説明

車両用表示装置

【課題】簡素な構成であり且つ運転者が視認し易い表示によって障害物の存在を運転者に視覚的に警報する。
【解決手段】50メートル前方までが二次警報ゾーン40であり、二次警報ゾーン40内に歩行者Hを検出すると、赤色LED素子12によって二次警報情報が生成される。50メールよりも前方であって且つ左右の白線42よりも左右外側の領域が一次警報ゾーン44であり、一次警報ゾーン44内に障害物を検出すると、LED表示装置8の緑色LED素子10によって一次警報情報が生成される。一次、二次警報情報は、歩行者HとアイポイントEPとを結ぶ仮想線上であってアイポイントEPから歩行者Hを見たときに、フロントウィンドウガラス20上の歩行者Hの足元の近傍に該当する部分に警報マークAが映るようにLED素子10,12が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用表示装置に関し、より詳しくは運転支援に関する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の自車両の周囲を監視して、衝突する可能性のある障害物(歩行者、自転車、自動二輪車など)の存在を運手者に知らせる運転支援技術の開発が進んでいる。例えば特許文献1は、インストルメントパネルに、レーザ、スポット光源などの所定形状の光線をフロントウィンドウガラスに向けて投射する投射機構を設置し、自車両の周囲の障害物から抽出した衝突危険度のある歩行者や自転車などの像をフロントウィンドウガラスに向けて投射することを提案している。
【0003】
特許文献1は、具体的には、カメラ、ナビゲーション装置、レーダを備え、カメラで自車両の周囲を撮影し、またレーダで障害物までの距離を測定する。カメラが撮影した画像からエッジ検出処理や輪郭抽出処理を行ってパターンマッチング法によって車線を規定する白線を認識し、また、画像から抽出した歩行者などの障害物を認識する。そして、ナビゲーション装置及びレーダからの位置情報を用いて障害物の衝突危険度を判定し、所定以上の衝突危険度の障害物をフロントウィンドウガラスに映し出すことで運転者に注意を促す。
【0004】
特許文献2は、ナビゲーション装置による進路誘導情報の視認性を高めることを目的として、フロントウィンドウガラスの近傍のインスツルメントパネルに運転席側から放射状に又はマトリクス状に複数のLEDを配設し、ナビゲーション装置から取得した誘導情報に基づいてLED群の表示を制御することで方向を指し示すことを提案している。このLEDの表示は危険度に応じて色分けされ、一般的な注意を促すときは黄色の表示が使用され、特に注意を喚起するときには赤色の表示が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−62762号公報
【特許文献2】特開2000−242897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2の例で言えばナビゲーション装置を必要とするものであるが、既知のとおり、ナビゲーション装置は高価であり、ナビゲーション装置から取り込んだ位置情報や地図情報に基づいて運転者を支援するための情報を生成するには複雑な処理を必要とする。
【0007】
本発明の目的は、簡素な構成であり且つ運転者が視認し易い表示によって障害物の存在を運転者に視覚的に警報することのできる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
運転者側のインスツルメントパネルに配設された発光体表示装置であって、発光体表示装置に含まれる複数の発光体の点灯を制御することで、発光体表示装置が発する光をフロントウィンドウガラスに反射させて運転者に情報を伝達する車両用表示装置であって、
フロントウィンドウガラスを通して自車両の前方を撮像する、車幅方向に離間して配設された複数の撮像手段と、
該撮像手段が撮像した画像から障害物を検出する障害物検出手段と、
前記撮像手段が撮像した画像から障害物までの距離を検出する距離検出手段と、
前記障害物検出手段及び距離検出手段が検出した障害物が、予め設定された警報ゾーンに位置しているか否かを判定するゾーン判定手段と、
前記障害物が前記警報ゾーンに位置しているときに、前記フロントウィンドウガラス上に見える前記障害物の下端の近傍に警報マークが映るように前記発光体表示装置の点灯を制御する制御手段とを有することを特徴とする車両用表示装置を提供することにより達成される。ここに、発光体の典型例としてLEDを挙げることができる。
