説明

転がり軸受装置

【課題】
転がり軸受装置内部に異物が浸入するのを防止し、信頼性の向上を図った転がり軸受装置を提供する。
【解決手段】
円筒状のハウジング2と、このハウジング2に内挿され、コンプレッサ部品が固定された回転軸3と、この回転軸3とハウジング2との間に介装され、このハウジング2に対して回転軸3を回転自在に支承し、内輪14、16と外輪13、15と、これら内外輪間に転動自在に収容された複数の転動体18および内外輪間に装着されたシール19とを有する密封型の一対の転がり軸受4、5とを備えた転がり軸受装置において、回転軸3と接触する内輪14、16の軸方向外方側の幅面に環状溝24が形成され、この環状溝24にOリング等からなる弾性リング25が装着されると共に、この弾性リング25が内輪14、16の幅面から僅かに突出して回転軸3の肩部3aおよび固定ナット23に弾性接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラ式コンプレッサ等の部品が固定された回転軸を支承する転がり軸受装置に関し、特に、燃料電池用のコンプレッサ装置に用いられる転がり軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、外部から供給された水素と酸素とを化学反応させて電気エネルギーを取り出す発電装置で、この燃料電池に用いられる電解質によって、例えば、自動車用の燃料電池に一般的に適用される固体高分子型をはじめ、リン酸電解質型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型等の種類に分類されている。いずれの形式の燃料電池にあっても、電解質または電解質膜の両面をカソード(酸素極)とアノード(燃料極)の両電極で挟持させ、カソード側には酸化剤ガスとして空気中の酸素を供給すると共に、アノード側には燃料ガスとして水素を供給するようにしたものを単セルとし、セパレータを介した各セルを積層させてスタックとするようにしている。
【0003】
このような燃料電池のカソード側へ空気を圧送して供給するために、排ガスタービンによりコンプレッサを駆動させるようにしたターボチャージャ方式やモータでコンプレッサを駆動させるようにしたモータ駆動方式がある。また、燃料電池に酸素および水素を供給する際、例えば、固体高分子型等では、燃料として直接水素を使用する直接水素型においても、水蒸気を加えて反応させる必要がある。さらに、例えば、燃料にガソリン等を使用する改質燃料型においては、非常に高温の水蒸気が必要となる。このように水蒸気を必要とするため、エネルギー効率を上げる目的で一般的に水蒸気を圧送するコンプレッサが使用されている。
【0004】
このコンプレッサにおいては、回転軸に取り付けられたインペラを回転自在に支承するのに転がり軸受が使用されるが、インペラの背面空間が負圧から正圧になる時に水蒸気が転がり軸受内に浸入する場合がある。一般的に、転がり軸受のうち回転側となる内輪と回転軸のハメアイはしまりばめとし、固定側となる外輪とハウジングはすきまばめとするため、すきまばめとされる外輪とハウジングとの隙間から水蒸気等が転がり軸受装置の内部に浸入してくる恐れがある。
【0005】
この問題を解決したものとして、図8に示す転がり軸受装置が知られている。この転がり軸受装置50は、ハウジング51と、このハウジング51に嵌挿された回転軸52と、ハウジング51に対して回転軸52を回転自在に支承する一対の転がり軸受53、54とを備えている。
【0006】
回転軸52の一端部は一方の転がり軸受53から突出し、その先端側にインペラ55が取り付けられている。このインペラ55の背面と転がり軸受53との間にはシール部が設けられている。このシール部は、回転軸52に外挿されたブッシュ56と、このブッシュ56の外周面に形成された溝に装着されたシーリング部材57と、バックプレート58と転がり軸受53との間に配設されたバッフル59とを備えている。ここで、シーリング部材57はブッシュ56の外周面とバックプレート58の内周面との隙間を密封している。また、ブッシュ56の端部は転がり軸受53の内輪53bの側面に当接されている。
【0007】
この転がり軸受装置50は、回転軸52の高速回転に伴ってインペラ55が回転し、水蒸気吸込み口60から吸い込まれた水蒸気がインペラ55によって加圧され、インペラハウジング61とバックプレート58とで形成される加圧ボリュート62を通って水蒸気吐出し口63から圧送される。
【0008】
