説明

車両

【課題】蓄電手段の残存電力量をより適正に管理しつつ運転者による加速要求に良好に応える。
【解決手段】バッテリ50の出力制限Woutは、走行に要求される要求トルクTr*が閾値Tref以上であると共にバッテリ50の残存電力量Erが現在位置から目的地に到達するまでにバッテリ50から放電される電力量の推定値である推定放電電力量Eest以上であるとき、および要求トルクTr*が閾値Tref以上であると共にバッテリ50の残存電力量Erが推定放電電力量Eest未満であり、かつ運転者による加速要求の度合いが所定度合以上であってキックダウンスイッチがオンしているときに、一時的に値αだけ増加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力を入出力可能な電動機と、当該電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段とを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両として、バッテリの残存容量および温度がそれぞれ予め定められた制限値を越えないように当該バッテリの充電および放電を制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両は、アクセルペダルの踏み込み角度が閾値を超えているか、あるいはアクセルペダルの踏み込み速度が閾値を超えており、加速操作が行われたと判断したときに、バッテリの残存容量および温度による当該バッテリの放電の制限を緩和する。これにより、この車両では、加速のためのアクセル操作が行なわれたときに電動機からの出力の低下を回避することができる。なお、この種の車両としては、走行予定経路の走行区分において走行した車両の速度の変動量と、走行区分において走行した車両の走行時における平均速度と、走行区分における平均勾配とを含む外部情報を取得し、外部情報と、それぞれの外部情報に対応する予め設定された自車両のパラメータとを用いて走行区分における走行エネルギーを算出すると共に、当該走行エネルギーを用いて走行区分におけるモータのみで走行可能となるEV上限出力値を設定するものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−291104号公報
【特許文献2】特開2010−052652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の車両のように、アクセルペダルの踏み込み角度や踏み込み速度に基づいて加速操作が行われたと判断されたときにバッテリの残存容量および温度によるバッテリの放電の制限を緩和する場合、アクセルペダルの踏み込み角度や踏み込み速度に対する閾値を小さくすれば運転者による加速要求に良好に応えることができるもののバッテリの残存容量の低下を促進させてしまうおそれがある。これに対して、また、アクセルペダルの踏み込み角度や踏み込み速度に対する閾値を大きくすればバッテリの残存容量の急減を抑制することができるものの運転者による加速要求に良好に応えることができなくなるおそれがある。
【0005】
本発明の車両は、蓄電手段の残存電力量をより適正に管理しつつ運転者による加速要求に良好に応えることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の車両は、動力を入出力可能な電動機と、該電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段と、該蓄電手段の放電に許容される電力である放電許容電力を設定する放電許容電力設定手段と、前記蓄電手段からの放電電力が前記放電許容電力の範囲内となると共に走行に要求される要求動力を出力するように前記電動機を制御する制御手段とを備えた車両において、
前記車両の現在位置から目的地までの走行距離および平均速度を取得するナビゲーション装置と、
前記現在位置から前記目的地に到達するまでに前記蓄電手段から放電される電力量の推定値である推定放電電力量を前記ナビゲーション装置により取得された前記走行距離および前記平均速度に基づいて取得する推定放電電力量取得手段と、
前記要求動力が所定値以上であると共に前記蓄電手段の残存電力量が前記推定放電電力量以上であるとき、および前記要求動力が前記所定値以上であると共に前記蓄電手段の残存電力量が前記推定放電電力量未満であり、かつ運転者による加速要求の度合いが所定度合以上であるときに、前記放電許容電力設定手段により設定された前記放電許容電力量を一時的に増加させる放電許容電力増加手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の車両では、現在位置から目的地に到達するまでに蓄電手段から放電される電力量の推定値である推定放電電力量がナビゲーション装置により取得された走行距離および平均速度に基づいて取得され、走行に要求される要求動力が所定値以上であると共に蓄電手段の残存電力量が推定放電電力量以上であるとき、および要求動力が所定値以上であると共に蓄電手段の残存電力量が推定放電電力量未満であり、かつ運転者による加速要求の度合いが所定度合以上であるときに、放電許容電力設定手段により設定された放電許容電力量が一時的に増加される。