【0009】
すなわち、本発明によれば、インスツルメントパネルに設置した発光体表示装置が発する光をフロントウィンドウガラスで反射させて運転者に視認させるようにしたことで、プロジェクタなどの付帯機器無しに運転者に警報マークを視認させることができ、その分システムを簡素化することができる。また、運転者がフロントウィンドウガラスを通して視認する障害物の下端の近傍に警報マークが目に入り、この警報マークが障害物と干渉しないため、フロントウィンドウガラスに映る警報マークによって障害物の視認性が阻害されるのを防止することができる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態にあっては、
前記警報ゾーンが、運転者に注意を促す度合いの強さによって複数の警報ゾーンに分けられており、
前記制御手段では、前記障害物が位置する警報ゾーンに応じて各警報ゾーン毎に異なる制御が前記発光体表示装置に対して行われる。このように警報ゾーンを複数に区分して各警報ゾーン毎に異なる発光体表示装置の制御が行われることで運転者はフロントウィンドウガラスに映る警報マークの表示態様によって衝突回避操作の緊急性を即座に認識することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態にあっては、
前記撮像手段が撮像した画像から走行路を規定する白線を抽出する白線抽出手段を更に有し、
前記制御手段では、前記白線抽出手段が抽出した白線のうち、前記障害物の近傍の白線表示マークが前記フロントウィンドウガラス上に映るように前記発光体表示装置の点灯が制御される。このように、障害物の近傍に限定して白線表示マークがフロントウィンドウに映るため、運転者は、発光体表示装置が発する光の煩わしさを感じることなく障害物が走行路内に位置しているのか、それとも走行路の脇に障害物が位置しているのを即座に認識することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態にあっては、
前記障害物検出手段が検出した前記障害物に基づいて該障害物の所定時間後の移動位置を求め、該所定時間後の前記障害物の移動位置に前記警報マークが前記フロントウィンドウガラス上で映るように前記制御手段が前記発光体表示装置を制御する。このような制御を行うことで、運転者は障害物の予測位置に基づいた的確な衝突回避操作を行うことができる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態にあっては、
ヘッドライトが点灯中であるか否かを判定するヘッドライト点灯判定手段と、
前記ヘッドライトが点灯中であるときに、該ヘッドライトの照射範囲に前記障害物が位置しているときには、該ヘッドライトの照射範囲外に前記障害物が位置しているときに比べて前記発光体表示装置による警報マークの表示時間が短縮される。これにより、ヘッドライトの光で障害物を確認できるときには警報マークの表示時間が短いため、この警報マークが長時間に亘ってフロントウィンドウガラスに映ることで運転者が煩わしい思いをするのを防止することができる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態にあっては、
前記ヘッドライトが点灯中であるときに、該ヘッドライトの照射範囲外に前記障害物が位置しているときには、前記警報マークの代わりに前記障害物の模擬画像が前記フロントウィンドウガラスに映るように前記発光体表示装置の点灯が制御される。このように、ヘッドライトの光で障害物が良く見えないときには、フロントウィンドウガラスに模擬画像が映るため、この模擬画像によって障害物の存在だけでなく、障害物が人であるか自転車であるか自動二輪車であるか、など、障害物の実体をいち早く運転者に知らせることができる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態にあっては、
前記制御手段は、前記ヘッドライトが点灯中であるときに、該ヘッドライトの照射範囲外に前記障害物が位置しているときには、該ヘッドライトの照射範囲内に前記障害物が位置しているときに比べて前記発光体表示装置の輝度を高める。これにより、ヘッドライトの照射範囲外にある障害物がヘッドライトの光によって良く見えないときには、発光体表示装置の輝度を高めることで障害物の存在を運転者に的確に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例が適用された車両の平面図である。
