説明

車載撮像装置

【課題】撮像手段を車両に搭載した状態のまま、撮像手段の設定を簡単に且つ正確に確認、変更することができる車載撮像装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車両に搭載される撮像手段2と、撮像手段2の出力画像信号の処理を行う処理手段15と、車両の機器制御装置からデータ伝送路を介して車両本体の情報を受信する通信手段10とを有し、処理手段15は、撮像手2段の現在の設定が、通信手段10で受信した車両本体の情報に対応しているか否かを判断する車載撮像装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される撮像手段を有し、車両の機器制御装置と通信を行なう車載撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載された撮像手段で車両周囲を撮像し、撮像手段の出力画像信号を画像処理してこの画像を車内モニタに表示させ、自車両周辺を監視する車載撮像装置が知られている。車載撮像装置には様々な機能を備えているものがあり、例えば、撮像画像上に操作指示等を言語表示する機能、撮像画像上にスケールをオーバーレイ表示する機能等がある。
【0003】
車両は、車種によって車幅や車高等の仕様が異なるため、車載撮像装置で自車両周辺を正常に監視するためには、撮像手段の撮像範囲や搭載位置等の撮像条件が適切に設定されていることが重要である。
同様に、車両は仕向国や車種によって言語表示やオーバーレイ表示が異なるため、上記したような車載撮像装置に具備される各種機能を正常に使用するためには、撮像手段の各種機能が適切に設定されていることが重要である。
これらの設定は、車両の車種や仕向国等によってそれぞれ固有の設定であるため、車載撮像装置が搭載される車両に対応した初期設定を行った状態で、撮像装置は出荷されていた。
【0004】
しかし、従来の車載撮像装置は、一旦書き込んだ設定値を出荷後に変更する手段を備えていなかった。そのため、初期設定が完了した車載撮像装置において、車両の仕向国等の使用条件が変わったり、初期設定に誤りがある場合などには、車載撮像装置を車両より取り外し、外部より撮像装置と通信を行い、設定の変更作業を行なう必要があった。
【0005】
これに対して特許文献1には、撮像手段で撮像された画像とともにスケールを表示するスケール表示装置において、スケール表示設定を変更可能とした構成が開示されている。これは、カメラスケール座標データを記憶する書換可能メモリと、カメラスケール座標にカメラスケールを描画させるLSIとを備え、表示ポイント毎に座標データを記憶、修正可能とすることによりカメラ取り付け位置を自由に選択でき、実際の車幅や距離にあったカメラスケールに修正可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−11210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される構成は、撮像手段の取り付け位置を自由に選択可能である反面、撮像手段の取り付け時に、取り付け位置に合わせて毎回座標データを書き換える必要があり、書き換え作業に手間と時間がかかるという問題があった。また、座標データの書き換え作業にミスがあった場合、正確なスケール設定に更新できない可能性もあった。
そこで、本発明においては、撮像手段を車両に搭載した状態のまま、撮像手段の設定を簡単に且つ正確に確認、変更することができる車載撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る車載撮像装置は、車両に搭載される撮像手段と、前記撮像手段の出力画像信号の処理を行う処理手段と、前記車両の機器制御装置からデータ伝送路を介して車両本体の情報を受信する通信手段とを有し、前記処理手段は、前記撮像手段の現在の設定が、前記通信手段で受信した前記車両本体の情報に対応しているか否かを判断することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、車両の機器制御装置から車両本体の情報を受信し、車両本体の情報に基づいて撮像手段の現在の設定確認を行なうため、撮像手段を車両から取り外す必要がなく簡便であり、且つ車両の機器制御装置から送信される車両本体の情報を利用しているため、入力情報の精度が高く、正確な処理を行うことが可能となる。
特に、一般的な車載制御システムでは、複数の機器制御装置がデータ伝送路を介して接続され、常に車両本体の情報を相互に送受信しているため、車載撮像装置の通信手段はデータ伝送路から必要な車両本体の情報を受信するのみでよく、本発明の車載撮像装置を既存の車載制御システムに簡単に適用できる。
