説明

車室内状態の認識装置

【課題】高さ調整可能なヘッドレストを備えたシートを含む車室内の状態をより適正に認識する。
【解決手段】本発明の車室内状態の認識装置は、高さ調整可能なヘッドレスト51〜56を備えたシート2〜6を含む車室内に赤外線を照射する赤外線照射手段15と、この赤外線照射手段15から赤外線が照射された車室内を撮像する撮像手段16と、この撮像手段16により撮像された画像に基づき所定の情報を認識する画像認識手段18とを備えている。上記撮像手段16による撮像対象には、上記ヘッドレスト51〜56を含むシート2〜6の上部と、該シート2〜6に着座した着座乗員(A〜D等)とが含まれ、上記画像認識手段18は、上記撮像手段2により撮像された上記ヘッドレスト51〜56の画像に基づいて、上記着座乗員に対するヘッドレスト51〜56の高さを判定する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さ調整可能なヘッドレストを備えたシートを含む車室内に赤外線を照射する赤外線照射手段と、この赤外線照射手段から赤外線が照射された車室内を撮像する撮像手段と、この撮像手段により撮像された画像に基づき所定の情報を認識する画像認識手段とを備えた車室内状態の認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばエアバッグの展開の要否等を判断するために、シートに着座している乗員の有無を検知することが行われている。よく知られている技術として、シートの座面に圧力センサまたは歪みセンサを設け、当該センサの検出値に基づいて着座乗員の有無を検知するというものがある。
【0003】
しかしながら、上記のように、座面に設けられた圧力センサまたは歪センサにより着座乗員の有無を検知するようにした場合には、乗員の姿勢の乱れや走行時の揺れ等によりセンサの検出値が変動することに起因して、乗員の有無を精度よく検知できないおそれがある。また、乗員の有無は検知できても、乗員がどの程度の体格であるのかが判断できないため、エアバッグの展開制御を適正に実行できないおそれがある。例えば、乗員が体格の小さい子供であるにもかかわらずエアバッグを勢いよく展開させてしまうと、かえって乗員の安全性が損なわれることが想定される。
【0004】
そこで、最近では、車室内の撮像画像に基づいて、乗員の有無だけでなくその体格等を判断することが行われている。そのための装置として、例えば下記特許文献1には、車室の天井部から運転席や助手席等のシートに向けて赤外線を照射する照射装置と、上記シートの前部上方に位置する天井部に設けられ、上記照射装置から赤外線が照射されたシート等を撮像する撮像装置と、この撮像装置により撮像された画像に基づいて、上記シートに着座した乗員の状態等を示す情報を生成する制御装置とを備えた車両内状態検知システムが開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、光源ポジショナにより配置された光カーテンにより物体上に投射された光ストライプの連続画像を取り込み、これから背景画像を差し引くことで得られた画像に対し所定の画像処理を施す等により3D表面モデルを生成し、この3D表面モデルを用いて車両内の乗員の検出やその体格の判断等を行う乗員検出システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−198929号公報
【特許文献2】特表2008−518195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1や特許文献2に開示されたシステムによれば、シートに着座した乗員の有無だけでなく、その体格(つまり大人か子供かなど)をも判断できるため、その結果を反映してエアバッグの展開制御等を適正に実行できるという利点がある。しかしながら、上記のようなシステムを用いることで着座乗員の体格を正確に判断できたとしても、例えば乗員が着座しているシートの上部に高さ調整可能なヘッドレストが設けられている場合において、このヘッドレストの高さが適切な範囲に設定されていなければ、車両の後突時に乗員の後頭部が適正にサポートされず、乗員の安全性が十分に確保されないおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、高さ調整可能なヘッドレストを備えたシートを含む車室内の状態をより適正に認識することが可能な車室内状態の認識装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、高さ調整可能なヘッドレストを備えたシートを含む車室内に赤外線を照射する赤外線照射手段と、この赤外線照射手段から赤外線が照射された車室内を撮像する撮像手段と、この撮像手段により撮像された画像に基づき所定の情報を認識する画像認識手段とを備えた車室内状態の認識装置であって、上記撮像手段による撮像対象に、上記ヘッドレストを含むシートの上部と、該シートに着座した着座乗員とが含まれ、上記画像認識手段は、上記撮像手段により撮像された上記ヘッドレストの画像に基づいて、上記着座乗員に対するヘッドレストの高さを判定することを特徴とするものである(請求項1)。
【0010】
本発明によれば、赤外線が照射された車室内を撮像手段によって撮像する際に、高さ調整可能なヘッドレストを備えたシートの上部やその着座乗員を含めて撮像するようにしたため、その撮像画像に基づいて、着座乗員に対する上記ヘッドレストの高さを適正に判定することができる。そして、その判定結果に応じ、例えば乗員に警告を発する等の必要な措置を採るようにすれば、上記ヘッドレストの高さを適正な範囲に維持して衝突時(特に後突時)の安全性を効果的に向上させることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記シートのヘッドレストを斜め前方から臨む車室内の所定部位に上記撮像手段が設けられる(請求項2)。
【0012】
この構成によれば、着座乗員の頭部に邪魔されることなく上記ヘッドレストの外形を撮像できるため、このヘッドレストの高さを上記頭部の存在にかかわらず適正に判定できるという利点がある。
【0013】
上記シートが車幅方向に少なくとも2つ並べて設けられる場合、これら2つのシートの各ヘッドレストを斜め前方から同時に撮像可能な車室側方の所定部位に上記撮像手段が設けられることが好ましい(請求項3)。
