車両用速度制御装置
【課題】先行車両が存在しない状況においても、ドライバにとって違和感のない速度制御を行うことができる車両用速度制御装置を提供する。
【解決手段】ブレーキペダル操作を開始し、相対速度が一定の値変化した時点で、自車両よりも初期距離だけ前を目標速度で相当する仮想先行車を設定する。そして、初期距離、目標速度から、接近離間状態評価指標の初期値を算出する。さらに、速度制御開始条件成立後の相対距離を、その条件が成立してからの経過時間と、相対速度の現在値と、初期距離とから逐次算出する。そして、これら初期距離、接近離間状態評価指標の初期値、相対距離から目標相対速度を逐次算出する。そして、目標相対速度と現在の実際の相対速度との差に基づいて速度制御を行う。よって、先行車両が存在していなくても、接近離間状態評価指標KdBを用いた、ドライバにとって違和感のない速度制御を行うことができる。
【解決手段】ブレーキペダル操作を開始し、相対速度が一定の値変化した時点で、自車両よりも初期距離だけ前を目標速度で相当する仮想先行車を設定する。そして、初期距離、目標速度から、接近離間状態評価指標の初期値を算出する。さらに、速度制御開始条件成立後の相対距離を、その条件が成立してからの経過時間と、相対速度の現在値と、初期距離とから逐次算出する。そして、これら初期距離、接近離間状態評価指標の初期値、相対距離から目標相対速度を逐次算出する。そして、目標相対速度と現在の実際の相対速度との差に基づいて速度制御を行う。よって、先行車両が存在していなくても、接近離間状態評価指標KdBを用いた、ドライバにとって違和感のない速度制御を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用速度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、先行車両に対する接近離間状態を表す接近離間状態評価指標と、先行車両との距離と、先行車両との相対速度との関係を示す式であって、先行車両に接近する相対速度が高くなるほど接近離間状態評価指標の絶対値が大きくなるとともに、同一の相対速度においては先行車両との車間距離が短くなるほど接近離間状態評価指標の増加勾配が急峻になる接近離間状態評価指標関係式に基づいて、自車両の速度制御を行う車両用速度制御装置が種々知られている(たとえば、特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1では、下記(1)式に示す接近離間状態算出式と、減速制御を開始したときの先行車両との相対速度Vrと先行車両との距離Dとから、減速制御を開始した時点の接近離間状態評価指標KdB_0(KdBの初期値)を算出している。
【数1】
【0004】
そして、車間距離Dから接近離間状態評価指標の目標値KdB_tを算出する目標値算出式を、その初期値KdB_0に基づいて決定している。この目標値算出式は、距離Dが短くなるに従って、初期値KdB_0から一定の傾きで接近離間状態評価指標の目標値KdB_tが増加する関係となっている。
【0005】
また、特許文献2では、先行車両などの前方物体の速度により接近離間状態評価指標KdBを補正した指標である補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いている。そして、特許文献2においては、目標相対速度Vr_c_tを、車間距離Dpと、目標補正接近離間状態評価指標KdB_c_tとから算出し、この目標相対速度Vr_c_tと実際の相対速度Vr_c_pとから目標加速度GDpを算出している。
【0006】
特許文献1、2のように、接近離間状態評価指標KdBや補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて速度制御を行うと、ドライバにとって違和感のない速度制御となる。
【0007】
他にも、アクセル操作状態とブレーキ操作状態とから目標速度を設定し、自車両の速度制御を行う自動車制御装置が知られている(たとえば特許文献3)。特許文献3に開示の自動車制御装置は、アクセル操作開度とブレーキ踏力とから目標速度を演算する目標速度演算手段を設け、これにより演算した目標速度と実際の速度との差が0になるように、自車両の速度制御を行うものである。言い換えれば、ドライバのアクセル操作やブレーキ操作から直接的に目標駆動力(目標加速度)および目標制動力(目標減速度)を求めており、アクセルペダルやブレーキペダルの操作によるドライバの加減速の意図を忠実に車両運動として実現するものである。
【0008】
しかしながら、特許文献3に開示の自動車制御装置では、運転の下手なドライバの下手なアクセル操作或いはブレーキ操作まで車両運動として実現してしまうため、特許文献1、2に開示の技術に比べ、違和感のある速度制御となってしまう可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−74378号公報
【特許文献2】特開2008−280017号公報
【特許文献3】特開平11−348601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1、2において用いている接近離間状態評価指標KdBや補正接近離間状態評価指標KdB_cは、いずれも、算出のために先行車両との距離Dを必要とする。そのため、自車両が単独で走行している場面ではこれらの指標が算出できず、加減速制御ができないという問題があった。
【0011】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、先行車両が存在しない状況においても、ドライバにとって違和感のない速度制御を行うことができる車両用速度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
その目的を達成するための請求項1記載の発明では、自車両が目標とする目標速度で自車両の前方を走行する仮想先行車を設定して制御を行う。より詳しくは、請求項1に係る発明では、速度制御開始条件が成立した場合に、目標速度で走行する仮想先行車両を、初期距離だけ自車両の前方に設定する。そして、それら初期距離、目標速度から、初期距離における接近離間状態評価指標の初期値を算出する(指標初期値算出手段)。さらに、速度制御開始条件成立後の車間距離を、その条件が成立してからの経過時間と、相対速度の現在値と、初期距離とから逐次算出する(車間距離算出手段)。そして、これら初期距離、接近離間状態評価指標の初期値、車間距離から目標相対速度を逐次算出する(目標相対速度算出手段)。そして、この目標相対速度と現在の実際の相対速度とに基づいて速度制御を行う(速度制御手段)。よって、先行車両が存在していなくても、接近離間状態評価指標を用いた、ドライバにとって違和感のない速度制御を行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、加速制御を行う発明である。加速制御を行うために、接近離間状態評価指標関係式における、接近離間状態評価指標が急峻になる変化勾配が減少勾配である加速用接近離間状態評価指標関係式を備えている。また、速度制御開始条件として加速制御開始条件を備えている。そして、指標初期値算出手段は、加速制御開始条件が成立したことに基づいて、その加速制御開始条件が成立した時点における相対速度と、仮想先行車までの初期車間距離と、加速用接近離間状態評価指標関係式とから、接近離間状態評価指標の初期値を算出する。また、目標相対速度と相対速度の現在値とから目標加速度を算出する目標加速度算出手段を備え、速度制御手段は、目標加速度算出手段が算出した目標加速度となるように、加速装置による加速力を制御する。
【0014】
請求項3記載の発明は、減速制御を行う発明である。減速制御を行うために、接近離間状態評価指標関係式における、接近離間状態評価指標が急峻になる変化勾配が増加勾配である減速用接近離間状態評価指標関係式を備えている。また、速度制御開始条件として減速制御開始条件を備えている。そして、指標初期値算出手段は、減速制御開始条件が成立したことに基づいて、その減速制御開始条件が成立した時点における相対速度と、仮想先行車までの初期車間距離と、減速用接近離間状態評価指標関係式とから、接近離間状態評価指標の初期値を算出する。また、目標相対速度と相対速度の現在値とから目標減速度を算出する目標減速度算出手段を備え、速度制御手段は、目標減速度算出手段が算出した目標減速度となるように、制動装置による制動力を制御する。
【0015】
速度制御開始条件は、請求項4のように、目標速度に対する自車両の速度の相対速度が一定値を越えたこととすることができる。
【0016】
目標速度は、請求項5のように設定することができる。請求項5では、加減速の際にドライバによって操作されるペダルの操作量に関連するペダル関連量に基づいて目標速度を設定する。
【0017】
ここで、請求項2記載の発明において、速度制御開始条件を請求項4のように、目標速度に対する自車両の速度の相対速度が一定値を越えたこととし、目標速度を請求項5のように、加減速の際にドライバによって操作されるペダルの操作量に関連するペダル関連量に基づいて設定する構成とした場合には、アクセルペダルの操作に対する加速の不感帯が存在するという問題点があった。
【0018】
詳しくは、上述のような構成においては、ペダル関連量に基づいて自車両の目標速度を設定するため、ドライバがアクセルペダルを一旦戻した後に再度軽く踏み込んだときなど、アクセルペダルの操作量が自車両の速度以下の目標速度しか設定されないような操作量であって加速制御開始条件が成立しないような場合には、アクセルペダルを踏み込んでも自車両が加速しないことになり、アクセルペダルの操作に対する加速の不感帯が存在する。
【0019】
また、上述のような構成においては、目標速度に対する自車両の速度の相対速度が一定値を越えたことが加速制御開始条件なので、上記相対速度が一定値を越えない範囲でドライバがアクセルペダルを踏み込んだ場合には、加速制御開始条件が成立せず、アクセルペダルを踏み込んでも自車両が加速しないことになり、アクセルペダルの操作に対する加速の不感帯が存在する。
【0020】
これに対して、請求項6の構成によれば、加速制御開始条件が成立していない場合であっても、ドライバがアクセルペダルを踏み込んでおり、ペダル関連量が増加傾向にある場合には、目標加速度とは別に設定される設定加速度となるように加速装置による加速力を制御し、加速を行うことが可能になる。よって、加速制御開始条件が成立していない場合であっても、ドライバに加速の意思がある場合には、加速を行うことができ、アクセルペダルの操作に対する加速の不感帯が生じる状況を避けることが可能になる。
【0021】
請求項6のようにする場合には、請求項7のように、設定加速度をペダル関連量に応じた可変値として設定するようにしてもよい。これによれば、ペダルの操作量に応じた加速を行うことが可能となり、ドライバにとって、さらに違和感のない速度制御を実現することが可能になる。
【0022】
請求項8の構成によれば、ペダル関連量が一定時間にわたって増加傾向を示さなくなった場合に、設定加速度となるようにする加速力の制御を停止するので、ペダルの操作量が一定だったり減少していたりする場合のように、ドライバが自車両を加速させる意思のないときに、加速を止めることが可能になる。従って、ドライバにとって、さらに違和感のない速度制御を実現することが可能になる。
【0023】
目標速度は、請求項9のように設定することもできる。請求項9では、手動操作スイッチが操作された場合、その手動操作スイッチの操作に基づいて目標速度を設定する。
【0024】
車間距離は、請求項10のように、予め設定された一定値とすることができる。また、請求項11、12のように、算出によって求めるようにしてもよい。
【0025】
請求項11では、下記A,Bの2つの式から車間距離と目標速度との関係を示す式を求める。そして、この式に、目標速度設定手段が設定した目標速度を代入することで、初期車間距離を算出する。
A:接近離間状態評価指標を目標速度で補正した補正接近離間状態評価指標の閾値と、車間距離との関係を示す閾値式
B:車間距離、目標速度、相対速度から補正接近離間状態評価指標を算出する補正接近離間状態評価指標算出式
請求項12では、上記A式に代えて下記C式を用いる以外は、請求項11と同じである。
C:接近離間状態評価指標を速度制御開始条件が成立した時点における自車両の速度で補正した補正接近離間状態評価指標の閾値と、車間距離との関係を示す閾値式
また、目標相対速度は、請求項13のように、請求項11で用いる式に、車間距離を代入することで逐次算出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態の運転支援システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1の車両制御ECU100が行う速度制御の内容を示すフローチャートである。
【図3】図2のステップS106が否定判断である場合(ブレーキ操作が行われた場合)に実行する処理を示すフローチャートである。
【図4】図2のステップS106が肯定判断である場合(アクセル操作が行われた場合)に実行する処理を示すフローチャートである。
【図5】ブレーキペダルストロークと速度低下目標値ΔVmとの間の予め記憶された関係を示す図である。
【図6】相対速度別に、減速制御時の接近離間状態評価指標関係式が示す曲線(第1象限)と、加速制御時の接近離間状態評価指標関係式が示す曲線(第4象限)とを示す図である。
【図7】目標減速度Gd、および接近離間状態評価指標の目標値KdB_tの相対距離Dに対する変化を示す図である。
【図8】アクセルペダル開度と目標速度Vmとの関係を示す図である。
【図9】目標加速度Ga、および接近離間状態評価指標の目標値KdB_tの相対距離Dに対する変化を示す図である。
【図10】減速制御に関連する種々の値の時間変化を示すグラフである。
【図11】加速制御に関連する種々の値の時間変化を示すグラフである。
【図12】図2のステップS106が肯定判断である場合(アクセル操作が行われた場合)に実行する処理の変形例を示すフローチャートである。
【図13】アクセルペダル開度と設定加速度Gbとの関係を示す図である。
【図14】設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御に関連する種々の値の時間変化の一例を示すグラフである。