【0010】
また、前記撮像手段の設定候補が複数記憶された記憶手段を有し、前記処理手段は、前記撮像手段の現在の設定が前記車両本体の情報に対応していない場合に、前記記憶手段に記憶された複数の前記設定候補の中から前記車両本体の情報に対応する前記設定候補を選択し、前記撮像手段の設定を変更することが好ましい。
このように、予め記憶手段に複数の設定候補を記憶させておくことにより、車両本体の情報に基づいて複数の設定候補から選択するのみで、撮像手段を車両に対応した適切な設定に変更することが可能となる。
【0011】
さらに、前記処理手段は、該処理手段による処理結果を前記撮像手段の出力画像に重畳して、前記車両に搭載された表示装置に出力することが好ましい。
これにより、運転者は撮像手段の設定が適しているか否かを簡単に把握でき、信頼性の高い装置とすることができる。
【0012】
さらにまた、前記車両本体の情報は、前記車両の車種情報、前記車両の車幅に関する情報、前記車両の仕向国に関する情報の少なくともいずれか一つを含むことが好ましい。
上記した情報は、いずれも一般的な機器制御装置から送信される情報であり、これを撮像手段の設定確認、変更に利用する構成とすることで、既存のシステムにも簡単に適用可能となる。
【0013】
また、前記車両本体の情報が前記車両の車種情報であり、前記記憶手段に、前記車種情報に対応した前記撮像手段の搭載位置(搭載角度を含む)候補が複数記憶されており、前記処理手段は、前記記憶手段から前記車種情報に対応する前記搭載位置候補を読み出し、該読み出された搭載位置候補と、前記撮像手段の出力画像信号から得られる現在の搭載位置とを比較して、前記撮像手段の搭載位置が正しいか否かを判断することが好ましい。
【0014】
通常、撮像手段の搭載位置は、車両周囲を監視するために適切な位置が車種ごとに設定されている。本構成では、複数車種に対応した複数の搭載位置候補を予め記憶させておき、通信手段で受信した車種情報に基づいて選択された搭載位置候補と、現在の搭載位置とを比較して撮像手段の搭載位置が正しいか否かを判断する構成としたため、車外で撮像手段の実際の取り付け状態を確認することなく、簡単に撮像手段の搭載位置の確認ができる。
【0015】
また、前記車両本体の情報が前記車両の車種情報であり、前記記憶手段に、前記車種情報に対応した前記撮像手段のオーバレイ表示候補が複数記憶されており、前記処理手段は、前記記憶手段から前記車種情報に対応する前記オーバレイ表示候補を読み出し、前記撮像手段のオーバーレイ表示設定を変更することが好ましい。
これは、複数車種に対応した複数のオーバレイ表示候補を予め記憶させておき、通信手段で受信した車種情報に基づいてオーバレイ表示候補を読み出し、撮像手段のオーバーレイ表示設定を変更するようにしたため、簡単に且つ正確に、車両に対応したオーバーレイ表示とすることができる。
【0016】
さらに、前記車両本体の情報が前記車両の動作情報または状態情報であり、前記記憶手段に、前記車両の動作情報または状態情報に対応した前記撮像手段の表示設定候補が複数記憶されており、前記処理手段は、前記記憶手段から前記車両の動作情報または状態情報に対応する前記表示設定候補を選択し、前記撮像手段の表示設定を変更することが好ましい。
【0017】
さらにまた、前記車両本体の情報が前記車両の動作情報または状態情報であり、前記記憶手段に、前記車両の動作情報または状態情報に対応した前記撮像手段の制御設定候補が複数記憶されており、前記処理手段は、前記記憶手段から前記車両の動作情報または状態情報に対応する前記制御設定候補を選択し、前記撮像手段の制御設定を変更することが好ましい。
【0018】
これらの構成によれば、車両の動作情報または状態情報に基づいて、撮像手段の表示設定または制御設定を変更することにより、車載撮像装置に具備される機能を車両状態に応じてより最適化することが可能となる。
なお、車両の動作情報とは、車両に具備される各機器の動作に関する情報であり、例えばライトをONに切り替えた時の切替信号情報、ブレーキをONに切り替えた時の切替信号情報等が挙げられる。車両の状態情報とは、車両に具備される各機器の状態に関する情報であり、例えば、ハンドル舵角情報、車速情報等が挙げられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車両の機器制御装置から車両本体の情報を受信し、車両本体の情報に基づいて撮像手段の現在の設定確認を行なうため、撮像手段を車両から取り外す必要がなく簡便であり、且つ車両の機器制御装置から送信される車両本体の情報を利用しているため、入力情報の精度が高く、正確な処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置を備えた車載制御システムの概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る撮像装置の全体構成を示すブロック図である。