【0014】
この構成によれば、撮像視野を極端に拡大した特殊なカメラ(例えば魚眼レンズや超広角レンズ等を備えたカメラ)を上記撮像手段として用いなくても、車幅方向に並ぶ複数のヘッドレストを同時に撮像することができ、その撮像画像として歪みの少ない適正な画像が得られるという利点がある。
【0015】
この場合の好適例として、上記撮像手段は、車室側壁に沿って上下方向に延びるピラー部材もしくはその近傍に設けられる(請求項4)。
【0016】
この構成によれば、ピラー部材を利用して上記撮像手段の設置場所を適正に確保できるという利点がある。
【0017】
上記撮像手段によりヘッドレストが撮像されるシートに、少なくとも運転席シートおよび助手席シートが含まれる場合、上記ピラー部材としてのフロントピラーの上端部付近に上記撮像手段が設けられることが好ましい(請求項5)。
【0018】
この構成によれば、フロントピラーに設置された撮像手段により運転席シートおよび助手席シートの各ヘッドレストを適正に撮像できるという利点がある。
【0019】
上記運転席シートおよび助手席シートの後方側に後席シートが設けられる場合、この後席シートのヘッドレストと、上記運転席シートおよび助手席シートの各ヘッドレストとが上記撮像手段により同時に撮像可能とされることが好ましい(請求項6)。
【0020】
この構成によれば、車室内の前後左右に配置された多数のシートのヘッドレストを1つの撮像手段を用いて撮像することができ、その撮像画像に基づいて各ヘッドレストの高さを効率的かつ適正に判定できるという利点がある。
【0021】
この場合のより好ましい形態として、上記撮像手段による撮像対象に、上記運転席シートに着座した運転席乗員の頭部が含まれ、この運転席乗員の頭部の撮像画像に基づいて、当該乗員の運転操作に対する集中度を判定する処理が上記画像認識手段により実行される(請求項7)。
【0022】
この構成によれば、上記撮像手段による撮像画像に基づきヘッドレストの高さを判定しつつ、同じ画像を用いて運転席乗員の集中度を適正に判定することができ、その判定結果に応じて必要な警告を行う等により、わき見や居眠りによる事故を未然に防止できるという利点がある。
【0023】
本発明において、好ましくは、上記画像認識手段が、上記シートのヘッドレストと該シートに着座した着座乗員の頭部との高さの差を算出してその大小を判定する(請求項8)。
【0024】
この構成によれば、着座乗員の頭部を適正にサポートできる位置に上記ヘッドレストの高さがセットされているか否かを容易かつ確実に判定できるとともに、その判定結果に応じて必要な警告を行う等により、衝突時の安全性をより効果的に向上させることができるという利点がある。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明の車室内状態の認識装置によれば、高さ調整可能なヘッドレストを備えたシートを含む車室内の状態をより適正に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車室内状態の認識装置が適用される車両の全体構成を示す側面図である。
【図2】上記車両の平面図である。
【図3】上記車両の車室内の平面図である。
【図4】フロントピラーの上部を中心に示す斜視図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】撮像手段により撮像された画像の一例を示す図である。
【図7】上記車室内状態の認識装置の制御系を示すブロック図である。
【図8】上記車室内状態の認識装置において行われる制御動作の内容を示すフローチャートである。
【図9】ヘッドレストの高さをどのように判定するかを説明するための図である。
【図10】運転席乗員の集中度をその頭部の画像からどのように判定するかを説明するための図であり、(a)は集中しているときの頭部の画像、(b)はわき見しているときの頭部の画像、(c)は居眠りしているときの頭部の画像をそれぞれ示している。
【図11】上記実施形態の効果を説明するための比較例を示す図である。
【図12】本発明の変形実施例を説明するための図である。
【図13】本発明の別の変形実施例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1〜図3は、本発明の一実施形態にかかる車室内状態の認識装置が適用される車両の全体構成を示す図である。これらの図に示される車両は、いわゆるミニバンタイプの自動車であり、その車室フロア1上には合計3列のシートが配設されている。具体的には、車室フロア1の前方部に、運転席シート2および助手席シート3が配設されているとともに、その後方側には、互いに独立した左右一対の第1後席シート4,5と、車幅方向に延びる一体のシートからなる(いわゆるベンチシートタイプの)第2後席シート6とが順に配設されている。なお、上記運転席シート2および助手席シート3は、車室フロア1上に設けられたシートスライドレール14に沿って前後方向に移動可能に支持されている。
【0028】
上記運転席シートおよび助手席2,3の各シートバック41,42の上部には、乗員の後頭部をサポートするためのヘッドレスト51,52が設けられている。これら各ヘッドレスト51,52は、上記シートバック41,42に対し上下方向にスライド可能に設けられたスライド支柱K1(図1)を介してそれぞれ支持されており、このスライド支柱K1の上下動に応じて上記各ヘッドレスト51,52の高さを所定範囲内で調整し得るように構成されている。
【0029】
上記第1後席シート4,5および第2後席シート6についても、上記運転席シート2等と同様の構造が採用されている。すなわち、上記第1後席シート4,5の各シートバック43,44に、それぞれヘッドレスト53,54がスライド支柱K2を介して支持されることにより、上記各ヘッドレスト53,54の高さが所定範囲内で調整可能とされている。また、第2後席シート6については、一体型のシートバック45の左右2箇所に、それぞれヘッドレスト55,56がスライド支柱K3を介して支持されており、各スライド支柱K3の上下動に応じて上記2つのヘッドレスト55,56の高さが所定範囲内で調整可能とされている。
【0030】
