説明

転写ベルト駆動装置および画像形成装置

【課題】負荷変動によるベルトの伸縮変動を抑制し、ベルト駆動を安定させるとともに高精度に駆動することのできるベルト駆動装置を提供する。
【解決手段】中間転写ベルト15を弾性ベルトとして構成し、その転写ベルト15の内側に駆動ベルト20を配設し、この駆動ベルト20を高剛性ベルトとして構成する。中間転写ベルト15が弾性ベルトであるため、トナー像の転写性に優れる。また、転写ベルト15に様々な負荷変動が発生しても、安定駆動したいベルト区間では高剛性ベルトである駆動ベルト20より転写ベルト15に面で駆動力が伝達されるため、ベルト伸縮の変動が発生しない、あるいはその他の部分で発生したベルト伸縮変動の影響を受けずに高精度に転写ベルト15を駆動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置における転写ベルト駆動装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特許第2962088号公報
【特許文献2】特開2006−64777号公報
【特許文献3】特開2000−122446号公報
【特許文献4】特開2001−282009号公報
【0003】
電子写真画像形成プロセスを用いた電子写真画像形成装置では、像担持体の表面に形成した静電潜像に現像装置によって現像剤を付着させ、形成されたトナー像を転写材に直接転写、あるいは中間転写体に一次転写した後に転写材に二次転写している。また転写後の像担持体表面の転写残トナーをクリーニング装置で除去し、次のトナー像形成に移行していく。
【0004】
画像形成装置の中には、中間転写体である中間転写ベルトとして転写効率に優れた弾性ベルトを用いて構成された機械がある。弾性ベルトを用いることで記録紙の形状に合わせてベルトが変形可能であるため、剛性の高いベルトでは転写されにくい凹部へも確実に転写でき、転写されずに中間転写ベルト上に残ってしまう残トナーの量を減らすことが可能となる。しかし、弾性ベルトはわずかな負荷の変化によって容易に伸縮してしまうため、従来のベルト駆動方式ではつねにベルトの伸縮変動が発生してしまい、高品質な画像を作成するための高精度ベルト駆動を行うことが非常に難しかった。
【0005】
ベルト搬送駆動で発生する速度変動は様々な原因から発生する。例えばローラの偏心、ベルトの厚み偏差、ベルトの伸縮などから速度変動が発生する。発生原因が異なれば、その変動を打ち消すための制御はそれぞれに対応したやり方で行わなければならない。
【0006】
従来より、中間転写ベルトの速度変動を防止し、高品質な画像を得ることを目的とした技術が、例えば特許文献1〜4などにより提案されている。しかし上述したようにベルトの速度変動は様々な原因から発生するため、その防止は困難であった。
【0007】
ここで、ベルトの伸縮変動をフィードバック制御によって取り除くことが困難な理由について説明する。
ローラの偏心などの場合には、ローラ偏心が含まれる場所(例えば駆動ローラの偏心ならば従動ローラ)から位置や速度をエンコーダなどで検出し、その信号を用いてフィードバック制御を行えば、ローラ偏心によるベルト速度変動は除去することが可能である。
【0008】
これと同じ考え方をベルト伸縮変動で考えた場合、図14に示すように、例えば駆動ローラがベルトを引っ張る時、従動ローラに何らかの負荷が加わってベルトが伸びたとする(1)。この時に従動ローラにエンコーダが取り付けられてフィードバック制御が行われているとすると、従動ローラの速度が遅いということが検知される。この遅いという信号により駆動ローラが速度を上げても、ベルトが伸びきるまでは速度上昇はベルトそのものや従動ローラには反映されない(2)。ベルトが伸びきるとベルトの速度が上がり、従動ローラの速度も上がるが(3)、駆動ローラに加えられた速度上昇量に加え、ベルトの縮む力もベルトや従動ローラの速度上昇に影響を与えてしまう(4)。これにより、今度はベルトや従動ローラは早すぎることになる。この早すぎる信号が検知されると、駆動ローラは速度低下の信号を出すが(5)、ベルトが縮みきるまでは速度上昇が続く。よって、ベルトの伸縮変動に対しては、通常のローラエンコーダ検出によるフィードバック制御では低減・除去することができない。
【0009】
図15は、弾性部と高剛性部からなる2層を一体的に構成した構造のベルトの断面図である。この図に示すベルトは、高剛性ベルト51の外周に弾性ベルト50を設けた構成であるが、それぞれのベルト材料の物性特性が異なるため、一つのベルトとして作り上げると、境界面52に示すように、それぞれの厚みが異なった状態で一つのベルトとして構成されてしまう。図に示すように表面は均一な状態で構成されているとしても、境界面52が一定でない場合には、ベルトの巻き付いている駆動ローラから駆動力をもらってベルト搬送が行われる際、境界面52の厚み差による速度変動を受けてしまい、ベルトの高精度駆動が難しくなる。これは、駆動ローラが一定で回転している時、高剛性ベルト部分が厚い時には、見かけの駆動ローラ半径が大きくなりベルト搬送速度が上がる。一方、高剛性ベルト部分が薄い時には、見かけの駆動ローラ半径が小さくなりベルト搬送速度は下がるためである。
【0010】
図16は、弾性ベルトと高剛性ベルトを別々に作成して重ねた構造のベルトの断面図である。この図に示すように、弾性ベルト53と高剛性ベルト54を別々に作り上げるため、ベルトの表面は均一な状態で構成することが可能となる。しかし、これを単純に重ねただけの状態でベルト全体の駆動を行うと、内側の駆動ローラに巻き付く高剛性ベルト54と、画像形成を行う(トナー像を担持する)弾性ベルト53との単純な摩擦力にのみ駆動搬送力伝達が依存してしまうため、何らかの負荷変動、例えば、2種類のベルトを保持する摩擦力以上のトルクが加わった時、駆動ローラと負荷変動との区間で非常に高いトルク不均衡が発生し、高剛性ベルト54と弾性ベルト53が滑ってしまい、画像形成される弾性ベルト53を高精度に搬送することができない。当然、この2種類のベルトを接着剤などで一体化すると、図15で説明したのと同様の問題が発生してしまうため、高精度なベルト搬送駆動は難しくなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、トナーの転写効率を良くするためには弾性ベルトを用いた方が有利であるが、ベルトを高精度に駆動するためにはある程度の硬さが必要である。高精度駆動と高転写率を得るためには内層が硬質で表層が軟層の2層構造のベルトを用いることが考えられるが、上記の如く、弾性部と高剛性部からなる2層を一体的に構成した構造のベルトの場合には、各層の厚さを均一にするのが難しく境界面が波打つことにより速度変動が発生するという問題があった。また、硬質ベルトと軟質ベルトを別々に作成してくっつけた構成のベルトの場合には、ベルト同士が滑る、また、両者を貼り付けた場合には境界面が波打つなどによって速度変動が発生するという問題があった。
【0012】
図17は、転写ベルト駆動装置の一例を示す斜視図である。
この図において、駆動対象である転写ベルト(中間転写ベルト)415は、駆動ローラ411,従動ローラ412,転写対向ローラ413及びテンションローラ414に巻き掛けられており、駆動源であるモータ416からギヤ417,418を介して駆動ローラ411を駆動することで、転写ベルト415を走行駆動させている。転写手段としての二次転写ローラ419は、転写ベルト415を挟んで転写対向ローラ413に圧接するように配置され、二次転写ローラ419と転写対向ローラ413(転写ベルト415)とのニップ部を記録材Pが通ることで、転写ベルト415上のトナー像が記録材Pに転写される。
【0013】
このような構成において、記録材Pが特殊な場合、例えば非常に厚い記録材であったり、あるいはエンボス加工紙のように凹凸のある記録材である場合には、転写ベルト415が剛性の高いベルトで構成されているとベルトが記録材の表面形状に合わせて変形することは無く、ベルト上のトナー像が全て記録材Pの方へ転写されないという不具合がある。そのため、転写ベル4215の素材として軟らかい弾性ベルトを用いる方式がある。その場合、ベルトが軟らかいために用紙の凹凸に対して形状を変えて凹凸に合わせて接触することが可能とるために、トナー像が記録材Pに全て転写される。
【0014】
