説明

車線逸脱防止装置

【課題】自車両が走行車線から逸脱する可能性があると判断されたとき、これが運転者による意図的なものであるか否かを正確に判断して、逸脱回避方向への進路修正を的確に行う。
【解決手段】運転者が方向指示器を操作することなく、自車両が走行車線から逸脱する可能性があると判断されるときに、逸脱回避方向の目標ヨーモーメントMs0を算出し(ステップS31)、次に、アクセル操作に連動したスロットル開度Aに応じたアクセル感応ゲインkaを算出し(ステップS53)、このアクセル感応ゲインkaに応じて目標ヨーモーメントMs0を補正する(ステップS54)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が走行車線から逸脱する可能性があるときに、自車進路を逸脱回避方向に修正し、走行車線からの逸脱を防止する車線逸脱防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車線逸脱防止装置として、例えば、自車両が走行車線からの逸脱傾向にあると判断された場合、自車進路を逸脱回避方向に修正する逸脱回避制御を実行し、操舵速度や操舵トルク、又は操舵トルク変化量が閾値以上となるときには、車線変更や障害物回避等の目的で運転者が意図的にステアリング操作していると判断して逸脱回避制御を規制するように構成された車両の走行レーン逸脱防止装置がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−142327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来例にあっては、操舵速度や操舵トルク、又は操舵トルク変化量に基づいて運転者の意図を判断しているので、例えば、車線変更や障害物回避の際に操舵速度が所定値未満となるような余裕を持ったステアリング操作がなされたり、脇見運転等でステアリングホイールに所定値以上の操舵トルクが加えられたり、路面からの外乱を受けて操舵トルクや操舵トルク変化量が所定値以上となったりした場合には、逸脱回避制御の実行又は規制が運転者の意図に反するという未解決の課題がある。
そこで、本発明は上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、自車両が走行車線から逸脱する可能性があると判断されたとき、これが運転者による意図的なものであるか否かを正確に判断して、逸脱回避方向への進路修正を的確に行うことができる車線逸脱防止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る車線逸脱防止装置は、自車両が走行車線から逸脱する可能性があると判断されるときに、逸脱回避に必要な進路修正量に基づいて自車進路を逸脱回避方向に修正するものであって、スロットル開度が大きいほど進路修正量を小さくし、スロットル開度が所定値より大きいときに進路修正量をゼロにすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る車線逸脱防止装置によれば、一般に車線変更を意図している運転者は自車両の逸脱傾向を認識してもアクセル操作を緩めることはないが、車線変更を意図していない運転者は自車両の逸脱傾向を認識するとアクセル操作を緩めてしまうということに着目し、スロットル開度が大きいほど進路修正量を小さくし、スロットル開度が所定値より大きいときに進路修正量をゼロにすることで、運転者の意図に合致して逸脱回避方向への進路修正を的確に行うことができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明における第1実施形態の概略構成図である。この車両は、自動変速機及びコンベンショナルディファレンシャルギヤを搭載した後輪駆動車両であり、制動装置は、前後輪とも、左右輪の制動力を独立に制御可能としている。
図中、1はブレーキペダル、2はブースタ、3はマスターシリンダ、4はリザーバであり、通常は運転者によるブレーキペダル1の踏込み量に応じ、マスターシリンダ3で昇圧された制動流体圧が、各車輪5FL〜5RRの各ホイールシリンダ6FL〜6RRに供給されるが、このマスターシリンダ3と各ホイールシリンダ6FL〜6RRとの間には制動流体圧制御回路7が介装されており、この制動流体圧制御回路7内で、各ホイールシリンダ6FL〜6RRの制動流体圧を個別に制御することが可能となっている。
【0007】
前記制動流体圧制御回路7は、例えばアンチスキッド制御やトラクション制御に用いられる制動流体圧制御回路を利用したものであり、この実施形態では、各ホイールシリンダ6FL〜6RRの制動流体圧を、単独で増減圧することができるように構成されている。この制動流体圧制御回路7は、後述するコントロールユニット8からの制動流体圧指令値に応じて各ホイールシリンダ6FL〜6RRの制動流体圧を制御する。
【0008】
また、この車両は、エンジン9の運転状態、自動変速機10の選択変速比、並びにスロットルバルブ11のスロットル開度を制御することにより、駆動輪である後輪5RL、5RRへの駆動トルクを制御する駆動トルクコントローラ12が設けられている。エンジン9の運転状態制御は、例えば燃料噴射量や点火時期を制御することによって制御することができるし、同時にスロットル開度を制御することによっても制御することができる。なお、この駆動トルクコントローラ12は、単独で、駆動輪である後輪5RL、5RRの駆動トルクを制御することも可能であるが、前述したコントロールユニット8から駆動トルクの指令値が入力されたときには、その駆動トルク指令値を参照しながら駆動輪トルクを制御する。
