車両用駆動装置の制御装置
【課題】第1の駆動力源に連結された電気的変速機を含む回転部材で、ねじり共振が大きくなることを抑制可能な車両用駆動装置の制御装置を提供する。
【解決手段】第1の駆動力源から車輪に至る動力伝達経路に電気的変速機および回転状態切替機構が設けられており、回転状態切替機構は動力の伝達状態を制御するクラッチを有している車両用駆動装置の制御装置において、電気的変速機にトルクが伝達されて、電気的変速機を含む回転部材でねじり共振を判断するねじり共振判断手段(ステップS1,S2,S3,S4)と、ねじり共振が発生する場合は、クラッチのトルク容量を制御する共振抑制手段(ステップS5)とを備えている。
【解決手段】第1の駆動力源から車輪に至る動力伝達経路に電気的変速機および回転状態切替機構が設けられており、回転状態切替機構は動力の伝達状態を制御するクラッチを有している車両用駆動装置の制御装置において、電気的変速機にトルクが伝達されて、電気的変速機を含む回転部材でねじり共振を判断するねじり共振判断手段(ステップS1,S2,S3,S4)と、ねじり共振が発生する場合は、クラッチのトルク容量を制御する共振抑制手段(ステップS5)とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車輪に動力を伝達するために複数の駆動力源を有するハイブリッド車用の駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の駆動力源としてエンジンおよびモータ・ジェネレータを搭載したハイブリッド車が知られており、このようなハイブリッド車においては、エンジンおよびモータ・ジェネレータの持つ特性を生かしつつ、燃費を向上し、かつ、排気ガスの低減を図ることが可能である。このように、駆動力源としてエンジンおよびモータ・ジェネレータを有するハイブリッド車の一例が、特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載されているハイブリッド車は、駆動力源としてエンジンおよびアシストモータを有しており、このアシストモータの他にモータが設けられている。まず、エンジンの動力が駆動軸および車軸を経由して駆動輪に伝達されるように構成されている。そして、エンジンから駆動軸に至る経路にプラネタリギヤが設けられている。プラネタリギヤは、サンギヤおよびリングギヤと、サンギヤおよびリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持するキャリヤとを3つの回転要素として有しており、キャリヤがエンジン側に連結され、サンギヤがモータのロータに連結されている。プラネタリギヤのリングギヤにはリングギヤ軸が連結されているとともに、リングギヤ軸には、アシストモータのロータが連結されている。さらに、リングギヤ軸から駆動軸に至る経路には変速機構が設けられている。この変速機構は、サンギヤおよびリングギヤと、サンギヤおよびリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持するキャリヤとを3つの回転要素としており、変速機構のキャリヤが前記リングギヤ軸に連結され、変速機構のリングギヤが前記駆動軸に連結されている。また、変速機構のキャリヤと変速機構のリングギヤとを選択的に係合・解放させるクラッチと、変速機構のサンギヤの回転を防止するブレーキとが設けられている。
【0004】
そして、エンジントルクをプラネタリギヤのキャリヤに入力するとともに、モータを反力要素として機能させることで、リングギヤから出力されたトルクがリングギヤ軸に伝達される。ここで、反力要素となるモータにより回生制御(発電制御)がおこなわれ、発生した電力がバッテリに充電されるとともに、そのモータの回転速度を制御することにより、プラネタリギヤの回転速度と、プラネタリギヤのリングギヤの回転速度との比である変速比を、無段階に制御することが可能である。また、車両における要求駆動力に応じて、エンジン出力を制御し、目標エンジントルクに対する実エンジントルクの不足分のトルクを補うように、アシストモータを駆動することが可能である。そして、前記変速機構においては、エンジンの動力を駆動軸に伝達させるための結合状態としては、クラッチをオフにし、かつ、ブレーキをオンにした増速結合状態と、クラッチをオンにしてブレーキをオフにした直結状態とを選択的に切換可能である。なお、第1の駆動力源およびモータ・ジェネレータを駆動力源として備えたハイブリッド車は、特許文献2にも記載されている。
【特許文献1】特開2000−346187号公報
【特許文献2】特開2005−112019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されているハイブリッド車においては、プラネタリギヤを経由してエンジンにトルクが伝達される場合、例えば、モータのトルクによりエンジンを始動させる場合においては、プラネタリギヤにおいてねじり共振が大きくなる恐れがあった。
【0006】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、第1の駆動力源に連結された電気的変速機を含む動力伝達系で、ねじり共振が大きくなることを抑制可能な車両用駆動装置の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、第1の駆動力源から車輪に至る動力伝達経路に電気的変速機が設けられており、動力伝達経路における電気的変速機よりも下流側に、機械的に構成された回転状態切替機構が設けられており、前記回転状態切替機構は、動力伝達状態を制御し、かつ、係合・解放されるクラッチを有している車両用駆動装置の制御装置において、前記電気的変速機にトルクが伝達されて、その電気的変速機を含む動力伝達系でねじり共振が発生するか否かを判断するねじり共振判断手段と、前記ねじり共振が発生すると判断された場合は、前記クラッチのトルク容量を制御する共振抑制手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記回転状態切替機構は、入力回転部材と出力回転部材との間の変速比を変更可能な変速機を含み、前記クラッチの係合・解放を切り替えることにより、その変速比が制御される構成を有していることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の構成に加えて、前記電気的変速機は、第1の遊星歯車機構を備えており、この第1の遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1のサンギヤおよび第1のリングギヤと、第1のサンギヤおよび第1のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第1のキャリヤとを有しており、この第1のキャリヤが前記電気的変速機の入力要素であり、前記第1のリングギヤが前記電気的変速機の出力要素に相当し、前記第1のサンギヤが前記電気的変速機の反力要素に相当するとともに、前記変速機は、同軸上に配置された第2の遊星歯車機構および第3の遊星歯車機構を備えており、前記第2の遊星歯車機構は、第2のサンギヤおよび第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤおよび第2のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第2のキャリヤとを有しており、前記第3の遊星歯車機構は、第3のサンギヤおよび第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤおよび第3のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第3のキャリヤとを有しており、前記第1のリングギヤと前記第3のサンギヤとが連結され、前記第2のリングギヤと第3のキャリヤとが連結され、前記第2のキャリヤと前記第3のリングギヤとが連結されており、前記第3のキャリヤが前記変速機の出力回転部材に相当し、前記クラッチは、前記第1のリングギヤおよび前記第3のサンギヤを、前記第2のキャリヤに対して選択的に係合・解放させるクラッチと、前記第2のキャリヤおよび前記第3のリングギヤの回転・停止を選択的に切り換える第1のブレーキと、前記第2のサンギヤの回転・停止を選択的に切り換える第2のブレーキとを含み、前記共振抑制手段は、前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含むことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1の構成に加えて、前記回転状態切替機構は、前記クラッチの係合・解放を制御することにより、動力伝達状態が異なる複数のモードを選択的に切替可能なモード切替機構を含むことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4の構成に加えて、前記電気的変速機は、第1の遊星歯車機構を備えており、この第1の遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1のサンギヤおよび第1のリングギヤと、前記第1のサンギヤおよび第1のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第1のキャリヤとを有しており、この第1のキャリヤが前記入力要素に相当し、前記第1のリングギヤが前記出力要素に相当し、前記第1のサンギヤが前記反力要素に相当するとともに、前記モード切替機構は、同軸上に配置されたダブルピニオン型遊星歯車機構およびシングルピニオン型遊星歯車機構を備えており、前記ダブルピニオン型遊星歯車機構は、第2のサンギヤおよび第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤに噛合された第1のピニオンギヤと、前記第2のリングギヤおよび第1のピニオンギヤに噛合された第2のピニオンギヤと、前記第1のピニオンギヤおよび第2のピニオンギヤを保持する第2のキャリヤとを有しており、前記シングルピニオン型遊星歯車機構は、第3のサンギヤおよび第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤおよび第3のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第3のキャリヤとを有しており、この第3のリングギヤに前記車輪が動力伝達可能に連結されるとともに、前記第1のリングギヤと前記第3のサンギヤとが連結され、前記第2のリングギヤと第3のリングギヤとが連結され、前記第2のキャリヤと前記第3のキャリヤとが連結されており、前記クラッチは、前記第1のキャリヤを前記第3のキャリヤに対して選択的に係合・解放させる第1のクラッチと、前記第1のリングギヤおよび前記第3のサンギヤを、前記第2のサンギヤに対して選択的に係合・解放させる第2のクラッチと、前記第2のサンギヤの回転・固定を選択的に切り換える第1のブレーキと、前記第2のキャリヤおよび第3のキャリヤの回転・固定を選択的に切り換えるリバースブレーキとを含み、前記共振抑制手段は、前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含むことを特徴とするものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの構成に加えて、前記共振抑制手段は、第1の電動機のトルクで前記第1の駆動力源を始動させ、かつ、第2の電動機で反力を受けて前記第1の駆動力源を始動させる場合に、前記ねじり共振を抑制するように前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含み、前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する場合に、前記第2の電動機を停止させるか、または、前記第2の電動機の回転数と、前記変速機の入力回転数とを一致させるように、前記第2の電動機の回転数を制御する電動機制御手段を、更に有していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1ないし5のいずれかの構成に加えて、前記共振制御手段は、前記第1の駆動力源を始動させる場合に前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含み、前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する場合に、前記第1の駆動力源の回転数の上昇を抑制するように、前記第2の電動機の回転数を制御する電動機制御手段を、更に有していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの構成に加えて、前記変速機の入力側にトルク伝達可能に連結された第2の駆動力源が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記電気的変速機は、相互に差動回転可能な入力要素と反力要素と出力要素とを有しており、前記入力要素が前記第1の駆動力源に連結され、前記反力要素が第1の電動機に連結され、前記出力要素が第2の電動機および前記回転状態切替機構に連結されているとともに、前記第1の電動機の出力を制御することにより、前記電気的変速機における入力要素と出力要素との間の変速比を無段階に制御可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1ないし9のいずれかの発明の構成に加えて、前記共振抑制手段は、ねじり共振を抑制するように前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、第1の駆動力源のトルクが電気的変速機に伝達されて、第1の電動機で第1の駆動力源の反力が受け持たれ、電気的変速機から出力されたトルクが、回転状態切替機構を経由して車輪に伝達される。ここで、第1の電動機の出力を制御することにより、電気的変速機の変速比が制御される。また、回転状態切替機構のクラッチの係合・解放を制御することにより、動力伝達状態が制御される。そして、電気的変速機にトルクが伝達されて、その電気的変速機を含む動力伝達系でねじり共振が発生する判断された場合は、クラッチのトルク容量が制御されて、ねじり共振が発生することを抑制できる。
【0018】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、第1の駆動力源のトルクが電気的変速機に入力されるとともに、電気的変速機から出力されたトルクが、変速機を経由して車輪に伝達される。また、クラッチの係合・解放状態を変更することにより、変速機の変速比が変更される。また、請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる。
【0019】
請求項4の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、クラッチの係合・解放を制御することにより、動力伝達状態が異ならせる複数のモードを選択的に切替可能である。また、請求項5の発明においても、請求項4の発明と同様の効果を得られる。
【0020】