ここで、一対の転がり軸受53、54において、内輪53b、54b側は回転軸52としまりばめとなっているが、外輪53a、54a側はハウジング51とすきまばめとなっている。そして、図9に示すように、外輪53a、54aの外周面には環状溝64が形成され、この環状溝64にOリング65が装着されている。このOリング65が外輪53a、54aとハウジング51とに密着し、両者間の隙間が密封されている。これにより、インペラ55の背面空間66が負圧から正圧になる時に、水蒸気が一対の転がり軸受53、54の内部に浸入するのを防止することができる。
【特許文献1】特開2003−202018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
こうした従来の転がり軸受装置50において、転がり軸受53、54の嵌合部の隙間から水蒸気が浸入するのを防止するため、ハウジング51とすきまばめとなる外輪53a、54aの外周面に環状溝64が形成され、この環状溝64にOリング65が装着されている。しかしながら、嵌合部にOリング65を装着する場合、転がり軸受53、54をハウジング51に嵌挿する時に、ハウジング51の角部でOリング65が削り取られたり、損傷する恐れがある。こうした不具合は組立後に検査することが難しく、おのずと組立作業が慎重にならざるを得ない。これでは作業性が低下してコスト高騰を招いて好ましくない。また、Oリング65の損傷により密封性を著しく低下させることになり、品質面から信頼性の向上が望まれていた。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、転がり軸受装置内部に異物が浸入するのを防止し、信頼性の向上を図った転がり軸受装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1記載の発明は、燃料電池のコンプレッサ装置に用いられる転がり軸受装置であって、円筒状のハウジングと、このハウジングに嵌挿され、前記コンプレッサ装置の部品が固定された回転軸と、この回転軸と前記ハウジングとの間に介装され、このハウジングに対して前記回転軸を回転自在に支承し、内輪と外輪と、これら内外輪間に転動自在に収容された複数の転動体および前記内外輪間に装着されたシールとを有する密封型の一対の転がり軸受とを備えた転がり軸受装置において、前記回転軸または前記ハウジングと接触する前記内輪および外輪のうち少なくとも一方の軌道輪の幅面に環状溝が形成され、この環状溝に弾性リングが装着されると共に、この弾性リングが前記軌道輪の幅面から僅かに突出して前記回転軸またはハウジングに弾性接触している構成を採用した。
【0012】
このように、円筒状のハウジングと、このハウジングに内挿され、コンプレッサ部品が固定された回転軸と、この回転軸とハウジングとの間に介装され、このハウジングに対して回転軸を回転自在に支承し、内輪と外輪と、これら内外輪間に転動自在に収容された複数の転動体および内外輪間に装着されたシールとを有する密封型の一対の転がり軸受とを備えた転がり軸受装置において、回転軸またはハウジングと接触する内輪および外輪のうち少なくとも一方の軌道輪の幅面に環状溝が形成され、この環状溝に弾性リングが装着されると共に、この弾性リングが軌道輪の幅面から僅かに突出して回転軸またはハウジングに弾性接触しているので、転がり軸受の嵌合部を通って一対の転がり軸受の内部に浸入するのを防止することができ、従来のように、転がり軸受を回転軸またはハウジングに嵌合する時に、弾性リングが削り取られたり、損傷する恐れがない。したがって、加圧された水蒸気等の異物が一対の転がり軸受の内部に浸入するのを効果的に防止することができると共に、組立作業が簡便化でき、コスト低減ができて信頼性の向上を図ることができる。
【0013】
好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記弾性リングのうち前記軌道輪の幅面から突出する部分の体積が、前記環状溝と弾性リングとの空間容積よりも小さく設定されていれば、弾性リングが弾性変形する部分が環状溝内に収まり、幅面と相手部材との間にすきまが発生しない。したがって、転がり軸受の軸方向位置決め精度を確保することができ、使用中に弾性リングにクリープが発生して転がり軸受の締付力が低下するのを防止することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明のように、前記弾性リングが前記環状溝に加硫接着により一体に接合されていれば、運搬・組立時に弾性リングが環状溝から脱落するのを防止することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明のように、前記環状溝の開口部の溝幅が溝底部の溝幅よりも小さく形成されていれば、運搬・組立時に弾性リングが環状溝から脱落するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る転がり軸受装置は、燃料電池のコンプレッサ装置に用いられる転がり軸受装置であって、円筒状のハウジングと、このハウジングに嵌挿され、前記コンプレッサ装置の部品が固定された回転軸と、この回転軸と前記ハウジングとの間に介装され、このハウジングに対して前記回転軸を回転自在に支承し、内輪と外輪と、これら内外輪間に転動自在に収容された複数の転動体および前記内外輪間に装着されたシールとを有する密封型の一対の転がり軸受とを備えた転がり軸受装置において、前記回転軸または前記ハウジングと接触する前記内輪および外輪のうち少なくとも一方の軌道輪の幅面に環状溝が形成され、この環状溝に弾性リングが装着されると共に、この弾性リングが前記軌道輪の幅面から僅かに突出して前記回転軸またはハウジングに弾性接触しているので、転がり軸受の嵌合部を通って一対の転がり軸受の内部に浸入するのを防止することができ、従来のように、転がり軸受を回転軸またはハウジングに嵌合する時に、弾性リングが削り取られたり、損傷する恐れがない。したがって、加圧された水蒸気等の異物が一対の転がり軸受の内部に浸入するのを効果的に防止することができると共に、組立作業が簡便化でき、コスト低減ができて信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
円筒状のハウジングと、このハウジングに内挿され、コンプレッサ部品が固定された回転軸と、この回転軸と前記ハウジングとの間に介装され、このハウジングに対して前記回転軸を回転自在に支承し、内輪と外輪と、これら内外輪間に転動自在に収容された複数の転動体および前記内外輪間に装着されたシールとを有する密封型の一対の転がり軸受とを備えた転がり軸受装置において、前記回転軸と接触する前記内輪の軸方向外方側の幅面に環状溝が形成され、この環状溝にOリング等からなる弾性リングが装着されると共に、この弾性リングが前記内輪の幅面から僅かに突出して前記回転軸に弾性接触している。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る転がり軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図、図2は、図1の軸受部を示す要部拡大図である。なお、同一部品、同一部位には同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0019】
この転がり軸受装置1は、ハウジング2と、このハウジング2に嵌挿された回転軸3と、ハウジング2に対して回転軸3を回転自在に支承する一対の転がり軸受4、5とを備えている。
【0020】
回転軸3の一端部は一方の転がり軸受4から突出し、その先端側に固定ナット6を介してインペラ7が取り付けられている。ハウジング2の内周には小径部8が形成され、回転軸3の肩部3aと僅かな径方向すきまを介して対峙し、所謂ラビリンスシール9が構成されている。このラビリンスシール9によってインペラ7の背面7aと転がり軸受4とが閉塞されている。また、ハウジング2には蓋部材22が取り付けられている。この蓋部材22の内周には回転軸3に摺接する軸シール22aが装着され、ハウジング2の開口部が閉塞されている。
【0021】
この転がり軸受装置1は、回転軸3の高速回転に伴ってインペラ7が回転し、水蒸気吸込み口10から吸い込まれた水蒸気が、インペラ7によって加圧され、インペラハウジング11とハウジング2とで形成される加圧ボリュート12を通って圧送される。
【0022】
ここで、図2に拡大して示すように、一対の転がり軸受4、5は深溝玉軸受からなる。この転がり軸受4(5)は、内周に外側転走面13a(15a)が形成された外輪13(15)と、外周に内側転走面14a(16a)が形成された内輪14(16)と、両転走面13a(15a)、14a(16a)間に保持器17を介して転動自在に収容された転動体(ボール)18と、外輪13(15)の両端部に装着されたシール19、19とを備えている。このシール19、19により軸受内部に封入された潤滑グリースが外部に漏洩するのを防止すると共に、外部から水蒸気等の異物が軸受内部に浸入するのを防止している。
【0023】
外輪13、15間および内輪14、16間には間座20、21が装着され、一対の転がり軸受4、5が位置決めされている。すなわち、外輪13、15は、間座20とハウジング2および蓋部材22により挟持された状態で軸方向に位置決め固定されると共に、内輪14、16は、間座21と回転軸3の肩部3aおよび固定ナット23により挟持された状態で位置決め固定されている。なお、一対の転がり軸受4、5をアンギュラ玉軸受とし、間座20、21により転がり軸受4、5に予圧を付与するようにしても良い。これにより、回転軸3の触れを抑制することができ、転がり軸受装置1の剛性を向上させることができる。
