説明

車両用運転支援装置

【課題】表示装置の画面で目標走行経路と実際の前方の走行予定コースを重畳して表示し両方の関係の認知を容易化し、運転者の経験に基づく予測操舵入力を不要とし、運転者に操作簡単な操縦方法を与えられる車両用運転支援装置を提供する。
【解決手段】車両用運転支援装置10は、表示部位13Aに車両1の走行情報を表示するヘッドアップ・ディスプレイ装置14と、車両の走行に適した目標走行経路の情報を作成する経路誘導設定部76と、車両状態検出部40から出力される挙動信号に基づいて車両の予測走行軌跡の情報を作成する予測走行軌跡算定部73と、目標走行経路を目標走行可能領域111として表示画面に表示する第1の表示制御手段(74)と、予測走行軌跡112を表示画面に表示する第2の表示制御手段(74)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用運転支援装置に関し、特に、目標走行経路と前方走行予定コースをヘッドアップ・ディスプレイに重畳して表示し2つの走行情報の認識を容易にした運転用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドアップ型ディスプレイを含む車載用表示装置が知られている(特許文献1)。この車載用表示装置では、車速、加減速度、舵角、ヨーレート等の車両の走行状態を示す各種の情報がセンサで検出され、コンピュータで処理され、車両の予測走行軌跡が算定される。算定された予測走行軌跡は、投影器からスクリーンに投影され、表示される。このスクリーンとフロントウィンドウを通して車両の前方を見ている運転者には、車両の前方の景色とスクリーンから反射されて視野に入ってくる予測走行軌跡とが重畳されて視認される。この例では、現在の運転状態を保持することにより、道路に沿って走行可能であることが予想される。
【特許文献1】特公平5−81449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された車載用表示装置によれば、運転者は、自車の予測走行軌跡を前方の景色と重畳して知ることができる。このため、自車の運転状況が道路のカーブ等の状況に対して適切であるかどうかを知ることができる。しかしながら、目標走行経路に応じた走行コースや道路上の目標走行位置は、運転者自身が周囲の情報から勘案して運転する必要があり、特に運転経験の少ない運転者にとって操縦負担は非常に大きなものとなっている。
【0004】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、表示装置の表示画面で目標走行経路と実際の前方の走行予定コースを重畳して表示し両方の走行情報の関係の認知を容易化し、運転者の経験に基づく予測操舵入力を不要とし、運転者に操作簡単な操縦方法を与えることができる車両用運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両用運転支援装置は、上記目的を達成するために、次のように構成される。
【0006】
第1の車両用運転支援装置(請求項1に対応)は、表示画面に車両の走行情報を表示する表示装置と、車両の走行に適した目標走行経路の情報を作成する目標走行経路作成手段と、車両の挙動検出手段から出力される挙動信号に基づいて車両の予測走行軌跡の情報を作成する予測走行軌跡作成手段と、目標走行経路作成手段で作成された目標走行経路を目標走行可能領域として表示画面に表示する第1の表示制御手段と、予測走行軌跡作成手段で作成された予測走行軌跡を表示画面に表示する第2の表示制御手段とを備える。
【0007】
上記の車両用運転支援装置では、走行情報を表示する表示装置の画面に目標走行可能領域(目標走行経路の一表示態様)と車両前方の予測走行軌跡(前方走行予定コース)とを重畳して同時に表示するようにし、2つの走行情報を同時に重畳して示すことで運転者にとって自車の走行状態の認知を容易にでき、操縦負担を軽減することが可能となる。
【0008】
第2の車両用運転支援装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、表示装置はヘッドアップ・ディスプレイであり、このヘッドアップ・ディスプレイに目標走行可能領域と予測走行軌跡を重畳して表示させることで特徴づけられる。
【0009】
第3の車両用運転支援装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、目標走行可能領域と予測走行軌跡は、ヘッドアップ・ディスプレイ上で、運転者の前方注視点付近に表示されることで特徴づけられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば次の効果を奏する。