【0009】
また、この車両には、自車両の走行車線逸脱防止判断用に走行車線内の自車両の位置を検出するための外界認識センサとして、CCDカメラ13及びカメラコントローラ14を備えている。このカメラコントローラ14では、CCDカメラ13で捉えた自車両前方の撮像画像から、例えば白線等のレーンマーカを検出して走行車線を検出すると共に、その走行車線に対する自車両のヨー角φ、走行車線中央からの横変位X、走行車線の曲率β、走行車線幅L等を算出することができるように構成されている。ここで、自車前方の白線が消えかかっているときや雪などにより見えにくくなっているとき等白線認識が確実にできない場合は、ヨー角φ、横変位X、曲率β、走行車線幅L等の各検知パラメータはこれらの値が“0”に設定されて出力される。但し、白線認識ができている状態から、ノイズや障害物などにより、短時間のみ白線認識ができないなどの場合には、各検知パラメータは前回値を保持する等の対策がなされている。
【0010】
また、この車両には、自車両に発生する前後加速度Xg及び横加速度Ygを検出する加速度センサ15、自車両に発生するヨーレートφ’を検出するヨーレートセンサ16、前記マスターシリンダ3の出力圧、所謂マスターシリンダ圧Pmを検出するマスターシリンダ圧センサ17、スロットル開度Aを検出するスロットル開度センサ18、ステアリングホイール19の操舵角δを検出する操舵角センサ20、各車輪5FL〜5RRの回転速度即ち所謂車輪速度Vwi(i=FL〜RR)を検出する車輪速度センサ21FL〜21RR、方向指示器による方向指示操作を検出する方向指示スイッチ22が備えられ、それらの検出信号はコントロールユニット8に出力される。
【0011】
また、前記カメラコントローラ14で検出された走行車線に対する自車両のヨー角φ、走行車線中央からの横変位X、走行車線の曲率β、走行車線幅L等や、駆動トルクコントローラ12で制御された駆動トルクTwも合わせてコントロールユニット8に出力される。なお、検出された車両の走行状態データに左右の方向性がある場合には、何れも左方向を正方向とし、右方向を負方向とする。すなわち、ヨーレートφ’や横加速度Yg、操舵角δ、ヨー角φは、左旋回時に正値となり、右旋回時に負値となり、横変位Xは、走行車線中央から左方にずれているときに正値となり、右方にずれているときに負値となる。
さらに、コントロールユニット8から出力される警報信号ALが例えば警報音を発生する警報装置23に出力される。
【0012】
次に、前記コントロールユニット8で行われる車線逸脱防止制御処理について、図2及び図3のフローチャートに従って説明する。この車線逸脱防止制御処理は、例えば10msec毎のタイマ割込処理によって実行される。
この演算処理では、まずステップS1で、前記各センサやコントローラ、コントロールユニットからの各種データを読込む。具体的には、前記各センサで検出された前後加速度Xg、横加速度Yg、ヨーレートφ’、各車輪速度Vwi、スロットル開度A、マスターシリンダ圧Pm、操舵角δ、方向指示スイッチ信号WS、また駆動トルクコントローラ12からの駆動トルクTw、カメラコントローラ14からの走行車線に対する自車両のヨー角φ、走行車線中央からの横変位X、走行車線の曲率β、走行車線幅Lを読込む。
【0013】
次にステップS2に移行して、前記ステップS1で読込んだ各車輪速度Vw FL〜VwRRのうち、非駆動輪である前左右輪速度VwFL、VwFRの平均値から自車両の車速(=(VwFL+VwFR)/2)を算出する。
次にステップS3に移行して、将来の推定横変位即ち逸脱推定値XSを算出する。具体的には、前記ステップS1で読込んだ自車両の走行車線に対するヨー角φ、走行車線中央からの横変位X、走行車線の曲率β及び前記ステップS2で算出した自車両の車速Vを用い、下記(1)式に従って将来の横変位推定値となる逸脱推定値XSを算出する。
XS=Tt×V×(φ+Tt×V×β)+X ・・・・・・(1)
ここで、Ttは前方注視距離算出用の車頭時間であり、車頭時間Ttに自車両の走行速度Vを乗じると前方注視距離になる。つまり、車頭時間Tt後の走行車線中央からの横変位推定値が将来の推定横変位即ち逸脱推定値XSとなる。後述するように、本実施形態では、この逸脱推定値XSが所定の横変位限界値以上となるときに自車両は走行車線を逸脱する可能性がある、或いは逸脱傾向にあると判断することができる。
【0014】
次にステップS4に移行して、方向指示スイッチ22がオン状態であるか否かを判定し、これがオン状態であるときにはステップS5に移行して、方向指示スイッチ信号WSの符号と逸脱推定値XSの符号とが一致するか否かを判定し、両者の符号が一致するときには車線変更であると判断してステップS6に移行し、車線変更フラグFLCを“1”にセットしてから後述するステップS14に移行し、両者の符号が一致しないときには車線変更ではないものと判断してステップS7に移行して、車線変更フラグFLCを“0”にリセットしてから後述するステップS14に移行する。
【0015】
一方、前記ステップS4の判定結果が、方向指示スイッチ22がオフ状態であるときには、ステップS8に移行して、方向指示スイッチ22かオン状態からオフ状態に切り換わったか否かを判定し、オン状態からオフ状態に切り換わったときには、車線変更直後であると判断してステップS9に移行する。