【図2】インスツルメントパネルに上に向けて搭載するLED表示装置の平面図である。
【図3】インスツルメントパネルに搭載したLED表示装置が発する光がフロントウィンドウガラスに反射して運転者の目に届く光の経路を説明するための図である。
【図4】本発明の制御系統例をブロック図で示す図である。
【図5】警報ゾーンを一次、二次警報ゾーン分ける例を説明するための図である。
【図6】フロントウィンドウガラスに映る警報マークを説明するための図である。
【図7】実施例の制御の具体例を説明するためのフローチャートである。
【図8】インスツルメントパネルに上に向けて搭載するLED表示装置の他の例の平面図である。
【図9】図8のLED表示装置が発する光がフロントウィンドウガラスに反射して運転者の目に届く光の経路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0018】
図1において、車両としての自動車VCは、左右の前輪1Fと、左右の後輪1Rとを有し、この車両VCの車室には、フロントウィンドウガラスを通じて前方空間を撮像する第1、第2の左右の撮像手段としての第1、第2のCCDカメラ2、4を有し、この第1、第2のカメラ2、4は、水平方向に離間して(例えばルームミラーを挟んでその左右に)配置されている。なお、第1、第2撮像手段は、CCDカメラに限定されるものではなく、例えばCMOSカメラ等の画像センサであればよい。また、インスツルメントパネル6において運転席の前方に位置する部分には、発光体による表示装置8(以下、発光体としてLEDを採用したLED表示装置8として説明するが、LEDの代わりにランプなどの発光体であってもよい。)が設置されている。この発光体表示装置としてのLED表示装置8は、図2に示すように、複数の緑色発光LED素子10と、複数の赤色発光LED素子12と、複数の青色発光LED素子14とを含み、これら各色のLED素子10、12、14はマトリックス状に配列されている。
【0019】
図3は、LED表示装置8の光が進む進路を説明するための図である。図中、参照符号16は運転席であり、18はステアリングハンドルを示す。インスツルメントパネル6の上面に配設されたLED表示装置8が発する光は、上方に向かって進み、そして、傾斜したフロントウィンドウガラス20で反射して後方に進んで運転者の目に入る。ドライバのアイポイントを参照符号EPで示す。
【0020】
図4は、車両用表示装置の一部を構成するマイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラU(制御ユニット)を含むLED表示制御系統の全体をブロック図で示す。コントローラUには、右カメラ2、左カメラ4から撮像データが入力される。ここに、前方に向けて配設された左右のカメラ2、4は、その光軸が共に平行となるように配設されている。
【0021】
左右のカメラ2、4で撮影した画像データはコントローラUに供給され、この画像データ及びメモリ24に記憶されているパターンマッチング用データ(歩行者、自転車、自動二輪車など)を使って障害物抽出処理部26で障害物(典型的には歩行者や自転車)が抽出され、また、次の距離及び位置検出処理部28において障害物までの距離及びその位置の検出が行われる。この障害物までの距離の検出方法は、特開2000−207693号公報及び特開2006―236104号公報に詳しく記載されているので、これらの公報に記載の内容をここに援用することで、その詳しい説明を省略するが、概要は、障害物までの距離に関しては視差を使って三角測量の原理に従って検出される。
【0022】
また、図4中参照符号30は白線抽出処理部を示し、この白線抽出処理部30では、左右のカメラ2、4から取り込んだ画像データ及び白線用のパターンマッチング用データを使って、走行路の車線を規定する白線を抽出する処理が実行される。
【0023】
この実施例では、運転者に注意を促す一次警報と、運転者に衝突回避動作が必要であることを伝える二次警報とに分類され、一次警報では緑色のLED素子10が用いられ、二次警報では赤色のLED素子12が用いられる。一次、二次の警報は一次警報処理部32、二次警報処理部34で生成される。他方、青色のLED素子14は白線の表示に用いられるが、この白線の表示は、道路に沿って連続的に延びる白線のうち障害物の近傍に位置する部分に限定される。この表示する白線は白線表示処理部36で生成される。