第1に、ヘッドアップ・ディスプレイ装置等の表示スクリーン上で、目標走行経路が目標走行可能領域として、予測走行軌跡と共に、車両前方の景色と一緒に重畳して表示されるため、運転者は経路を知るだけではなく、予測走行軌跡に沿った運転を行えばよく、進路変更や曲がるタイミングの判断といった煩雑な施行の必要が解消し、運転が容易になる。さらに、自車の前方進行道路における予測走行軌跡が目標走行コースと同様に前方景色に重畳して教示されるため、前方予測走行位置の通過時の目標走行コースとのズレを前もって知ることができ、現在の運転状況の是非や、修正操舵の必要性と、その操舵量を容易に知ることができる。
第2に、運転者の前方に映し出される目標走行経路(目標走行可能領域)と予測走行軌跡とを合わせる運転方法を可能にするため、今までの運転に必要であった経験に基づく予測操舵が不要となり、初心者のような運転の経験が少ない不慣れな運転者にとって車両の操縦が容易になり、運転負担を非常に軽減することができる。
第3に、運転者が運転時に目標として見る前方注視点の位置に目標走行経路と予測走行奇跡を重畳して表示するようにしたため、運転者に正確なかつ操縦しやすい情報を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係る車両用運転支援装置の使用態様を含む全体の装置構成を示し、図2は車両用運転支援装置の制御システムのブロック図を示す。
【0013】
図1に示すごとく、本実施形態に係る車両用運転支援装置10は自動車等の車両1に付加的に装備されている。図1において、運転者11は、車両1の運転席シート12に搭乗し、車両1のフロントウィンドウ13を通して車両1の前方を見ながら運転をしている状態にある。フロントウィンドウ13の部位13Aが表示画面になっている。破線で示したブロック14は、フロントウィンドウ13の部位13Aを表示画面として、ここに必要な走行情報に係る映像を表示するヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)装置を示す。ヘッドアップ・ディスプレイ装置14は、表示コントローラ15と映像投射器16と反射ミラー17,18と集光レンズ19を備えて成る。映像投射器16から投影された走行情報に係る映像は、反射ミラー17,18と集光レンズ19を経由してフロントウィンドウ13の部位13Aに表示される。
【0014】
ハンドル21を操作して運転中の運転者11は、フロントウィンドウ13の部位13Aを通して車両1の進行方向の前方を見ている。図1で、22は結像位置であり、フロントウィンドウ13の部位13Aに表示される映像、すなわちヘッドアップ・ディスプレイ上の映像は、運転者11の前方注視点付近に表示されることになる。さらに23は、車両1の前方に設定される仮想的な結像位置である。フロントウィンドウ13の部位13Aに表示された映像は、運転者11にとっては、仮想的な結像位置23によって、車両1の進行方向の前方の風景と重なって表示されることになる。
【0015】
フロントウィンドウ13の部位13Aに表示される映像または画像は、図3以降に示されるように、少なくとも、目標走行可能領域を表す像と、予測走行軌跡(走行予定コース)を表す像である。
【0016】
車両1に装備される車両用運転支援装置10は、基本的構成として、走行経路案内情報を作成するためのナビゲーションシステム30、車両1の走行に係る挙動状態を検出するための車両状態検出部40、自車位置情報検出部50、自車の周囲の状況や脅威等を検出する周囲状況検出部60、これらの検出部からの検出信号を入力し必要な情報処理を行って全体の制御を受け持つ運転支援制御ユニット70を備えている。車両状態検出部40は、車速センサ41と横加速度(横G)センサ42と前後加速度(前後G)センサ43等を含む。また自車位置情報検出部50は、GPSアンテナ51とビーコンアンテナ52と電話アンテナ53等を含む。さらに周囲状況検出部60は、CCDカメラ61とレーザーレーダ62とミリ波レーダ63等を含んでいる。
【0017】
運転支援制御ユニット70で作られた走行情報等は、上記表示コントローラ15に提供され、ヘッドアップ・ディスプレイ装置14の機能によりフロントウィンドウ13の部位13Aに表示される。
【0018】
車両用運転支援装置10は、さらに、運転者状態検出部80と警報発生部90を備えている。運転者状態検出部80は、シート前後位置センサ81とシート荷重センサ82と視点検出センサ83等を含み、運転者11に対して適正な表示を提供することを可能にする。運転者状態検出部80による検出信号は運転支援制御ユニット70に入力される。警報発生部90はスピーカ91とメータディスプレイ92等を含み、危険な状況時に運転者11に対して警報を与える。運転支援制御ユニット70は、警報発生部90に対して警報信号を供給する。