ステップS9では、所定時間(例えば4 秒程度)が経過したか否かを判定し、所定時間が経過してないときにはこれが経過するまで待機し、所定時間が経過したときにはステップS10に移行して、車線変更フラグFLCを“0”にリセットしてから後述するステップS14に移行する。
【0016】
また、前記ステップS8の判定結果が、方向指示スイッチ22がオン状態からオフ状態に切り換わったものではないときにはステップS11に移行して、操舵角δが予め設定した操舵角設定値δS以上で且つ操舵角変化量Δδが予め設定した変化量設定値ΔδS以上であるか否かを判定し、δ≧δS且つΔδ≧ΔδSであるときには、運転者が車線変更をする意志があるものと判断してステップS12に移行し、車線変更判断フラグFLCを“1”にセットしてから後述するステップS14に移行し、δ<δS又はΔδ<ΔδSであるときには運転者が車線変更を行う意志がないものと判断してステップS13に移行し、車線変更フラグFLCを“0”にリセットしてからステップS14に移行する。因みに、ここでは、運転者の意志を操舵角δ及び操舵角変化量Δδに基づいて判断しているが、これに限定されるものではなく、例えば、操舵トルクを検出して判断するようにしてもよい。
【0017】
ステップS14では、車線変更フラグFLCが“0”であり、且つ逸脱推定値XSの絶対値|XS|が、横変位限界値XCから警報が作動してから逸脱防止制御が作動するまでのマージン(定数)XMを減算して算出される警報判断閾値XW(=XC−XM)以上であるか否かを判定し、FLC=0且つ|XS|≧XWであるときには車線逸脱状態であると判断してステップS15に移行して警報信号ALを警報装置23に出力してからステップS19に移行する。
【0018】
一方、前記ステップS14の判定結果が、FLC=1、又は|XS|<XWであるときには車線逸脱状態ではないと判断してステップS16に移行して、警報装置23が作動中であるか否かを判定し、これが作動中であるときにはステップS17に移行して、逸脱推定値XSの絶対値|XS|が警報判断閾値XWに警報のハンチングを回避するためのヒステリシス値XHを減算した値(XW−XH)より小さいか否かを判定し、|XS|<XW−XHであるときにはステップS18に移行して、警報装置23に対する警報信号ALの出力を停止してからステップS19に移行し、|XS|≧XW−XHであるときには警報を継続するものと判断して前記ステップS15に移行する。
【0019】
ステップS19では、逸脱推定値XSが予め設定した横変位限界値XC(日本国内では高速道路の車線幅が3.35mであることから、例えば0.8m 程度に設定する)以上であるか否かを判定し、XS≧XCであるときには左に車線逸脱すると判断してステップS20に移行し、逸脱判断フラグFLDを“1”にセットしてから後述する図3に示すステップS28に移行し、XS<XCであるときにはステップS21に移行して、逸脱推定値XSが横変位限界値XCの負値−XC以下であるか否かを判定し、XS≦−XCであるときには右に車線逸脱すると判断してステップS22に移行して逸脱判断フラグFLDを“−1”にセットしてから図3に示す後述するステップS28に移行し、XS>−XCであるときには車線逸脱が予測されないものと判断してステップS23に移行し、逸脱判断フラグFLDを“0”にリセットしてからステップS24に移行する。
【0020】
ステップS24では、車線変更フラグFLCが“1”にセットされているか否かを判定し、これが“1”にセットされているときにはステップS25に移行して、逸脱判断フラグFLDを“0”にリセットしてから図3のステップS26に移行し、車線変更フラグFLCが“0”にリセットされているときにはそのまま図3のステップS26に移行する。
【0021】
ステップS26では、逸脱判断フラグFLDが“0”にリセットされているか否かを判定し、これが“0”にリセットされているときにはステップS27に移行して、逸脱回避制御禁止フラグFCAを“0”にリセットしてからステップS30に移行し、逸脱判断フラグFLDが“1”にセットされているときには、ステップS28に移行して、前回の逸脱推定値XS(n-1)から今回の逸脱推定値XS(n)を減算した値の絶対値|XS(n-1)−XS(n)|が不連続を判断する閾値LXS以上であるか否かを判定し、|XS(n-1)−XS(n)|<LXSであるときには逸脱推定値XSが連続しているものと判断してそのままステップS30に移行し、|XS(n-1)−XS(n)|≧LXSであるときには逸脱推定値XSが不連続であると判断して逸脱回避制御禁止フラグFCAを“1”にセットしてからステップS30に移行する。
【0022】
ステップS30では、逸脱判断フラグFLDが“0”ではなく、且つ逸脱回避制御禁止フラグFCAが“0”であるか否かを判定し、FLD≠0且つFCA=0であるときには、ステップS31に移行して、下記(2)式の演算を行って目標ヨーモーメントMs0を算出してからステップS33に移行する。
Ms0=−K1×K2×(XS−XC) ・・・・・・(2)
ここで、K1は車両諸元によって定まる定数である。K2は車速に応じて変動するゲインであり、車速Vをもとに図4に示すゲイン算出マップを参照して算出する。このゲイン算出マップは、車速が0(零)から低速側の所定値VS1までの間はゲインK2が比較的大きな値KHに固定され、車速Vが所定値VS1を超えて高速側の所定値VS2に達するまでの間は車速Vの増加に応じてゲインK2が減少し、車速Vが所定値VS2を超えると比較的小さい値KLに固定されるように設定されている。
