説明

車両用情報提供装置

【課題】通信コストを抑制しつつ詳細な情報をユーザーに提供することが可能な車両用情報提供装置を提供すること。
【解決手段】道路区間毎の渋滞度に関する情報提供を行なう車両用情報提供装置(1)であって、所定の渋滞度を有する道路区間に関する情報を車外設備から取得する通信手段(40)と、前記通信手段により受信された情報に含まれない道路区間が、前記所定の渋滞度以外の渋滞度を有するものとして情報を補完する情報補完手段(56)と、を備え、前記情報補完手段により補完された情報を含む、渋滞度に関する情報をユーザーに提供する車両用情報提供装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路区間毎の渋滞度に関する情報提供を行なう車両用情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車外設備である情報センターにおいて編集、処理された渋滞や旅行時間(ある区間の走行所要時間をいう)、交通規制などの交通情報をリアルタイムで車両に送信する無料の情報通信システムが、VICS(登録商標;Vehicle Information and Communication System)という名称で知られている。VICSでは、ビーコンやFM多重放送を介して車両への情報送信が行なわれている。また、自動車メーカーは、携帯電話の電波網やFM多重放送を介してVICSと同様の交通情報を有償で車両に提供するサービスを行なっている。このような交通情報は、車室内の液晶ディスプレイ装置やHUD(Head Up Display)等によって乗員に表示される。
【0003】
道路の所定の区分であるリンク毎に、車外設備から供給された道路渋滞についての交通情報を表示する交通情報表示装置についての発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、渋滞情報を、「渋滞」、「混雑」、「渋滞なし」、「不明」に分類して表示を行なっている。また、「渋滞なし」のリンクを他のリンクと区別して表示することにより、ユーザーが経路の選択をし易いようにしている。
【特許文献1】特開平9−133537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、車載機器等により取得された種々のデータ(現在位置や速度、天候等)を複数の車両から発信させ、これを情報センターにおいて収集すると共に統計処理等を加えて管理し、渋滞情報や天候情報等のサービス情報として車両等に提供するシステムが、プローブ情報システム等と称され、実用化されている。このようなプローブ情報システムが渋滞情報の提供に適用されると、より細かい道路区間についての情報提供が可能となる。
【0005】
反面、情報センターから車両に送信される情報の量が膨大となり、通信コストが増大するという問題が生じる。上記従来の技術では、こうした問題についての考慮がなされていない。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、通信コストを抑制しつつ詳細な情報をユーザーに提供することが可能な車両用情報提供装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
道路区間毎の渋滞度に関する情報提供を行なう車両用情報提供装置であって、
所定の渋滞度を有する道路区間に関する情報を車外設備から取得する通信手段と、
前記通信手段により受信された情報に含まれない道路区間が、前記所定の渋滞度以外の渋滞度を有するものとして情報を補完する情報補完手段と、を備え、
前記情報補完手段により補完された情報を含む、渋滞度に関する情報をユーザーに提供する車両用情報提供装置である。
【0008】
この本発明の一態様によれば、情報補完手段により補完される情報の分、車外設備から受信する情報の量を低減することができるため、通信コストを抑制することができる。この結果、通信量の割に詳細な情報をユーザーに提供することができる。
【0009】
本発明の一態様において、
前記所定の渋滞度は、例えば、複数段に分類された渋滞度の一部である。
【0010】
また、本発明の一態様において、
前記通信手段により受信された情報に含まれない道路区間は、例えば、渋滞していない道路区間である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通信コストを抑制しつつ詳細な情報をユーザーに提供することが可能な車両用情報提供装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置1について説明する。
【0014】
[構成]
図1は、車両用情報提供装置1の全体構成の一例を示す図である。車両用情報提供装置1は、主要な構成として、GPS受信機10と、INS用センサー15と、HMI(Human Machine Interface)20と、記憶装置30と、通信装置40と、ナビゲーション装置用ECU(Electronic Control Unit)50と、を備える。なお、図中の矢印は、多重通信線を介し、CAN(Controller Area Network)やBEAN、AVC−LAN、FlexRay等の適切な通信プロトコルを用いて行なわれる機器間の情報通信の流れを示す。
【0015】
GPS受信機10は、GPS衛星から衛星の軌道と時刻のデータを含む電波信号を受信してナビゲーション装置用ECU50に出力する。INS用センサー15は、例えばジャイロセンサーや車速センサーを含み、センサー出力値をナビゲーション装置用ECU50に出力する。
【0016】
HMI20は、例えば、タッチパネルとしてユーザーによる各種の入力操作を可能に構成されたディスプレイ装置22や、音声入出力のためのマイク、スピーカー、ブザー等を含む。ディスプレイ装置22では、その表面にユーザーがタッチ操作したことによる電圧の変化を検出し、タッチ操作された位置を認識する。これにより、画面上の所定の位置にGUI(Graphical User Interface)スイッチを設定することができる。HMI20の出力内容はナビゲーション装置用ECU50により決定され、HMI20になされた入力内容は、ナビゲーション装置用ECU50に送信される。