このように、走行に要求される要求動力が所定値以上であるときに蓄電手段の残存電力量が推定放電電力量以上であって十分に確保されていれば、蓄電手段の放電許容電力の一時的な増加を許容しても蓄電手段の残存電力量が急減するおそれは少なく、放電許容電力を一時的に増加させて電動機から速やかに十分な動力を出力可能とすることで運転者による加速要求に良好に応えることができる。また、走行に要求される要求動力が所定値以上であるときに蓄電手段の残存電力量が推定放電電力量未満である場合には、運転者による加速要求の度合いが所定度合以上であることを条件として蓄電手段の放電許容電力の一時的な増加を許容することにより、運転者による加速要求に必要十分に応えつつ蓄電手段の残存電力量の急減を抑制することができる。従って、この車両では、蓄電手段の残存電力量をより適正に管理しつつ運転者による加速要求に良好に応えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例に係るハイブリッド自動車20の概略構成図である。
【図2】実施例のハイブリッドECU70により実行される出力制限拡大ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の実施例に係る車両としてのハイブリッド自動車20の概略構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油等を燃料とするエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介してキャリア34が接続されたプラネタリギヤ30と、プラネタリギヤ30のサンギヤ31に接続された発電可能なモータMG1と、プラネタリギヤ30のリングギヤ32に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに連結された減速ギヤ35と、この減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに接続されたモータMG2と、リングギヤ軸32aにギヤ機構37およびディファレンシャルギヤ38を介して接続された駆動輪39a,39bと、モータMG1と電力ライン54との間に介設されたインバータ41と、モータMG2と電力ライン54との間に介設されたインバータ42と、インバータ41,42を介してモータMG1およびMG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40と、電力ライン54に接続された例えばリチウムイオン二次電池あるいはニッケル水素二次電池であるバッテリ50と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52と、ナビゲーション装置60と、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52と通信しながら車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「ハイブリッドECU」という)70とを備える。
【0012】
モータECU40は、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号に基づくモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2といったモータMG1,MG2に関するデータを計算する。バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、バッテリ50の蓄電割合SOCを算出したり、蓄電割合SOCと所定の充放電制約とに基づいてバッテリ50の充放電要求パワーを算出したり、バッテリ50の蓄電割合SOCとバッテリ50の温度とに基づいてバッテリ50の充電に許容される電力である充電許容電力としての入力制限Winとバッテリ50の放電に許容される電力である放電許容電力としての出力制限Woutとを算出したりする。
【0013】
ナビゲーション装置60は、地図情報等が記憶されたハードディスクやフラッシュメモリといった記憶媒体と通信ポートを有する制御部とを内蔵する本体や、車両の現在位置に関する情報を受信する図示しないGPSアンテナと、車両の現在位置に関する情報や目的地までの走行路等の各種情報を表示すると共に操作者による各種指示を入力可能な図示しない例えばタッチパネル式のディスプレイ等を備える。地図情報には、区間毎の道路情報やサービス情報(観光情報や駐車場等)等がデータベース化して記憶されており、道路情報には、距離情報や幅員情報,地域情報(市街地,郊外),種別情報(一般道路,高速道路),勾配情報,法定速度,平均速度、信号機の位置等が含まれている。ナビゲーション装置60は、ハイブリッドECU70と通信しており、必要に応じて現在位置から目的地までの推定走行距離L等の情報をハイブリッドECU70に出力する。なお、ナビゲーション装置60は、地図情報等を外部から通信により入力し、当該地図情報をROM等の記憶媒体に一時的に格納して使用するものであってもよい。