なお、図示の例において、上記第1・第2後席シート4〜6のヘッドレスト53〜56は、上記運転席シート2および助手席シート3に備わる通常のヘッドレスト51,52(いわゆる枕型のヘッドレスト)と異なり、側面視での形状が略逆L字状を呈したいわゆる鞍型のヘッドレストとされているが、これは、上記各後席シート4〜6のシートバック43〜45を前倒させてフルフラット化する際に上記ヘッドレスト53〜56が邪魔にならないように、これらヘッドレスト53〜56等を含むシートの上下寸法を抑制するための措置である。したがって、このようなことが必要なければ、上記各後席シート4〜6のヘッドレスト53〜56を、上記運転席シート2および助手席シート3と同様の枕型の形状に形成してもよい。
【0031】
上記運転席シート2および助手席シート3の前方側には、車幅方向に延びるインストルメントパネル7が設置されており、このインストルメントパネル7における運転席寄りの位置には、操舵用のステアリングホイール8が設けられている。また、上記インストルメントパネル7の上方にはフロントガラス9が設置され、その左右両側部(つまり車室前端の側壁部)には、フロントガラス9と同じ傾斜角度で上下方向に延びる左右一対のフロントピラー10が設置されている。さらに、このフロントピラー10の所定距離後方側には、車室フロア1からルーフ部13までの範囲に亘って上下方向に延びるセンターピラー11が設置されており、このセンターピラー11と上記フロントピラー10との間に、フロントドア用のサイドガラス12が位置している。
【0032】
上記ルーフ部13の前端部付近であって上記運転席・助手席シート2,3の各シートバック2a,3aよりやや前方側に位置する部位には、車室内に赤外線を照射する赤外線照射手段15が設けられている。具体的に、当実施形態における赤外線照射手段15は、赤外線の一種として、可視光に近くかつ肉眼では見えない波長を有する近赤外線を照射するものであり、例えば複数の赤外線LEDによって構成されている。
【0033】
また、上記左右一対のフロントピラー10のうち、運転席側にあたる車両右側のフロントピラー10には、車室内を撮像するための撮像手段16が設けられている。この撮像手段16は、上記赤外線照射手段15から照射される近赤外線の波長領域に対応した感度をもつCCDカメラからなり、車室内に差し込む自然光(例えば太陽光)の光量にかかわらず、上記赤外線照射手段15による赤外線の照射領域をほぼ一定の明度で撮像し得るように構成されている。
【0034】
図4は、上記撮像手段16が設置されるフロントピラー10(車両右側のフロントピラー10)の上部を中心に示す斜視図であり、図5は、上記撮像手段16の設置部の詳細を示す断面図である。このうち、特に図5に示すように、上記フロントピラー10は、金属製パネル材からなるアウタパネル20およびインナパネル21と、インナパネル21の車室内側面を覆う樹脂製パネル材からなるピラートリム22とを有している。上記フロントピラー10の上端部付近(ルーフ部13に近い部分)に対応するピラートリム22の壁部には、車室内側に突出する突出部22aが設けられており、この突出部22aに収納されるように上記撮像手段16が配置されている。
【0035】
上記ピラートリム22は、上記インナパネル21に係止用のクリップ33(図5)を介して係脱自在に取り付けられており、これらピラートリム22とインナパネル21との間には、車両の側突時に展開するカーテンエアバッグ23が、フロントピラー10の下側の側辺部に沿って延びるように配設されている。そして、車両の側突時には、上記カーテンエアバッグ23の拡張展開に応じ、上記クリップ24による係合が解除されてピラートリム22が図5の矢印Xのように変位し、これによって生じた隙間から上記カーテンエアバッグ23が外部に展開して上記サイドガラス12を覆うように構成されている。
【0036】
上記ピラートリム22の突出部22aに収納された上記撮像手段16は、上記カーテンエアバッグ23よりもフロントガラス9寄りの位置に配設されている。すなわち、上記カーテンエアバッグ23が、サイドガラス12の前辺部に一致するフロントピラー10の下側の側辺部に沿って設けられている一方、上記突出部22aおよび撮像手段16は、上記カーテンエアバッグ23よりも上方かつ前方に位置するフロントガラス9の近傍部に設けられている。
【0037】
また、上記撮像手段16は、図3に示すように、その撮像視野Rの中に運転席シート2や助手席シート3等を含む車室内の複数のシートが収まるように、車両の斜め後方かつ下方を指向して配置されている。このような撮像手段16により撮像された車室内の画像を図6に示す。なお、この図6では、車室内に着座した乗員を想像線で示している。具体的に、図示の例では、運転席シート2、助手席シート3、車両左側の第1後席シート5、および第2後席シート6にそれぞれ1人ずつ乗員が着座しており、これらの乗員を順番にA,B,C,Dで表わしている。以下において、これらの乗員を区別して指すときは、運転席シート2に着座した乗員Aを運転席乗員、助手席シート3に着座した乗員Bを助手席乗員、その他の乗員C,Dを後席乗員と称する。また、図中の符号30はシートベルトであり、各乗員A〜Dは、このシートベルト30によって各シートに拘束されている。
【0038】
図6に示すように、上記撮像手段16による撮像画像には、運転席シート2および助手席シート3を始めとした車室内の複数のシートや、各シートに着座した着座乗員等が含まれる。具体的に、図6の例では、運転席シート2、助手席シート3、第1後席シート4,5、および第2後席シート6の各ヘッドレスト51〜56やその下側のシートバック41〜45の一部(つまりヘッドレスト51〜56を少なくとも含む各シート2〜6の上部)と、上記各シート2〜6に着座した着座乗員(図例では乗員A〜D)とを含む車室内の所定領域が、上記撮像手段16によって撮像されるようになっている。
【0039】
また、同じく図6に示すように、上記助手席シート3のシートバック42における車幅方向内側の側面には、上記赤外線照射手段15から照射される近赤外線を反射する材質からなる帯状の識別部材32が設けられている。なお、詳細は後述するが、この識別部材32は、上記助手席シート3に着座した助手席乗員Bに対して行われる体格判定を容易化するために設けられている。このため、識別部材32は、上記シートバック42の側面に沿って所定の高さ範囲にわたって設けられており、その上下方向の複数個所には、上記助手席乗員Bの体格を判定する際の目安となる目盛32aが表示されている。なお、目盛32aを表示するには、識別部材32の表面に実際にラインを描く必要はなく、例えば近赤外線の反射率を相対的に低下させる表面処理等を部分的に施せば、人目に目立たないように目盛32aを表示することができる。