【0017】
記憶装置30は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やDVDドライブ、CD−ROMドライブ等の記憶装置である。記憶装置30の記憶媒体には、地図データ32や、一部が情報センター100から取得され、後述する如く補完処理部56により補完された交通情報34、その他の情報が格納されている。
【0018】
地図データ32は、交差点等を示す複数のノード座標、及びこれを接続するリンクの集合として道路形状を表現したものである。各リンクには、道路幅員や車線数、曲率等が付随して記憶されている。また、地図データ32は、代表的な設備の情報(地点情報)を含んでいる。
【0019】
交通情報34は、道路区間毎の渋滞度を含む。ここで、「道路区間」とは、上記地図データ32のリンクと同一の区間であってもよいし、異なってもよい。これらが異なる場合、地図データ32のリンクと情報センターから受信する道路区間との対応付け処理を行なうものとすればよい。以下、地図データ32のリンクと同一の区間であるものとして説明する。渋滞度は、例えば、「渋滞」、「混雑」、「渋滞なし」、「不明」の4段階に分類される(これに限定されないのは言うまでもない)。
【0020】
通信装置40は、例えば、無線基地局80やネットワーク90を介して情報センター100のセンター側通信装置140との送受信を行なう。通信装置40と無線基地局80との間では携帯電話網、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、衛星電話等を利用した無線通信が行なわれる。また、無線基地局80と情報センター100を接続するネットワーク90は、例えば、公衆電話交換網(PSTN)やデジタル通信ネットワーク(ISDN)、光ファイバ等の有線ネットワークである。また、通信装置40は、FM多重放送受信機やビーコン受信機を含み、FM波やビーコンを介して情報を取得するものであってもよい。
【0021】
情報センター100は、例えば自動車メーカーが運営する施設であり、VICS(登録商標;Vehicle Information and Communication System)情報取得部110と、プローブ情報取得部120と、サーバー130と、センター側通信装置140と、を備える。 VICS情報取得部110は、VICSセンターから交通情報を取得する。VICSセンターでは、警察や道路管理者等のデータベースから入力された情報を元に、渋滞の有無及び程度、区間旅行時間、交通規制などを含む交通情報を生成して車両等に提供している。
【0022】
プローブ情報取得部120は、プローブカーから種々の情報を受信する。本実施例におけるプローブカーとは、本実施例の車載ナビゲーション装置1の如く現在位置特定装置や通信装置を有し、各道路区間における区間旅行時間を算出し、これを情報センターにアップロードすることが可能な車両をいう。従って、車載ナビゲーション装置1を搭載する車両がプローブカーとして行動するものとしてもよいし、専ら交通情報を収集するプローブカーが存在するものとしてもよい。
【0023】
サーバー130は、VICS情報取得部110により取得された交通情報と、プローブ情報取得部120により取得された車線毎の区間旅行時間等を統合し、道路区間毎の渋滞情報を含む交通情報として車両に提供するようにセンター側通信装置140を制御する。
【0024】
ナビゲーション装置用ECU50は、例えば、CPUを中心としてROMやRAM等がバスを介して相互に接続されたコンピューターユニットであり、その他、フラッシュメモリ、I/Oポート、タイマー、カウンター等を備える。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
【0025】
また、ナビゲーション装置用ECU50は、ROMに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより機能する主要な機能ブロックとして、目的地設定部51と、現在位置特定部52と、推奨経路生成部53と、音声制御部54と、通信制御部55と、情報補完部56と、表示制御部57と、を備える。
【0026】
目的地設定部51は、所定のタイミングでHMI20により目的地設定をユーザーに促し、音声又はタッチ入力等によりユーザーが目的地を設定すると、これを地図データ32から検索して、目的地の座標を推奨経路生成部53に出力する。なお、「出力する」とは便宜的な表現であり、フラッシュメモリ等の共有メモリに書き込む処理が行なわれてもよい。
【0027】
現在位置特定部52は、GPS受信機10及びINS用センサー15から入力される信号に基づいて、自車両の現在位置(緯度、経度)を特定する。具体的には、例えば、原則としてGPS受信機10が受信した電波信号の時間差に基づく演算により自車両の現在位置を特定し、GPS受信機10の受信圏外においてはINSセンサー15の出力に基づく補正を行なって自車両の現在位置を推定する。更に、地図データ32とのマッチングにより、特定した自車両の現在位置が正確か否かを定期的にチェックする処理を行なってもよいし、FM多重放送受信機やビーコン受信機を介して受信される各種情報に基づいて自車両の現在位置を補正してもよい。現在位置特定部52が特定した自車両の現在位置は、推奨経路生成部53に出力される。
【0028】
推奨経路生成部53は、目的地設定部51において目的地が設定されると、現在位置特定部52が特定した現在位置から目的地に至る推奨経路を、ダイクストラ法等を用いて生成する。
【0029】
音声制御部54は、経路生成部53が生成した推奨経路に沿って自車両が走行できるように、HMI20による音声案内を行なう。より具体的には、現在位置特定部52により特定された自車両の現在位置を用いて地図データ32を参照することにより、交差点における右左折の案内や、高速道路の利用案内、目的地が近づいてきた旨の案内等を行なうように、スピーカー等を制御する。