しかし、転写ベルトに弾性ベルトを用いた場合、様々な種類の記録材への転写性能は向上するものの、高精度駆動という面から考えた場合にはいくつかの問題が発生する。例えば、通常、転写ベルトには転写しきれないトナーを次の画像へ影響させないためにクリーニング装置が設けられている。クリーニングの方法の一つとして、ブレードを転写ベルトに当てて、転写ベルト上に残ったトナーをかきとる方法があるが、この方法を弾性ベルトに用いた場合、ブレードと弾性ベルトの間で滑ったり止まったりを繰り返すスティックスリップが発生し、それがトリガーとなって転写ベルトに負荷変動が生じ、ベルトの伸縮が発生してしまう。また、連続で画像を通紙すると、記録材が転写ニップ部に突入する時の衝撃による過渡的な負荷変動が発生する。この負荷変動発生の原因の一つに、狭いニップ部へ記録材が突入することで転写ベルト415や駆動ローラ411,対向ローラ413の駆動を阻害する変動がある。連続通紙時は転写ベルト415から記録材Pへの転写が行われると同時に、ここでは図示しない感光体ドラムから転写ベルト415へトナー画像の転写も行われているため、記録材Pの転写ニップ部への突入による過渡的負荷変動は弾性ベルトの伸縮変動となり、感光体ドラムからの一次転写にも影響を及ぼす。例えば、ブラックの50%濃度のベタ画像を出力した場合、形成画像が転写ベルト搬送方向に長い場合は同一の記録材の途中に、短い場合は2枚目以降に図18に示すようなスジ状の濃い部分Kと薄い部分Uが出来てしまう。また、4色のトナー画素をそれぞれ4つの感光体ドラム上に形成し、それらを転写ベルト(中間転写ベルト)上で重ねてカラー画素を形成する画像形成装置の場合、弾性ベルトで構成された転写ベルトを用いた構成において、上記過渡的負荷変動が発生すると、当然、弾性ベルトには伸縮変動が発生し、転写ベルト上で重ねられる画素において、弾性ベルトが伸びている時の画素と縮んでいる時の画素とが重ねられた画素が生成され、色ずれが発生する。
【0015】
また、記録材が転写ニップ部へ入り込んだ後、記録材が抜け出る際にもトルクの方向は逆になるが、同様に大きな負荷変動が発生し、これも弾性ベルトの伸縮変動を発生させてしまう。まず、記録材が転写ニップ部に入り込んだ後に再び力の釣り合いが取れてベルトやローラが駆動している状態になる。そして、記録材の端部が来てニップ部から記録材が抜け出た時には、急激にベルトやローラの負荷トルクが低減する。それによって一時的にベルトやローラの速度が上昇し、速度変動として現れ、それが弾性ベルトの伸縮変動を発生させてしまう。このタイミングで感光体ドラムからの一次転写が行われていた時には当然、画像品質の低下が避けられない。
【0016】
このような構成に対して、感光体ドラムに弾性ベルトで構成された転写ベルトを任意の距離で巻き付け、感光体ドラム駆動に対して転写ベルトを従動駆動させることでベルトの伸縮を防ぐ方式がある。しかし、作像や転写プロセスにおいて、感光体ドラムと転写ベルトに線速差を設けることが望ましい場合には、この方式を採用することが不可能である。また、経時変化やクリーニング状態などによる転写ベルトの表面状態や巻き付け量によっては感光体ドラムと転写ベルトとの摩擦力が不安定であり、全ての製品や状態での高精度駆動を維持することは難しい。
【0017】
また、複数のモータを設けてベルトの伸縮に応じてモータ駆動をコントロールする方式もあるが、駆動システムのパラメータと実際の値との差異や、ベルト伸縮量の計測方法、計測誤差などのバラつきを考慮すると、高精度駆動を維持することは、こちらの方式でも難しい。
【0018】
本発明は、従来のベルト駆動装置における上述の問題を解決し、優れた画像転写性と安定かつ高精度なベルト駆動とを両立することのできる転写ベルト駆動装置を提供することを課題とする。
【0019】
また、優れた画像転写性と安定かつ高精度な転写ベルト駆動とを両立させ、高品質な画像を形成することのできる画像形成装置を提供することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の課題は、本発明により、所定の弾性を有する弾性ベルトで構成され像担持体から直接ベルト表面に又はベルト表面に保持した記録材に画像が転写される転写ベルトと、所定の剛性を有する剛性ベルトで構成された駆動ベルトを有し、前記転写ベルトは複数の非駆動ローラである支持ローラに張架され、前記駆動ベルトは駆動ローラと少なくとも一つの従動ローラとに張架され、前記駆動ベルトを、前記転写ベルト又は前記転写ベルトが保持する記録材への画像転写部に対向する位置で前記転写ベルトの内側に密着した状態で走行するように配置し、前記駆動ベルトを介して前記転写ベルトを駆動することにより解決される。
【0021】
また、前記駆動ベルトから前記転写ベルトへの駆動伝達を補助する駆動伝達補助手段を有すると好ましい。
また、前記駆動伝達補助手段は、前記転写ベルト回動方向における前記像担持体からの画像転写位置の上流側に設けられると好ましい。
【0022】
また、複数の像担持体からの画像転写が可能に構成され、前記駆動伝達補助手段は、前記転写ベルト回動方向における最上流側の像担持体からの画像転写位置の上流側に少なくとも設けられると好ましい。
【0023】
また、モノクロ画像を担持する像担持体からの画像転写及びカラー画像をそれぞれ担持する複数の像担持体からの画像転写が可能に構成され、前記駆動伝達補助手段は、前記転写ベルト回動方向における前記モノクロ画像を担持する像担持体からの画像転写位置の上流側と、前記カラー画像をそれぞれ担持する複数の像担持体のうちの前記転写ベルト回動方向における最上流側の像担持体からの画像転写位置の上流側とに少なくとも設けられると好ましい。
【0024】
また、前記駆動伝達補助手段は、前記転写ベルト回動方向における前記像担持体からの画像転写位置の下流側にも設けられると好ましい。
また、前記駆動伝達補助手段が、前記転写ベルトの回動に連れ回りして所定の押圧力で前記転写ベルトを押圧する押さえ込みローラであり、前記駆動ベルトと対向する位置に設けられると好ましい。
【0025】
また、前記駆動ベルトの内側に、前記押さえ込みローラと対向して設けられる押さえ込み対向ローラを備えると好ましい。
また、前記押さえ込みローラは、前記転写ベルトを非画像部において押圧すると好ましい。
【0026】
また、前記駆動伝達補助手段が、静電力によって前記転写ベルトと前記駆動ベルトとを吸着させる静電的駆動伝達補助手段であると好ましい。
また、前記駆動伝達補助手段として、前記転写ベルトの回動に連れ回りして所定の押圧力で前記転写ベルトを押圧する押さえ込みローラと、静電力によって前記転写ベルトと前記駆動ベルトとを吸着させる静電的駆動伝達補助手段とを備え、前記押さえ込みローラが前記駆動ベルトと対向する位置に設けられると好ましい。
【0027】
また、前記静電的駆動伝達補助手段として、前記駆動ベルトの内側に静電吸着ローラを設けたと好ましい。
また、前記静電的駆動伝達補助手段として、像担持体から前記転写ベルト又は前記転写ベルトが保持する記録材に画像を転写させる転写手段を用いると好ましい。
【0028】
また、前記の課題は、本発明により、請求項1〜13のいずれか1項に記載の転写ベルト駆動装置を備える画像形成装置により解決される。
また、複数の像担持体を有し、該複数の像担持体から前記転写ベルトに順次各色画像を転写してフルカラー画像の形成が可能な中間転写方式の装置であると好ましい。
【0029】
また、複数の像担持体を有し、該複数の像担持体から前記転写ベルトに保持させた記録材に順次各色画像を転写してフルカラー画像の形成が可能な直接転写方式の装置であると好ましい。
【0030】
また、前記複数の像担持体を前記駆動ベルト対向する前記転写ベルトの辺上に並設させたタンデム型の装置であると好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明のベルト駆動装置によれば、転写ニップ部での負荷変動やクリーニングの負荷変動などによる転写ベルトの伸縮変動を抑制し、ベルト駆動を安定させるとともに高精度に駆動することができる。また、転写ベルトは弾性ベルトで構成されるため、良好な画像転写性を得ることができる。
【0032】
さらに、転写ベルトと駆動ベルトとを分離する(別のベルトとする)ことによって、消耗品である転写ベルトのみの交換が可能となり、コストダウン及び交換の容易性を得ることができる。また、弾性部と剛性部が一体となった一体ベルトに比べて製造コストが安くなり、良好な画像転写性とベルトの高精度駆動の両立を低コストに実現することができる。
【0033】
請求項2の構成により、駆動伝達補助手段を有することで、駆動ベルトから転写ベルトへ確実に駆動力を伝達し、ベルト同士のズレを防いで駆動トルクの伝達を精度良く行なうことができる。
【0034】
請求項3の構成により、画像転写位置の手前(上流側)で転写ベルトと駆動ベルトの密着性を高め、画像転写部でのベルトの伸縮変動を抑制して高品質な画像形成が可能となる。
【0035】
請求項4の構成により、複数の像担持体からの画像転写が可能な構成においては、少なくとも最上流側の画像転写位置の上流側に駆動伝達補助手段を設けることで、画像転写位置の手前(上流側)で転写ベルトと駆動ベルトの密着性を高め、画像転写部でのベルトの伸縮変動を抑制して高品質な画像形成が可能となる。
【0036】
請求項5の構成により、モノクロ画像の転写位置における転写ベルトと駆動ベルトの密着性を高めることができ、高品質なモノクロ画像の形成が可能となる。
請求項6の構成により、駆動伝達補助手段を画像転写位置の下流側にも設けることで、画像転写位置の前後で転写ベルトと駆動ベルトの密着性を高め、画像転写部でのベルトの伸縮変動をさらに抑制することができる。
【0037】
請求項7の構成により、押さえ込みローラにより押圧することで転写ベルトと駆動ベルトの摩擦力を高め、転写ベルトの伸縮変動を確実に抑制してベルト駆動を安定させ、高精度に駆動することができる。
【0038】
請求項8の構成により、押さえ込み対向ローラを備えることでさらに両ベルトの摩擦力を高めることができる。