【0024】
本実施形態は、内輪14(16)の軸方向外方側の幅面に旋削加工によって環状溝24が形成されている。ここで、内輪14(16)の軸方向外方側の幅面とは、一対の転がり軸受4、5間の内部に対して軸方向外方側に位置する幅面を指している。この環状溝24には、Oリング等からなる弾性リング25が装着されている。この弾性リング25が回転軸3の肩部3aおよび固定ナット23に弾性接触している。これにより、液密的に外部と一対の転がり軸受4、5の内部とを遮断し、図1に示すインペラ7の背面空間26が負圧から正圧になる時に、水蒸気が内輪14(16)と回転軸3との嵌合部を通って一対の転がり軸受4、5の内部に浸入するのを防止することができる。また、従来のように、転がり軸受4、5を回転軸3に嵌合する時に、回転軸3のねじ部等で弾性リング25が削り取られたり、損傷する恐れがない。したがって、組立作業が簡便化でき、コスト低減ができると共に、信頼性の向上を図ることができる。
【0025】
ここでは、内輪14(16)の軸方向外方側の幅面に環状溝24が形成された構成を例示したが、図示はしないが、内輪の両方の幅面に環状溝を形成し、それらの環状溝に弾性リングを装着すれば、加圧された水蒸気等が内輪と回転軸との嵌合部を通って一対の転がり軸受の内部に浸入するのを一層防止することができる。
【0026】
弾性リング25は耐熱性、耐薬品性に優れたアクリルゴム、フッ素ゴム、あるいはエチレン・プロピレンゴム(EPDM)で形成されるのが好ましい。中でも、このエチレン・プロピレンゴムは、エチレンとプロピレンおよび架橋用のジエンモノマーとの三元共重合体で、非共役ジエンモノマーである第3成分を共重合することで硫黄架橋(加硫)が可能となり、反発弾性、溶剤性に優れている。
【0027】
なお、ここでは弾性リング25は断面が円形のものを例示したが、これに限らず、例えば、図3に示すように、環状溝24にシックリと装着できる矩形断面で構成されていても良い。図3(a)に示す弾性リング27は、相手部材(回転軸3の肩部3aまたは固定ナット23)に弾性接触する側が尖塔形状に形成され、加硫接着によって環状溝24に一体接合されている。これにより、緊迫力が増して密封性が向上すると共に、運搬・組立時に弾性リング27が環状溝24から脱落するのを防止することができる。また、図3(b)に示す弾性リング28は、相手部材に弾性接触する側にシールリップ28aが突設され、加硫接着によって環状溝24に一体接合されている。これにより、相手部材の接触面の寸法・形状が多少劣悪であってもその接触面に密着することができ密封性が一層向上する。
【0028】
図4は、前述した弾性リングの内輪の幅面からの突出度合いを示した説明図であるが、例えば、図3(a)に例示した弾性リング27の場合、幅面14bから突出する断面三角形状の体積Aは、環状溝24と弾性リング27との空間容積B、Bよりも小さく設定するのが好ましい(A<2B)。弾性リング27は相手部材に弾性接触した際にその突出部が圧縮されて環状溝24内に膨出するが、もし、突出する体積Aが空間容積B、Bよりも大きくなった場合、軸受組立時に弾性変形した突出部が環状溝24内に収まり切らずに幅面14bからはみ出し、幅面14bと相手部材との間にすきまが発生することになる。こうしたすきまは、転がり軸受4、5の軸方向位置決め精度を低下させるだけでなく、使用中に弾性リング27にクリープが発生した場合、転がり軸受4、5の締付力が低下して好ましくない。
【0029】
図5は内輪単体を示す要部断面図であるが、前述した環状溝24の変形例を示している。図5(a)に示す内輪14’の環状溝29は、幅面14bに開口する入口部の溝幅が溝底部の溝幅よりも小さく形成されている。これにより、弾性リング(図示せず)を環状溝29に接合しなくても運搬・組立時に弾性リングが環状溝29から脱落するのを効果的に防止することができる。なお、脱落防止のための形状はこれに限らず、環状溝の開口部が狭く形成されてれば良く、例えば、図5(b)に示すように、内輪30に断面が蟻溝形状をなす環状溝31が形成されていても良い。これにより、環状溝31の開口部の溝幅を小さくでき内輪30の幅面14bの面積を確保することができると共に、運搬・組立時に弾性リング(図示せず)が環状溝31から脱落するのを効果的に防止することができる。
【実施例2】
【0030】
図6は、本発明に係る転がり軸受装置の第2の実施形態を示す要部断面図である。なお、この実施形態は、前述した第1の実施形態(図2)と弾性リングの装着部位のみが異なるだけで、その他同一部位、同一部品、あるいは同一の機能を有する部位には同じ符号を付けてその詳細な説明を省略する。