【図3】図1の変形例に係る撮像装置を備えた車載制御システムの概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る撮像装置の基本的な処理を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態に係る撮像装置の設定変更処理を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係る撮像装置の搭載位置確認処理を示すフローチャートである。
【図7】バンパー画像を示す図であり、(A)は正常な取り付け状態を示す図で、(B)は異常な取り付け状態を示す図で、(C)は他の異常な取り付け状態を示す図である。
【図8】バンパー取り付け状態を判定する方法を説明する図であり、(A)は正常な取り付け状態を示す図で、(B)は異常な取り付け状態を示す図である。
【図9】第3実施形態に係る撮像装置の設定変更処理を説明する図である。
【図10】第4実施形態に係る撮像装置の設定変更処理を示すフローチャートである。
【図11】第5実施形態に係る撮像装置の設定変更処理を示すフローチャートである。
【図12】第6実施形態に係る撮像装置の設定変更処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実例に記載されている構成部品の形状等は、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0022】
図1は本発明の実施形態に係る撮像手段を備えた車載制御システムの概略構成図である。車載制御システムは、複数の機器制御装置(ECU)20、ナビゲーション装置25等がデータ伝送路である通信バス30に接続されており、これらの装置は通信バス30を介して相互通信し、互いに情報を共有して連携しながら作動している。
ECU20は、トランシーバ21、コントローラ22、CPU23を含む通信手段を有している。ECU20は、例えば、車両全体の制御を司る主制御ユニット(MECU)、エンジン制御を司るエンジンECU、ABS制御を司るABS−ECU、スタビリティ制御を司るスタビリティコントロール用ECU、電動制御パワーステアリングの制御を司るEPS−ECU、メータの制御を司るメータECU等がある。
ナビゲーション装置25は、トランシーバ26、コントローラ27、CPU28を含む通信手段を有している。さらにナビゲーション装置25は、ナビゲーション結果を表示する表示装置31に接続されている。
【0023】
車載撮像装置1は、基本機能として車両周囲の画像を撮像し、画像を表示装置31に出力させる装置であるが、さらに本実施形態に係る車載撮像装置1は、上記したECU20やナビゲーション装置25と同様に通信バス30に接続され、ECU20から通信バス30を介して車両本体の情報を受信、または必要に応じてECU20と相互通信を行う。
図2を参照して、車載撮像装置1の具体的構成を説明する。図2は本発明の実施形態に係る撮像装置1の全体構成を示すブロック図である。
車載撮像装置1は、主に、撮像手段2と、通信手段10と、処理手段15と、記憶手段18とを有する。
【0024】
撮像手段2は、レンズ3と、撮像素子4と、DSP(Digital Signal Processing)5と、表示制御部6とを含み、レンズ3で結像した光を撮像素子4で光電変換し、撮像素子4からの信号をDSP5で処理し、処理装置15にDSP5の信号を送信するとともに、処理装置15から受信した画像信号を表示制御部6から表示装置31に送信し、画像表示させる。
通信手段10は、トランシーバ11と、コントローラ12と、車内通信用CPU13とを含み、通信バス30を介して情報を受信する。
【0025】
処理装置15は、MPU16を含み、記憶手段18の情報や、車内通信用CPU13の情報を使用し、撮像手段2の制御を行う。
記憶手段18は、メモリブロック19を含み、撮像手段2の動作を行うための初期設定ブロック、撮像手段のシリアルナンバー等が格納されているデータブロック、画像処理に使用する画像処理ブロックなどが記憶されている。
なお、図2には一例として具体的な機器の構成を示しているが、それぞれ各手段を実行できればよく、機器構成はこれに限定されない。
