説明

車外警報装置および車両警報方法

【課題】車両の接近を歩行者に警報する車外警報装置およびその警報方法を提供する。
【解決手段】車両20の前方(たとえば、10m先)に歩行者41がいる場合は、歩行者41の手前の路面に向けて出力装置16から超音波を放射する。出力装置16から放射された超音波は、空気中を伝播して路面に反射する過程で非線形相互作用を起こし、聴取可能な音声に復調される。そして、超音波が到達した路面が仮想音源42となる。歩行者41には、仮想音源42から警報音が発生しているよう復調された警報音が聞こえる。そして、その警報音により歩行者41は車両20の接近に気づくことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の接近を歩行者に警報する車外警報装置およびその警報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車体外方に音を放射させるスピーカを車体に取り付けるとともに、車体が運転可能状態にあるときにスピーカから警報音を発生させる構成とし、このスピーカから生じる警報音の音量あるいは及び音質を車体の運転状況に応じて変える車両の警報音装置が従来技術として知られている(特許文献1)。歩行者はスピーカから生じる警報音の音量あるいは音質あるいは両方を聞き分けることによって車両の速度、負荷や加減速状態を認識することができる。
【特許文献1】特開平7−322403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の警報音装置では、車両進行方向以外の歩行者や住宅内にも警報音が届くので騒音公害を発生させるという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、音が重畳された超音波を発生し、発生した超音波を放射し、放射された超音波の到達点に仮想音源を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、車両周囲の所定位置に仮想音源を形成するようにしたので、警報音を聞かせたい対象者以外の者にとって警報音が騒音となることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
−第1の実施形態−
図1〜8を参照して、本発明による車外警報装置の第1の実施形態を説明する。図1は、本発明による車外警報装置の全体構成を示す図である。車外警報装置1Aは、制御装置11、イグニッションスイッチ検出部12、音源装置13、変調装置14、増幅装置15、出力装置16、入力装置17、フィードバック装置18および駆動装置19を備えている。
【0007】
制御装置11は、CPUやメモリ、およびその他周辺回路で構成され、車外警報装置1Aに備えられた各種装置を制御する。たとえば、駆動装置19を制御して、出力装置16から出力される超音波の放射方向を制御する。イグニッションスイッチ検出部12は車両に設けられたイグニッションスイッチのオン、オフを検出する。
【0008】
音源装置13は、CDやMD、半導体メモリ、ハードディスクに記憶された音声データより音声信号を生成し、変調装置14に出力する。変調装置14は、音声信号を超音波信号に重畳し、増幅装置15に出力する。増幅装置15は、超音波信号を増幅し、出力装置16に出力する。出力装置16は、圧電素子を備えたパラメトリックスピーカなどの指向性スピーカであり、超音波を放射する。
【0009】
入力装置17は、押ボタンやジョイスティックなどの操作スイッチから構成される。ユーザは入力装置17を操作して、後述する駆動装置19を介して出力装置16の超音波放射面の向きを変更する。これにより、所望の位置に超音波を放射することができる。フィードバック装置18は、表示モニタとスピーカとを有し、出力装置16から出力される超音波の放射方向などの情報を表示し、また音声により出力装置16から出力される超音波の放射方向などの情報を出力する。駆動装置19は、サーボモータにより出力装置16における超音波放射面の方向を変える。
【0010】
図2および図3を参照して、駆動装置19について詳細に説明する。駆動装置19は出力装置16とともに車両20の前方部に設けられる。駆動装置19は、左右駆動用サーボモータ21、上下駆動用サーボモータ22、扇状の上下駆動用歯車23および出力装置取付枠24とを有する。出力装置16は出力装置固定軸24aによって出力装置取付枠24に上下揺動可能に固定されている。すなわち、出力装置16は出力装置固定軸24aを中心に、図2の矢印Y1に示す上下方向に回転可能となる。
【0011】
以下、具体的に説明する。上下駆動用歯車23は出力装置取付枠24に固定されており、上下駆動用サーボモータ22は上下駆動用サーボモータ固定軸25によって出力装置16に固定されている。上下駆動用サーボモータ22の歯車22aは上下駆動用歯車23とかみあっており、上下駆動用サーボモータ22の歯車22aが回転すると、出力装置16の超音波放射面16aの方向が変わる。たとえば、図3(a)に示すように、上下駆動用サーボモータ22の歯車22aが反時計回りに回転すると、出力装置16の超音波放射面16aの方向が下方に変わる。