請求項6の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、ねじり共振を抑制するようにクラッチのトルク容量を制御する場合に、第2の電動機を停止させるか、または、第2の電動機の回転数と、変速機の入力回転数とを一致させるように、第2の電動機の回転数を制御することができる。したがって、第1の電動機の反力トルクを第2の電動機で受けて、第1の駆動力源を始動させる場合に、第1の駆動力源を始動させるトルクの低下抑制できる。また、第1の駆動力源の始動後にクラッチのトルク容量を高める場合に、第2の電動機の回転数と、変速機の入力回転数とが一致しているため、クラッチの係合によるショックの発生を抑制できる。
【0021】
請求項7の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、ねじり共振を抑制するようにクラッチのトルク容量を制御する場合に、第2の電動機の回転数を制御することにより、第1の駆動力源の回転数が過剰に上昇することを抑制できる。
【0022】
請求項8の発明によれば、請求項1ないし7のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、第2の駆動力源のトルクを、変速機を経由させて車輪に伝達することが可能である。
【0023】
請求項9の発明によれば、第1の電動機の出力を制御することにより、電気的変速機における入力要素と出力要素との間の変速比を無段階に制御することが可能である。
【0024】
請求項10の発明によれば、請求項1ないし9のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、ねじり共振を抑制するようにクラッチのトルク容量が制御される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
つぎに、この発明を図面を参照しながら具体的に説明する。図2は、この発明を用いることの可能な車両のパワートレーンの構成例を示す。図2に示された車両Veは、F・R(フロントエンジン・リヤドライブ;エンジン前置き後輪駆動)形式のハイブリッド車(以下、「車両」と略記する)である。図2に示された車両Veは、2種類の駆動力源を有している。2種類の駆動力源は、動力の発生原理が異なり、この実施例では、エンジン1およびモータ・ジェネレータ(MG2)2が駆動力源として搭載されているとともに、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2から出力された動力が、共に同じ車輪(後輪)3に伝達されるように動力伝達経路が構成されている。車両Veの駆動力源であるエンジン1は、燃料を燃焼させて、その熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置である。このエンジン1としては、内燃機関または外燃機関を用いることが可能であるが、この実施例では、エンジン1として内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いる場合について説明する。このエンジン1は、電子スロットルバルブ(図示せず)などの制御により、出力トルクを電気的に制御することが可能に構成されている。
【0026】
一方、他の駆動力源であるモータ・ジェネレータ2はケーシング4の内部に収納されており、モータ・ジェネレータ2は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを兼備している。このモータ・ジェネレータ2は、ロータ5およびステータ6を有しており、ステータ6はケーシング4に固定されている。また、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2から車輪3に至る動力伝達経路には変速機7が設けられているとともに、エンジン1から変速機7に至る動力伝達経路には、動力分配装置8が設けられている。図2に示された動力分配装置8は、シングルピニオン形式の遊星歯車機構を主体として構成されている。すなわち、動力分配装置8は、入力軸9と同軸上に配置されたサンギヤ10と、サンギヤ10と同軸上に配置されたリングギヤ11と、サンギヤ10およびリングギヤ11に噛合する複数のピニオンギヤ12を、自転かつ公転自在に保持したキャリヤ13とを有している。そして、キャリヤ13と入力軸9とが動力伝達可能に連結、具体的には一体回転するように連結されている。さらに、入力軸9とエンジン1のクランクシャフト1Aとが同軸上に配置されているとともに、クランクシャフト1Aと入力軸9とが、ダンパ機構、具体的にはトーショナルダンパ1Bを介して動力伝達可能に連結されている。トーショナルダンパ1Bはトルク変動を吸収し、かつ、振動を減衰する緩衝装置である。
【0027】
また、入力軸9の軸線方向において、エンジン1と動力分配装置8との間には、モータ・ジェネレータ14が配置されている。モータ・ジェネレータ14は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを兼備している。つまり、エンジン1とモータ・ジェネレータ2,14とでは、動力の発生原理が異なる。このモータ・ジェネレータ14は、ロータ15およびステータ16を有しており、ステータ16はケーシング4に固定されている。そして、ロータ15とサンギヤ10とが動力伝達可能に連結、具体的には一体回転するように連結されている。
【0028】
一方、前記変速機7は、入力回転数を出力回転数で除した値である変速比を変更可能に構成されており、変速機7は、同軸上に配置された2組のシングルピニオン型遊の星歯車機構17,18を有している。まず、遊星歯車機構17は、同軸上に配置されたサンギヤ19およびリングギヤ20と、サンギヤ19およびリングギヤ20に噛合されたピニオンギヤ21を、自転かつ公転可能に保持するキャリヤ22とを有している。一方、遊星歯車機構18は、同軸上に配置されたサンギヤ23およびリングギヤ24と、サンギヤ23およびリングギヤ24に噛合されたピニオンギヤ25を、自転かつ公転可能に保持するキャリヤ26とを有している。そして、遊星歯車機構17のキャリヤ22と、遊星歯車機構18のリングギヤ24とが一体回転するように連結され、遊星歯車機構18のキャリヤ26と、遊星歯車機構17のリングギヤ20とが一体回転するように連結されている。すなわち、変速機7は、いわゆるC−R・C−R結合式の変速機である。さらに、モータ・ジェネレータ2のロータ5が、リングギヤ11およびサンギヤ23に連結、より具体的には、一体回転するように連結されている。そして、キャリヤ26には出力回転部材27が連結、具体的には一体回転するように連結され、その出力回転部材27から車輪3に至る動力伝達経路には、デファレンシャル28が設けられている。
【0029】
つぎに、変速機7の変速比を制御するための機構について説明すると、前記キャリヤ22を、モータ・ジェネレータ2のロータ5およびリングギヤ11およびサンギヤ23に対して選択的に連結・解放させるクラッチC1が設けられている。また、キャリヤ22およびリングギヤ24の回転・停止を制御するブレーキB1が設けられており、サンギヤ19の回転・停止を制御するブレーキB2が設けられている。これらのクラッチC1およびブレーキB1,B2などのクラッチとしては、摩擦式クラッチまたは電磁式クラッチ、あるいは噛み合い式クラッチのいずれを用いてもよいが、この実施例では、摩擦式クラッチを用いているものとする。
【0030】
一方、モータ・ジェネレータ2との間で電力の授受をおこなうことの可能な蓄電装置29が設けられているとともに、モータ・ジェネレータ2と蓄電装置29との間の回路にはインバータ30が設けられている。また、モータ・ジェネレータ14との間で電力の授受をおこなうことの可能な蓄電装置31が設けられているとともに、モータ・ジェネレータ14と蓄電装置31との間の回路にはインバータ32が設けられている。これらの蓄電装置29,31としては、二次電池、具体的にはバッテリ、キャパシタなどを用いることが可能である。また、モータ・ジェネレータ2とモータ・ジェネレータ14との間で、蓄電装置29,31を経由することなく、直接電力の授受をおこなうことが可能となるように、電気回路が構成されている。さらにまた、クラッチC1およびブレーキB1,B2を制御するアクチュエータとして、油圧制御装置33が設けられている。この油圧制御装置33は、油圧回路およびソレノイドバルブなどを有する公知の構造を有している。
【0031】
一方、車両Veの全体を制御するコントローラとして電子制御装置34が設けられており、電子制御装置34には、シフトポジションセンサの信号、車速センサの信号、加速要求検知センサの信号、制動要求検知センサの信号、エンジン回転数センサの信号、蓄電装置29,31の充電量を検知するセンサの信号、モータ・ジェネレータ2,14の回転数を検知するセンサの信号、変速機7の入力回転数および出力回転数を検知するセンサの信号などが入力される。これに対して、電子制御装置34からは、エンジン1を制御する信号、インバータ30,32を介してモータ・ジェネレータ2,14を制御する信号、油圧制御装置33を介してクラッチC1およびブレーキB1,B2を制御する信号などが出力される。
【0032】
図2に示す車両Veにおいて、エンジン1が運転されて、エンジントルクが動力分配装置8のキャリヤ13に伝達されると、モータ・ジェネレータ14により反力トルクが受け持たれて、エンジントルクがリングギヤ11に伝達される。そのリングギヤ11に伝達されたトルクが、変速機7およびデファレンシャル28を経由して車輪3に伝達されて、駆動力が発生する。前記動力分配装置8においては、サンギヤ10とキャリヤ13とリングギヤ11との差動作用により、入力要素であるキャリヤ13と、出力要素であるリングギヤ11との間における変速比を制御することが可能である。具体的には、反力トルクを受け持つモータ・ジェネレータ14の出力を制御することにより、エンジン回転数を無段階に(連続的に)制御することが可能である。つまり、動力分配装置8は無段変速機としての機能を有している。ここで、モータ・ジェネレータ14の回転方向は正逆に切り換え可能であり、モータ・ジェネレータ14は力行制御または回生制御が実行される。なお、モータ・ジェネレータ14の回転数を零に制御する(停止させる)ことも可能である。
【0033】
さらに、動力分配装置8の変速比を制御する概念について説明すると、エンジン1の燃費を向上させることを目的として、エンジン1の運転状態と、動力分配装置8の変速比とを協調制御するものである。例えば、加速要求(アクセル開度)および車速に基づいて、車両Veにおける要求駆動力が求められる。これは、例えば予め用意したマップから求められる。その要求駆動力と車速とからエンジン1の要求出力が算出され、その要求出力を最小の燃費で出力する目標エンジン回転数が、マップを使用して求められる。そして、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、モータ・ジェネレータ14の出力(トルク×回転数)が制御される。この制御と並行して、実エンジン出力を目標エンジン出力に近づけるように、エンジン1の電子スロットルバルブの開度などが制御される。
【0034】
また、蓄電装置29の電力をモータ・ジェネレータ2に供給してモータ・ジェネレータ2を電動機として駆動させ、モータ・ジェネレータ2のトルクを、変速機7を経由させて車輪3に伝達する制御を実行可能である。つまり、車輪3にトルクを伝達して駆動力を発生させる場合、エンジン1またはモータ・ジェネレータ2の少なくとも一方のトルクを車輪3に伝達可能であり、いずれの動力源のトルクまたは両方の動力源のトルクを伝達するかが、電子制御装置34に入力される信号およびデータに基づいて判断される。これに対して、車両Veが惰力走行する場合は、車両Veの運動エネルギが変速機7および動力分配装置8を経由してエンジン1に伝達され、エンジンブレーキ力が発生する。また、車両Veの惰力走行時に発生する運動エネルギの一部をモータ・ジェネレータ2に伝達し、このモータ・ジェネレータ2で回生制動力を発生させ、発生した電力を蓄電装置29に充電することも可能である。
【0035】
また、変速機7の変速比は、マニュアル変速操作または自動変速制御により切替可能であり、この変速機7においては、第1速ないし第3速の変速段を選択的に切替可能である。この変速機7における変速比の切り替えを、図3に基づいて説明する。図3において、「○」印はクラッチが係合されることを示し、「×」印はクラッチが解放されることを示す。まず、第1速(1st)が選択された場合は、ブレーキB1が係合され、ブレーキB2およびクラッチC1が解放される。すると、動力分配装置8のリングギヤから変速機7に伝達されたトルクが、サンギヤ23に伝達されるとともに、リングギヤ24が反力要素となり、キャリヤ26が出力要素となる。つまり、第1速が選択された場合は、サンギヤ23の回転数よりもキャリヤ26の回転数の方が低回転数となり、変速機7がいわゆる減速機として機能し、変速比が「1」よりも大きくなる。
【0036】
また、第2速(2nd)が選択された場合は、ブレーキB2が係合され、ブレーキB1およびクラッチC1が解放される。すると、動力分配装置8のリングギヤから変速機7に伝達されたトルクが、サンギヤ23に伝達されるとともに、サンギヤ19が反力要素となり、キャリヤ26が出力要素となる。つまり、第2速が選択された場合は、サンギヤ23の回転数よりもキャリヤ26の回転数の方が低回転数となり、変速機7がいわゆる減速機として機能し、変速比が「1」よりも大きくなる。なお、第1速が選択された場合の変速比は、第2速が選択された場合の変速比よりも大きくなる。
【0037】
さらに、第3速(3rd)が選択された場合は、クラッチC1が係合され、ブレーキB1,B2が解放される。すると、動力分配装置8のリングギヤから変速機7に伝達されたトルクが変速機7に伝達され、遊星歯車機構17,18を構成する回転要素が一体的に回転し、変速機7の入力回転数と出力回転数との比が「1」となる。つまり、変速機7の入力回転部材と出力回転部材とが直結状態となる。
【0038】
つぎに、停止または空転しているエンジン2を始動させる制御、具体的には、モータ・ジェネレータ14のトルクによりエンジン1をクランキングさせ、燃料の噴射および燃焼をおこない、エンジン1を自律運転させる過程で実行可能な制御の一例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。図1の制御例は、請求項1、6に対応するものである。まず電子制御装置34に入力される信号が処理され(ステップS1)、エンジン1を始動させる制御を実行中であるか否かが判断される(ステップS2)。このステップS2で肯定的に判断された場合は、動力分配装置8を含む回転部材、より具体的には、エンジン1および入力軸9およびダンパ機構1Bおよびモータ・ジェネレータ2などの慣性体で発生するねじり振動のレベルが所定値以上であるか否かが判断される(ステップS3)。ここで、ねじり振動のレベルが現在、所定値以上である場合、または、所定時間後に、ねじり振動のレベルが所定値以上になることが予想される場合のいずれを判断してもよい。
【0039】