【0024】
図5は、自車両VCの前方50メートルまでの領域が、運転者に衝突回避操作を促す二次警報ゾーン40であり、この二次警報ゾーン40内に障害物O(歩行者H)を検出すると、LED表示装置8の赤色LED素子12によって二次警報情報が生成される。また、50メールよりも前方であって且つ左右の白線42よりも左右外側の領域が、運転者に注意を促す一次警報ゾーン44であり、この一次警報ゾーン44内に障害物を検出すると、LED表示装置8の緑色LED素子10によって一次警報情報が生成される。上記の説明では、一次警報ゾーン44と二次警報ゾーン40との境界を自車両VCの前方50メートルとしたが、この距離は、運転者が歩行者などの障害物を認知し、そして回避行動を開始して衝突回避に至るまでに車両が進む距離に応じた値である。したがって、この距離を、運転者の通常の走行時の操作反応時間を検知し、この操作反応時間に応じて変更することとしてもよい。すなわち、ステアリング操作速度又はブレーキ操作速度が標準よりも遅い運転者に対しては、上記距離を長くして、早めに一次警報から二次警報へ切り替えることとしてもよく、また、逆に、操作速度の早い運転者に対しては、上記距離を短くすることとしてもよい。また、更に、この境界の距離を車速や路面μによって変更するようにしてもよい。例えば、比較的高速での走行中や低μ路では、同一の操作時間に対して車両が衝突回避までに進む距離が長くなることから、境界距離が長くなるように例えば60メートルに変更するなど、車速や路面μなどの車両状態又は環境状態に応じて一次警報ゾーン44と二次警報ゾーン40との境界までの距離を変更するようにしてもよい。
【0025】
図6は表示例を示す。図6の表示例では、歩行者Hと運転者のアイポイントEPとを結ぶ仮想線上であって、アイポイントEPから歩行者Hを見たときに、フロントウィンドウガラス20上の歩行者Hの足元の近傍に該当する部分に円形又は横方向に細長い楕円形の警報マークAが映るようにLED表示装置8の緑色又は赤色の点灯が制御される。緑色LED素子10によって生成された警報マークAは一次警報情報であり、赤色LED素子12によって生成された警報マークAが二次警報情報である。また、図6の参照符号46は白線42を示す青色LEDの点灯表示を示す。この白線表示46は複数の円形マークで表示され、この白線表示マーク46は、歩行者Hの近傍の白線42であってフロントウィンドウガラス20上の白線42に相当する部分に映るようにLED表示装置8の青色の点灯を制御することにより行われる。
【0026】
このような表示を行うことにより、運転者の目には、歩行者Hの足元に緑色又は赤色のLEDの光の警報マークAが映り、フロントウィンドウガラス20上の警報マークAが歩行者Hと干渉しないことから、フロントウィンドウガラス20を通して歩行者Hを視認するのに警報マークAが邪魔をする虞はない。また、歩行者Hが白線42との関係で車線内に居るのかそれとも白線42により外側に居るのかをフロントウィンドウガラス20に映る青色の白線表示マーク46と緑色又は赤色の警報マークAとの関係で知ることができる。
【0027】
これに加えて、好ましくは、歩行者Hの移動方向を監視し、歩行者Hの移動方向が白線42から外側に離れる方向であるか、それとも白線42に近づく方向つまり車道の中に進入する方向であるかによって歩行者Hの所定時間後の移動位置を推定して警報マークA’を表示するようにしてもよい。歩行者Hが走行路に侵入する方向に移動していると推定した表示の場合に限定して警報マークA’を表示する又は歩行者Hの推定した移動位置を表示するときに警報マークA’を点滅表示に切り替えるようにしてもよく、更に、推定した移動位置まで警報マークAを徐々に変位させるようにしてもよい。なお、上記所定時間を、車両が現在の車速のままで進行した場合に歩行者に最も接近するまでに要する時間とすることが望ましい。すなわち、推定した歩行者の表示位置は、車両の進行速度に応じて変更され、車両と歩行者との接近度を予め視認させることで危険度合いを認識させるのが望ましい。
【0028】
実施例に含まれる表示制御の具体例を図7のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ステップS1で、左右のカメラ2、4からの信号の入力処理が行われ、次のステップS2において、歩行者Hの検出が行われる。そして、歩行者Hが一次警報ゾーン44又は二次警報ゾーン40に存在しているか否かの判定が行われる(S3)。このステップS3はゾーン判定手段を構成するものであり、YESつまり歩行者Hが一次、二次警報ゾーン40、44に存在しているときにはステップS4に進んで、歩行者Hの近傍に白線42が存在しているか否かの判定が行われる。