【0040】
図7は、当実施形態の車室内状態の認識装置の制御系を示すブロック図である。本図における制御ユニット17は、車両の各部を統括的に制御するための装置であり、周知のCPUやROM、RAM、HDD等から構成されている。この制御ユニット17には、上記赤外線照射手段15および撮像手段16の他、エアバッグ装置24、警報装置25、イグニッションセンサ26、シフトポジションセンサ27、バックルセンサ28、および衝突センサ29が電気的に接続されている。
【0041】
上記エアバッグ装置24は、車室内の各部に設けられたエアバッグ、およびこれを展開させるためのインフレータ等を含む装置である。このエアバッグ装置24には、上述したカーテンエアバッグ23(図4、図5)の他、ステアリングホイール8に設けられた運転席用のエアバッグや、助手席シート3前方のインストルメントパネル7に設けられた助手席用のエアバッグ等(いずれも図示省略)が含まれる。
【0042】
上記警報装置25は、車両の運行上好ましくない状態が発生したときに、乗員に対して各種警告を行うものである。詳細は後述するが、例えば上記撮像手段16により撮像された車室内の画像(図6)に基づいて、ヘッドレスト51〜56の高さが適切でないことが確認された場合に、上記警報装置25が作動して乗員への警報が行われる。この警報装置25は、例えばインストルメントパネル7の表示部等に警告用の画面を表示する機能の他、アラーム音等の所定の音声により乗員に警告を発する機能等を有している。
【0043】
上記イグニッションセンサ26は、走行用の駆動源(例えばエンジン)を始動するイグニッション装置のON/OFFを検出するためのセンサである。
【0044】
上記シフトポジションセンサ27は、図外のシフトレバーのポジション(Pレンジ、Dレンジ、Rレンジ等)を検出するためのセンサである。
【0045】
上記バックルセンサ28は、上記シートベルト30を各シートに固定するためのバックル(図示省略)に設けられたセンサであり、上記シートベルト30先端のタング部が上記バックルに係合しているか否かを検出することにより、上記シートベルト30が使用されているか否かを検出するように構成されている。
【0046】
上記衝突センサ29は、自車両に衝突事故(前突、後突、または側突事故)が発生したことを検出するためのセンサであり、例えば車両に加わる加速度やその方向を検出するGセンサ等により構成されている。
【0047】
また、上記制御ユニット17は、その機能要素として、画像認識手段18およびエアバッグ制御手段19を有している。
【0048】
上記画像認識手段18は、上記撮像手段16から入力される車室内の撮像画像に基づき各種情報を認識するものである。例えば、上記画像認識手段18は、上記車室内の撮像画像(図6)に基づいて、各シート2〜6のヘッドレスト51〜56の高さを判定する機能の他、運転席シート2に着座した運転席乗員Aの運転操作に対する集中度を判定する機能や、助手席シート3に着座した助手席乗員Bの体格を判定する機能等を有している。
【0049】
上記エアバッグ制御手段19は、上記エアバッグ装置24の展開制御を実行するものである。例えば、上記エアバッグ制御手段19は、上記衝突センサ29の検出値に基づき車両の衝突事故が検知されたときに、その衝突事故が前突か側突か等に応じて上記エアバッグ装置24の中の予め定められたエアバッグを展開させる機能、および、上記画像認識手段18により認識された助手席乗員Bの体格に応じて、助手席用のエアバッグの展開を実行もしくは禁止する機能等を有している。
【0050】
図8は、上記制御ユニット17により実行される制御動作の内容を示すフローチャートである。なお、この図8では、上記画像認識手段18が行う画像認識に関する制御動作を中心に示している。本図に示されるフローチャートがスタートすると、まず、上記イグニッションセンサ26、シフトポジションセンサ27、およびバックルセンサ28等の各検出値を読み込む制御が実行される(ステップS1)。
【0051】
次いで、上記ステップS1で読み込まれたイグニッションセンサ26の検出値に基づいて、イグニッションがONであるか否かが判定され(ステップS2)、ここでYESと判定されてイグニッションがONであることが確認されると、上記シフトポジションセンサ27の検出値に基づいて、シフトポジションがDレンジであるか否かが判定される(ステップS3)。
【0052】
上記ステップS3でYESと判定されてDレンジであること(つまり車両が走行中であること)が確認された場合には、上記Dレンジへのシフトチェンジから予め定められた所定時間T1(例えば1〜3秒程度)が経過したか否かが判定される(ステップS4)。そして、ここでYESと判定されて所定時間T1が経過したことが確認された後に、上記赤外線照射手段15を作動させて車室内に近赤外線を照射する制御が実行される(ステップS5)。
【0053】
次いで、上記のように車室内に近赤外線が照射された状態で、上記撮像手段16により車室内を撮像する制御が実行される(ステップS6)。この撮像手段16による撮像画像には、図6に示したように、運転席シート2、助手席シート3、第1後席シート4,5、および第2後席シート6の各ヘッドレスト51〜56やその下側のシートバック41〜45の一部と、上記各シート2〜6の着座乗員(図例では運転席乗員A、助手席乗員B、後席乗員C,D)とが少なくとも含まれる。そして、このようにして撮像された車室内の画像は、上記画像認識手段18に送信されて取り込まれ、必要な画像処理が施された後に保存される(ステップS7)。
【0054】
次いで、上記ステップS7で取り込まれた画像(図6)に基づいて、上記各シート2〜6のヘッドレスト51〜56の高さを判定する制御が、上記画像認識手段18により実行される(ステップS8)。図9は、これらヘッドレスト51〜56の高さをどのように判定するかを説明するための図である。なお、この図9では、運転席シート2のヘッドレスト51の高さを判定する場合を例に挙げて説明を行う。ただし、他のシートにおけるヘッドレストの高さ判定を行う際もその手順は同様である。