このステップS3の判断は、例えばエンジン回転数が、共振周波数域に相当する回転数であるか否かにより、間接的に判断可能であり、例えば、図4および図5のマップが用いられる。図4に示すマップは、エンジン回転数と、回転方向における振動周波数との関係を示しており、エンジン回転数が高くなることにともない、振動周波数が高くなる特性を有している。また、図5に示すマップは、振動周波数と、振動レベルとの関係を示すマップであり、周波数が上昇することにともない振動レベルが上昇するが、更に周波数が上昇すると、振動レベルが低下する特性となることを示している。この図4および図5のマップから、エンジン回転数が上昇することにともない振動レベルが上昇し、さらにエンジン回転数が上昇すると、振動レベルが低下することが分かる。また、図5のマップにおいては、一例として、ブレーキB1が係合されている場合の特性と、ブレーキB1が解放されている場合の特性とが示されている。振動レベルがピークとなる周波数は、ブレーキB1の係合に対応する周波数f1は、ブレーキB1の解放に対応する周波数f2よりも低い。このように特性が異なる理由は、ブレーキB1が係合された場合と解放された場合とでは、動力伝達系の慣性質量が変化するからである。すなわち、ブレーキB1が係合された場合は、エンジン1をクランキングするモータ・ジェネレータ14のトルクが、変速機7を経由して車輪3に伝達される状態となっており、車両Veの全体が慣性体として働くからである。なお、エンジン回転数は、エンジン回転数センサの信号から判断してもよいし、モータ・ジェネレータ2およびモータ・ジェネレータ14の回転数から判断してもよい。
【0040】
そして、ステップS3の判断時点で、振動レベルが所定値以上となるような実エンジン回転数である場合、または、エンジン回転数が、振動レベルが所定値以上となるような領域に推移することが予測される場合は、前記ステップS3で肯定的に判断されて、ねじり共振が発生する滞留時間が、所定時間を超えるか否かが判断される(ステップS4)。このステップS4で肯定的に判断された場合は、現在、変速機7で係合されているクラッチのトルク容量を低下(スリップ・解放)、または高める(係合)制御がおこなわれる(ステップS5)。例えば、ステップS3,S4の判断時点で、第1速が選択されて変速機7でブレーキB1が係合され、かつ、エンジン1の始動制御が実行されている場合は、ブレーキB1を解放またはスリップさせてして振動レベルがピークとなる周波数を高くすることで、ねじり共振のレベルを低下させることが可能である。これに対して、ステップS3,S4の判断時点で、ブレーキB1が解放され、かつ、エンジン1の始動制御が実行されている場合は、ブレーキB1を係合またはスリップさせて振動レベルがピークとなる周波数を低くすることで、ねじり共振のレベルを低下させることが可能である。したがって、入力軸9に応力集中が発生することを抑制できる。このステップS5についで、モータ・ジェネレータ2を所定回転数になるように制御し(ステップS6)、リターンされる。
【0041】
このエンジン1の始動制御は、車両Veの走行中、または車両Veの低速走行中のいずれでも実行可能である。例えば、車両Veの停止中または走行中に、モータ・ジェネレータ14のトルクでエンジン1をクランキングする場合は、モータ・ジェネレータ14の反力をモータ・ジェネレータ2で確実に受け止めることができるように、モータ・ジェネレータ2の回転数を零にする制御が、ステップS6実行される。これに対して、車両Veが低車速で走行し、かつ、モータ・ジェネレータ14のトルクでエンジン1をクランキングする場合は、モータ・ジェネレータ2の回転数を、変速機7の入力回転数に一致させる制御が、ステップS6で実行される。さらに、ステップS2またはステップS3またはステップS3で否定的に判断された場合は、リターンする。なお、この実施例において抑制しようとしている動力伝達系のねじり共振は、モータ・ジェネレータ14のトルクをエンジン1に伝達する過程で発生するねじり共振、および、モータ・ジェネレータ14によるクランキングが終了して、エンジン1が自律回転し、そのエンジン1の爆発振動によるトルク変動が動力伝達系に伝達されて発生するねじり共振の両方が含まれる。
【0042】
ここで、車両Veが低車速で走行し、かつ、エンジン1を始動させる場合の回転要素の状態を、図6および図7の共線図に基づいて説明する。図6および図7の共線図において、「正」は回転要素が正回転することを示し、「逆」は回転要素が逆回転することを示す。正回転とはエンジン1の回転方向を示す。そして、動力分配装置8ではモータ・ジェネレータ14とモータ・ジェネレータ2との間に、エンジン1が位置している。また、変速機7では、サンギヤ23とサンギヤ19との間に、リングギヤ20およびキャリヤ26および出力回転部材27が位置している。そして、サンギヤ19と、リングギヤ20およびキャリヤ26および出力回転部材27との間に、リングギヤ24およびキャリヤ22が位置している。
【0043】
そして、図6に示すように、出力回転部材27が正回転し、かつ、第1速が選択され、かつ、ブレーキB1が係合されるとともに、エンジン2が空転している場合に、モータ・ジェネレータ14のトルクでエンジン1を始動させる場合を想定する。ここで、車速が一定であるとすれば、サンギヤ23の回転数は変化せず、一点鎖線で示すように動力分配装置8を含む動力伝達系がねじれやすい。つまり、モータ・ジェネレータ2およびリングギヤ11を支点とするモータ・ジェネレータ14の回転数の変化幅が広くなる。そこで、この実施例では、ブレーキB1を解放させることにより、図7に一点鎖線で示すように、サンギヤ23の回転数が実線で示す回転数を境として、所定範囲で高低に変化することが許容される。なお、サンギヤ23の回転数の変化範囲は、ステップS6の制御で述べたように、モータ・ジェネレータ2により規制される。この図7の共線図においては、モータ・ジェネレータ2およびリングギヤ23の回転数の変化が許容されるため、ねじり共振が抑制されて、モータ・ジェネレータ14の回転数の変化幅が狭くなっている。
【0044】
ここで、図1に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS1,S2,S3,S4が、この発明のねじり共振判断手段に相当し、ステップS5が、この発明の共振抑制手段に相当し、ステップS6が、この発明のモータ・ジェネレータ制御手段に相当する。また、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン1が、この発明の第1の駆動力源(原動機)に相当し、モータ・ジェネレータ2が、この発明におけるに電動機に相当し、車輪3が、この発明の車輪に相当し、動力分配装置6が、この発明の電気的変速機および第1の遊星歯車機構に相当し、変速機7およびクラッチC1およびブレーキB1,B2が、この発明の回転状態切替機構に相当し、クラッチC1およびブレーキB1,B2が、この発明におけるクラッチに相当し、キャリヤ13が、この発明の入力要素に相当し、サンギヤ10が、この発明の反力要素に相当し、リングギヤ11が、この発明の出力要素に相当し、変速機7が、この発明の変速機に相当し、サンギヤ23およびキャリヤ22が、この発明の入力回転部材として機能し、キャリヤ26が、この発明の出力回転部材として機能する。
【0045】
さらに、サンギヤ10が、この発明の第1のサンギヤに相当し、リングギヤ11が、この発明の第1のリングギヤに相当し、キャリヤ13が、この発明の第1のキャリヤに相当し、遊星歯車機構17が、この発明の第2の遊星歯車機構に相当し、遊星歯車機構18が、この発明の第3の遊星歯車機構に相当し、サンギヤ19が、この発明の第2のサンギヤに相当し、リングギヤ20が、この発明の第2のリングギヤに相当し、キャリヤ22が、この発明の第2のキャリヤに相当し、サンギヤ23が、この発明の第3のサンギヤに相当し、リングギヤ24が、この発明の第3のリングギヤに相当し、キャリヤ26が、この発明の第3のキャリヤに相当し、クラッチC1が、この発明のクラッチに相当し、ブレーキB1が、この発明の第1のブレーキに相当し、ブレーキB2が、この発明の第2のブレーキに相当する。
【0046】
つぎに、図2に示された車両Veで実行可能な他の制御例を、図8のフローチャートに基づいて説明する。図8のフローチャートは、請求項1、6、7に対応する制御例である。まず、電子制御装置34に入力される信号が処理され(ステップS11)、車両Veが走行し、かつ、エンジン2が駆動中であるか否かが判断される(ステップS12)。エンジン2が駆動中とは、エンジン2が自律回転していることを意味し、ステップS12で肯定的に判断された場合は、モータ・ジェネレータ2またはモータ・ジェネレータ14の回転変動の周波数が、入力軸9を含む動力伝達系でねじり共振が発生する領域にあるか否かが判断される(ステップS13)。このステップS13の判断は、前述したステップS3の処理と同様にしておこなうことが可能である。すなわち、モータ・ジェネレータ2およびモータ・ジェネレータ14の回転数と、ねじり振動レベルとの対応関係を示すデータをマップ化しておき、そのマップを用いてステップS13の判断をおこなえばよい。また、ねじり共振が発生する原因としては、始動されたエンジン1のトルクが入力軸9に伝達されて発生する場合と、車輪3がスリップして過大なトルクが変速機7を経由して入力軸9に伝達されて発生する場合とが挙げられる。
【0047】
ステップS13で肯定的に判断された場合は、モータ・ジェネレータ2またはモータ・ジェネレータ14の回転変動幅が、所定値を実際に越えているか否かが判断される(ステップS14)。このステップS14で肯定的に判断された場合は、ねじり共振を抑制するように、変速機7のクラッチをのトルク容量を増加または低下、すなわち、クラッチを係合・解放・スリップさせる制御が実行される(ステップ15)。このステップS15の処理は、ステップS5の処理と同じであり、ステップS5と同じ原理により、ねじり共振が抑制される。このステップS15についで、変速機7のクラッチの解放、またはスリップによりエンジン負荷が低下して、エンジン回転数が過剰に上昇してしまうこと(吹き上がり)を抑制するように、モータ・ジェネレータ2の回転数が制御され(ステップS16)、リターンされる。このように、図8の制御例によれば、図1の制御例と同様に、モータ・ジェネレータ2のトルクによりエンジン2を始動させた場合の他に、車両Veの走行中に車輪3から伝達される強制力より、ねじり共振が発生することを回避できる。また、図8のステップS13,S14では、モータ・ジェネレータ2,14の回転数を用いているため、車輪3から動力伝達系に入力される強制力をも検知することができる。なお、図8のステップS12またはステップS13またはステップS14で否定的に判断された場合は、リターンされる。
【0048】
なお、上記の説明では、変速機7で第1速が選択されている場合に、ブレーキB1のトルク容量を制御することにより、ねじり共振を抑制する場合を説明しているが、第2速または第3速が選択されている場合にも、図1および図8の制御例を実行可能である。この第2速の場合は、ブレーキB2の係合・解放に対応させて、周波数と振動レベルとの関係を示すマップを用いればよい。また、第3速の場合は、クラッチC1の係合・解放に対応させて、周波数と振動レベルとの関係を示すマップを用いればよい。さらに、各変速段毎に、クラッチの係合・解放に対応して、周波数と振動レベルとの関係を全てマップ化してあれば、ねじり共振レベルが高いと判断される変速段を設定するためのクラッチを解放(係合)し、ねじり共振レベルが低いと判断される変速段を達成するクラッチを係合(解放)することにより、ねじり共振レベルの上昇を抑制できる。この場合、変速段自体を変更することも可能である。ここで、図8に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS11,S12,S13,S14が、この発明のねじり共振判断手段に相当し、ステップS15が、この発明の共振抑制手段に相当し、ステップS16が、この発明のモータ・ジェネレータ制御手段に相当する。
【0049】
つぎに、図1および図8の制御例を実行可能なハイブリッド車の他の構成例を、図9に基づいて説明する。この図9に示された車両Veは請求項1、4、5に対応している。図9に示された構成において、図2に示された構成と同じ構成については、図2と同じ符号を付してある。図9に示された車両Veにおいては、エンジン1から車輪3に至る動力伝達経路に変速機35が設けられている。この変速機35は、同軸上に配置されたダブルピニオン型の遊星歯車機構36およびシングルピニオン型の遊星歯車機構37を有している。遊星歯車機構36は、サンギヤ38およびリングギヤ39と、サンギヤ38に噛合されたピニオンギヤ40と、リングギヤ39およびピニオンギヤ40に噛合されたピニオンギヤ41と、ピニオンギヤ40,41を自転、かつ、公転可能に保持するキャリヤ42とを有している。一方、遊星歯車機構37は、サンギヤ43およびリングギヤ44と、サンギヤ43およびリングギヤ44に噛合されたピニオンギヤ45を自転、かつ、公転可能に保持するキャリヤ42とを有している。つまり、キャリヤ42は、遊星歯車機構37,38で共用化されている。そして、リングギヤ44が出力回転部材27に連結、具体的には一体回転するように連結されている。
【0050】
さらに、動力分配装置8のリングギヤ11と、サンギヤ43とが一体回転するように連結され、リングギヤ39とリングギヤ44とが一体回転するように連結されている。また、回転要素同士の連結関係、および回転要素の回転・停止を制御するクラッチが設けられている。このクラッチとして、動力分配装置8のキャリヤ13および入力軸9を、キャリヤ42に対して選択的に係合・解放させるクラッチC1と、リングギヤ11およびサンギヤ43を、サンギヤ38に対して選択的に係合・解放させるクラッチC2と、サンギヤ38の回転・停止を制御するブレーキB1と、キャリヤ42の回転・停止を制御するリバースブレーキBRとが設けられている。これらのクラッチとしては、摩擦式クラッチ、電磁式クラッチ、噛み合い式クラッチのいずれを用いてもよいが、この実施例では摩擦式クラッチを用いる場合について説明する。また、これらのクラッチは、油圧制御装置33により、トルク容量が制御されるように構成されている。
【0051】
上記のように構成された動力分配装置8と変速機35との関係を、図10の共線図に基づいて説明する。モータ・ジェネレータ2とモータ・ジェネレータ14との間にエンジン1が配置されており、エンジン1とモータ・ジェネレータ14との間に、変速機35のサンギヤ38およびリングギヤ39,44が配置されている。また、エンジン1とサンギヤ38との間に、リングギヤ39,44が配置されている。さらに、キャリヤ42はエンジン1と同じ位置に配置されており、モータ・ジェネレータ2と一回回転するサンギヤ43が同じ位置に配置されている。
【0052】
そして、変速機35においては、動力伝達状態を制御するために、前進ポジションおよび後進ポジション(Rev)を選択的に切替可能であるとともに、前進ポジションでは、低速モード(Lo)、中速モード(Mid)、高速モード(Hi)を選択的に切替可能である。ここで、低速モード、中速モード、高速モードが選択された場合、および後進ポジションが選択された場合におけるクラッチの状態を、図11に基づいて説明する。図11において、「○」印はクラッチが係合されることを示し、「×」印はクラッチが解放されることを示す。この図11に示すように、低速モードが選択された場合は、ブレーキB1が係合され、その他のクラッチは全て解放される。低速モードが選択された場合に、エンジントルクが動力分配装置8を経由して変速機35のサンギヤ43に伝達されると、停止されているサンギヤ38が反力要素となり、リングギヤ44が出力要素となる。このように、低速モードが選択された場合は、サンギヤ43の回転速度に対してリングギヤ44の回転速度が減速される。すなわち、変速機35の変速比が「1」よりも大きくなる。
