリ圧PL2が制御ポート212を経て開放側油室176へ供給される状態と開放側油室176内の作動油が制御ポート212を経てドレーンポートEXから排出される状態とが、上記制御圧PSLUに基づいて調整される。つまり、油圧Poffは、ロックアップクラッチ26の回転速度差NSLP(Ne-Nt)が目標回転速度差NSLPとなる差圧ΔPとされるように制御圧PSLU に基づいてロックアップコントロールバルブ116によって調圧される。
【0057】
次に、ロックアップクラッチ26が開放状態に切り換えられた場合を説明する。ロックアップリレーバルブ114において、第2切替圧PSL2が油室186に供給されず、第1切替圧PSL1が油室184に供給されると、その第1切替圧PSL1に基づく推力およびスプリング172の付勢力によってスプール弁子180が開放位置(OFF位置)に移動させられ、入力ポート188に供給されたセカンダリ圧PL2が開放側ポート194からトルクコンバータ14の開放側油路174を通り、開放側油室176へ供給される。そして、係合側油室172を経てトルクコンバータ14の係合側油路170を通り係合側ポート192に排出された作動油が排出ポート214から潤滑回路216へ供給される。これにより、差圧ΔPが負とされてロックアップクラッチ26がロックアップオフとされる。
【0058】
上記のように構成される油圧制御回路100において、第1ソレノイドバルブSL1から第1切替圧PSL1が出力される一方、第2切替バルブSL2から第2切替圧PSL2が出力されない状態では、クラッチアプライコントロールバルブ112において、スプール弁子140がfail/ガレージ位置に移動させられる。なお、上記fail/ガレージ位置は、車両において何らかの故障が発生した場合、またはシフトレバー74を「N」ポジションから「D」、「R」、「L」ポジションのいずれかに切り替える際に実施されるガレージ制御時に切り替えられるものであり、この状態において、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが第2入力ポート144から第1出力ポート146を経てマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給される。そして、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1の一方にその制御圧PSLUが供給され、その制御圧PSLUに基づいて前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1が滑らかに係合されるに従い、車両がスムーズに発進する。る。また、駆動側油圧アクチュエータ42cには従動側油圧アクチュエータ46cの油圧Pdが供給されることで、予め設定されている変速比γaに調整される。なお、上記前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は、車両の発進クラッチに対応するものである。
【0059】
このとき、ロックアップリレーバルブ114においては、第1ソレノイドバルブSL1の切替圧PSL1が油室184に供給されるに従い、スプール弁子180が開放位置(OFF位置)に切り替えられるため、ロックアップリレーバルブ114の迂回ポート190は遮断された状態となる。したがって、ロックアップリレーバルブ114とロックアップコントロールバルブ116とは、遮断された状態となり、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが油室208に供給されてもロックアップクラッチ26には影響が生じない。上記より、第1ソレノイドバルブSL1から第1切替圧PSL1が出力された状態では、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUは、前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1の係合圧となる。
【0060】
また、第1ソレノイドバルブSL1から第1切替圧PSL1が出力されない一方、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力される状態では、ロックアップリレーバルブ114において、スプール弁子180が係合位置(ON位置)側に位置させられる。この状態において、上述したように、ロックアップコントロールバルブ116の油室208にリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが供給されることで、スプール弁子200がSLIP位置乃至ON位置の範囲で制御され、ロックアップクラッチ26の係合状態(スリップ状態)が制御される。このとき、クラッチアプライコントロールバルブ112においては、第2切替圧PSL2が油室138に供給されることで、スプール弁子140がnormal位置に位置させられるため、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが供給される第2入力ポート144が遮断された状態となる。上記より、第2ソレノイドバルブSL2から切替圧PSL2が出力された状態では、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUは、ロックアップクラッチ26の係合状態を制御するための制御圧として機能する。
【0061】
上記のように、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2の作動状態の切替に関連して、クラッチアプライコントロールバルブ112の連通状態が切り替えられてリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUによって前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1の作動状態が制御されると共に、ロックアップリレーバルブ114の連通状態が切り替えられてリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUによってロックアップクラッチ26の作動状態が制御される。すなわち、1つのリニアソレノイドバルブSLUで2つの制御が実行されることで、リニアソレノイドバルブが1つ省略されている。なお、この第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2は、電子制御装置50によりそれぞれ独立に励磁、非励磁されるに従い、クラッチアプライコントロールバルブ112(第1切替バルブ)およびロックアップリレーバルブ114(第2切替バルブ)も同様にそれぞれ独立して切替可能に構成されている。
【0062】
ところで、車両前進発進時等において前進用クラッチC1を係合する際、発進時のショックを抑制するため、前後進切替装置16の前進用クラッチC1に供給される係合油圧Paを制御して前進用クラッチC1を滑らかに係合させるガレージ制御が実行される。そして、ガレージ制御終盤では、前進用クラッチC1の滑りが防止されるように前進用クラッチC1の係合圧Paが昇圧されて高圧に制御される。従来では、この係合圧Paの昇圧がリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUによって実施され、ガレージ制御終了時では、リニアソレノイドバルブSLUから高圧の制御圧PSLUが出力された状態となっている。この状態でロックアップ制御に切り替えると、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが高圧であるため、トルクコンバータ14の係合側油室172内の油圧Ponが急激に高くなり、ロックアップクラッチ26が急係合されてショックが発生する。油圧制御回路100においては、トルクコンバータ14の係合側油室172内の油圧Ponは、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUに比例して高くなるためである。したがって、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを低下させる制御を実行し、その油圧がロックアップを開始する油圧に低下するまでロックアップクラッチ26のロックアップ開始を待つ必要があるため、ロックアップの開始が遅れて燃費が悪化する問題があった。なお、上記問題は、後進発進時においても同様に発生するが、本実施例では前進走行時に限って説明する。
【0063】
そこで、本実施例では、ガレージ制御において前進用クラッチC1を係合させてリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUによるロックアップクラッチ26のロックアップを開始する場合、前進用クラッチC1の滑りを防止するために係合終盤に実行される前進用クラッチC1の係合油圧Paの昇圧を、従来のリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUによる昇圧から、クラッチアプライコントロールバルブ112の切替により前進用クラッチC1への供給元をモジュレータ圧PLPMに切り替えることによる昇圧に変更する。なお、モジュレータ圧PLPMは、制御圧PSLUよりも十分に高圧であるため、前進用クラッチC1にモジュレータ圧PLPMが供給されると、前進用クラッチC1の係合圧Paが昇圧されて前進用クラッチC1が係合される。これにより、ガレージ制御時においてリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUによる昇圧が実施されないため、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを低下させる制御を、前進用クラッチC1にモジュレータ圧PLPMが供給される間に開始することができる。また、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを低下させる制御開始時点の油圧が従来制御に比べて高圧とならないため、制御圧PSLUがロックアップを開始する油圧まで低下するのに要する時間が短くなり、ロックアップクラッチ26のロックアップ開始タイミングを早めることができる。以下、上記制御について詳細に説明する。
【0064】
図4は、電子制御装置50の制御作動を機能的に説明する機能ブロック線図である。図4において、ガレージ制御手段220は、シフトレバー74が非駆動ポジションである「P」、「N」ポジションから駆動ポジションである「D」ポジションまたは「L」ポジションに操作されたときに実行される。ガレージ制御手段220は、先ず、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1を出力することで、クラッチアプライコントロールバルブ112のスプール弁子140をfail/ガレージ位置に移動させて、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが前進用クラッチC1に供給可能な状態に切り替える。なお、マニュアルバルブ118においては、シフトポジションが「D」または「L」ポジションに切り替えられているため、入力ポート160と前進用出力ポート162とが連通されている。したがって、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUがクラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して係合圧Paとして前進用クラッチC1に供給される。