【0012】
一方、出力装置16の超音波放射面16aは、図2の矢印Y2に示すように回転する。すなわち、超音波放射面16aの向きは車両前方左右方向に変更可能である。以下、具体的に説明する。出力装置取付枠24は、出力装置取付枠回転軸26を介して左右駆動用サーボモータ21に固定されており、左右駆動用サーボモータ21の駆動により出力装置取付枠回転軸26を中心に回転する。このため、左右駆動用サーボモータ21が駆動すると、出力装置16の超音波放射面16aの方向が変わる。たとえば、図3(b)に矢印Y2で示すように、左右駆動用サーボモータ21の駆動により出力装置16の超音波放射面16aの方向を変えることができる。
【0013】
図4〜8を参照して、本発明の第1の実施形態における車両接近警報について説明する。ここで、車両はハイブリット車や電気自動車など非常に静粛性に優れた車両であり、走行時に発生する音が非常に小さく、歩行者はエンジン音により車両の接近を認知することが困難であるものとする。
【0014】
車両20の前方(たとえば、10m先)に歩行者41がいる場合は、図4に示すように車両接近を知らせるために、歩行者41の手前の路面に向けて出力装置16から超音波を放射する。出力装置16から放射された超音波は、空気中を伝播して路面に反射する過程で非線形相互作用を起こし、聴取可能な音声に復調される。そして、超音波が到達した地点の路面が仮想音源42となる。歩行者41には、仮想音源42から音が発生しているように復調された音が聞こえる。以下、この音を警報音と呼ぶ。そして、その警報音により歩行者41は車両20の接近に気づくことができる。また、歩行者41は、仮想音源42の位置に車両20が存在しているように聞こえるため、車両が接近していると思ってから車両20が歩行者41に到達するまでの時間に余裕ができ、その間に危険を回避するための行動を起こすことができる。
【0015】
駐車している車両20の側方に歩行者41がいる場合は、図5に示すように、車両20の下の路面に向けて出力装置16から超音波を放射する。超音波が到達した車両20の下の路面が仮想音源42として機能する。そして、仮想音源42から発生する警報音によって、歩行者41は車両20が動き出すことに気づき、車両20の動きに注意する。
【0016】
駐車している車両20の前方に壁61があり、駐車している車両20の後方に歩行者41がいる場合は、図6に示すように、車両前方の壁61に向けて出力装置16から超音波を放射する。超音波が放射された壁61は仮想音源42として機能する。そして、仮想音源42から発生した警報音により、歩行者41は車両20が動き出すことに気づき、車両20の動きに注意する。
【0017】
車両20の前方の道路がカーブしている場合は、車両接近を知らせるために、図7に示すようにカーブの曲がる方向の路面や路面脇に向かって出力装置16から超音波を放射する。超音波が到達した路面や路面脇が仮想音源42となり、仮想音源42から発生する警報音によって見通しの悪いカーブにおいても歩行者41は車両20の接近に気づくことができる。
【0018】
車両20の前方に交差点がある場合は、車両接近を知らせるために、図8に示すように交差点の路面に向かって出力装置16から超音波を放射する。超音波が照射された路面が仮想音源42となり、仮想音源42から発生する警報音によって見通しの悪い交差点においても歩行者41は車両20の接近に気づくことができる。
【0019】
本発明の第1の実施形態における車外警報装置1Aの車両接近警報処理について、図9のフローチャートを参照して説明する。図9の処理は、イグニッションスイッチがオンされたことをイグニッションスイッチ検出部12が検出するとスタートするプログラムにより、制御装置11において実行される。
【0020】
ステップS901では、入力装置17の操作により出力装置16の超音波放射面16aの方向に対して変更操作があったか判定する。変更操作があった場合はステップS901が肯定判定され、ステップS902へ進む。変更操作がない場合はステップS901が否定判定され、ステップS903へ進む。ステップS902では、サーボモータ21,22を駆動し、入力装置17の操作によって指示があった方向に超音波放射面16aの向きを制御する。
【0021】
ステップS903では、音源装置13から音声信号を生成する。ステップS904では、生成した音声信号を変調装置14によって超音波信号に重畳する。ステップS905では、重畳した超音波信号を増幅装置15において増幅する。ステップS906では、出力装置16から超音波を放射する。ステップS907では、イグニッションスイッチ検出部12からの信号によりイグニッションスイッチがオフになったか判定する。オフの場合はステップS907が肯定判定され、警報処理は終了する。イグニッションスイッチがオンの場合はステップS907が否定判定され、ステップS901へ戻る。