【0053】
また、中速モードが選択された場合は、クラッチC1が係合され、その他のクラッチは全て解放される。そして、エンジントルクが動力分配装置8を経由して変速機35のキャリヤ42に入力され、かつ、サンギヤ38が反力要素となり、リングギヤ48が出力要素となる。このように、中速モードが選択された場合は、図10に示す共線図上で、動力分配装置8の回転状態を示すを示す線分と、変速機35の回転状態を示す線分とが重なる。このように、中速モードが選択された場合は、変速機35に対して、サンギヤ43およびクラッチC1の2系統を経由して動力が伝達される。なお、低速モードが選択された場合は、変速機35の変速比はモータ・ジェネレータ2の回転数に応じて決定される。また、中速モードが選択された場合は、モータ・ジェネレータ2,14の回転数およびエンジン回転数に基づいて、変速機35の変速比が決定される。そして、中速モードが選択された場合は、変速機35の変速比は「1」よりも大きい値、「1」以下の値など、任意に調整可能である。
【0054】
さらに、高速モードが選択された場合は、クラッチC2が係合され、その他のクラッチは全て解放されて、変速機35を構成する回転要素が一体回転する状態となる。すなわち、変速機35の変速比が「1」に固定される。一方、後進ポジションが選択された場合は、リバースブレーキBRが係合され、その他のクラッチは全て解放される。そして、エンジントルクが動力分配装置8を経由して変速機35のサンギヤ43に入力されると、キャリヤ42が反力要素となり、リングギヤ48が、前進ポジションとは逆方向に回転する。
【0055】
この図9に示された車両Veにおいても、図1または図8の制御例を実行可能である。この場合、変速機35のモードを設定する各クラッチの係合・解放状態と、ねじり共振レベルとの関係をマップ化しておき、そのマップを用いて各クラッチのトルク容量を制御することにより、いずれのモードが選択されている場合でも、動力伝達系で発生する共振を抑制することができる。この場合、選択されているモードのクラッチの係合・解放状態を切り替える他、選択されているモードを別のモードに変更する制御を実行することも可能である。
【0056】
図9に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、変速機35およびクラッチC1,C2およびブレーキB1,BRが、この発明の回転状態切替機構に相当し、クラッチC1,C2およびブレーキB1,BRが、この発明の複数のクラッチに相当し、低速モードおよび中速モードおよび高速モードが、この発明における複数のモードに相当する。また、遊星歯車機構36が、この発明のダブルピニオン型遊星歯車機構に相当し、遊星歯車機構37が、この発明のシングルピニオン型遊星歯車機構に相当し、サンギヤ38が、この発明の第2のサンギヤに相当し、リングギヤ39が、この発明の第2のリングギヤに相当し、ピニオンギヤ40が、この発明の第1のピニオンギヤに相当し、ピニオンギヤ41が、この発明の第2のピニオンギヤに相当し、キャリヤ42が、この発明の第2のキャリヤおよび第3のキャリヤに相当し、サンギヤ43が、この発明の第3のサンギヤに相当し、リングギヤ44が、この発明の第3のリングギヤに相当し、クラッチC1が、この発明の第1のクラッチに相当し、クラッチC2が、この発明の第2のクラッチに相当し、ブレーキB1が、この発明の第1のブレーキに相当し、リバースブレーキBRが、この発明のリバースブレーキに相当する。
とを含み、
【0057】
なお、図2に基づいて説明した回転状態切替機構(変速機7および各クラッチ)と、図9に示された回転状態切替機構としてのモード切替機構(変速機35および各クラッチ)との相違点を説明すると、図2に示された例では、エンジントルクを変速機7に伝達する場合、動力分配装置8の入力要素および出力要素を、動力が必ず(直接)経由するが、図9の例では、エンジントルクを、動力分配装置8の入力要素および出力要素を直接経由させることなく、変速機35と動力分配装置8とを組み合わせて動力循環させて伝達できる中速モードを選択できる。また、図2に示す動力分配装置8および変速機7は、図6および7に示すように、変速機7の回転要素が、動力分配装置8の回転要素同士の間に位置していないとともに、動力分配装置8の回転要素が、変速機7の回転要素同士の間に位置していない。これに対して、図9に示す動力分配装置8および変速機35の場合、図10に示すように、変速機35の回転要素が、中速モードで動力分配装置8の回転要素同士の間に位置している点が異なる。
【0058】
さらに、図1および図8の制御例で抑制しようとするねじり共振とは、低次の振動モード、具体的には1次または2次の振動モードに関してであり、3次以上の高次の振動モードとは区別して制御が実行される。なお、実用上の必要性に応じて、3次以上の振動モードについて解析し、ねじり共振レベルが高くならないようにすることも可能である。なお、狙いとするn次の振動モードで共振を回避できれば、他の振動モードで共振が発生しても支障はない。この実施例は駆動力源のトルクが前輪に伝達される車両、または前輪および後輪に伝達される車両にも適用可能である。更に第4速以上の変速段を設定可能な変速機を有するハイブリッド車においても、図1および図8の制御例を実行可能である。また、前進ポジションで4以上のモードを設定可能な変速機を有するハイブリッド車においても、図1および図8の制御例を実行可能である。また、この発明の回転状態切替機構は、複数のクラッチ(もしくは係合装置)の係合・解放状態を制御する(トルク容量を制御する)ことにより、動力伝達状態が変更されるように構成されている。また、クラッチは、電磁式クラッチ、油圧制御式クラッチ、パウダ式クラッチ、同期噛み合い式クラッチなどを用いることができる。また、回転状態切替機構を構成するクラッチには、回転要素の回転・停止を制御するブレーキも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明のハイブリッド車において実行可能な制御例を示すフローチャートである。
【図2】図1に示す制御例を実行可能な車両のパワートレーンおよび制御系統を示す概念図である。
【図3】図2に示す変速機の変速段と、クラッチの係合・解放制御との関係を示す図表である。
【図4】図1の制御例で用いるマップの一例である。
【図5】図1の制御例で用いるマップの一例である。
【図6】図2に示された動力分配装置および変速機を構成する回転要素の状態を示す共線図である。
【図7】図2に示された動力分配装置および変速機を構成する回転要素の状態を示す共線図である。
【図8】この発明のハイブリッド車において実行可能な他の制御例を示すフローチャートである。
【図9】図1および図8に示す制御例を実行可能な車両の他の構成例を示す概念図である。
【図10】図9に示された動力分配装置および変速機の回転要素の位置関係を示す共線図である。
【図11】図9に示された変速機の各モードおよび後進ポジションと、クラッチの係合・解放との関係を示す図表である。
【符号の説明】
【0060】
1…エンジン、 3…車輪、 6…動力分配装置、 7,35…変速機、 10,19,23,38…サンギヤ、 11,20,24,39…リングギヤ、 13,22,26,42…キャリヤ、 17,18,36,37…遊星歯車機構、 40,41…ピニオンギヤ、 C1,C2…クラッチ、 B1,B2,BR…ブレーキ、 Ve…車両。
【技術分野】
【0001】
この発明は、車輪に動力を伝達するために複数の駆動力源を有するハイブリッド車用の駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の駆動力源としてエンジンおよびモータ・ジェネレータを搭載したハイブリッド車が知られており、このようなハイブリッド車においては、エンジンおよびモータ・ジェネレータの持つ特性を生かしつつ、燃費を向上し、かつ、排気ガスの低減を図ることが可能である。このように、駆動力源としてエンジンおよびモータ・ジェネレータを有するハイブリッド車の一例が、特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載されているハイブリッド車は、駆動力源としてエンジンおよびアシストモータを有しており、このアシストモータの他にモータが設けられている。まず、エンジンの動力が駆動軸および車軸を経由して駆動輪に伝達されるように構成されている。そして、エンジンから駆動軸に至る経路にプラネタリギヤが設けられている。プラネタリギヤは、サンギヤおよびリングギヤと、サンギヤおよびリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持するキャリヤとを3つの回転要素として有しており、キャリヤがエンジン側に連結され、サンギヤがモータのロータに連結されている。プラネタリギヤのリングギヤにはリングギヤ軸が連結されているとともに、リングギヤ軸には、アシストモータのロータが連結されている。さらに、リングギヤ軸から駆動軸に至る経路には変速機構が設けられている。この変速機構は、サンギヤおよびリングギヤと、サンギヤおよびリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持するキャリヤとを3つの回転要素としており、変速機構のキャリヤが前記リングギヤ軸に連結され、変速機構のリングギヤが前記駆動軸に連結されている。また、変速機構のキャリヤと変速機構のリングギヤとを選択的に係合・解放させるクラッチと、変速機構のサンギヤの回転を防止するブレーキとが設けられている。
【0004】
そして、エンジントルクをプラネタリギヤのキャリヤに入力するとともに、モータを反力要素として機能させることで、リングギヤから出力されたトルクがリングギヤ軸に伝達される。ここで、反力要素となるモータにより回生制御(発電制御)がおこなわれ、発生した電力がバッテリに充電されるとともに、そのモータの回転速度を制御することにより、プラネタリギヤの回転速度と、プラネタリギヤのリングギヤの回転速度との比である変速比を、無段階に制御することが可能である。また、車両における要求駆動力に応じて、エンジン出力を制御し、目標エンジントルクに対する実エンジントルクの不足分のトルクを補うように、アシストモータを駆動することが可能である。そして、前記変速機構においては、エンジンの動力を駆動軸に伝達させるための結合状態としては、クラッチをオフにし、かつ、ブレーキをオンにした増速結合状態と、クラッチをオンにしてブレーキをオフにした直結状態とを選択的に切換可能である。なお、第1の駆動力源およびモータ・ジェネレータを駆動力源として備えたハイブリッド車は、特許文献2にも記載されている。
【特許文献1】特開2000−346187号公報
【特許文献2】特開2005−112019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されているハイブリッド車においては、プラネタリギヤを経由してエンジンにトルクが伝達される場合、例えば、モータのトルクによりエンジンを始動させる場合においては、プラネタリギヤにおいてねじり共振が大きくなる恐れがあった。
【0006】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、第1の駆動力源に連結された電気的変速機を含む動力伝達系で、ねじり共振が大きくなることを抑制可能な車両用駆動装置の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、第1の駆動力源から車輪に至る動力伝達経路に電気的変速機が設けられており、動力伝達経路における電気的変速機よりも下流側に、機械的に構成された回転状態切替機構が設けられており、前記回転状態切替機構は、動力伝達状態を制御し、かつ、係合・解放されるクラッチを有している車両用駆動装置の制御装置において、前記電気的変速機にトルクが伝達されて、その電気的変速機を含む動力伝達系でねじり共振が発生するか否かを判断するねじり共振判断手段と、前記ねじり共振が発生すると判断された場合は、前記クラッチのトルク容量を制御する共振抑制手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記回転状態切替機構は、入力回転部材と出力回転部材との間の変速比を変更可能な変速機を含み、前記クラッチの係合・解放を切り替えることにより、その変速比が制御される構成を有していることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の構成に加えて、前記電気的変速機は、第1の遊星歯車機構を備えており、この第1の遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1のサンギヤおよび第1のリングギヤと、第1のサンギヤおよび第1のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第1のキャリヤとを有しており、この第1のキャリヤが前記電気的変速機の入力要素であり、前記第1のリングギヤが前記電気的変速機の出力要素に相当し、前記第1のサンギヤが前記電気的変速機の反力要素に相当するとともに、前記変速機は、同軸上に配置された第2の遊星歯車機構および第3の遊星歯車機構を備えており、前記第2の遊星歯車機構は、第2のサンギヤおよび第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤおよび第2のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第2のキャリヤとを有しており、前記第3の遊星歯車機構は、第3のサンギヤおよび第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤおよび第3のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第3のキャリヤとを有しており、前記第1のリングギヤと前記第3のサンギヤとが連結され、前記第2のリングギヤと第3のキャリヤとが連結され、前記第2のキャリヤと前記第3のリングギヤとが連結されており、前記第3のキャリヤが前記変速機の出力回転部材に相当し、前記クラッチは、前記第1のリングギヤおよび前記第3のサンギヤを、前記第2のキャリヤに対して選択的に係合・解放させるクラッチと、前記第2のキャリヤおよび前記第3のリングギヤの回転・停止を選択的に切り換える第1のブレーキと、前記第2のサンギヤの回転・停止を選択的に切り換える第2のブレーキとを含み、前記共振抑制手段は、前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含むことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1の構成に加えて、前記回転状態切替機構は、前記クラッチの係合・解放を制御することにより、動力伝達状態が異なる複数のモードを選択的に切替可能なモード切替機構を含むことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4の構成に加えて、前記電気的変速機は、第1の遊星歯車機構を備えており、この第1の遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1のサンギヤおよび第1のリングギヤと、前記第1のサンギヤおよび第1のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第1のキャリヤとを有しており、この第1のキャリヤが前記入力要素に相当し、前記第1のリングギヤが前記出力要素に相当し、前記第1のサンギヤが前記反力要素に相当するとともに、前記モード切替機構は、同軸上に配置されたダブルピニオン型遊星歯車機構およびシングルピニオン型遊星歯車機構を備えており、前記ダブルピニオン型遊星歯車機構は、第2のサンギヤおよび第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤに噛合された第1のピニオンギヤと、前記第2のリングギヤおよび第1のピニオンギヤに噛合された第2のピニオンギヤと、前記第1のピニオンギヤおよび第2のピニオンギヤを保持する第2のキャリヤとを有しており、前記シングルピニオン型遊星歯車機構は、第3のサンギヤおよび第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤおよび第3のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第3のキャリヤとを有しており、この第3のリングギヤに前記車輪が動力伝達可能に連結されるとともに、前記第1のリングギヤと前記第3のサンギヤとが連結され、前記第2のリングギヤと第3のリングギヤとが連結され、前記第2のキャリヤと前記第3のキャリヤとが連結されており、前記クラッチは、前記第1のキャリヤを前記第3のキャリヤに対して選択的に係合・解放させる第1のクラッチと、前記第1のリングギヤおよび前記第3のサンギヤを、前記第2のサンギヤに対して選択的に係合・解放させる第2のクラッチと、前記第2のサンギヤの回転・固定を選択的に切り換える第1のブレーキと、前記第2のキャリヤおよび第3のキャリヤの回転・固定を選択的に切り換えるリバースブレーキとを含み、前記共振抑制手段は、前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含むことを特徴とするものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの構成に加えて、前記共振抑制手段は、第1の電動機のトルクで前記第1の駆動力源を始動させ、かつ、第2の電動機で反力を受けて前記第1の駆動力源を始動させる場合に、前記ねじり共振を抑制するように前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含み、前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する場合に、前記第2の電動機を停止させるか、または、前記第2の電動機の回転数と、前記変速機の入力回転数とを一致させるように、前記第2の電動機の回転数を制御する電動機制御手段を、更に有していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1ないし5のいずれかの構成に加えて、前記共振制御手段は、前記第1の駆動力源を始動させる場合に前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含み、前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する場合に、前記第1の駆動力源の回転数の上昇を抑制するように、前記第2の電動機の回転数を制御する電動機制御手段を、更に有していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの構成に加えて、前記変速機の入力側にトルク伝達可能に連結された第2の駆動力源が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記電気的変速機は、相互に差動回転可能な入力要素と反力要素と出力要素とを有しており、前記入力要素が前記第1の駆動力源に連結され、前記反力要素が第1の電動機に連結され、前記出力要素が第2の電動機および前記回転状態切替機構に連結されているとともに、前記第1の電動機の出力を制御することにより、前記電気的変速機における入力要素と出力要素との間の変速比を無段階に制御可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1ないし9のいずれかの発明の構成に加えて、前記共振抑制手段は、ねじり共振を抑制するように前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、第1の駆動力源のトルクが電気的変速機に伝達されて、第1の電動機で第1の駆動力源の反力が受け持たれ、電気的変速機から出力されたトルクが、回転状態切替機構を経由して車輪に伝達される。ここで、第1の電動機の出力を制御することにより、電気的変速機の変速比が制御される。また、回転状態切替機構のクラッチの係合・解放を制御することにより、動力伝達状態が制御される。そして、電気的変速機にトルクが伝達されて、その電気的変速機を含む動力伝達系でねじり共振が発生する判断された場合は、クラッチのトルク容量が制御されて、ねじり共振が発生することを抑制できる。
【0018】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、第1の駆動力源のトルクが電気的変速機に入力されるとともに、電気的変速機から出力されたトルクが、変速機を経由して車輪に伝達される。また、クラッチの係合・解放状態を変更することにより、変速機の変速比が変更される。また、請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる。
【0019】
請求項4の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、クラッチの係合・解放を制御することにより、動力伝達状態が異ならせる複数のモードを選択的に切替可能である。また、請求項5の発明においても、請求項4の発明と同様の効果を得られる。
【0020】
請求項6の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、ねじり共振を抑制するようにクラッチのトルク容量を制御する場合に、第2の電動機を停止させるか、または、第2の電動機の回転数と、変速機の入力回転数とを一致させるように、第2の電動機の回転数を制御することができる。したがって、第1の電動機の反力トルクを第2の電動機で受けて、第1の駆動力源を始動させる場合に、第1の駆動力源を始動させるトルクの低下抑制できる。また、第1の駆動力源の始動後にクラッチのトルク容量を高める場合に、第2の電動機の回転数と、変速機の入力回転数とが一致しているため、クラッチの係合によるショックの発生を抑制できる。
【0021】
請求項7の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、ねじり共振を抑制するようにクラッチのトルク容量を制御する場合に、第2の電動機の回転数を制御することにより、第1の駆動力源の回転数が過剰に上昇することを抑制できる。
【0022】
請求項8の発明によれば、請求項1ないし7のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、第2の駆動力源のトルクを、変速機を経由させて車輪に伝達することが可能である。
【0023】
請求項9の発明によれば、第1の電動機の出力を制御することにより、電気的変速機における入力要素と出力要素との間の変速比を無段階に制御することが可能である。
【0024】
請求項10の発明によれば、請求項1ないし9のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、ねじり共振を抑制するようにクラッチのトルク容量が制御される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
つぎに、この発明を図面を参照しながら具体的に説明する。図2は、この発明を用いることの可能な車両のパワートレーンの構成例を示す。図2に示された車両Veは、F・R(フロントエンジン・リヤドライブ;エンジン前置き後輪駆動)形式のハイブリッド車(以下、「車両」と略記する)である。図2に示された車両Veは、2種類の駆動力源を有している。2種類の駆動力源は、動力の発生原理が異なり、この実施例では、エンジン1およびモータ・ジェネレータ(MG2)2が駆動力源として搭載されているとともに、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2から出力された動力が、共に同じ車輪(後輪)3に伝達されるように動力伝達経路が構成されている。車両Veの駆動力源であるエンジン1は、燃料を燃焼させて、その熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置である。このエンジン1としては、内燃機関または外燃機関を用いることが可能であるが、この実施例では、エンジン1として内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いる場合について説明する。このエンジン1は、電子スロットルバルブ(図示せず)などの制御により、出力トルクを電気的に制御することが可能に構成されている。
【0026】
一方、他の駆動力源であるモータ・ジェネレータ2はケーシング4の内部に収納されており、モータ・ジェネレータ2は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを兼備している。このモータ・ジェネレータ2は、ロータ5およびステータ6を有しており、ステータ6はケーシング4に固定されている。また、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2から車輪3に至る動力伝達経路には変速機7が設けられているとともに、エンジン1から変速機7に至る動力伝達経路には、動力分配装置8が設けられている。図2に示された動力分配装置8は、シングルピニオン形式の遊星歯車機構を主体として構成されている。すなわち、動力分配装置8は、入力軸9と同軸上に配置されたサンギヤ10と、サンギヤ10と同軸上に配置されたリングギヤ11と、サンギヤ10およびリングギヤ11に噛合する複数のピニオンギヤ12を、自転かつ公転自在に保持したキャリヤ13とを有している。そして、キャリヤ13と入力軸9とが動力伝達可能に連結、具体的には一体回転するように連結されている。さらに、入力軸9とエンジン1のクランクシャフト1Aとが同軸上に配置されているとともに、クランクシャフト1Aと入力軸9とが、ダンパ機構、具体的にはトーショナルダンパ1Bを介して動力伝達可能に連結されている。トーショナルダンパ1Bはトルク変動を吸収し、かつ、振動を減衰する緩衝装置である。
【0027】
また、入力軸9の軸線方向において、エンジン1と動力分配装置8との間には、モータ・ジェネレータ14が配置されている。モータ・ジェネレータ14は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを兼備している。つまり、エンジン1とモータ・ジェネレータ2,14とでは、動力の発生原理が異なる。このモータ・ジェネレータ14は、ロータ15およびステータ16を有しており、ステータ16はケーシング4に固定されている。そして、ロータ15とサンギヤ10とが動力伝達可能に連結、具体的には一体回転するように連結されている。
【0028】
一方、前記変速機7は、入力回転数を出力回転数で除した値である変速比を変更可能に構成されており、変速機7は、同軸上に配置された2組のシングルピニオン型遊の星歯車機構17,18を有している。まず、遊星歯車機構17は、同軸上に配置されたサンギヤ19およびリングギヤ20と、サンギヤ19およびリングギヤ20に噛合されたピニオンギヤ21を、自転かつ公転可能に保持するキャリヤ22とを有している。一方、遊星歯車機構18は、同軸上に配置されたサンギヤ23およびリングギヤ24と、サンギヤ23およびリングギヤ24に噛合されたピニオンギヤ25を、自転かつ公転可能に保持するキャリヤ26とを有している。そして、遊星歯車機構17のキャリヤ22と、遊星歯車機構18のリングギヤ24とが一体回転するように連結され、遊星歯車機構18のキャリヤ26と、遊星歯車機構17のリングギヤ20とが一体回転するように連結されている。すなわち、変速機7は、いわゆるC−R・C−R結合式の変速機である。さらに、モータ・ジェネレータ2のロータ5が、リングギヤ11およびサンギヤ23に連結、より具体的には、一体回転するように連結されている。そして、キャリヤ26には出力回転部材27が連結、具体的には一体回転するように連結され、その出力回転部材27から車輪3に至る動力伝達経路には、デファレンシャル28が設けられている。
【0029】
つぎに、変速機7の変速比を制御するための機構について説明すると、前記キャリヤ22を、モータ・ジェネレータ2のロータ5およびリングギヤ11およびサンギヤ23に対して選択的に連結・解放させるクラッチC1が設けられている。また、キャリヤ22およびリングギヤ24の回転・停止を制御するブレーキB1が設けられており、サンギヤ19の回転・停止を制御するブレーキB2が設けられている。これらのクラッチC1およびブレーキB1,B2などのクラッチとしては、摩擦式クラッチまたは電磁式クラッチ、あるいは噛み合い式クラッチのいずれを用いてもよいが、この実施例では、摩擦式クラッチを用いているものとする。
【0030】
一方、モータ・ジェネレータ2との間で電力の授受をおこなうことの可能な蓄電装置29が設けられているとともに、モータ・ジェネレータ2と蓄電装置29との間の回路にはインバータ30が設けられている。また、モータ・ジェネレータ14との間で電力の授受をおこなうことの可能な蓄電装置31が設けられているとともに、モータ・ジェネレータ14と蓄電装置31との間の回路にはインバータ32が設けられている。これらの蓄電装置29,31としては、二次電池、具体的にはバッテリ、キャパシタなどを用いることが可能である。また、モータ・ジェネレータ2とモータ・ジェネレータ14との間で、蓄電装置29,31を経由することなく、直接電力の授受をおこなうことが可能となるように、電気回路が構成されている。さらにまた、クラッチC1およびブレーキB1,B2を制御するアクチュエータとして、油圧制御装置33が設けられている。この油圧制御装置33は、油圧回路およびソレノイドバルブなどを有する公知の構造を有している。
【0031】
一方、車両Veの全体を制御するコントローラとして電子制御装置34が設けられており、電子制御装置34には、シフトポジションセンサの信号、車速センサの信号、加速要求検知センサの信号、制動要求検知センサの信号、エンジン回転数センサの信号、蓄電装置29,31の充電量を検知するセンサの信号、モータ・ジェネレータ2,14の回転数を検知するセンサの信号、変速機7の入力回転数および出力回転数を検知するセンサの信号などが入力される。これに対して、電子制御装置34からは、エンジン1を制御する信号、インバータ30,32を介してモータ・ジェネレータ2,14を制御する信号、油圧制御装置33を介してクラッチC1およびブレーキB1,B2を制御する信号などが出力される。
【0032】
