説明

車高センサ

【課題】従来のレベリング装置においては、車体の仰伏方向への傾きを、車体とサスペンションの伸縮との相互位置関係で検出していたので、路面状態、走行条件などの影響を受けやすく、レベリング動作が不安定なものとなっていた。
【解決手段】本発明により、1つの被写体を、既知の間隔に設定した2つの受光部に入射させ、この受光部における被写体が投射された位置の差(視差)から被写体までの距離を計測するステレオ法により、例えば、車体の路面からの前後の高さの差を演算するこのとしたことで、可動になどによる機械的誤差の影響を受けないものとして精度の向上を図ると共に、小形化も可能として、課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行時における車体の路面に対する水平度を測定するための車高センサに係るものであり、詳細には、後輪駆動車(リアドライブ)における発進時などに生じるノーズアップ現象により、夜間のヘッドライト点灯時に照射光が上向きとなり、対向車の運転者に眩惑を生じさせる現象を防止するために設けられるレベリング装置を制御するために、車体姿勢の検出を行うための車高センサの構成に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種の自動車用車高センサ90の構成の例を示すものが図9であり、この自動車用車高センサ90は、光源91と、シャッタ92、受光部93、および、演算回路94で構成されており、前記シャッタ92にはスリット92aが設けられていて、前記受光部93に光源91に設けられたLEDランプ91aなどからの光がレンズ91bで平行光とされ、前記スリット92aにより線状の光として投影されるようにされている。
【0003】
そして、前記受光部93は、シリコンフォトダイオードなどで構成された一次元位置検出装置が採用されており、前記スリット92aからの光が当たった位置に対応して発生した電圧を上下端設けられた電極に距離に反比例する電圧として出力するものとされている。
【0004】
よって、前記演算回路94の出力でスリット92aに光が当たっている位置が知れるものと成るので、例えば、光源91と受光部93の組合わせを車体部材に取付け、シャッタ92を車輪支持部材に取付けておけば、車体の路面からの相互位置が測定できるものとなり、即ち、車高が知れるものとなる。
【0005】
このとき、前輪と後輪とに前記自動車用車高センサ90を取付けておけば、車体の前後方向での高さの差で車体全体としての仰伏角度が判るので、もしも、ノーズアップの状態であるときには、その角度に応じてヘッドライト(図示せず)を水平に調整すれば、対向車の運転者に対する眩惑の発生は防止できるレベリング装置が得られるものとなる。
【特許文献1】特開平01−097805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した従来の自動車用車高センサ90の構成においては、光源91及び受光部93と、シャッタ92との何れか一方は車体に取付ければ良く、比較的に容易に確実な取付けが可能となるが、他の一方は車両の走行による衝撃を吸収すべく伸縮する位置、例えば、ショックアブソーバなど、サスペンション機構の一部に取付けなければならないものとなる。
【0007】
従って、走行時の路面からの衝撃を直接に受けると共に、例えば、降雨時の路面からの雨水の飛沫などが直接に達する位置となるので、それらによって汚れやすく、常に正常な測定値を得るための状態を保つようにしておくためには、構成的に非常な困難性を有するものとなるという課題を生じるものとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記した従来の課題を解決するための具体的手段として、車両の進行方向に対して略直角方向として設けられる一対のライン状受光センサと、前記車両の進行方向に対して略平行方向として設けられるライン状光源とから成り、前記ライン状光源からの光の路面に投影される投影像を前記一対のライン状受光センサによりステレオ法を用い前記車両の路面に対する車高を検出することを特徴とする車高センサを提供することで、課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、車両の進行方向に対して略直角方向として設けられる一対のライン状受光センサと、前記車両の進行方向に対して略平行方向として設けられるライン状光源とから成り、前記ライン状光源からの光の路面に投影される投影像を前記一対のライン状受光センサによりステレオ法を用い前記車両の路面に対する車高を検出する車高センサとしたことで、第一には、車高センサの全ての機構を車体側に取付けらるものとして、取付作業を容易とする。
【0010】
また第二には、前記車高センサが一体化されるので、精度面での向上も期待でき、更には、一体化により可動部がなくなることで、小形化も可能となり、ヘッドランプのハウジング内など、この車高センサが必要とされる位置に設けることも可能となり、例えば、車両に取付けることなく、ヘッドランプ組立のみで機能の点検、検査が可能となるなど、生産性の面での簡略化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1〜図3に示すものは本発明に係る車高センサ10であり、図1は車両に取付けた状態での正面図、図2は、同様に車両に取付けた状態での側面図、図3は車両に取付けた状態での路面側から観視した状態での平面図である。
【0012】
