説明

車体フレーム構造

【課題】サブフレームの汎用性を高めること。
【解決手段】原動機を有する駆動部とステアリングギヤボックス71とサスペンション50とを備えたサブフレーム30を、車体フレームに取り付けるようにした車体フレーム構造である。サブフレームにベースブラケット60を取付け、ベースブラケットに対し、ステアリングギヤボックスを取付けるとともに、駆動部を防振装置42を介して支持させた。サブフレームは、サスペンションを連結した部分31b,31bに臨んだ位置31c,31dに、ベースブラケットを取付けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームにサブフレームを取付けた車体フレーム構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車体フレーム構造の中には、車体フレームにサブフレームを取り付けるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この技術によれば、サブフレームに駆動部とステアリングギヤボックスとサスペンションとを集約できるので、組立性に優れる。
【特許文献1】特開2005−289115公報
【0003】
ところで、ステアリングギヤボックスは、ステアリング装置の種類に応じて異なる。例えば左ハンドル車と右ハンドル車とでは、ステアリングギヤボックスが左右反対の構成になる。また、電動パワーステアリング装置と油圧パワーステアリング装置とでは、ステアリングギヤボックスの構造が異なる。このため、ステアリングギヤボックスが異なる度に、このボックスを取付けるためのサブフレームを交換する必要がある。これでは、サブフレームの汎用性が劣るので、改良の余地がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、サブフレームの汎用性を高めることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、原動機を有する駆動部とステアリングギヤボックスとサスペンションとを備えたサブフレームを、車体フレームに取り付けるようにした車体フレーム構造において、前記サブフレームにベースブラケットを取付け、このベースブラケットに対し、前記ステアリングギヤボックスを取付けるとともに、前記駆動部を防振装置を介して支持させたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明では、請求項1において、前記サブフレームは、前記サスペンションを連結した部分に臨んだ位置に、前記ベースブラケットを取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明では、ステアリングギヤボックスが異なった場合に、このボックスを取付けるためのベースブラケットだけを交換する。この場合に、ベースブラケットにおける取付部分の配置や大きさは、ステアリングギヤボックスの種類にかかわらず、同一となるように設定しておけばよい。このため、ベースブラケットを交換しても、サブフレームは常に変わらない。ベースブラケットを交換しても、サブフレームを交換する必要がないので、サブフレームの汎用性を高めることができる。
【0008】
請求項2に係る発明では、サブフレームにおいて、サスペンションを連結した部分に臨んだ位置に、ベースブラケットを取付けたものである。この結果、サブフレームは、ベースブラケットによって補強されるので剛性が高まる。
特に、サスペンションを連結した部分に臨んだ位置がベースブラケットによって補強されている。このため、サスペンションから車幅方向の荷重がサスペンションを連結した部分へ伝わったときに、荷重をベースブラケットでも支えるとともに、サブフレームに分散することができる。従って、サスペンションからの荷重を十分に支えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側を示す。
【0010】
先ず、車両の概要について図1及び図2に基づき説明する。
図1は本発明に係る車両の前部の斜視図である。車両10における車体フレーム20(車体20)の前部は、車体前部の両側で車体前後に延びた左右のフロントサイドフレーム21,21と、これらのフロントサイドフレーム21,21の車幅方向外側で且つ上方で車体前後に延びた左右のアッパフレーム22,22と、フロントサイドフレーム21,21とアッパフレーム22,22との間に掛け渡した左右のフロントダンパハウジング23,23と、左右のフロントサイドフレーム21,21の前部並びに左右のアッパフレーム22,22の前部に結合したフロントバルクヘッド24と、を主要構成としたモノコックボディである。
このような車体フレーム20は、左右のフロントサイドフレーム21,21の前部に、前後左右4個の防振用弾性ブッシュ25・・・を介して、サブフレーム30を吊り下げた構成である。
【0011】
図2は本発明に係るフロントサイドフレーム周りの斜視図である。サブフレーム30は、複数の防振装置(マウント)41,42,・・・を介して駆動部43を支持したものである。複数の防振装置41,42,・・・は、例えば前部防振装置41と後部防振装置42と図示せぬ左右の防振装置との、4個を有している。駆動部43は、右半部に配置された横置きエンジン44(原動機44)と左半部に配置されたトランスミッション45とから成る。トランスミッション45は、出力側から後方にプロペラシャフト(図示せず)を延ばして動力を伝達することになる。
