説明

輸送手段のパーキングブレーキを自動的に作動させるシステム

【課題】運転者が手動でパーキングブレーキを引かなくても、駐車中の輸送手段が暴走のような走行をすることを防ぐことによって路上の安全を向上させる、信頼される安全システムを提供すること。
【解決手段】本発明のシステム(100)は、トラック等の輸送手段(200)においてパーキングブレーキ(300)を自動的に作動させるシステムであって、パーキングブレーキ(300)と、少なくとも運転席側ドアロック(400)とからなるシステム(100)において、少なくとも運転席側ドアロック(400)が作用位置で施錠されることに反応してパーキングブレーキ(300)を作用位置に適用する手段を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキングブレーキを備えるトラック等の輸送手段のパーキングブレーキを自動的に作動させるシステムに関する。本発明は、例えばトラックやバス、トレーラ、農業車両、建設車両、路上外走行車だけではなく、乗用車や空港車両等のさまざまな種類の輸送手段に適用される。
【背景技術】
【0002】
輸送手段、特に大型車両または重い設備や貨物を輸送する輸送手段に生じる安全上の問題は、輸送手段を停止させる時に運転者が何らかの理由でパーキングブレーキを作用または作動させなかった場合に、輸送手段が損害を与えかねないことである。運転者がパーキングブレーキを作動し忘れるのにはさまざまな理由があるが、例えば、該輸送手段を支えている地面がたとえわずかでも傾斜していると、輸送手段が「暴走」する状況、すなわち輸送手段が停車位置から移動して、人身事故や、該輸送手段周辺の建物や環境等、また該輸送手段に積載されている貨物に損害を引き起こす状況になることがある。
【0003】
特許文献1には、輸送手段のイグニションキーを抜き取ることによって作動する、レバーおよびラッチ式またはソレノイド式のいずれかの点火制御パーキングブレーキインタロックが記載されている。パーキングブレーキを引くことが運転者に制御されるのではなく、イグニションキーの抜き取りに直接左右されることが欠点である。なぜなら、例えば輸送手段をメンテナンスのために移動させる時、イグニションキーの抜き取り後に輸送手段を移動させる必要が時として生じるためである。
【0004】
特許文献2および特許文献3には、輸送手段用自動ブレーキ作動システムにおいて、運転者が短時間の停車中にモータを作動させたままで運転席を離れるという状況が制御システムに利用され、制御システムは、座席とドアセンサとから信号を受けるとともに、座席が空席のままになっており、かつドアが開いている場合に自動的にパーキングブレーキを作動させる輸送手段用自動ブレーキ作動システムが開示されている。このため、該システムは、ドアが閉じたままになっている場合には作用せず、すなわちブレーキが自動的に「引かれる」ためには運転者はドアを開けたままにしておかなければならず、これは、例えば、トラック運転者がトラックを駐車し、何らかの理由でパーキングブレーキを引き忘れて、トラックの運転室内での睡眠や道路脇の食堂での食事といった休憩をとる時などには、うっかり忘れられかねないことであり、すなわち実現しにくいことである。
【0005】
特許文献4の要約書には、モータの作動中にバルブ操作箱の扉が開いたままになっている場合にはパーキングブレーキが作動しない、タンクローリの誤発進防止装置が開示されている。これは、タンクローリの安全性を高めて、タンクが開いたままでは走行することができないようにするが、モータは作動していないが駐車中である輸送手段の前述の問題を解決するものではない。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,624,352号明細書(US5,624,352)
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/221922号明細書(US2003/221922)
【特許文献3】米国特許第4,572,319号明細書(US4,572,319)
【特許文献4】特開2003−095077号公報(JP2003095077)
【発明の開示】
【0007】
従って、本発明の目的は、前述の従来技術のシステムの欠点を有さず、かつ運転者が手動でパーキングブレーキを引かなくても、駐車中の輸送手段が暴走のような走行をすることを防ぐことによって路上の安全を向上させる、信頼される安全システムを提供することである。
【0008】
従って、少なくとも運転席側ドアロックをさらに含む、輸送手段に備えられる冒頭に述べた種類のシステムであって、少なくとも該運転席側ドアロックが作用位置で施錠されることに反応して前記パーキングブレーキを作用位置に適用する手段からなるシステムを提供する。
【0009】