【0065】
次いで、ガレージ制御手段220は、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLU(指示圧)を予め設定されている値まで一時的に急激に上昇(クイックアプライ、ファストフィル)させた後、所定の勾配で制御圧PSLUを上昇させる(スイープアップ)。上記のように制御されることで、制御圧PSLUの実圧が速やかに引き上げられる。
【0066】
クラッチ同期判定手段222は、前進用クラッチC1が同期したか否かを判定する。前進用クラッチC1の同期判定は、例えば前進用クラッチC1の前後の回転速度差すなわちタービン軸34のタービン回転速度Ntと入力軸36の入力軸回転速度Ninとの回転速度ΔN(=Nt−Nin)が予め設定されている同期の目安となる所定値α(数rpm乃至数十rpm程度)以下となったか否かに基づいて判定される。或いは、クラッチ同期判定手段222は、ガレージ制御開始からの経過時間を計測し、その時間が予め設定されている所定時間Taを経過したか否かに基づいて前進用クラッチC1が同期したか否かを判定する。上記所定時間Taは、予め実験や計算によって求められ、前進用クラッチC1が同期される時間に設定されている。なお、前進用クラッチC1が同期されると、前進用クラッチC1にモジュレータ圧PLPMが供給されて係合圧Paが昇圧された際の係合ショックは抑制される。
【0067】
クラッチ同期判定手段222に基づいて、前進用クラッチC1が同期したと判定されると、その時点以降に、ガレージ制御手段220は、前進用クラッチC1への油圧の供給元をリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUからモジュレータ圧PLPMに切り替える。具体的には、ガレージ制御手段220は、第1ソレノイドバルブの第1切替圧PSL1の出力を停止することで、クラッチアプライコントロールバルブ112のスプール弁子140をfail/ガレージ位置からnormal位置側に切り替える。これに従い、クラッチアプライコントロールバルブ112において第1入力ポート142と第1出力ポート146とが連通されるため、モジュレータ圧PLPMがクラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前進用クラッチC1に供給される。そして、前進用クラッチC1にモジュレータ圧PLPMが供給されることで係合圧Paが昇圧されて、前進用クラッチC1が係合される。なお、前進用クラッチC1の供給元がモジュレータ圧PLPMに切り替えられて係合圧Paが急激に上昇しても、前進用クラッチC1が既に同期されているので、係合ショックは抑制される。
【0068】
図4において、制御圧低下手段224は、ガレージ制御手段220によって前進用クラッチC1への供給元がモジュレータ圧PLPMに切り替えられる、すなわちクラッチアプライコントロールバルブ112がnormal位置に切り替えられると、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを急速に低下させる制御(低下制御)を実行する。具体的には、制御圧PSLUの指示圧を零に制御することで、制御圧PSLU(実圧)を急激に低下させる。ここで、本実施例では、前進用クラッチC1にモジュレータ圧PLPMが供給される間に、制御圧PSLUを低下させる制御が実行される、すなわち、前進用クラッチC1にモジュレータ圧PLPMが供給される期間と、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを低下させる期間とが重複される。したがって、2つの作動が重複した期間だけ、制御圧PSLUを低下させる制御を開始する時点が早められる。
【0069】
また、制御圧低下判定手段226は、制御圧PSLUがロックアップ制御を開始する予め設定されている所定圧P1まで低下したか否かを判定する。なお、所定圧P1は予め実験や計算によって求められ、ロックアップリレーバルブ114がロックアップオン位置に切り替えられた際に、車速Vの変化率ΔVが予め設定されている所定値βを越えない範囲において、高圧側の閾値近傍の油圧に設定されている。このように、上記所定値βを越えない範囲において高圧側の閾値近傍の油圧P1に設定されているのは、ロックアップクラッチ26の係合側油室172の油圧Ponを速やかに上昇させるためである。また、上記所定値βは、予め実験等によって設定され、運転者が車速Vの変動を感じない程度の値に設定されている。言い換えれば、油圧P1はロックアップ開始時において、運転者が係合ショックを感じない程度の油圧に設定されている。制御圧低下判断手段226は、制御圧PSLUが所定圧P1まで低下したか否かを、制御圧PSLUの低下制御を開始した時点からの経過時間ΔTが予め設定されている所定時間Tb経過したか否かに基づいて判断する。ここで、所定時間Tbは、予め実験等によって求められており、制御圧PSLUの低下制御開始後、制御圧PSLUが所定圧P1まで低下するのに要する時間に設定されている。