図2に示す車両Veにおいて、エンジン1が運転されて、エンジントルクが動力分配装置8のキャリヤ13に伝達されると、モータ・ジェネレータ14により反力トルクが受け持たれて、エンジントルクがリングギヤ11に伝達される。そのリングギヤ11に伝達されたトルクが、変速機7およびデファレンシャル28を経由して車輪3に伝達されて、駆動力が発生する。前記動力分配装置8においては、サンギヤ10とキャリヤ13とリングギヤ11との差動作用により、入力要素であるキャリヤ13と、出力要素であるリングギヤ11との間における変速比を制御することが可能である。具体的には、反力トルクを受け持つモータ・ジェネレータ14の出力を制御することにより、エンジン回転数を無段階に(連続的に)制御することが可能である。つまり、動力分配装置8は無段変速機としての機能を有している。ここで、モータ・ジェネレータ14の回転方向は正逆に切り換え可能であり、モータ・ジェネレータ14は力行制御または回生制御が実行される。なお、モータ・ジェネレータ14の回転数を零に制御する(停止させる)ことも可能である。
【0033】
さらに、動力分配装置8の変速比を制御する概念について説明すると、エンジン1の燃費を向上させることを目的として、エンジン1の運転状態と、動力分配装置8の変速比とを協調制御するものである。例えば、加速要求(アクセル開度)および車速に基づいて、車両Veにおける要求駆動力が求められる。これは、例えば予め用意したマップから求められる。その要求駆動力と車速とからエンジン1の要求出力が算出され、その要求出力を最小の燃費で出力する目標エンジン回転数が、マップを使用して求められる。そして、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、モータ・ジェネレータ14の出力(トルク×回転数)が制御される。この制御と並行して、実エンジン出力を目標エンジン出力に近づけるように、エンジン1の電子スロットルバルブの開度などが制御される。
【0034】
また、蓄電装置29の電力をモータ・ジェネレータ2に供給してモータ・ジェネレータ2を電動機として駆動させ、モータ・ジェネレータ2のトルクを、変速機7を経由させて車輪3に伝達する制御を実行可能である。つまり、車輪3にトルクを伝達して駆動力を発生させる場合、エンジン1またはモータ・ジェネレータ2の少なくとも一方のトルクを車輪3に伝達可能であり、いずれの動力源のトルクまたは両方の動力源のトルクを伝達するかが、電子制御装置34に入力される信号およびデータに基づいて判断される。これに対して、車両Veが惰力走行する場合は、車両Veの運動エネルギが変速機7および動力分配装置8を経由してエンジン1に伝達され、エンジンブレーキ力が発生する。また、車両Veの惰力走行時に発生する運動エネルギの一部をモータ・ジェネレータ2に伝達し、このモータ・ジェネレータ2で回生制動力を発生させ、発生した電力を蓄電装置29に充電することも可能である。
【0035】
また、変速機7の変速比は、マニュアル変速操作または自動変速制御により切替可能であり、この変速機7においては、第1速ないし第3速の変速段を選択的に切替可能である。この変速機7における変速比の切り替えを、図3に基づいて説明する。図3において、「○」印はクラッチが係合されることを示し、「×」印はクラッチが解放されることを示す。まず、第1速(1st)が選択された場合は、ブレーキB1が係合され、ブレーキB2およびクラッチC1が解放される。すると、動力分配装置8のリングギヤから変速機7に伝達されたトルクが、サンギヤ23に伝達されるとともに、リングギヤ24が反力要素となり、キャリヤ26が出力要素となる。つまり、第1速が選択された場合は、サンギヤ23の回転数よりもキャリヤ26の回転数の方が低回転数となり、変速機7がいわゆる減速機として機能し、変速比が「1」よりも大きくなる。
【0036】
また、第2速(2nd)が選択された場合は、ブレーキB2が係合され、ブレーキB1およびクラッチC1が解放される。すると、動力分配装置8のリングギヤから変速機7に伝達されたトルクが、サンギヤ23に伝達されるとともに、サンギヤ19が反力要素となり、キャリヤ26が出力要素となる。つまり、第2速が選択された場合は、サンギヤ23の回転数よりもキャリヤ26の回転数の方が低回転数となり、変速機7がいわゆる減速機として機能し、変速比が「1」よりも大きくなる。なお、第1速が選択された場合の変速比は、第2速が選択された場合の変速比よりも大きくなる。
【0037】
さらに、第3速(3rd)が選択された場合は、クラッチC1が係合され、ブレーキB1,B2が解放される。すると、動力分配装置8のリングギヤから変速機7に伝達されたトルクが変速機7に伝達され、遊星歯車機構17,18を構成する回転要素が一体的に回転し、変速機7の入力回転数と出力回転数との比が「1」となる。つまり、変速機7の入力回転部材と出力回転部材とが直結状態となる。
【0038】
つぎに、停止または空転しているエンジン2を始動させる制御、具体的には、モータ・ジェネレータ14のトルクによりエンジン1をクランキングさせ、燃料の噴射および燃焼をおこない、エンジン1を自律運転させる過程で実行可能な制御の一例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。図1の制御例は、請求項1、6に対応するものである。まず電子制御装置34に入力される信号が処理され(ステップS1)、エンジン1を始動させる制御を実行中であるか否かが判断される(ステップS2)。このステップS2で肯定的に判断された場合は、動力分配装置8を含む回転部材、より具体的には、エンジン1および入力軸9およびダンパ機構1Bおよびモータ・ジェネレータ2などの慣性体で発生するねじり振動のレベルが所定値以上であるか否かが判断される(ステップS3)。ここで、ねじり振動のレベルが現在、所定値以上である場合、または、所定時間後に、ねじり振動のレベルが所定値以上になることが予想される場合のいずれを判断してもよい。
【0039】
このステップS3の判断は、例えばエンジン回転数が、共振周波数域に相当する回転数であるか否かにより、間接的に判断可能であり、例えば、図4および図5のマップが用いられる。図4に示すマップは、エンジン回転数と、回転方向における振動周波数との関係を示しており、エンジン回転数が高くなることにともない、振動周波数が高くなる特性を有している。また、図5に示すマップは、振動周波数と、振動レベルとの関係を示すマップであり、周波数が上昇することにともない振動レベルが上昇するが、更に周波数が上昇すると、振動レベルが低下する特性となることを示している。この図4および図5のマップから、エンジン回転数が上昇することにともない振動レベルが上昇し、さらにエンジン回転数が上昇すると、振動レベルが低下することが分かる。また、図5のマップにおいては、一例として、ブレーキB1が係合されている場合の特性と、ブレーキB1が解放されている場合の特性とが示されている。振動レベルがピークとなる周波数は、ブレーキB1の係合に対応する周波数f1は、ブレーキB1の解放に対応する周波数f2よりも低い。このように特性が異なる理由は、ブレーキB1が係合された場合と解放された場合とでは、動力伝達系の慣性質量が変化するからである。すなわち、ブレーキB1が係合された場合は、エンジン1をクランキングするモータ・ジェネレータ14のトルクが、変速機7を経由して車輪3に伝達される状態となっており、車両Veの全体が慣性体として働くからである。なお、エンジン回転数は、エンジン回転数センサの信号から判断してもよいし、モータ・ジェネレータ2およびモータ・ジェネレータ14の回転数から判断してもよい。
【0040】
そして、ステップS3の判断時点で、振動レベルが所定値以上となるような実エンジン回転数である場合、または、エンジン回転数が、振動レベルが所定値以上となるような領域に推移することが予測される場合は、前記ステップS3で肯定的に判断されて、ねじり共振が発生する滞留時間が、所定時間を超えるか否かが判断される(ステップS4)。このステップS4で肯定的に判断された場合は、現在、変速機7で係合されているクラッチのトルク容量を低下(スリップ・解放)、または高める(係合)制御がおこなわれる(ステップS5)。例えば、ステップS3,S4の判断時点で、第1速が選択されて変速機7でブレーキB1が係合され、かつ、エンジン1の始動制御が実行されている場合は、ブレーキB1を解放またはスリップさせてして振動レベルがピークとなる周波数を高くすることで、ねじり共振のレベルを低下させることが可能である。これに対して、ステップS3,S4の判断時点で、ブレーキB1が解放され、かつ、エンジン1の始動制御が実行されている場合は、ブレーキB1を係合またはスリップさせて振動レベルがピークとなる周波数を低くすることで、ねじり共振のレベルを低下させることが可能である。したがって、入力軸9に応力集中が発生することを抑制できる。このステップS5についで、モータ・ジェネレータ2を所定回転数になるように制御し(ステップS6)、リターンされる。
【0041】
このエンジン1の始動制御は、車両Veの走行中、または車両Veの低速走行中のいずれでも実行可能である。例えば、車両Veの停止中または走行中に、モータ・ジェネレータ14のトルクでエンジン1をクランキングする場合は、モータ・ジェネレータ14の反力をモータ・ジェネレータ2で確実に受け止めることができるように、モータ・ジェネレータ2の回転数を零にする制御が、ステップS6実行される。これに対して、車両Veが低車速で走行し、かつ、モータ・ジェネレータ14のトルクでエンジン1をクランキングする場合は、モータ・ジェネレータ2の回転数を、変速機7の入力回転数に一致させる制御が、ステップS6で実行される。さらに、ステップS2またはステップS3またはステップS3で否定的に判断された場合は、リターンする。なお、この実施例において抑制しようとしている動力伝達系のねじり共振は、モータ・ジェネレータ14のトルクをエンジン1に伝達する過程で発生するねじり共振、および、モータ・ジェネレータ14によるクランキングが終了して、エンジン1が自律回転し、そのエンジン1の爆発振動によるトルク変動が動力伝達系に伝達されて発生するねじり共振の両方が含まれる。
【0042】
ここで、車両Veが低車速で走行し、かつ、エンジン1を始動させる場合の回転要素の状態を、図6および図7の共線図に基づいて説明する。図6および図7の共線図において、「正」は回転要素が正回転することを示し、「逆」は回転要素が逆回転することを示す。正回転とはエンジン1の回転方向を示す。そして、動力分配装置8ではモータ・ジェネレータ14とモータ・ジェネレータ2との間に、エンジン1が位置している。また、変速機7では、サンギヤ23とサンギヤ19との間に、リングギヤ20およびキャリヤ26および出力回転部材27が位置している。そして、サンギヤ19と、リングギヤ20およびキャリヤ26および出力回転部材27との間に、リングギヤ24およびキャリヤ22が位置している。
【0043】
そして、図6に示すように、出力回転部材27が正回転し、かつ、第1速が選択され、かつ、ブレーキB1が係合されるとともに、エンジン2が空転している場合に、モータ・ジェネレータ14のトルクでエンジン1を始動させる場合を想定する。ここで、車速が一定であるとすれば、サンギヤ23の回転数は変化せず、一点鎖線で示すように動力分配装置8を含む動力伝達系がねじれやすい。つまり、モータ・ジェネレータ2およびリングギヤ11を支点とするモータ・ジェネレータ14の回転数の変化幅が広くなる。そこで、この実施例では、ブレーキB1を解放させることにより、図7に一点鎖線で示すように、サンギヤ23の回転数が実線で示す回転数を境として、所定範囲で高低に変化することが許容される。なお、サンギヤ23の回転数の変化範囲は、ステップS6の制御で述べたように、モータ・ジェネレータ2により規制される。この図7の共線図においては、モータ・ジェネレータ2およびリングギヤ23の回転数の変化が許容されるため、ねじり共振が抑制されて、モータ・ジェネレータ14の回転数の変化幅が狭くなっている。
【0044】
ここで、図1に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS1,S2,S3,S4が、この発明のねじり共振判断手段に相当し、ステップS5が、この発明の共振抑制手段に相当し、ステップS6が、この発明のモータ・ジェネレータ制御手段に相当する。また、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン1が、この発明の第1の駆動力源(原動機)に相当し、モータ・ジェネレータ2が、この発明におけるに電動機に相当し、車輪3が、この発明の車輪に相当し、動力分配装置6が、この発明の電気的変速機および第1の遊星歯車機構に相当し、変速機7およびクラッチC1およびブレーキB1,B2が、この発明の回転状態切替機構に相当し、クラッチC1およびブレーキB1,B2が、この発明におけるクラッチに相当し、キャリヤ13が、この発明の入力要素に相当し、サンギヤ10が、この発明の反力要素に相当し、リングギヤ11が、この発明の出力要素に相当し、変速機7が、この発明の変速機に相当し、サンギヤ23およびキャリヤ22が、この発明の入力回転部材として機能し、キャリヤ26が、この発明の出力回転部材として機能する。
【0045】
さらに、サンギヤ10が、この発明の第1のサンギヤに相当し、リングギヤ11が、この発明の第1のリングギヤに相当し、キャリヤ13が、この発明の第1のキャリヤに相当し、遊星歯車機構17が、この発明の第2の遊星歯車機構に相当し、遊星歯車機構18が、この発明の第3の遊星歯車機構に相当し、サンギヤ19が、この発明の第2のサンギヤに相当し、リングギヤ20が、この発明の第2のリングギヤに相当し、キャリヤ22が、この発明の第2のキャリヤに相当し、サンギヤ23が、この発明の第3のサンギヤに相当し、リングギヤ24が、この発明の第3のリングギヤに相当し、キャリヤ26が、この発明の第3のキャリヤに相当し、クラッチC1が、この発明のクラッチに相当し、ブレーキB1が、この発明の第1のブレーキに相当し、ブレーキB2が、この発明の第2のブレーキに相当する。
【0046】
つぎに、図2に示された車両Veで実行可能な他の制御例を、図8のフローチャートに基づいて説明する。図8のフローチャートは、請求項1、6、7に対応する制御例である。まず、電子制御装置34に入力される信号が処理され(ステップS11)、車両Veが走行し、かつ、エンジン2が駆動中であるか否かが判断される(ステップS12)。エンジン2が駆動中とは、エンジン2が自律回転していることを意味し、ステップS12で肯定的に判断された場合は、モータ・ジェネレータ2またはモータ・ジェネレータ14の回転変動の周波数が、入力軸9を含む動力伝達系でねじり共振が発生する領域にあるか否かが判断される(ステップS13)。このステップS13の判断は、前述したステップS3の処理と同様にしておこなうことが可能である。すなわち、モータ・ジェネレータ2およびモータ・ジェネレータ14の回転数と、ねじり振動レベルとの対応関係を示すデータをマップ化しておき、そのマップを用いてステップS13の判断をおこなえばよい。また、ねじり共振が発生する原因としては、始動されたエンジン1のトルクが入力軸9に伝達されて発生する場合と、車輪3がスリップして過大なトルクが変速機7を経由して入力軸9に伝達されて発生する場合とが挙げられる。
【0047】