これにより、運転者は、少なくとも輸送手段の運転席側ドアロックが施錠されている限り、輸送手段を駐車する時に、パーキングブレーキを作動させることを思い出す必要はなくなる。本発明により、運転席側ドアロックの手動的な施錠動作がさらにパーキングブレーキの自動的な作動に利用できること、すなわち該手動的動作が2つの別個の機能を同時に誘導できることがわかる。さらにまた、該システムは、パーキングブレーキがオン状態にある時に輸送手段の車輪を効果的に固定することにより、輸送手段のドアの施錠効果を高め、これによって、自動車泥棒が輸送手段を牽引などで運び去ってしまう可能性をさらに低下させることがわかる。その結果、該システムはさらに、改良型の盗難防止装置となることが考えられる。
【0010】
本発明の好適な実施例において、前記システムは、少なくとも前記運転席側ドアロックが作用位置で施錠されていることを示す第1の信号を少なくとも供給する働きをするロック応答手段と;前記第1の信号に基づいてパーキングブレーキを作用位置に作動させて制動力をもたらす保持手段とからなる。これにより、最小限の部品数で、輸送手段が駐車状態のままになっている時はパーキングブレーキが常に適用されているという、より高い安全性を運転者に提供することができる、本発明のシステムが実現される。
【0011】
本発明の他の実施例において、前記システムは、前記第1の信号を前記ロック応答手段から前記保持手段に供給する、アンテナ回路または電線等の通信手段をさらに含む。輸送手段とドアロックとパーキングブレーキシステムとの種類および前記ロック応答手段と前記保持手段との間の距離によって、これらの間に備える適切な通信回線が有利に適宜選択される。
【0012】
本発明のさらに他の実施例において、前記ロック応答手段は、少なくとも前記運転席側ドアロックに隣接し、かつ前記ドアロックと連通して設けられて、少なくとも前記運転席側ドアロックが作用位置で施錠されていることを示す。このため、従来の機械式車両ドアロックと対応するキーとを本発明に利用することができ、運転席側ドアロックの施錠状態または施錠動作の確実な指示が得られる。この時、前記ロック応答手段は、当業者に周知の態様で、例えば電気式または機械式センサ装置として設けられる。従って、本発明の自動パーキングブレーキ作動システムの起動は、車両入口ドアロックの内側においてキーを手動的に回転させるという単一の動作によって行なわれる。
【0013】
本発明のさらにまた他の実施例において、前記システムは、少なくとも前記運転席側ドアロックが作用位置で施錠されていることを示す前記ロック応答手段と通信する、遠隔制御施錠および開錠機構をさらに含む。これは、従来式の遠隔制御施錠および開錠機構、例えばキーリング型押しボタン装置等であってもよく、その場合は、自動パーキングブレーキ作動システムの起動は、該機構を操作するという単一の動作によって行なわれる。
【0014】
本発明のさらにまた他の実施例において、少なくとも前記運転席側ドアロックは、車両中央施錠システムと一体的に、かつ前記ロック応答手段に隣接するとともに該ロック応答手段と連通して設けられる。従って、自動パーキングブレーキ作動システムの起動は、例えば何らかの車内リフタまたは車外キーにより前記中央施錠システムを作動させるという単一の動作によって行なわれる。
【0015】
本発明の他の実施例において、少なくとも前記ロック応答手段は、輸送手段の中央のヒューズに設けられる。従って、これにより、メンテナンスと修理が容易になるとともに、輸送手段の保持手段およびその他のシステムに至る電気通信線へのアクセスが改善する。
【0016】
本発明のさらにまた他の実施例において、前記保持手段は、手動的に操作するパーキングブレーキ起動装置が実際に作動したか否かに関わらず、パーキングブレーキを自動的に作動させる働きをする。このため、パーキングブレーキの自動的な起動は、パーキングブレーキ起動装置を実際に運転者が作動させたか否かとは無関係になり、すなわち本システムは、あらゆる状況において利用可能かつ有効となり、パーキングブレーキは、モータが作動している時も、運転者により手動的に引かれる。さらに、より重要な点として、本発明のシステムは、たとえ運転者がパーキングブレーキ起動装置を手動的に作動させなくても、駐車時にはパーキングブレーキを作動させる。このため、輸送手段の耐用期間中において、本発明の自動システムを作動解除する必要がなくなり、これによって本システムを必要時に利用することができる可能性が高まる。
【0017】