【図15】設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御に関連する種々の値の時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態は、本発明の車両用速度制御装置を運転支援システムに適用した場合について説明するものである。図1に、本実施形態の運転支援システムの全体構成を示す。同図に示すように、本運転支援システムは、VSC_ECU10、舵角センサ20、Gセンサ30、ヨーレートセンサ40、ENG_ECU50、ストロークセンサ60、アクセル開度センサ62、レーダ70、操作SW80、及び車両制御ECU100によって構成される。
【0028】
図1に示すVSC_ECU10は、自車に制動力を印加するブレーキアクチュエータ(図示せず)を制御するもので、自車の横滑りを抑制するVSC(Vehicle Stability Control、登録商標)の制御機能を備える。このVSC_ECU10は、車内LANから目標減速度の情報を受信し、この目標減速度が自車に発生するように、ブレーキアクチュエータを制御する。また、VSC_ECU10は、自車の速度(車速)VO、及びブレーキ圧力の情報を車内LANに送信する。舵角センサ20は、自車のステアリングの操舵角の情報を検出するセンサであり、検出した操舵角の情報を車内LANに送信する。
【0029】
Gセンサ30は、自車の前後方向に発生する加速度(前後G)と、横(左右)方向に発生する加速度(横G)を検出する加速度センサであり、検出した前後G及び横Gの情報を車内LANに送信する。ヨーレートセンサ40は、自車の鉛直軸まわりの角速度(ヨーレート)を検出するセンサであり、検出したヨーレートの情報を車内LANに送信する。
【0030】
ENG_ECU50は、車内LANから目標加速度の情報を受信し、自車が目標加速度を発生するように、図示しないスロットルアクチュエータを制御する。ストロークセンサ60はブレーキペダル(図示せず)のストローク量を検出するセンサであり、このストローク量はブレーキペダルの踏み込み量すなわちペダル関連量に相当する。アクセル開度センサ62は、ペダル関連量であるアクセルペダル開度を検出するセンサである。
【0031】
レーダ70は、例えば、レーザ光を自車前方の所定範囲に照射し、その反射光を受信して、先行車との車間距離(以下、単に距離、或いは相対距離ともいう)、先行車と自車との相対速度、自車幅中心軸と先行車の中心軸とのズレ量(横ずれ量)等を検出し、車両制御ECU100へ出力する。
【0032】
操作SW80は、自車のドライバが操作するスイッチ群であり、スイッチ群の操作情報は車両制御ECU100へ出力される。車両制御ECU100は、主にマイクロコンピュータとして構成され、何れも周知のCPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。
【0033】
車両制御ECU100は、自車両の前方に仮想先行車両を設定して、その仮想先行車両に基づいて、自車両のドライバにとって違和感のない速度制御を実行する。図2は、この速度制御の内容を示すフローチャートである。この処理は所定周期で逐次実行する。
【0034】
図2において、まず、ステップS100では自車両の現在の車速Voを検出する。続くステップS102ではペダル関連量を検出する。詳しくは、ストロークセンサ60からブレーキペダルのストローク量を取得することにより、ブレーキペダルのストローク量を検出し、また、アクセル開度センサ62からアクセルペダル開度を取得することにより、アクセルペダル開度を検出する。
【0035】
続くステップS104では、ステップS102で検出したペダル関連量に基づいて、ブレーキペダルまたはアクセルペダルが操作されたか否かを判断する。この判断は、前回検出したペダル関連量と今回検出したペダル関連量との差が所定値以上であるか否かにより行う。
【0036】
ステップS104の判断が否定判断である場合には処理を終了する。一方、肯定判断である場合にはステップS106へ進む。ステップS106では、ステップS104で操作ありと判断したのがアクセル操作であるか否かを判断する。この判断が肯定判断である場合(アクセル操作である場合)には図4へ進み、否定判断である場合(ブレーキ操作である場合)には図3へ進む。
【0037】
次に図3を説明する。まず、ステップS110では、ステップS102と同様にしてブレーキペダルのストローク量を検出し、このストローク量と、図5に示す、ブレーキペダルストロークと速度低下目標値ΔVmとの間の予め記憶された関係とから、速度低下目標値ΔVmを決定する。この速度低下目標値ΔVmは、現在の自車速Voから低下させる速度低下分の目標値を意味する。
【0038】
続くステップS112では、現在の自車速VoからステップS110で決定した速度低下目標値ΔVmを引くことにより、目標速度Vm(=Vo-ΔVm)を算出する。このステップS112は特許請求の範囲の目標速度設定手段に相当する。
【0039】
続くステップS114では、ステップS100で検出した車速Voを上記ステップS112で算出した目標速度Vmから引くことで、相対速度の現在値Vr_p(=Vm-Vo)を算出する。このステップS114は特許請求の範囲の相対速度算出手段に相当する。
【0040】
続くステップS116では、ステップS114で算出した相対速度の現在値Vr_pが閾値TH以上変化したか否かを判断する。この閾値THは、ドライバのブレーキペダル操作によって目標車速Vmと現在の自車速Voとの間に有意な差が生じたと判断できる程度に設定され、たとえば、5km/hに設定される。なお、このステップS116の条件は特許請求の範囲の速度制御開始条件、減速制御開始条件に相当する。
【0041】
この判断が否定判断である場合には上記ステップS110に戻り、目標速度Vm、相対速度の現在値Vr_pを更新した後、このステップS116の判断を再度実行する。一方、ステップS116の判断が肯定判断である場合には、減速制御を開始するためにステップS118に進む。なお、図示していないが、ステップS114、116を所定時間繰り返した場合には、図3の処理を終了する。
【0042】
ステップS118では、接近離間状態評価指標(KdB)算出用仮想先行車までの相対距離Dの初期距離D(tbi)を設定するとともに、KdBの初期値KdB(tbi)を算出する。本実施形態では、初期距離D(tbi)は予め設定された一定値であり、50mに設定されている。また、KdBの初期値KdB(tbi)は、下記(2)式に、上記初期距離D(tbi)と、相対速度の初期値として直前のステップS114で算出した相対速度Vr_pを代入することで算出する。このステップS118は特許請求の範囲の指標初期値算出手段に相当する。なお、仮想先行車は、上記ステップS112で算出した目標速度Vmで走行すると考えて以下の処理を行う。
【数2】
【0043】
続くステップS120では、接近離間状態評価指標の目標値KdB_tを算出する。この目標値KdB_tは、距離Dの関数であって、接近離間状態評価指標関係式の初期距離D(tbi)における接線である。この接線の求め方を以下に詳しく説明する。
【0044】
上述のように、目標値KdB_tは接近離間状態評価指標関係式の初期距離D(tbi)における接線である。接近離間状態評価指標関係式は前述の(2)式で示される。減速時は相対速度Vr<0であるため、減速制御時の接近離間状態評価指標関係式は、図6の上図(第1象限)に示すグラフとなる。なお、このグラフは、複数の相対距離Vr別に、距離DとKdBとの関係を示しており、矢印Aは、相対速度Vrが高くなる方向を示している。この図6の上図から分かるように、KdBは距離Dが小さくなるほど増加勾配が急峻になっており、また、矢印Aで示されるように、相対速度Vrの絶対値が高くなるほどKdBは大きくなる。また、同図には、目標値KdB_tの直線も示している。この直線から分かるように、減速制御においては、目標値KdB_tは、距離Dが小さくなるほど一定の傾きで増加する。
【0045】
この直線の傾きは以下のようにして求める。まず、上記(2)式を、減速時は相対速度Vr<0であることを考慮して、以下のように変形して(3)式とする。
【数3】
【0046】
この(3)式を距離で微分して初期距離D(tbi)を代入すると、接線の傾きを求めることができる(下記(4)式参照)。
【数4】
【0047】
また、初期距離D(tbi)のときのKdBの初期値をKdB(tbi)とすると、接線の切片は下記(5)式で示される。
【数5】
【0048】
よって、減速制御時の接近離間状態評価指標の目標値KdB_tは下記(6)式で示される。
【数6】
【0049】
このようにして接近離間状態評価指標の目標値KdB_tを求めたら、特許請求の範囲の車間距離算出手段に相当する続くステップS122では、仮想先行車両までの現時点での相対距離Dを算出する。この相対距離Dの算出方法を以下に詳しく説明する。相対距離Dは相対速度の現在値Vr_pから算出する。相対速度の現在値Vr_pは、ステップS114と同様にして算出する。前述のように、仮想先行車は目標速度Vmで走行すると考える。従って、相対距離D(t)は次のようにして算出できる。まず、相対速度の現在値Vr_pを、速度制御開始条件が成立したとき(ステップS116が肯定判断となったとき)から現時点まで逐次積分することで相対距離の変化分ΔD(t)を算出する。そして、この変化分ΔD(t)を、ステップS118で設定した初期距離D(tbi)から引くことで現時点での相対距離D(t)を算出する。
【0050】
続くステップS124では相対速度の目標値である目標相対速度Vr_tを算出する。このステップS124は目標相対速度算出手段に相当する。目標相対速度Vr_tは距離Dの関数であり、また、ステップS120で算出した目標値KdB_tも用いる。この目標相対速度Vr_tの求め方を以下に詳しく説明する。
【0051】
接近離間状態評価指標関係式((2)式)を変形すると、減速制御時の相対速度Vrは下記(7)式で表すことができる。
【数7】
【0052】
この(7)式に、(6)式を代入すると、目標相対速度Vr_tを距離Dから算出する下記(8)式が求まる。
【数8】
【0053】
この(8)式にステップS120で算出した現時点での相対距離Dを代入することで、目標相対速度Vr_tを算出する。
【0054】
続くステップS126は特許請求の範囲の目標減速度算出手段に相当し、下記(9)式から目標減速度Gdを算出する。なお、(9)式において、Vr_tは目標相対速度、Vr_pは現時点での相対速度、Tdは予め設定された一定の時間である。
【数9】
【0055】
目標減速度Gdは、このように目標相対速度Vr_tに基づいて算出し、その目標相対速度Vr_tは、接近離間状態評価指標の目標値KdB_tに基づいて算出している。図7には、目標減速度Gd、および接近離間状態評価指標の目標値KdB_tの相対距離Dに対する変化を示している。図7に示されるように、目標減速度Gdは下に凸の曲線となる。なお、点cよりも相対距離Dが0に近い部分の目標値KdB_tは破線となっている。この破線部分は制御を行っていないことを示しており、本実施形態では、相対速度が1km/hとなった時点で制御を終了している。点cは、相対速度が1km/hにおけるKdBの曲線と、(6)式の交点である。
【0056】
続くステップS128は特許請求の範囲の速度制御手段に相当し、Gセンサ30によって検出される実際の減速度が、ステップS126で算出した目標減速度Gdとなるように制動力を制御する。なお、制動力は、ブレーキアクチュエータを制御することで発生させてもよいし、エンジンブレーキを利用してもよい。また、制動力は、たとえば、目標減速度Gdと制動力との関係を定めたマップから求める。
【0057】
続くステップS130では、制御終了条件が成立したか否かを判断する。本実施形態における制御終了条件は、前述のように、車速Voと目標車速Vmとの差(すなわち、相対速度Vr_p)が所定速度(1km/h)以下となったという条件である。ただし、自車両が停止したことや、接近離間状態評価指標KdBが目標値KdB_tよりも所定値以上低下したりしたことを用いることもできる。このステップS130の判断が否定判断である場合には、ステップS120へ戻り減速制御を継続する。一方、肯定判断である場合には、減速制御を終了する。
【0058】
次に、図2のステップS106が肯定判断である場合(アクセル操作である場合)に実行する図4を説明する。図4において、まず、特許請求の範囲の目標速度設定手段に相当するステップS140では、現在のアクセルペダル開度と、図8に示すアクセルペダル開度と目標速度Vmとの関係とから、目標速度Vmを設定する。なお、図8に示す関係は、予め実験に基づいて設定されたものである。
【0059】
続くステップS142では、上記ステップS140で設定した目標速度VmからステップS100で検出した車速Voを引くことで、相対速度の現在値Vr_p(=Vm-Vo)を算出する。このステップS142は特許請求の範囲の相対速度算出手段に相当する。
【0060】
続くステップS144では、上記ステップS142で算出した相対速度の現在値Vr_pが閾値TH以上変化したか否かを判断する。この閾値THは、図3のステップS116と同様に、たとえば、5km/hに設定される。なお、このステップS144の条件は特許請求の範囲の速度制御開始条件、加速制御開始条件に相当する。
【0061】
この判断が否定判断である場合には上記ステップS140に戻り、目標速度Vm、相対速度の現在値Vr_pを更新した後、このステップS144の判断を再度実行する。一方、ステップS144の判断が肯定判断である場合には、加速制御を開始するためにステップS146に進む。なお、図示していないが、ステップS142、144を所定時間繰り返した場合には、図4の処理を終了する。
【0062】
ステップS146では、接近離間状態評価指標(KdB)算出用仮想先行車までの相対距離Dの初期距離D(tai)を設定するとともに、KdBの初期値KdB(tai)を算出する。初期距離D(tai)は、減速制御の場合と同じであり、50mに設定されている。また、KdBの初期値KdB(tai) は、前述の(2)式に、上記初期距離D(tai)と、相対速度の初期値として直前のステップS142で算出した相対速度Vr_pを代入することで算出する。このステップS146は特許請求の範囲の指標初期値算出手段に相当する。また、仮想先行車は、上記ステップS140で算出した目標速度Vmで走行すると考えて以下の処理を行う。