【0019】
図2に従って、運転支援制御ユニット70の入力部(検出部等)と出力部を説明すると共に、運転支援制御ユニット70の内部構成を詳述する。
【0020】
運転支援制御ユニット70は、入力部として、上記のナビゲーションシステム30と車両状態検出部40と自車位置情報検出部50と周囲状況検出部60と運転者状態検出部80を備える。車両状態検出部40は、上記の車速センサ41と横加速度センサ42と前後加速度センサ43の他に、ヨー角速度センサ44、操舵角センサ45、操舵トルクセンサ46、ブレーキ踏力センサ47、アクセル開度センサ48、方向指示器スイッチ49を含んでいる。周囲状況検出部60は、上記のCCDカメラ61とレーザーレーダ62とミリ波レーダ63の他に、日射センサ64と温度センサ65を含んでいる。運転者状態検出部80は、上記のシート前後位置センサ81とシート荷重センサ82と視点検出センサ83の他に、表示位置設定スイッチ84と表示輝度設定スイッチ85を含んでいる。
【0021】
運転支援制御ユニット70は、出力部として、上記のヘッドアップ・ディスプレイ装置14と警報発生部90を備える。警報発生部90は、上記のスピーカ91とメータディスプレイ92の他に、ステアリング93、ブレーキ94、アクセル95を含んでいる。
【0022】
運転支援制御ユニット70の内部構成を説明する。車両状態検出部40の各センサ等からの検出信号等は走行状態検出部71に入力される。周囲状況検出部60の各要素からの信号は周囲状況検出入力部72に入力される。
【0023】
走行状態検出部71で取り込まれた、車両状態検出部40から各センサ等からの検出信号等は、さらに予測走行軌跡算定部73に入力される。予測走行軌跡算定部73は、各センサ等からの検出信号等の信号値に基づいて車両1の将来の予測走行位置を時々刻々算出する。予測走行軌跡算定部73で算定された予測走行位置に係る信号は表示位置設定部74に入力される。車両1の将来の「予測走行位置」は、後述するごとく表示画面上で「予測走行軌跡」という表現形式で表示される。
【0024】
また走行状態検出部71で取り込まれた、車両状態検出部40から各センサ等からの検出信号等は、表示位置設定部74にも直接に入力されている。
【0025】
周囲状態検出入力部72で取り込まれた、周囲状況検出部60の各要素からの信号は、走行可能領域算定部75および表示位置設定部74のそれぞれに入力される。走行可能領域算定部75は、周囲状況に係る情報に基づいて走行可能領域を算定する。走行可能領域算定部75で算定された走行可能領域に係る信号は経路誘導設定部76に入力される。
【0026】
経路誘導設定部76には、周囲状況検出部60からの検出信号を基礎にして作られる走行可能領域に係る信号の他に、ナビゲーションシステム30からのナビゲーション情報(予め入力された目的地や経路誘導案内等の情報)に係る信号、自車位置情報検出部50の各要素からの検出信号(自車位置情報等)が入力されている。経路誘導設定部76は、例えば、当該車両1を目的地まで誘導するための経路をナビゲーション情報と自車位置情報に基づいて目標走行経路として設定したり、あるいは、周囲状況検出部60からの検出信号を基礎にして作られる走行可能領域に係る信号に基づいて走行可能な経路を目標走行経路として設定する。すなわち経路誘導設定部76は、車両1を運転する運転者11に対して、道路上、車両1の走行に適した目標走行経路を設定する。経路誘導設定部75で設定された目標走行経路の情報に係る信号は表示位置設定部74に入力される。
【0027】
さらに表示位置設定部74には、運転者状態検出部80から各要素の検出信号等が入力されている。
【0028】
運転支援制御ユニット70は、さらに、重畳表示制御部77、危険状況判定部78、警報信号発生部79を有している。
【0029】
当該車両1の上記の目標走行経路は、経路誘導設定部76によって、前述のごとく例えばナビゲーションシステム30からのナビゲーション情報と自車位置情報検出部5からの自車位置情報等に基づいて設定される。その際に、周囲状況検出入力部72および走行可能領域算定部75によって、周囲状況情報から障害物や脅威を避けた安全な走行可能領域も算定し、経路誘導設定部76における目標走行経路の設定に反映させることもできる。なお「目標走行経路」の設定は、後述するごとく表示画面上で「目標走行可能領域」という表現形式で設定される。
【0030】