本発明のさらにまた他の実施例において、前記パーキングブレーキは、ブレーキを適用する弁を有する空気圧ラインを含むエアブレーキからなり、前記保持手段は、前記空気圧ラインの空気圧を前記弁によりブレーキアクチュエータに放出することによって前記エアブレーキを作動させる働きをする。これに代わる方法として、前記パーキングブレーキは、液圧ラインと該パーキングブレーキを作用させる弁とを含むハイドロリックブレーキからなり、前記保持手段は、前記液圧ラインの液圧を前記弁によりブレーキアクチュエータに放出することによって前記ハイドロリックブレーキを作用させる働きをする。従って、パーキングブレーキは、従来のパーキングブレーキシステムを少し改良することによって自動的に作動させることができる。例えば、その他の種類のパーキングブレーキシステム用に、対応する種類のパーキングブレーキシステム用の電子的または機械的保持手段またはこれらの何らかの組合せ等のその他の種類の保持手段が考えられることは自明である。さらにまた、これに代わる方法として、例えばソレノイド等を用いて、パーキングブレーキを自動的に起動させるその他の周知のシステムを用いてもよい。
【0018】
本発明の他の実施例において、前記保持手段は、前記パーキングブレーキと一体的に設けられる。このため、該パーキングブレーキシステムを少し改良するだけで、前記第1の信号に反応して該パーキングブレーキから必要とされる制動力を得ることができる。
【0019】
本発明のさらにまた他の実施例において、前記ロック応答手段は、さらに、作動解除入力に反応して第2の信号を供給する働きをし;前記システムは、前記第2の信号に基づいてパーキングブレーキを作動解除する解除手段をさらに備える。このため、該システムは、例えば運転者が発進のために開錠した時や、個人の安全のためにドアを施錠した時等に、自動的に作動解除される。
【0020】
本発明のさらにまた他の実施例において、前記作動解除入力は、少なくとも前記運転席側ドアロックが非作用位置で開錠されることである。従って、該システムは、運転者が運転するために輸送手段に乗り込む時にしばしば生じる、1個以上のドアロックが開錠される場合には、作用しない。
【0021】
本発明のさらに他の実施例において、前記システムは、少なくとも前記運転席側ドアロックが作用位置で施錠されている状態で、手動式パーキングブレーキ起動装置が引かれる場合かつ/または解除される場合は、パーキングブレーキを作動させたままに維持する働きをする。従って、いずれかのドアロックが依然として施錠されている一方でパーキングブレーキ起動装置が引かれる場合は、運転者以外の操作者が輸送手段を盗もうとしているかもしれないことを示すため、この路上安全システムを用いて盗難に対する安全性を高めることができる。これに代わる方法として、該システムは、たとえドアロックが作用位置にある場合でも、このようにパーキングブレーキ起動装置が引かれたり解除されたりすることに反応し、その場合は、従来のパーキングブレーキ起動装置が効果的に作動解除入力をすることは明らかである。
【0022】
本発明のさらに他の実施例において、前記システムは、運転者に前記作動解除入力をさせるスイッチおよび/またはインタフェースをさらに含む。従って、運転者は、該システムを切り替えてパーキングブレーキが作用しない状態にするか否かを制御することができ、これによってシステムの多用性が高まる。運転者による作動解除入力は、好ましくは、コードまたはキーを使用すること、または該スイッチがその他の方法で隠されるか、または保護されることにより、保護される。このため、パーキングブレーキの解除は、運転者の操作によってのみ行なわれ、盗みを企てる人物が行なうことはできなくなり、本システムを盗難防止装置として使用できる可能性が高まる。
【0023】
本発明のさらに他の実施例において、前記システムは、輸送手段のイグニションキーまたはカードが輸送手段のスタータスイッチに入れられると、前記作動解除入力をするスタータスイッチ入力検出装置をさらに含む。従って、作動解除は、運転者が輸送手段のモータを始動させるか否かに左右され、その場合、該装置は、パーキングブレーキが自動的に解除されることを保証する。このことにより、パーキングブレーキが依然として適用されている状態で不注意に走行することによって生じるブレーキシューの摩耗を増大させる可能性が低下する。
【0024】
本発明のさらに他の実施例において、前記システムは、パーキングブレーキが該システムにより自動的に作動することを示す運転者警報手段をさらに含む。従って、運転者は、自動システムが作用しており、さらに他の動作を行なってパーキングブレーキを解除する必要があることを通知される。同じインジケータランプ等の従来のパーキングブレーキ警報手段、またはこれに代わる方法として別途の自動システム警報ランプを用いることができる。これによりまた、パーキングブレーキが依然として適用されている状態で不注意に走行することによって生じるブレーキシューの摩耗を増大させる可能性が低下する。
【0025】
本発明のさらに他の実施例において、運転者警報手段は、視覚、可聴および/または触覚装置である。従って、自動システムがオン状態にあるという効果的な指示が運転者に対して提示され、該装置は、輸送手段にすでに搭載されている装置、例えば、高音量の指示を発する盗難防止装置、あるいはコンピュータ音声またはブザー等のより低音量の装置を含む。
【0026】
