説明

車載装置

【課題】周囲環境の変化に影響されることなく、マルチパスの影響を回避した測位を行えるようにする。
【解決手段】車載装置1は、位置サーバ21から受信したアルマナックデータに基づいて複数のGPS衛星19のうち幾つかを受信対象のGPS衛星として決定し、その受信対象として決定した幾つかのGPS衛星19毎に当該GPS衛星19の配置態様と車両の向きと基づいて複数のGPSアンテナ11〜18のうちから受信対象のGPSアンテナを決定し、その受信対象として決定した幾つかのGPS衛星19毎に受信対象として決定したGPSアンテナから入力したGPS衛星信号を合成して当該GPS衛星信号を送信したGPS衛星19との間の疑似距離を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPSアンテナから入力したGPS衛星信号を合成して当該GPS衛星信号を送信したGPS衛星との間の疑似距離を算出し、その算出した疑似距離を演算して車両の現在位置を特定する車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS衛星を利用したGPS測位システムにおいては、測位精度を低下させる要因の一つとしてマルチパス(多重伝搬)の影響がある。マルチパスは、GPS衛星から送信されたGPS衛星信号が建物や地面などで反射し、その反射波が直接波に冗長してGPSアンテナに受信されることに起因し、直接波と反射波とが干渉して伝搬遅延時間の正確な測定を困難とすることにより、測位精度を低下させるものである。特に、自動車などの移動体では伝搬環境の変動が大きく、ビル街や市街地などでは建物によるマルチパスの影響は大きい。このようなマルチパスの影響は、GPS測位システムに限らず、移動体通信システム全体に共通する課題である。そこで、このようなマルチパスの影響を回避するために、マルチパスの原因となる建物に関する建物データベースを構築し、車両の現在位置と建物データベースとの関係を利用して電波の到来方向を推定し、その推定した電波の到来方向に向けて複数の指向性アンテナを動的に制御する構成が供されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3285722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した特許文献1では、車両の現在位置と建物データベースとの関係を利用して電波の到来方向を推定する技術を採用しているので、建物の位置や高さが変更されるなどの周囲環境が変化する毎に建物データベースを更新する必要がある。また、車両の現在位置を特定しなければ電波の到来方向を推定することができないので、そもそもマルチパスの影響で測位精度が低下するGPS測位システムでは適用することが困難である。さらに、位置が固定されている基地局とは異なり、GPS衛星は周回軌道上を時々刻々と移動するので、GPS衛星が時々刻々と移動することに追従して電波の伝搬路を推定して複数の指向性アンテナを動的に制御する方法では処理が複雑化する。
【0004】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、周囲環境の変化に影響されることなく、伝搬路を推定して複数の指向性アンテナを動的に制御する複雑な処理を必要とすることもなく、マルチパスの影響を回避した測位を行うことができ、測位精度を高めることができる車載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載した発明によれば、受信対象衛星決定手段は、衛星配置情報取得手段により取得された衛星配置情報に基づいて複数のGPS衛星のうち幾つかを受信対象のGPS衛星として決定し、受信対象アンテナ決定手段は、受信対象として決定された幾つかのGPS衛星毎に当該GPS衛星の配置態様と車両向き特定手段により特定された車両の向きとに基づいて複数のGPSアンテナのうちから受信対象のGPSアンテナを決定する。そして、GPS受信手段は、受信対象として決定された幾つかのGPS衛星毎に受信対象として決定されたGPSアンテナから入力したGPS衛星信号を用いることで複数のGPSアンテナの各々から入力したGPS衛星信号のうち受信対象として決定されたGPSアンテナにより受信されたGPS衛星信号を選択的に合成して当該GPS衛星信号を送信したGPS衛星との間の疑似距離を算出し、現在位置特定手段は、受信対象として決定された幾つかのGPS衛星毎にGPS受信手段により算出された疑似距離を演算して車両の現在位置を特定する。
【0006】