【0070】
上記所定時間Tbは、常に一定値に設定されておらず、CVT油温センサ64によって検出される油温TCVTに応じて変更される。例えば油温TCVTが低下すると油圧の応答性が悪くなるため、制御圧PSLUが所定圧P1まで低下するのに要する時間が長くなる。上記を考慮して、油温TCVTに拘わらず制御圧PSLUが所定圧P1まで低下するとロックアップが開始されるように、油温TCVTが低下するに従って所定時間Tbが長くなるように設定されている。制御圧低下判断手段226は、例えば予め油温TCVTに対応する所定時間Tbの関係マップを記憶しており、上記関係マップから実際に検出される油温TCVTに基づいて所定時間Tbを設定する。
【0071】
また、制御圧低下判定手段226は、制御圧PSLUの低下を上記経過時間ΔTに基づいて判定するのに代わって、制御圧PSLUを直接油圧センサによって検出し、その油圧が予め設定されている所定圧P1まで低下したか否かを判断しても構わない。
【0072】
制御圧低下判定手段226に基づいて、所定時間Tb経過した、すなわち制御圧PSLUが所定圧P1まで低下したと判定されると、ロックアップ制御手段228は、それと同時またはその後速やかに、第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2を出力することで、ロックアップリレーバルブ114を係合位置に切り替える。これにより、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUによるロックアップが開始される。このとき、制御圧PSLUは既に所定圧P1まで低下しているため、ロックアップクラッチ26の急係合は抑制される。また、ロックアップ制御開始時の制御圧PSLUは、零ではなく係合ショックが抑制される範囲において高圧側の油圧である所定圧P1であることから、ロックアップクラッチ26の係合側油室172の油圧Ponも速やかに上昇する。すなわち、所定圧P1が、ロックアップクラッチ26の係合側油室172において油圧Ponを速やかに引き上げるためのクイックアプライ(ファストフィル)圧を発生させる。
【0073】
また、ロックアップ制御手段228は、制御圧PSLUの低下制御開始からの経過時間ΔTが所定時間Tbに到達する直前、すなわちロックアップリレーバルブ114がロックアップオン位置に切り替えられる直前に、制御圧低下手段224による制御圧PSLUを低下させる制御を停止し、制御圧PSLU(指示圧)を所定圧P1に制御する。これに従い、制御圧PSLU(実圧)が所定圧P1近くになると、制御圧PSLUの低下勾配が緩くなり、制御圧PSLUの一時的な落ち込みが防止される。なお、上記制御圧PSLU(指示圧)を所定圧P1に制御する開始時点は、予め実験等によって求められた最適な時点に設定されている。そして、ロックアップ制御手段228は、制御圧PSLU(実圧)が油圧P1に到達すると、ロックアップクラッチ26の回転速度差NSLP(Ne-Nt)が予め設定されている目標回転速度差NSLP*となるように差圧ΔPを制御圧PSLUによって制御する。
【0074】
図5は、図4の電子制御装置50の制御作動の要部すなわちガレージ制御開始から速やかにロックアップクラッチ26のロックアップを開始することができる制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。ここで、図5に示すフローチャートを具体的に説明すると、前進用クラッチC1を係合させてロックアップクラッチ26のロックアップを開始する作動制御を示している。すなわち、クラッチアプライコントロールバルブ112(第1切替バルブ)をfail/ガレージ位置(第1位置)からnormal位置(第2位置)に切り替えると共に、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUをロックアップクラッチ26のロックアップ開始に備えて低下させる制御を実行し、ロックアップリレーバルブ114(第2切替バルブ)を開放位置(ロックアップオフ位置)から係合位置(ロックアップオン位置)へ切り替える作動制御を示している。また、図6は、図5のフローチャーに基づいて制御されるリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUの状態を示すタイムチャートである。
【0075】
先ず、ガレージ制御手段220に対応するステップSA1において、シフトレバー74が非駆動ポジションである「N」、「P」ポジションから前進走行ポジションである「D」、「L」ポジションにシフト操作されると、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が出力され、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが前進用クラッチC1に供給されることで、前進用クラッチC1のガレージ制御が開始される。次いで、ガレージ制御手段220に対応するSA2において、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLU(指示圧)が一時的に急速に引き上げ(クイックアプライ、ファストフィル)られた後、制御圧PSLUが漸増させられる(スイープアップ)。
【0076】
