説明

車両用樹脂パネル及びその製造方法

【課題】車両用樹脂パネルのクラックを防止するとともに熱伸びを抑制する。
【解決手段】板状基材5の裏面に補強リブ15が一体に突設されたボンネットフード1において、基材5の裏面における補強リブ15非突設箇所、及び補強リブ15の基端側側面に、基材5成形時に不織布19に溶融樹脂Rを含浸させてなる補強布17を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状基材の裏面に補強リブが一体に突設された車両用樹脂パネル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された車両用樹脂パネルは、自動車のボンネットフードとして用いられ、板状基材の裏面に複数の補強リブが一体に突設されたものである。これら補強リブには切欠が車両幅方向に横断するように直列に並んで形成され、これにより樹脂パネルが車両衝突時に切欠を起点に確実にクラッシュされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−102578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1では、樹脂パネルに上面から荷重がかかった際、補強リブ基端表面に応力が集中し、樹脂パネルが剛性不足によりその衝撃に耐え切れず、クラックが生じるおそれがある。
【0005】
また、一般に、車両用樹脂パネルの熱伸びを抑制したいという要望がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、車両用樹脂パネルのクラックを防止するとともに熱伸びを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、基材の裏面における補強リブ非突設箇所、及び補強リブの基端側側面に補強布を設けたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、本発明は、板状基材の裏面に補強リブが一体に突設された車両用樹脂パネルを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記基材の裏面における上記補強リブ非突設箇所、及び上記補強リブの基端側側面には、樹脂パネル成形時に布に溶融樹脂を含浸させてなる補強布が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用樹脂パネルにおいて、上記布は不織布であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用樹脂パネルの製造方法であって、上記基材の表面を成形する成形面を有する表面側成形型と、上記基材の裏面を成形する成形面を有し、当該成形面には補強リブ成形用の凹部が形成された裏面側成形型とを備えた成形型を用意し、上記布を上記裏面側成形型の成形面に上記凹部の開口を覆うようにセットし、次いで、上記成形型を型閉じして上記表面側成形型と裏面側成形型との間にキャビティを形成した状態で、上記キャビティ内に溶融樹脂を射出充填することにより、上記溶融樹脂の射出圧で上記裏面側成形型の凹部に対応する布を破いて該凹部内面に押し付けながら溶融樹脂の一部を凹部に流し込むとともに、該溶融樹脂を上記布に含浸させて基材の裏面に補強リブが一体に突設された樹脂パネルを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、樹脂パネルに上面から荷重がかかった際、その衝撃が補強リブ非突設箇所の補強布によって吸収されることに加え、補強リブ基端表面が補強布によって補強されているので、補強リブ基端表面への応力の集中による樹脂パネルのクラックが防止される。
【0013】
また、樹脂パネルの板面に沿う方向への熱伸びが補強布で抑制される。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、補強布を構成する不織布は、織物や編物と比較して伸縮性が低く、かつその伸縮性に方向に応じた偏りがないので、樹脂パネルの板面に沿う方向への熱伸びがより効果的に抑制される。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、裏面側成形型の成形面に布をセットして溶融樹脂を射出するだけで、基材の裏面における補強リブ非突設箇所及び補強リブの基端側側面に補強布を有する樹脂パネルを容易に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係るボンネットフードの裏面側を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】実施形態1に係るボンネットフードの製造方法において不織布を裏面側成形型の成形面にセットした状態の成形型の断面図である。
【図4】図3の状態から成形型のキャビティ内に溶融樹脂を充填した状態の成形型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係る車両用樹脂パネルとしての樹脂製ボンネットフード1を示す。このボンネットフード1は、車体前方に向かって徐々に幅が狭くなる左右対称の略台形形状であり、その車体後方側端縁は、幅方向中央部分が両側部分よりも車体前方に位置するようになだらかに湾曲している。このボンネットフード1は、板状の樹脂製基材5を備え、該基材5の表面全体には、板状の表面樹脂層3が一体に成形されている。基材5は、PPGF(ガラス繊維入りポリプロピレン)等からなり、表面樹脂層3は、PC/ABS(ポリカーボネート/アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)、PA/PPO(ポリアミド/ポリフェニレンオキサイド)等からなる。
【0019】
上記基材5の車体後側幅方向両端近傍には、1対のボルト取付孔9を有するプレート11がそれぞれ接着材により取り付けられている。これらボルト取付孔9には、ヒンジブラケット(図示せず)がボルト(図示せず)により締結され、これらヒンジブラケットは、それぞれヒンジ(図示せず)を介して車体に取り付けられることでボンネットフード1が車体に開閉可能に取り付けられている。
【0020】
一方、上記基材5裏面の車体前側幅方向略中央には、板状の台座7aと、車両前後方向に沿うように門型状に屈曲して前後端が上記台座7aに支持された棒状部材7bとで形成されたストライカ7が接着剤により取り付けられている。このストライカ7を車体に設けられたラッチ(図示せず)に係合することでボンネットフード1が閉位置に固定される。
【0021】
上記基材5には、上記ストライカ7設置箇所及びプレート11設置箇所を除く裏面全体に亘って、板状の補強リブ15がハニカム状に一体に突設されている。基材5の裏面における補強リブ15非突設箇所、及び補強リブ15の基端側両側面には、基材5成形時に不織布19(図3参照)に溶融樹脂R(図4参照)を含浸させてなる補強布17が設けられている。