【0022】
以上の第1の形態による本発明の車外警報装置1Aは次のような作用効果を奏する。
(1)所定位置に超音波を放射して仮想音源42を形成して歩行者41に対して車両接近を警報するので、車両前方の歩行者のみに警報音を聞かせることができ、それ以外の者については警報音が聞こえないか、または聞こえても聞こえる音量を小さくすることができる。たとえば、図10(a)に示すように車両前方を仮想音源42とすることによって、車両前方の歩行者41aは、仮想音源42に近いため仮想音源42から発生される警報音を聞くことができる。一方、車両前方にいない歩行者41bは、仮想音源42から離れているため、仮想音源42からの警報音は聞こえないか、または聞こえても小さい音量でしか聞こえない。したがって、警報音が騒音の問題とならない。
【0023】
比較のため、従来技術のように車両20に設けられたスピーカ100の音量によって車両前方の歩行者41aに車両接近を報知する場合について説明する。人に聞こえる周波数の音声は指向性が悪い。このため、図10(b)に示すように広い範囲にスピーカ100から出力される警報音が届き、車両接近を報知する必要のない歩行者41bにまで、車両前方の歩行者41aと同じ程度の音量の警報音が聞こえてしまう。よって、警報音が騒音の問題となる。
【0024】
(2)図11に示すように、車両20の移動にともない仮想音源42の位置も移動する。したがって、歩行者41は、車両20が近づいてくることを認知することができる。
【0025】
(3)車両20の前方に仮想音源42を生成することによって、警報音が聞こえる位置(仮想音源42の位置)と車両20の位置との間に所定の間隔(たとえば、30mくらい)を作ることができる。このため、歩行者が仮想音源42によって車両20の接近を認識してから、車両20が歩行者に接近するまで時間的余裕があり、余裕をもって危険を回避する行動をとることができる。
【0026】
(4)超音波が到達する位置に仮想音源42を生成するようにしたので、超音波の出力装置16の超音波放射面16aの方向を変えることによって、仮想音源42の生成する位置を自由に変えることができる。
【0027】
(5)車両20の下の路面に向けて出力装置16から超音波を放射し、仮想音源42を生成することによって、車両20の周辺にいる歩行者41に対して、車両20が動き出すことに対する注意を喚起することができる。
【0028】
(6)駐車場に壁61がある場合、壁61に向けて出力装置16から超音波を放射し、壁61に仮想音源42を生成することによって、車両20の周辺にいる歩行者41に対して、車両20が動き出すことに対する注意を喚起することができる。
【0029】
(7)車両20の前方の道路がカーブしている場合は、カーブの曲がる方向の路面や路面脇に向かって出力装置16から超音波を放射し、仮想音源42を生成することによって、見通しの悪いカーブにおいて歩行者41に対して車両20の接近に対する注意を喚起することができる。
【0030】
(8)車両20の前方に交差点がある場合は、交差点の路面に向かって出力装置16から超音波を放射し、仮想音源42を生成することによって、見通しの悪い交差点においても歩行者41に対して車両20の接近に対する注意を喚起することができる。
【0031】
以上の第1の実施形態の車外警報装置1Aを次のように変形することができる。
(1)超音波の出力装置16の超音波放射面16aの方向を変えることができるが、固定にしてもよい。仮想音源42の位置を自由に変えることができないが、図12に示すように仮想音源42の位置を車両20の前方の所定距離の位置に固定した場合でも、警報音の騒音の問題を防止し、車両20の接近を認知することができる。
【0032】
(2)駆動装置19は、サーボモータ21,22の駆動により出力装置16の超音波放射面16aの方向を変えたが、ステッピングモータなどの各種アクチュエータの駆動によって出力装置16の超音波放射面16aの方向を変えるようにしてもよい。
【0033】
(3)出力装置16は、指向性スピーカとしたが、次のようなスピーカアレイを使用してもよい。ここで、スピーカアレイとは、複数のスピーカが出力する音声が収束するように同じ方向に向けて並べたものである。パラメトリックスピーカなどの指向性スピーカに比べて収束性能はないが、スピーカから90度の方向に近づくにしたがい音声は小さくなり、正面方向に近づくにしたがい音声は大きくなる。
【0034】