【0063】
ステップS148では、接近離間状態評価指標の目標値KdB_tを算出する。この目標値KdB_tは、距離Dの関数であって、接近離間状態評価指標関係式の初期距離D(tai)における接線である。この接線の求め方を以下に詳しく説明する。
【0064】
目標値KdB_tは接近離間状態評価指標関係式の初期距離D(tai)における接線である。加速時は相対速度Vr>0であるため、加速制御時の接近離間状態評価指標関係式は、図6の下図(第4象限)に示すグラフとなる。なお、矢印Bは相対速度Vrの絶対値が高くなる方向を示している。この図6の下図から分かるように、KdBは距離Dが小さくなるほど減少勾配が急峻になっており、また、矢印Bで示されるように、相対速度Vrの絶対値が高くなるほどKdBの絶対値は大きくなる。また、同図には、目標値KdB_tの直線も示している。この直線から分かるように、加速制御においては、目標値KdB_tは、距離Dが小さくなるほど一定の傾きで減少する。
【0065】
この直線の傾きは、以下のようにして求める。まず、前述の(2)式を、加速時は相対速度Vr<0であることを考慮して、以下のように変形して(10)式とする。
【数10】
【0066】
この(10)式を距離で微分して初期距離D(tai)を代入すると、接線の傾きを求めることができる(下記(11)式参照)。
【数11】
【0067】
また、初期距離D(tai)のときのKdBの初期値をKdB(tai)とすると、接線の切片は下記(12)式で示される。
【数12】
【0068】
よって、加速制御時の接近離間状態評価指標の目標値KdB_tは下記(13)式で示される。
【数13】
【0069】
このようにして接近離間状態評価指標の目標値KdB_tを求めたら、特許請求の範囲の車間距離算出手段に相当する続くステップS150では、仮想先行車両までの現時点での相対距離Dを算出する。この相対距離Dは、減速制御時の相対距離Dの算出方法(ステップS122)と略同じであり、違いは、減速制御時は、相対距離の変化分ΔD(t)を初期距離D(tai)から引いていたが、このステップS150では、相対距離の変化分ΔD(t)を初期距離D(tai)に加えることで、相対距離Dを算出する。
【0070】
続くステップS152では目標相対速度Vr_tを算出する。このステップS152は目標相対速度算出手段に相当する。加速制御時の目標相対速度Vr_tも、距離Dの関数であり、また、目標値KdB_tも用いる。この目標相対速度Vr_tの求め方を以下に詳しく説明する。
【0071】
接近離間状態評価指標関係式((2)式)を変形すると、加速制御時の相対速度Vrは下記(14)式で表すことができる。
【数14】
【0072】
この(14)式に、(13)式を代入すると、目標相対速度Vr_tを距離Dから算出する下記(15)式が求まる。
【数15】
【0073】
この(15)式にステップS150で算出した現時点での相対距離Dを代入することで、目標相対速度Vr_tを算出する。
【0074】
続くステップS154は特許請求の範囲の目標加速度算出手段に相当し、下記(16)式から目標加速度Gaを算出する。なお、(16)式において、Vr_tは目標相対速度、Vr_pは現時点での相対速度、Taは予め設定された一定の時間である。
【数16】
【0075】
図9には、目標加速度Ga、および接近離間状態評価指標の目標値KdB_tの相対距離Dに対する変化を示している。図9に示されるように、目標加速度Gaは上に凸の曲線となる。
【0076】
続くステップS156は特許請求の範囲の速度制御手段に相当し、Gセンサ30によって検出される実際の加速度が、ステップS154で算出した目標加速度Gaとなるように加速装置に発生させる加速力を制御する。なお、加速力は、たとえば、目標加速度Gaと加速力との関係を定めたマップから求める。
【0077】
続くステップS158では、制御終了条件が成立したか否かを判断する。本実施形態における制御終了条件は、前述のように、車速Voと目標車速Vmとの差(すなわち、相対速度Vr_p)が所定速度(1km/h)以下となったという条件である。このステップS158の判断が否定判断である場合には、ステップS148へ戻り加速制御を継続する。一方、肯定判断である場合には、加速制御を終了する。
【0078】
図10は減速制御に関連する種々の値の時間変化を示すグラフであり、図11は加速制御に関連する種々の値の時間変化を示すグラフである。これらのグラフを用いて本実施形態における制御を説明する。まずは減速制御について図10を用いて説明する。
【0079】
ドライバがブレーキペダルの踏み込みを開始して(t0時点)、ブレーキペダルストロークが増加していくと、相対速度Vr_pが閾値TH以上となる(t1時点)。これにより、初期距離D(tbi)が設定され、以降、制御終了まで相対距離Dを逐次算出する。減速制御中は、前述の(8)式に基づいて目標相対速度Vr_tを逐次算出し、その目標相対速度と現時点での相対速度Vr_pとから目標減速度Gdを算出し、実際の減速度がこの目標減速度Gdとなるように制御する。このような制御を行うと、自車速Voは目標速度Vmに滑らかに近づいていく。そして、自車速Voがほぼ目標速度Vmとなった時点(Vm+1km/h)で制御を終了する(t2時点)。このt1時点からt2時点までの間、KdBは、当初は、その目標値KdB_tよりも大きかったものが、その目標値KdB_tを下回っており、また、相対距離Dは徐々に短くなっている。
【0080】
次に加速制御について図11を用いて説明する。ドライバがアクセルペダルの踏み込みを開始して(t3時点)、アクセルペダル開度が増加していくと、相対速度Vr_pが閾値TH以上となる(t4時点)。これにより、初期距離D(tai)が設定され、以降、制御終了まで相対距離Dを逐次算出する。加速制御中は、前述の(15)式に基づいて目標相対速度Vr_tを逐次算出し、その目標相対速度と現時点での相対速度Vr_pとから目標加速度Gaを算出し、実際の加速度がこの目標加速度Gaとなるように制御する。このような制御を行うと、時車速Voは目標速度Vmに滑らかに近づいていく。そして、自車速Voがほぼ目標速度Vmとなった時点(Vm-1km/h)で制御を終了する(t5時点)。このt4時点からt5時点までの間、KdBは、徐々にその目標値KdB_tに近づいており、また、相対距離Dは徐々に長くなっている。
【0081】
以上、説明した本実施形態によれば、速度制御開始条件(減速制御開始条件、加速制御開始条件)が成立した場合に、目標速度Vmで走行する仮想先行車両を、初期距離D(tbi)、D(tai)だけ自車両の前方に設定する(ステップS118、S146)。そして、それら初期距離D(tbi)、D(tai)、目標速度Vmから、初期距離D(tbi)、D(tai)における接近離間状態評価指標の初期値KdB(tbi)、KdB(tai)を算出する(ステップS118、S146)。さらに、速度制御開始条件成立後の相対距離Dを、その条件が成立してからの経過時間と、相対速度の現在値Vr_pと、初期距離D(tbi)、D(tai)とから逐次算出する(ステップS122、S150)。そして、これら初期距離D(tbi)、D(tai)、接近離間状態評価指標の初期値KdB(tbi)、KdB(tai)、相対距離Dから目標相対速度Vr_tを逐次算出する(ステップS124、S152)。また、現在の相対速度Vr_pは、目標速度Vmとの差としている。そして、これら目標相対速度Vr_tと現在の実際の相対速度Vr_pとの差に基づいて速度制御を行う(ステップS128、S156)。よって、先行車両が存在していなくても、接近離間状態評価指標KdBを用いた、ドライバにとって違和感のない速度制御を行うことができる。
【0082】
(変形例1)
前述の実施形態では、アクセル操作である場合に、ペダル操作に基づいて図8の関係から目標速度Vmを設定し、その目標速度Vmと実際の車速Voとの速度差(相対速度Vr_p)が閾値TH以上変化したか否かを判断していた。そして、この判断が肯定判断である場合には加速制御を開始する一方、否定判断である場合には加速制御を開始せず、上記判断を再度実行していた。この変形例1では、上記判断が否定判断である場合でも、ペダル関連量が増加傾向にある場合には、目標加速度とは別に設定される加速度(以下、設定加速度Gb)となるように制御を実行する。
【0083】
ペダル関連量としては、アクセルペダル開度やアクセルペダルのストローク量などを用いる構成とすればよいが、以下ではアクセルペダル開度を用いるものとして説明を行う。
【0084】
ここでは、図2のステップS106が肯定判断である場合(アクセル操作である場合)に実行する図12を説明する。図12において、ステップS340〜ステップS342までの処理は、ステップS140〜ステップS142までの処理と同様である。
【0085】
ステップS344では、ステップS342で算出した相対速度の現在値Vr_pが閾値TH以上変化したか否かを判断する。この閾値THは、図4のステップS144と同様に、たとえば、5km/hに設定される。なお、このステップS344の条件は特許請求の範囲の速度制御開始条件、加速制御開始条件に相当する。
【0086】
この判断が肯定判断である場合には、加速制御を開始するためにステップS346に進む。ステップS346〜ステップS358までの処理は、ステップS146〜ステップS158までの処理と同様である。
【0087】
否定判断である場合にはステップS360に進む。ステップS360では、アクセルペダル開度が増加傾向にあるか否かを判定する。アクセルペダル開度が増加傾向にあるか否かは、前回検出したアクセルペダル開度に比べて今回検出したアクセルペダル開度が増加していた場合には増加傾向にあると判定し、増加していなかった(つまり、変化していなかった或いは減少していた)場合には増加傾向にあると判定しない。
【0088】
そして、増加傾向にあると判定した場合には、ステップS362に進む。また、増加傾向にあると判定しなかった場合には、ステップS340に戻り、目標速度Vm、相対速度の現在値Vr_pを更新した後、ステップS344の判断を再度実行する。
【0089】
ステップS362は、特許請求の範囲の速度制御手段に相当し、Gセンサ30によって検出される実際の加速度が、設定加速度Gbとなるように加速装置に発生させる加速力を制御する処理を開始(つまり、設定加速度Gbとなるように加速力の制御を開始)し、ステップS364に進む。加速力は、たとえば、設定加速度Gbと実際の加速度との差に応じて決定する。
【0090】
設定加速度Gbは、予め設定された固定値であってもよいが、アクセルペダル開度に応じて設定される可変値とすることが好ましい。設定加速度Gbを可変値とする場合には、アクセルペダル開度が増すほど大きな設定加速度Gbが対応づけられた図13に示すようなアクセルペダル開度と設定加速度Gbとの関係と、現在のアクセルペダル開度とから、設定加速度Gbを設定する構成とすればよい。
【0091】
ステップS364では、アクセルペダル開度が一定時間にわたって増加傾向を示さなくなったか否かを判定する。アクセルペダル開度が一定時間の間に一度も増加しなかった場合には、一定時間にわたって増加傾向を示さなくなった(つまり、一定時間にわたって増加せず)と判定し、一定時間の間に一度でも増加した場合には、一定時間にわたって増加傾向を示さなくなったと判定しない。
【0092】
そして、一定時間にわたって増加傾向を示さなくなったと判定した場合には、設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御を停止する。設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御を停止した後は、例えば設定加速度0として走行を継続し、図2のステップS100に戻る構成とすればよい。また、一定時間にわたって増加傾向を示さなくなったと判定しなかった場合には、設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御を継続し、ステップS364へ戻る。なお、図示していないが、ステップS342、344を所定時間繰り返した場合には、図12の処理を終了する。
【0093】
以上の構成によれば、ステップS342で算出した相対速度の現在値Vr_pが閾値TH以上変化していない場合(つまり、加速制御開始条件が成立していない場合)であっても、ドライバがアクセルペダルを踏み込んでおり、ペダル関連量が増加傾向にある場合には、目標加速度とは別に設定される設定加速度Gbとなるように加速装置による加速力を制御し、加速を行うことが可能になる。よって、加速制御開始条件が成立していない場合であっても、ドライバに加速の意思がある場合には、加速を行うことができ、アクセルペダルの操作に対する加速の不感帯が生じる状況を避けることが可能になる。
【0094】
なお、アクセルペダル開度が一定時間にわたって増加傾向を示さなくなった場合に、設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御を停止した後に設定加速度0として走行を継続する処理(以下、設定加速制御停止処理)を行わない構成としてもよい。
【0095】
ここで、設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御について図14および図15を用いて説明する。図14および図15は設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御に関連する種々の値の時間変化を示すグラフである。図14および図15の例は、ドライバがアクセルペダルを一旦戻した後に再度軽く踏み込んだときであって、加速制御開始条件が成立しないような場合であるものとする。また、図14は、設定加速制御停止処理を行わない構成とした場合の例であって、図15は、設定加速制御停止処理を行う構成とした場合の例である。
【0096】
まず、設定加速制御停止処理を行わない構成とした場合について、図14を用いて説明を行う。アクセルペダルを一旦戻した状態からドライバがアクセルペダルの踏み込みを開始(t5時点)し、アクセルペダル開度が増加していくと、設定加速度Gbもアクセルペダル開度の増加に応じて大きく設定されていく。設定加速度Gbが徐々に大きく設定されていくと、加速装置で発生させる加速力も徐々に大きくなり、自車両の速度も増加する。その後、アクセルペダルの踏み込み量を一定にした場合(t6時点)であっても、設定加速度Gbが一定に設定されるので、一定の加速力が発生し続け、自車両の速度は徐々に増加し続ける。