【0012】
図3は本発明に係るサブフレームにサスペンション及びステアリング装置を取付けた斜視図である。図4は本発明に係るサブフレーム及びステアリング装置の分解図である。
図3及び図4に示すように、サブフレーム30は平面視略ロ字状を呈しており、例えばアルミニウム合金のダイカスト品から成る。このサブフレーム30は、車体の前後方向に延びる左右の縦メンバ31,31と、これらの縦メンバ31,31の前端間に掛け渡すべく車体の左右方向に延びる前部横メンバ32と、左右の縦メンバ31,31の後端間に掛け渡すべく車体の左右方向に延びる後部横メンバ33とから成る。
【0013】
次に、サブフレーム30に備えたサスペンション50(フロントサスペンション50)及びステアリング装置70について説明する。なお、左右のサスペンション50,50は互いに同様の構成なので、左側だけを説明し、右側を省略する。
【0014】
図3に示すように、左のサスペンション50は、例えば、上側のアッパアーム(図示せず)及び下側のロアアーム51と、ナックル52と、ダンパ(図示せず)とから成る、ダブルウィッシュボーン式サスペンションであり、車体フレーム20に車輪を懸架する。アッパアームは、フロントサイドフレーム21(図1参照)にスイング可能に連結される。ロアアーム51は、縦メンバ31にスイング可能に連結される。ナックル52は、車輪を回転可能に支持する部材であり、アッパアームとロアアーム51に連結される。ダンパは、ロアアーム51とフロントダンパハウジング23(図1参照)との間に連結される。
【0015】
ロアアーム51は、ナックル52を連結するナックル連結部51aから前側の前部アーム51bと後側の後部アーム51cとを延ばした、平面視略Y字状の部材である。前部アーム51bの先端部は、弾性ブッシュ(図示せず)を介して縦メンバ31の前部ブラケット31aにボルト53で連結されている。後部アーム51cの先端部は、弾性ブッシュ(図示せず)を介して後部ブラケット31bにボルト54で連結されている。
【0016】
前部防振装置41(図2参照)は、前部横メンバ32のブラケット32aに取り付けられている。サブフレーム30は、交換可能なベースブラケット60を介して後部防振装置42及びステアリング装置70のステアリングギヤボックス71を取付けたことを特徴とする。
【0017】
図3及び図4に示すように、ステアリング装置70は、例えば油圧パワーステアリング装置から成り、車幅方向に長いステアリングギヤボックス71を有している。ステアリングギヤボックス71は、図示せぬステアリングホイールの操舵力を車体の左右方向の転舵力に変換してタイロッド72から取り出すためのギヤ機構(例えばパワーステアリング式ギヤ機構)を収納した部材である。さらに、ステアリングギヤボックス71は、左右両端部に脚部71a、71bを有している。タイロッド72は、図3に示すナックル52のアーム52aに連結されている。
【0018】
サブフレーム30に後部防振装置42及びステアリングギヤボックス71を取付ける構成について、図3及び図4に基づき詳しく説明する。
サブフレーム30に取り付けられるベースブラケット60は、後部横メンバ33の上に重ねる中間部材であり、例えばアルミニウム合金のダイカスト品から成る。このベースブラケット60は、後部横メンバ33に沿って車幅方向に長い平面視略矩形状の本体61と、本体61の左右両端から前方へ延びる左右一対の取付け脚部62,63とから成る。本体61は、ステアリングギヤボックス71における下半分の輪郭に概ね合うように溝状に形成される。さらに本体61は、左右両端の近傍に形成されたボックス取付部64,65と、後部防振装置42の配設位置に形成された防振装置取付部66とを有している。
【0019】
ステアリングギヤボックス71の左の脚部71aは、左のボックス取付部64に1個のボルト81によって取り付けられる。ステアリングギヤボックス71の右の脚部71bは、右のボックス取付部65に複数のボルト82によって取り付けられる。防振装置取付部66には、プレート83が複数のボルト84によって取り付けられ、このプレート83には、後部防振装置42が複数のボルト85によって取り付けられる。
【0020】
例えば、ベースブラケット60にステアリングギヤボックス71を取付けた後に、ステアリングギヤボックス71の上からプレート83を被せて防振装置取付部66に取付け、その後に、プレート83に後部防振装置42を載せて取付ける。このようにしてベースブラケット60に後部防振装置42とステアリングギヤボックス71を取付けることができる。
【0021】
サブフレーム30は、左の縦メンバ31における後部ブラケット31bの近傍に形成された左の脚取付部31cと、右の縦メンバ31における後部ブラケット31bの近傍に形成された右の脚取付部31dとを有している。
左の脚取付部31cは、左のサスペンション50を連結した部分31b、つまり、後部ブラケット31bに臨んだ位置に配置されている。右の脚取付部31dは、右のサスペンション50(図示せず)を連結した部分31b、つまり、後部ブラケット31bに臨んだ位置に配置されている。
【0022】
ベースブラケット60における左の取付け脚部62は、左の縦メンバ31における左の脚取付部31cに複数のボルト91によって取り付けられる。ベースブラケット60における右の取付け脚部63は、右の縦メンバ31における右の脚取付部31dに複数のボルト92によって取り付けられる。当然のことながら、サブフレーム30にボルト止めされたベースブラケット60は、サブフレーム30から取り外し可能である。