(4)出力装置16は、超音波放射面16aの方向を変更可能とした単一の指向性スピーカとしたが、図13に示すように、複数の固定された指向性スピーカ131a〜131gにより構成されるようにしてもよい。複数の指向性スピーカ131a〜131gは、車両20の前方部において高さ方向に並べて設置される。指向性スピーカ131a〜131gのそれぞれの超音波放射面の向きは、指向性スピーカ131a〜131gが下方に位置するにしたがって下方に向き、上方に位置するにしたがって水平方向に向く。このようにすることによって、図14に示すように、複数の仮想音源42a〜42dを所定間隔で車両20の進行方向に並んで車両20の前方に生成することができる。そして、車両20に近い位置から歩行者41aが車両前方に侵入しても、車両20に遠い位置から歩行者41bが車両前方に進入しても大きな音の警報音を聞くことになり、歩行者41a,41bの車両接近に対する注意を喚起することができる。
【0035】
(5)図13の出力装置16において、車両前方に生成した複数の仮想音源42a〜42dから発生する警報音は全て同一である必要はなく、変えてもよい。たとえば、図15に示すように、車両20に近づくにしたがって仮想音源42a〜42dから発生する警報音を大きくし、車両20から離れるにしたがって仮想音源42a〜42dから生成する警報音を小さくするようにしてもよい。このようにすることによって、歩行者41は車両接近をよりはっきりと認知することができる。また、車両20に近づくにしたがって仮想音源42a〜42dから発生する警報音のリズムを速くし、車両20から離れるにしたがって仮想音源42a〜42dから生成する警報音のリズムを遅くしてもよい。さらに、車両20に近づくにしたがって仮想音源42a〜42dから発生する警報音の周波数を高くし、車両20から離れるにしたがって仮想音源42a〜42dから生成する警報音の周波数を低くしたりするようにしてもよい。また、音色を変えるようにしてもよい。
【0036】
(6)図13の出力装置16において、車両前方に生成した複数の仮想音源42a〜42dの位置は車両に対して一直線の方向である必要はなく、車両20の進行方向に直交する方向にいずれかの仮想音源42a〜42dをシフトするようにしてもよい。たとえば、図16に示すように、仮想音源42b,42dを車両20の進行方向に生成し、仮想音源42a,42cを車両20の進行方向に対して左方向にシフトして生成する。歩行者は一般に道路の端を通行するので、歩行者41は車両進行方向に向かって左側にいることが多い。仮想音源42a〜42dの一部の位置を左側にずらすことによって、車両20と接触する危険性が高い車両前方のみならず、歩行者41のいる確率の高い左側にも警報音を発生することができるので、より安全性を高めることができる。
【0037】
−第2の実施形態−
図17〜19を参照して、本発明による第2の実施形態における車外警報装置を説明する。第1の実施形態と共通する部分については共通の符号を付し、第1の実施形態と異なる部分について主に説明する。図17は、本発明による車外警報装置1Bの全体構成を示す図である。車外警報装置1Bは、車外警報装置1Aの構成以外にナビゲーションシステム110を備えている。
【0038】
図18を参照して、ナビゲーションシステム110について説明する。図18は、ナビゲーションシステム110の構成を示すブロック図である。181は、自車両の車速を検出する車速センサであり、182は、GPS( Global Positioning System )通信衛星からのGPS信号を受信して自車両の現在位置を検出するGPSユニットである。183は、自車両の進行方向を検出するジャイロセンサであり、184は、地図データを格納する地図データ格納部である。185は、CPUやメモリ、およびその他周辺回路で構成される制御部である。
【0039】
地図データ格納部184に格納される地図データには、推奨経路を演算するために用いられる経路計算データ、交差点名称、道路名称など、推奨経路に従って自車両を目的地まで案内するために用いられる経路誘導データ、道路形状を表す道路データ、海岸線や河川、鉄道、建物など、道路以外の地図形状を表す背景データ、および、POI(Point Of Interest)データ等が含まれている。POIデータには、各種施設の名称や位置、種類、電話番号、信号機のない交差点の情報などのデータが含まれる。
【0040】
制御部185は、入力された目的地までの経路探索が指示されると、GPSユニット182で検出した自車両の現在位置を出発地として、地図データ格納部184に格納される地図データに基づいて、ユーザによってあらかじめ設定された探索条件で目的地までの最適な経路を探索する。
【0041】
ナビゲーションシステム110は、地図データに基づいて車両進行方向の信号のない交差点を常に検出しており、検出するとその検出結果を制御装置11に出力する。また、信号のない交差点を検出すると交差点までの距離を算出し、算出結果を制御装置11に出力する。さらに、車両が交差点に到達すると、交差点に到達した旨を知らせる信号を制御装置11に出力する。
【0042】
図19を参照して、本発明の第2の実施形態における車両接近を歩行者に知らせる警報方法について説明する。第1の実施形態と同じように、車両20は、ハイブリット車や電気自動車など非常に静粛性に優れている車両であり、走行時に発生する音が非常に小さいものとする。したがって、歩行者はエンジン音により車両の接近を認知することが困難であるものとする。