【0097】
続いて、設定加速制御停止処理を行う構成とした場合について、図15を用いて説明を行う。アクセルペダルを一旦戻した状態からドライバがアクセルペダルの踏み込みを開始(t7時点)し、アクセルペダル開度が増加していくと、設定加速度Gbもアクセルペダル開度の増加に応じて大きく設定されていく。設定加速度Gbが徐々に大きく設定されていくと、加速装置で発生させる加速力も徐々に大きくなり、自車両の速度も増加する。その後、アクセルペダルの踏み込み量を一定にした状態が一定時間(t8時点からt9時点)続くと、設定加速制御停止処理が実行され、アクセルペダルを戻さなくても設定加速度0となって加速を中止するので、自車両の速度は設定加速制御停止処理が実行されたときの速度が維持され、一定となる。
【0098】
このように、設定加速制御停止処理を行う構成とした場合には、アクセルペダルの踏み込み量(つまり、操作量)が一定だったり減少していたりする場合のように、ドライバが自車両を加速させる意思のないときに、加速を止めることが可能になる。従って、ドライバにとって、さらに違和感のない速度制御を実現することが可能になる。
【0099】
(変形例2)
前述の実施形態では、ペダル操作に基づいて図5、8の関係から目標速度Vmを設定し、その目標速度Vmと実際の車速Voとの速度差(相対速度Vr_p)に基づいて、初期距離D(tbi)、D(tai)の設定以後の処理を実行していた。この変形例2では、これに加えて、ペダル操作量が一定の場合、すなわち、目標速度Vmが変化しない場合でも、自車速が一定速度以上変化した場合に初期距離D(tbi)、D(tai)の設定以後の処理を実行する。このようにするために、たとえば、前述のステップS114、S142において、自車両の車速Voを検出し、相対速度Vr_pの算出に、この車速Voを用いるようにしてもよい。
【0100】
(変形例3)
また、運転者が手で操作して目標速度Vmを設定する手動操作スイッチを備えている車両の場合には、この手動操作スイッチによって設定された目標速度Vmを用いて制御を行ってもよい。
【0101】
(変形例4)
また、前述の実施形態では、初期距離D(tbi)、D(tai)を一定値としていたが、この変形例3では、初期距離D(tbi)、D(tai)を、接近離間状態評価指標KdBを目標速度Vmで補正した下記(17)式に示す補正接近離間状態評価指標KdB_cの算出式と、目標速度Vmとから算出する。なお、(17)式においてaは定数である。
【数17】
【0102】
ここで、補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いた制御開始の閾値は下記(18)式で表すことができる。
【数18】
【0103】
また、(17)式を変形すると下記(19)式を得る。
【数19】
【0104】
(18)式に(19)式を代入すると下記(20)式を得る。
【数20】
【0105】
自車の速度Voと目標速度Vmとの速度差Vr=0となるときの相対距離Dは下記(21)式となる。変形例4では、この(21)式から算出できる距離を初期距離D(tbi)、D(tai)とする。
【数21】
【0106】
(変形例5)
変形例4では、初期距離D(tbi)、D(tai)を、接近離間状態評価指標KdBを目標速度Vmで補正した(17)式に示す補正接近離間状態評価指標KdB_cの算出式と、目標速度Vmとから算出していたが、変形例5では、(17)式に代えて、接近離間状態評価指標KdBを制御開始時の自車の速度Voで補正した下記(22)式を用いる。その他は、変形例4と同じである。従って、変形例5では、初期距離Dとして、下記(23)式から算出できる距離D(tbi)、D(tai)を初期距離とする。
【数22】
【数23】
【0107】
(変形例6)
前述の実施形態では、目標相対速度Vr_tを、KdBを用いる(8)式、(15)式から算出していたが、変形例6では、目標相対速度Vr_tを、補正接近離間状態評価指標KdB_cから算出する。すなわち、前述の(20)式に、前述の実施形態と同様にして算出した距離D、目標速度Vmを代入することで算出できる相対速度を目標相対速度Vr_tとする。なお、このようにして算出する目標相対速度Vr_tを、加速制御および減速制御の両方に用いてもよいが、加速制御、減速制御のいずれか一方にのみに用いても良い。
【0108】
(変形例7)
前述の実施形態の加速制御では、接近離間状態評価指標の目標値KdB_tを算出する直線式((13)式)を、接近離間状態評価指標KdB、距離Dから相対速度Vrを算出する(14)式に代入することで目標相対速度Vr_tを算出していたが、変形例7では、(13)式に代えて、初期距離D (tai)およびその初期距離D (tai)における接近離間状態評価指標KdB(tai)から定まる第1点と、接近離間状態評価指標KdB=0およびそのKdB=0における距離(目標距離)Dtから定まる第2点とを結ぶ直線を(13)式に代えて用いる。なお、目標距離Dtは、(10)式にKdB=0、Vr=0を代入することで求められる。
【0109】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0110】
たとえば、アクセルペダル開度に代えてスロットルバルブの開度をペダル関連量として検出してもよい。また、ブレーキペダルストロークに代えて、ブレーキ油圧をペダル関連量として検出してもよい。
【符号の説明】
【0111】
10:VSC_ECU、 20:舵角センサ、 30:Gセンサ、 40:ヨーレートセンサ、 50:ENG_ECU、 60:ストロークセンサ、 62:アクセル開度センサ、 70:レーダ、 80:操作スイッチ、 100:車両制御ECU
S112:目標速度設定手段、 S114:相対速度算出手段、 S118:指標初期値算出手段、 S122:車間距離算出手段、 S124:目標相対速度算出手段、 S126:目標減速度算出手段、 S128:速度制御手段、 S140:目標速度設定手段、 S142:相対速度算出手段、 S146:指標初期値算出手段、 S150:車間距離算出手段、 S152:目標相対速度算出手段、 S154:目標加速度算出手段、 S156:速度制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用速度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、先行車両に対する接近離間状態を表す接近離間状態評価指標と、先行車両との距離と、先行車両との相対速度との関係を示す式であって、先行車両に接近する相対速度が高くなるほど接近離間状態評価指標の絶対値が大きくなるとともに、同一の相対速度においては先行車両との車間距離が短くなるほど接近離間状態評価指標の増加勾配が急峻になる接近離間状態評価指標関係式に基づいて、自車両の速度制御を行う車両用速度制御装置が種々知られている(たとえば、特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1では、下記(1)式に示す接近離間状態算出式と、減速制御を開始したときの先行車両との相対速度Vrと先行車両との距離Dとから、減速制御を開始した時点の接近離間状態評価指標KdB_0(KdBの初期値)を算出している。
【数1】
【0004】
そして、車間距離Dから接近離間状態評価指標の目標値KdB_tを算出する目標値算出式を、その初期値KdB_0に基づいて決定している。この目標値算出式は、距離Dが短くなるに従って、初期値KdB_0から一定の傾きで接近離間状態評価指標の目標値KdB_tが増加する関係となっている。
【0005】
また、特許文献2では、先行車両などの前方物体の速度により接近離間状態評価指標KdBを補正した指標である補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いている。そして、特許文献2においては、目標相対速度Vr_c_tを、車間距離Dpと、目標補正接近離間状態評価指標KdB_c_tとから算出し、この目標相対速度Vr_c_tと実際の相対速度Vr_c_pとから目標加速度GDpを算出している。
【0006】
特許文献1、2のように、接近離間状態評価指標KdBや補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて速度制御を行うと、ドライバにとって違和感のない速度制御となる。
【0007】
他にも、アクセル操作状態とブレーキ操作状態とから目標速度を設定し、自車両の速度制御を行う自動車制御装置が知られている(たとえば特許文献3)。特許文献3に開示の自動車制御装置は、アクセル操作開度とブレーキ踏力とから目標速度を演算する目標速度演算手段を設け、これにより演算した目標速度と実際の速度との差が0になるように、自車両の速度制御を行うものである。言い換えれば、ドライバのアクセル操作やブレーキ操作から直接的に目標駆動力(目標加速度)および目標制動力(目標減速度)を求めており、アクセルペダルやブレーキペダルの操作によるドライバの加減速の意図を忠実に車両運動として実現するものである。
【0008】
しかしながら、特許文献3に開示の自動車制御装置では、運転の下手なドライバの下手なアクセル操作或いはブレーキ操作まで車両運動として実現してしまうため、特許文献1、2に開示の技術に比べ、違和感のある速度制御となってしまう可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−74378号公報
【特許文献2】特開2008−280017号公報
【特許文献3】特開平11−348601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1、2において用いている接近離間状態評価指標KdBや補正接近離間状態評価指標KdB_cは、いずれも、算出のために先行車両との距離Dを必要とする。そのため、自車両が単独で走行している場面ではこれらの指標が算出できず、加減速制御ができないという問題があった。
【0011】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、先行車両が存在しない状況においても、ドライバにとって違和感のない速度制御を行うことができる車両用速度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
その目的を達成するための請求項1記載の発明では、自車両が目標とする目標速度で自車両の前方を走行する仮想先行車を設定して制御を行う。より詳しくは、請求項1に係る発明では、速度制御開始条件が成立した場合に、目標速度で走行する仮想先行車両を、初期距離だけ自車両の前方に設定する。そして、それら初期距離、目標速度から、初期距離における接近離間状態評価指標の初期値を算出する(指標初期値算出手段)。さらに、速度制御開始条件成立後の車間距離を、その条件が成立してからの経過時間と、相対速度の現在値と、初期距離とから逐次算出する(車間距離算出手段)。そして、これら初期距離、接近離間状態評価指標の初期値、車間距離から目標相対速度を逐次算出する(目標相対速度算出手段)。そして、この目標相対速度と現在の実際の相対速度とに基づいて速度制御を行う(速度制御手段)。よって、先行車両が存在していなくても、接近離間状態評価指標を用いた、ドライバにとって違和感のない速度制御を行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、加速制御を行う発明である。加速制御を行うために、接近離間状態評価指標関係式における、接近離間状態評価指標が急峻になる変化勾配が減少勾配である加速用接近離間状態評価指標関係式を備えている。また、速度制御開始条件として加速制御開始条件を備えている。そして、指標初期値算出手段は、加速制御開始条件が成立したことに基づいて、その加速制御開始条件が成立した時点における相対速度と、仮想先行車までの初期車間距離と、加速用接近離間状態評価指標関係式とから、接近離間状態評価指標の初期値を算出する。また、目標相対速度と相対速度の現在値とから目標加速度を算出する目標加速度算出手段を備え、速度制御手段は、目標加速度算出手段が算出した目標加速度となるように、加速装置による加速力を制御する。
【0014】
請求項3記載の発明は、減速制御を行う発明である。減速制御を行うために、接近離間状態評価指標関係式における、接近離間状態評価指標が急峻になる変化勾配が増加勾配である減速用接近離間状態評価指標関係式を備えている。また、速度制御開始条件として減速制御開始条件を備えている。そして、指標初期値算出手段は、減速制御開始条件が成立したことに基づいて、その減速制御開始条件が成立した時点における相対速度と、仮想先行車までの初期車間距離と、減速用接近離間状態評価指標関係式とから、接近離間状態評価指標の初期値を算出する。また、目標相対速度と相対速度の現在値とから目標減速度を算出する目標減速度算出手段を備え、速度制御手段は、目標減速度算出手段が算出した目標減速度となるように、制動装置による制動力を制御する。
【0015】
速度制御開始条件は、請求項4のように、目標速度に対する自車両の速度の相対速度が一定値を越えたこととすることができる。
【0016】
目標速度は、請求項5のように設定することができる。請求項5では、加減速の際にドライバによって操作されるペダルの操作量に関連するペダル関連量に基づいて目標速度を設定する。
【0017】
ここで、請求項2記載の発明において、速度制御開始条件を請求項4のように、目標速度に対する自車両の速度の相対速度が一定値を越えたこととし、目標速度を請求項5のように、加減速の際にドライバによって操作されるペダルの操作量に関連するペダル関連量に基づいて設定する構成とした場合には、アクセルペダルの操作に対する加速の不感帯が存在するという問題点があった。
【0018】
詳しくは、上述のような構成においては、ペダル関連量に基づいて自車両の目標速度を設定するため、ドライバがアクセルペダルを一旦戻した後に再度軽く踏み込んだときなど、アクセルペダルの操作量が自車両の速度以下の目標速度しか設定されないような操作量であって加速制御開始条件が成立しないような場合には、アクセルペダルを踏み込んでも自車両が加速しないことになり、アクセルペダルの操作に対する加速の不感帯が存在する。