【0014】
また、実施例のハイブリッド自動車20には、アクセルペダル83が大きく踏み込まれたときに当該アクセルペダル83と当接してオンするキックダウンスイッチ84aが設けられている。実施例のキックダウンスイッチ84aは、アクセルペダル83の踏み込み量が全ストロークの例えば80%となるときにアクセルペダル83と当接するように配置されており、アクセルペダル83と当接してからアクセルペダル83との当接が解除されるまでキックダウン信号をハイブリッドECU70に出力する。また、実施例のキックダウンスイッチ84aには、当該キックダウンスイッチ84aとアクセルペダル83とが当接した以降のアクセル操作感がそれまでよりも重くなるよう図示しないバネが備えられている。なお、実施例のハイブリッドECU70は、キックダウンスイッチ84aからの信号を入力していないときには所定のキックダウンフラグFkdを値0に設定し、キックダウンスイッチ84aからキックダウン信号を入力するとキックダウンフラグFkdを値1に設定する。
【0015】
上述のように構成された実施例のハイブリッド自動車20の走行に際して、ハイブリッドECU70は、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速Vに基づいて走行に要求される要求トルクTr*や、要求トルクTr*に基づく走行に要求される要求走行パワーPr*(要求トルクTr*とリングギヤ軸32aの回転数Nrとの積)を設定し、要求トルクTr*や要求走行パワーPr*、更にはバッテリ50の蓄電割合SOC等に基づいてエンジン22を運転すべきか否かを判定すると共に、要求トルクTr*等に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*(エンジン停止中はそれぞれ値0)を設定する。更に、ハイブリッドECU70は、要求トルクTr*あるいはエンジン22の目標トルクTe*等に基づいてバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*といった指令信号を生成し、生成した信号をエンジンECU24やモータECU40に送信する。エンジンECU24は、エンジン22が運転される場合、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とからなる運転ポイントでエンジン22が作動するように吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御等を行なう。また、モータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようにインバータ41,42のスイッチング制御を行なう。そして、実施例のハイブリッド自動車20では、所定条件下でバッテリ50の出力制限Woutを一時的に拡大(増加)させてモータMG2から速やかに十分な動力を出力可能とし、それにより運転者による加速要求に良好に応えることができるようにしている。
【0016】
次に、実施例のハイブリッド自動車20においてバッテリ50の出力制限Woutを一時的に拡大する手順について説明する。図2は、ハイブリッドECU70により実行される出力制限拡大ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0017】
図2の出力制限拡大ルーチンの開始に際して、ハイブリッドECU70は、まず、要求トルクTr*や、バッテリ50の残存電力量Erおよび出力制限Wout、ナビゲーション装置60からの推定走行距離Lや平均車速Vave(例えば、一般道路走行時には25km/h,高速道路走行時には70km/h)、上述のキックダウンフラグFkdの値といった制御に必要なデータを入力する(ステップS100)。ここで、バッテリ50の残存電力量Erは、蓄電割合SOCやバッテリ50の蓄電容量等に基づいてバッテリECU52により計算されるものであり、バッテリECU52から通信により入力される。ステップS100にて必要なデータを入力したならば、入力した要求トルクTr*が予め定められた比較的大きい値である閾値Tref以上であるか否かを判定し(ステップS110)、要求トルクTr*が閾値Tref未満である場合には、ステップS100にて入力した出力制限Woutの値をそのまま出力制限Woutとして設定、すなわち出力制限Woutの値を変更することなく、再度ステップS100以降の処理を実行する。なお、ステップS110では、要求トルクTr*の代わりに、上述の要求走行パワーPr*とそれに対応した閾値とを比較してもよい。
【0018】