【0043】
ナビゲーションシステム110が自車位置191の前方に信号のない交差点192があることを検出した場合は、車両接近を知らせるために、図19に示すように交差点192の路面に向かって出力装置16から超音波を放射する。超音波が到達した路面が仮想音源42となり、仮想音源42から発生される警報音によって見通しの悪い交差点においても歩行者41は車両20の接近に気づくことができる。
【0044】
本発明の第2の実施形態における車外警報装置1Bの車両接近を知らせる警報処理について、図20のフローチャートを参照して説明する。図20の処理は、イグニッションスイッチがオンされたことをイグニッションスイッチ検出部12が検出するとスタートするプログラムにより、制御装置11において実行される。第1の実施形態における警報処理と共通するステップは共通の符号を付し、第1の実施形態における警報処理と異なる部分を主に説明する。
【0045】
ステップS2001では、ナビゲーションシステム110の検出結果より、車両進行方向に信号のない交差点192があるか判定する。信号のない交差点192がある場合はステップS2001が肯定判定され、ステップS2002へ進む。信号のない交差点192がない場合はステップS2001を繰り返す。ステップS2002では、ナビゲーションシステム110が算出した交差点192までの距離のデータを取得する。
【0046】
ステップS2003では、交差点192までの距離が30m以内か判定する。30m以内の場合はステップS2003が肯定判定され、ステップS2004へ進む。30mを越える場合はステップS2003が否定判定され、ステップS2001へ戻る。ステップS2004では、サーボモータ21,22を駆動し、超音波放射面16aの向きを交差点192における所定位置、たとえば交差点192で道路が交わる位置の方向に制御する。
【0047】
ステップS2005では、ナビゲーションシステム110の検出結果より、車両20は交差点192に達したか判定する。交差点192に達した場合はステップS2005が肯定判定され、ステップS2006へ進む。交差点192に達していない場合はステップS2005が否定判定され、ステップS2001へ戻る。ステップS2006では超音波の放射を停止する。そしてスタートへリターンする。
【0048】
以上の第2の形態による本発明の車外警報装置1Bは次のような作用効果を奏する。
(1)ナビゲーションシステム110が車両前方の交差点192を検出すると、交差点192の路面に向かって出力装置16から超音波を放射する。その結果、交差点192に仮想音源42が生成され、見通しの悪い交差点192において歩行者41に対して車両20の接近に対する注意を喚起することができる。また、ナビゲーションシステム110によって、交差点192までの距離を算出できるので、精度よく交差点192に超音波を放射することができる。
【0049】
(2)信号機のある交差点では超音波を放射しないので、車両接近を報知する必要のない交差点に対しては警報音を発生させない。また、警報音によって音の出る信号機の音声を邪魔することはない。
【0050】
以上の第2の実施形態の車外警報装置1Bを次のように変形することができる。
(1)交差点192を検出すると、車両20が一定の距離(たとえば5m)を進行するたびに超音波を放射するようにしてもよい。車両20が一定の距離進んだか否かは、車速センサ181が検出した車速と走行時間とに基づいて判断する。
【0051】
(2)交差点192と車両20との間に他の車両が存在するときは超音波の放射を行わないようにしてもよい。また、車両20と他の車両との間の路面に超音波を放射するようにしてもよい。
【0052】
(3)車両20が交差点192に近づくにしたがって、仮想音源42から発生する警報音を大きくするようにしてもよい。このようにすることによって歩行者41は車両接近をよりはっきりと認知することができる。また、車両20が交差点192に近づくにしたがって仮想音源42から発生する警報音のリズムを速くするようにしてもよいし、発生する警報音の周波数を高くするようにしてもよい。仮想音源42から発生する警報音の音量やリズム、周波数は、音源装置13より生成する音声信号によって変えることができる。たとえば、音源装置13において音量の大きな音声信号を生成すると、仮想音源42から発生する警報音が大きくなる。
【0053】
−第3の実施形態−
図21,22を参照して、本発明による第3の実施形態における車外警報装置を説明する。第1の実施形態と共通する部分については共通の符号を付し、第1の実施形態と異なる部分について主に説明する。図21は、本発明による車外警報装置1Cの全体構成を示す図である。車外警報装置1Cは、車外警報装置1Aの構成以外にミリ波レーダ111を備えている。ミリ波レーダ111は、ミリ波を放射して障害物から反射してきた電波を受信し、伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差などに基づいて障害物の位置を測定する装置である。測定した障害物の位置の情報は制御装置11に出力される。