ステップS13で肯定的に判断された場合は、モータ・ジェネレータ2またはモータ・ジェネレータ14の回転変動幅が、所定値を実際に越えているか否かが判断される(ステップS14)。このステップS14で肯定的に判断された場合は、ねじり共振を抑制するように、変速機7のクラッチをのトルク容量を増加または低下、すなわち、クラッチを係合・解放・スリップさせる制御が実行される(ステップ15)。このステップS15の処理は、ステップS5の処理と同じであり、ステップS5と同じ原理により、ねじり共振が抑制される。このステップS15についで、変速機7のクラッチの解放、またはスリップによりエンジン負荷が低下して、エンジン回転数が過剰に上昇してしまうこと(吹き上がり)を抑制するように、モータ・ジェネレータ2の回転数が制御され(ステップS16)、リターンされる。このように、図8の制御例によれば、図1の制御例と同様に、モータ・ジェネレータ2のトルクによりエンジン2を始動させた場合の他に、車両Veの走行中に車輪3から伝達される強制力より、ねじり共振が発生することを回避できる。また、図8のステップS13,S14では、モータ・ジェネレータ2,14の回転数を用いているため、車輪3から動力伝達系に入力される強制力をも検知することができる。なお、図8のステップS12またはステップS13またはステップS14で否定的に判断された場合は、リターンされる。
【0048】
なお、上記の説明では、変速機7で第1速が選択されている場合に、ブレーキB1のトルク容量を制御することにより、ねじり共振を抑制する場合を説明しているが、第2速または第3速が選択されている場合にも、図1および図8の制御例を実行可能である。この第2速の場合は、ブレーキB2の係合・解放に対応させて、周波数と振動レベルとの関係を示すマップを用いればよい。また、第3速の場合は、クラッチC1の係合・解放に対応させて、周波数と振動レベルとの関係を示すマップを用いればよい。さらに、各変速段毎に、クラッチの係合・解放に対応して、周波数と振動レベルとの関係を全てマップ化してあれば、ねじり共振レベルが高いと判断される変速段を設定するためのクラッチを解放(係合)し、ねじり共振レベルが低いと判断される変速段を達成するクラッチを係合(解放)することにより、ねじり共振レベルの上昇を抑制できる。この場合、変速段自体を変更することも可能である。ここで、図8に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS11,S12,S13,S14が、この発明のねじり共振判断手段に相当し、ステップS15が、この発明の共振抑制手段に相当し、ステップS16が、この発明のモータ・ジェネレータ制御手段に相当する。
【0049】
つぎに、図1および図8の制御例を実行可能なハイブリッド車の他の構成例を、図9に基づいて説明する。この図9に示された車両Veは請求項1、4、5に対応している。図9に示された構成において、図2に示された構成と同じ構成については、図2と同じ符号を付してある。図9に示された車両Veにおいては、エンジン1から車輪3に至る動力伝達経路に変速機35が設けられている。この変速機35は、同軸上に配置されたダブルピニオン型の遊星歯車機構36およびシングルピニオン型の遊星歯車機構37を有している。遊星歯車機構36は、サンギヤ38およびリングギヤ39と、サンギヤ38に噛合されたピニオンギヤ40と、リングギヤ39およびピニオンギヤ40に噛合されたピニオンギヤ41と、ピニオンギヤ40,41を自転、かつ、公転可能に保持するキャリヤ42とを有している。一方、遊星歯車機構37は、サンギヤ43およびリングギヤ44と、サンギヤ43およびリングギヤ44に噛合されたピニオンギヤ45を自転、かつ、公転可能に保持するキャリヤ42とを有している。つまり、キャリヤ42は、遊星歯車機構37,38で共用化されている。そして、リングギヤ44が出力回転部材27に連結、具体的には一体回転するように連結されている。
【0050】
さらに、動力分配装置8のリングギヤ11と、サンギヤ43とが一体回転するように連結され、リングギヤ39とリングギヤ44とが一体回転するように連結されている。また、回転要素同士の連結関係、および回転要素の回転・停止を制御するクラッチが設けられている。このクラッチとして、動力分配装置8のキャリヤ13および入力軸9を、キャリヤ42に対して選択的に係合・解放させるクラッチC1と、リングギヤ11およびサンギヤ43を、サンギヤ38に対して選択的に係合・解放させるクラッチC2と、サンギヤ38の回転・停止を制御するブレーキB1と、キャリヤ42の回転・停止を制御するリバースブレーキBRとが設けられている。これらのクラッチとしては、摩擦式クラッチ、電磁式クラッチ、噛み合い式クラッチのいずれを用いてもよいが、この実施例では摩擦式クラッチを用いる場合について説明する。また、これらのクラッチは、油圧制御装置33により、トルク容量が制御されるように構成されている。
【0051】
上記のように構成された動力分配装置8と変速機35との関係を、図10の共線図に基づいて説明する。モータ・ジェネレータ2とモータ・ジェネレータ14との間にエンジン1が配置されており、エンジン1とモータ・ジェネレータ14との間に、変速機35のサンギヤ38およびリングギヤ39,44が配置されている。また、エンジン1とサンギヤ38との間に、リングギヤ39,44が配置されている。さらに、キャリヤ42はエンジン1と同じ位置に配置されており、モータ・ジェネレータ2と一回回転するサンギヤ43が同じ位置に配置されている。
【0052】
そして、変速機35においては、動力伝達状態を制御するために、前進ポジションおよび後進ポジション(Rev)を選択的に切替可能であるとともに、前進ポジションでは、低速モード(Lo)、中速モード(Mid)、高速モード(Hi)を選択的に切替可能である。ここで、低速モード、中速モード、高速モードが選択された場合、および後進ポジションが選択された場合におけるクラッチの状態を、図11に基づいて説明する。図11において、「○」印はクラッチが係合されることを示し、「×」印はクラッチが解放されることを示す。この図11に示すように、低速モードが選択された場合は、ブレーキB1が係合され、その他のクラッチは全て解放される。低速モードが選択された場合に、エンジントルクが動力分配装置8を経由して変速機35のサンギヤ43に伝達されると、停止されているサンギヤ38が反力要素となり、リングギヤ44が出力要素となる。このように、低速モードが選択された場合は、サンギヤ43の回転速度に対してリングギヤ44の回転速度が減速される。すなわち、変速機35の変速比が「1」よりも大きくなる。
【0053】
また、中速モードが選択された場合は、クラッチC1が係合され、その他のクラッチは全て解放される。そして、エンジントルクが動力分配装置8を経由して変速機35のキャリヤ42に入力され、かつ、サンギヤ38が反力要素となり、リングギヤ48が出力要素となる。このように、中速モードが選択された場合は、図10に示す共線図上で、動力分配装置8の回転状態を示すを示す線分と、変速機35の回転状態を示す線分とが重なる。このように、中速モードが選択された場合は、変速機35に対して、サンギヤ43およびクラッチC1の2系統を経由して動力が伝達される。なお、低速モードが選択された場合は、変速機35の変速比はモータ・ジェネレータ2の回転数に応じて決定される。また、中速モードが選択された場合は、モータ・ジェネレータ2,14の回転数およびエンジン回転数に基づいて、変速機35の変速比が決定される。そして、中速モードが選択された場合は、変速機35の変速比は「1」よりも大きい値、「1」以下の値など、任意に調整可能である。
【0054】
さらに、高速モードが選択された場合は、クラッチC2が係合され、その他のクラッチは全て解放されて、変速機35を構成する回転要素が一体回転する状態となる。すなわち、変速機35の変速比が「1」に固定される。一方、後進ポジションが選択された場合は、リバースブレーキBRが係合され、その他のクラッチは全て解放される。そして、エンジントルクが動力分配装置8を経由して変速機35のサンギヤ43に入力されると、キャリヤ42が反力要素となり、リングギヤ48が、前進ポジションとは逆方向に回転する。
【0055】
この図9に示された車両Veにおいても、図1または図8の制御例を実行可能である。この場合、変速機35のモードを設定する各クラッチの係合・解放状態と、ねじり共振レベルとの関係をマップ化しておき、そのマップを用いて各クラッチのトルク容量を制御することにより、いずれのモードが選択されている場合でも、動力伝達系で発生する共振を抑制することができる。この場合、選択されているモードのクラッチの係合・解放状態を切り替える他、選択されているモードを別のモードに変更する制御を実行することも可能である。
【0056】
図9に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、変速機35およびクラッチC1,C2およびブレーキB1,BRが、この発明の回転状態切替機構に相当し、クラッチC1,C2およびブレーキB1,BRが、この発明の複数のクラッチに相当し、低速モードおよび中速モードおよび高速モードが、この発明における複数のモードに相当する。また、遊星歯車機構36が、この発明のダブルピニオン型遊星歯車機構に相当し、遊星歯車機構37が、この発明のシングルピニオン型遊星歯車機構に相当し、サンギヤ38が、この発明の第2のサンギヤに相当し、リングギヤ39が、この発明の第2のリングギヤに相当し、ピニオンギヤ40が、この発明の第1のピニオンギヤに相当し、ピニオンギヤ41が、この発明の第2のピニオンギヤに相当し、キャリヤ42が、この発明の第2のキャリヤおよび第3のキャリヤに相当し、サンギヤ43が、この発明の第3のサンギヤに相当し、リングギヤ44が、この発明の第3のリングギヤに相当し、クラッチC1が、この発明の第1のクラッチに相当し、クラッチC2が、この発明の第2のクラッチに相当し、ブレーキB1が、この発明の第1のブレーキに相当し、リバースブレーキBRが、この発明のリバースブレーキに相当する。
とを含み、
【0057】
なお、図2に基づいて説明した回転状態切替機構(変速機7および各クラッチ)と、図9に示された回転状態切替機構としてのモード切替機構(変速機35および各クラッチ)との相違点を説明すると、図2に示された例では、エンジントルクを変速機7に伝達する場合、動力分配装置8の入力要素および出力要素を、動力が必ず(直接)経由するが、図9の例では、エンジントルクを、動力分配装置8の入力要素および出力要素を直接経由させることなく、変速機35と動力分配装置8とを組み合わせて動力循環させて伝達できる中速モードを選択できる。また、図2に示す動力分配装置8および変速機7は、図6および7に示すように、変速機7の回転要素が、動力分配装置8の回転要素同士の間に位置していないとともに、動力分配装置8の回転要素が、変速機7の回転要素同士の間に位置していない。これに対して、図9に示す動力分配装置8および変速機35の場合、図10に示すように、変速機35の回転要素が、中速モードで動力分配装置8の回転要素同士の間に位置している点が異なる。
【0058】
さらに、図1および図8の制御例で抑制しようとするねじり共振とは、低次の振動モード、具体的には1次または2次の振動モードに関してであり、3次以上の高次の振動モードとは区別して制御が実行される。なお、実用上の必要性に応じて、3次以上の振動モードについて解析し、ねじり共振レベルが高くならないようにすることも可能である。なお、狙いとするn次の振動モードで共振を回避できれば、他の振動モードで共振が発生しても支障はない。この実施例は駆動力源のトルクが前輪に伝達される車両、または前輪および後輪に伝達される車両にも適用可能である。更に第4速以上の変速段を設定可能な変速機を有するハイブリッド車においても、図1および図8の制御例を実行可能である。また、前進ポジションで4以上のモードを設定可能な変速機を有するハイブリッド車においても、図1および図8の制御例を実行可能である。また、この発明の回転状態切替機構は、複数のクラッチ(もしくは係合装置)の係合・解放状態を制御する(トルク容量を制御する)ことにより、動力伝達状態が変更されるように構成されている。また、クラッチは、電磁式クラッチ、油圧制御式クラッチ、パウダ式クラッチ、同期噛み合い式クラッチなどを用いることができる。また、回転状態切替機構を構成するクラッチには、回転要素の回転・停止を制御するブレーキも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明のハイブリッド車において実行可能な制御例を示すフローチャートである。
【図2】図1に示す制御例を実行可能な車両のパワートレーンおよび制御系統を示す概念図である。
【図3】図2に示す変速機の変速段と、クラッチの係合・解放制御との関係を示す図表である。
【図4】図1の制御例で用いるマップの一例である。
【図5】図1の制御例で用いるマップの一例である。
【図6】図2に示された動力分配装置および変速機を構成する回転要素の状態を示す共線図である。
【図7】図2に示された動力分配装置および変速機を構成する回転要素の状態を示す共線図である。
【図8】この発明のハイブリッド車において実行可能な他の制御例を示すフローチャートである。
【図9】図1および図8に示す制御例を実行可能な車両の他の構成例を示す概念図である。
【図10】図9に示された動力分配装置および変速機の回転要素の位置関係を示す共線図である。
【図11】図9に示された変速機の各モードおよび後進ポジションと、クラッチの係合・解放との関係を示す図表である。
【符号の説明】
【0060】
1…エンジン、 3…車輪、 6…動力分配装置、 7,35…変速機、 10,19,23,38…サンギヤ、 11,20,24,39…リングギヤ、 13,22,26,42…キャリヤ、 17,18,36,37…遊星歯車機構、 40,41…ピニオンギヤ、 C1,C2…クラッチ、 B1,B2,BR…ブレーキ、 Ve…車両。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の駆動力源から車輪に至る動力伝達経路に電気的変速機が設けられており、動力伝達経路における電気的変速機よりも下流側に、機械的に構成された回転状態切替機構が設けられており、前記回転状態切替機構は、動力伝達状態を制御し、かつ、係合・解放されるクラッチを有している車両用駆動装置の制御装置において、
前記電気的変速機にトルクが伝達されて、その電気的変速機を含む動力伝達系でねじり共振が発生するか否かを判断するねじり共振判断手段と、
前記ねじり共振が発生すると判断された場合は、前記クラッチのトルク容量を制御する共振抑制手段と
を備えていることを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記回転状態切替機構は、入力回転部材と出力回転部材との間の変速比を変更可能な変速機を含み、前記クラッチの係合・解放を切り替えることにより、その変速比が制御される構成を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項3】
前記電気的変速機は、第1の遊星歯車機構を備えており、この第1の遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1のサンギヤおよび第1のリングギヤと、第1のサンギヤおよび第1のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第1のキャリヤとを有しており、この第1のキャリヤが前記電気的変速機の入力要素であり、前記第1のリングギヤが前記電気的変速機の出力要素に相当し、前記第1のサンギヤが前記電気的変速機の反力要素に相当するとともに、