ここで、前記車高センサ10は大別して4つの部分で構成されており、第一には、前記車両の進行方向に対して長さ方向L1が略一致する方向として取付けられたライン状光源1が設けられている。そして、前記ライン状光源1に対して、両側から挟むように、車両の進行方向に対して直交する方向に長さ方向L2が設定された一対のライン状受光センサ、即ち、第一のライン状受光センサ2と、第二のライン状受光センサ3が設けられている(図3参照)。
【0013】
そして、前記ライン状光源1からは、図1に示すように、車両の進行方向に対しては平行光を照射し、車両の進行方向に直角な方向に対しては、図2に示すように路面20との距離に応じて、例えば、台形状、若しくは、矩形状などの照射範囲を有する形状とした光線Dが放射されている。
【0014】
また、実際の実施に当たっては、図4に示すように、前記ライン状光源1に対しては路面20に照射する光の形状を整えるためのライン状光源用レンズ5が取付けられ、前記第一のライン状受光センサ2、第二のライン状受光センサ3に対しては、路面で反射する前記ライン状光源1からの光を受光するのに適するように設計されたラインセンサ用レンズ2a、3aが取付けられている。
【0015】
尚、前記したライン状光源1、第一のライン状受光センサ2、第二のライン状受光センサ3は基台4上に設置され、各関係位置を保つものとされているが、例えば、前記基台4内に演算回路(図示せず)などが設けられていて、上記ライン状光源1、第一のライン状受光センサ2、第二のライン状受光センサ3からの信号を演算し、結果が得られるものとしておけば、車高センサ10自体がユニット化されるものとなるので、車両への取付などが容易になることが考えられる。
【0016】
図5は、本発明の車高センサ10の計測原理を示すものであり、前記ライン状光源1からの光は、例えば、厚みの薄い、矩形状、若しくは、略三角形状の光線Dとして路面20を照射するものとする。また、前記ライン状光源1を両側から挟む第一のライン状受光センサ2および第二のライン状受光センサ3は、例えば受光部の複数が直列に並んだCCD素子などとされている。
【0017】
このように構成した場合、前記第一のライン状受光センサ2および第二のライン状受光センサ3に取付けらるラインセンサ用レンズ2a、3aを図5に示すように、前記ライン状光源1からの路面に投射された光像を、それぞれの前記ライン状受光センサ2、3上に結像するものとしておけば、それぞれのライン状受光センサ2、3には、前記ライン状光源1から路面で反射した光の像が投影されるものとなり、その位置から路面までの高さが計測できる。但し、路面と車体とは常に平行であるとは限らず、また、意図的に斜めに路面に対して投射することもあるので、ライン状受光センサ2、3に光の像が投影される位置に差を生じる可能性が高い。
【0018】
ここで、ステレオ法と称される距離測定法によれば、図6に示すように左右に距離Bを設けて、一対のカメラ、または、それに類する写像装置C1、C2を設置しておき、前記写像装置C1、C2で同時に目標物Aを撮影する。尚、このときに、前記一対の撮像装置C1と撮像装置C2とは平行とされ、レンズの焦点距離fは同一とされている。
【0019】
そして、同時に撮影した写像装置C1、C2上の像面での位置のズレから、両写像装置C1、C2間の視差Zの演算が可能となる。このときに、撮影を行った両写像装置C1、C2間の距離Bは既知であり、対象物Aまでの距離はD=B×(f/Z)の式で計算できるものとなる。よって、本発明の車高センサ10においても、例えば、前記第一のライン状受光センサ2に対する第二のライン状受光センサ3の視差を常時に演算していれば、リアルタイムでその時点の車高が知れるものとなる。
【0020】
このときに、車体の前端と後端とに、本発明の車高センサ10を取付け、双方の出力を常時に比較していれば、例えば、前後のサスペンションの双方が縮む状態であっても、前のサスペンション側の縮み量が少なければ、車高は低い状態でありながら、ヘッドライトが上向きとなるなどの状況であることが検知ができるものとなる。
【0021】
尚、上記の説明では、車高センサ10は車体の前後に取付けられるものとして説明したが、本発明に係る車高用センサ10は、例えば、車体とサスペンションなど相対的に移動する部分に取付ける必要がなく、一体化できるものであるので、上記にも説明したように車体に取付けつるものとしてもユニット化したものと取付けるのみで良く、サスペンションなど他の部分との相互関係を生じることなく、取付けも簡便である。
【0022】
更に言えば、構成される部品は、前記ライン状光源1と、一対のライン状受光センサ2、3と、IC化可能な電子部品など、小型であり且つ点数も少なくて良いものであるので、例えば、ヘッドライトのハウジング内に収納し、目的とするヘッドライトのみのレベリングを行うランプ・アセンブリーとして形成することも可能である。
【0023】
図7に示すものは、本発明の第二実施例に係る車高用センサ11であり、この第二実施例では、前記ライン状受光センサ2、3の間にライン状光源1a、ライン状光源1bの2本が取付けられている。そして、前記ライン状光源1a、ライン状光源1bの2本は、交互に点灯させる、或いは、発光色を変えるなど適宜な手段で、前記ライン状受光センサ2、3が、前記ライン状光源1a、ライン状光源1bからの光の識別を行えるようにしている。
【0024】
図8に示すものは、第二実施例における車高用センサ11の検出原理を示すものであり、図中に符号RHで示す線は平坦な路面であり、前記ライン状光源1a、ライン状光源1bからの光が同じ長さで路面で反射するように、前記車高用センサ11は車体などに取付けられている。尚、図中に符号Xで示す矢印は車両の進行方向である。
【0025】