上記ステップSA2は、図6においてt1時点〜t2時点に対応している。なお、図6において、横軸はガレージ制御開始からの経過時間を示しており、縦軸はリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUの大きさを示している。図6に示すように、t1時点直後に制御圧PSLU(指示圧)が急激に引き上げられた後、一端引き下げられ再びt2時点まで漸増されている。これに従い、制御圧PSLU(実圧)が速やかに上昇している。
【0077】
なお、図6において下方に示すガレージ制御のON・OFFは、ガレージ制御の実施状態を示している。具体的には、ガレージ制御ONである場合、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が出力され、クラッチアプライコントロールバルブ112のスプール弁子140がfail/ガレージ位置に切り替えられることで、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUによって前進用クラッチC1の係合圧Paが制御される状態(ガレージ制御)を示している。一方、ガレージ制御OFFである場合、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が出力されず、クラッチアプライコントロールバルブ112のスプール弁子140がnormal位置に切り替えられることで、モジュレータ圧PLPMが前進用クラッチC1に供給される状態を示している。また、ロックアップ制御のON・OFFは、ロックアップ制御の実施状態を示している。具体的には、ロックアップ制御ONである場合、第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が出力され、ロックアップリレーバルブ114が係合位置に切り替えられることで、ロックアップクラッチ26の差圧ΔPが制御圧PSLUによって制御される状態(ロックアップ制御)を示している。一方、ロックアップ制御OFFである場合、第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が出力されず、ロックアップリレーバルブ114が開放位置に切り替えられることで、ロックアップクラッチ26が開放される状態を示している。
【0078】
図5に戻り、クラッチ同期判定手段222に対応するSA3において、ガレージ制御開始時点(t1)より所定時間Ta経過したか否かに基づいて、前進用クラッチC1の同期が完了したか否かが判定される。SA3が否定される場合、SA2に戻り、制御圧PSLUの漸増が継続して実施される。SA3が肯定される場合、所定時間(Tc)経過後、ガレージ制御手段220に対応するSA4において、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1の出力が停止されて、クラッチアプライコントロールバルブ112がnormal位置に切り替えられることで、前進用クラッチC1の供給元がモジュレータ圧PLPMに切り替えられ、前進用クラッチC1には、高圧であるモジュレータ圧PLPMが供給される。このように、クラッチアプライコントロールバルブ112のnormal位置への切替タイミングは、前進用クラッチC1が同期された状態に設定されているため、切替時の係合ショックが抑制される。なお、前進用クラッチC1の同期が判定されるt2時点からt3時点の間においても所定時間Tcだけ制御圧PSLU(指示圧)の漸増(スイープアップ)が継続されているのは、前進用クラッチC1の同期が確実に実施されているように安全マージンを持たせたためである。
【0079】
そして、SA4が実施されると、ステップSA5〜SA7およびステップSA8〜SA10が同時に実行される。上記は、後述するSA8に対応する前進用クラッチC1が昇圧される期間と、後述するステップSA5に対応するリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを低下させる期間とが重複することを示している。なお、ステップSA5〜SA7がロックアップ制御への切替に関する制御作動であり、ステップSA8〜SA10が前進用クラッチC1の係合(昇圧)に関する制御作動である。
【0080】
先ず、ロックアップ制御への切替に関する制御作動であるステップSA5〜SA7について説明する。制御圧低下手段224に対応するSA5において、制御圧PSLU(指示圧)が零に制御されることで、制御圧PSLU(実圧)が急激に低下させられる。上記制御は、図6においてt3時点〜t4時点直前に対応しており、制御圧PSLU(指示圧)が零に制御されることで、制御圧PSLU(実圧)が低下している。
【0081】
次いで、制御圧低下判定手段226に対応するSA6において、制御圧PSLU(実圧)が予め設定されているロックアップ制御を開始する所定圧P1まで低下したか否かが判定される。具体的には、制御圧PSLUの低下制御が開始されてからの経過時間ΔTが予め設定されている所定時間Tbに到達した否かに基づいて判定される。SA6が否定される場合、SA5に戻り、制御圧PSLUの低下が継続して実施される。そして、SA6が肯定されると、ロックアップ制御手段228に対応するSA7において、第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が出力されて、ロックアップリレーバルブ114が係合位置に切り替えられ、制御圧PSLUによるロックアップが開始される。なお、上記制御は、図6においてt4時点以降に対応している。なお、図6に示すように、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLU(指示圧)は、ロックアップリレーバルブ114が係合位置に切り替えられるt4時点直前において、制御圧PSLUの低下制御が停止されて所定圧P1に制御されている。これに従い、t4時点直前において制御圧PSLU(実圧)が緩やかに低下し、制御圧PSLU(実圧)の一時的な落ち込みが防止されている。