【0026】
車載撮像装置1は、図1に示したようにナビゲーション装置25に接続された表示装置31に、通信バス30を介して画像信号を出力して画像表示させてもよいし、図3の変形例に示すように、車載撮像装置1が通信回線35を介して直接表示装置31に接続され、この通信回線35を介して画像信号を表示装置31に送信して画像表示させてもよい。
【0027】
次に、図4を参照して、上記構成を有する車載撮像装置1の基本的な処理フローを説明する。
車載撮像装置1の電源がONにされたら(S1)、撮像装置1の初期化処理(S2)を行う。ここで、初期化処理の回数を確認し(S3)、初期化処理の回数が規定より多いか否かを判断する(S4)。初期化処理の回数が規定より多い場合には撮像装置1が正常に起動していないため、撮像装置1がECU20との相互通信を行わないように、表示装置31に相互通信不可の情報を出力する(S5)。
【0028】
初期化処理の回数が規定以下の場合には、撮像装置1の初期化処理が正常に実行されたと判断し、次いで、ECU20と撮像装置1との相互通信が可能な状態かを判断する通信確認を行う(S6)。通信確認は、例えば通信手段10のコントローラ12により、通信確認信号を相互通信する回数をカウントし、相互通信が規定された回数できなかった場合には、ECU20と撮像装置1との相互通信が可能な状態ではないと判断する。
相互通信が可能な状態ではないと判断された場合には、撮像装置1の初期化処理からやり直すか(S2)、または撮像装置1がECU20との相互通信ができないという相互通信不可の情報を表示装置31に出力し(S5)、処理を終了する。
【0029】
通信確認で、ECU20と撮像装置1との相互通信が可能な状態であると判断された場合には、通信手段10により、ECU20から通信バス30を介して車両本体の情報を受信する(S7)。そして、処理手段15で、受信した車両本体の情報に基づいて撮像手段2の設定を確認、変更する(S8)。
【0030】
本実施形態によれば、ECU20から車両本体の情報を受信し、車両本体の情報に基づいて撮像手段2の現在の設定確認、変更を行なうため、撮像手段2を車両から取り外す必要がなく簡便であり、且つECU20から送信される車両本体の情報を利用しているため、入力情報の精度が高く、正確な処理を行うことが可能となる。
特に、一般的な車載制御システムでは、上記したように複数のECU20が通信バス30を介して接続され、常に車両本体の情報を相互に送受信しているため、車載撮像装置1の通信手段10は通信バス30から必要な車両本体の情報を受信するのみでよく、車載撮像装置1を既存の車載制御システムに簡単に適用できる。
【0031】
また、車両本体の情報は、車両の車種情報、車両の車幅に関する情報、車両の仕向国に関する情報の少なくともいずれか一つを含むことが好ましい。
上記した情報は、いずれもECU20から送信される情報であり、これを撮像手段2の設定確認、変更に利用する構成とすることで、既存の車載制御システムにも簡単に適用可能となる。
【0032】
上記した構成は本発明の基本的な実施形態であり、これを応用した実施形態を以下に示す。
以下の第1実施形態〜第6実施形態において、車載撮像装置1の構成は、図2に示した車載撮像装置1の構成と同一である。また、車載撮像装置1の基本的な処理フローは、図4に示した処理フローと同一であり、第1実施形態〜第6実施形態は、図4の通信確認(S6)後の工程(S7)、(S8)をより具体的に記載したものである。
【0033】
(第1実施形態)
図5は第1実施形態に係る撮像装置1の設定変更処理を示すフローチャートである。なお、各構成要素に付記される符号は図1乃至図3に示された符号と同一である。
第1実施形態は、ECU20から受信した車両本体の情報に基づいて、撮像手段2の設定を変更するものである。
車載撮像装置1の記憶手段18には、予め撮像手段2の設定候補が複数記憶されている。車載撮像装置1は、通信手段10でECU20から車両本体の情報を受信(S11)した後、処理手段15にて、車両本体の情報に対応した設定候補を記憶手段18より選択する(S12)。そして、選択された設定候補の設定となるように、撮像手段2の設定を変更する(S13)。
【0034】
例えば、仕向国情報に基づいて撮像手段2の言語表示を変更することができる。これは、ECU20から受信した車両本体の情報が仕向国情報であり、記憶手段18に予め複数の言語表示候補を設定しておく。車載撮像装置1の通信手段10で、バス通信30を介してECU20から仕向国情報を受信し、処理手段15で撮像手段2に設定されている言語表示が仕向国情報に対応しているか否かを判断し、対応していない場合には、仕向国情報に対応した言語表示設定を記憶手段18から選択する。そして、選択された言語表示設定となるように撮像手段2の言語表示設定を変更する。