また、ステップS110にて要求トルクTr*が閾値Tref以上であると判断された場合には、ステップS100にて入力した推定走行距離Lおよび平均車速Vaveに基づいて現在位置から目的地に到達するまでにバッテリ50から放電される電力量の推定値である推定放電電力量Eestを設定する(ステップS120)。実施例では、走行距離Lと平均車速Vaveと推定放電電力量Eestとの関係が予め図示しない推定放電電力量設定用マップとして作成されてハイブリッドECU70の図示しないROMに記憶されており、推定放電電力量Eestとしては、当該マップから推定走行距離Lと平均車速Vaveとに対応した値が導出される。続いて、バッテリ50の残存電力量Erが推定放電電力量Eest以上であるか否かを判定し(ステップS130)、バッテリ50の残存電力量Erが推定放電電力量Eest以上であるときには、ステップS100にて入力した出力制限Woutの値と予め定められた一定値αとの和を出力制限Woutに設定する(ステップS160)。ここで、値αは、走行に要求される要求動力としての要求トルクTr*あるいは要求走行パワーPr*が閾値以上であるときに、モータMG2から速やかに十分な駆動力を出力して運転者による加速要求に良好に応えることを可能とする値として実験・解析等により設定される。なお、値αは、要求トルクTr*あるいは要求走行パワーPr*が大きいほど大きく、バッテリ50の残存電力量Erが推定放電電力量Eestに対して多いほど大きくなる傾向に設定されてもよく、推定走行距離Lが長いほど大きくなる傾向に設定されてもよい。こうして出力制限Woutを拡大したならば、ステップS160の処理を一旦実行した後(出力制限Woutを一旦拡大した後)に予め定められた一時的拡大時間が経過したか否かを判定する(ステップS170)。そして、図示しないタイマの計時値に基づいて出力制限Woutを一旦拡大した後に一時的拡大時間が経過していなければ再度ステップS100以降の処理を実行し、出力制限Woutを一旦拡大した後に所定時間が経過していればステップS180の処理を実行して出力制限Woutの一時的拡大を終了させた上で再度ステップS100以降の処理を実行する。
【0019】
一方、ステップS130にてバッテリ50の残存電力量Erが推定放電電力量Eest未満であると判断された場合には、ステップS100にて入力したキックダウンフラグFkdが値1であるか否かを判定し(ステップS140)、キックダウンフラグFkdが値0であってキックダウンスイッチ84aがアクセルペダル83と当接していない場合には、出力制限Woutを一時的に拡大することなく再度ステップS100以降の処理を実行する。また、ステップS140にてキックダウンフラグFkdが値1であってキックダウンスイッチ84aがアクセルペダル83と当接していると判断された場合には、図示しないタイマの計時値に基づいてキックダウンスイッチ84aが一旦オンされてから所定時間以内であるどうか判定する(ステップS150)。そして、キックダウンスイッチ84aが一旦オンされてから所定時間以内である場合には、出力制限Woutを拡大すると共に出力制限Woutを一旦拡大した後に一時的拡大時間が経過しているか否かを判定し(ステップS160およびS170)、ステップS170の判定結果に応じてステップS180の処理を実行した上で、再度ステップS100以降の処理を実行する。また、ステップS140にてキックダウンフラグFkdが値1であってキックダウンスイッチ84aがアクセルペダル83と当接していると判断されてもステップS150にてキックダウンスイッチ84aが一旦オンされてから所定時間が経過していると判断された場合には、出力制限Woutの一時的拡大を終了させるようにステップS160〜S180の処理をスキップし、再度ステップS100以降の処理を実行する。
【0020】
これにより、実施例のハイブリッド自動車20では、要求トルクTr*が閾値Tref以上であると共にバッテリ50の残存電力量Erが推定放電電力量Eest以上であるとき、および要求トルクTr*が閾値Tref以上であると共にバッテリ50の残存電力量Erが推定放電電力量Eest未満であり、かつ運転者による加速要求の度合いが所定度合以上であってキックダウンスイッチ84aがオンしているときに、バッテリECU52により設定された出力制限Woutの一時的拡大が許容され、その際には、基本的に出力制限Woutが値αだけ一時的(一時的拡大時間だけ)拡大(増加)されることになる。なお、ステップS140では、キックダウンスイッチ84aがオンしているか否かを判定する代わりに、例えば、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accが所定値(例えば、80〜90%)以上であるか否かを判定したり、例えば運転者により操作される加速指示スイッチがオンされているか否かを判定したりすることにより運転者により所定度合以上の加速要求がなされているか否かを判定してもよい。そして、このような場合、ステップS150では、運転者により所定度合以上の加速要求がなされてから所定時間以内であるか否かを判定すればよい。
【0021】
