説明

車両用防音材

【課題】 従来と同等の防音性を有する簡易な構造の防音材を提供する。
【解決手段】 注型型内に繊維系吸音層2を敷設し、その上面側に発泡樹脂原料を注入して発泡させることにより、前記繊維系吸音層2の繊維内に発泡樹脂原料を含浸させてこれらを複合させることにより発泡樹脂系吸音層2と繊維系吸音層1の界面において遮音層3を形成し、発泡樹脂系吸音層1と、繊維系吸音層2を積層させるとともに、これら吸音層1,2の界面に前記発泡樹脂系吸音層の樹脂と繊維系吸音層の繊維を複合させた遮音層3を介装させた防音材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの乗り物用、弱電機器用等の防音材として用いる防音材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防音材としては、ウレタンフォーム等からなる第1の吸音層と、同じくウレタンフォーム等からなる第2の吸音層を積層させるとともに、これら吸音層の界面に熱可塑性樹脂フィルム等からなる遮音層を介装させてなる防音材が、例えば、特許文献1に開示されている。
このような構成をとる防音材は、例えば、車両用防音材として用いた場合、第1の吸音層によって、車室外の騒音を吸音するとともに、遮音層によって車室外の騒音を遮音することができ、また、第2の吸音層で車室内の騒音を吸音し、静かな車室を実現できるものである。
しかしながら、3層構造をとるため、製法が複雑であるという不都合を有していた。
【0003】
【特許文献1】特許第3718112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、前記従来と同等の防音性を有する防音材を簡易な構造で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明者等は鋭意検討の結果、吸音層をポリウレタンフォーム等の発泡樹脂系吸音層と、フェルト等の繊維系吸音層で構成し、これら吸音層の界面において、前記発泡樹脂と繊維を複合させた遮音層を形成することにより、前記課題を解決できるという知見を得た。
本発明の防音材はかかる知見に基づきなされたもので、請求項1に記載の通り、発泡樹脂系吸音層と、繊維系吸音層を積層させるとともに、これら吸音層の界面に前記発泡樹脂系吸音層の樹脂と繊維系吸音層の繊維を複合させた遮音層を介装させたことを特徴とする。
また、請求項2記載の防音材は、請求項1記載の防音材において、前記発泡樹脂は発泡速度RTが15〜25秒のものであることを特徴とする。
また、請求項3記載の防音材は、請求項1または2記載の防音材において、前記発泡樹脂はポリウレタンであることを特徴とする。
また、請求項4記載の防音材は、請求項1乃至3の何れかに記載の防音材において、前記繊維系吸音層はフェルトであることを特徴とする。
また、請求項5記載の防音材は、請求項4記載の防音材において、前記フェルトは圧縮プレス成形したフェルトであることを特徴とする。
また、請求項6記載の防音材は、請求項1乃至5の何れかに記載の防音材において、前記防音材は車両室内用防音材であることを特徴とする。
また、本発明の防音材の製造方法は、請求項7記載の通り、発泡樹脂系吸音層と、繊維系吸音層を積層させるとともに、これら吸音層の界面に前記発泡樹脂系吸音層の樹脂と繊維系吸音層の繊維を複合させた遮音層を介装させた防音材の製造方法であって、注型型内に繊維系吸音層を敷設し、その上面側に発泡樹脂原料を注入して発泡させることにより、前記繊維系吸音層の繊維内に発泡樹脂原料を含浸させてこれらを複合させることにより発泡樹脂系吸音層と繊維系吸音層の界面において遮音層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡易な構造、製法で吸音性、遮音性に優れた防音材が得られる。特に、車両室内用防音材として用いた場合、ポリウレタン等の発泡樹脂からなる吸音層によって、車室外の騒音を吸音するとともに、ポリウレタン等の発泡樹脂とフェルト等の繊維を複合させた遮音層によって車室外の騒音を遮音することができ、また、フェルト等の繊維からなる吸音層で車室内の騒音を吸音し、静かな車室を実現できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明防音材の模式図である。図中10は、防音材を示し、発泡ポリウレタン等の発泡樹脂からなる吸音層1にフェルト等の繊維からなる吸音層2が積層され、これら吸音層1,2の界面に、前記吸音層1のポリウレタン等の発泡樹脂と、前記吸音層のフェルト等の繊維を複合させた遮音層3が形成されている。この遮音層3は具体的にはフェルト等の繊維内にウレタン樹脂等の発泡樹脂が含浸された状態で、発泡樹脂が硬化して形成されるものである。