これにより、複数のGPS衛星の配置態様に応じて複数のGPSアンテナのうちから受信対象のGPSアンテナを決定し、その決定した受信対象のGPSアンテナから入力したGPS衛星信号を用いることで受信対象のGPSアンテナにより受信されたGPS衛星信号を選択的に合成して車両の現在位置を特定するように構成したので、所望の方向から到来するGPS衛星信号だけを用いて車両の現在位置を特定することができる。このとき、従来のものとは異なって、建物データベースを構築する必要がなく、伝搬路を推定して複数のGPSアンテナを動的に制御する必要もないので、周囲環境の変化に影響されることなく、複雑な処理を必要とすることもなく、マルチパスの影響を回避した測位を行うことができ、測位精度を高めることができる。
【0007】
請求項2に記載した発明によれば、初期位置推定手段は、車両の初期位置を推定し、衛星配置情報取得手段は、複数のGPS衛星のうち初期位置送信手段が送信した初期位置に対応するGPS衛星の各々の配置態様を表す衛星配置情報を位置サーバから取得する。これにより、車両の初期位置に適切な衛星配置情報を位置サーバから取得することができ、測位精度をより高めることができる。
【0008】
請求項3に記載した発明によれば、初期位置推定手段は、GPS衛星から送信されたGPS衛星信号に基づいて車両の初期位置を推定する。これにより、GPS衛星から送信されたGPS衛星信号を利用して車両の初期位置を推定することができる。
【0009】
請求項4に記載した発明によれば、初期位置推定手段は、基地局から送信された基地局信号に基づいて車両の初期位置を推定する。これにより、GPS衛星から送信されたGPS衛星信号を受信することが不可能な環境であっても、基地局から送信された基地局信号を利用して車両の初期位置を推定することができる。
【0010】
請求項5に記載した発明によれば、衛星配置情報記憶手段は、衛星配置情報取得手段により取得された衛星配置情報を記憶し、有効期限判定手段は、衛星配置情報記憶手段に記憶されている衛星配置情報の有効期限を判定し、衛星配置情報記憶手段に記憶されている衛星配置情報が有効であるか無効であるかを判定する。そして、受信対象衛星決定手段は、衛星配置情報記憶手段に記憶されている衛星配置情報で有効である旨を有効期限判定手段が判定すると、その記憶されている衛星配置情報に基づいて複数のGPS衛星のうち幾つかを受信対象のGPS衛星として決定し、一方、衛星配置情報記憶手段に記憶されている衛星配置情報が無効である旨を有効期限判定手段が判定すると、衛星配置情報取得手段により取得された最新の衛星配置情報に基づいて複数のGPS衛星のうち幾つかを受信対象のGPS衛星として決定する。これにより、GPS衛星の方位が短時間で大きく変化することはないという事情から、記憶されている衛星配置情報が有効である限りは、その記憶されている衛星配置情報を利用することにより、衛星配置情報を位置サーバから取得する動作を極力抑制することができ、装置全体としての消費電力を抑制することができる。
【0011】
請求項6に記載した発明によれば、受信対象衛星決定手段は、衛星配置情報取得手段により取得された衛星配置情報に基づいて複数のGPS衛星のうち仰角が高いGPS衛星を優先して受信対象のGPS衛星として決定する。これにより、捕捉し易いGPS衛星を優先して受信対象のGPS衛星として決定することができ、測位精度をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。車載装置1は、制御部2(本発明でいう現在位置特定手段、受信対象衛星決定手段、受信対象アンテナ決定手段、初期位置推定手段、有効期限判定手段)と、GPS受信機3(本発明でいうGPS受信手段)と、無線通信部4(本発明でいう衛星配置情報取得手段、初期位置送信手段)と、自立航行部5(本発明でいう車両向き特定手段)と、記憶部6(本発明でいう衛星配置情報記憶手段)と、車両情報入出力部7と、表示部8と、音声出力部9と、入力操作部10とを備えて構成されている。
【0013】
制御部2は、CPU、RAM、ROM及びI/Oバスなどを有し、車載装置1の動作全般を制御する。GPS受信機3は、8個のGPSアンテナ11〜18を接続している。これら8個のGPSアンテナ11〜18は、図2に示すように、車両に搭載されている状態で各々の通信面11a〜18aとなる主ビーム方向が互いに異なる水平方向を向いており、隣接するGPSアンテナと水平方向に45度ずつ傾いて規則的に配置されている。本実施形態では、GPSアンテナ11が車両前側を主ビーム方向とし、GPSアンテナ13が車両前側に向かって右側を主ビーム方向とし、GPSアンテナ15が車両後側を主ビーム方向とし、GPSアンテナ17が車両前側に向かって左側を主ビーム方向とするように配置されている。これら8個のGPSアンテナ11〜18の各々は、GPS衛星19から送信されたGPS衛星信号を受信すると(GPS衛星19を捕捉すると)、その受信したGPS衛星信号をGPS受信機3に出力する。