本発明のさらに他の実施例において、ロック応答手段と保持手段は一体的に設けられ、前記ロック応答手段は受信アンテナをさらに備えて、前記遠隔制御施錠および開錠機構により発せられる無線信号に反応する。従って、該システムは、既存の輸送手段への簡単な後付け用または別途の車両サブシステムとして適合化される。
【0027】
本発明のさらに他の実施例において、輸送手段は、大型車両、特にトラックである。このため、路上の安全が、例えば貨物を運搬しない、より小型かつ軽量の輸送手段の場合より向上するため、特に有利な効果が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付の概略図を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0029】
以下、図1に示すように、輸送手段がトラック200である場合に関して、本発明のシステムを説明する。しかし、本発明により、本システムは、パーキングブレーキと運転席側ドアロックとを含むあらゆる輸送手段に適用可能であり、従って、図示されている例は、本発明の範囲を制限するものと見なされるべきではないことがわかる。解決しようとする問題からわかるように、バスまたはセミトレーラまたはフルトレーラ式連結車両を牽引する大型トラック等の大型車両の場合は、適正に駐車しなければ実質的な損害を与える危険性があるため、本発明は、こうした輸送手段に特に有利である。
【0030】
一つの好適な実施例において、輸送手段は、トレーラまたはセミトレーラを牽引していることがあるトラックまたはけん引車である。トラックまたはけん引車のパーキングブレーキは、これらのブレーキが空気式である場合は、例えば空気圧を解除することによって適用され、空気圧が供給されると係合解除される。これは、先車軸および/または前車軸にばね荷重式パーキングブレーキを設けることによって行なわれ、該ばねは、空気圧が解除されると作用する。これは、いずれの車両への空気圧が失われても、その車両が完全に制動能力を失って制御不能になることはないことを保証する非常機能である。トラック/けん引車においては、2本の空気ラインがトレーラ車両を制御する。「非常用」または主要給気ラインは、トレーラの空気タンクを加圧するとともに、非常ブレーキを係合解除させ、第2の「常用」ラインがブレーキの適用を制御する。トレーラ車両の非常ブレーキは、1本の車軸上においてばね式ブレーキとして設けられる。
【0031】
本発明により、トラック/けん引車の非常ブレーキも、本発明のパーキングブレーキの自動的な作用または作動により、本発明の意味におけるパーキングブレーキと考えられることがわかる。
【0032】
図1に、本発明の駐車安全システム100を取り付けられたトラック200が示されている。
【0033】
該トラック200は、従来の態様で、操作者、例えば運転者が、手動式パーキングブレーキ起動装置330を作動させると、作用位置で引かれ、または係合させられるとともに、逆に作動させることによって同様に非作用位置において解除されるか、または係合させられる空気式パーキングブレーキ300を含む。これに代わる方法として、該パーキングブレーキ300には、他の種類の従来式パーキングブレーキ、例えば空気圧または油圧伝達制動力を用いる機械式または電子式ブレーキシステムがある。該パーキングブレーキは、トラックに一般に用いられるように、輸送手段の1個以上の車輪または1組の車輪に作用する。油圧式パーキングブレーキは、一般に、中型の輸送手段に用いられ、機械式パーキングブレーキは、一般に小型の輸送手段に用いられる。最近は、電動油圧式パーキングブレーキ等の複合式パーキングブレーキも利用できるようになっている。
【0034】
最新型のトラックは、非常ブレーキシステムとしての役割も果たすばね式パーキングブレーキを備えているものが多い。図2A〜2Cに、ばね式パーキングブレーキの作用が図示されている。トラックが駐車している(空気圧なし)時は、図2Aに示すように、ブレーキチャンバ302の内側の強力ばね301が、プッシュロッド303を移動させることによってブレーキを適用し、該プッシュロッドは、さらに、レバー304(スラックアジャスター)を移動させて、S字形カム305を回転させ、このS字形カムがブレーキパッド306を、該ブレーキパッドがドラム(図示せず)に接触するまで外方に付勢する。エンジンを始動させた後、運転者が、図2Bに示すように、該チャンバの上半分302Aに空気Aを供給して、強力ばね301を圧縮する。より小さいリターンスプリング307がブレーキを解除する。次に、ブレーキペダルが踏み込まれて、給気Aが該チャンバの下半分302Bに供給されると、図2Cに示すように、走行時ブレーキシステムのように作用する。従って、スプリングブレーキは、非常(空気圧損失)事態においてブレーキを「固定」するが、駐車時(モータが作動しないために空気圧がない状態)においても制御状態での適用を可能にする。