前記変速機は、同軸上に配置された第2の遊星歯車機構および第3の遊星歯車機構を備えており、前記第2の遊星歯車機構は、第2のサンギヤおよび第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤおよび第2のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第2のキャリヤとを有しており、前記第3の遊星歯車機構は、第3のサンギヤおよび第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤおよび第3のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第3のキャリヤとを有しており、前記第1のリングギヤと前記第3のサンギヤとが連結され、前記第2のリングギヤと第3のキャリヤとが連結され、前記第2のキャリヤと前記第3のリングギヤとが連結されており、前記第3のキャリヤが前記変速機の出力回転部材に相当し、
前記クラッチは、前記第1のリングギヤおよび前記第3のサンギヤを、前記第2のキャリヤに対して選択的に係合・解放させるクラッチと、前記第2のキャリヤおよび前記第3のリングギヤの回転・停止を選択的に切り換える第1のブレーキと、前記第2のサンギヤの回転・停止を選択的に切り換える第2のブレーキとを含み、
前記共振抑制手段は、前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項4】
前記回転状態切替機構は、前記クラッチの係合・解放を制御することにより、動力伝達状態が異なる複数のモードを選択的に切替可能なモード切替機構を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項5】
前記電気的変速機は、第1の遊星歯車機構を備えており、この第1の遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1のサンギヤおよび第1のリングギヤと、前記第1のサンギヤおよび第1のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第1のキャリヤとを有しており、この第1のキャリヤが前記入力要素に相当し、前記第1のリングギヤが前記出力要素に相当し、前記第1のサンギヤが前記反力要素に相当するとともに、
前記モード切替機構は、同軸上に配置されたダブルピニオン型遊星歯車機構およびシングルピニオン型遊星歯車機構を備えており、前記ダブルピニオン型遊星歯車機構は、第2のサンギヤおよび第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤに噛合された第1のピニオンギヤと、前記第2のリングギヤおよび第1のピニオンギヤに噛合された第2のピニオンギヤと、前記第1のピニオンギヤおよび第2のピニオンギヤを保持する第2のキャリヤとを有しており、前記シングルピニオン型遊星歯車機構は、第3のサンギヤおよび第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤおよび第3のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第3のキャリヤとを有しており、この第3のリングギヤに前記車輪が動力伝達可能に連結されるとともに、
前記第1のリングギヤと前記第3のサンギヤとが連結され、前記第2のリングギヤと第3のリングギヤとが連結され、前記第2のキャリヤと前記第3のキャリヤとが連結されており、
前記クラッチは、前記第1のキャリヤを前記第3のキャリヤに対して選択的に係合・解放させる第1のクラッチと、前記第1のリングギヤおよび前記第3のサンギヤを、前記第2のサンギヤに対して選択的に係合・解放させる第2のクラッチと、前記第2のサンギヤの回転・固定を選択的に切り換える第1のブレーキと、前記第2のキャリヤおよび第3のキャリヤの回転・固定を選択的に切り換えるリバースブレーキとを含み、
前記共振抑制手段は、前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含むことを特徴とする請求項4に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項6】
前記共振抑制手段は、第1の電動機のトルクで前記第1の駆動力源を始動させ、かつ、第2の電動機で反力を受けて前記第1の駆動力源を始動させる場合に、前記ねじり共振を抑制するように前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含み、
前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する場合に、前記第2の電動機を停止させるか、または、前記第2の電動機の回転数と、前記変速機の入力回転数とを一致させるように、前記第2の電動機の回転数を制御する電動機制御手段を、更に有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項7】
前記共振制御手段は、前記第1の駆動力源を始動させる場合に前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含み、
前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する場合に、前記第1の駆動力源の回転数の上昇を抑制するように、前記第2の電動機の回転数を制御する電動機制御手段を、更に有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項8】
前記変速機の入力側にトルク伝達可能に連結された第2の駆動力源が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項9】
前記電気的変速機は、相互に差動回転可能な入力要素と反力要素と出力要素とを有しており、前記入力要素が前記第1の駆動力源に連結され、前記反力要素が第1の電動機に連結され、前記出力要素が第2の電動機および前記回転状態切替機構に連結されているとともに、前記第1の電動機の出力を制御することにより、前記電気的変速機における入力要素と出力要素との間の変速比を無段階に制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項10】
前記共振抑制手段は、ねじり共振を抑制するように前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含むことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項1】
第1の駆動力源から車輪に至る動力伝達経路に電気的変速機が設けられており、動力伝達経路における電気的変速機よりも下流側に、機械的に構成された回転状態切替機構が設けられており、前記回転状態切替機構は、動力伝達状態を制御し、かつ、係合・解放されるクラッチを有している車両用駆動装置の制御装置において、
前記電気的変速機にトルクが伝達されて、その電気的変速機を含む動力伝達系でねじり共振が発生するか否かを判断するねじり共振判断手段と、
前記ねじり共振が発生すると判断された場合は、前記クラッチのトルク容量を制御する共振抑制手段と
を備えていることを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記回転状態切替機構は、入力回転部材と出力回転部材との間の変速比を変更可能な変速機を含み、前記クラッチの係合・解放を切り替えることにより、その変速比が制御される構成を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項3】
前記電気的変速機は、第1の遊星歯車機構を備えており、この第1の遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1のサンギヤおよび第1のリングギヤと、第1のサンギヤおよび第1のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第1のキャリヤとを有しており、この第1のキャリヤが前記電気的変速機の入力要素であり、前記第1のリングギヤが前記電気的変速機の出力要素に相当し、前記第1のサンギヤが前記電気的変速機の反力要素に相当するとともに、
前記変速機は、同軸上に配置された第2の遊星歯車機構および第3の遊星歯車機構を備えており、前記第2の遊星歯車機構は、第2のサンギヤおよび第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤおよび第2のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第2のキャリヤとを有しており、前記第3の遊星歯車機構は、第3のサンギヤおよび第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤおよび第3のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第3のキャリヤとを有しており、前記第1のリングギヤと前記第3のサンギヤとが連結され、前記第2のリングギヤと第3のキャリヤとが連結され、前記第2のキャリヤと前記第3のリングギヤとが連結されており、前記第3のキャリヤが前記変速機の出力回転部材に相当し、
前記クラッチは、前記第1のリングギヤおよび前記第3のサンギヤを、前記第2のキャリヤに対して選択的に係合・解放させるクラッチと、前記第2のキャリヤおよび前記第3のリングギヤの回転・停止を選択的に切り換える第1のブレーキと、前記第2のサンギヤの回転・停止を選択的に切り換える第2のブレーキとを含み、
前記共振抑制手段は、前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項4】
前記回転状態切替機構は、前記クラッチの係合・解放を制御することにより、動力伝達状態が異なる複数のモードを選択的に切替可能なモード切替機構を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項5】
前記電気的変速機は、第1の遊星歯車機構を備えており、この第1の遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1のサンギヤおよび第1のリングギヤと、前記第1のサンギヤおよび第1のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第1のキャリヤとを有しており、この第1のキャリヤが前記入力要素に相当し、前記第1のリングギヤが前記出力要素に相当し、前記第1のサンギヤが前記反力要素に相当するとともに、
前記モード切替機構は、同軸上に配置されたダブルピニオン型遊星歯車機構およびシングルピニオン型遊星歯車機構を備えており、前記ダブルピニオン型遊星歯車機構は、第2のサンギヤおよび第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤに噛合された第1のピニオンギヤと、前記第2のリングギヤおよび第1のピニオンギヤに噛合された第2のピニオンギヤと、前記第1のピニオンギヤおよび第2のピニオンギヤを保持する第2のキャリヤとを有しており、前記シングルピニオン型遊星歯車機構は、第3のサンギヤおよび第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤおよび第3のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第3のキャリヤとを有しており、この第3のリングギヤに前記車輪が動力伝達可能に連結されるとともに、
前記第1のリングギヤと前記第3のサンギヤとが連結され、前記第2のリングギヤと第3のリングギヤとが連結され、前記第2のキャリヤと前記第3のキャリヤとが連結されており、
前記クラッチは、前記第1のキャリヤを前記第3のキャリヤに対して選択的に係合・解放させる第1のクラッチと、前記第1のリングギヤおよび前記第3のサンギヤを、前記第2のサンギヤに対して選択的に係合・解放させる第2のクラッチと、前記第2のサンギヤの回転・固定を選択的に切り換える第1のブレーキと、前記第2のキャリヤおよび第3のキャリヤの回転・固定を選択的に切り換えるリバースブレーキとを含み、
前記共振抑制手段は、前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含むことを特徴とする請求項4に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項6】
前記共振抑制手段は、第1の電動機のトルクで前記第1の駆動力源を始動させ、かつ、第2の電動機で反力を受けて前記第1の駆動力源を始動させる場合に、前記ねじり共振を抑制するように前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含み、
前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する場合に、前記第2の電動機を停止させるか、または、前記第2の電動機の回転数と、前記変速機の入力回転数とを一致させるように、前記第2の電動機の回転数を制御する電動機制御手段を、更に有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項7】
前記共振制御手段は、前記第1の駆動力源を始動させる場合に前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含み、
前記ねじり共振を抑制するように、前記クラッチのトルク容量を制御する場合に、前記第1の駆動力源の回転数の上昇を抑制するように、前記第2の電動機の回転数を制御する電動機制御手段を、更に有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項8】
前記変速機の入力側にトルク伝達可能に連結された第2の駆動力源が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項9】
前記電気的変速機は、相互に差動回転可能な入力要素と反力要素と出力要素とを有しており、前記入力要素が前記第1の駆動力源に連結され、前記反力要素が第1の電動機に連結され、前記出力要素が第2の電動機および前記回転状態切替機構に連結されているとともに、前記第1の電動機の出力を制御することにより、前記電気的変速機における入力要素と出力要素との間の変速比を無段階に制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項10】
前記共振抑制手段は、ねじり共振を抑制するように前記クラッチのトルク容量を制御する手段を含むことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−118718(P2007−118718A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312056(P2005−312056)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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