【0055】
図9に示すように、上記運転席シート2のヘッドレスト51の高さは、その着座乗員(運転席乗員A)の頭部の外形との比較によって判定する。具体的には、上記ヘッドレスト51の側部下辺Fと、上記運転席乗員Aのあご部Gとを画像上で特定し、両者の高さ寸法差Yを算出してその値が予め定められた所定範囲内(例えば±5cm以内)に収まるか否かを判定することにより、上記ヘッドレスト51の高さが適正であるか否かを判定する。このとき、例えば図9において想像線で示すように、上記ヘッドレスト51の側部下辺Fに識別マークMを付しておけば、当該部を容易かつ確実に特定することができるため、上記高さ寸法差Yをより正確に算出することが可能である。
【0056】
上記ヘッドレスト51の側部下辺Fと乗員のあご部Gとの高さ寸法差Yは、例えば、ヘッドレスト51の高さ寸法H2との比較により、単位をもった実際の寸法データとして算出することが可能である。すなわち、ヘッドレスト51の全体の高さ寸法H2が何cmであるかいった寸法データを制御ユニット17内の記憶部等に予め記憶させておけば、その記憶値を基準として用いることより、上記高さ寸法差Yの実際の寸法データを容易に求めることができる。
【0057】
そして、上記のような手順によるヘッドレストの高さ判定を、運転席シート2以外のシート(つまり助手席シート3、第1および第2の後席シート4〜6)に対しても同様に実行する。ただし、運転席シート2以外のシートについては、乗員が着座しているシートに対してのみ高さ判定を行う。例えば、図6の例では、助手席シート3、車両左側の第1後席シート5、および第2後席シート6における右側の着座部にのみ乗員が着座しているため、これらの乗員B,C,Dによって使用されるヘッドレスト52,54,55に対してのみ高さ判定が行われる。
【0058】
ところで、運転席シート2以外のシートについては、その着座乗員が子供である場合も想定される。着座乗員が子供である場合は、たとえ適正な姿勢で乗員が着座していても、そのあご部がヘッドレストの下辺部よりもかなり大きく下側に位置することになるため、上記と同様の手順による判定を行ったのでは、ヘッドレストの高さが無意味に異常と判定されてしまう。そこで、着座乗員の頭部の大きさや座高(例えば図6に示す座高H1)等から乗員が子供であると判定された場合には、上記のようなヘッドレストの高さ判定を禁止するとよい。
【0059】
さらに、上記各シート2〜6のヘッドレスト51〜56の高さが適正な位置にセットされていたとしても、乗員が一時的に不適切な姿勢(例えば上体を大きく前傾させた前のめりの姿勢等)をとることにより、上記乗員の頭部との比較において上記ヘッドレスト51〜56のいずれかの高さが不適切であると判定される(つまり上記高さ寸法差Yが所定範囲から外れる)ことも想定される。したがって、着座乗員の姿勢が上記のような不適切な姿勢であることが車室内の撮像画像等に基づき確認された場合には、その乗員が着座しているシートについてはヘッドレストの高さ判定を禁止するとよい。これにより、乗員が適正な姿勢で着座しているときにのみヘッドレストの高さ判定が行われることになり、着座姿勢の悪化に起因してヘッドレストの高さが無意味に異常と判定されることが回避される。
【0060】
再び図8に戻ってフローチャートの説明を続ける。上記のようにしてヘッドレストの高さ判定が終了すると、その結果に基づいて、高さが不適切なヘッドレストが存在するか否かを判定する制御が、上記画像認識手段18により実行される(ステップS9)。すなわち、上記ステップS8において、図9に示した高さ寸法差Yが所定範囲を外れるヘッドレストが1つでも存在すれば、上記ステップS9ではYESと判定される。
【0061】
上記ステップS9でYESと判定されて高さが不適切なヘッドレストが存在することが確認された場合には、上記警報装置25を作動させて乗員に警告を発する制御が実行される(ステップS10)。例えば、車両左側の第1後席シート5におけるヘッドレスト54の高さが不適切であることが確認された場合には、この第1後席シート5のヘッドレスト54の高さを修正する(つまり当該ヘッドレスト54のスライド支柱K2(図1)を上下動させてその高さを調節する)作業を行うべき旨の音声案内等が上記警報装置25から発せられるか、もしくはその旨を表すエラー画面が上記警報装置25によって表示される。
【0062】
次いで、助手席乗員Bの体格を判定する制御が上記画像認識手段18により実行される(ステップS11)。具体的には、上記ステップS7で取り込まれた撮像画像(図6)に基づいて、助手席乗員Bの座高H1を、上記助手席シート3のシートバック3aに設けられた識別部材32との比較により特定し、その大小によって助手席乗員Bの体格を判定する。
【0063】
上記助手席乗員Bの体格の判定結果(ステップS11)は、上記エアバッグ制御手段19によるエアバッグ装置24の展開制御に利用される。例えば、上記識別部材32との比較の結果、上記助手席乗員Bの座高H1が所定値よりも小さく、当該乗員Bが小さな子供、もしくは、米国成人女性のうち統計的に最も身長の低い5%以内の人物(AF05)に相当すると判定された場合には、たとえ車両の衝突事故が起きたとしても、助手席用のエアバッグの展開が禁止もしくは抑制される。これにより、助手席乗員Bがある程度の体格をもった大人である場合にのみ、助手席用のエアバッグが通常通りの速い展開速度で展開することになり、エアバッグの展開によりかえって乗員の安全性が損なわれてしまうということが回避される。
【0064】
次いで、シートベルト30がバックルに固定されていてバックルセンサ28がONになっているシートと、実際に乗員が着座しているシートとを照合する制御が実行される(ステップS12)。具体的には、上記ステップS7で取り込まれた車室内の撮像画像に基づいて、車室内のどのシートに乗員が着座しているかを特定するとともに、これによって特定された着座シートと、上記バックルセンサ28がONのシート(つまりシートベルト30が使用されているシート)とを照合し、両者の一致、不一致を確認する。
【0065】