【0023】
また、ステップS30の判定結果がFLD=0又はFCA=1であるときにはステップS32に移行して、目標ヨーモーメントMs0を0(零)に設定してからステップS33に移行する。
ステップS33では、図5のアクセル感応ゲイン算出マップを参照して、ステップS1で読込んだスロットル開度Aから、目標ヨーモーメントMs0に乗じるアクセル感応ゲインkaを算出する。このアクセル感応ゲイン算出マップは、図5に示すように、スロットル開度Aが“0”から比較的小さな所定値A1まで増加するときに、アクセル感応ゲインkaが“1”に固定され、スロットル開度Aが所定値A1を超えて比較的大きな所定値A2に達するまでの間はスロットル開度Aの増加に応じてアクセル感応ゲインkaが減少し、スロットル開度Aが所定値A2を超えると“0”に固定されるように設定されている。すなわち、スロットル開度Aが大きいほどアクセル感応ゲインkaが小さくされ、スロットル開度Aが所定値A2より大きいときにアクセル感応ゲインkaがゼロにされる。
【0024】
なお、上記第1実施形態のアクセル感応ゲイン算出マップでは、スロットル開度Aの所定値A1を超えた増加に応じてアクセル感応ゲインkaが減少するように設定されているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば図6に示すように、車速Vをパラメータとしてスロットル開度Aとアクセル感応ゲインとの関係を表し、スロットル開度Aが所定値A1から増加するとき、これに応じてアクセル感応ゲインkaが減少すると共に、車速Vの増加に応じてスロットル開度Aに対するアクセル感応ゲインkaが大きくなるように設定してもよい。すなわち、車速Vが大きいほど、アクセル感応ゲインkaが大きくされる。また、車速Vが大きいほど、アクセル感応ゲインkaがゼロとなるアクセル開度A(所定値A2)も大きくされる。
【0025】
また、先行車両との車間距離に応じて自車速Vを制御可能な車速制御装置、所謂アクティブクルーズコントロール(以下、ACCと称す)を搭載した車両においても適用し得るものである。因みに、ACCが作動状態であるときには、逸脱警報が報知されたとしても反射的なスロットル開度Aの減少を期待することはできないので、目標ヨーモーメントを補正する際に、ACCが非作動状態であるときに比べて目標ヨーモーメントが大きくなるように補正して、進路修正の良好な応答性を確保することが望ましい。
【0026】
そこで、ACCを搭載した車両用のスロットル感応ゲイン算出マップを図7(a)に示すように、ACCが非作動状態であるときには、スロットル開度Aが所定値A1から増加するのに応じてスロットル感応ゲインkaが“1”から減少するような特性線L1に設定し、ACCが作動状態であるときには、非作動状態であるときの特性線L1よりもスロットル感応ゲインkaの減少率が低下するような特性線L2に設定すればよい。
また、図7(b)に示すように、ACCが非作動状態であるときには前述した特性線L1に設定し、ACCが作動状態であるときには、スロットル開度AがA1よりも大きなA3を超えて増加するときにスロットル感応ゲインkaの減少が開始されるような特性線L2に設定してもよい。
【0027】
さらに、図7(c)に示すように、ACCが非作動であるときには前述した特性線L1に設定し、ACCが作動状態であるときには、スロットル開度AがA1よりも大きなA4を超えて増加するときにスロットル感応ゲインkaの減少が開始されると共に、特性線L1よりもスロットル感応ゲインkaの減少率が低下するような特性線L4に設定してもよい。
次にステップS34に移行して、下記(3)式に示すように、前記ステップS31で算出された目標ヨーモーメントMs0をステップS33で算出されたアクセル感応ゲインkaに応じて補正し、最終目標ヨーモーメントMsを算出してからステップS35に移行する。
Ms=ka×Ms0 ・・・・・・(3)
【0028】
ステップS35では、逸脱判断フラグFLDが“0”である、又は逸脱回避制御禁止フラグFCAが“1”であるか否かを判定し、FLD=0又はFCA=1であるときにはステップS36に移行して、下記(4)式に示すように、前左輪の目標液圧PsFL及び前右輪の目標液圧PsFRをマスターシリンダ液圧Pmに設定すると共に、下記(5)式に示すように、後左輪の目標液圧PsRL及び後右輪の目標液圧PsRRをマスターシリンダ圧Pmから算出される前後配分を考慮した後輪マスターシリンダ圧Pmrに設定してから後述するステップS43に移行する。
PsFL=PsFR=Pm ・・・・・・(4)
PsRL=PsRR=Pmr ・・・・・・(5)
【0029】
また、ステップS35の判定結果が、FLD≠0且つFCA=0であるときにはステップS37に移行して、目標ヨーモーメントMsの絶対値|Ms|が設定値Ms1より小さいか否かを判定し、|Ms|<Ms1であるときにはステップS38に移行して、前輪側の目標制動液圧差ΔPsFを下記(6)式に示すように0(零)に設定すると共に、後輪側の目標制動液圧差ΔPsRを下記(7)式に示すように2・KBR・|Ms|/Tに設定してからステップS40に移行する。
ΔPsF=0 ・・・・・・(6)
ΔPsR=2・KBR・|Ms|/T ・・・・・・(7)
【0030】
一方、ステップS37の判定結果が|Ms|≧Ms1であるときにはステップS39に移行して、前輪側の目標制動液圧差ΔPsFを下記(8)式に示すように2・KBR・(|Ms|−Ms1)/Tに設定すると共に、後輪側の目標制動液圧差ΔPsRを下記(9)式に示すように2・KBR・Ms1/Tに設定してからステップS40に移行する。ステップS40に移行する。