請求項9の構成により、押さえ込みローラが転写された画像を乱すことが防止される。
【0039】
請求項10の構成により、機械的な追加部材(駆動伝達補助手段)を設けることなく、転写ベルトと駆動ベルトの摩擦力を高め、転写ベルトの伸縮変動を抑制することができる。
【0040】
請求項11の構成により、押さえ込みローラと静電的駆動伝達補助手段の双方を備えることで、転写ベルトと駆動ベルトの摩擦力をさらに高め、転写ベルトの伸縮変動を確実に抑制することができる。
【0041】
請求項12の構成により、駆動ベルトの内側に静電吸着ローラを設けたことで、転写ベルトと駆動ベルトとを確実に吸着させることができる。
請求項13の構成により、画像を転写させる転写手段を用いて容易にベルトの吸着力を発生させることができる。また、コストを抑制することができる。
【0042】
請求項14の画像形成装置によれば、負荷変動による転写ベルトの伸縮変動が抑制されベルト駆動が安定し、かつ、高精度に転写ベルトを駆動できるとともに、良好な画像転写性を得ることができるので、高品質な画像形成を行なうことができる。
【0043】
請求項15の構成により、中間転写方式の画像形成装置において、高品質なフルカラー画像の形成を行なうことができる。
請求項16の構成により、直接転写方式の画像形成装置において、高品質なフルカラー画像の形成を行なうことができる。
【0044】
請求項17の構成により、複数の像担持体が並設されるタンデム型の装置において、タンデム作像部における転写ベルトの伸縮変動を抑制してベルト駆動を安定させるとともに、高精度に転写ベルトを駆動して高品質なフルカラー画像の形成を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るベルト駆動装置の一実施形態における基本構成例を模式的に示す構成図である。また、そのベルト駆動装置をフルカラー画像形成装置の中間転写部に適用した例を図2及び図3に示す。まず、図1を参照して本発明の基本構成について説明する。
【0046】
図1において、駆動対象である転写ベルト(ここでは中間転写ベルト)15は、複数の支持ローラ11〜14に巻き掛けられている。支持ローラ11〜14は、何れも駆動力を与えられていない単なる支持ローラであり、本例では、各支持ローラのうち、ローラ13は転写対向ローラであり、ローラ14はテンションローラである。上記転写ベルト15は任意の弾性力を持つ弾性ベルトとして構成されている。転写ベルト15が像担持体である感光体ドラム10と対向する辺(本例では上辺)の内側には、駆動ローラ21及び従動ローラ22に張架された高剛性ベルトである駆動ベルト20が配設されており、図示しない機構により駆動ベルト20が転写ベルト15に押し付けられている。駆動ローラ21は、図示しない駆動源(モータ)から直接又はギヤ等を介して駆動され、駆動ベルト20を図中時計回りに走行駆動させる。上記したように、駆動ベルト20が転写ベルト15に押し付けられており、駆動ベルト20と転写ベルト15は任意の面積で接触し、この部分からの押し付けによる摩擦力を発生させる。これにより、駆動ベルト20から摩擦力によって駆動力が転写ベルト15に伝達され、転写ベルト15が走行駆動される。
【0047】
なお、図1の構成において、駆動ローラ21を右側(下流側)に配置することで、駆動ベルト20の張り側が転写ベルト15に接触することとなり、確実に駆動力を転写ベルト15に伝達することができる。
【0048】
また、駆動源であるモータの種類に関しては特別な制約はなく、例えばパルスモータであれば一定パルスを入力し、例えばブラシレスDCモータであれば内部FG信号などよりモータを高精度に駆動する方法がある。また、駆動ベルト20を架け渡すローラは2本である必要は無く、必要に応じて3本以上の構成としても良い。さらに、図示例では駆動ベルト20にテンションを付与する構成を有していないが、テンションを付与するローラ機構などを加えた構成としても良い。
【0049】
転写ベルト15の上側には像担持体である感光体ドラム10が配置され、その感光体ドラム10と対向するように、転写ベルト15及び駆動ベルト20を挟んで一次転写手段である転写ローラ23が配設される。感光体ドラム10上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ23によって転写ベルト15の表面に転写されて移動する。そして、二次転写ローラ19が転写ベルト15を挟んで転写対向ローラ13に圧接するように配置されており、二次転写ローラ19と転写対向ローラ13(転写ベルト15)とのニップ部を記録材Pが通ることで、転写ベルト15上のトナー像が記録材Pに転写される。なお、図1では、簡略化のために像担持体である感光体ドラム10を1つのみ備える構成で説明したが、多色画像あるいはフルカラー画像形成に対応するためには、図2に示すように転写ベルト15の走行辺に沿って複数(図示例では4つ)の感光体ドラムを備える構成とすれば良い。
【0050】
上記したように、駆動ベルト20から転写ベルト15へは摩擦によって駆動力が伝達されるが、摩擦力をより多く発生させるため、また、押し付けによる転写ベルト15の変形あるいは搬送経路の変化を最小限とするために、駆動ローラ21及び従動ローラ22にそれぞれ対向するように、駆動伝達補助手段である押さえ込みローラ24−1,24−2が設けられている。押さえ込みローラ24−1,24−2は、転写ベルト15の回転に連れ回りして所定の押圧力で転写ベルト15を押圧する。この押さえ込みローラ24−1,24−2によって転写ベルト15を押さえ、押さえ込みローラ24−1,24−2と駆動ローラ21及び従動ローラ22とによって転写ベルト15と駆動ベルト(高剛性ベルト)20を挟み込むことによって、両ベルト間に発生する摩擦力を増加させる構成となっている。
【0051】
さらに、駆動ベルト20と転写ベルト15の接触は基本的にどの位置でも構わないが、変動の影響を受けずに転写ベルトを一定速度で搬送したいベルト区間(図示例では感光体ドラム10が配置される区間)に高剛性ベルトである駆動ベルト20を設けることが好ましい。
【0052】
また、転写ベルト15上に画像が担持される個所で押さえ込みローラ24を設ける場合には、非画像部のみ(例えばベルト幅方向の両端部)でベルトに接触する構成が望ましい。転写ベルト15に画像を担持しない個所では、軸方向のローラ全体でベルトに接触する方が大きな摩擦力を得ることができるので好ましい。
【0053】
ここで、ベルトに負荷変動が発生した場合について考察する。
例えば、転写対向ローラ13と二次転写ローラ19とで構成される二次転写ニップ部に記録材Pが突入するときの変動を想定すると、記録材がニップ部に突入することで転写ベルト15に一時的にブレーキが掛かり、かつニップ部から下流側(支持ローラ12側)のベルト部分には駆動力が加わっているために転写ベルト15が伸びてしまう。また逆に、ニップ部から上流側(支持ローラ11側)のベルト部分は搬送されるが、ニップ部でブレーキが掛かっているためにベルトが縮もうとする。このベルト伸縮のトリガーによって、ゴムのように伸縮変動が発生してしまう。しかし、高剛性ベルトである駆動ベルト20が接触している区間では、駆動ベルト20から面で転写ベルト15に駆動が伝達されているため、転写ベルト15は伸びることができず、伸縮変動は発生しない。つまり、感光体ドラム10で形成された画像を転写する一次転写部のベルト(転写ベルト15)は高剛性ベルト(駆動ベルト20)に押さえられることで伸縮の影響を受けず、高精度に画像転写が可能となる。図1のような構成とすることで、負荷変動による影響は受けるものの、負荷変動と駆動ローラ21間でのトルク不均衡による影響は受けず、画像形成で必要な部分では確実に高剛性ベルト(駆動ベルト20)が弾性ベルト(転写ベルト15)を保持するため、画像形成に必要とされる高精度なベルト搬送駆動を満足させることができる。
【0054】
駆動伝達補助手段である押さえ込みローラ24の位置については、感光体ドラム10からの一次転写位置よりも上流側であり、かつ高剛性ベルト(駆動ベルト20)と対向する位置に設ける必要がある。
【0055】
また、押さえ込みローラ24を一次転写部の下流側にも設ける場合には、一次転写部をベルト回動方向の上流側と下流側から挟むように設けることが望ましい(図1の構成)。
【0056】
押さえ込みローラを一次転写部の上流側にのみ設ける構成では、一次転写ローラが高剛性ベルト(駆動ベルト20)と弾性ベルト(転写ベルト15)を介して、高剛性ベルト(駆動ベルト20)の内側に設けられるため、一次転写時には感光体とこの一次転写ローラとで2つのベルトを挟み込むことになるため、ここでの圧接力によって弾性ベルト(転写ベルト15)は高剛性ベルト(駆動ベルト20)に対してズレることなく駆動伝達される。そして、一次転写時には一次転写ローラにバイアスを印加するため、2つのベルトはここで静電気力によって吸着され、さらに高精度に駆動伝達されることになる。
【0057】