【0035】
このように、予め記憶手段18に複数の撮像手段2の設定候補を記憶させておくことにより、車両本体の情報に基づいて複数の設定候補から選択するのみで、撮像手段2を車両に対応した適切な設定に変更することが可能となる。
【0036】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態に係る撮像装置の搭載位置確認処理を示すフローチャートである。
第2実施形態は、ECU20から受信した車両の車種情報に基づいて、撮像手段2の搭載位置を確認するものである。
【0037】
通常、撮像手段2の搭載位置は、車両周囲を監視するために適切な位置が車種ごとに設定されている。この搭載位置がずれていると、監視に必要な撮像範囲を撮像することができなくなる。例えば、撮像手段2が車両の規定位置に正しく搭載されているとき、撮像手段2では図7(A)に示す画像50aが撮像されるものとする。これに対して、撮像手段2の光軸方向被写体側が上方に傾いて搭載されると、撮像手段2で撮像される図7(B)の画像50bは、図7(A)の画像50aに比べてバンパー51の写り込み割合が小さくなる。また、撮像手段2の光軸方向被写体側が下方に傾いて搭載されると、撮像手段2で撮像される図7(C)の画像50cは、図7(A)の画像50aに比べてバンパー51の写り込み割合が大きくなる。図中、符号52は道路を示す。
【0038】
そこで、このような搭載位置の異常を検出するために、第2実施形態では、車両の車種情報に基づいて撮像手段2の搭載位置を確認できるようにした。
車載撮像装置1の記憶手段18には、予め撮像手段2の搭載位置候補が複数記憶されている。搭載位置候補とは、例えば、撮像手段2を車両の規定位置に正しく搭載したときの車両本体の写り込み部分(バンパー等)に関する情報である。なお、撮像手段2の搭載位置とは、撮像手段2の搭載角度(レンズ3の光軸角度)も含む。
処理手段15は、ECU20から通信バス30を介して受信した車両の車種情報に基づいて、記憶手段18から搭載位置候補を読み出し、該読み出された搭載位置候補と、撮像手段2の出力画像信号から得られる現在の搭載位置とを比較して、現在の撮像手段2の搭載位置が正しいか否かを判断する。
【0039】
撮像手段2の搭載位置の確認を、撮像画像におけるバンパーの写り込み割合により判断する場合は、ECU20から車両の車種情報を受信し、処理手段15で、車種に対応した正しいバンパーの写り込み割合に関する情報を記憶手段2より選択し、この選択されたバンパーの写り込み割合と、実際に撮像手段2で撮像された出力画像信号から検出されるバンパーの写り込み状割合とを比較し(S21)、撮像手段2の取り付け状態が正しいか否かを判定処理する(S22)。
撮像手段2の取り付け状態が正しくない場合には、取り付け状態が違っているという情報を撮像装置1よりECU20に向けて報告する(S23)。
処理手段15の判定結果は、表示装置31に出力することが好ましい(S24)。
【0040】
上記した判定処理は以下のように行ってもよい。
図8(A)に示すように、画像50aの端部におけるバンパー51の写り込み部分の高さa、cがa=cとなるとき、撮像手段2が左右方向に傾くことなく適切に位置していると判断できる。図8(B)に示すように、画像50bの端部におけるバンパー51の写り込み部分の高さa、cがa<cのとなるときは、撮像手段2が左右方向に傾いていると判断できる。
また、図8(A)に示すように、画像50aの端部におけるバンパー51の写り込み部分の高さa、cと、画像中央におけるバンパー51の写り込み部分の高さbとが、それぞれ予め設定された範囲内であるとき、撮像手段2の搭載位置が適切であると判断できる。この場合、記憶手段18には、車種に対応した上記a、b、cの関係式や範囲設定が記憶されることとなる。
【0041】
このように、複数車種に対応した複数の搭載位置候補を予め記憶しておき、通信手段10で受信した車種情報に基づいて選択された搭載位置候補と、現在の搭載位置とを比較して、撮像手段2の搭載位置が正しいか否かを判断する構成としたため、車外で撮像手段2の実際の取り付け状態を確認することなく、簡単に撮像手段2の搭載位置の確認ができる。
【0042】
(第3実施形態)
図9は第3実施形態に係る撮像装置の設定変更処理を説明する図である。
第3実施形態では、撮像手段2の出力画像信号を用いて、現在の撮像手段2の設定が正しいか否かを判断するものである。