【0035】
「手動式パーキングブレーキ起動装置」という用語は、運転者によるパーキングブレーキの作動および/または作動解除に適する、例えば運転者により手動的に操作される引張り/復帰ハンドルからなるあらゆる装置を意味することとするが、一部の国において用いられているように、トラック運転室内に設けられる、運転者による作動および作動解除スイッチまたは押しボタン等の、前記目的のためのあらゆるその他の装置も意味する。
【0036】
さらに、前記輸送手段200は、少なくとも1個の車両ドアロック400、例えば運転室の出入口ドアまたは運転席側ドアに設けられる1個のロックを含む。本発明により、輸送手段のいずれか1個以上のその他の出入口ドアを施錠することが、本発明のシステムに対するパーキングブレーキ作動入力となることがわかるが、好ましくは、運転者は運転席側ドアを最初に施錠することが最も多いため、このドアロックが本発明のシステムの起動装置として選択された。
【0037】
現在利用されている、キーにより遠隔制御または直接制御される電気式または機械式ドアロック等の多くの異なる種類の従来式車両ドアロック400は、本発明とともに用いるのに適しており、これらのドアロックは、車両中央施錠システム440と一体的に設けられ、この車両中央施錠システムは、任意で、車両内への不正侵入時に可聴または視覚信号により周囲に警報を発する車両盗難防止警報装置と、例えばコード入力、キーまたはカード等を用いずにモータが作動することを防ぐ点火ロック装置とをさらに含むか、または該装置と連通する。
【0038】
車両ドアの錠、特に運転席に至るドアまたは運転席側ドアの錠の施錠と開錠は、例えば、車両ドアロックキーを該錠または個別の各出入口ドアロック内において手動で回転させるか、または車両から遠隔的に、車両ロックキーに配設または一体化された作動ボタンを作用させること、例えば駐車時に運転者が車両から離れる時に携帯するイグニションキー用キーリングにボタン装置を具備させた無線技術を用いることにより、従来的に行なわれる。その他の方法、例えば輸送手段の外側に設けられる開閉ボタンを作動させること等、作用または非作用位置においてドアロックを係合させる方法は周知であり、かつ考えられる。
【0039】
好ましくは、システム100は、少なくとも該運転席側ドアロック400が施錠されることに反応して作動入力または第1の信号を供給するロック応答手段110と、前記第1の信号に基づいてパーキングブレーキ300を作動させる保持手段120とからなる。前記ロック応答手段110と前記保持手段とは、異なる方法で連通して、少なくとも前記第1の信号を、例えば無線または電信により送信する。従って、前記ロック応答手段110は、無線の第1の信号を供給するアンテナ回路130Aまたは前記第1の信号を送信する通信線またはこれらの何らかの組合せからなり、これに対応して、前記保持手段120は、それぞれの受信手段、例えば他のアンテナ回路130Bを備える。それぞれ少なくとも前記第1の信号の形態をとるRF、IRまたはその他の電磁波、例えば携帯電話用信号または電子無線ネットワーク用信号を送信および受信するようになっているあらゆる種類のアンテナが用いられ、前記1つまたは複数の信号は、ある特定の周波数または振幅区間内にあるものとして供給されるか、または前記保持手段120により第1の信号として識別される特定の信号の組合せからなるもの、あるいは符号化情報または直接情報を含むものとされる。当業者は、前記ロック応答手段110と保持手段120との間の通信に適切な技術を適用する方法を知っており、この方法は、用途と輸送手段の搭載位置に左右される。
【0040】
便利な点として、ロック応答手段110は、輸送手段の中央配電器および/または計器類および/または車両中央の共通受信器内に配置されるが、正確な位置は、本発明においてはあまり重要ではない。図1において、ロック応答手段110は、運転席側ロック400と連通して、前記運転席側ロックが作用位置において係合すると、ロック応答手段110が前記第1の信号を保持手段120に無線送信するように、中央施錠システム440と一体的に設けられる。図3A〜3Cを参照し、本発明のシステム100のさらに他の実施例を説明する。
【0041】
パーキングブレーキ300用保持手段120は、図1に示すように、係合する車輪のパーキングブレーキシステム内に配置され、このパーキングブレーキシステムは、好適には、図2A〜2Cに示すようなばね式パーキングブレーキとされる。保持手段120は、使用されるパーキングブレーキの種類、すなわち空気式、油圧式、機械式等によって変化するブレーキ作動機構である。前述のように、空気式パーキングブレーキは、空気圧が解除されると、例えばばね式パーキングブレーキを用いることによりブレーキを適用する弁を有する空気圧ラインを含む。同様の態様で、油圧式パーキングブレーキが用いられる場合も弁動作を用いて制動力を作用させることができる。ある好適な実施例においては、前記保持手段120は、例えば弁アクチュエータとして設けられることにより、前記弁を作動させ、それゆえ前記1個以上の車輪に制動力を適用する働きをする。