【0054】
図22を参照して、本発明の第3の実施形態における車両接近を知らせる警報方法について説明する。第1の実施形態と同じように、車両20は、ハイブリット車や電気自動車など非常に静粛性に優れている車両であり、走行時に発生する音が非常に小さいものとする。したがって、歩行者はエンジン音により車両の接近を認知することが困難であるものとする。
【0055】
ミリ波レーダ111によって歩行者41の位置を検出する。そして、歩行者41を検出した場合は、車両接近を知らせるために、図22に示すように歩行者41の手前の路面に向かって出力装置16から超音波を放射する。超音波が到達した路面は仮想音源42となり、仮想音源42から発生される警報音によって歩行者41は車両20の接近に気づくことができる。
【0056】
本発明の第3の実施形態における車外警報装置1Cの車両接近を知らせる警報処理について、図23のフローチャートを参照して説明する。図23の処理は、イグニッションスイッチがオンされたことをイグニッションスイッチ検出部12が検出するとスタートするプログラムにより、制御装置11において実行される。第1の実施形態における警報処理と共通するステップは共通の符号を付し、第1の実施形態における警報処理と異なる部分を主に説明する。
【0057】
ステップS2301では、ミリ波レーダ111の検出結果より、車両前方に障害物があるか判定する。障害物がある場合はステップS2301が肯定判定され、ステップS2302へ進む。障害物がない場合はステップS2301を繰り返す。ステップS2302では、ミリ波レーダから障害物の位置情報を取得する。
【0058】
ステップS2303では、障害物の位置は超音波の届く範囲内か判定する。届く範囲内の場合はステップS2303が肯定判定され、ステップS2304へ進む。届かない場合はステップS2303が否定判定され、ステップS2301へ戻る。ステップS2304では、サーボモータ21,22を駆動し、超音波放射面16aの向きを障害物の近傍に合わせて制御する。
【0059】
ステップS2305では、ミリ波レーダ111の検出結果より、車両前方に障害物があるか判定する。障害物がある場合はステップS2305が肯定判定され、ステップS2301へ戻る。障害物がない場合はステップS2305が肯定判定され、ステップS2306へ進む。ステップS2306では、超音波の放射を停止する。そして、スタートにリターンする。
【0060】
以上の第3の形態による本発明の車外警報装置1Cは次のような作用効果を奏する。
(1)ミリ波レーダ111が車両前方の歩行者41を障害物として検出すると、歩行者近傍の所定位置の路面に向かって出力装置16から超音波を放射する。その結果、歩行者41の近傍に仮想音源42が生成され、歩行者41に対して車両20の接近に対する注意を喚起することができる。また、ミリ波レーダ111によって、歩行者41の位置を精度よく検出できるので、精度よく歩行者の近傍に超音波を放射することができる。
【0061】
(2)障害物がない場合、つまり歩行者41がいない場合は超音波を放射しないので、車両接近を報知する必要のない場合は警報音を発生させない。
【0062】
以上の第3の実施形態の車外警報装置1Cを次のように変形することができる。
(1)ミリ波レーダ111とカメラを組み合わせて、ミリ波レーダ111で検出した障害物が歩行者であるか判定できるようにしてもよい。この場合、ミリ波レーダ111で障害物を検出すると、カメラが障害物を撮影し、撮影した映像を信号処理装置で画像認識して障害物が歩行者であるか物であるかを判定する。ミリ波レーダ111が検出した障害物が物である場合、警報音を発生させる必要はないので、無駄な超音波放射を防止することができる。
【0063】
(2)図23のステップS2306において、障害物の位置は超音波の届く範囲内か判定したが、さらに判定の範囲を広げて、超音波によって生成した仮想音源42からの警報音が到達する範囲内であるか判定してもよい。
【0064】
(3)仮想音源42の位置は、そこから発生する警報音が歩行者41に聞こえる範囲内であれば、特に限定されない。たとえば、歩行者41に超音波放射面16aを向けて超音波を放射して、歩行者41に仮想音源42を生成してもよいし、歩行者41の周辺の路面に向けて放射して仮想音源42を生成してもよいし、歩行者41の手前の路面に向けて放射して仮想音源42を生成してもよい。
【0065】
(4)車両20が歩行者41を通り過ぎるまで、仮想音源42が歩行者41より前方の位置に生成しないようにしてもよい。特に歩行者41が視覚障害者の場合、仮想音源42が歩行者41を通り過ぎたとき、歩行者41は車両20が通り過ぎたものと勘違いする危険性があるからである。したがって、図24に示すように、ミリ波レーダ111によって歩行者41を検出した場合、車両20が移動しても歩仮想音源42が行者41を通り過ぎないように超音波を放射するのが好ましい。