予測走行軌跡算定部73で算定された予測走行軌跡のデータと、経路誘導設定部76で設定された目標走行経路(目標走行可能領域)のデータは、表示位置設定部74に入力される。表示位置設定部74は、車速の違い、旋回、直進等の走行状態に応じて、表示位置を設定する。表示位置設定部74で設定された予測走行軌跡と目標走行可能領域の表示位置のデータは、重畳表示制御部77によって表示信号に変換され、ヘッドアップ・ディスプレイ装置14に送られ、ヘッドアップ・ディスプレイ装置14の表示部位13Aに表示される。
【0031】
車両1の走行状態における挙動を検出する車両状態検出部40の各センサからの検出信号は、車両1の予測走行軌跡をできるだけ正確に算定するために用いられる。図2等に示した検出信号の例は車両1の運動を計算するための主な例を挙げたが、この他に、タイヤのスリップ角、車体のスリップ角、各車輪の垂直荷重、路面μ等を検出することで、さらに、精度の高い予測走行軌跡を算出することが可能となる。
【0032】
また自車位置情報検出部50の各要素についても、GPSによる位置情報にも限らず、VICSやETC等のインフラからの周囲の道路情報を取り込んだり、モバイルやラジオ等から新しい地図やニュース等の情報を得ることによってさらに精度の高い走行経路を設定することができる。
【0033】
また上記構成では、周囲状況検出部60のCCDカメラ61等の要素からの周囲状況情報から安全な走行可能領域を算定し、目標走行経路の設定に反映させるようにしたが、それと同期させ、危険状況判定部78によって当該周囲状況情報を用いて障害物や脅威の危険度を判定し、危険と判断した場合には、当該危険信号は、警報信号発生部79を経由して警報発生部90の各要素を駆動して運転者11に対して警報を発したり、重畳表示制御部77を経由してヘッドアップ・ディスプレイ装置14に供給される。
【0034】
図3に、ヘッドアップ・ディスプレイ装置14のフロントウィンドウ13の部位13Aに表示される映像の第1の例を示す。101は2車線の道路、102は複数の前方車両、103は木々、104は境界フェンスである。これらの道路101、前方車両102、木々103、境界フェンス104は、フロントウィンドウ13を通して車両の進行方向の前方の風景または景色として運転者11の視界に入るものである。
【0035】
フロントウィンドウ13の部位13Aの領域には、さらに、水平バー状に目標走行可能領域111が示されると共に、予測走行軌跡112が複数の三角マークの線状的な配列表現の形式で示されている。また、目標走行可能領域111と予測走行軌跡112の交差する部分は、予測走行位置113としての例えば丸形状を基本とした特殊なマークが描かれている。予測走行位置113は、輝度を高めて表示される。フロントウィンドウ13の部位13Aにおいて、目標走行可能領域111と予測走行軌跡112は、車両1の前方の景色と重畳させて表示される。目標走行可能領域111と予測走行軌跡112の両方の像の表示は、共に、運転者11が運転する際に注視していると一般的に言われる車速に応じた前方注視距離の位置近辺に表示される。図3の例では、目標走行可能領域111は帯形状を有する水平バー状に表現され、かつ推奨走行領域111aの部分は色を濃くし、安全走行が可能な領域111bの部分は色を少し薄くして表現している。
【0036】
フロントウィンドウ13の部位13Aに示される予測走行軌跡112と予測走行位置113の表示位置は、運転者11がハンドル21を左右に操舵操作するとき、それに応じて矢印114のごとく変化する。
【0037】
図4は、図3と同様な部位13Aにおける表示画面において、ハンドル21を左に少しきって車両1の走行車線を左側の車線に変更する場合の映像の第2の例を示している。図3に示された要素と同一の要素には同一の符号を付している。図4の表示例において、目標走行可能領域111に変化はないが、走行車線を変更するためにハンドル21を左方向に少し操舵したため、車両状態検出部40で検出された車両1の挙動に基づいて予測走行軌跡112および予測走行位置113が左側に次第に移っていく。すなわち、運転者11がハンドル21を操作すると、その操作に応じて予測走行位置113を移動し、将来の予測走行軌跡112を運転者11に教示する。
【0038】
上記の目標走行可能領域111、予測走行軌跡112、予測走行位置113等のマークは色を変えて表現したり、線や矢印等の他のマークを用いてもよい。
【0039】
図5は、ヘッドアップ・ディスプレイ装置14のフロントウィンドウ13の部位13Aに表示される映像の第3の例を示す。201は1車線の道路である。道路201とその両側の景色は、フロントウィンドウ13を通して車両の進行方向の前方の景色として運転者11の視界に入る。図5で、21は運転席のハンドルであり、111は目標走行可能領域、112は予測走行軌跡、113は予測走行位置である。第3の映像例では、予測走行位置113は道路201による走行予定コースとの関係で示されている。
【0040】