ECU20から受信する車両本体の情報は車幅であり、記憶手段18には、車両に対応した複数の設定車幅候補が記憶されている。図9は、記憶手段18に記憶された設定車幅候補であり、(A)の画像50aにおいて線55で表わされる車幅は、(B)の画像50bにおいて線56で表わされる車幅より狭く設定されている。ここで(B)の車幅が、車両の正しい車幅と仮定する。
【0043】
図9(A)及び(B)の画像内で、領域57は同一位置に示している。画像50aで領域57は車幅より外側に位置するが、画像50bで領域57は車幅より内側に位置する。つまり、実際の車幅が画像50bの線56であるのに、撮像手段2の設定が画像50aの線55になっていると、領域57に表示されている物体と車体が衝突してしまう可能性が出てくる。
【0044】
そこで、ECU20から車両の車幅を受信し、撮像手段2に現在設定されている車幅と比較することによって車幅設定が正しいか否かを確認し、車幅設定が間違っている場合には、記憶手段18の設定車幅候補から選択した正しい車幅に設定変更することで、安全性の高い車載撮像装置1を提供することが可能となる。
【0045】
(第4実施形態)
図10は第4実施形態に係る撮像装置の設定変更処理を示すフローチャートである。
第4実施形態は、車両の動作情報または状態情報に基づいて撮像手段2の表示設定を変更するものである。
ECU20から受信する車両本体の情報は車両の動作情報または状態情報であり、記憶手段18には、車両に対応した複数の表示設定候補が記憶されている。なお、車両の動作情報とは、車両に具備される各機器の動作に関する情報であり、例えばライトをONに切り替えた時の切替信号情報、ブレーキをONに切り替えた時の切替信号情報等が挙げられる。車両の状態情報とは、車両に具備される各機器の状態に関する情報であり、例えば、ハンドル舵角情報、車速情報等が挙げられる。
【0046】
ここでは具体例として、ハンドルの舵角情報に基づいて撮像手段2のオーバーレイ表示設定を変更する処理を説明する。
記憶手段18には、ハンドルの舵角に対応した複数のオーバーレイ表示設定候補が記憶されている。
ECU20から通信バス30を介してハンドルの舵角情報を受信し(S31)、受信した舵角情報に対応したオーバーレイ表示設定を記憶手段18から選択する(S32)。そして、選択されたオーバーレイ表示設定に基づいて撮像手段2のオーバーレイ表示設定を変更する(S33)。
【0047】
このように、車両の動作情報または状態情報に基づいて、撮像手段2の表示設定を変更することにより、車載撮像装置1に具備される機能を車両状態に応じてより最適化することが可能となる。
また、ハンドルの舵角情報に応じて撮像手段2のオーバーレイ表示設定を変更することにより、車載撮像装置1の利便性を向上できる。
【0048】
(第5実施形態)
図11は第5実施形態に係る撮像装置の設定変更処理を示すフローチャートである。
第5実施形態は、車両の動作情報または状態情報に基づいて撮像手段2の制御設定を変更するものである。
具体例として、車両のライトON情報に基づいて撮像手段2のAE(自動露出)やWB(ホワイトバランス)を制御する処理を説明する。
【0049】
記憶手段18には、ライトONとなったときの撮像手段2の制御設定候補が複数記憶されている。
ECU20から通信バス30を介してライトON情報を受信し(S41)、受信したライトON情報に対応した撮像手段2の制御設定を記憶手段18から選択する(S42)。そして、選択された制御設定に基づいて撮像手段2の制御を行う(S43)。
【0050】
これは、ライトがONとなったとき、撮像手段2の照明状態が急に変化するため、上記したようにライトON情報に応じて撮像手段2のAEやWB等を制御することにより、鮮明な撮像画像を撮像することが可能となる。
【0051】
(第6実施形態)
図12は第6実施形態に係る撮像装置の設定変更処理を示すフローチャートである。
第6実施形態は、上記した第5実施例と同様に、車両の動作情報または状態情報に基づいて撮像手段2の制御設定を変更するものである。
具体例として、ブレーキON情報に基づいて撮像手段2のAE(自動露出)やWB(ホワイトバランス)を制御する処理を説明する。
【0052】
記憶手段18には、ブレーキONとなったときの撮像手段2の制御設定候補が複数記憶されている。
ECU20から通信バス30を介してブレーキON情報を受信し(S51)、受信したライトON情報に対応した撮像手段2の制御設定を記憶手段18から選択する(S52)。そして、選択された制御設定に基づいて撮像手段2の制御を行う(S53)。
【0053】