【0042】
図3A、3Bおよび3Cに、本発明の前記システム100の、3つの異なる例証的な実施例が示されている。
【0043】
図3Aには、ロック応答手段110と保持手段120とからなり、少なくとも運転席側ドアロック400が作用位置まで回転すること、すなわち従来式の車両ドア用キーにより施錠されることの結果として前記パーキングブレーキ300を作動させる、本発明のシステムの実施例が図示されている。該錠が作用位置において係合すると、または、前記ロックが作用位置に到達すると、該ドアロックに隣接して設けられる前記ロック応答手段110は、係合する車輪付近においてパーキングブレーキシステム300と一体的に設けられる保持手段120に対して、波線で示される第1の無線信号を供給する。従って、前記保持手段120は、前記第1の信号に反応して、前記パーキングブレーキ300に制動力を適用する。ロック応答手段110は、輸送手段の中央配電器に、または例えば運転席側ドアロック400を含む少なくとも1個のドアロックと一体的に、または該ドアロックに隣接して、当業者に周知の態様で、例えば電気式または機械式センサ装置として設けられる。
【0044】
図3Bには、ロック応答手段110と保持手段120とからなり、少なくとも運転席側ドアロック400が作用位置まで回転すること、すなわち車両ドア用キーが例えば運転席側ドアロック内において回転することにより輸送手段の中央施錠システム440が作動することに反応して前記パーキングブレーキ300を作動させる、本発明のシステムの実施例が図示されている。ロック応答手段110は、中央施錠システム440と一体的に設けられるとともに、電線(図3Bに実線として図示)によりパーキングブレーキシステム300と一体的に設けられる保持手段120と連通して、保持手段120を動作可能にすることにより前記制動力を適用させる。
【0045】
図3Cには、ロック応答手段110と保持手段120とからなり、輸送手段200の外部において従来式の携帯用のキーリングに適用可能な押しボタン装置等の従来式無線遠隔制御施錠および開錠機構140により、中央施錠システム440が作動すること、すなわち運転席側ドアロック400を含む全てのドアが施錠されることに反応して前記パーキングブレーキ300を作動させる、本発明のシステムの実施例が図示されている。その他の点では、本システムは図3Bのものと同様に構成されている。
【0046】
指示手段および保持手段110、120の間における連通と配置と形態のその他の組合せが、当業者には考えられる。例えば、他の方法として、ロック応答手段110と保持手段120とを一体的に設けてもよく、これによって、例えば該ロック応答手段110にアンテナを取り付け、該手段が既存の遠隔制御ロック機構140により発せられる無線信号に応答することによって、本発明のシステムを既存の輸送手段に後付けすることが容易になる。
【0047】
図1に図示するように、前記ロック応答手段110は、さらに、例えばいずれかの車両ドアロックまたは中央施錠システム440から、前記車両ドアロック400が開錠されると送信される作動解除入力に反応して第2の信号を受信する働きをし;さらに、前記第2の信号に基づいてパーキングブレーキ300を作動解除する解除手段150が設けられる。
【0048】
自動的にパーキングブレーキを作動解除するために、第2の信号が、同じまたは他の通信線により前記ドアロック400の同じロック応答手段110から、例えば遠隔制御施錠機構140のボタンを押すことによって、運転者がトラック200に乗り込む前に前記ドアロックを開錠すると、送信される。この第2の信号は、前記解除手段150に送信されて、パーキングブレーキ300が作動解除または解除される。前記解除手段150は、ブレーキの種類によって、油圧式または空気式ポンプ手段からなり、例えば電源が入ると輸送手段の作動中のモータに接続される。
【0049】
作動解除入力は、ドアロックが施錠されている時にも、例えば運転室内において隠されて設けられる作動解除ボタンを押すこと、または手動式パーキングブレーキ起動装置330を手動で作動または作動解除することによりパーキングブレーキ300を解除すること、またはイグニションキーまたはカードをスタータスイッチに入れることによって供給される。これにより、運転者が乗車して走行準備を整えている際に、ドアが施錠されている場合は、パーキングブレーキの制動力は適用されないことが保証されることになる。これは、例えば、運転者がトラックの中で眠っている時または運転者が出発準備を整えている時に、例えば個人の安全等の何らかの理由のために、走行前に出入口ドアを施錠している場合に該当する。
【0050】