【0014】
GPS受信機3は、GPSアンテナ11〜18の各々からGPS衛星信号を入力可能であり、入力したGPS衛星信号のうち制御部2から入力した設定指令に応じて幾つかを選択的に合成し、該当するGPS衛星19との間の疑似距離を算出する。具体的には、例えば制御部2からGPSアンテナ11〜18のうちGPSアンテナ14,15を受信アンテナとして設定する設定指令を入力した場合には、GPSアンテナ11〜18の各々から入力したGPS衛星信号のうちGPSアンテナ14,15から入力したGPS衛星信号を選択的に合成し、GPSアンテナ14,15に受信されたGPS衛星信号を送信したGPS衛星19との間の疑似距離を算出する。
【0015】
無線通信部4は、制御部2からの通信指令に応じて基地局20との間で移動通信網を介してネットワーク接続して位置サーバ21との間で各種データを送受信する。位置サーバ21は、GPS衛星19から送信されたGPS衛星信号を受信すると(GPS衛星19を捕捉すると)、その受信したGPS衛星信号を解析してアルマナックデータを生成し、車載装置1から送信された取得要求を受信すると、その生成したアルマナックデータを車載装置1に送信する。位置サーバ21から車載装置1に送信されるアルマナックデータは、図3に示すように、衛星番号、位相、検索幅、方位角、仰角及び運行状態を要素として含むデータであり、衛星番号、位相、検索幅及び運行状態は衛星アシスト情報であり、衛星番号、方位角、仰角及び運行状態は衛星配置情報である。このアルマナックデータには当該データが有効となる有効期限が設定されている。
【0016】
自立航行部5は、車載装置1を搭載している車両の自立航行を制御し、その機能として車両の向きを検知し(特定し)、その検知した車両の向きを表す向き検知信号を制御部2に出力する。記憶部6は、各種データを記憶可能に構成され、位置サーバ21とネットワーク接続した基地局20から送信されて無線通信部4に受信されたアルマナックデータを記憶する。車両情報入出力部7は、車載LAN(図示せず)を通じて車両に搭載されている各種ECUとの間で各種車両データを入出力する。
【0017】
表示部8は、例えば液晶ディスプレイ装置により構成され、制御部2から入力した表示指令に応じて各種表示情報を表示する。音声出力部9は、制御部2から入力した音声出力指令に応じて例えば警告音などを出力する。入力操作部10は、例えば液晶ディスプレイ装置の表示画面上に形成されるタッチスイッチから構成され、ユーザの操作を検知すると、そのユーザの操作を表す操作検知信号を制御部2に出力する。
【0018】
上記した構成では、GPS受信機3は、位置サーバ21とネットワーク接続した基地局20から送信されて無線通信部4に受信されたアルマナックデータを利用し、位置サーバ21と連携してGPS測位を行う(ネットワークアシスト測位を行う)。
【0019】
次に、上記した構成の作用について、図4及び図5を参照して説明する。尚、ここでは、GPSアンテナ11〜18のアンテナ番号として「1」〜「8」が付与されているとして説明する。位置サーバ21は、GPS衛星19から送信されたGPS衛星信号を受信する毎にアルマナックデータを生成し、最新のアルマナックデータを記憶保持している(ステップS1)。
【0020】
車載装置1において、制御部2は、車載装置1が電源投入状態にあるときに(ステップS11)、GPS測位の開始トリガが成立すると、位置サーバ21と連携してGPS測位を開始し(ステップS12)、自立航行部5から向き検知信号を入力し、その入力した向き検知信号を解析して車両の向きを特定する(ステップS13)。そして、制御部2は、位置サーバ21とネットワーク接続した基地局20から送信されて無線通信部4に受信された当該基地局20の設置パラメータやこれまでの走行履歴を利用し、車両の初期位置(おおまかな位置)を推定する(ステップS14)。
【0021】