【0019】
また、上述のような構成においては、目標速度に対する自車両の速度の相対速度が一定値を越えたことが加速制御開始条件なので、上記相対速度が一定値を越えない範囲でドライバがアクセルペダルを踏み込んだ場合には、加速制御開始条件が成立せず、アクセルペダルを踏み込んでも自車両が加速しないことになり、アクセルペダルの操作に対する加速の不感帯が存在する。
【0020】
これに対して、請求項6の構成によれば、加速制御開始条件が成立していない場合であっても、ドライバがアクセルペダルを踏み込んでおり、ペダル関連量が増加傾向にある場合には、目標加速度とは別に設定される設定加速度となるように加速装置による加速力を制御し、加速を行うことが可能になる。よって、加速制御開始条件が成立していない場合であっても、ドライバに加速の意思がある場合には、加速を行うことができ、アクセルペダルの操作に対する加速の不感帯が生じる状況を避けることが可能になる。
【0021】
請求項6のようにする場合には、請求項7のように、設定加速度をペダル関連量に応じた可変値として設定するようにしてもよい。これによれば、ペダルの操作量に応じた加速を行うことが可能となり、ドライバにとって、さらに違和感のない速度制御を実現することが可能になる。
【0022】
請求項8の構成によれば、ペダル関連量が一定時間にわたって増加傾向を示さなくなった場合に、設定加速度となるようにする加速力の制御を停止するので、ペダルの操作量が一定だったり減少していたりする場合のように、ドライバが自車両を加速させる意思のないときに、加速を止めることが可能になる。従って、ドライバにとって、さらに違和感のない速度制御を実現することが可能になる。
【0023】
目標速度は、請求項9のように設定することもできる。請求項9では、手動操作スイッチが操作された場合、その手動操作スイッチの操作に基づいて目標速度を設定する。
【0024】
車間距離は、請求項10のように、予め設定された一定値とすることができる。また、請求項11、12のように、算出によって求めるようにしてもよい。
【0025】
請求項11では、下記A,Bの2つの式から車間距離と目標速度との関係を示す式を求める。そして、この式に、目標速度設定手段が設定した目標速度を代入することで、初期車間距離を算出する。
A:接近離間状態評価指標を目標速度で補正した補正接近離間状態評価指標の閾値と、車間距離との関係を示す閾値式
B:車間距離、目標速度、相対速度から補正接近離間状態評価指標を算出する補正接近離間状態評価指標算出式
請求項12では、上記A式に代えて下記C式を用いる以外は、請求項11と同じである。
C:接近離間状態評価指標を速度制御開始条件が成立した時点における自車両の速度で補正した補正接近離間状態評価指標の閾値と、車間距離との関係を示す閾値式
また、目標相対速度は、請求項13のように、請求項11で用いる式に、車間距離を代入することで逐次算出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態の運転支援システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1の車両制御ECU100が行う速度制御の内容を示すフローチャートである。
【図3】図2のステップS106が否定判断である場合(ブレーキ操作が行われた場合)に実行する処理を示すフローチャートである。
【図4】図2のステップS106が肯定判断である場合(アクセル操作が行われた場合)に実行する処理を示すフローチャートである。
【図5】ブレーキペダルストロークと速度低下目標値ΔVmとの間の予め記憶された関係を示す図である。
【図6】相対速度別に、減速制御時の接近離間状態評価指標関係式が示す曲線(第1象限)と、加速制御時の接近離間状態評価指標関係式が示す曲線(第4象限)とを示す図である。
【図7】目標減速度Gd、および接近離間状態評価指標の目標値KdB_tの相対距離Dに対する変化を示す図である。
【図8】アクセルペダル開度と目標速度Vmとの関係を示す図である。
【図9】目標加速度Ga、および接近離間状態評価指標の目標値KdB_tの相対距離Dに対する変化を示す図である。
【図10】減速制御に関連する種々の値の時間変化を示すグラフである。
【図11】加速制御に関連する種々の値の時間変化を示すグラフである。
【図12】図2のステップS106が肯定判断である場合(アクセル操作が行われた場合)に実行する処理の変形例を示すフローチャートである。
【図13】アクセルペダル開度と設定加速度Gbとの関係を示す図である。
【図14】設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御に関連する種々の値の時間変化の一例を示すグラフである。
【図15】設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御に関連する種々の値の時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態は、本発明の車両用速度制御装置を運転支援システムに適用した場合について説明するものである。図1に、本実施形態の運転支援システムの全体構成を示す。同図に示すように、本運転支援システムは、VSC_ECU10、舵角センサ20、Gセンサ30、ヨーレートセンサ40、ENG_ECU50、ストロークセンサ60、アクセル開度センサ62、レーダ70、操作SW80、及び車両制御ECU100によって構成される。
【0028】
図1に示すVSC_ECU10は、自車に制動力を印加するブレーキアクチュエータ(図示せず)を制御するもので、自車の横滑りを抑制するVSC(Vehicle Stability Control、登録商標)の制御機能を備える。このVSC_ECU10は、車内LANから目標減速度の情報を受信し、この目標減速度が自車に発生するように、ブレーキアクチュエータを制御する。また、VSC_ECU10は、自車の速度(車速)VO、及びブレーキ圧力の情報を車内LANに送信する。舵角センサ20は、自車のステアリングの操舵角の情報を検出するセンサであり、検出した操舵角の情報を車内LANに送信する。
【0029】
Gセンサ30は、自車の前後方向に発生する加速度(前後G)と、横(左右)方向に発生する加速度(横G)を検出する加速度センサであり、検出した前後G及び横Gの情報を車内LANに送信する。ヨーレートセンサ40は、自車の鉛直軸まわりの角速度(ヨーレート)を検出するセンサであり、検出したヨーレートの情報を車内LANに送信する。
【0030】
ENG_ECU50は、車内LANから目標加速度の情報を受信し、自車が目標加速度を発生するように、図示しないスロットルアクチュエータを制御する。ストロークセンサ60はブレーキペダル(図示せず)のストローク量を検出するセンサであり、このストローク量はブレーキペダルの踏み込み量すなわちペダル関連量に相当する。アクセル開度センサ62は、ペダル関連量であるアクセルペダル開度を検出するセンサである。
【0031】
レーダ70は、例えば、レーザ光を自車前方の所定範囲に照射し、その反射光を受信して、先行車との車間距離(以下、単に距離、或いは相対距離ともいう)、先行車と自車との相対速度、自車幅中心軸と先行車の中心軸とのズレ量(横ずれ量)等を検出し、車両制御ECU100へ出力する。
【0032】
操作SW80は、自車のドライバが操作するスイッチ群であり、スイッチ群の操作情報は車両制御ECU100へ出力される。車両制御ECU100は、主にマイクロコンピュータとして構成され、何れも周知のCPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。
【0033】
車両制御ECU100は、自車両の前方に仮想先行車両を設定して、その仮想先行車両に基づいて、自車両のドライバにとって違和感のない速度制御を実行する。図2は、この速度制御の内容を示すフローチャートである。この処理は所定周期で逐次実行する。
【0034】
図2において、まず、ステップS100では自車両の現在の車速Voを検出する。続くステップS102ではペダル関連量を検出する。詳しくは、ストロークセンサ60からブレーキペダルのストローク量を取得することにより、ブレーキペダルのストローク量を検出し、また、アクセル開度センサ62からアクセルペダル開度を取得することにより、アクセルペダル開度を検出する。
【0035】
続くステップS104では、ステップS102で検出したペダル関連量に基づいて、ブレーキペダルまたはアクセルペダルが操作されたか否かを判断する。この判断は、前回検出したペダル関連量と今回検出したペダル関連量との差が所定値以上であるか否かにより行う。
【0036】
ステップS104の判断が否定判断である場合には処理を終了する。一方、肯定判断である場合にはステップS106へ進む。ステップS106では、ステップS104で操作ありと判断したのがアクセル操作であるか否かを判断する。この判断が肯定判断である場合(アクセル操作である場合)には図4へ進み、否定判断である場合(ブレーキ操作である場合)には図3へ進む。
【0037】
次に図3を説明する。まず、ステップS110では、ステップS102と同様にしてブレーキペダルのストローク量を検出し、このストローク量と、図5に示す、ブレーキペダルストロークと速度低下目標値ΔVmとの間の予め記憶された関係とから、速度低下目標値ΔVmを決定する。この速度低下目標値ΔVmは、現在の自車速Voから低下させる速度低下分の目標値を意味する。
【0038】
続くステップS112では、現在の自車速VoからステップS110で決定した速度低下目標値ΔVmを引くことにより、目標速度Vm(=Vo-ΔVm)を算出する。このステップS112は特許請求の範囲の目標速度設定手段に相当する。
【0039】
続くステップS114では、ステップS100で検出した車速Voを上記ステップS112で算出した目標速度Vmから引くことで、相対速度の現在値Vr_p(=Vm-Vo)を算出する。このステップS114は特許請求の範囲の相対速度算出手段に相当する。
【0040】
続くステップS116では、ステップS114で算出した相対速度の現在値Vr_pが閾値TH以上変化したか否かを判断する。この閾値THは、ドライバのブレーキペダル操作によって目標車速Vmと現在の自車速Voとの間に有意な差が生じたと判断できる程度に設定され、たとえば、5km/hに設定される。なお、このステップS116の条件は特許請求の範囲の速度制御開始条件、減速制御開始条件に相当する。
【0041】
この判断が否定判断である場合には上記ステップS110に戻り、目標速度Vm、相対速度の現在値Vr_pを更新した後、このステップS116の判断を再度実行する。一方、ステップS116の判断が肯定判断である場合には、減速制御を開始するためにステップS118に進む。なお、図示していないが、ステップS114、116を所定時間繰り返した場合には、図3の処理を終了する。
【0042】
ステップS118では、接近離間状態評価指標(KdB)算出用仮想先行車までの相対距離Dの初期距離D(tbi)を設定するとともに、KdBの初期値KdB(tbi)を算出する。本実施形態では、初期距離D(tbi)は予め設定された一定値であり、50mに設定されている。また、KdBの初期値KdB(tbi)は、下記(2)式に、上記初期距離D(tbi)と、相対速度の初期値として直前のステップS114で算出した相対速度Vr_pを代入することで算出する。このステップS118は特許請求の範囲の指標初期値算出手段に相当する。なお、仮想先行車は、上記ステップS112で算出した目標速度Vmで走行すると考えて以下の処理を行う。
【数2】
【0043】
続くステップS120では、接近離間状態評価指標の目標値KdB_tを算出する。この目標値KdB_tは、距離Dの関数であって、接近離間状態評価指標関係式の初期距離D(tbi)における接線である。この接線の求め方を以下に詳しく説明する。
【0044】
上述のように、目標値KdB_tは接近離間状態評価指標関係式の初期距離D(tbi)における接線である。接近離間状態評価指標関係式は前述の(2)式で示される。減速時は相対速度Vr<0であるため、減速制御時の接近離間状態評価指標関係式は、図6の上図(第1象限)に示すグラフとなる。なお、このグラフは、複数の相対距離Vr別に、距離DとKdBとの関係を示しており、矢印Aは、相対速度Vrが高くなる方向を示している。この図6の上図から分かるように、KdBは距離Dが小さくなるほど増加勾配が急峻になっており、また、矢印Aで示されるように、相対速度Vrの絶対値が高くなるほどKdBは大きくなる。また、同図には、目標値KdB_tの直線も示している。この直線から分かるように、減速制御においては、目標値KdB_tは、距離Dが小さくなるほど一定の傾きで増加する。
【0045】
この直線の傾きは以下のようにして求める。まず、上記(2)式を、減速時は相対速度Vr<0であることを考慮して、以下のように変形して(3)式とする。
【数3】
【0046】
この(3)式を距離で微分して初期距離D(tbi)を代入すると、接線の傾きを求めることができる(下記(4)式参照)。
【数4】
【0047】
また、初期距離D(tbi)のときのKdBの初期値をKdB(tbi)とすると、接線の切片は下記(5)式で示される。
【数5】
【0048】
よって、減速制御時の接近離間状態評価指標の目標値KdB_tは下記(6)式で示される。
【数6】
【0049】
このようにして接近離間状態評価指標の目標値KdB_tを求めたら、特許請求の範囲の車間距離算出手段に相当する続くステップS122では、仮想先行車両までの現時点での相対距離Dを算出する。この相対距離Dの算出方法を以下に詳しく説明する。相対距離Dは相対速度の現在値Vr_pから算出する。相対速度の現在値Vr_pは、ステップS114と同様にして算出する。前述のように、仮想先行車は目標速度Vmで走行すると考える。従って、相対距離D(t)は次のようにして算出できる。まず、相対速度の現在値Vr_pを、速度制御開始条件が成立したとき(ステップS116が肯定判断となったとき)から現時点まで逐次積分することで相対距離の変化分ΔD(t)を算出する。そして、この変化分ΔD(t)を、ステップS118で設定した初期距離D(tbi)から引くことで現時点での相対距離D(t)を算出する。