このように、本発明によるベルト駆動装置においては、駆動対象のベルト(転写ベルト、中間転写ベルト)を弾性ベルトとして構成し、その転写ベルト・中間転写ベルトの内側に駆動ベルトを配設し、この駆動ベルトを高剛性ベルトとして構成することで、弾性ベルトである転写ベルト・中間転写ベルトの伸縮変動を低減させ、弾性ベルトである転写ベルト・中間転写ベルトへの駆動トルクの伝達を精度良く行なうことが可能となった。そして、転写ベルト・中間転写ベルトが弾性ベルトであるため、記録材の凹凸に追随して形状を変えるため、トナー像の転写性に優れ、特殊な記録材であってもベルト上のトナー像を全て記録材に転写させることができる。
【0058】
また、弾性ベルトで構成された転写ベルト15に様々な負荷変動が発生しても、一定駆動(安定駆動)したいベルト区間では高剛性ベルトである駆動ベルト20より転写ベルト15に面で駆動力が伝達されるため、ベルト伸縮の変動が発生しない、あるいはその他の部分で発生したベルト伸縮変動の影響を受けずに高精度に転写ベルト15を駆動することができる。また、それにより、高品質な画像形成の実現が可能となった。
【0059】
図2,3は、上記説明した図1のベルト駆動装置を中間転写方式のフルカラー画像形成装置における中間転写ベルトの駆動に適用した例を示す斜視図及び正面図である。
図2,3に示すように、フルカラー画像を形成すべく、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)の各色に対応する感光体ドラム10Y,10M,10C,10Kを転写ベルト(本例では中間転写ベルト)15の一辺に沿って並設させ、タンデム作像部を構成している。転写ベルト15は弾性ベルトで構成され、支持ローラ11,12及び転写対向ローラ13に掛け渡され、図示しないテンション機構により一定のテンションを付加されている。上記タンデム作像部と対向するように、転写ベルト15の上辺の内側に駆動ベルト20が配設され、図示しない付勢機構により駆動ベルト20が転写ベルト15に押し付けられている。駆動ベルト20のループ内には、各色感光体ドラム10(Y,M,C,K)にそれぞれ対応する位置に、一次転写ローラ23(Y,M,C,K)が配置される。また、転写対向ローラ13に対向して転写ベルト15を挟み、二次転写ローラ19が配置される。
【0060】
駆動ベルト20は駆動ローラ21と従動ローラ22とに掛け渡されている。そして、駆動源であるモータ16からギヤ17,18を介して駆動ローラ21を回転駆動し、駆動ベルト20を走行駆動するように構成している。さらに、図1にて説明したように、駆動ベルト20に面で接触する転写ベルト15に駆動力が伝達され、転写ベルト15が走行駆動される。なお、モータ16から直接駆動ローラ21を駆動するような構成も可能である。
【0061】
また、各感光体ドラム10を両側から挟むように、計5本の押さえ込みローラ24a〜24eが設けられている。また、各押さえ込みローラ24に対応して、転写ベルト15と駆動ベルト20を挟んで押さえ込みローラ24に圧接される押さえ込み対向ローラ25が設けられる。駆動ローラ21及び従動ローラ22は、両端に位置する押さえ込みローラ24aと24eに対する押さえ込み対向ローラを兼ねている。押さえ込みローラ24a〜24eは、幅方向両端部における非画像部でベルトに接触するよう、軸方向両端部のローラ径が中央部の径よりも大きくなっている。なお、ベルト回動方向の最上流に位置する押さえ込みローラ24aは、まだ画像が転写ベルト15に転写されない位置にあるため、この押さえ込みローラ24aとして通常の円筒形状のローラを用いることが可能である。
【0062】
本構成においては、転写ベルト15と駆動ベルト20は、押さえ込みローラ24と押さえ込み対向ローラ25(駆動ローラ21及び従動ローラ22を含む)とに挟み込まれた構成となっており、圧接による摩擦力と静電力によって駆動ベルト20の搬送駆動力が転写ベルト15に確実に伝達され、転写ベルト15が走行駆動される。
【0063】
画像形成時には一次転写ローラ23(Y,M,C,K)に転写バイアスが印加されるため、駆動ベルト20から転写ベルト15への搬送駆動力伝達を補助することとなる。また、本例では両端の押さえ込みローラ24aと24eに対する対向ローラは、駆動ローラ21と従動ローラ22が兼用する構成であるが、兼用ではなく、別途押さえ込み対向ローラ25を設けても良い。また、転写ベルト15の必要な駆動精度が確保できるならば、押さえ込みローラ24(及び対応する押さえ込み対向ローラ25)の数を減らす構成としても良い。
【0064】
そして、各色感光体ドラム10(Y,M,C,K)上に形成された各色トナー像が転写ベルト15上に重ね転写されることでフルカラー画像が形成され、転写ベルト15に担持されて搬送される。そのフルカラー画像は、二次転写ローラ19と転写対向ローラ13とが対向する二次転写部において記録材Pに転写される。なお、各色感光体ドラム10(Y,M,C,K)のいずれか1つを用いた単色画像、あるいは任意の複数の感光体ドラム10を用いた多色画像の形成も可能である。
【0065】
このように、本構成においては、弾性ベルトで構成された転写ベルト(中間転写ベルト)15に様々な負荷変動が発生しても、一定駆動(安定駆動)したいベルト区間では高剛性ベルトである駆動ベルト20より転写ベルト15に面で駆動力が伝達されるため、ベルト伸縮の変動が発生しない、あるいはその他の部分で発生したベルト伸縮変動の影響を受けずに高精度に転写ベルト(中間転写ベルト)15を駆動することが可能となった。それにより、色ずれにシビアなフルカラー画像形成装置においても、各色画像を高精度に重ね転写することができ、高品質なフルカラー画像を得ることのできる中間転写方式の画像形成装置の提供が可能となった。
【0066】
図4は、上記説明した図1のベルト駆動装置を直接転写方式のフルカラー画像形成装置における転写ベルト(搬送ベルト)の駆動に適用した例を示す斜視図である。図2,3の中間転写方式の装置と重複する説明は省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0067】
図4にしめすように、感光体ドラム10Y,10M,10C,10Kが転写ベルト(本例では転写搬送ベルト)15の一辺に沿って並設されている。記録材Pは図示しないレジストローラから送出され、転写ベルト15上に吸着された状態で搬送される。転写ベルト15によって搬送される記録材Pに対し、転写手段である転写ローラ23(Y,M,C,K)の作用によって各色感光体ドラム10(Y,M,C,K)上に形成された各色トナー像が順次重ね転写され、記録材P上にフルカラー画像が形成される。なお、各色感光体ドラム10(Y,M,C,K)のいずれか1つを用いた単色画像、あるいは任意の複数の感光体ドラム10を用いた多色画像の形成も可能である。
【0068】
本構成においても、上記説明した中間転写方式の構成と同様の作用効果を奏することが可能であり、弾性ベルトで構成された転写ベルト(転写搬送ベルト)15に様々な負荷変動が発生しても、一定駆動(安定駆動)したいベルト区間では高剛性ベルトである駆動ベルト20より転写ベルト15に面で駆動力が伝達されるため、ベルト伸縮の変動が発生しない、あるいはその他の部分で発生したベルト伸縮変動の影響を受けずに高精度に転写ベルト15を駆動することが可能となった。それにより、色ずれにシビアなフルカラー画像形成装置においても、各色画像を高精度に重ね転写することができ、高品質なフルカラー画像を得ることのできる直接転写方式の画像形成装置の提供が可能となった。
【0069】
ここで、図1の構成からさらに摩擦力(転写ベルト15と駆動ベルト20間の摩擦力)を増加させてベルトの安定駆動を図った2つの変形例を図5,6により説明する。
図5に示す構成においては、ベルト駆動ローラ21と押さえ込みローラ24−2、従動ローラ22と押さえ込みローラ24−1のそれぞれの対が、各ローラの回転中心がベルト移動方向に互いにズレた位置関係で向き合って構成されている。このようにすることで、ローラ間に挟まれるベルト距離が長くなるため、摩擦力を多く発生させることが可能となる。このとき、ベルト駆動ローラ21と押さえ込みローラ24−2、従動ローラ22と押さえ込みローラ24−1それぞれにおいて、互いに対向するローラ位置関係は保持されるため、これらを画像形成の一転写手段として用いることも可能である。
【0070】
図6に示す構成においては、押さえ込みローラ24−1,24−2に高剛性ベルトである押さえ込みベルト26を掛け渡した構成となっている。図2及び図4で説明したように、押さえ込みローラ24は軸方向両端部を大径に構成しているので、その両側の大径部分に押さえ込みベルト26が掛け渡される。このような構成とすることで、転写ベルト15及び駆動ベルト20はローラ部分(駆動ローラ21と従動ローラ22及びそれに対向する押さえ込みローラ24)で挟み込まれるだけでなく、高剛性ベルトである駆動ベルト20及び押さえ込みベルト26とで広い面積で転写ベルト15を挟み、駆動ベルト20を転写ベルト15に対して押し付け、あるいは接触させることが可能となるため、さらに転写ベルト15との摩擦力を増加させることができ、より高精度に転写ベルト15を搬送駆動することが可能となる。
【0071】
次に、駆動伝達補助手段として静電的駆動伝達補助手段を用いた実施例(実施例2)について図7,8を参照して説明する。なお、図1で説明した実施例1と重複する説明は省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0072】