次いで、制御部2は、その時点で記憶部6に記憶されているアルマナックデータの有効期限を判定し、その時点で記憶部6に記憶されているアルマナックデータが有効であるか無効であるかを判定する(ステップS15)。ここで、制御部2は、その時点で記憶部6に記憶されているアルマナックデータの有効期限が過ぎており、その時点で記憶部6に記憶されているアルマナックデータが無効である旨を判定すると(ステップS15にて「NO」)、取得要求及び先に推定した初期位置を無線通信部4から位置サーバ21とネットワーク接続した基地局20に送信させることで位置サーバ21に送信させる。位置サーバ21は、車載装置1から送信された取得要求及び初期位置を受信すると、その時点で記憶保持している最新のアルマナックデータのうち当該受信した初期位置に対応するアルマナックデータを選択し、その選択したアルマナックデータを基地局20に送信することで車載装置1に送信する。
【0022】
制御部2は、位置サーバ21とネットワーク接続した基地局20から送信されたアルマナックデータが無線通信部4に受信された旨を判定すると、その受信されたアルマナックデータを解析して受信対象とするGPS衛星を決定し(ステップS16)、その受信対象として決定したGPS衛星の配置態様と先に特定した車両の向きとに基づいて受信対象とするGPSアンテナを決定する(ステップS17)。
【0023】
これに対して、制御部2は、その時点で記憶部6に記憶されているアルマナックデータの有効期限が過ぎておらず、その時点で記憶部6に記憶されているアルマナックデータが有効である旨を判定すると(ステップS15にて「YES」)、その記憶されているアルマナックデータを解析して受信対象とするGPS衛星を決定し(ステップS16)、その受信対象として決定したGPS衛星の配置態様と先に特定した車両の向きとに基づいて受信対象とするGPSアンテナを決定する(ステップS17)。尚、この場合、制御部2は、仰角が高いGPS衛星を優先して受信対象のGPS衛星として決定する。
【0024】
そして、制御部2は、その受信対象として決定したGPSアンテナを受信アンテナとしてGPS受信機3を設定し(ステップS18)、その受信アンテナを設定する設定指令をGPS受信機3に出力する。GPS受信機3は、制御部2から設定指令を入力すると、GPSアンテナ11〜18のうち当該入力した設定指令に応じたGPSアンテナを受信アンテナとして設定し、その受信アンテナとして設定したGPSアンテナの各々から入力したGPS衛星信号を選択的に合成し(ステップS21)、該当するGPS衛星19との間の疑似距離を算出し(ステップS22)、その算出した疑似距離を制御部2に出力する。制御部2及びGPS受信機3は、受信対象として決定したGPS衛星の個数分だけ上記した処理を繰返して行う。
【0025】
具体的には、制御部2は、受信対象とするGPS衛星19として、図5に示すように、衛星番号「22」、「19」及び「2」のGPS衛星19を決定し、先に特定した車両の向きに基づいて、衛星番号「22」のGPS衛星19に対してアンテナ番号「4」,「5」のGPSアンテナ14,15を受信アンテナとして決定し、衛星番号「19」のGPS衛星19に対してアンテナ番号「5」,「6」のGPSアンテナ15,16を受信アンテナとして決定し、衛星番号「2」のGPS衛星19に対してアンテナ番号「2」,「3」のGPSアンテナ12,13を受信アンテナとして決定した場合であれば(受信対象決定テーブルを生成した場合であれば)、最初に衛星番号「22」の受信設定として位相「128」を設定し、検索幅「10」を設定し、GPSアンテナ14,15を受信アンテナとして設定する設定指令をGPS受信機3に出力し、続いて衛星番号「19」の受信設定として位相「512」を設定し、検索幅「16」を設定し、GPSアンテナ15,16を受信アンテナとして設定する設定指令をGPS受信機3に出力し、続いて衛星番号「2」の受信設定として位相「32」を設定し、検索幅「32」を設定し、GPSアンテナ12,13を受信アンテナとして設定する設定指令をGPS受信機3に出力する。
【0026】
GPS受信機3は、最初にGPSアンテナ14,15を受信アンテナとして設定する設定指令を入力すると、GPSアンテナ14,15から入力したGPS衛星信号を合成し、衛星番号「22」のGPS衛星19との間の疑似距離を算出し、続いてGPSアンテナ15,16を受信アンテナとして設定する設定指令を入力すると、GPSアンテナ15,16から入力したGPS衛星信号を合成し、衛星番号「19」のGPS衛星19との間の疑似距離を算出し、続いてGPSアンテナ12,13を受信アンテナとして設定する設定指令を入力すると、GPSアンテナ12,13から入力したGPS衛星信号を合成し、衛星番号「2」のGPS衛星19との間の疑似距離を算出する。
【0027】