【0008】
前記吸音層1を形成する発泡樹脂としては、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等が使用できる。
特に、成型性の観点からポリウレタンの使用が好ましく、ポリウレタンの原料となるポリオール化合物としては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、これらの誘導体などのポリエーテルポリオール、縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリエステルポリオールなどが挙げられる。また、ポリウレタンの原料となるイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフタリンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシナネート(IPDI)、キシリレンジイソシナネート(XDI)等のポリイソシアネートが挙げられる。尚、発泡剤としては、水が挙げられる。また、発泡に際しては、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル1,3−ブタンジアミンなどのテトラアルキルジアミン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキソエート)などの有機錫化合物などの触媒を用いることが好ましい。
尚、前記遮音層3を形成する観点からは、発泡速度の速い発泡樹脂の使用が好ましい。例えば、ポリウレタンを例にとれば、RT(ライズタイム)が15〜25秒程度のウレタン樹脂の使用が好ましい。
【0009】
前記吸音層2を形成するフェルトとしては、特に制限はないが、低融点ポリエステル、細綿ポリエステル、ポリエステル、ウール、アクリル、コットン等の繊維類を単独或いは複合して反毛材としてバインダー繊維でフェルト化した反毛フェルト等が使用できる。
尚、前記遮音層を形成する観点からは、圧縮プレス成形したフェルトの使用が好ましい。
圧縮したフェルトの密度は150〜500kg/mの範囲が好ましく、これを3mm程度に圧縮し、面密度を0.5〜1.5kg/mの範囲とするのが好ましい。
【0010】
前記遮音層3は、0.05〜10mm程度の厚みに形成するのが好ましい。0.05mm未満であると遮音効果が十分でなく、10mmを超えると、重量が過大となるからである。
【0011】
前記遮音層3を形成するには、例えば、注型型内に圧縮フェルトを敷設し、その上面側に発泡ウレタン原料を注入して発泡させることにより、これらウレタンフォームとフェルトの界面において、前記フェルトの繊維内に発泡ウレタン原料を含浸させてこれらを複合させることにより簡単に形成できる。
【実施例】
【0012】
次に、本発明の実施例を比較例を参照して説明する。
(実施例1)
低融点ポリエステル25重量%、ポリエステル32重量%、ウール32重量%、その他、アクリル、コットン11重量%からなる厚み15mmの反毛フェルト(1000g/m)を40〜50℃に温調されている注型型にセット後、ポリオール化合物として、ポリエーテルポリオール、イソシアネート化合物として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)からなり、反応速度RT(sec)20秒の2液発泡ポリウレタンを注型型内に流し込み、約150秒放置して、ウレタンを発泡させ、防音材を得た。その結果、発泡ポリウレタンは10mmに発泡し、15mmのフェルト内には0.01〜10mmのなだらかな山形の遮音層が形成されていた。
【0013】
(実施例2)
低融点ポリエステル25重量%、ポリエステル32重量%、ウール32重量%、その他、アクリル、コットン11重量%からなる厚み15mmの反毛フェルト(1000g/m)を熱風オーブンで195℃、60秒加熱し、その後、このフェルトを金型内に置いて、200tプレス機で60秒間、冷プレス(10〜15℃)し、金型内において厚み3mmの圧縮フェルトを得た。この圧縮フェルトを40〜50℃に温調されている注型型にセット後、ポリオール化合物として、ポリエーテルポリオール、イソシアネート化合物として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)からなり、反応速度RT(sec)20秒の2液発泡ポリウレタンを注型型内に流し込み、約150秒放置して、ウレタンを発泡させ、防音材を得た。その結果、発泡ポリウレタンは22mmに発泡し、3mmの圧縮フェルトのうち0.8mmが遮音層に形成されていた。
【0014】
(実施例3)