図7は、実施例2の基本構成を示すものである。本構成においては押さえ込みローラ24を備えていない。図7では簡略化のために感光体ドラム10を1つのみ備える構成で説明したが、複数の感光体ドラムを備える構成でも良い。駆動ベルト20の内側には、感光体ドラム10と対向するように転写バイアスローラ23が配置される。通常、一次転写においては感光体ドラム10上に形成されたトナー像を転写ベルト(この例では中間転写ベルト)15へ転写するために静電吸着を利用している。この静電吸着力を、トナー像の転写(吸着)と同様に転写ベルト15と駆動ベルト20の吸着にも用いる(静電的駆動伝達補助手段)ことにより、上記現像されたトナー像を転写しつつ任意の面積で転写ベルト15と駆動ベルト20とを吸着させ、駆動ベルト20を介して転写ベルト15が回転駆動される。
【0073】
本構成例では、感光体ドラムを用いて静電吸着力を発生させる構成としており、静電吸着力を発生させるための専用のバイアスローラ等を別途設けていない。
感光体ドラム10を利用して静電吸着力を得る構成において、ベルトに負荷変動が発生した場合について考察する。例えば転写対向ローラ13と二次転写ローラ19とで構成されるニップ部に記録材が突入するときの変動を想定する。このとき、記録材がニップに突入することで転写ベルト15に一時的にブレーキが掛かり、かつニップ部から下流側(支持ローラ12側)のベルト部分には駆動力が加わっているために転写ベルト15が伸びてしまう。また逆に、ニップ部から上流側(支持ローラ11側)のベルト部分は搬送されるが、ニップ部でブレーキが掛かっているためにベルトが縮もうとする。このベルト伸縮のトリガーによって、ゴムのように伸縮変動が発生してしまう。しかし、高剛性ベルトである駆動ベルト20が接触している区間では、駆動ベルト20から面で転写ベルト15に駆動が伝達されているため、転写ベルト15は伸びることができず、伸縮変動は発生しない。つまり、感光体ドラム10で形成された画像を転写する一次転写部のベルト(転写ベルト15)は高剛性ベルト(駆動ベルト20)に押さえられることで伸縮の影響を受けず、高精度に画像転写が可能となる。
【0074】
図8は、静電的駆動伝達補助手段として専用のバイアスローラを別途設けた構成例である。
図8において、駆動ベルト20の内側に静電吸着ローラ(バイアスローラ)27a,27bが設けられている。この静電吸着ローラ27a,27bは、駆動ベルト20が転写ベルト15と接触して駆動力を伝達する辺(本例では上辺)のベルト裏側(駆動ベルト20の裏側)に接触するように配置されている。
【0075】
負荷変動が生じた場合、転写ベルト15は負荷変動による影響は受けるものの、負荷変動と駆動ローラ(本例ではローラ21)間でのトルク不均衡による影響は受けず、画像形成で必要な部分(感光体ドラム10が配置される部分)では確実に高剛性ベルト(駆動ベルト20)が弾性ベルト(転写ベルト15)を保持するため、画像形成に必要とされる高精度なベルト搬送駆動を満足させることが可能となる。
【0076】
静電吸着ローラ27の位置については、感光体ドラム10からの一次転写位置よりも上流側であり、かつ高剛性ベルト(駆動ベルト20)と対向する位置に設ける必要がある(図8の構成ではローラ27aに相当)。カラー画像を形成する場合、例えば4連タンデム式の装置構成では、全ての感光体で最も上流側(ベルト回動方向)に位置する感光体の一次転写位置よりも上流側に設ける必要があり、モノクロ画像を形成する場合には黒用感光体の一次転写位置よりも上流側に設ける必要がある。もちろん、各感光体に対応して静電吸着ローラ27を設けることも可能である。
【0077】
また、静電吸着ローラ27を一次転写部の下流側にも設ける場合には、一次転写部をベルト回動方向の上流側と下流側から挟むように設けることが望ましい。図8の構成ではローラ27bが一次転写部の下流側に設けたものであり、上流側のローラ27aと下流側のローラ27bで感光体ドラム10と転写ローラ23が対向する一次転写部を両側から挟むように設けている。
【0078】
図示はしないが静電吸着ローラ27を一次転写部の上流側のみに設けた構成であっても、静電吸着ローラ27を設けたことにより、感光体ドラム10と静電吸着ローラ27とで2つのベルトを挟み込むことになるため、ここでの圧接力によって弾性ベルト(転写ベルト15)は高剛性ベルト(駆動ベルト20)に対してズレることなく駆動伝達される。そして、画像の一次転写時には、一次転写ローラ23にバイアスを付与するため、2つのベルトはここで静電気力によって吸着され、さらに高精度に駆動伝達される。
【0079】
このように、静電的駆動伝達補助手段を用いた実施例2では、弾性ベルトで構成された転写ベルト15に様々な負荷変動が発生しても、一定(安定)駆動したいベルト区間では高剛性ベルト(駆動ベルト20)より面で駆動が弾性ベルト(転写ベルト15)に伝達されるため、弾性ベルト伸縮の変動が発生しない、あるいはその他の部分で発生したベルト伸縮変動の影響を受けずに高精度に弾性ベルト(転写ベルト15)を搬送駆動することができる。
【0080】
次に、機械的駆動伝達補助手段(押さえ込みローラ)と静電的駆動伝達補助手段の双方を備える構成(実施例3)について図9を参照して説明する。なお、上記実施例1及び実施例2と重複する説明は省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0081】
図9は、静電吸着ローラ27を一次転写部の上流側及び下流側に設け、さらに押さえ込みローラ24も一次転写部の上流側及び下流側に設けたものである。また、本例では静電吸着ローラ27a,27bに対向するように押さえ込みローラ24a,24bを配置している。本構成では、静電吸着ローラ27による静電的吸着力に加えて、押さえ込みローラ24による圧接力も作用し、より確実高精度に転写ベルト15を搬送駆動することができる。
【0082】
なお、押さえ込みローラ24及び静電吸着ローラ27を配置する位置については、実施例1,2で説明した押さえ込みローラ24、静電吸着ローラ27それぞれの位置と同様の位置に設けることができる。複数の感光体を備える構成の場合も同様である。
【0083】
また、感光体ドラム10から転写ベルト15に画像を転写させるための転写バイアスを印加するバイアスローラ(転写ローラ)を静電吸着ローラとして用いることも可能である。
【0084】
次に、本発明に係るベルト駆動装置を備える画像形成装置について3例を挙げて説明する。
図10は、中間転写方式の4連タンデム型画像形成装置の要部構成を示す模式図である。この装置は、記録材に画像を転写する二次転写部において、記録材が縦方向に搬送される構成例のものである。この図に示すカラー画像形成装置は、タンデム方式を採用してフルカラー画像を形成可能なものであり、装置本体のほぼ中央部に中間転写体である中間転写ベルト315が配設されている。この中間転写ベルト315は支持ローラ311,312,313に張架され、駆動ベルト320によって図中時計回りに走行駆動される。中間転写ベルト315の下部走行辺に沿って、それぞれ感光体ドラム310を含むY,M,C,K各色の作像ユニット309が配置されている。また、支持ローラ311に対向してクリーニングユニット357が配置されている。
【0085】
駆動ベルト320は、駆動ローラ321及び従動ローラ322に張架され、中間転写ベルト315の内側に接触するように配設される。本例では、中間転写ベルト315の下部走行辺に沿って各色作像ユニット309を配置しているため、画像形成に関わる区間である中間転写ベルト315の下部走行辺の内側(感光体と反対側)に駆動ベルト320が設けられる。この駆動ベルト320は、図示しない駆動源により駆動ローラ321を図中時計回りに回転駆動することで同方向に走行駆動され、中間転写ベルト315を摩擦により図中時計回りに走行駆動させる。
【0086】
中間転写ベルト315は弾性ベルトで構成され、駆動ベルト320は高剛性ベルトで構成される。したがって、記録材の種類に関わらず良好な転写を行なえるとともに、中間転写ベルト315の駆動を安定かつ高精度に駆動することができ、特にフルカラー画像における色ズレを防いで高品質な画像を形成することができる。
【0087】
なお、図示の構成では、駆動ベルト320は押さえ込みローラ及び専用の静電吸着ローラを備えておらず、上記説明した図7の構成に相当するものであるが、もちろん、押さえ込みローラ及び/又は専用の静電吸着ローラを備える構成とすることもできる。
【0088】
各色作像ユニット309は扱うトナーの色が異なるのみで構成は同一であり、像担持体としての感光体ドラム310を具備している。この感光体ドラム310の周りには、図示は省略するが帯電手段、現像装置、クリーニング手段等が配置される。さらに各感光体ドラム310に対向するように中間転写ベルト315及び駆動ベルト320の内側に一次転写手段としての転写チャージャ323が設けられている。
【0089】