【0066】
(5)車両20が障害物に近づくにしたがって、仮想音源42から発生する警報音を大きくするようにしてもよい。このようにすることによって歩行者41は車両接近をよりはっきりと認知することができる。また、障害物に近づくにしたがって仮想音源42から発生する警報音のリズムを速くするようにしてもよいし、発生する警報音の周波数を高くするようにしてもよい。
【0067】
特許請求の範囲の要素と実施の形態との対応関係を説明する。
本発明の発生手段は音源装置13に対応し、放射手段は制御装置11および出力装置16、または制御装置11、出力装置16および駆動装置19に対応する。変更手段は、制御装置11および駆動装置19に対応する。障害物検出装置はミリ波レーダ111に対応し、歩行者判定手段はカメラおよび信号処理装置に対応する。制限手段は制御装置11および駆動装置19に対応し、交差点検出手段はナビゲーションシステム110に対応する。音変化手段は制御装置11および音源装置に対応する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する上で、上記の実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係になんら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施形態による車外警報装置の全体構成を示す図である。
【図2】駆動装置を説明するための図である。
【図3】駆動装置による超音波放射面の方向の制御を説明するための図である。
【図4】車両前方の歩行者に対して車両接近を知らせる警報方法を説明するための図である。
【図5】車両の側にいる歩行者に対して車両が動き出すことを知らせる警報方法を説明するための図である。
【図6】車両の側にいる歩行者に対して車両が動き出すことを知らせる警報方法を説明するための図である。
【図7】道路のカーブにいる歩行者に対して車両接近を知らせる警報方法を説明するための図である。
【図8】交差点にいる歩行者に対して車両接近を知らせる警報方法を説明するための図である。
【図9】本発明の第1の実施形態における車外警報装置の車両接近を知らせる警報処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の第1の実施形態における車外警報装置の車両前方の歩行者のみに警報音が聞こえるという効果を説明するための図である。
【図11】本発明の第1の実施形態における車外警報装置の車両が近づいてくることを歩行者が認知できるという効果を説明するための図である。
【図12】超音波の出力装置の超音波放射面の方向を固定した場合の本発明の第1の実施形態における車外警報装置の効果を説明するための図である。
【図13】複数の指向性スピーカを設けた出力装置を説明するための図である。
【図14】複数の指向性スピーカを設けた出力装置から放射された超音波によって生成した仮想音源を説明するための図である。
【図15】車両から離れるにしたがって仮想音源から発生する警報音が小さくなるようにした複数の指向性スピーカを設けた出力装置によって生成した仮想音源を説明するための図である。
【図16】仮想音源の位置の方向が変わるように複数の指向性スピーカを設けた出力装置によって生成した仮想音源を説明するための図である。
【図17】本発明の第2の実施形態による車外警報装置の全体構成を示す図である。
【図18】ナビゲーションシステムを説明するための図である。
【図19】本発明の第2の実施形態の交差点にいる歩行者に対して車両接近を知らせる警報方法を説明するための図である。
【図20】本発明の第2の実施形態における車外警報装置の車両接近を知らせる警報処理を説明するためのフローチャートである。
【図21】本発明の第3の実施形態による車外警報装置の全体構成を示す図である。
【図22】本発明の第3の実施形態の車両前方にいる歩行者に対して車両接近を知らせる警報方法を説明するための図である。
【図23】本発明の第3の実施形態における車外警報装置の車両接近を知らせる警報処理を説明するためのフローチャートである。
【図24】本発明の第3の実施形態の車両前方にいる歩行者に対して車両接近を知らせる警報方法の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0069】
1A,1B,1C 車外警報装置 11 制御装置
12 イグニッションスイッチ検出部 16 出力装置
16a 超音波放射面 19 駆動装置
20 車両 41,41a,41b 歩行者
42,42a〜42d 仮想音源 110 ナビゲーションシステム
111 ミリ波レーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音が重畳された超音波を発生する発生手段と、