これは、ブレーキONとなったとき、ブレーキランプが点灯するため撮像手段2による撮像条件が急に変化する。したがって、上記したようにブレーキランプON情報に応じて撮像手段2のAEやWB等を制御することにより、鮮明な撮像画像を撮像することが可能となる。なお、ライトONとなったときとは異なり、ブレーキONの状態は短時間であるため、撮像手段2の制御を予め設定された時間内のみ行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 車載撮像装置
2 撮像手段
3 レンズ
4 撮像素子
5 DSP
6 表示制御部
10 通信手段
11 トランシーバ
12 コントローラ
13 車内通信用CPU
15 処理手段
16 MPU
18 記憶手段
19 メモリブロック
20 機器制御装置
25 ナビゲーション装置
30 通信バス(データ伝送路)
31 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される撮像手段と、
前記撮像手段の出力画像信号の処理を行う処理手段と、
前記車両の機器制御装置からデータ伝送路を介して車両本体の情報を受信する通信手段とを有し、
前記処理手段は、前記撮像手段の現在の設定が、前記通信手段で受信した前記車両本体の情報に対応しているか否かを判断することを特徴とする車載撮像装置。
【請求項2】
前記撮像手段の設定候補が複数記憶された記憶手段を有し、
前記処理手段は、前記撮像手段の現在の設定が前記車両本体の情報に対応していない場合に、前記記憶手段に記憶された複数の前記設定候補の中から前記車両本体の情報に対応する前記設定候補を選択し、前記撮像手段の設定を変更することを特徴とする請求項1に記載の車載撮像装置。
【請求項3】
前記処理手段は、該処理手段による処理結果を前記撮像手段の出力画像に重畳して、前記車両に搭載された表示装置に出力することを特徴とする請求項1または2に記載の車載撮像装置。
【請求項4】
前記車両本体の情報は、前記車両の車種情報、前記車両の車幅に関する情報、前記車両の仕向国に関する情報の少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載撮像装置。
【請求項5】
前記車両本体の情報が前記車両の車種情報であり、
前記記憶手段に、前記車種情報に対応した前記撮像手段の搭載位置候補が複数記憶されており、
前記処理手段は、前記記憶手段から前記車種情報に対応する前記搭載位置候補を読み出し、該読み出された搭載位置候補と、前記撮像手段の出力画像信号から得られる現在の搭載位置とを比較して、前記撮像手段の搭載位置が正しいか否かを判断することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の車載撮像装置。
【請求項6】
前記車両本体の情報が前記車両の車種情報であり、
前記記憶手段に、前記車種情報に対応した前記撮像手段のオーバレイ表示候補が複数記憶されており、
前記処理手段は、前記記憶手段から前記車種情報に対応する前記オーバレイ表示候補を読み出し、前記撮像手段のオーバーレイ表示設定を変更することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車載撮像装置。
【請求項7】
前記車両本体の情報が前記車両の動作情報または状態情報であり、
前記記憶手段に、前記車両の動作情報または状態情報に対応した前記撮像手段の表示設定候補が複数記憶されており、
前記処理手段は、前記記憶手段から前記車両の動作情報または状態情報に対応する前記表示設定候補を選択し、前記撮像手段の表示設定を変更することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車載撮像装置。
【請求項8】
前記車両本体の情報が前記車両の動作情報または状態情報であり、
前記記憶手段に、前記車両の動作情報または状態情報に対応した前記撮像手段の制御設定候補が複数記憶されており、
前記処理手段は、前記記憶手段から前記車両の動作情報または状態情報に対応する前記制御設定候補を選択し、前記撮像手段の制御設定を変更することを特徴とする請求項1乃至3、7のいずれか一項に記載の車載撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−135373(P2011−135373A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293443(P2009−293443)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】