次いで、上記ステップS12での照合結果に基づいて、上記バックセンサ28がONのシートと乗員が着座しているシートとが完全に一致するか否かを判定する制御が実行される(ステップS13)。そして、ここでNOと判定されて1つでも不一致が確認されると、上記警報装置25を作動させて乗員に警告を発する制御が実行される(ステップS14)。例えば、乗員が着座しているにもかかわらずバックルセンサがOFFになっているシート(つまり着座乗員によりシートベルト30が使用されていないシート)が1つでも存在すれば、上記ステップS10ではNOと判定され、次のステップS11で警告が発せられることになる。
【0066】
次いで、上記ステップS7で取り込まれた車室内の撮像画像に基づいて、使用中のシートベルト30の状態を認識するとともに(ステップS15)、その認識結果に基づいて、いずれかのシートベルト30にねじれが存在するか否かを判定する制御が実行される(ステップS16)。そして、ここでYESと判定されてシートベルト30にねじれが存在することが確認された場合に、上記警報装置25を作動させて乗員に警告を発する制御が実行される(ステップS17)。
【0067】
次いで、上記ステップS7で取得された画像に基づいて、上記運転席乗員Aによる運転操作の集中度を判定する制御が、上記画像認識手段18により実行される(ステップS18)。
【0068】
図10(a)〜(c)は、上記運転席乗員Aの集中度をどのように判定するかを説明するための図である。これらの図において、一点鎖線で示す縦横のラインL1,L2は、運転席乗員Aの頭部の形状から定まる基準線である。上記画像認識手段18は、上記運転席乗員Aの両目および口の位置を上記基準線L1,L2との相対的な位置関係で特定することにより、上記運転席乗員Aの集中度を判定する。例えば、図10(a)は、運転席乗員Aが運転に集中しているとき(つまり真っ直ぐ前方を向いているとき)の目と口の位置を示している。この場合には、縦方向の基準線L1を挟んだ左右両側でかつ横方向の基準線L2よりも上方の領域に両目が配置されるとともに、縦方向の基準線L1の上に口が配置されることになる。
【0069】
これに対し、図10(b)は、運転席乗員Aがよそ見をしているときの状態を示しており、この場合には、運転席乗員Aの両目が、上記縦方向の基準線L1に対し左右いずれかに片寄った位置に配置されることになる。また、図10(c)は、運転席乗員Aが居眠りしたときの状態を示しており、この場合には、運転席乗員Aの両目が、上記横方向の基準線L2よりも下方に配置されることになる。上記画像認識手段18は、これら図10(b)や図10(c)の状態が所定時間以上継続した場合に、上記運転席乗員Aの集中度が低い(つまりよそ見や居眠りをしている)と判定する。
【0070】
再び図8のフローチャートに戻って説明を続ける。上記のようにして運転席乗員Aの集中度が判定されると、次のステップS19では、運転席乗員Aの集中度が低いか否か、つまり、図10(b)(c)に示したようなわき見や居眠りが所定時間以上継続しているか否かを判定する制御が実行される。そして、ここでYESと判定されて運転席乗員Aの集中度が低いことが確認された場合に、上記警報装置25を作動させて運転席乗員Aに所定の警告を発する制御が実行される(ステップS20)。
【0071】
次いで、イグニッションセンサ26の検出値に基づきイグニッションがOFFであるか否かが判定され(ステップS21)、ここでYESと判定されればフローを終了する。一方、NOと判定されて車両が引き続き走行中であることが確認された場合には、予め定められた所定時間T2(例えば10msec程度)が経過するのを待ってから(ステップS22)、上述したステップS5に戻り、以下同様の処理を繰り返す。これにより、所定時間T2ごとに、車室内への近赤外線の照射や撮像等の処理が周期的に繰り返される。
【0072】
以上説明したように、当実施形態の車室内状態の認識装置は、高さ調整可能なヘッドレスト51〜56を備えたシート2〜6(運転席シート2、助手席シート3、第1後席シート4,5、および第2後席シート6)を含む車室内に赤外線を照射する赤外線照射手段15と、この赤外線照射手段15から赤外線が照射された車室内を撮像する撮像手段16と、この撮像手段16により撮像された画像に基づき所定の情報を認識する画像認識手段18とを備えている。そして、当実施形態では、上記ヘッドレスト51〜56を含む上記シート2〜6の上部と、該シート2〜6に着座した着座乗員(例えば図6の乗員A〜D)とが上記撮像手段16によって少なくとも撮像され、この撮像手段16により撮像された上記ヘッドレスト51〜56の画像に基づいて、上記着座乗員に対するヘッドレスト51〜56の高さが上記画像認識手段18により判定されるように構成されている。このような構成によれば、高さ調整可能なヘッドレスト51〜56を備えたシート2〜6を含む車室内の状態をより適正に認識できるという利点がある。
【0073】
すなわち、上記実施形態では、赤外線が照射された車室内を撮像手段16によって撮像する際に、高さ調整可能なヘッドレスト51〜56を備えたシート2〜6の上部や、その着座乗員(例えば図6の乗員A〜D)等を含めて撮像するようにしたため、その撮像画像に基づいて、着座乗員に対する上記ヘッドレスト51〜56の高さを適正に判定できるとともに、その判定結果に応じて乗員に警告を発する等の必要な措置を採ることにより、上記ヘッドレスト51〜56の高さを適正な範囲に維持して衝突時(特に後突時)の安全性を効果的に向上させることができるという利点がある。
【0074】
より具体的に、上記実施形態では、上記画像認識手段18によるヘッドレスト51〜56の高さ判定として、上記ヘッドレスト51〜56の側部下辺Fと着座乗員のあご部Gとの高さの差Yを算出してその大小を判定するようにした(図9参照)。このような構成によれば、着座乗員の頭部を適正にサポートできる位置にヘッドレスト51〜56の高さがセットされているか否かを容易かつ確実に判定できるとともに、その判定結果に応じて必要な警告を行う等により、衝突時の安全性をより効果的に向上させることができるという利点がある。
【0075】
また、上記実施形態では、車室前端の側壁に沿って上下方向に延びるフロントピラー10に上記撮像手段16を設け、この撮像手段16により、車幅方向に並設された運転席シート2および助手席シート3の各ヘッドレスト51,52や、その後方側の第1後席シート4,5および第2後席シート6の各ヘッドレスト53〜56等を斜め前方から同時に撮像するようにした。このような構成によれば、撮像視野を極端に拡大した特殊なカメラ(例えば魚眼レンズや超広角レンズ等を備えたカメラ)を上記撮像手段16として用いなくても、車幅方向に並ぶ複数のヘッドレストを同時に撮像することができ、その撮像画像として歪みの少ない適正な画像が得られるという利点がある。