前記発生手段によって発生した超音波を放射する放射手段とを備え、
前記放射手段から放射された超音波の到達点に仮想音源を生成することを特徴とする車外警報装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車外警報装置において、
前記放射手段は、超音波の放射方向を変更する変更手段を含むことを特徴とする車外警報装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車外警報装置において、
障害物を検出する障害物検出手段を備え、
前記放射手段は、前記障害物検出手段によって検出した障害物の近傍に超音波を放射することを特徴とする車外警報装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車外警報装置において、
前記障害物検出手段は、ミリ波レーダによって障害物を検出することを特徴とする車外警報装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の車外警報装置において、
前記障害物検出手段によって検出された障害物が歩行者か否かを判定する歩行者判定手段を備え、
前記放射手段は、前記歩行者判定手段によって判定された歩行者の近傍に超音波を放射することを特徴とする車外警報装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車外警報装置において、
前記歩行者判定手段は、前記障害物検出手段によって検出した障害物をカメラで撮影し、撮影した映像に基づいて歩行者か否かを判定することを特徴とする車外警報装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか1項に記載の車外警報装置において、
前記放射手段は、前記障害物検出手段によって検出された障害物、または前記歩行者判定手段によって判定された歩行者より前方の位置に超音波を放射することを制限する制限手段を備えることを特徴とする車外警報装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の車外警報装置において、
車両進行方向の交差点を検出する交差点検出手段を備え、
前記放射手段は、前記交差点検出手段によって検出された交差点に仮想音源を生成するように超音波を放射することを特徴とする車外警報装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車外警報装置において、
前記交差点検出手段は、信号機のない交差点を検出することを特徴とする車外警報装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の車外警報装置において、
前記交差点検出手段は、ナビゲーションシステムによって前記交差点を検出することを特徴とする車外警報装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の車外警報装置において、
前記仮想音源から発生する音の音量、リズムまたは周波数のうちの少なくともひとつを変化させる音変化手段をさらに備えることを特徴とする車外警報装置。
【請求項12】
請求項1に記載の車外警報装置において、
前記放射手段は、複数の位置からそれぞれ超音波を放射する複数の超音波放射部を有し、
前記複数の超音波放射部によって、複数の仮想音源を車両前方に所定間隔で生成することを特徴とする車外警報装置。
【請求項13】
請求項12に記載の車外警報装置において、
前記複数の仮想音源の音は、車両に近づくにしたがって、音量を大きくする、リズムを速くする、周波数を高くすることのいずれかひとつであることを特徴とする車外警報装置。
【請求項14】
請求項1に記載の車外警報装置において、
前記放射手段は、複数の位置からそれぞれ超音波を放射する複数の超音波放出部を有し、
前記複数の超音波放射部によって、車両進行方向に直交する方向にいずれかの仮想音源をシフトすることを特徴とする車外警報装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の車外警報装置において、
前記仮想音源を車両前方に生成することを特徴とする車外警報装置。
【請求項16】
音が重畳された超音波を発生し、
前記発生した超音波を放射し、
前記放射された超音波の到達点に仮想音源を生成することを特徴とする車両警報方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−237831(P2007−237831A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61070(P2006−61070)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】