【0050】
続くステップS124では相対速度の目標値である目標相対速度Vr_tを算出する。このステップS124は目標相対速度算出手段に相当する。目標相対速度Vr_tは距離Dの関数であり、また、ステップS120で算出した目標値KdB_tも用いる。この目標相対速度Vr_tの求め方を以下に詳しく説明する。
【0051】
接近離間状態評価指標関係式((2)式)を変形すると、減速制御時の相対速度Vrは下記(7)式で表すことができる。
【数7】
【0052】
この(7)式に、(6)式を代入すると、目標相対速度Vr_tを距離Dから算出する下記(8)式が求まる。
【数8】
【0053】
この(8)式にステップS120で算出した現時点での相対距離Dを代入することで、目標相対速度Vr_tを算出する。
【0054】
続くステップS126は特許請求の範囲の目標減速度算出手段に相当し、下記(9)式から目標減速度Gdを算出する。なお、(9)式において、Vr_tは目標相対速度、Vr_pは現時点での相対速度、Tdは予め設定された一定の時間である。
【数9】
【0055】
目標減速度Gdは、このように目標相対速度Vr_tに基づいて算出し、その目標相対速度Vr_tは、接近離間状態評価指標の目標値KdB_tに基づいて算出している。図7には、目標減速度Gd、および接近離間状態評価指標の目標値KdB_tの相対距離Dに対する変化を示している。図7に示されるように、目標減速度Gdは下に凸の曲線となる。なお、点cよりも相対距離Dが0に近い部分の目標値KdB_tは破線となっている。この破線部分は制御を行っていないことを示しており、本実施形態では、相対速度が1km/hとなった時点で制御を終了している。点cは、相対速度が1km/hにおけるKdBの曲線と、(6)式の交点である。
【0056】
続くステップS128は特許請求の範囲の速度制御手段に相当し、Gセンサ30によって検出される実際の減速度が、ステップS126で算出した目標減速度Gdとなるように制動力を制御する。なお、制動力は、ブレーキアクチュエータを制御することで発生させてもよいし、エンジンブレーキを利用してもよい。また、制動力は、たとえば、目標減速度Gdと制動力との関係を定めたマップから求める。
【0057】
続くステップS130では、制御終了条件が成立したか否かを判断する。本実施形態における制御終了条件は、前述のように、車速Voと目標車速Vmとの差(すなわち、相対速度Vr_p)が所定速度(1km/h)以下となったという条件である。ただし、自車両が停止したことや、接近離間状態評価指標KdBが目標値KdB_tよりも所定値以上低下したりしたことを用いることもできる。このステップS130の判断が否定判断である場合には、ステップS120へ戻り減速制御を継続する。一方、肯定判断である場合には、減速制御を終了する。
【0058】
次に、図2のステップS106が肯定判断である場合(アクセル操作である場合)に実行する図4を説明する。図4において、まず、特許請求の範囲の目標速度設定手段に相当するステップS140では、現在のアクセルペダル開度と、図8に示すアクセルペダル開度と目標速度Vmとの関係とから、目標速度Vmを設定する。なお、図8に示す関係は、予め実験に基づいて設定されたものである。
【0059】
続くステップS142では、上記ステップS140で設定した目標速度VmからステップS100で検出した車速Voを引くことで、相対速度の現在値Vr_p(=Vm-Vo)を算出する。このステップS142は特許請求の範囲の相対速度算出手段に相当する。
【0060】
続くステップS144では、上記ステップS142で算出した相対速度の現在値Vr_pが閾値TH以上変化したか否かを判断する。この閾値THは、図3のステップS116と同様に、たとえば、5km/hに設定される。なお、このステップS144の条件は特許請求の範囲の速度制御開始条件、加速制御開始条件に相当する。
【0061】
この判断が否定判断である場合には上記ステップS140に戻り、目標速度Vm、相対速度の現在値Vr_pを更新した後、このステップS144の判断を再度実行する。一方、ステップS144の判断が肯定判断である場合には、加速制御を開始するためにステップS146に進む。なお、図示していないが、ステップS142、144を所定時間繰り返した場合には、図4の処理を終了する。
【0062】
ステップS146では、接近離間状態評価指標(KdB)算出用仮想先行車までの相対距離Dの初期距離D(tai)を設定するとともに、KdBの初期値KdB(tai)を算出する。初期距離D(tai)は、減速制御の場合と同じであり、50mに設定されている。また、KdBの初期値KdB(tai) は、前述の(2)式に、上記初期距離D(tai)と、相対速度の初期値として直前のステップS142で算出した相対速度Vr_pを代入することで算出する。このステップS146は特許請求の範囲の指標初期値算出手段に相当する。また、仮想先行車は、上記ステップS140で算出した目標速度Vmで走行すると考えて以下の処理を行う。
【0063】
ステップS148では、接近離間状態評価指標の目標値KdB_tを算出する。この目標値KdB_tは、距離Dの関数であって、接近離間状態評価指標関係式の初期距離D(tai)における接線である。この接線の求め方を以下に詳しく説明する。
【0064】
目標値KdB_tは接近離間状態評価指標関係式の初期距離D(tai)における接線である。加速時は相対速度Vr>0であるため、加速制御時の接近離間状態評価指標関係式は、図6の下図(第4象限)に示すグラフとなる。なお、矢印Bは相対速度Vrの絶対値が高くなる方向を示している。この図6の下図から分かるように、KdBは距離Dが小さくなるほど減少勾配が急峻になっており、また、矢印Bで示されるように、相対速度Vrの絶対値が高くなるほどKdBの絶対値は大きくなる。また、同図には、目標値KdB_tの直線も示している。この直線から分かるように、加速制御においては、目標値KdB_tは、距離Dが小さくなるほど一定の傾きで減少する。
【0065】
この直線の傾きは、以下のようにして求める。まず、前述の(2)式を、加速時は相対速度Vr<0であることを考慮して、以下のように変形して(10)式とする。
【数10】
【0066】
この(10)式を距離で微分して初期距離D(tai)を代入すると、接線の傾きを求めることができる(下記(11)式参照)。
【数11】
【0067】
また、初期距離D(tai)のときのKdBの初期値をKdB(tai)とすると、接線の切片は下記(12)式で示される。
【数12】
【0068】
よって、加速制御時の接近離間状態評価指標の目標値KdB_tは下記(13)式で示される。
【数13】
【0069】
このようにして接近離間状態評価指標の目標値KdB_tを求めたら、特許請求の範囲の車間距離算出手段に相当する続くステップS150では、仮想先行車両までの現時点での相対距離Dを算出する。この相対距離Dは、減速制御時の相対距離Dの算出方法(ステップS122)と略同じであり、違いは、減速制御時は、相対距離の変化分ΔD(t)を初期距離D(tai)から引いていたが、このステップS150では、相対距離の変化分ΔD(t)を初期距離D(tai)に加えることで、相対距離Dを算出する。
【0070】
続くステップS152では目標相対速度Vr_tを算出する。このステップS152は目標相対速度算出手段に相当する。加速制御時の目標相対速度Vr_tも、距離Dの関数であり、また、目標値KdB_tも用いる。この目標相対速度Vr_tの求め方を以下に詳しく説明する。
【0071】
接近離間状態評価指標関係式((2)式)を変形すると、加速制御時の相対速度Vrは下記(14)式で表すことができる。
【数14】
【0072】
この(14)式に、(13)式を代入すると、目標相対速度Vr_tを距離Dから算出する下記(15)式が求まる。
【数15】
【0073】
この(15)式にステップS150で算出した現時点での相対距離Dを代入することで、目標相対速度Vr_tを算出する。
【0074】
続くステップS154は特許請求の範囲の目標加速度算出手段に相当し、下記(16)式から目標加速度Gaを算出する。なお、(16)式において、Vr_tは目標相対速度、Vr_pは現時点での相対速度、Taは予め設定された一定の時間である。
【数16】
【0075】
図9には、目標加速度Ga、および接近離間状態評価指標の目標値KdB_tの相対距離Dに対する変化を示している。図9に示されるように、目標加速度Gaは上に凸の曲線となる。
【0076】
続くステップS156は特許請求の範囲の速度制御手段に相当し、Gセンサ30によって検出される実際の加速度が、ステップS154で算出した目標加速度Gaとなるように加速装置に発生させる加速力を制御する。なお、加速力は、たとえば、目標加速度Gaと加速力との関係を定めたマップから求める。
【0077】
続くステップS158では、制御終了条件が成立したか否かを判断する。本実施形態における制御終了条件は、前述のように、車速Voと目標車速Vmとの差(すなわち、相対速度Vr_p)が所定速度(1km/h)以下となったという条件である。このステップS158の判断が否定判断である場合には、ステップS148へ戻り加速制御を継続する。一方、肯定判断である場合には、加速制御を終了する。
【0078】
図10は減速制御に関連する種々の値の時間変化を示すグラフであり、図11は加速制御に関連する種々の値の時間変化を示すグラフである。これらのグラフを用いて本実施形態における制御を説明する。まずは減速制御について図10を用いて説明する。
【0079】
ドライバがブレーキペダルの踏み込みを開始して(t0時点)、ブレーキペダルストロークが増加していくと、相対速度Vr_pが閾値TH以上となる(t1時点)。これにより、初期距離D(tbi)が設定され、以降、制御終了まで相対距離Dを逐次算出する。減速制御中は、前述の(8)式に基づいて目標相対速度Vr_tを逐次算出し、その目標相対速度と現時点での相対速度Vr_pとから目標減速度Gdを算出し、実際の減速度がこの目標減速度Gdとなるように制御する。このような制御を行うと、自車速Voは目標速度Vmに滑らかに近づいていく。そして、自車速Voがほぼ目標速度Vmとなった時点(Vm+1km/h)で制御を終了する(t2時点)。このt1時点からt2時点までの間、KdBは、当初は、その目標値KdB_tよりも大きかったものが、その目標値KdB_tを下回っており、また、相対距離Dは徐々に短くなっている。
【0080】
次に加速制御について図11を用いて説明する。ドライバがアクセルペダルの踏み込みを開始して(t3時点)、アクセルペダル開度が増加していくと、相対速度Vr_pが閾値TH以上となる(t4時点)。これにより、初期距離D(tai)が設定され、以降、制御終了まで相対距離Dを逐次算出する。加速制御中は、前述の(15)式に基づいて目標相対速度Vr_tを逐次算出し、その目標相対速度と現時点での相対速度Vr_pとから目標加速度Gaを算出し、実際の加速度がこの目標加速度Gaとなるように制御する。このような制御を行うと、時車速Voは目標速度Vmに滑らかに近づいていく。そして、自車速Voがほぼ目標速度Vmとなった時点(Vm-1km/h)で制御を終了する(t5時点)。このt4時点からt5時点までの間、KdBは、徐々にその目標値KdB_tに近づいており、また、相対距離Dは徐々に長くなっている。
【0081】
以上、説明した本実施形態によれば、速度制御開始条件(減速制御開始条件、加速制御開始条件)が成立した場合に、目標速度Vmで走行する仮想先行車両を、初期距離D(tbi)、D(tai)だけ自車両の前方に設定する(ステップS118、S146)。そして、それら初期距離D(tbi)、D(tai)、目標速度Vmから、初期距離D(tbi)、D(tai)における接近離間状態評価指標の初期値KdB(tbi)、KdB(tai)を算出する(ステップS118、S146)。さらに、速度制御開始条件成立後の相対距離Dを、その条件が成立してからの経過時間と、相対速度の現在値Vr_pと、初期距離D(tbi)、D(tai)とから逐次算出する(ステップS122、S150)。そして、これら初期距離D(tbi)、D(tai)、接近離間状態評価指標の初期値KdB(tbi)、KdB(tai)、相対距離Dから目標相対速度Vr_tを逐次算出する(ステップS124、S152)。また、現在の相対速度Vr_pは、目標速度Vmとの差としている。そして、これら目標相対速度Vr_tと現在の実際の相対速度Vr_pとの差に基づいて速度制御を行う(ステップS128、S156)。よって、先行車両が存在していなくても、接近離間状態評価指標KdBを用いた、ドライバにとって違和感のない速度制御を行うことができる。
【0082】
(変形例1)
前述の実施形態では、アクセル操作である場合に、ペダル操作に基づいて図8の関係から目標速度Vmを設定し、その目標速度Vmと実際の車速Voとの速度差(相対速度Vr_p)が閾値TH以上変化したか否かを判断していた。そして、この判断が肯定判断である場合には加速制御を開始する一方、否定判断である場合には加速制御を開始せず、上記判断を再度実行していた。この変形例1では、上記判断が否定判断である場合でも、ペダル関連量が増加傾向にある場合には、目標加速度とは別に設定される加速度(以下、設定加速度Gb)となるように制御を実行する。
【0083】
ペダル関連量としては、アクセルペダル開度やアクセルペダルのストローク量などを用いる構成とすればよいが、以下ではアクセルペダル開度を用いるものとして説明を行う。
【0084】
ここでは、図2のステップS106が肯定判断である場合(アクセル操作である場合)に実行する図12を説明する。図12において、ステップS340〜ステップS342までの処理は、ステップS140〜ステップS142までの処理と同様である。
【0085】
ステップS344では、ステップS342で算出した相対速度の現在値Vr_pが閾値TH以上変化したか否かを判断する。この閾値THは、図4のステップS144と同様に、たとえば、5km/hに設定される。なお、このステップS344の条件は特許請求の範囲の速度制御開始条件、加速制御開始条件に相当する。
【0086】
この判断が肯定判断である場合には、加速制御を開始するためにステップS346に進む。ステップS346〜ステップS358までの処理は、ステップS146〜ステップS158までの処理と同様である。
【0087】