【0031】
本実施形態は、ハウジング2に対して回転軸3を回転自在に支承する一対の転がり軸受32、33を備えている。この転がり軸受32、33は深溝玉軸受からなり、内周に外側転走面13a(15a)が形成された外輪34(36)と、外周に内側転走面14a(16a)が形成された内輪35(37)と、両転走面13a(15a)、14a(16a)間に保持器17を介して転動自在に収容された転動体18と、外輪34(36)の両端部に装着されたシール19、19とを備えている。
【0032】
ここで、外輪34(36)の軸方向外方側の幅面に環状溝38が形成されている。この環状溝38には、Oリング等からなる弾性リング39が装着されている。この弾性リング39がハウジング2あるいは蓋部材22の肩部2a、22bに弾性接触している。これにより、液密的に外部と一対の転がり軸受32、33の内部とを遮断し、図1に示すインペラ7の背面空間26が負圧から正圧になる時に、水蒸気が外輪34(36)とハウジング2との嵌合部を通って一対の転がり軸受32、33の内部に浸入するのを防止することができる。
【0033】
また、従来のように、転がり軸受32、33をハウジング2に嵌合する時に、ハウジング2の角部等で弾性リング39が削り取られたり、損傷する恐れがない。したがって、組立作業が簡便化でき、コスト低減ができると共に、信頼性の向上を図ることができる。
【実施例3】
【0034】
図7は、本発明に係る転がり軸受装置の第3の実施形態を示す要部断面図である。なお、この実施形態は、前述した実施形態(図2、図6)を組み合わせたもので、前述した実施形態と同一部位、同一部品、あるいは同一の機能を有する部位には同じ符号を付けてその詳細な説明を省略する。
【0035】
本実施形態は、ハウジング2に対して回転軸3を回転自在に支承する一対の転がり軸受40、41を備えている。この転がり軸受40、41は深溝玉軸受からなり、内周に外側転走面13a(15a)が形成された外輪34(36)と、外周に内側転走面14a(16a)が形成された内輪14(16)と、両転走面13a(15a)、14a(16a)間に保持器17を介して転動自在に収容された転動体18と、外輪34(36)の両端部に装着されたシール19、19とを備えている。
【0036】
ここで、内輪14(16)および外輪34(36)の双方の軸方向外方側の幅面に環状溝24、38が形成され、それぞれ弾性リング25、39が装着されている。そして、これらの弾性リング25、39が相手部材に弾性接触している。これにより、液密的に外部と一対の転がり軸受40、41の内部とを遮断し、図1に示すインペラ7の背面空間26が負圧から正圧になる時に、水蒸気が嵌合部を通って一対の転がり軸受40、41の内部に浸入するのを確実に防止することができる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る転がり軸受装置は、あらゆる形式のコンプレッサ等の部品が固定された回転軸を支承する転がり軸受装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る転がり軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の軸受部を示す要部拡大図である。
【図3】(a)は、本発明に係る弾性リングの他の実施形態を示す断面図である。 (b)は、本発明に係る弾性リングのさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る弾性リングの内輪の幅面からの突出度合いを示した説明図である。
【図5】(a)は、本発明に係る内輪における環状溝の他の実施形態を示す断面図である。 (b)は、本発明に係る内輪における環状溝のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る転がり軸受装置の第2の実施形態を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る転がり軸受装置の第3の実施形態を示す縦断面図である。
【図8】従来の転がり軸受装置を示す縦断面図である。
【図9】図8の軸受部を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・転がり軸受装置
2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハウジング
2a、3a、22b・・・・・・・・・・・肩部
3・・・・・・・・・・・・・・・・・・・回転軸
4、5、32、33、40、41・・・・・転がり軸受