また上記のごとき危険状況判定部78で得られた障害物等の危険情報は重畳表示制御部77を経由してヘッドアップ・ディスプレイ装置14に供給されるが、図3〜図5等に示される表示部位13Aにおいて、目標走行可能領域111等の表示マークで、色を赤に変えたり、フラッシングさせたりすることによって強調し、運転者11に危険を知らしめる。さらにメータディスプレイ92への表示やスピーカ91からの音声の警報を発することも可能である。さらにステアリング93、ブレーキ94等の運転者11が操作している部位を用いて、振動を与えたり、危険な状況を回避する方向にシステムを作動させたりして、警報や回避を行うこともできる。
【0041】
図6は、ヘッドアップ・ディスプレイ装置14のフロントウィンドウ13の部位13Aに表示される映像の第4の例を示す。301は3車線の直線的な道路である。道路301とその両側の景色は、フロントウィンドウ13を通して車両1の進行方向の前方の景色として運転者11の視界に入る。図6で、21は運転席のハンドルであり、111Aは第1の目標走行可能領域、111Bは第2の目標走行可能領域、113は予測走行位置である。第1の目標走行可能領域111Aは、車両1が低速で走行する場合の目標走行可能領域である。第2の目標走行可能領域111Bは、車両1が高速で走行する場合の目標走行可能領域である。第4の映像例では、車両1の車速に応じて目標走行可能領域の表示位置を、大きさを変えながら、車両の前方位置において手前側または遠方側に移動させて表示させている。このように、目標走行可能領域は車速に応じて表示位置を変化させることができる。
【0042】
図7は、ヘッドアップ・ディスプレイ装置14のフロントウィンドウ13の部位13Aに表示される映像の第5の例を示す。401は2車線の直線的な道路であり、402は左折を可能にする道路である。運転者11は、ハンドル21を左にきって旋回操作を行い、道路401から道路402へ進路を変えようとしている。道路401,402とその両側の景色は、フロントウィンドウ13を通して車両1の進行方向の前方の景色として運転者11の視界に入る。図7で、運転者11がハンドル21を左にきって道路401から道路402へ左折しようとすると、運転者11の視点は左折方向に向くため、それに応じて目標走行可能領域111、予測走行軌跡112、予測走行位置113は表示位置を左側に飼えて運転者11の視点に合わせる。右折する場合も同様である。
【0043】
ヘッドアップ・ディスプレイ装置14に基づくフロントウィンドウ13の部位13Aにおける表示の内容、すなわち、目標走行可能領域111、予測走行軌跡112、予測走行位置113は、次のように変更することができる。
【0044】
通常の表示では、周囲状況検出部60からの信号に基づく走行可能領域算定部75で設定された目標走行可能領域をその安全度合いに応じて形状、色、輝度等を変えて表示し、運転者11の目標走行経路を分かりやすく教示することが好ましい。
【0045】
また周囲状況検出入力部72は、夜間(ライトスイッチ、日射センサ)や、雨天(ワイパースイッチ、雨滴検知センサ)や、降雪(画像、温度)等の外界の状況を検出し、その情報を表示位置設定部74に送る。表示位置設定部74は、それらの情報に基づき、各視界状況に応じて運転者11が知覚しやすい表示色や輝度等を変化させて表示を行うことが好ましい。
【0046】
さらに、運転者11によって異なるシートポジション位置や、視点の高さ、さらに前方注視点の位置等を、運転者状態検出部80のシートポジションセンサや視点位置によって検出し、表示位置設定部74に入力される。表示位置設定部74では、それらの情報に基づいて前方注視点位置を予測し、その運転者11に応じた前方位置に表示を行う。運転者11の癖や好みによって前方表示位置や輝度等を変更したい場合には、各設定スイッチにて調整できるようにすることも可能である。
【0047】
上記の構成を有する車両用運転支援装置10によれば、次のような作用効果を生じ、車両1の操縦が容易になる。
【0048】
現在の操舵系の構造では、車両1の進路とハンドル21のハンドル操舵角の関係について、車両の横方向の位置はハンドル操舵角の二重積分に対応するという特性を有している。従って、現在の操舵系によれば、人が運転を行う際、二重積分による車両の横方向の位置の変化を予想してハンドル操舵角の入力を行うため、運転者にとっては難しいものとなっている。運転教習所では、これを経験することによって体得することを目的としているが、実際の運転では車両の速度や運動状態や路面状況等によって車両の応答が様々に変化するため、経験の少ない不慣れな運転者や予想するのが不得手な運転者にとって車両を目標の横位置に操縦することが難しい。
【0049】