タンデム作像部の下方には用紙を積載する給紙トレイ351が配設されている。給紙トレイ351の図において左側には給紙トレイに積載された用紙を送り出す給紙ローラ352があり、用紙搬送方向の下流側にはレジストローラ353が設けられている。その上方には、二次転写手段としての転写ローラ319が、転写対向ローラ313に対向して設けられ、二次転写部を形成している。
【0090】
二次転写部の上側には定着装置354が設けられている。本例の定着装置354は定着ローラ及び加圧ローラを有する構成であり、二次転写部にて未定着トナー像が転写された用紙を加熱・加圧することにより定着する。定着装置354の下流には排紙ローラ355が設けられ、装置上部に形成された排紙トレイ356上に定着後の用紙を排出する。なお、このほか、感光体ドラム310に静電潜像を形成させる光書き込み装置(図示せず)が設けられる。
【0091】
上記のように構成されたカラー画像形成装置における画像形成動作について簡単に説明する。
上記感光体ドラム310が図示しない駆動手段によって図中反時計方向に回転駆動され、帯電手段に数kVの高電圧が電源装置から印加され、感光体ドラム310の表面が所定の極性に一様に数百V程度に帯電される。帯電された感光体表面には、光書き込み装置からのレーザ光が照射され、これによって感光体ドラム310表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体ドラム310に露光される画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及び黒の色情報に分解した単色の画像情報である。このように形成された静電潜像に現像装置から各色トナーが付与され、トナー像として可視化される。
【0092】
また、中間転写ベルト315が図中時計回りに走行駆動され、各作像ユニット309において一次転写手段323の作用により感光体ドラム310から中間転写ベルト315に各色トナー像が順次重ね転写される。このようにして中間転写ベルト315はその表面にフルカラーのトナー像を担持する。
【0093】
なお、作像ユニット309のいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2色又は3色の画像を形成したりすることもできる。モノクロプリントの場合は、4個の作像ユニットのうち、図の一番左側のKユニットを用いて画像形成を行う。
【0094】
そして、トナー像を転写した後の感光体ドラム表面に付着する残留トナーは、クリーニング手段によって感光体ドラム表面から除去され、次いでその表面が除電器の作用を受けて表面電位が初期化されて次の画像形成に備える。
【0095】
一方、給紙トレイ351から用紙が給送され、レジストローラ対353によって、中間転写ベルト315上に担持されたトナー像とのタイミングを取って二次転写位置に向けて送出される。本例では二次転写ローラ319には中間転写ベルト表面のトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧(本例では数kV程度)が印加され、これによって中間転写ベルト表面のトナー像が用紙上に一括して転写される。トナー像を転写された用紙は、定着装置354を通過するとき、熱と圧力によってトナー像が用紙に熔融定着される。定着された用紙は、排紙ローラ355により排紙トレイ356に排出される。
【0096】
次に、図11に示す画像形成装置について説明する。
この図に示す画像形成装置は、原稿を走査して読み取り、デジタル化して用紙に複写する、いわゆるデジタルカラー複写機としての機能を有している。また、この画像形成装置は、原稿の画像情報を遠隔地と授受するファクシミリの機能や、コンピュータが扱う画像情報を用紙上に印刷するいわゆるプリンタの機能も有している。
【0097】
図11において、カラー画像形成装置の略中央に画像形成部201が設けられている。この画像形成部201の下方には、多段状の給紙部202が配置されている。この給紙部202の各段には、記録媒体である普通紙や、OHPシート、第2原図などのシート束を積載した給紙装置としての給紙トレイ251が配設されている。格段の給紙トレイ251は個別に本体に対して脱着可能であり、かつ、本体側にはこの脱着を検知するセンサが設けられている。この給紙部202は、必要に応じて別の給紙装置250を増設することができるように構成されている。画像形成部201の図中右側には開閉可能な手差しトレイ240も設けられている。図示のように上部が本体から離れるように移動して開いた状態で、このトレイ240上にシート束を積載可能である。トレイ240上のシート有無を検知するセンサも設けられている。画像形成部201の上方には、原稿を読み取る読み取り部203が配設されている。また、画像形成部201の左側には、画像が形成されたシートを排紙収納するための排紙トレイ256が設けられている。
【0098】
画像形成部201には、4色のトナー像を個別に形成するための各色の作像ユニット209が、無端状の中間転写ベルト215の外周面に対向するように並列に配置されている。各作像ユニット209は、ドラム状の感光体210を備えている(図では黒ユニットの感光体にのみ符号210を付している)。各感光体210の周囲には、感光体の表面に帯電処理を行う帯電装置,感光体の表面に形成された静電潜像を可視化するための現像装置,感光体上の残留トナーを除去回収するクリーニング装置等が配置されている。また、各作像ユニット209の上側には、画像情報を感光体表面にレーザ光で照射する露光装置204が配置されている。
【0099】
上記中間転写ベルト215は、駆動ローラ221と従動ローラ222とに掛け渡された駆動ベルト220によって回転駆動される。上記中間転写ベルト215は弾性ベルトとして構成され、駆動ベルト220は高剛性ベルトで構成される。したがって、記録材の種類に関わらず良好な転写を行なえるとともに、中間転写ベルト315の駆動を安定かつ高精度に駆動することができ、特にフルカラー画像における色ズレを防いで高品質な画像を形成することができる。駆動ベルト220による中間転写ベルト215の駆動については上記各実施例で説明したものを適用可能であるので、説明を省略する。
【0100】
読み取り部203には、コンタクトガラス上に載置された原稿(不図示)の読み取り走査を行うための、原稿照明用光源とミラーよりなる読み取り走行体が往復移動自在に配設されている。この読み取り走行体により走査された画像情報は、レンズ234の後方に設置されているCCD235に画像信号として読み込まれる。この読み込まれた画像信号は、デジタル化され画像処理される。画像処理された信号に基づいて、露光装置204内のレーザダイオードLD(不図示)の発光により、感光体210の表面に静電潜像が形成される。LDからの光信号は、公知のポリゴンミラーやレンズを介して感光体210に至る。読み取り部203の上方には、原稿を自動的にコンタクトガラス上に搬送するための自動原稿搬送装置205が取り付けられている。
中間転写ベルト215の周囲には、中間転写ベルト215上に担持したフルカラートナー像をシートに転写するための転写装置219が配置されている。また、この転写装置219と定着装置254の間を連絡する搬送ベルト260が設けられる。
【0101】
上記のように構成されたこの画像形成装置の作像プロセスについて説明する。
各色作像ユニット209では、周知の電子写真プロセスにより、中間転写ベルト215の回転に合せて、各感光体210上に所定のタイミングで4色のトナー像が形成される。まず、イエロー作像部では、左端の感光体上に形成されたイエロートナー像が中間転写ベルト215に転写される。マゼンタ作像部では、次の感光体上に形成されたマゼンタトナー像がイエロートナー像の上に重ね合わされて中間転写ベルト215に転写される。シアンの作像部では、更に次の感光体上に形成されたシアントナー像がマゼンタトナー像の上に重ね合わされて中間転写ベルト215に転写される。ブラックの作像部では、右端の感光体上に形成されたブラックトナー像がシアントナー像の上に重ね合わされて中間転写ベルト215に転写される。このように、各感光体上に形成された4色のトナー像が順次重ね合わされて転写されることにより、中間転写ベルト215にフルカラートナー像が形成される。
【0102】
一方、中間転写ベルト215上へのフルカラートナー像の画像形成動作に平行して、給紙部202の選択された給紙トレイ251からシートが順次1枚ずつ分離給紙される。すなわち、図示の給紙部202においては、給紙トレイ251に回動可能に支持された底板上にシート束が積載されている。この底板の回動によりシート束の最上位のシートが給紙装置252のピックアップローラに当接可能な位置まで上昇する。この最上位のシートは、ピックアップローラの回転により給紙されて、リバースローラにより1枚に分離される。そして、1枚に分離された最上位のシートは、給紙ローラの回転により、給紙トレイ251から送り出されて、その搬送経路下流側に配置されているレジストローラ253へと搬送される。
【0103】