否定判断である場合にはステップS360に進む。ステップS360では、アクセルペダル開度が増加傾向にあるか否かを判定する。アクセルペダル開度が増加傾向にあるか否かは、前回検出したアクセルペダル開度に比べて今回検出したアクセルペダル開度が増加していた場合には増加傾向にあると判定し、増加していなかった(つまり、変化していなかった或いは減少していた)場合には増加傾向にあると判定しない。
【0088】
そして、増加傾向にあると判定した場合には、ステップS362に進む。また、増加傾向にあると判定しなかった場合には、ステップS340に戻り、目標速度Vm、相対速度の現在値Vr_pを更新した後、ステップS344の判断を再度実行する。
【0089】
ステップS362は、特許請求の範囲の速度制御手段に相当し、Gセンサ30によって検出される実際の加速度が、設定加速度Gbとなるように加速装置に発生させる加速力を制御する処理を開始(つまり、設定加速度Gbとなるように加速力の制御を開始)し、ステップS364に進む。加速力は、たとえば、設定加速度Gbと実際の加速度との差に応じて決定する。
【0090】
設定加速度Gbは、予め設定された固定値であってもよいが、アクセルペダル開度に応じて設定される可変値とすることが好ましい。設定加速度Gbを可変値とする場合には、アクセルペダル開度が増すほど大きな設定加速度Gbが対応づけられた図13に示すようなアクセルペダル開度と設定加速度Gbとの関係と、現在のアクセルペダル開度とから、設定加速度Gbを設定する構成とすればよい。
【0091】
ステップS364では、アクセルペダル開度が一定時間にわたって増加傾向を示さなくなったか否かを判定する。アクセルペダル開度が一定時間の間に一度も増加しなかった場合には、一定時間にわたって増加傾向を示さなくなった(つまり、一定時間にわたって増加せず)と判定し、一定時間の間に一度でも増加した場合には、一定時間にわたって増加傾向を示さなくなったと判定しない。
【0092】
そして、一定時間にわたって増加傾向を示さなくなったと判定した場合には、設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御を停止する。設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御を停止した後は、例えば設定加速度0として走行を継続し、図2のステップS100に戻る構成とすればよい。また、一定時間にわたって増加傾向を示さなくなったと判定しなかった場合には、設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御を継続し、ステップS364へ戻る。なお、図示していないが、ステップS342、344を所定時間繰り返した場合には、図12の処理を終了する。
【0093】
以上の構成によれば、ステップS342で算出した相対速度の現在値Vr_pが閾値TH以上変化していない場合(つまり、加速制御開始条件が成立していない場合)であっても、ドライバがアクセルペダルを踏み込んでおり、ペダル関連量が増加傾向にある場合には、目標加速度とは別に設定される設定加速度Gbとなるように加速装置による加速力を制御し、加速を行うことが可能になる。よって、加速制御開始条件が成立していない場合であっても、ドライバに加速の意思がある場合には、加速を行うことができ、アクセルペダルの操作に対する加速の不感帯が生じる状況を避けることが可能になる。
【0094】
なお、アクセルペダル開度が一定時間にわたって増加傾向を示さなくなった場合に、設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御を停止した後に設定加速度0として走行を継続する処理(以下、設定加速制御停止処理)を行わない構成としてもよい。
【0095】
ここで、設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御について図14および図15を用いて説明する。図14および図15は設定加速度Gbとなるようにする加速力の制御に関連する種々の値の時間変化を示すグラフである。図14および図15の例は、ドライバがアクセルペダルを一旦戻した後に再度軽く踏み込んだときであって、加速制御開始条件が成立しないような場合であるものとする。また、図14は、設定加速制御停止処理を行わない構成とした場合の例であって、図15は、設定加速制御停止処理を行う構成とした場合の例である。
【0096】
まず、設定加速制御停止処理を行わない構成とした場合について、図14を用いて説明を行う。アクセルペダルを一旦戻した状態からドライバがアクセルペダルの踏み込みを開始(t5時点)し、アクセルペダル開度が増加していくと、設定加速度Gbもアクセルペダル開度の増加に応じて大きく設定されていく。設定加速度Gbが徐々に大きく設定されていくと、加速装置で発生させる加速力も徐々に大きくなり、自車両の速度も増加する。その後、アクセルペダルの踏み込み量を一定にした場合(t6時点)であっても、設定加速度Gbが一定に設定されるので、一定の加速力が発生し続け、自車両の速度は徐々に増加し続ける。
【0097】
続いて、設定加速制御停止処理を行う構成とした場合について、図15を用いて説明を行う。アクセルペダルを一旦戻した状態からドライバがアクセルペダルの踏み込みを開始(t7時点)し、アクセルペダル開度が増加していくと、設定加速度Gbもアクセルペダル開度の増加に応じて大きく設定されていく。設定加速度Gbが徐々に大きく設定されていくと、加速装置で発生させる加速力も徐々に大きくなり、自車両の速度も増加する。その後、アクセルペダルの踏み込み量を一定にした状態が一定時間(t8時点からt9時点)続くと、設定加速制御停止処理が実行され、アクセルペダルを戻さなくても設定加速度0となって加速を中止するので、自車両の速度は設定加速制御停止処理が実行されたときの速度が維持され、一定となる。
【0098】
このように、設定加速制御停止処理を行う構成とした場合には、アクセルペダルの踏み込み量(つまり、操作量)が一定だったり減少していたりする場合のように、ドライバが自車両を加速させる意思のないときに、加速を止めることが可能になる。従って、ドライバにとって、さらに違和感のない速度制御を実現することが可能になる。
【0099】
(変形例2)
前述の実施形態では、ペダル操作に基づいて図5、8の関係から目標速度Vmを設定し、その目標速度Vmと実際の車速Voとの速度差(相対速度Vr_p)に基づいて、初期距離D(tbi)、D(tai)の設定以後の処理を実行していた。この変形例2では、これに加えて、ペダル操作量が一定の場合、すなわち、目標速度Vmが変化しない場合でも、自車速が一定速度以上変化した場合に初期距離D(tbi)、D(tai)の設定以後の処理を実行する。このようにするために、たとえば、前述のステップS114、S142において、自車両の車速Voを検出し、相対速度Vr_pの算出に、この車速Voを用いるようにしてもよい。
【0100】
(変形例3)
また、運転者が手で操作して目標速度Vmを設定する手動操作スイッチを備えている車両の場合には、この手動操作スイッチによって設定された目標速度Vmを用いて制御を行ってもよい。
【0101】
(変形例4)
また、前述の実施形態では、初期距離D(tbi)、D(tai)を一定値としていたが、この変形例3では、初期距離D(tbi)、D(tai)を、接近離間状態評価指標KdBを目標速度Vmで補正した下記(17)式に示す補正接近離間状態評価指標KdB_cの算出式と、目標速度Vmとから算出する。なお、(17)式においてaは定数である。
【数17】
【0102】
ここで、補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いた制御開始の閾値は下記(18)式で表すことができる。
【数18】
【0103】
また、(17)式を変形すると下記(19)式を得る。
【数19】
【0104】
(18)式に(19)式を代入すると下記(20)式を得る。
【数20】
【0105】
自車の速度Voと目標速度Vmとの速度差Vr=0となるときの相対距離Dは下記(21)式となる。変形例4では、この(21)式から算出できる距離を初期距離D(tbi)、D(tai)とする。
【数21】
【0106】
(変形例5)
変形例4では、初期距離D(tbi)、D(tai)を、接近離間状態評価指標KdBを目標速度Vmで補正した(17)式に示す補正接近離間状態評価指標KdB_cの算出式と、目標速度Vmとから算出していたが、変形例5では、(17)式に代えて、接近離間状態評価指標KdBを制御開始時の自車の速度Voで補正した下記(22)式を用いる。その他は、変形例4と同じである。従って、変形例5では、初期距離Dとして、下記(23)式から算出できる距離D(tbi)、D(tai)を初期距離とする。
【数22】
【数23】
【0107】
(変形例6)
前述の実施形態では、目標相対速度Vr_tを、KdBを用いる(8)式、(15)式から算出していたが、変形例6では、目標相対速度Vr_tを、補正接近離間状態評価指標KdB_cから算出する。すなわち、前述の(20)式に、前述の実施形態と同様にして算出した距離D、目標速度Vmを代入することで算出できる相対速度を目標相対速度Vr_tとする。なお、このようにして算出する目標相対速度Vr_tを、加速制御および減速制御の両方に用いてもよいが、加速制御、減速制御のいずれか一方にのみに用いても良い。
【0108】
(変形例7)
前述の実施形態の加速制御では、接近離間状態評価指標の目標値KdB_tを算出する直線式((13)式)を、接近離間状態評価指標KdB、距離Dから相対速度Vrを算出する(14)式に代入することで目標相対速度Vr_tを算出していたが、変形例7では、(13)式に代えて、初期距離D (tai)およびその初期距離D (tai)における接近離間状態評価指標KdB(tai)から定まる第1点と、接近離間状態評価指標KdB=0およびそのKdB=0における距離(目標距離)Dtから定まる第2点とを結ぶ直線を(13)式に代えて用いる。なお、目標距離Dtは、(10)式にKdB=0、Vr=0を代入することで求められる。
【0109】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0110】
たとえば、アクセルペダル開度に代えてスロットルバルブの開度をペダル関連量として検出してもよい。また、ブレーキペダルストロークに代えて、ブレーキ油圧をペダル関連量として検出してもよい。
【符号の説明】
【0111】
10:VSC_ECU、 20:舵角センサ、 30:Gセンサ、 40:ヨーレートセンサ、 50:ENG_ECU、 60:ストロークセンサ、 62:アクセル開度センサ、 70:レーダ、 80:操作スイッチ、 100:車両制御ECU
S112:目標速度設定手段、 S114:相対速度算出手段、 S118:指標初期値算出手段、 S122:車間距離算出手段、 S124:目標相対速度算出手段、 S126:目標減速度算出手段、 S128:速度制御手段、 S140:目標速度設定手段、 S142:相対速度算出手段、 S146:指標初期値算出手段、 S150:車間距離算出手段、 S152:目標相対速度算出手段、 S154:目標加速度算出手段、 S156:速度制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行車両に対する接近離間状態を表す接近離間状態評価指標と、前記先行車両との距離と、前記先行車両との相対速度との関係を示す式であって、前記先行車両に接近する相対速度が高くなるほど前記接近離間状態評価指標の絶対値が大きくなるとともに、同一の相対速度においては前記先行車両との車間距離が短くなるほど前記接近離間状態評価指標の変化勾配が急峻になる接近離間状態評価指標関係式に基づいて、自車両の速度制御を行う車両用速度制御装置であって、
自車両の目標速度を設定する目標速度設定手段と、
前記目標速度設定手段が設定した目標速度と現在の自車両の速度との相対速度の現在値を逐次算出する相対速度算出手段と、
所定の速度制御開始条件が成立したことに基づいて、前記相対速度の現在値と、仮想先行車までの初期車間距離と、前記接近離間状態評価指標関係式とから、前記接近離間状態評価指標の初期値を算出する指標初期値算出手段と、
前記相対速度の現在値と、前記速度制御開始条件が成立してからの経過時間と、仮想先行車両までの初期車間距離とから、仮想先行車両までの車間距離の現在値を逐次算出する車間距離算出手段と、
その車間距離算出手段が算出した車間距離の現在値と、前記指標初期値算出手段が算出した接近離間状態評価指標の初期値と、前記初期車間距離とから、相対速度の目標値である目標相対速度を逐次算出する目標相対速度算出手段と、
前記目標相対速度と前記相対速度の現在値とに基づいて速度制御を行う速度制御手段とを備えることを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記接近離間状態評価指標関係式における、前記接近離間状態評価指標が急峻になる変化勾配が減少勾配である加速用接近離間状態評価指標関係式を備え、
かつ、前記速度制御開始条件として加速制御開始条件を備え、
前記指標初期値算出手段は、加速制御開始条件が成立したことに基づいて、その加速制御開始条件が成立した時点における前記相対速度と、仮想先行車までの初期車間距離と、前記加速用接近離間状態評価指標関係式とから、前記接近離間状態評価指標の初期値を算出し、
前記目標相対速度算出手段が算出した目標相対速度と、前記相対速度算出手段が算出した相対速度の現在値とから目標加速度を算出する目標加速度算出手段を備え、
前記速度制御手段は、前記目標加速度算出手段が算出した目標加速度となるように、加速装置による加速力を制御することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記接近離間状態評価指標関係式における、前記接近離間状態評価指標が急峻になる変化勾配が増加勾配である減速用接近離間状態評価指標関係式を備え、
かつ、前記速度制御開始条件として減速制御開始条件を備え、
前記指標初期値算出手段は、減速制御開始条件が成立したことに基づいて、その減速制御開始条件が成立した時点における前記相対速度と、仮想先行車までの初期車間距離と、前記減速用接近離間状態評価指標関係式とから、前記接近離間状態評価指標の初期値を算出し、