【0029】
ステップS4において、NOつまり白線42が存在していないときには、ステップS5に進んで緑色又は赤色の歩行者用LED10、12の点灯が実行される。すなわち、歩行者Hが一次警報ゾーン44に存在しているときには、フロントウィンドウガラス20の上において歩行者Hの足元の近傍の位置に緑色のLED素子10の光が円形、横長の楕円形、横に長い矩形に映るようにLED表示装置8の点灯が制御される。また、歩行者Hが二次警報ゾーン40に存在しているときには、フロントウィンドウガラス20の上において歩行者Hの足元の位置に赤色のLED素子12の光が円形、横長の楕円、横に長い矩形の形状に映るようにLED表示装置8の点灯が制御される。
【0030】
前記ステップS4において、YESつまり白線42が存在しているときには、ステップS6に進んで、歩行者Hの移動方向が車道の中に侵入する方向であるか否かを判定して、YESつまり車道の中に歩行者Hが侵入すると推定できるときにはステップS7に進んで、歩行者Hの所定時間後の位置を予測する。この移動位置の推定は、歩行者Hの移動速度に所定時間を乗算することにより求めることができる。そして、ステップS8において、この推定した歩行者Hの移動位置つまり歩行者Hの所定時間後の位置が白線42を挟んで車道よりも外側であるときには、緑色のLED素子10の点灯(一次警報)の準備が行われる。なお、上述した二次警報ゾーン40は、白線42によりも内側つまり車道と白線よりも外側の車道外とを含むが、この二次警報ゾーン40において、推定した歩行者Hの移動位置が車道外つまり白線42によりも外側であるときには一次警報(緑色LED素子10の点灯)を選択するようにしてもよい。
【0031】
この推定した歩行者Hの移動位置つまり歩行者Hの所定時間後の位置が白線42の内側つまり車道内であるときには、二次警報(赤色LED素子12の点灯)の準備が行われる。なお、上述した一次警報ゾーン44は50メートルよりも遠方且つ白線42よりも外側つまり車道外に設定したが、この一次警報ゾーン40を白線42よりも内側つまり車道内まで拡大し、この拡大した一次警報ゾーン40において推定した歩行者Hの移動位置が車道内であるときには、二次警報つまり赤色のLED素子12の点灯を選択するようにしてもよい。このような歩行者Hの所定時間後の移動位置をLED表示装置8で表示する際に白線42の位置を、上述した青色のLED素子14によって指し示す複数の白線ドット表示46の準備が行われる。
【0032】
次のステップS9では、自車両がヘッドライトを点灯しているか否かの判定が行われ、NOつまり消灯中であればステップS10に進んで、上記ステップS8で選択したLED素子10、12、14の点灯が行われる。これにより、運転者は、フロントウィンドウガラス20に映った白線表示マーク46(青色)及び警報マークA(緑色又は赤色)を認識して障害物(例えば歩行者H)に注意を払い、必要な運転操作を行うことになる。そして、このLED表示装置8の点灯は所定時間継続され(S11)、その後消灯される(S12)。
【0033】
前記ステップS9においてYES、つまりヘッドライトが点灯中であればステップS13に進んで、ヘッドライトの点灯態様(ロービーム又はハイビーム)及び歩行者Hがヘッドライトの照射範囲内であるか否かによって補正処理が行われる。例えば、歩行者Hの位置がヘッドライトの照射範囲内であれば、運転者は既に歩行者Hに気づいているか、それとも直ぐに気づく可能性が大であり、この状態でフロントウィンドウガラス20にLED表示装置8からの光が映ると煩わしく感じる虞がある。このような場合には、LED表示装置8の点灯時間を短縮するのが好ましい。また、ヘッドライトがロービームのときに、ヘッドライトの照射範囲よりも遠方に歩行者Hが位置しているときにはヘッドライトを強制的にハイビームに変更して遠方までヘッドライトの光が届くようにするのが好ましく、これに代えて又はこれに加えて警報マークAとして歩行者の足元に円形又は横長の楕円形のマークを使用しないで、予め用意した疑似的な人体像(疑似歩行者)をLED表示装置8の光(緑色又は赤色)で生成するようにしてもよい。
【0034】
また、ヘッドライトの照射範囲外に障害物が位置しているときには、ヘッドライトの照射範囲内に障害物が位置しているときに比べてLED表示装置8の輝度を高めるようにしてもよい。