【0076】
例えば、図11に示すように、車室前端に設けられたインストルメントパネル7の車幅方向中央部に撮像手段116を設けることも可能であるが、このようにすると、運転席シート2および助手席シート3の各ヘッドレスト51,52等を含む撮像対象を同時に撮像するために、上記撮像手段116の撮像視野Rを大きく拡大する必要が生じる。このため、撮像手段116として、魚眼レンズや超広角レンズ等を備えた特殊なカメラを用いる必要が生じるとともに、このようなカメラを用いて車室内を撮像することで、得られる画像が大きく歪んでしまうという問題がある。これに対し、上記実施形態では、車室側方のフロントピラー10に設けられた撮像手段16により車室内を撮像するようにしたため、上記のような特殊なカメラを用いることなく、車幅方向に並ぶ上記ヘッドレスト51,52等の撮像対象を、同時に、しかも大きな歪みを生じることなく適正に撮像でき、その撮像画像に基づいて上記ヘッドレスト51,52等の高さを適正に判定できるという利点がある。
【0077】
特に、上記実施形態では、車室前方に設けられた運転席シート2および助手席シート3の各ヘッドレスト51,52に加えて、その後方側に設けられた第1後席シート4,5や第2後席シート6の各ヘッドレスト53〜56についても、上記フロントピラー10に設けられた撮像手段16によって同時に撮像し得るように構成されているため、車室内の前後左右に配置された多数のシートのヘッドレストを1つの撮像手段16を用いて撮像することができ、その撮像画像に基づいて各ヘッドレストの高さを効率的かつ適正に判定できるという利点がある。
【0078】
さらに、上記構成のように、フロントピラー10に設けられた撮像手段16によって各シート2〜6のヘッドレスト51〜56を斜め前方から撮像するようにした場合には、上記シート2〜6に着座した着座乗員(例えば図6の乗員A〜D)の頭部に邪魔されることなく上記ヘッドレスト51〜56の外形を撮像できるため、このヘッドレスト51〜56の高さを上記頭部の存在にかかわらず適正に判定できるという利点がある。
【0079】
また、上記実施形態では、図4および図5に示したように、フロントピラー10の車室内側面を構成するピラートリム22に突出部22aを設け、この突出部22aに上記撮像手段16を収納するようにした。このような構成によれば、上記フロントピラー10の内部に収納される他の部品(例えばカーテンエアバッグ23等)の配置を阻害することなく、上記撮像手段16の設置場所を適正に確保することができる。しかも、フロントピラー10の上端部付近に上記突出部22aを設けたため、フロントガラス9を通じた前方視界が上記突出部22aによって大きく阻害されるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0080】
さらに、上記実施形態では、フロントピラー10の内部(ピラートリム22とインナパネル21との間)に収納されるカーテンエアバッグ23よりもフロントガラス9寄りの位置に、上記突出部22aおよび撮像手段16を設けたため、車両の側突時に上記カーテンエアバッグ23がサイドガラス12側に展開しようとしたときに、上記カーテンエアバッグ23の展開性が上記撮像手段16等により阻害されるのを効果的に防止でき、上記カーテンエアバッグ23を側突時に確実に展開させて乗員の安全性をより適正に確保できるという利点がある。
【0081】
また、上記実施形態では、図10(a)〜(c)に示したように、上記撮像手段16により撮像された運転席乗員Aの頭部の形状に基づいて、運転席乗員Aの運転操作に対する集中度(わき見や居眠りの有無)を判定するようにした。このような構成によれば、撮像手段16による撮像画像に基づきヘッドレスト51〜56の高さを判定しつつ、同じ画像を用いて運転席乗員Aの集中度を適正に判定することができ、その判定結果に応じて必要な警告を行う等により、わき見や居眠りによる事故を未然に防止できるという利点がある。
【0082】
なお、上記実施形態では、運転席シート2側にあたる車両右側のフロントピラー10に撮像手段16を設け、この1つの撮像手段16により、車室内の前後左右に配置された全てのシートのヘッドレスト51〜56を撮像するようにしたが、図6に示した画像から予想できるように、シートの位置関係等によっては、特に運転席シート2の後方側に位置するヘッドレスト、つまり、車両右側の第1後席シート4のヘッドレスト53と、第2後席シート6の右側のヘッドレスト55とが死角に入ってほとんど撮像できなくなるおそれがある。
【0083】
このような場合の対策として、上記ヘッドレスト53,55の幅を、撮像手段16が設けられる側と同じ車両右側に拡張することが考えられる。図12には、第1後席シート4のヘッドレスト53の幅を車両右側に拡張した例が示されている。本図に示されるヘッドレスト53は、その幅方向の中心P1が、シートの座面中心P2に対して車両右側にオフセットしており、上記ヘッドレスト53のうち座面中心P2よりも右側にあたる部分の幅寸法が相対的に大きく設定されている。ヘッドレスト53をこのような形状とすれば、車両右側のフロントピラー10に設けられた上記撮像手段16から撮像したときに、上記ヘッドレスト53がその前方側のシート(つまり運転席シート2)の死角になるのを効果的に防止でき、上記ヘッドレスト53の高さを適正に判定できるという利点がある。なお、このことは、第2後席シート6の右側のヘッドレスト55についても同様である。
【0084】
ただし、上記のように、ヘッドレストを撮像し易い形状にするという対策を行ったとしても、場合によっては、上記第1後席シート4,5および第2後席シート6の各ヘッドレスト53〜56を適正に撮像できない場合も想定される。そこで、このような場合には、例えば図13に示すように、上記撮像手段16と同様の撮像手段16’をセンターピラー11に設ければよい。このように、センターピラー11に撮像手段16’を設ければ、運転席シート2や助手席シート3に邪魔されることなく上記第1・第2後席シート4〜6の各ヘッドレスト53〜56を撮像でき、その高さを適正に判定することができる。
【0085】