ΔPsF=2・KBF・(|Ms|−Ms1)/T ・・・(8)
ΔPsR=2・KBR・Ms1/T ・・・(9)
ここで、Tは前後輪同一のトレッドである。また、KBF及びKBRは制動力を制動液圧に換算する場合の換算係数であり、ブレーキ諸元により定まる。このステップS39で前輪側のみで制動力差を発生させるようにしてΔPsF=2・KBR・|Ms|/Tに設定するようにしてもよい。
【0031】
ステップS40では、目標ヨーモーメントMsを負即ち左方向に発生させようとしているか否かを判定し、Ms<0 であるときにはステップS41に移行して、前左輪の目標制動圧PsFLを下記(10)式に示すようにマスターシリンダ圧Pmに設定し、前右輪の目標制動圧PsFRを下記(11)式に示すようにマスターシリンダ圧Pmに目標制動液圧差ΔPsFを加算した値に設定し、後左輪の目標制動圧PsRLを下記(12)式に示すように後輪側マスターシリンダ圧Pmrに設定し、後右輪の目標制動圧PsRRを下記(13)式に示すように後輪マスターシリンダ圧Pmrに後輪側目標制動液圧差ΔPsRを加算した値に設定してからステップS43に移行する。
PsFL=Pm ・・・・・・(10)
PsFR=Pm+ΔPsF ・・・・・・(11)
PsRL=Pmr ・・・・・・(12)
PsRR=Pmr+ΔPsR ・・・・・・(13)
【0032】
一方、ステップS40の判定結果がMs≧0であるときにはステップS42に移行して、前左輪の目標制動圧PsFLを下記(14)式に示すようにマスターシリンダ圧Pmに前輪側目標制動液圧差ΔPsFを加算した値に設定し、前右輪の目標制動圧PsFRを下記(15)式に示すようにマスターシリンダ圧Pmに設定し、後左輪の目標制動圧PsRLを下記(16)式に示すように後輪側マスターシリンダ圧Pmrに後輪側目標制動液圧差ΔPsRを加算した値に設定し、後右輪の目標制動圧PsRRを下記(17)式に示すように後輪マスターシリンダ圧Pmrに設定してからステップS43に移行する。
PsFL=Pm+ΔPsF ・・・・・・(14)
PsFR=Pm ・・・・・・(15)
PsRL=Pmr+ΔPsR ・・・・・・(16)
PsRR=Pmr ・・・・・・(17)
【0033】
ステップS43では、逸脱判断フラグFLDが“0”以外の値であるか否かを判定し、FLD≠0であるときにはステップS44に移行して、下記(18)式に従って目標駆動トルクTrqを算出してからステップS46 に移行する。
Trq=f(A)−g(Ps) ・・・(18)
ここで、Psは逸脱防止制御により発生させる目標制動液圧差ΔPsF及びΔPsRの和である(Ps=ΔPsF+ΔPsR)。また、f(A)はアクセル関数に応じて目標駆動トルクを算出する関数であり、g(Ps)は制動液圧により発生が予想される制動トルクを算出する関数である。
【0034】
また、ステップS43の判定結果がFLD=0であるときにはステップS45に移行して、下記(19)式に従って目標駆動トルクTrqを算出してからステップS46に移行する。
Trq=f(A) ・・・・・・(19)
ステップS46では、ステップS36、S44又はS45で算出した目標制動圧PsFL〜PsRRを制動流体制御回路7に出力すると共に、ステップS44又はS48で算出した目標駆動トルクTrqを駆動トルクコントローラ12に出力してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0035】
以上より、図1のスロットル開度センサ18がスロットル開度検出手段に対応し、図2及び図3の車線逸脱防止制御処理で、ステップS3〜ステップS13、及びステップS19〜ステップS25の処理が逸脱判断手段に対応し、ステップS30〜ステップS32の処理が進路修正量算出手段に対応し、ステップS33及びステップS34の処理が進路修正量補正手段に対応し、ステップS35〜ステップS42、及びステップS46の処理と、図1における制動力制御手段としての制動流体制御回路7とが進路修正手段に対応している。したがって、目標ヨーモーメントMs0が進路修正量に対応し、図3のステップS26〜ステップS46の処理と、図1の制動流体制御回路7とが逸脱防止手段に対応している。
【0036】
次に、上記第1実施形態の動作について説明する。
今、車両が走行車線に沿って、略一定のアクセル操作量を維持しながら走行しているとする。このとき、逸脱判断フラグFLD=0となり(ステップS23)、目標ヨーモーメントMsが0(零)に設定される(ステップS32)。これにより、各車輪5FL〜5RRの目標制動圧PsFL〜PsRRには、運転者の制動操作に応じたマスターシリンダ圧Pm及びPmrが夫々設定され(ステップS36)、運転者のステアリング操作に応じた走行状態が維持される。
【0037】
この状態から、運転者が方向指示器を操作することなく、車両が走行車線の中央位置から徐々に逸脱を始め、逸脱推定値XSが警報判断閾値XW以上となると、運転者に逸脱警報が報知される(ステップS15)。さらに、逸脱推定値XSの絶対値が横変位限界値XC以上となり、逸脱判断フラグFLD≠0となると(ステップS20又はステップS22)、逸脱回避方向の目標ヨーモーメントMs0が前記(2)式に従って算出される(ステップS31)。
【0038】