以上説明したように、実施例のハイブリッド自動車20では、現在位置から目的地に到達するまでにバッテリ50から放電される電力量の推定値である推定放電電力量Eestがナビゲーション装置60からの推定走行距離Lおよび平均車速Vaveに基づいて取得され(ステップS120)、走行に要求される要求トルクTr*(要求動力)が閾値Tref以上であると共にバッテリ50の残存電力量Erが推定放電電力量Eest以上であるとき、および要求トルクTr*が閾値Tref以上であると共にバッテリ50の残存電力量Erが推定放電電力量Eest未満であり、かつ運転者による加速要求の度合いが所定度合以上であってキックダウンスイッチ84aがオンしているときに、バッテリ50の出力制限Wout(放電許容電力量)が値αだけ一時的に増加される。このように、走行に要求される要求トルクTr*が閾値Tref以上であるときにバッテリ50の残存電力量Erが推定放電電力量Eest以上であって十分に確保されていれば、バッテリ50の出力制限Woutの一時的な増加を許容してもバッテリ50の残存電力量Erが急減するおそれは少なく、出力制限Woutを一時的に増加させてモータMG2から速やかに十分な動力を出力可能とすることで運転者による加速要求に良好に応えることができる。また、走行に要求される要求トルクTr*が閾値Tref以上であるときにバッテリ50の残存電力量Erが推定放電電力量Eest未満である場合には、運転者による加速要求の度合いが所定度合以上であることを条件としてバッテリ50の出力制限Woutの一時的な増加を許容することにより、運転者による加速要求に必要十分に応えつつバッテリ50の残存電力量Erの急減を抑制することができる。従って、実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50の残存電力量Erをより適正に管理しつつ運転者による加速要求に良好に応えることが可能となる。
【0022】
なお、実施例のハイブリッド自動車20では、運転者による加速要求がなされている際に、モータMG2から速やかに十分な動力を出力可能とするために、バッテリ50の出力制限Woutを一時的に拡大するものとしたが、これに代えて、あるいはこれと共にモータMG2(MG1)以外で消費される電力を低減することにより、モータMG2等で消費可能なバッテリ50からの電力を実質的に拡大(確保)してもよい。この場合、例えば、バッテリ50からエアコン等の補機へと供給される電圧の目標値を低下させて補機の消費電力を低減させたり、補機への電力供給をカットしたりしてもよい。また、上記実施例は動力源としてエンジン22とモータMG1およびMG2とを備えたハイブリッド自動車20に本発明を適用したものであるが、本発明がモータのみを備えた電気自動車に適用され得ることはいうまでもない。
【0023】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、動力を入出力可能な電動機と、当該電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段とを備えた車両の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 プラネタリギヤ、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、34 キャリア、35 減速ギヤ、37 ギヤ機構、38 ディファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ナビゲーション装置、70 ハイブリッド用電子制御ユニットハイブリッドECU)、80 イグニッションスイッチ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、84a キックダウンスイッチ、88 車速センサ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を入出力可能な電動機と、該電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段と、該蓄電手段の放電に許容される電力である放電許容電力を設定する放電許容電力設定手段と、前記蓄電手段からの放電電力が前記放電許容電力の範囲内となると共に走行に要求される要求動力を出力するように前記電動機を制御する制御手段とを備えた車両において、
前記車両の現在位置から目的地までの走行距離および平均速度を取得するナビゲーション装置と、
前記現在位置から前記目的地に到達するまでに前記蓄電手段から放電される電力量の推定値である推定放電電力量を前記ナビゲーション装置により取得された前記走行距離および前記平均速度に基づいて取得する推定放電電力量取得手段と、
前記要求動力が所定値以上であると共に前記蓄電手段の残存電力量が前記推定放電電力量以上であるとき、および前記要求動力が前記所定値以上であると共に前記蓄電手段の残存電力量が前記推定放電電力量未満であり、かつ運転者による加速要求の度合いが所定度合以上であるときに、前記放電許容電力設定手段により設定された前記放電許容電力量を一時的に増加させる放電許容電力増加手段と、
を備えることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−60844(P2012−60844A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204031(P2010−204031)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】