本実施形態に係る車両用運転支援装置10によれば、ハンドル21のハンドル操舵角に対して二重積分を運転者11に代わってコンピュータシステムが算出し、将来の予想到達位置を運転者11に教示することになる。そのため、走行の目標位置に対して、ハンドル操舵角の過不足が定量的に把握することができるため、運転に不慣れな運転者にとって操縦が非常に容易になる。
【0050】
さらに、従来の機械的構造を有する操舵系のみならず、ステアバイワイヤによって構成される操縦桿や操作コントローラ等による操縦系においても、操縦者(運転者)は、入力に対する車両の横位置予測を行う必要があるため、入力量の低減を企図したSBWシステムではその予想とトラッキングがさらに難しくなる。
【0051】
これに対して本実施形態に係る車両用運転支援装置10によれば、目標に対するトラッキングが前方視界でできるため、これらの問題が解消され、SBWシステムによる効果を維持しつつ、操縦負担を大幅に軽減することができる。
【0052】
さらに方位角フィードバック方式の操舵系では、人が運転を行う際の2つの積分のうちの1つの積分を操舵系の中で行うことにより操縦を容易化したが、上記車両用運転支援装置10をさらに適用することにより残りの積分も教示によって行えるため、さらに操縦を容易に行うことができる。
【0053】
以上の実施形態で説明された構成については本発明が理解・実施できる程度に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、自動車等の車両の操舵系に適用して運転者の操縦負担を軽減し、車両の操縦で簡単な操縦方法を実現するのに利用される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用運転支援装置の全体的な構成を示す構成図である。
【図2】本実施形態に係る車両用運転支援装置の運転支援制御ユニットの内部構成と、その入力部および出力部を示すブロック構成図である。
【図3】車両用運転支援装置におけるヘッドアップ・ディスプレイ装置のフロントウィンドウに表示される映像の第1の例を示す図である。
【図4】車両用運転支援装置におけるヘッドアップ・ディスプレイ装置のフロントウィンドウに表示される映像の第2の例を示す図である。
【図5】車両用運転支援装置におけるヘッドアップ・ディスプレイ装置のフロントウィンドウに表示される映像の第3の例を示す図である。
【図6】車両用運転支援装置におけるヘッドアップ・ディスプレイ装置のフロントウィンドウに表示される映像の第4の例を示す図である。
【図7】車両用運転支援装置におけるヘッドアップ・ディスプレイ装置のフロントウィンドウに表示される映像の第5の例を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
10 車両用運転支援装置
11 運転者
13 フロントウィンドウ
14 ヘッドアップ・ディスプレイ装置
30 ナビゲーションシステム
40 車両状態検出部
50 自車位置情報検出部
60 周囲状況検出部
70 運転支援制御ユニット
80 運転者状態検出部
90 警報発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面に車両の走行情報を表示する表示装置と、
前記車両の走行に適した目標走行経路の情報を作成する目標走行経路作成手段と、
前記車両の挙動検出手段から出力される挙動信号に基づいて前記車両の予測走行軌跡の情報を作成する予測走行軌跡作成手段と、
前記目標経走行路作成手段で作成された前記目標走行経路を目標走行可能領域として前記表示画面に表示する第1の表示制御手段と、
前記予測走行軌跡作成手段で作成された前記予測走行軌跡を前記表示画面に表示する第2の表示制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
前記表示装置はヘッドアップ・ディスプレイであり、このヘッドアップ・ディスプレイに前記目標走行可能領域と前記予測走行軌跡を重畳して表示させることを特徴とする請求項1記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
前記目標走行可能領域と前記予測走行軌跡は、前記ヘッドアップ・ディスプレイ上で、運転者の前方注視点付近に表示されることを特徴とする請求項2記載の車両用運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−272350(P2007−272350A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94529(P2006−94529)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】