【0023】
以上の車体フレーム構造の説明をまとめると、次の通りである。
ステアリングギヤボックス71は、ステアリング装置70の種類に応じて異なる。例えば左ハンドル車と右ハンドル車とでは、ステアリングギヤボックス71が左右反対の構成になる。また、電動パワーステアリング装置と油圧パワーステアリング装置とでは、ステアリングギヤボックス71の構造が異なる。
【0024】
このような、ステアリングギヤボックス71の種類違いに対応するために、本発明の車体フレーム構造は、サブフレーム30に、交換可能なベースブラケット60を取付け、ベースブラケット60に対し、ステアリングギヤボックス71を取付けるとともに、駆動部43を防振装置42を介して支持させたものである。
【0025】
従って、車種によってステアリングギヤボックス71が異なった場合に、このボックス71を取付けるためのベースブラケット60だけを交換する。この場合に、ベースブラケット60における左右一対の取付け脚部62,63の配置や大きさは、ステアリングギヤボックス71の種類にかかわらず、同一となるように設定される。このため、ベースブラケット60を交換しても、サブフレーム30における左右の脚取付部31c,31dの位置や大きさは、常に変わらない。ベースブラケット60を交換しても、サブフレーム30を交換する必要がない。従って、サブフレーム30の汎用性を高めることができる。
【0026】
一方、ベースブラケット60は、ステアリングギヤボックス71と防振装置42を取付けるだけのものであるから、サブフレーム30と比べて簡単な構成で小型の部材である。従って、ベースブラケット60については、サブフレーム30のような汎用性を求めなくてもよい。
【0027】
ところで、図3に示すように、駆動部43からの上下方向の荷重f1は、後部防振装置42とプレート83とベースブラケット60を介してサブフレーム30に伝わる。ステアリングギヤボックス71からの車幅方向(左右方向)の荷重f2は、ベースブラケット60を介してサブフレーム30に伝わる。サスペンション50からの左右方向の荷重f3は、ロアアーム51と前部・後部ブラケット31a,31bを介してサブフレーム30に伝わる。
【0028】
これに対して、サブフレーム30は、サスペンション50を連結した部分31b,31bに臨んだ位置31c,31d、つまり、左右の脚取付部31c,31dに、ベースブラケット60を取付けたものである。サブフレーム30は、左右の脚取付部31c,31d間にベースブラケット60が掛け渡された構成になり、この結果、ベースブラケット60によって補強されるので、剛性が高まる。
【0029】
特に、サスペンション50を連結した部分31b,31bに臨んだ位置31c,31dがベースブラケット60によって補強されている。このため、サスペンション50からの車幅方向の荷重f3がサスペンション50を連結した部分31b,31bへ伝わったときに、荷重f3をベースブラケット60でも支えるとともに、サブフレーム30に分散することができる。従って、サスペンション50からの荷重f3を十分に支えることができる。
【0030】
なお、本発明では、原動機44はエンジンに限定されるものではなく、例えば電動モータであってもよい。
また、後部防振装置42は、プレート83を介することなく、ベースブラケット60に直接に取り付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の車体フレーム構造は、車体フレーム20にサブフレーム30を取付けた車両10に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る車両の前部の斜視図である。
【図2】本発明に係るフロントサイドフレーム周りの斜視図である。
【図3】本発明に係るサブフレームにサスペンション及びステアリング装置を取付けた斜視図である。
【図4】本発明に係るサブフレーム及びステアリング装置の分解図である。
【符号の説明】
【0033】
10…車両、20…車体フレーム、30…サブフレーム、31b…サスペンションを連結した部分(後部ブラケット)、31c,31d…サスペンションを連結した部分に臨んだ位置(左右の脚取付部)、42…防振装置、43…駆動部、44…原動機、50…サスペンション、60…ベースブラケット、70…ステアリング装置、71…ステアリングギヤボックス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機を有する駆動部とステアリングギヤボックスとサスペンションとを備えたサブフレームを、車体フレームに取り付けるようにした車体フレーム構造において、
前記サブフレームにベースブラケットを取付け、
このベースブラケットに対し、前記ステアリングギヤボックスを取付けるとともに、前記駆動部を防振装置を介して支持させたことを特徴とした車体フレーム構造。
【請求項2】
前記サブフレームは、前記サスペンションを連結した部分に臨んだ位置に、前記ベースブラケットを取付けたことを特徴とする請求項1記載の車体フレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−40200(P2009−40200A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206837(P2007−206837)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】