また、上記実施形態では、ルーフ部13の前端部付近に赤外線LED等からなる赤外線照射手段15を設け、この赤外線照射手段15のみを用いて車室内の全てのシートに近赤外線を照射するようにしたが、全てのシートを十分な明度で撮像するには、例えば上記赤外線照射手段15としての赤外線LEDの数を多くすることにより、照射される近赤外線の量をある程度大きい値に設定する必要がある。一方、上記赤外線照射手段15による近赤外線の照射量を十分に確保できない場合には、同じく図13に示すように、上記赤外線照射手段15と同様の赤外線照射手段15’を、第1後席シート4,5の上方にあたるルーフ部13の前後方向中央部付近に設け、この赤外線照射手段15’からの近赤外線を上記第1・第2後席シート4〜6に照射するようにすればよい。
【0086】
また、上記実施形態では、図1〜図3等に示したように、赤外線照射手段15をルーフ部13に、撮像手段16をフロントピラー10にそれぞれ設けることにより、これら赤外線照射手段15と撮像手段16とを別々に配置するようにしたが、例えば両者を同じフロントピラー10に一体的に設けることも当然に可能である。しかしながら、このようにすると、赤外線照射手段15および撮像手段16の両方の設置スペースを確保するために、フロントピラー10の突出部22a(図4、図5)をより大きく突出させる必要が生じるとともに、上記両手段15,16を取り付けるための構造が複雑化することが懸念される。したがって、上記赤外線照射手段15を撮像手段16とは異なる位置に設けた上記実施形態の方が、上記のような不具合を招くことなく上記両手段15,16の設置場所を確保できるという点で有利である。
【0087】
また、上記実施形態では、ヘッドレスト51〜56の側部下辺Fと着座乗員のあご部Gとの高さの差Yを算出してその大小を判定するようにしたが、乗員の頭部との関係でヘッドレストの高さを正確に判定できるものであればこのような手法に限られない。例えば、乗員の頭頂部とヘッドレストの上辺部との高さの差を算出してその大小を判定するようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、いわゆる3列シートを備えたミニバンタイプの車両に本発明の構成を適用した例について説明したが、本発明の構成は、前後2列のシートを備えた車両(例えばセダンタイプの車両)や、運転席シートおよび助手席シートのみを備えた2シータタイプの車両にも当然に適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
2 運転席シート
3 助手席シート
4,5 第1後席シート(後席シート)
6 第2後席シート(後席シート)
10 フロントピラー(ピラー部材)
15 赤外線照射手段
16 撮像手段
18 画像認識手段
51〜56 ヘッドレスト
A 運転席乗員(着座乗員)
B 助手席乗員(着座乗員)
C,D 後席乗員(着座乗員)
Y (高さの)差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ調整可能なヘッドレストを備えたシートを含む車室内に赤外線を照射する赤外線照射手段と、この赤外線照射手段から赤外線が照射された車室内を撮像する撮像手段と、この撮像手段により撮像された画像に基づき所定の情報を認識する画像認識手段とを備えた車室内状態の認識装置であって、
上記撮像手段による撮像対象に、上記ヘッドレストを含むシートの上部と、該シートに着座した着座乗員とが含まれ、
上記画像認識手段は、上記撮像手段により撮像された上記ヘッドレストの画像に基づいて、上記着座乗員に対するヘッドレストの高さを判定することを特徴とする車室内状態の認識装置。
【請求項2】
請求項1記載の車室内状態の認識装置において、
上記シートのヘッドレストを斜め前方から臨む車室内の所定部位に上記撮像手段が設けられたことを特徴とする車室内状態の認識装置。
【請求項3】
請求項2記載の車室内状態の認識装置において、
上記シートが車幅方向に少なくとも2つ並べて設けられ、これら2つのシートの各ヘッドレストを斜め前方から同時に撮像可能な車室側方の所定部位に上記撮像手段が設けられたことを特徴とする車室内状態の認識装置。
【請求項4】
請求項3記載の車室内状態の認識装置において、
上記撮像手段が、車室側壁に沿って上下方向に延びるピラー部材もしくはその近傍に設けられたことを特徴とする車室内状態の認識装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の車室内状態の認識装置において、
上記撮像手段によりヘッドレストが撮像されるシートに、少なくとも運転席シートおよび助手席シートが含まれ、上記ピラー部材としてのフロントピラーの上端部付近に上記撮像手段が設けられたことを特徴とする車室内状態の認識装置。
【請求項6】
請求項5記載の車室内状態の認識装置において、
上記運転席シートおよび助手席シートの後方側に後席シートが設けられ、この後席シートのヘッドレストと、上記運転席シートおよび助手席シートの各ヘッドレストとが上記撮像手段により同時に撮像可能とされたことを特徴とする車室内状態の認識装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の車室内状態の認識装置において、
上記撮像手段による撮像対象に、上記運転席シートに着座した運転席乗員の頭部が含まれ、この運転席乗員の頭部の撮像画像に基づいて、当該乗員の運転操作に対する集中度を判定する処理が上記画像認識手段により実行されるように構成されたことを特徴とする車室内状態の認識装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の車室内状態の認識装置において、
上記画像認識手段は、上記シートのヘッドレストと該シートに着座した着座乗員の頭部との高さの差を算出してその大小を判定することを特徴とする車室内状態の認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−203837(P2010−203837A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47934(P2009−47934)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】