上述のようにして分離搬送されたシートは、レジストローラ253のニップに突き当たることにより搬送が一時止められて待機される。レジストローラ253は、中間転写ベルト215上に形成されたフルカラートナー像と、シートの先端との位置関係が所定の位置になるよう、タイミングをとって回転を開始するように制御される。このレジストローラ253の回転により、待機されているシートが再び給紙される。これにより、このシートの所定位置に、転写装置219により、中間転写ベルト215上のフルカラートナー像が転写される。
【0104】
このようにしてフルカラートナー像が転写されたシートは、その搬送経路の下流側の定着部254に送り込まれる。この定着部254は、転写装置219により転写されたフルカラートナー像をシート上に定着する。フルカラートナー像が定着されたシートは、排紙ローラ255により排紙収納部256に排紙収納される。
【0105】
なお、シートの両面に画像形成を行う際は、分岐部にてシートを分岐し、両面装置206を経由させることにより、シートの表裏を反転させる。この表裏が反転されたシートは、レジストローラ253のニップに突き当たることで、そのスキューが補正された後、上述の片面への画像形成時と同様にして裏面への画像形成が行われる。
【0106】
次に、図12に示す画像形成装置について説明する。この画像形成装置は、1つの感光体とロータリ現像装置(リボルバ型現像装置)を備えてフルカラー画像の形成が可能に構成されたものである。
【0107】
図12において、装置本体160は、その外装ケース161内の中央よりもやや右寄りに、像担持体としてのドラム状の感光体(感光体ドラム)110を備えている。感光体110の周りには、その上に設置されている帯電器133から矢印の回転方向(反時計方向)へ順に、現像手段としての回転型現像装置134、中間転写ユニット115、クリーニング装置136、除電器137などが配置されている。
【0108】
これらの帯電器133、回転型現像装置134、クリーニング装置136、除電器137の上には、露光手段としての光書き込み装置、例えばレーザ書き込み装置138が設置される。回転型現像装置134は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーをそれぞれ収納した、現像ローラ141を有する現像器140A、140B、140C、140Dを備え、中心軸まわりに回転して各色の現像器140A、140B、140C、140Dを選択的に感光体110の外周に対向する現像可能となる角度位置へ移動させる。
【0109】
中間転写ユニット115は、図13に詳しく示すように、複数の支持ローラ111,112,113,114,116に掛け渡された無端状の弾性ベルトで構成され、感光体ドラム110と対向する辺の内側に配置された駆動ベルト120によって回転駆動される。駆動ベルト120は高剛性ベルトで構成され、駆動ローラ121と従動ローラ122に掛け渡されている。この駆動ローラ121のループ内には、感光体ドラム110と対向する位置に一次転写手段である転写ローラ123が配置される。また、中間転写ベルト115を支持するローラのひとつであるローラ113に対向して、二次転写手段である転写ローラ119が設けられる。
【0110】
高剛性ベルトである駆動ベルト120によって弾性ベルトである中間転写ベルト115を走行駆動させる構成により、記録材の種類に関わらず良好な転写を行なえるとともに、中間転写ベルト115の駆動を安定かつ高精度に駆動することができる。駆動ベルト120による中間転写ベルト115の駆動については上記各実施例で説明したものを適用可能であるので、説明を省略する。
【0111】
レーザ書き込み装置138は、画像読取装置129から図示しない画像処理部を介して各色の画像信号が入力され、各色の画像信号により順次に変調されたレーザ光Lを一様帯電状態の感光体110に照射して感光体110を露光することで感光体110上に静電潜像を形成する。画像読取装置129は装置本体160の上面に設けられた原稿台130上にセットされた原稿Gの画像を色分解して読み取り、電気的な画像信号に変換する。装置本体内の記録媒体搬送経路に沿ってレジストローラ153、二次転写ローラ119、搬送ベルト154、定着装置155、排紙ローラ156が配置されている。
【0112】
装置本体160は給紙装置150上に載置される。給紙装置150内には、複数の給紙カセット151が多段に設けられ、給紙ローラ152のいずれか1つが選択的に駆動されて給紙カセット151のいずれか1つから記録媒体が送り出される。その記録媒体は装置本体160内の用紙搬送路を通ってレジストローラ153に送られる。
【0113】
また、装置本体160の右側には、手差しトレイ158が開閉自在に設けられ、この手差しトレイ158から挿入された記録媒体は手差し給紙路を介して装置本体内の記録媒体搬送路へ搬送される。装置本体160の左側には、図示しない排紙トレイが着脱自在に取り付けられ、排紙ローラ156により排出された記録媒体が排紙トレイへ収容される。
【0114】
このカラー複写機でカラーコピーをとる時には、原稿台130上に原稿Gをセットし、図示しないスタートスイッチを押すと、複写動作が開始される。まず、画像読取装置129が原稿台130上の原稿Gの画像を色分解して読み取る。同時に、給紙装置150内の給紙カセット151から給紙ローラ152で選択的に記録媒体が送り出され、この記録媒体はレジストローラ33に突き当たって止まる。
【0115】
感光体110は反時計方向に回転し、駆動ベルト120の回転で中間転写ベルト115が時計方向へ回転する。感光体110は、回転に伴い、帯電器133により一様に帯電され、画像読取装置129から画像処理部を介してレーザ書込み装置138に加えられる1色目の画像信号で変調されたレーザ光がレーザ書込み装置138から照射されて静電潜像が形成される。
【0116】
この感光体110上の静電潜像は回転型現像装置134の1色目の現像器140Aにより現像されて1色目の画像となり、この感光体110上の1色目の画像は転写装置123により中間転写ベルト115に転写される。感光体110は、1色目の画像の転写後にクリーニング装置136でクリーニングされて残留トナーが除去され、除電器137で除電される。
【0117】
続いて、感光体110は、帯電器133により一様に帯電され、画像読取装置129から画像処理部を介してレーザ書込み装置138に加えられる2色目の画像信号で変調されたレーザ光がレーザ書込み装置138から照射されて静電潜像が形成される。この感光体110上の静電潜像は回転型現像装置134の2色目の現像器140Bにより現像されて2色目の画像となり、この感光体110上の2色目の画像は転写装置123により中間転写ベルト115上に1色目の画像と重ねて転写される。感光体110は、2色目の画像の転写後にクリーニング装置136でクリーニングされて残留トナーが除去され、除電器137で除電される。
【0118】
次に、感光体110は、帯電器133により一様に帯電され、画像読取装置129から画像処理部を介してレーザ書込み装置138に加えられる3色目の画像信号で変調されたレーザ光がレーザ書込み装置138から照射されて静電潜像が形成される。この感光体110上の静電潜像は回転型現像装置134の3色目の現像器140Cにより現像されて3色目の画像となり、この感光体110上の3色目の画像は転写装置123により中間転写ベルト115上に1色目の画像、2色目の画像と重ねて転写される。感光体110は、3色目の画像の転写後にクリーニング装置136でクリーニングされて残留トナーが除去され、除電器137で除電される。
【0119】
さらに、感光体110は、帯電器133により一様に帯電され、画像読取装置129から画像処理部を介してレーザ書込み装置138に加えられる4色目の画像信号で変調されたレーザ光がレーザ書込み装置138から照射されて静電潜像が形成される。この感光体110上の静電潜像は回転型現像装置134の4色目の現像器140Dにより現像されて4色目の画像となり、この感光体110上の4色目の画像が転写装置123により中間転写ベルト115上に1色目の画像、2色目の画像、3色目の画像と重ねて転写されることでフルカラー画像が形成される。感光体110は、4色目の画像の転写後にクリーニング装置136でクリーニングされて残留トナーが除去され、除電器137で除電される。
【0120】
そして、レジストローラ153がタイミングをとって回転して記録媒体が送り出され、この記録媒体は二次転写装置119により中間転写ベルト115上のフルカラー画像が転写される。この記録媒体は、搬送ベルト154で搬送されて定着装置155によりフルカラー画像が定着され、排紙ローラ156により排紙トレイへ排出される。また、中間転写ベルト115はフルカラー画像の転写後にクリーニング装置157でクリーニングされて残留トナーが除去される。
【0121】
以上4色重ね画像を形成する動作について説明したが、3色重ね画像を形成する場合には感光体110上に3つの異なる単色画像が順次に形成されて中間転写ベルト115上に重ねて転写された後に記録媒体に一括して転写され、2色重ね画像を形成する場合には感光体110上に2つの異なる単色画像が順次に形成されて中間転写ベルト115上に重ねて転写された後に記録媒体に一括して転写される。また、単色画像を形成する場合には、感光体110上に1つの単色画像が形成されて中間転写ベルト115上に転写された後に記録媒体に転写される。
【0122】