【0082】
次に、前進用クラッチC1の昇圧に関する制御作動であるステップSA8〜SA10について説明する。ガレージ制御手段220に対応するSA8では、SA4において前進用クラッチC1の供給元がモジュレータ圧PLPMに切り替えられるため、前進用クラッチC1の係合油圧Paが急速に昇圧させられる。次いで、ガレージ制御手段220に対応するSA9では、前進用クラッチC1の供給元がモジュレータ圧PLPMに切り替えられた時点からの経過時間が予め設定されている一定時間を経過したか否かが判定される。SA9が否定される場合、SA8に戻り、前進用クラッチC1の昇圧が継続される。SA9が肯定される場合、SA10において前進用クラッチC1の昇圧が完了する。
【0083】
図7に参考として従来制御のガレージ制御時の制御作動を示すフローチャートを示す。図7に示すように、従来制御では、並列的に制御が実行されず縦列的(シリアル)に制御が実行される。図7において、ステップSB1〜SB3(以下、ステップを省略)は図5に示すSA1〜SA3と同様であるため、その説明を省略する。SB4〜SB5では、前進用クラッチC1の滑りを防止するためのガレージ制御の昇圧が一定時間実行される。この制御は、図6においてt3〜t3’時点の破線で示す制御に対応している。そして、前進用クラッチC1の昇圧が完了すると、SB6において、クラッチアプライコントロールバルブ112がnormal位置に切り替えられることで、前進用クラッチC1の供給元がモジュレータ圧PLPMに切り替えられる。この制御は、図6に示すt3’時点に対応している。
【0084】
次いで、SB7において制御圧PSLU(指示圧)が零とされるのに従い、制御圧PSLU(実圧)が低下される。そして、SB8において制御圧PSLU(実圧)がロックアップ制御を開始する所定圧P1まで低下したか否かが判断され、制御圧PSLU(実圧)が所定圧P1まで低下したと判定されると、SB9において第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が出力され、ロックアップリレーバルブ114が係合位置に切り替えられ、制御圧PSLUによるロックアップ制御が開始される。なお、SB7〜SB9の制御は、図6のt3’時点〜t4’時点において破線で示す制御に対応している。
【0085】
ここで、図5に示す本実施例のフローチャートに基づくと、図6に示すようにt3時点において前進用クラッチC1の供給元がモジュレータ圧PLPMに切り替えられ、制御圧PSLUによるガレージ制御が終了している。一方、従来制御では、図7のフローチャートに基づくと、図6に示すように制御圧PSLUによって前進用クラッチC1の昇圧が実行されるため、t3’時点で制御圧PSLUによるガレージ制御が終了している。すなわち、本実施例では、従来制御の制御圧PSLUによる前進用クラッチC1の係合圧Paの昇圧が実施されないに従い、制御圧PSLUを低下させる制御と前進用クラッチC1の昇圧とを同時に実施(ラップ)させることができる。これに従い、制御圧PSLUを低下させる開始時点が、従来のt3’時点からt3時点に早められる。
【0086】
また、図6に示すように、制御圧PSLUの低下制御を開始する時点の制御圧PSLU(実圧)すなわちクラッチアプライコントロールバルブ112をnormal位置に切り替える時点の油圧が、本実施例ではt3時点において油圧P2となる一方、従来制御ではt3’時点において油圧P2よりも高圧である油圧P3となり、本実施例では制御圧PSLUの低下制御を開始する時点の油圧(P2)が低くなる。これより、制御圧PSLU(実圧)がロックアップ制御を開始する所定圧P1に到達するのに要する時間が、図6に示すように、従来制御では(t4’−t3’)と長くなるのに対し、本実施例では(t4−t3)と従来に比べて短くなり、結果として、(t4’−t4)分だけ所定圧P1まで低下する時間が早くなる。上記より、図6に示すように、ロックアップが開始される時点が、従来に比べて早められる。
【0087】
上述のように、本実施例によれば、前進用クラッチC1を係合させて、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUによるロックアップクラッチ26のロックアップを開始する場合には、クラッチアプライコントロールバルブ112の切替位置がfail/ガレージ位置からnormal位置へ切り替えられるため、前進用クラッチC1にモジュレータ圧PLPMが供給され、その前進用クラッチC1の係合圧Paが昇圧されて係合される。このとき、前進用クラッチC1にモジュレータ圧PLPMが供給される期間と、ロックアップ開始に備えてリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを低下させる制御が実行される期間との少なくとも一部が重複されるため、その重複した期間分だけリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUの低下開始が早められるに従い、ロックアップクラッチ26のロックアップ開始を早めることができる。また、前進用クラッチC1を係合する際に実施される昇圧がモジュレータ圧PLPMによって実行されるため、制御圧PSLUを低下させる制御を開始する時点での油圧が、その制御圧PSLUによって昇圧を実施する場合に比べて低圧となる。したがって、制御圧PSLUを低下させる時間が短縮化されるため、ロックアップクラッチ26のロックアップ開始を早めることができる。上記より、ロックアップクラッチ26のロックアップ開始が早められるに従い、燃費性が向上する。