そして、制御部2は、このようにしてGPS受信機3が算出した疑似距離を当該GPS受信機3から入力すると、その入力した疑似距離を演算して車両の現在位置を特定する(ステップS19)。具体的には、制御部2は、衛星番号「22」のGPS衛星19との間の疑似距離、衛星番号「19」のGPS衛星19との間の疑似距離及び衛星番号「2」のGPS衛星19との間の疑似距離を演算して車両の現在位置を特定する。
【0028】
ところで、以上は、基地局20から送信された基地局信号を利用して車両の初期位置を推定する場合を説明したが、GPS衛星19から送信されたGPS衛星信号を利用して車両の初期位置を推定しても良い。
【0029】
以上に説明したように本実施形態によれば、車載装置1において、位置サーバ21から受信したアルマナックデータに基づいて複数のGPS衛星19のうち幾つかを受信対象のGPS衛星として決定し、その受信対象として決定した幾つかのGPS衛星19毎に当該GPS衛星19の配置態様と車両の向きと基づいて複数のGPSアンテナ11〜18のうちから受信対象のGPSアンテナを決定し、その受信対象として決定した幾つかのGPS衛星19毎に受信対象として決定したGPSアンテナから入力したGPS衛星信号を用いることで複数のGPSアンテナ11〜18から入力したGPS衛星信号のうち受信対象として決定したGPSアンテナにより受信されたGPS衛星信号を選択的に合成して当該GPS衛星信号を送信したGPS衛星19との間の疑似距離を算出し、その疑似距離を演算して車両の現在位置を特定するように構成したので、所望の方向から到来するGPS衛星信号だけを用いて車両の現在位置を特定することができる。このとき、従来のものとは異なって、建物データベースを構築する必要がなく、伝搬路を推定して複数のGPSアンテナ11〜18を動的に制御する必要もないので、周囲環境の変化に影響されることなく、複雑な処理を必要とすることもなく、マルチパスの影響を回避した測位を行うことができ、測位精度を高めることができる。
【0030】
また、車両の初期位置を推定し、その推定した初期位置に対応するGPS衛星19の配置態様を表すアルマナックデータを位置サーバ21から受信するように構成したので、車両の初期位置に適切な衛星配置情報を位置サーバ21から取得することができ、測位精度をより高めることができる。また、位置サーバ21から受信して記憶させたアルマナックデータの有効期限を判定し、その記憶されているアルマナックデータの有効期限が過ぎておらず、その記憶されているアルマナックデータが有効であれば、その記憶されているアルマナックデータを利用し、複数のGPS衛星19のうち幾つかを受信対象のGPS衛星として決定するように構成したので、アルマナックデータを位置サーバ21から取得する動作を極力抑制することができ、装置全体としての消費電力を抑制することができる。さらに、複数のGPS衛星19のうち仰角が高いGPS衛星を優先して受信対象のGPS衛星として決定するように構成したので、捕捉し易いGPS衛星を優先して受信対象のGPS衛星として決定することができ、測位精度をより高めることができる。
【0031】
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形または拡張することができる。
上記した機能がモジュールとして車両に組込まれる態様で搭載されていても良い。
ナビゲーションシステムに搭載されている電子コンパスやジャイロの情報を利用して車両の向きを特定しても良いし、車両の走行軌跡の情報を利用して車両の向きを特定しても良い。
GPSアンテナの個数は8個でなくても良い。
受信アンテナをGPS受信機に設定して疑似距離を算出する処理を受信対象として決定したGPS衛星の個数分だけ繰返して行う構成に限らず、車両の現在位置を特定することが可能になった後に、それ以降の処理を中止するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態を示す機能ブロック図
【図2】GPSアンテナの配置態様を概略的に示す図
【図3】アルマナックデータの一例を示す図
【図4】シーケンス図
【図5】受信対象決定テーブルの一例を示す図
【符号の説明】
【0033】
図面中、1は車載装置、2は制御部(現在位置特定手段、受信対象衛星決定手段、受信対象アンテナ決定手段、初期位置推定手段、有効期限判定手段)、3はGPS受信機(GPS受信手段)、4は無線通信部(衛星配置情報取得手段、初期位置送信手段)、5は自立航行部(車両向き特定手段)、6は記憶部(衛星配置情報記憶手段)、11〜18はGPSアンテナ、21は位置サーバである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置であって、