このようなカラー複写機においては、転写性を良くするために弾性部材を用いたベルトを用いる方が有利であり、かつ、高精度なベルト搬送駆動が望まれる。そこで、本形態では、中間転写ベルト115の駆動が本発明のベルト駆動装置により行われることで、高品質な画像を得ることができる。中間転写ベルト115と同様に、搬送ベルト154を弾性ベルトで構成し、その内部に配設した高剛性ベルトによる駆動ベルトで駆動するように構成しても良い。
【0123】
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、弾性ベルトとして構成する駆動対象のベルト(転写ベルト、中間転写ベルト、搬送ベルト等)の素材及び駆動ベルトの素材は適宜なものを使用可能である。また、駆動対象のベルト及び駆動ベルトを支持するローラ部材の数は任意であり、各ベルトの張設形態も任意である。また、駆動ベルトの駆動源及び駆動方法(駆動伝達の構成)なども任意である。また、各ベルトに対するテンション付与手段の有無も任意である。
【0124】
また、画像形成装置の作像部の構成も任意であり、タンデム式における各色作像ユニットの配置順などは任意である。また、3色のトナーを用いるフルカラー機や、2色のトナーによる多色機、あるいはモノクロ装置にも本発明を適用することができる。もちろん、画像形成装置としては複写機に限らず、プリンタやファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明に係るベルト駆動装置の基本構成例を模式的に示す構成図である。
【図2】そのベルト駆動装置をフルカラー画像形成装置の中間転写部に適用した例を示す斜視図である。
【図3】その正面図である。
【図4】図1のベルト駆動装置を直接転写方式のフルカラー画像形成装置における転写ベルト(搬送ベルト)の駆動に適用した例を示す斜視図である。
【図5】図1のベルト駆動装置の変形例を示す構成図である。
【図6】図1のベルト駆動装置のさらに他の変形例を示す構成図である。
【図7】静電吸着力を用いた第2実施例の基本構成を模式的に示す構成図である。
【図8】専用のバイアスローラを別途設けた構成例を示す図である。
【図9】押さえ込みローラと静電吸着ローラの双方を備える第3実施例を示す構成図である。
【図10】本発明に係るベルト駆動装置を備える中間転写方式の4連タンデム型画像形成装置の要部構成を示す模式図である。
【図11】本発明に係るベルト駆動装置を備えるデジタルカラー複写機の断面構成図である。
【図12】本発明に係るベルト駆動装置を備えるロータリ現像方式のカラー複写機の断面構成図である。
【図13】そのカラー複写機の中間転写ユニットを詳しく示す拡大図である。
【図14】従来のベルト駆動装置におけるベルトの速度変動について説明する図である。
【図15】弾性部と高剛性部からなる2層を一体的に構成した構造のベルトの断面図である。
【図16】弾性ベルトと高剛性ベルトを別々に作成して重ねた構造のベルトの断面図である。
【図17】従来の転写ベルト駆動装置の一例を示す斜視図である。
【図18】ベルトの速度変動により濃度差が生じた画像を示す模式図である。
【符号の説明】
【0126】
10,110,210,310 像担持体(感光体)
15 弾性ベルト(駆動対象のベルト)
20 高剛性ベルト(駆動ベルト)
21 駆動ローラ
23 転写ローラ
24 押さえ込みローラ(駆動伝達補助手段)
25 押さえ込み対向ローラ
26 押さえ込みベルト(駆動伝達補助手段)
27 静電吸着ローラ(駆動伝達補助手段)
115,215,315 中間転写ベルト(弾性ベルト)
119,219,319 二次転写ローラ
120,220,320 駆動ベルト(高剛性ベルト)
121,221,321 駆動ローラ
122,222,322 従動ローラ
151,251,351 給紙トレイ
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の弾性を有する弾性ベルトで構成され像担持体から直接ベルト表面に又はベルト表面に保持した記録材に画像が転写される転写ベルトと、所定の剛性を有する剛性ベルトで構成された駆動ベルトを有し、
前記転写ベルトは複数の非駆動ローラである支持ローラに張架され、前記駆動ベルトは駆動ローラと少なくとも一つの従動ローラとに張架され、
前記駆動ベルトを、前記転写ベルト又は前記転写ベルトが保持する記録材への画像転写部に対向する位置で前記転写ベルトの内側に密着した状態で走行するように配置し、前記駆動ベルトを介して前記転写ベルトを駆動することを特徴とする転写ベルト駆動装置。
【請求項2】
前記駆動ベルトから前記転写ベルトへの駆動伝達を補助する駆動伝達補助手段を有することを特徴とする、請求項1に記載の転写ベルト駆動装置。
【請求項3】
前記駆動伝達補助手段は、前記転写ベルト回動方向における前記像担持体からの画像転写位置の上流側に設けられることを特徴とする、請求項2に記載の転写ベルト駆動装置。
【請求項4】
複数の像担持体からの画像転写が可能に構成され、
前記駆動伝達補助手段は、前記転写ベルト回動方向における最上流側の像担持体からの画像転写位置の上流側に少なくとも設けられることを特徴とする、請求項2に記載の転写ベルト駆動装置。
【請求項5】
モノクロ画像を担持する像担持体からの画像転写及びカラー画像をそれぞれ担持する複数の像担持体からの画像転写が可能に構成され、
前記駆動伝達補助手段は、前記転写ベルト回動方向における前記モノクロ画像を担持する像担持体からの画像転写位置の上流側と、前記カラー画像をそれぞれ担持する複数の像担持体のうちの前記転写ベルト回動方向における最上流側の像担持体からの画像転写位置の上流側とに少なくとも設けられることを特徴とする、請求項2に記載の転写ベルト駆動装置。
【請求項6】
前記駆動伝達補助手段は、前記転写ベルト回動方向における前記像担持体からの画像転写位置の下流側にも設けられることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の転写ベルト駆動装置。
【請求項7】
前記駆動伝達補助手段が、前記転写ベルトの回動に連れ回りして所定の押圧力で前記転写ベルトを押圧する押さえ込みローラであり、前記駆動ベルトと対向する位置に設けられることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか1項に記載の転写ベルト駆動装置。
【請求項8】
前記駆動ベルトの内側に、前記押さえ込みローラと対向して設けられる押さえ込み対向ローラを備えることを特徴とする、請求項7に記載の転写ベルト駆動装置。
【請求項9】
前記押さえ込みローラは、前記転写ベルトを非画像部において押圧することを特徴とする、請求項7又は8に記載の転写ベルト駆動装置。
【請求項10】
前記駆動伝達補助手段が、静電力によって前記転写ベルトと前記駆動ベルトとを吸着させる静電的駆動伝達補助手段であることを特徴とする、請求項2に記載の転写ベルト駆動装置。
【請求項11】
前記駆動伝達補助手段として、前記転写ベルトの回動に連れ回りして所定の押圧力で前記転写ベルトを押圧する押さえ込みローラと、静電力によって前記転写ベルトと前記駆動ベルトとを吸着させる静電的駆動伝達補助手段とを備え、
前記押さえ込みローラが前記駆動ベルトと対向する位置に設けられることを特徴とする、請求項2に記載の転写ベルト駆動装置。
【請求項12】
前記静電的駆動伝達補助手段として、前記駆動ベルトの内側に静電吸着ローラを設けたことを特徴とする、請求項10又は11に記載の転写ベルト駆動装置。
【請求項13】
前記静電的駆動伝達補助手段として、像担持体から前記転写ベルト又は前記転写ベルトが保持する記録材に画像を転写させる転写手段を用いることを特徴とする、請求項10又は11に記載の転写ベルト駆動装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の転写ベルト駆動装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
複数の像担持体を有し、該複数の像担持体から前記転写ベルトに順次各色画像を転写してフルカラー画像の形成が可能な中間転写方式の装置であることを特徴とする、請求項14に記載の画像形成装置。
【請求項16】
複数の像担持体を有し、該複数の像担持体から前記転写ベルトに保持させた記録材に順次各色画像を転写してフルカラー画像の形成が可能な直接転写方式の装置であることを特徴とする、請求項14に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記複数の像担持体を前記駆動ベルト対向する前記転写ベルトの辺上に並設させたタンデム型の装置であることを特徴とする、請求項15又は16に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−72311(P2010−72311A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239308(P2008−239308)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】