【0088】
また、本実施例によれば、ロックアップリレーバルブ114は、クラッチアプライコントロールバルブ112がnormal位置に切り替えられた後、所定時間Tb経過後に係合位置に切り替えられてロックアップが開始される。このとき、制御圧PSLUを低下させる制御を開始する時点での油圧が、制御圧PSLUによって昇圧を実施する場合に比べて低圧であるため、その所定時間Tbを短縮することができ、ロックアップ開始を早めることができる。
【0089】
また、本実施例によれば、ロックアップリレーバルブ114は、クラッチアプライコントロールバルブ112がnormal位置に切り替えられた後、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが所定圧P1まで低下すると係合位置に切り替えられてロックアップが開始される。このとき、制御圧PSLUを低下させる制御を開始する時点での油圧が、制御圧PSLUによって昇圧を実施する場合に比べて低圧であるため、その所定圧P1まで低下する時間が短くなるに従い、ロックアップ開始を早めることができる。
【0090】
また、本実施例によれば、前進用クラッチC1の係合圧Paが、その前進用クラッチC1の回転が同期される油圧に到達した時点以降に、クラッチアプライコントロールバルブ112がnormal位置へ切り替えられるため、クラッチアプライコントロールバルブ112がnormal位置に切り替えられて前進用クラッチC1にモジュレータ圧PLPMが供給された際のショックが抑制される。
【0091】
また、本実施例によれば、所定時間Tbは、作動油の油温TCVTが低下するに従って長くなるため、油温TCVTの低下に応じて低下する油圧の応答性を考慮に入れて、油温TCVTの変化に影響されることなくロックアップ開始時のリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを略一定とすることができる。
【0092】
また、本実施例によれば、所定圧P1は、ロックアップ制御開始時において車速Vの変化率ΔVが予め設定されている所定値βを越えない油圧範囲において、高圧側の閾値近傍に設定されているため、ロックアップ制御開始時の車速Vの変動を抑制させつつ、ロックアップクラッチ26のロックアップを速やかに開始させることができる。
【0093】
また、本実施例によれば、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを低下させる制御は、そのリニアソレノイドバルブSLUの指示圧を一時的に零にするものであるため、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを速やかに低下させることができる。
【0094】
また、本実施例によれば、ロックアップリレーバルブ114が係合位置に切り替えられる直前に、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを低下させる制御が停止されるため、リニアソレノイドバルブSLUによるロックアップ開始直前における制御圧PSLUの低下勾配が緩やかとなり、制御圧PSLUの一時的な落ち込みを抑制することができる。
【0095】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0096】
例えば、前述の実施例では、車両前進発進時のガレージ制御からロックアップ制御に切り替えられる際の制御について説明したが、本発明は、車両前進走行に限定されず、車両後進時においても適用することができる。具体的には、シフトレバー74が「R」ポジションに操作され、後進用ブレーキB1の係合圧がリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUによって制御される状態からロックアップ制御に切り替えられる場合において適用することができる。
【0097】
また、前述の実施例では、車両用動力伝達装置10は、無段変速機18を含んで構成されているが、本発明は、無段変速機18に限定されず、例えば有段式の自動変速機等など他の形式の変速機を備えた構成であっても適用することができる。すなわち、本発明は、ロックアップ機構と所定の油圧式摩擦係合要素を備え、それらが1つの電磁弁によって制御される構成であれば適宜適用することができる。
【0098】
また、前述の実施例では、クラッチアプライコントロールバルブ112がnormal位置に切り替えられると、前進用クラッチC1には、モジュレータ圧PLPMがライン圧として供給されていたが、上記ライン圧は、モジュレータ圧PLPMに限定されず、ライン圧として例えばプライマリ圧PLが供給される構成であっても構わない。すなわち、前進用クラッチC1が完全係合される油圧が供給される構成であれば、モジュレータ圧PLPM以外の油圧であっても構わない。
【0099】
また、前述の実施例では、前進用クラッチC1が確実に同期されるため、同期判定が肯定されても所定時間Tcだけ制御圧PSLUによるスイープアップが継続して実施されているが、上記所定時間Tcは必ずしも必要なく、同期判定が肯定されると同時にクラッチアプライコントロールバルブ112をnormal位置に切り替えると共に、制御圧PSLUの低下制御を開始しても構わない。