【0035】
また、ナビゲーション装置を搭載した車両であれば市街地か郊外かを地図情報から判別することができる。また、カメラ2、4の撮像画像によって夜間であって自車両の周囲が比較的明るいか否かを判別することができる。このことから、自車両の周囲が明るい場合(市街地走行中)のときには、自車両の周囲の光によって歩行者Hを確認し易いことから、LED表示装置8の点灯時間を短縮又は点灯するのを禁止するのが好ましい。勿論、夜間走行中の自車両の周囲の光の強さ、つまり自車両の周囲の明るさの程度によってLED表示装置8の点灯時間を変えるようにしてもよい。すなわち、周囲が暗いときにはLED表示装置8の点灯時間を相対的に長くし、周囲が比較的明るいときにはLED表示装置8の点灯時間を相対的に短くするようにしてもよい。
【0036】
上記ステップS13で補正処理が終わったらステップS10に進んで、選択したLED素子10、12、14の点灯が行われ、そして、ステップS11で所定時間が経過したらLED素子10、12、14が消灯される。前述したように、このLED素子10、12、14の点灯時間は、例えば自車両の周囲が比較的明るいときには短縮される。
【0037】
上記の実施例にあっては、三色のLEDを搭載したLED表示装置8と、2台のカメラ2、4からなるステレオ撮像手段との組み合わせを使って、LED表示装置8の光をフロントウィンドウガラス20の反射によって運転者に視認させる手法を採用することで比較的簡単なシステムでありながら運転者に的確に警報を認知させることができる。また、歩行者Hのような障害物に関して、フロントウィンドウガラス20から見える障害物の下端に警報マークAが映るようにLED表示装置8の光源を選択することから、LED表示装置8の光が障害物と干渉しないため、障害物の視認性を阻害することはない。
【0038】
また、車道を規定する白線42を障害物の近傍の部分に限定して白線表示マーク46をフロントウィンドウガラス20上に映るようにすることで、障害物が車道内に居るのか、それとも車道外に居るのかを運転者に認知させることができる。また、障害物(典型的には歩行者H)の移動を予測し、推定した移動位置を白線表示マーク46と一緒にフロントウィンドウガラス20の反射を使って運転者に視認させることから、運転者が行う衝突回避の操作を的確化することができる。
【0039】
以上、本発明の実施例を説明したが、図8に示すように、LED表示装置8を、第1の横長の二次警報用のLED表示器50と、第2の2つの一次警報用の赤色LED表示器52とで構成し、二次警報用LED表示器50を複数の赤色LED素子12で構成し、一次警報用LED表示器52を複数の緑色LED素子10で構成すると共に、二次警報用LED表示器50をフロントウィンドウガラス20に近い位置に配設し、2つの緑色一次警報用LED表示器52を左右に離間して且つフロントウィンドウガラス20から相対的に離れた位置に配設するようにしてもよい。
【0040】
これによれば、横長の二次警報用LED表示器によって、自車両VCから50メートルの範囲の二次警報ゾーン40内の障害物に関連した赤色の警報マークAをフロントウィンドウガラス20の下部領域を使って運転者に向けて反射させることができる。また、インスツルメントパネル6上の比較的運転者に近い部分に左右に分離した位置する左右の一次警報用LED表示器52を使って自車両VCから50メートル以上離れた一次警報ゾーン44内の障害物に関連した緑色の警報マークAをフロントウィンドウガラス20の上下中間領域を使って運転者に向けて反射させることができる。
【0041】
上述した実施例では、運転者に注意を喚起する一次警報では緑色を使い、二次警報つまり運転者に衝突回避操作を促すときには赤色を使うようにしたが、緑と赤とは一次警報と二次警報とで異なる色を使う意味で理解すべきであり、一次警報と二次警報とで異なる色であれば使用する色は任意である。また、LED表示装置8に対する警報表示制御において、警報を表示する領域を一次警報ゾーンと二次警報ゾーンの二つのゾーンに分けたが、これよりも多い数のゾーンに分け、運転者に対する警告の度合いが高くなる例えば一次、二次、三次警報ゾーンに分け、一次警報ゾーンでは緑色のLED素子10を点灯し、二次警報ゾーンでは赤色のLED素子12を点灯し、最も運転者に強く警告する三次警報ゾーンでは赤色のLED素子12を点滅するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