主ビーム方向が互いに異なる方向を向いて設けられ、各々が複数のGPS衛星のうちいずれかから送信されたGPS衛星信号を受信する複数のGPSアンテナと、
前記複数のGPSアンテナの各々からGPS衛星信号を入力し、その入力したGPS衛星信号を合成して当該GPS衛星信号を送信したGPS衛星との間の疑似距離を算出するGPS受信手段と、
前記GPS受信手段により算出された疑似距離を演算して車両の現在位置を特定する現在位置特定手段と、
前記複数のGPS衛星の各々の配置態様を表す衛星配置情報を位置サーバから取得する衛星配置情報取得手段と、
車両の向きを特定する車両向き特定手段と、
前記衛星配置情報取得手段により取得された衛星配置情報に基づいて前記複数のGPS衛星のうち幾つかを受信対象のGPS衛星として決定する受信対象衛星決定手段と、
前記受信対象として決定された幾つかのGPS衛星毎に当該GPS衛星の配置態様と前記車両向き特定手段により特定された車両の向きと基づいて前記複数のGPSアンテナのうちから受信対象のGPSアンテナを決定する受信対象アンテナ決定手段とを備え、
前記GPS受信手段は、前記受信対象として決定された幾つかのGPS衛星毎に前記受信対象として決定されたGPSアンテナから入力したGPS衛星信号を用いることで複数のGPSアンテナの各々から入力したGPS衛星信号のうち前記受信対象として決定されたGPSアンテナにより受信されたGPS衛星信号を選択的に合成して当該GPS衛星信号を送信したGPS衛星との間の疑似距離を算出し、
前記現在位置特定手段は、前記受信対象として決定された幾つかのGPS衛星毎に前記GPS受信手段により算出された疑似距離を演算して車両の現在位置を特定することを特徴とする車載装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車載装置において、
車両の初期位置を推定する初期位置推定手段と、
前記初期位置推定手段により推定された初期位置を位置サーバに送信する初期位置送信手段とを備え、
前記衛星配置情報取得手段は、前記複数のGPS衛星のうち前記初期位置送信手段が位置サーバに送信した初期位置に対応するGPS衛星の各々の配置態様を表す衛星配置情報を位置サーバから取得することを特徴とする車載装置。
【請求項3】
請求項2に記載した車載装置において、
前記初期位置推定手段は、GPS衛星から送信されたGPS衛星信号に基づいて車両の初期位置を推定することを特徴とする車載装置。
【請求項4】
請求項2に記載した車載装置において、
前記初期位置推定手段は、基地局から送信された基地局信号に基づいて車両の初期位置を推定することを特徴とする車載装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載した車載装置において、
前記衛星配置情報取得手段により取得された衛星配置情報を記憶する衛星配置情報記憶手段と、
前記衛星配置情報記憶手段に記憶されている衛星配置情報の有効期限を判定し、前記衛星配置情報記憶手段に記憶されている衛星配置情報が有効であるか無効であるかを判定する有効期限判定手段とを備え、
前記受信対象衛星決定手段は、前記衛星配置情報記憶手段に記憶されている衛星配置情報が有効である旨を前記有効期限判定手段が判定したときには、前記記憶手段に記憶されている衛星配置情報に基づいて前記複数のGPS衛星のうち幾つかを受信対象のGPS衛星として決定し、前記衛星配置情報記憶手段に記憶されている衛星配置情報が無効である旨を前記有効期限判定手段が判定したときには、前記衛星配置情報取得手段により取得された最新の衛星配置情報に基づいて前記複数のGPS衛星のうち幾つかを受信対象のGPS衛星として決定することを特徴とする車載装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載した車載装置において、
前記受信対象衛星決定手段は、前記衛星配置情報取得手段により取得された衛星配置情報に基づいて前記複数のGPS衛星のうち仰角が高いGPS衛星を優先して受信対象のGPS衛星として決定することを特徴とする車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−210321(P2009−210321A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51998(P2008−51998)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】