【0100】
また、前述の実施例では、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを低下させる制御の開始と、前進用クラッチC1へのモジュレータ圧PLPMの供給の開始とが同時に実施されているが、必ずしも同時に実施する必要はなく、制御圧PSLUを低下させる制御を遅れて実施しても構わない。すなわち、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを低下させる期間と前進用クラッチC1へモジュレータ圧PLPMが供給される期間とが一部でも重複されれば、本発明の効果を得ることができる。
【0101】
また、前述の実施例では、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを低下させる際、その指示圧が零とされているが、必ずしも完全な零とする必要はなく、制御圧PSLUを低下させることができる範囲において指示圧が変更されても構わない。
【0102】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0103】
10:車両用動力伝達装置
26:ロックアップクラッチ
50:電子制御装置(制御装置)
100:油圧制御回路
112:クラッチアプライコントロールバルブ(第1切替バルブ)
114:ロックアップリレーバルブ(第2切替バルブ)
C1:前進用クラッチ(油圧式摩擦係合要素)
SLU:リニアソレノイドバルブ(電磁弁)
P1:所定圧
LPM:モジュレータ圧(ライン圧)
Pa:油圧式摩擦係合要素の係合圧
SLU:制御圧(電磁弁の出力圧)
Tb:所定時間
CVT:油温
ΔP:差圧(ロックアップ機構の係合圧)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力圧が連続的に制御される電磁弁と、所定の油圧式摩擦係合要素に該電磁弁の出力圧に応じた係合圧が供給される第1位置および該油圧式摩擦係合要素にライン圧が供給される第2位置の何れかの切替位置に切り替える第1切替バルブと、前記出力圧によるロックアップクラッチのロックアップ制御が実施されるロックアップオン位置および該出力圧によるロックアップ制御が遮断されるロックアップオフ位置の何れかの切替位置に切り替える第2切替バルブとを、含む油圧制御回路を備えた車両用動力伝達装置の制御装置であって、
前記油圧式摩擦係合要素を係合させて、前記出力圧による前記ロックアップクラッチのロックアップ制御を開始する場合には、前記第1切替バルブの切替位置を前記第1位置から第2位置へ切り替えると共に、前記ロックアップクラッチのロックアップ制御開始に備えて該出力圧を低下させる制御を実行した後、前記第2切替バルブを前記ロックアップオン位置へ切り替えるものであり、
前記第1切替バルブが前記第2位置へ切り替えられることで、前記油圧式摩擦係合要素に前記ライン圧が供給される期間と、前記電磁弁の出力圧を低下させる制御が実行される期間との少なくとも一部が重複されることを特徴とする車両用動力伝達装置の制御装置。
【請求項2】
前記第1切替バルブおよび前記第2切替バルブは、それぞれ独立して切替可能に構成され、
前記第2切替バルブは、前記第1切替バルブが前記第2位置に切り替えられた後、所定時間経過後に前記ロックアップオン位置に切り替えられることを特徴とする請求項1の車両用動力伝達装置の制御装置。
【請求項3】
前記第1切替バルブおよび前記第2切替バルブは、それぞれ独立して切替可能に構成され、
前記第2切替バルブは、前記第1切替バルブが前記第2位置に切り替えられた後、前記電磁弁の出力圧が所定圧まで低下すると前記ロックアップオン位置に切り替えられることを特徴とする請求項1の車両用動力伝達装置の制御装置。
【請求項4】
前記油圧式摩擦係合要素の係合圧が、該油圧式摩擦係合要素の回転が同期される油圧に到達した時点以降に、前記第1切替バルブが前記第2位置へ切り替えられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の車両用動力伝達装置の制御装置。
【請求項5】
前記所定時間は、作動油の油温が低下するに従って長くなることを特徴とする請求項2の車両用動力伝達装置の制御装置。
【請求項6】
前記所定圧は、ロックアップ制御開始時において車速の変化率が予め設定されている所定値を越えない油圧範囲において、高圧側の閾値近傍に設定されていることを特徴とする請求項3の車両用動力伝達装置の制御装置。
【請求項7】
前記電磁弁の出力圧を低下させる制御は、該電磁弁の指示圧を一時的に零にするものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1の車両用動力伝達装置の制御装置。
【請求項8】
前記第2切替バルブが前記ロックアップオン位置に切り替えられる直前に、前記電磁弁の出力圧を低下させる制御が停止されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1の車両用動力伝達装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−87902(P2012−87902A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236376(P2010−236376)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】