また別の実施例においては、ロック400を含むドアロックが施錠されており、イグニションキーがスタータスイッチに挿入されていない場合は、手動式パーキングブレーキ起動装置330を作動させてもパーキングブレーキ300は作動解除されない。これは、システム100の盗難防止機能の効果を高める。
【0051】
さらに、運転者警報手段160は、運転者または操作者に、自動パーキングブレーキ作動システム100が作動しているという情報、すなわちパーキングブレーキが引かれているという情報を提供する表示装置またはランプ等の指示器を備える。これは、例えば連続音または警報またはその他の運転者警報信号を発する可聴または触覚式運転者警報装置によっても指示される。
【0052】
また他の方法として、制御盤が、ロック応答手段110と連通して設けられて、運転者用のユーザインタフェースを使用可能にして、運転者警報手段160と前記作動解除入力との両方を提供する。この制御盤は、さらに、例えば定期メンテナンスまたは牽引時に、作動解除と同じ動作または早期にパーキングブレーキを作動解除する別途の動作のいずれかで、運転者が暗証番号を入力することにより、例えば前記作動解除の入力を行なってパーキングブレーキを解除することができる英数字キーパッド(図示せず)を含む。
【0053】
前記システム100は、既存の輸送手段に後付けされるか、または車両サブシステムとして提供されるか、または実際に車両中央施錠システムまたはパーキングブレーキシステムと一体的に設けられる。
【0054】
本発明により、本発明の自動パーキングブレーキ作動システム100は、中央施錠システムを補足するものとして、または中央施錠システムと一体的に提供されることがわかり、後者の場合は、前記パーキングブレーキの作用位置での作動は、輸送手段に設けられる2個以上の安全錠または警報のうちの1個を備えているか、または配設された1個の錠のみを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】トラックに取り付けられた本発明のシステムの第1の実施例を示す概観図である。
【図2A】ばね荷重式パーキングブレーキの作用を示す図である。
【図2B】ばね荷重式パーキングブレーキの作用を示す図である。
【図2C】ばね荷重式パーキングブレーキの作用を示す図である。
【図3A】本発明のシステムの第2の実施例を示す図である。
【図3B】本発明のシステムの第3の実施例を示す図である。
【図3C】本発明のシステムの第4の実施例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラック等の輸送手段(200)においてパーキングブレーキ(300)を自動的に作動させるシステムであって、パーキングブレーキ(300)と、少なくとも運転席側ドアロック(400)とからなるシステム(100)において、少なくとも前記運転席側ドアロック(400)が作用位置で施錠されることに反応して前記パーキングブレーキ(300)を作用位置に適用する手段(110、120、130、140)を含むことを特徴とするシステム(100)。
【請求項2】
少なくとも前記運転席側ドアロック(400)が作用位置で施錠されていることを示す第1の信号を少なくとも供給する働きをするロック応答手段(110)と;前記第1の信号に基づいて前記パーキングブレーキ(300)を作用位置に作動させて制動力をもたらす保持手段(120)とからなることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の信号を前記ロック応答手段(110)から前記保持手段(120)に供給する、アンテナ回路(130A、130B)または電線等の通信手段をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ロック応答手段(110)は、少なくとも前記運転席側ドアロック(400)に隣接し、かつ前記ドアロックと連通して設けられて、少なくとも前記運転席側ドアロックが作用位置で施錠されていることを示すことを特徴とする請求項2または3に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも前記運転席側ドアロック(400)が作用位置で施錠されていることを示す前記ロック応答手段(110)と通信する、遠隔制御施錠および開錠機構(140)をさらに含むことを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