6、23・・・・・・・・・・・・・・・・固定ナット
7・・・・・・・・・・・・・・・・・・・インペラ
7a・・・・・・・・・・・・・・・・・・背面
8・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小径部
9・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ラビリンスシール
10・・・・・・・・・・・・・・・・・・水蒸気吸込み口
11・・・・・・・・・・・・・・・・・・インペラハウジング
12・・・・・・・・・・・・・・・・・・加圧ボリュート
13、15、34、36・・・・・・・・・外輪
13a、15a・・・・・・・・・・・・・外側転走面
14、14’、16、30、35、37・・内輪
14b・・・・・・・・・・・・・・・・・幅面
17・・・・・・・・・・・・・・・・・・保持器
18・・・・・・・・・・・・・・・・・・転動体
19・・・・・・・・・・・・・・・・・・シール
20、21・・・・・・・・・・・・・・・間座
22・・・・・・・・・・・・・・・・・・蓋部材
22a・・・・・・・・・・・・・・・・・軸シール
24、29、31、38・・・・・・・・・環状溝
25、27、28、39・・・・・・・・・弾性リング
26・・・・・・・・・・・・・・・・・・インペラの背面空間
28a・・・・・・・・・・・・・・・・・シールリップ
50・・・・・・・・・・・・・・・・・・転がり軸受装置
51・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハウジング
52・・・・・・・・・・・・・・・・・・回転軸
53、54・・・・・・・・・・・・・・・転がり軸受
53a、54a・・・・・・・・・・・・・外輪
53b、54b・・・・・・・・・・・・・内輪
55・・・・・・・・・・・・・・・・・・インペラ
56・・・・・・・・・・・・・・・・・・ブッシュ
57・・・・・・・・・・・・・・・・・・シーリング部材
58・・・・・・・・・・・・・・・・・・バックプレート
59・・・・・・・・・・・・・・・・・・バッフル
60・・・・・・・・・・・・・・・・・・水蒸気吸込み口
61・・・・・・・・・・・・・・・・・・インペラハウジング
62・・・・・・・・・・・・・・・・・・加圧ボリュート
63・・・・・・・・・・・・・・・・・・水蒸気吐出し口
64・・・・・・・・・・・・・・・・・・環状溝
65・・・・・・・・・・・・・・・・・・Oリング
66・・・・・・・・・・・・・・・・・・インペラの背面空間
A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・弾性リングが突出する体積
B・・・・・・・・・・・・・・・・・・・弾性リングと環状溝との空間容積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池のコンプレッサ装置に用いられる転がり軸受装置であって、
円筒状のハウジングと、
このハウジングに嵌挿され、前記コンプレッサ装置の部品が固定された回転軸と、
この回転軸と前記ハウジングとの間に介装され、このハウジングに対して前記回転軸を回転自在に支承し、内輪と外輪と、これら内外輪間に転動自在に収容された複数の転動体および前記内外輪間に装着されたシールとを有する密封型の一対の転がり軸受とを備えた転がり軸受装置において、
前記回転軸または前記ハウジングと接触する前記内輪および外輪のうち少なくとも一方の軌道輪の幅面に環状溝が形成され、この環状溝に弾性リングが装着されると共に、この弾性リングが前記軌道輪の幅面から僅かに突出して前記回転軸またはハウジングに弾性接触していることを特徴とする転がり軸受装置。
【請求項2】
前記弾性リングのうち前記軌道輪の幅面から突出する部分の体積が、前記環状溝と弾性リングとの空間容積よりも小さく設定されている請求項1に記載の転がり軸受装置。
【請求項3】
前記弾性リングが前記環状溝に加硫接着により一体に接合されている請求項1または2に記載の転がり軸受装置。
【請求項4】
前記環状溝の開口部の溝幅が溝底部の溝幅よりも小さく形成されている請求項1または2に記載の転がり軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−32586(P2007−32586A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212132(P2005−212132)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】