U コントローラ
O 障害物
H 歩行者
EP 運転者の目(アイポイント)
A 警報マーク
2 右カメラ
4 左カメラ
6 インスツルメントパネル
8 LED表示装置
10 緑色発光LED素子
12 赤色発光LED素子
14 青色発光LED素子
16 運転席
20 フロントウィンドウガラス
26 障害物抽出処理部
28 距離及び位置検出処理部
30 白線抽出処理部
32 一次警報処理部
34 二次警報処理部
36 白線表示処理部
40 二次警報ゾーン
42 白線
44 一次警報ゾーン
46 白線表示マーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者側のインスツルメントパネルに配設された発光体による表示装置であって、発光体表示装置に含まれる複数の発光体の点灯を制御することで、発光体表示装置が発する光をフロントウィンドウガラスに反射させて運転者に情報を伝達する車両用表示装置であって、
フロントウィンドウガラスを通して自車両の前方を撮像する、車幅方向に離間して配設された複数の撮像手段と、
該撮像手段が撮像した画像から障害物を検出する障害物検出手段と、
前記撮像手段が撮像した画像から障害物までの距離を検出する距離検出手段と、
前記障害物検出手段及び距離検出手段が検出した障害物が、予め設定された警報ゾーンに位置しているか否かを判定するゾーン判定手段と、
前記障害物が前記警報ゾーンに位置しているときに、前記フロントウィンドウガラス上に見える前記障害物の下端の近傍に警報マークが映るように前記発光体表示装置の点灯を制御する制御手段とを有することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記警報ゾーンが、運転者に注意を促す度合いの強さによって複数の警報ゾーンに分けられており、
前記制御手段では、前記障害物が位置する警報ゾーンに応じて各警報ゾーン毎に異なる制御が前記発光体表示装置に対して行われる、請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記撮像手段が撮像した画像から走行路を規定する白線を抽出する白線抽出手段を更に有し、
前記制御手段では、前記白線抽出手段が抽出した白線のうち、前記障害物の近傍の白線が前記フロントウィンドウガラス上に映るように前記発光体表示装置の点灯が制御される、請求項1又は2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記障害物検出手段が検出した前記障害物に基づいて該障害物の所定時間後の移動位置を求め、該所定時間後の前記障害物の移動位置に前記警報マークが前記フロントウィンドウガラス上で映るように前記制御手段が前記発光体表示装置を制御する、請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
ヘッドライトが点灯中であるか否かを判定するヘッドライト点灯判定手段と、
前記ヘッドライトが点灯中であるときに、該ヘッドライトの照射範囲に前記障害物が位置しているときには、該ヘッドライトの照射範囲外に前記障害物が位置しているときに比べて前記発光体表示装置による警報マークの表示時間が短縮される、請求項3又は4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記ヘッドライトが点灯中であるときに、該ヘッドライトの照射範囲外に前記障害物が位置しているときには、前記警報マークの代わりに前記障害物の模擬画像が前記フロントウィンドウガラスに映るように前記発光体表示装置の点灯が制御される、請求項5に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記ヘッドライトが点灯中であるときに、該ヘッドライトの照射範囲外に前記障害物が位置しているときには、該ヘッドライトの照射範囲内に前記障害物が位置しているときに比べて前記発光体表示装置の輝度を高める、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−176591(P2010−176591A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20986(P2009−20986)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】