【0022】
次に、上記のように構成されたボンネットフード1の製造方法について説明する。
【0023】
製造に際し、図3及び図4に示すような成形型101と、不織布19と、表面樹脂層3の表面を成形する成形面を有する表面樹脂層成形型(図示せず)とを用意する。上記成形型101は、基材5の表面を成形する成形面103aを有する表面側成形型103と、上記基材5の裏面を成形する成形面105aを有する裏面側成形型105とを備えている。上記裏面側成形型105の成形面105aには、上記補強リブ15成形用の凹部105bが複数形成されている。
【0024】
そして、図3に示すように、不織布19を裏面側成形型105の成形面105aに上記凹部105bの開口を覆うようにセットする。次いで、上記成形型101を型閉じして上記表面側成形型103と裏面側成形型105との間にキャビティ107を形成する。この状態で、図4に示すように、上記キャビティ107内における成形面103aと不織布19との間から溶融樹脂Rを射出充填する。この射出圧により上記裏面側成形型105の凹部105bに対応する不織布19が破れて凹部105b内面の基端側に押し付けられながら溶融樹脂Rの一部が凹部105bに流れ込む。不織布19は射出圧により容易に破れる程度の目付量のものを用いる。このとき、不織布19には溶融樹脂Rが含浸する。そして、溶融樹脂Rが固まり、図2に示すように、基材5及び補強リブ15が一体に成形される。
【0025】
しかる後、上記表面側成形型103を後退させ、代わりに上記表面樹脂層成形型を上記裏面側成形型105に対応させ、これら表面樹脂層成形型及び裏面側成形型105を型閉じする。これにより、表面樹脂層成形型と基材5表面との間にキャビティ(図示せず)が形成される。この状態で、当該キャビティに溶融樹脂を射出充填して固化させると、上記基材5の表面に表面樹脂層3が一体に成形される。
【0026】
最後に、表面樹脂層3と一体になった基材5裏面の車体前側幅方向略中央寄りに上記ストライカ7を取り付けるとともに、基材5の車体後側幅方向両端近傍にプレート11を取り付けることにより、ボンネットフード1が得られる。
【0027】
したがって、本実施形態によれば、ボンネットフード1に上面から荷重がかかった際、その衝撃が補強リブ15非突設箇所の補強布17によって吸収されることに加え、補強リブ15基端表面が補強布17によって補強されているので、補強リブ15基端表面への応力の集中によるボンネットフード1のクラックが防止される。
【0028】
また、補強布17を構成する不織布19は、織物や編物と比較して伸縮性が低く、かつその伸縮性に方向に応じた偏りがないので、熱間時等におけるボンネットフード1の板面に沿う方向への熱伸びが補強布17で効果的に抑制される。
【0029】
また、裏面側成形型105の成形面105aに不織布19をセットして溶融樹脂を射出するだけで、基材5の裏面における補強リブ15非突設箇所及び補強リブ15の基端側側面に補強布17を容易に設けることができる。
【0030】
なお、本実施形態では不織布19に溶融樹脂Rを含浸させて補強布17を形成したが、編物または織物に溶融樹脂Rを含浸させることにより形成してもよい。
【0031】
また、本実施形態では、ストライカ7及びプレート11を接着剤にてボンネットフード1に取り付けているが、インサート成形、ボルト固定等により取り付けてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、基材5の上面に表面樹脂層3が一体に成形されているが、該表面樹脂層3は形成されなくてもよい。
【0033】
また、本実施形態では、樹脂パネルがボンネットフード1である場合を示したが、本発明は、トランクフード、フェンダーパネル、ドアパネル等、他の車両用樹脂パネルにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、板状基材の裏面に補強リブが一体に突設された車両用樹脂パネル及びその製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0035】
1 ボンネットフード(樹脂パネル)
5 基材
15 補強リブ
17 補強布
19 不織布(布)
101 成形型
103 表面側成形型
103a 成形面
105 裏面側成形型
105a 成形面
105b 凹部
107 キャビティ
R 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状基材(5)の裏面に補強リブ(15)が一体に突設された車両用樹脂パネル(1)であって、
上記基材(5)の裏面における上記補強リブ(15)非突設箇所、及び上記補強リブ(15)の基端側側面には、樹脂パネル(1)成形時に布(19)に溶融樹脂(R)を含浸させてなる補強布(17)が設けられていることを特徴とする車両用樹脂パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用樹脂パネルにおいて、
上記布(19)は不織布であることを特徴とする車両用樹脂パネル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用樹脂パネルの製造方法であって、
上記基材(5)の表面を成形する成形面(103a)を有する表面側成形型(103)と、上記基材(5)の裏面を成形する成形面(105a)を有し、当該成形面(105a)には補強リブ(15)成形用の凹部(105b)が形成された裏面側成形型(105)とを備えた成形型(101)を用意し、
上記布(19)を上記裏面側成形型(105)の成形面(105a)に上記凹部(105b)の開口を覆うようにセットし、
次いで、上記成形型(101)を型閉じして上記表面側成形型(103)と裏面側成形型(105)との間にキャビティ(107)を形成した状態で、上記キャビティ(107)内に溶融樹脂(R)を射出充填することにより、上記溶融樹脂(R)の射出圧で上記裏面側成形型(105)の凹部(105b)に対応する布(19)を破いて該凹部(105b)内面に押し付けながら溶融樹脂(R)の一部を凹部(105b)に流し込むとともに、該溶融樹脂(R)を上記布(19)に含浸させて基材(5)の裏面に補強リブ(15)が一体に突設された樹脂パネル(1)を得ることを特徴とする車両用樹脂パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−96582(P2012−96582A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243795(P2010−243795)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】