また、符号RNで示す線は車体が前上がりの状態となるときの、前記ライン状光源1a、ライン状光源1bからの光の路面における反射位置を示すものであり、同様に符号RBで示す線は車体が前下がりになったときにおける前記ライン状光源1a、ライン状光源1bからの光の路面における反射位置を示すものである。
【0026】
ここで、先ず、車体が路面の対して水平のときの車高用センサ11の検出出力について説明する。尚、説明に当たっては、測定結果の判定の原理の理解を容易とするために、前記ライン状光源1aとライン状光源1bとは交互に切換えて点灯が行われるものとして説明を行うが、本発明は、これを限定するものではなく、ライン状光源1aとライン状光源1bとを同時に点灯し、演算回路などで分離しても良いものである。
【0027】
そして、前記ライン状光源1a、ライン状光源1bの何れか一方、例えば、先ず進行方向前方にあるライン状光源1aが点灯され、車高用センサ11により路面までの高さH1が計測され、その計測値がメモリーなど適宜手段により記憶される。次いで、他の一方であるライン状光源1bが点灯され、前記車高用センサ11により路面までの高さH2が計測され、前回の計測値H1との比較が行われる。
【0028】
このときに、もしも、(高さH1)=(高さH2)であれば、車体は水平であると判定ができるものとなる。但し、自動車の走行中には、ある程度の振動を伴うことが予想されるので、車高用センサ11の出力には、例えばローパスフィルター(図示せず)などを取付け、出力を平坦化するなどの処理は必要に応じて行われる。
【0029】
次いで、積荷の荷重などにより、車体が前上がりとなると、得られる計測値は、(高さH1)>(高さH2)となる。よって、この場合には、ヘッドライトが上向きとなるので、高さH1と高さH2との寸法差に基づいて、レベリング装置(図示せず)によりヘッドライトを水平に調整する。
【0030】
また、急制動などを行ったときには、いわゆるノーズダイブと称されて車体が前下がりとなる現象を生じることが知られている。そしてこのときには、得られる計測値は、(高さH1)<(高さH2)となり、よって、ヘッドライトの照射方向は下向きとなる。但し、この現象は一時的であり、且つ、対向車に眩惑も生じさせないので、一定時限以上、この現象が継続したときにレベリング装置を作動させるようにしても良い。
【0031】
ここで、本発明の第二実施例である車高用センサ11の特性上の特徴について述べれば、上記にも説明したように、計測値が例えば(高さH1)=(高さH2)であれば車体は水平であると判断するものであり、(高さH1)或いは(高さH2)自体の具体的数値は傾斜を判断するときの条件の外である。
【0032】
このことは、即ち、車種を選ばず採用可能ということであり、例えば、軽自動車(小型車)からトラック(大型車)まで、車体の構成にかかわらず、(高さH1)=(高さH2)の演算結果が得られれば、車体は水平であると判定できるものであり、即ち、汎用性に優れるものである。
【0033】
尚、上記の説明からも明らかなように、前記車高用センサ11は、車両の進行方向と直角となるように、即ち、図8を水平に90度回した状態で車体に取付ければ、車体の左右方向への傾きの検出も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る車高用センサの構成の例を示す正面図である。
【図2】同じ車高用センサの側面図である。
【図3】同じ車高用センサの平面図である。
【図4】同じく車高用センサにレンズを付けた状態を示す正面図である。
【図5】本発明に係る車高用センサの測定原理の例を示す説明図である。
【図6】ステレオ法の距離測定の原理を示す説明図である。
【図7】本発明に係る車高用センサの第二実施例を示す正面図である。
【図8】第二実施例の作用を示す説明図である。
【図9】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
10…車高用センサ
1…ライン状光源
1a…第一のライン状光源
1b…第二のライン状光源
2…第一のライン状受光センサ
3…第二のライン状受光センサ
2a、3a…ラインセンサ用レンズ
4…基台
5…光源用レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向に対して略直角方向として設けられる一対のライン状受光センサと、前記車両の進行方向に対して略平行方向として設けられるライン状光源とから成り、前記ライン状光源からの光の路面に投影される投影像を前記一対のライン状受光センサによりステレオ法を用い前記車両の路面に対する車高を検出することを特徴とする車高センサ。
【請求項2】
前記車高センサは、前記車両の前方と後方とのそれぞれに設けられ、双方の車高センサの出力から車高と共に前記車両の前後方向の傾きを検出することを特徴とする請求項1記載の車高センサ。
【請求項3】
前記車高センサには、一対の前記ライン状受光センサに加えて、一対のライン状光源が設けられ、前記車両の任意の場所に取付けることで、前記車両の前後、左右方向の傾きを検出することを特徴とする請求項1記載の車高センサ。
【請求項4】
前記車高センサからの出力は、少なくとも前照灯を路面に対して平行に保つための信号として使用されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車高センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−270918(P2009−270918A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121306(P2008−121306)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】