前記目標相対速度算出手段が算出した目標相対速度と、前記相対速度算出手段が算出した相対速度の現在値とから目標減速度を算出する目標減速度算出手段を備え、
前記速度制御手段は、前記目標減速度算出手段が算出した目標減速度となるように、制動装置による制動力を制御することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記速度制御開始条件が、自車両の速度に対する前記目標速度の相対速度が一定値を越えたことである、ことを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記目標速度設定手段は、加減速の際にドライバによって操作されるペダルの操作量に関連するペダル関連量に基づいて前記目標速度を設定することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記接近離間状態評価指標関係式における、前記接近離間状態評価指標が急峻になる変化勾配が減少勾配である加速用接近離間状態評価指標関係式を備え、
かつ、前記速度制御開始条件として、自車両の速度に対する前記目標速度の相対速度が一定値を越えたことを条件とする加速制御開始条件を備え、
前記指標初期値算出手段は、加速制御開始条件が成立したことに基づいて、その加速制御開始条件が成立した時点における前記相対速度と、仮想先行車までの初期車間距離と、前記加速用接近離間状態評価指標関係式とから、前記接近離間状態評価指標の初期値を算出し、
前記目標速度設定手段は、加減速の際にドライバによって操作されるペダルの操作量に関連するペダル関連量に基づいて前記目標速度を設定するものであって、
前記目標相対速度算出手段が算出した目標相対速度と、前記相対速度算出手段が算出した相対速度の現在値とから目標加速度を算出する目標加速度算出手段を備え、
前記速度制御手段は、
前記加速制御開始条件が成立した場合には、前記目標加速度算出手段が算出した目標加速度となるように、加速装置による加速力を制御する一方、
前記加速制御開始条件が成立しておらず、且つ、前記ペダル関連量が増加傾向にある場合には、前記目標加速度とは別に設定される加速度である設定加速度となるように、加速装置による加速力を制御することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記設定加速度は、前記ペダル関連量に応じた可変値として設定されることを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記設定加速度となるように加速装置による加速力の制御が開始された後、前記ペダル関連量が一定時間にわたって増加傾向を示さなくなった場合には、当該制御を停止することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両用速度制御装置であって、
当該車両用速度制御装置は、ドライバの手によって操作される位置に設けられた手動操作スイッチであって、その手動操作スイッチの操作に基づいて目標速度が設定される手動操作スイッチを備えた車両に用いられ、
前記目標速度設定手段は、前記手動操作スイッチが操作された場合、その手動操作スイッチの操作に基づいて前記目標速度を設定することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項において、
前記初期車間距離が、予め設定された一定値であることを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項において、
前記接近離間状態評価指標を前記目標速度で補正した補正接近離間状態評価指標の閾値と、前記車間距離との関係を示す閾値式と、前記車間距離、前記目標速度、前記相対速度から前記補正接近離間状態評価指標を算出する補正接近離間状態評価指標算出式の2つの式から求められる式であって、前記車間距離と前記目標速度との関係を示す式に、前記目標速度設定手段が設定した目標速度を代入することで、前記初期車間距離を算出することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項において、
前記接近離間状態評価指標を前記速度制御開始条件が成立した時点における自車両の速度で補正した補正接近離間状態評価指標の閾値と、前記車間距離との関係を示す閾値式と、前記車間距離、前記目標速度、前記相対速度から前記補正接近離間状態評価指標を算出する補正接近離間状態評価指標算出式の2つの式から求められる式であって、前記車間距離と前記目標速度との関係を示す式に、前記目標速度設定手段が設定した目標速度を代入することで、前記初期車間距離を算出することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項において、
前記目標相対速度算出手段は、前記接近離間状態評価指標を前記目標速度で補正した補正接近離間状態評価指標の閾値と、前記車間距離との関係を示す閾値式と、前記車間距離、前記目標速度、前記相対速度から前記補正接近離間状態評価指標を算出する補正接近離間状態評価指標算出式の2つの式から求められる式であって、目標速度、車間距離から前記相対速度が定まる式に、前記目標速度設定手段が設定した目標速度と、前記車間距離算出手段が算出した車間距離を代入することで、前記目標相対速度を逐次算出することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項1】
先行車両に対する接近離間状態を表す接近離間状態評価指標と、前記先行車両との距離と、前記先行車両との相対速度との関係を示す式であって、前記先行車両に接近する相対速度が高くなるほど前記接近離間状態評価指標の絶対値が大きくなるとともに、同一の相対速度においては前記先行車両との車間距離が短くなるほど前記接近離間状態評価指標の変化勾配が急峻になる接近離間状態評価指標関係式に基づいて、自車両の速度制御を行う車両用速度制御装置であって、
自車両の目標速度を設定する目標速度設定手段と、
前記目標速度設定手段が設定した目標速度と現在の自車両の速度との相対速度の現在値を逐次算出する相対速度算出手段と、
所定の速度制御開始条件が成立したことに基づいて、前記相対速度の現在値と、仮想先行車までの初期車間距離と、前記接近離間状態評価指標関係式とから、前記接近離間状態評価指標の初期値を算出する指標初期値算出手段と、
前記相対速度の現在値と、前記速度制御開始条件が成立してからの経過時間と、仮想先行車両までの初期車間距離とから、仮想先行車両までの車間距離の現在値を逐次算出する車間距離算出手段と、
その車間距離算出手段が算出した車間距離の現在値と、前記指標初期値算出手段が算出した接近離間状態評価指標の初期値と、前記初期車間距離とから、相対速度の目標値である目標相対速度を逐次算出する目標相対速度算出手段と、
前記目標相対速度と前記相対速度の現在値とに基づいて速度制御を行う速度制御手段とを備えることを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記接近離間状態評価指標関係式における、前記接近離間状態評価指標が急峻になる変化勾配が減少勾配である加速用接近離間状態評価指標関係式を備え、
かつ、前記速度制御開始条件として加速制御開始条件を備え、
前記指標初期値算出手段は、加速制御開始条件が成立したことに基づいて、その加速制御開始条件が成立した時点における前記相対速度と、仮想先行車までの初期車間距離と、前記加速用接近離間状態評価指標関係式とから、前記接近離間状態評価指標の初期値を算出し、
前記目標相対速度算出手段が算出した目標相対速度と、前記相対速度算出手段が算出した相対速度の現在値とから目標加速度を算出する目標加速度算出手段を備え、
前記速度制御手段は、前記目標加速度算出手段が算出した目標加速度となるように、加速装置による加速力を制御することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記接近離間状態評価指標関係式における、前記接近離間状態評価指標が急峻になる変化勾配が増加勾配である減速用接近離間状態評価指標関係式を備え、
かつ、前記速度制御開始条件として減速制御開始条件を備え、
前記指標初期値算出手段は、減速制御開始条件が成立したことに基づいて、その減速制御開始条件が成立した時点における前記相対速度と、仮想先行車までの初期車間距離と、前記減速用接近離間状態評価指標関係式とから、前記接近離間状態評価指標の初期値を算出し、
前記目標相対速度算出手段が算出した目標相対速度と、前記相対速度算出手段が算出した相対速度の現在値とから目標減速度を算出する目標減速度算出手段を備え、
前記速度制御手段は、前記目標減速度算出手段が算出した目標減速度となるように、制動装置による制動力を制御することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記速度制御開始条件が、自車両の速度に対する前記目標速度の相対速度が一定値を越えたことである、ことを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記目標速度設定手段は、加減速の際にドライバによって操作されるペダルの操作量に関連するペダル関連量に基づいて前記目標速度を設定することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記接近離間状態評価指標関係式における、前記接近離間状態評価指標が急峻になる変化勾配が減少勾配である加速用接近離間状態評価指標関係式を備え、
かつ、前記速度制御開始条件として、自車両の速度に対する前記目標速度の相対速度が一定値を越えたことを条件とする加速制御開始条件を備え、
前記指標初期値算出手段は、加速制御開始条件が成立したことに基づいて、その加速制御開始条件が成立した時点における前記相対速度と、仮想先行車までの初期車間距離と、前記加速用接近離間状態評価指標関係式とから、前記接近離間状態評価指標の初期値を算出し、
前記目標速度設定手段は、加減速の際にドライバによって操作されるペダルの操作量に関連するペダル関連量に基づいて前記目標速度を設定するものであって、
前記目標相対速度算出手段が算出した目標相対速度と、前記相対速度算出手段が算出した相対速度の現在値とから目標加速度を算出する目標加速度算出手段を備え、
前記速度制御手段は、
前記加速制御開始条件が成立した場合には、前記目標加速度算出手段が算出した目標加速度となるように、加速装置による加速力を制御する一方、
前記加速制御開始条件が成立しておらず、且つ、前記ペダル関連量が増加傾向にある場合には、前記目標加速度とは別に設定される加速度である設定加速度となるように、加速装置による加速力を制御することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記設定加速度は、前記ペダル関連量に応じた可変値として設定されることを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記設定加速度となるように加速装置による加速力の制御が開始された後、前記ペダル関連量が一定時間にわたって増加傾向を示さなくなった場合には、当該制御を停止することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両用速度制御装置であって、
当該車両用速度制御装置は、ドライバの手によって操作される位置に設けられた手動操作スイッチであって、その手動操作スイッチの操作に基づいて目標速度が設定される手動操作スイッチを備えた車両に用いられ、
前記目標速度設定手段は、前記手動操作スイッチが操作された場合、その手動操作スイッチの操作に基づいて前記目標速度を設定することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項において、
前記初期車間距離が、予め設定された一定値であることを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項において、
前記接近離間状態評価指標を前記目標速度で補正した補正接近離間状態評価指標の閾値と、前記車間距離との関係を示す閾値式と、前記車間距離、前記目標速度、前記相対速度から前記補正接近離間状態評価指標を算出する補正接近離間状態評価指標算出式の2つの式から求められる式であって、前記車間距離と前記目標速度との関係を示す式に、前記目標速度設定手段が設定した目標速度を代入することで、前記初期車間距離を算出することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項において、
前記接近離間状態評価指標を前記速度制御開始条件が成立した時点における自車両の速度で補正した補正接近離間状態評価指標の閾値と、前記車間距離との関係を示す閾値式と、前記車間距離、前記目標速度、前記相対速度から前記補正接近離間状態評価指標を算出する補正接近離間状態評価指標算出式の2つの式から求められる式であって、前記車間距離と前記目標速度との関係を示す式に、前記目標速度設定手段が設定した目標速度を代入することで、前記初期車間距離を算出することを特徴とする車両用速度制御装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項において、
前記目標相対速度算出手段は、前記接近離間状態評価指標を前記目標速度で補正した補正接近離間状態評価指標の閾値と、前記車間距離との関係を示す閾値式と、前記車間距離、前記目標速度、前記相対速度から前記補正接近離間状態評価指標を算出する補正接近離間状態評価指標算出式の2つの式から求められる式であって、目標速度、車間距離から前記相対速度が定まる式に、前記目標速度設定手段が設定した目標速度と、前記車間距離算出手段が算出した車間距離を代入することで、前記目標相対速度を逐次算出することを特徴とする車両用速度制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−255876(P2011−255876A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234694(P2010−234694)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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