少なくとも前記運転席側ドアロック(400)は、車両中央施錠システム(440)と一体的に、かつ前記ロック応答手段(110)に隣接するとともに該ロック応答手段と連通して設けられることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも前記ロック応答手段(110)は、輸送手段の中央配電器に設けられることを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記保持手段(120)は、手動式パーキングブレーキ起動装置(330)が実際に作動したか否かに関わらず、前記パーキングブレーキ(300)を自動的に作動させる働きをすることを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記パーキングブレーキ(300)は、ブレーキを適用する弁を有する空気圧ラインを含むエアブレーキからなり、前記保持手段(120)は、前記空気圧ラインの空気圧を前記弁によりブレーキアクチュエータに放出することによって前記エアブレーキを作用させる働きをすることを特徴とする請求項2ないし8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記パーキングブレーキ(300)は、液圧ラインと前記パーキングブレーキを作用させる弁とを含むハイドロリックブレーキからなり、前記保持手段(120)は、前記液圧ラインの液圧を前記弁によりブレーキアクチュエータに放出することによって前記ハイドロリックブレーキを作用させる働きをすることを特徴とする請求項2ないし8のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記保持手段(120)は、前記パーキングブレーキ(300)と一体的に設けられることを特徴とする請求項2ないし10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記ロック応答手段(110)は、さらに、作動解除入力に反応して第2の信号を供給する働きをし;前記第2の信号に基づいて前記パーキングブレーキ(300)を作動解除する解除手段(150)をさらに備えることを特徴とする請求項2ないし11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
前記作動解除入力は、少なくとも前記運転席側ドアロック(400)が非作用位置で開錠されることであることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
少なくとも前記運転席側ドアロック(400)が作用位置で施錠されている状態で、前記手動式パーキングブレーキ起動装置(330)が引かれる場合かつ/または解除される場合には、パーキングブレーキを作動させたままに維持する働きをすることを特徴とする請求項12または13に記載のシステム。
【請求項15】
運転者に前記作動解除入力をさせるスイッチおよび/またはインタフェースをさらに含むことを特徴とする請求項12ないし14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
輸送手段のイグニションキーまたはカードが輸送手段のスタータスイッチに入れられると、前記作動解除入力をするスタータスイッチ入力検出装置をさらに含むことを特徴とする請求項12ないし15のいずれかに記載のシステム。
【請求項17】
前記パーキングブレーキ(300)がシステムにより自動的に作動することを示す運転者警報手段(160)をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし16のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
前記運転者警報手段(160)は、視覚、可聴および/または触覚装置であることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記ロック応答手段(110)と前記保持手段(120)とは一体的に設けられ、前記ロック応答手段は受信アンテナをさらに備えて、前記遠隔制御施錠および開錠機構(140)により発せられる無線信号に反応することを特徴とする請求項2ないし18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記輸送手段(200)は、大型車両、特にトラックであることを特徴とする請求項1ないし19のいずれかに記載のシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公表番号】特表2009−530156(P2009−530156A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500322(P2009−500322)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000230
【国際公開番号】WO2007/106014
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(500277711)ボルボ ラストバグナー アーベー (163)
【Fターム(参考)】