ところが、運転者は車線変更するときであっても方向支持器を操作しない或いは忘れることもあるので、単に方向支持器の操作状態だけで自車両の逸脱傾向が運転者による意図的なものであるか否かを正確に判断することは困難である。しかしながら、一般に、自車両の逸脱傾向を認識していない運転者は逸脱警報が報知されると反射的にアクセル操作を緩めてしまい、逆に車線変更しようとしていた運転者は逸脱警報が報知されても方向支持器を操作していなかったためだと判断してアクセル操作を緩めることはない。
【0039】
したがって、逸脱警報時に運転者がアクセル操作を緩めるか否かを判断すれば、自車両の逸脱が運転者による意図的なものであるか否かを判断することができる。そこで、アクセル操作に連動したスロットル開度Aに応じたアクセル感応ゲインkaを算出し(ステップS33)、このアクセル感応ゲインkaを用いて前記(3)式に従って目標ヨーモーメントMsを補正する(ステップS34)。それから、この補正された最終目標ヨーモーメントMsを発生させるよう各目標制動圧PsFL〜PsRRを設定することにより(ステップS41又はステップS42)、運転者の意図に合致して逸脱回避方向への進路修正を的確に行うことができる。
【0040】
すなわち、図8(a)に示すように、時点tで逸脱推定値XSが警報判断閾値XW以上となり運転者に逸脱警報が報知された後も、図8(b)に示すように、スロットル開度Aが減少せず所定値A2以上であるときには、逸脱傾向が運転者による意図的なものであると判断して、アクセル感応ゲインkaを“0”に設定する。このアクセル感応ゲインkaに基づいて補正される最終目標ヨーモーメントMsは、図8(c)に示すように、“0”となるので、図8(d)の目標制動液圧差ΔPsFも“0”となり、逸脱回避方向への進路修正をせずに運転者によるステアリング操作が優先される。こうして、運転者による意図的な車線変更に対して逸脱回避方向への進路修正が干渉することはなく、運転者はスムーズに車線変更を行うことができる。
【0041】
一方、図9(a)の時点tで逸脱推定値XSが警報判断閾値XW以上となり運転者に逸脱警報が報知された後に、図9(b)に示すように、運転者がアクセル操作を緩めてスロットル開度Aが減少すると、逸脱傾向が運転者による意図的なものではないと判断する。先ず、スロットル開度Aが所定値A2未満になるとスロットル感応ゲインkaが“0”から“1”に向けて徐々に大きくなり、所定値A1未満となるとときにスロットル感応ゲインkaが“1”に設定される。このスロットル感応ゲインkaに基づいて補正される目標ヨーモーメントMs0は、図9(b)に示すように、“0”から逸脱状態に応じた目標ヨーモーメントMs0分にまで増加することにより、図9(d)の目標制動液圧差ΔPsFも“0”から増加し、逸脱回避方向への進路修正が実行される。そして、逸脱警報で自車両の逸脱傾向を認識した運転者はアクセル操作を緩めると共に、直ちにステアリング操作による自車進路の修正を開始するため、自車両に発生する逸脱回避方向のヨーモーメントと運転者自身によるステアリング操作とにより、自車両を逸脱傾向にある状態から速やかに復帰させることができる。
【0042】
なお、上記第1実施形態では、横変位限界値XCを定数に設定した場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、車線幅LをCCDカメラ20からの画像を処理することで算出したり、ナビゲーションシステムの情報により、車両の位置における地図データから車線幅の情報を取り込むことで、走行する道路に応じて変更するようにしたりしてもよい。この場合は、下記(20)式に従って横変位限界値XCを算出する。
C=min(L/2−Lc/2、0.8) ・・・(20)
ここで、Lcは自車両の車幅である。また、min( )は括弧内の小さい方を選択する関数である。また、今後、道路のインフラストラクチャが整備され、インフラストラクチャ側との車間通信により、車幅が与えられる場合には、その情報を用いることができる。また、逸脱方向の車線までの距離L/2−XSがインフラストラクチャからの情報で与えられる場合には、その情報を用いることができる。
【0043】
また、各輪5FL〜5RRの制動圧PsFL〜PsRRをのみ制御して自車両に逸脱回避方向のヨーモーメントMsを発生させる構成について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、各輪5FL〜5RRの駆動力を制御可能な制動力制御装置も搭載している場合には、各輪5FL〜5RRの制動圧及び駆動力を制御することにより逸脱回避方向のヨーモーメントMsを発生させてもよい。
【0044】
以上のように、上記第1実施形態によれば、走行車線からの逸脱回避に必要な目標ヨーモーメントMs0を算出するステップS30〜ステップS32の処理と、この目標ヨーモーメントMs0を、スロットル開度Aに基づいて補正するステップS33及びステップS34の処理と、補正された最終目標ヨーモーメントMsを自車両に発生させるとステップS35〜ステップS42、及びステップS46の処理、並びに制動流体制御回路7とを備えているので、運転者が逸脱を認識した後のアクセル操作に連動したスロットル開度Aから、自車両の逸脱傾向が運転者による意図的なものであるか否かを正確に判断することができ、運転者の意図に合致して逸脱回避方向への進路修正を的確に行うことができるという効果が得られる。
【0045】