【0030】
[交通情報の補完]
通信制御部55は、例えば、経路生成部53が推奨経路を生成したタイミングで、その推奨経路付近の交通情報を取得するように通信装置40を制御する。また、これに限らず、一定時間おきに自車両周辺地域の交通情報を取得するように通信装置40を制御してもよい。
【0031】
本実施例において、情報センター100から受信した情報は、渋滞度が「渋滞」、「混雑」、「不明」のいずれかであるリンクについての情報に限定されている(特許請求の範囲における「所定の渋滞度を有する道路区間に関する情報」)。これにより、通常、最もリンク数が多いと考えられる「渋滞なし」のリンクについての情報が省略されるため、通信量を低減することができる。
【0032】
補完処理部56は、情報センター100から受信した情報に含まれない道路区間について補完処理を行なって、交通情報34として記憶装置30の記憶媒体に記憶させる。補間処理部56は、情報センター100から受信した情報により渋滞度が付与されていないリンクについて、「渋滞なし」であるものとして情報を補完し、記憶装置30の記憶媒体に記憶させる。図2は、補完処理部56により実行される補完処理の流れを示すフローチャートである。
【0033】
まず、地図データ34から、推奨経路周辺(又は自車両周辺)のリンクを抽出する(S100)。
【0034】
そして、抽出したリンクを予め付与されているリンクナンバー順に読込み(S102)、当該リンクについて渋滞度が付与されているか否かを判定する(S104)。渋滞度が付与されている場合は何も処理を行なわず、渋滞度が付与されていない場合は「渋滞なし」を付与する(S106)。
【0035】
以下、全てのリンクについて処理を終了するまで、S102〜S106の処理を繰り返し実行する(S108)。
【0036】
[交通情報等の表示]
表示制御部57は、ディスプレイ装置22によるナビゲーション表示を制御する。具体的には、現在位置特定部52により特定された自車両の現在位置を用いて地図データ32を参照することにより、自車両前方の道路画像を生成する。道路画像は、上空から見た鳥瞰画像であってもよいし、運転者の視界に擬した画像であってもよい。以下、上空から見た鳥瞰画像を表示するものとして説明する。そして、道路画像に重畳して、自車両の現在位置を示すマークを表示したり、進路変更を行なう箇所において矢印を表示したりする。
【0037】
また、表示制御部57は、交通情報34に基づいて、渋滞度を道路画像に重畳表示させる。渋滞度は、例えば各色の矢印(赤色;渋滞、橙色;混雑、緑色;渋滞なし、青色;不明等)で画面上に示される。図3は、情報センター100から受信した情報のみに基づいて渋滞度を表示した場合(図3(A))と、補完処理部56により補完処理を行なった後の交通情報34に基づいて渋滞度を表示した場合(図3(B))とを比較した図である。図示する如く、ユーザーは、通信量が抑制されたにも拘わらず、推奨経路周辺(又は自車両周辺)の渋滞度について詳細な情報を得ることができる。
【0038】
なお、交通情報が渋滞情報以外の情報を含む場合、渋滞度を示す各色の矢印の他、事故・工事等を示すマーク、通行止め等の交通規制を示すマーク等が道路画像に重畳表示されてよい。
【0039】
本実施例の車両用情報提供装置1によれば、通信コストを抑制しつつ詳細な情報をユーザーに提供することができる。
【0040】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】車両用情報提供装置1の全体構成の一例を示す図である。
【図2】補完処理部56により実行される補完処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】情報センター100から受信した情報のみに基づいて渋滞度を表示した場合と、補完処理部56により補完処理を行なった後の交通情報34に基づいて渋滞度を表示した場合とを比較した図である。
【符号の説明】
【0043】
1 車両用情報提供装置
10 GPS受信機
15 INS用センサー
20 HMI
22 ディスプレイ装置
30 記憶装置
32 地図データ
34 交通情報
40 通信装置
50 ナビゲーション装置用ECU
51 目的地設定部
52 現在位置特定部
53 推奨経路生成部
54 音声制御部
55 通信制御部
56 情報補完部
57 表示制御部
80 無線基地局
90 ネットワーク
100 情報センター
110 VICS情報取得部
120 プローブ情報取得部
130 サーバー
140 センター側通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路区間毎の渋滞度に関する情報提供を行なう車両用情報提供装置であって、
所定の渋滞度を有する道路区間に関する情報を車外設備から取得する通信手段と、
前記通信手段により受信された情報に含まれない道路区間が、前記所定の渋滞度以外の渋滞度を有するものとして情報を補完する情報補完手段と、を備え、
前記情報補完手段により補完された情報を含む、渋滞度に関する情報をユーザーに提供する車両用情報提供装置。
【請求項2】
前記所定の渋滞度は、複数段に分類された渋滞度の一部である、
請求項1に記載の車両用情報提供装置。
【請求項3】
前記通信手段により受信された情報に含まれない道路区間は、渋滞していない道路区間である、
請求項1又は2に記載の車両用情報提供装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−168780(P2009−168780A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10404(P2008−10404)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】