前記ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をトリレンジイソシアネート(TDI)に代えた以外は実施例2と同様にして防音材を得た。その結果、発泡ポリウレタンは22mmに発泡し、3mmの圧縮フェルトのうち0.8mmが遮音層に形成されていた。
【0015】
(比較例1)
ポリウレタンの発泡に際し、圧縮フェルトとポリウレタンの間に厚み50μmのポリオレフィン樹脂フィルムを介在させたこと以外は、実施例2と同様にして防音材を得た。
【0016】
次に、前記実施例1乃至3並びに比較例1の各防音材の吸音性能と、遮音性能とを確認した。その結果を図2乃至図4に示す。
尚、吸音性能は次のようにして測定、評価した。即ち、JIS A1409に基づいた残響室法吸音率の測定により評価した。ただし、残響室の容積は9mで、試料面積は1mである。
また、遮音性能は次のようにして測定、評価した。即ち、ポリウレタン層表面に向けて垂直に音を発射し、圧縮フェルト層表面から漏れ出た音を測定して求めた。ただし、0.8mm鋼板のみの測定結果を基準とし、防音材を鋼板に乗せた時の差分で評価した。
これらの測定結果を図2乃至図4に示した。
【0017】
図3及び図4からも明らかなように、実施例2及び3の防音材は、比較例1の防音材とほぼ同等の吸音性能、遮音性能が得られることが確認できた。即ち、本願発明の防音材は、簡単な構造で、また、それに付随して、簡単な製造方法で、吸音性能、遮音性能に優れた防音材を提供できることが確認された。
また、実施例1の非圧縮のフェルトの場合は、ウレタンを1箇所で注型したため、注型点での浸み込みが多くなることで含浸層が厚くなり、注型点から離れた箇所では浸み込みが少ないため含浸層が薄くなり、場所によって防音性能が異なってしまうため、設計通りの防音性能を得るためには圧縮プレス成形したフェルトを使用する方が望ましいことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明防音材の模式図
【図2】本発明実施例1の防音材と比較例1の防音材の防音特性を示す特性線図であり、(a)は吸音性能、(b)は遮音性能を示すものである。
【図3】本発明実施例2の防音材と比較例1の防音材の防音特性を示す特性線図であり、(a)は吸音性能、(b)は遮音性能を示すものである。
【図4】本発明実施例3の防音材と比較例1の防音材の防音特性を示す特性線図であり、(a)は吸音性能、(b)は遮音性能を示すものである。
【符号の説明】
【0019】
1 発泡樹脂系吸音層
2 繊維系吸音層
3 遮音層
10 防音材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂系吸音層と、繊維系吸音層を積層させるとともに、これら吸音層の界面に前記発泡樹脂系吸音層の樹脂と繊維系吸音層の繊維を複合させた遮音層を介装させたことを特徴とする防音材。
【請求項2】
前記発泡樹脂は発泡速度RTが15〜25秒のものであることを特徴とする請求項1記載の防音材。
【請求項3】
前記発泡樹脂はポリウレタンであることを特徴とする請求項1または2記載の防音材。
【請求項4】
前記繊維系吸音層はフェルトであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の防音材。
【請求項5】
前記フェルトは圧縮プレス成形したフェルトであることを特徴とする請求項4記載の防音材。
【請求項6】
前記防音材は車両室内用防音材であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の防音材。
【請求項7】
発泡樹脂系吸音層と、繊維系吸音層を積層させるとともに、これら吸音層の界面に前記発泡樹脂系吸音層の樹脂と繊維系吸音層の繊維を複合させた遮音層を介装させた防音材の製造方法であって、注型型内に繊維系吸音層を敷設し、その上面側に発泡樹脂原料を注入して発泡させることにより、前記繊維系吸音層の繊維内に発泡樹脂原料を含浸させてこれらを複合させることにより発泡樹脂系吸音層と繊維系吸音層の界面において遮音層を形成することを特徴とする防音材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−226675(P2009−226675A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73148(P2008−73148)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(598109187)アサヒゴム株式会社 (27)
【出願人】(391013106)株式会社パーカーコーポレーション (27)
【Fターム(参考)】