また、スロットル開度Aが所定値A1を超えたときに目標ヨーモーメントMs0の補正を開始すると共に、スロットル開度Aが増加するほど目標ヨーモーメントMs0が減少するように補正するので、運転者のアクセル操作に連動したスロットル開度Aが大きければ、運転者による意図的な車線変更であると判断して自車両に発生させる目標ヨーモーメントを小さくし、スロットル開度AがA1未満まで減少するときには運転者による意図的な車線変更ではないと判断して逸脱傾向の大きさに応じた目標ヨーモーメントを自車両に発生させることができるという効果が得られる。
【0046】
さらに、先行車両との車間距離に応じて自車速を制御可能なACCを搭載した車両においては、スロットル開度Aに応じて目標ヨーモーメントMs0を補正するとき、ACCが作動状態であるときは非作動状態であるときに比べて、目標ヨーモーメントが大きくなるように補正することで、進路修正の良好な応答性を確保することができるという効果が得られる。
【0047】
さらに、ACCが作動状態であるときは非作動状態であるときに比べて、目標ヨーモーメントMs0の補正を開始するスロットル開度の所定値A1を大きくするように構成されているので、進路修正の良好な応答性を確保することができるという効果が得られる。
さらに、少なくとも自車速V、走行車線に対する車両ヨー角φ、横変位X、及び前方走行車線の曲率βに基づいて、将来における自車両の車線中央からの横変位XSを推定し、この横変位推定値XSが横変位限界値XC以上となったときに、自車両が走行車線から逸脱する可能性があると判断するように構成されているので、車両の逸脱状態を正確に判断することができるという効果が得られる。
【0048】
さらに、少なくとも自車速V、走行車線に対する車両のヨー角φ、横変位X、及び前方走行車線の曲率βに基づいて推定される将来における自車両の車線中央からの横変位XSと、横変位限界値XCとの偏差に応じて目標ヨーモーメントMsを算出するように構成されているので、将来の逸脱傾向の大きさに応じた目標ヨーモーメントMsを算出することができるという効果が得られる。
【0049】
また、各車輪5FL〜5RRの制動圧PsFL〜PsRRを個別に制御して自車両に逸脱回避方向のヨーモーメントMsを発生させるように構成されているので、自車進路を逸脱回避方向に的確に修正することができるという効果が得られる。
また、各輪5FL〜5RRの制動圧PsFL〜PsRRを運転者の制動操作によらず任意に制御できるように構成されているので、各輪の制動力制御を正確に行うことができるという効果が得られる。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態を図10及び図11に基づいて説明する。
この第2実施形態は、前述した第1実施形態において、逸脱回避方向への進路修正を、操舵系に逸脱回避方向の操舵トルクを付加する操舵制御装置により行うようにしたものである。
すなわち、第2実施形態における概略構成を図10に示すように、前述した第1の実施形態における制動流体圧制御回路7の代わりに、ステアリングシャフト24に操舵トルクを付加する操舵アクチュエータ25を設けたことを除いては、図1と同様の構成を有するため、図1との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0051】
また、コントロールユニット8で実行する車線逸脱防止制御処理の後半部を、図11に示すように、前述した第1実施形態における図3のステップS31〜ステップS46の処理を、ステップS51〜ステップS55の処理に換えたことを除いては、前述した図3の処理と同様の処理を実行するため、図3との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0052】
先ず、ステップS30の判定結果が、FLD≠0且つFCA=0であるときには、ステップS51に移行して、下記(21)式の演算を行って目標付加操舵トルクTs0を算出してからステップS53に移行する。
Ts0=mid{−TMAX、−KLS(XS−XC)、TMAX} ・・・(21)
ここで、TMAXは付加操舵トルクの制限値であり、KLSは車両諸元によって定まる定数であり、mid{ }は括弧内の中間値を選択する関数である。
【0053】
一方、ステップS30の判定結果がFLD=0又はFCA=1であるときにはステップS52に移行して、目標付加操舵トルクTs0を0(零)に設定してからステップS53に移行する。
ステップS53では、前述した図5のアクセル感応ゲイン算出マップを参照して、スロットル開度Aから、目標付加操舵トルクTs0に乗じるアクセル感応ゲインkaを算出して、ステップS54に移行する。
【0054】
ステップS54では、下記(22)式に従って、前記ステップS51で算出された目標付加操舵トルクTs0をステップS53で算出されたアクセル感応ゲインkaに応じて補正して、最終目標付加操舵トルクTsを算出してからステップS55に移行する。
Ts=ka×Ts0 ・・・・・・(22)
ステップS55では、最終目標付加操舵トルクTsに応じた駆動信号を操舵アクチュエータ25に出力してから、タイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0055】
以上より、図10の車線逸脱防止処理で、ステップS30、ステップS51及びステップS52の処理が進路修正量算出手段に対応し、ステップS53及びステップS54の処理が進路修正量補正手段に対応し、ステップS55の処理と、図10における操舵制御手段としての操舵アクチュエータ25とが逸脱防止手段に対応している。したがって、目標付加操舵トルクTs0が進路修正量に対応し、図11のステップS55の処理と、図10の操舵アクチュエータ25とが逸脱防止手段に対応している。
【0056】
したがって、運転者が方向指示器を操作することなく、車両が走行車線の中央位置から徐々に逸脱を始め、逸脱推定値XSが警報判断閾値XW以上となると、運転者に逸脱警報が報知されると共に、逸脱推定値XSの絶対値が横変位限界値XC以上となることで、逸脱判断フラグFLD≠0となり、逸脱回避方向の目標付加操舵トルクTs0が前記(21)式に従って算出される(ステップS51)。
【0057】
次いで、アクセル操作に連動したスロットル開度Aに応じたアクセル感応ゲインkaを算出し(ステップS53)、このアクセル感応ゲインkaを用いて前記(22)式に従って目標付加操舵トルクTs0を補正し(ステップS54)、この補正された目標付加操舵トルクTsを操舵アクチュエータ25に出力することにより、運転者の意図に合致して逸脱回避方向への進路修正を的確に行うことができる。
【0058】
以上のように、上記第2実施形態によれば、操舵系に逸脱回避方向の操舵トルクを付加して自車進路を逸脱回避方向に修正する場合、自車両を減速させることなく逸脱を防止することができると共に、操舵装置の形式によっては、新たな装置を追加することなく、前述した第1実施形態のように逸脱回避方向のヨーモーメントを発生させて自車進路を修正する場合と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1実施形態における概略構成図である。
【図2】第1実施形態における車線逸脱防止制御処理の一例を示すフローチャートの前半部である。
【図3】第1実施形態における車線逸脱防止制御処理の一例を示すフローチャートの後半部である。
【図4】ゲイン算出マップである。
【図5】スロットル感応ゲイン算出マップである。
【図6】車速をパラメータとしたスロットル感応ゲイン算出マップである。
【図7】ACCを搭載した車両におけるスロットル感応ゲイン算出マップである。
【図8】車線変更時の動作を説明するタイムチャートである。
【図9】車線逸脱時の動作を説明するタイムチャートである。
【図10】第2実施形態における概略構成図である。
【図11】第2実施形態における車線逸脱防止制御処理の一例を示すフローチャートの後半部である。
【符号の説明】
【0060】
6FL〜6RR ホイールシリンダ
7 制動流体圧制御回路
8 コントロールユニット
9 エンジン
12 駆動トルクコントローラ
15 加速度センサ
16 ヨーレートセンサ
18 スロットル開度センサ
20 操舵角センサ
21FL〜21RR 車輪速センサ
22 方向指示スイッチ
23 警報装置
25 操舵アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行車線から逸脱する可能性を判断する逸脱判断手段と、該逸脱判断手段により自車両が走行車線から逸脱する可能性があると判断されるときに、自車進路を逸脱回避方向に修正して走行車線からの逸脱を防止する逸脱防止手段とを備えた車線逸脱防止装置において、
スロットル開度を検出するスロットル開度検出手段を有し、
前記逸脱防止手段は、走行車線からの逸脱回避に必要な進路修正量を算出する進路修正量算出手段と、前記スロットル開度検出手段で検出されたスロットル開度が大きいほど前記進路修正量算出手段で算出された進路修正量を小さくし、前記スロットル開度が所定値より大きいときに前記進路修正量をゼロにする進路修正量補正手段と、該進路修正量補正手段で補正された進路修正量に応じて自車進路を逸脱回避方向に修正する進路修正手段とで構成されていることを特徴とする車線逸脱防止装置。
【請求項2】
前記進路修正量補正手段は、自車速が大きいほど、前記進路修正量を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項3】
前記進路修正量補正手段は、自車速が大きいほど、前記所定値を大きくすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項4】
前記進路修正手段は、各車輪の制駆動力を制御して自車両に逸脱回避方向のヨーモーメントを発生させる制駆動力制御手段により構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項5】
前記制駆動力制御手段は、各輪の制動力を運転者の制動操作によらず任意に制御できるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項6】
前記進路修正手段は、操舵系に逸脱回避方向の操舵トルクを付加する操舵制御手段により構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車線逸脱防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−314174(P2007−314174A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179590(P2007−179590)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【分割の表示】特願2002−336634(P2002−336634)の分割
【原出願日】平成14年11月20日(2002.11.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】