説明

透明シート

【課題】耐熱性、表面硬度、屈折率、透明性、ガスバリアー性が高く、熱膨張率が低い特性を満足し、熱および紫外線によって硬化し、半硬化状態で成型加工性を有し、その後完全硬化させることができる透明シートの提供。
【解決手段】RSi(ORのチオール基含有アルコキシシランを加水分解、縮合して得られる縮合物(A)、炭素−炭素二重結合を有する化合物(B)、および、イソシアネート基を有する化合物(C)を[{(B)成分中に含まれる二重結合の数}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.1〜0.8、[{(C)成分中に含まれるイソシアネート基の数}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.1〜0.8、[{(B)成分中に含まれる炭素−炭素二重結合の数+(C)成分中のイソシアネート基の数}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.9〜1.1なる割合で含有する樹脂組成物(D)を熱および紫外線で二段階硬化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物を熱および紫外線で二段階硬化させて得られる透明シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの基板には一般にガラス基板が用いられているが、重い、割れやすい、柔軟性・成形加工性に乏しい等の課題がある。ガラス基板に代えてプラスチックを使用することにより、軽量化、耐衝撃性、フレキシブル性向上等をさせることが可能となる。
【0003】
しかしながら、現在のディスプレイは、高い色再現性、高輝度、高コントラスト、画面の均一性等の高い表示品質が要求されるため、ディスプレイ基板としてのプラスチックに対しても、高い光線透過率、平坦性・均一性、無色透明性に優れることが要求される。また、上記ディスプレイの製造工程における薄膜トランジスタ、配向膜、透明電極等の形成工程やパネルを貼り合わせる工程では、150℃以上の温度とする必要があることから、ディスプレイ基板として用いるプラスチックには、高い耐熱性が要求される。耐熱性が充分でない場合は、変色したり、応力や歪みが生じたりして、ディスプレイ基板として要求される光学特性を充分に満たせない。さらに、近年注目されているフレキシブルディスプレイの製造には、高い加工成型性も要求されている。
【0004】
これに対して、本発明者らは、チオール基を有するシルセスキオキサンと炭素−炭素二重結合を有する有機物とをエン−チオール反応させることによって得られる有機・無機ハイブリッド化合物、チオール基を有するシルセスキオキサンとエポキシ基もしくはイソシアネート基を有する化合物とを熱硬化させて得られる有機・無機ハイブリッド化合物を提案した(特許文献1および2参照。)。これらの化合物は、熱又は紫外線で容易に硬化し、高い耐熱性、高い表面硬度、高い屈折率、高い透明性等を有するものであった。しかしながら、充分な平坦性、加工成型性を有するものではなかった。
【0005】
一方、平板金型等の上にガラス繊維を配置し、液状のエポキシ樹脂をガラス繊維上に塗布した後、減圧条件とすることによって、エポキシ樹脂を含浸させ、加熱処理やUV照射を施すことによってエポキシ樹脂を硬化させてガラス繊維を含むエポキシ樹脂基板が提案されている(特許文献3参照。)。このような基板は、耐熱性が高く、熱膨張率が改善するものの、やはり、充分な平坦性、加工成型性を有するものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2007−291313号公報
【特許文献2】特開2007−217673号公報
【特許文献3】特開2004−51960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐熱性、屈折率がなどの諸特性を満足しつつ、熱および紫外線によって容易に硬化し、半硬化状態の中間段階で成型加工性を有し、その後完全硬化させることができる透明シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、チオール基含有アルコキシシラン類の加水分解縮合物、炭素―炭素二重結合を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物を所定の比率で配合した樹脂組成物を熱および紫外線で二段階硬化させることによって上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
一般式(1):
Si(OR (1)
(式中、Rは少なくとも1つのチオール基を有する炭素数1〜8の炭化水素基、又は、少なくとも1つのチオール基を有する芳香族炭化水素基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基を表す。)で示されるチオール基含有アルコキシシラン類(a1)を加水分解および縮合して得られる縮合物(A)(以下、(A)成分という。)、炭素−炭素二重結合を有する化合物(B)(以下、(B)成分という。)、および、イソシアネート基を有する化合物(C)(以下、(C)成分という。)を[{(B)成分中に含まれる二重結合の数}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.1〜0.8、[{(C)成分中に含まれるイソシアネート基の数}/((A)成分中のチオール基の数}]が0.1〜0.8、[{(B)成分中に含まれる炭素−炭素二重結合の数+(C)成分中のイソシアネート基の数}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.9〜1.1なる割合で含有する樹脂組成物(D)(以下、(D)成分という。)を熱および紫外線で二段階硬化させて得られる透明シートである。
また本発明は、上記二段階硬化が樹脂組成物(D)を熱硬化させて半硬化状態とし、成型加工した後、紫外線硬化させるものである透明シートでもある。
また本発明は、上記二段階硬化が樹脂組成物(D)を紫外線硬化させて半硬化状態とし、成型加工した後、熱硬化させるものである透明シートでもある。
また本発明は、透明な支持体上に作製された上記透明シートでもある。
さらに本発明は、上記樹脂組成物(D)をガラスクロスに含浸させたのち、熱および紫外線で二段階硬化させて得られる透明シートでもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐熱性、表面硬度、屈折率、透明性、ガスバリアー性が高く、熱膨張率が低いという諸特性を満足しつつ、熱又は紫外線によって容易に硬化し、半硬化状態の中間段階で成型加工性を有し、その後完全硬化させることができる透明シートを提供できる。本発明の透明シートは、導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、OHPフィルム、カラーフィルター、光ディスク基板、レンズ、プリズムシート、拡散板、バックライト、導波路、電子ペーパー、タッチパネルなどの透明基板などとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いられる(A)成分は、一般式(1):
Si(OR (1)
(式中、Rは少なくとも1つのチオール基を有する炭素数1〜8の炭化水素基、又は少なくとも1つのチオール基を有する芳香族炭化水素基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、又は芳香族炭化水素基を表す。)で示されるチオール基含有アルコキシシラン類(a1)を加水分解および縮合して得られる化合物である。
【0012】
上記チオール基含有アルコキシシラン類(a1)(以下、(a1)成分という)の具体例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,4−ジメルカプト−2−(トリメトキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリエトキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリプロポキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリブトキシシリル)ブタン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリメトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリエトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリプロポキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリブトキシシランなどが挙げられ、該例示化合物はいずれか単独で、又は適宜に組み合わせて使用できる。該例示化合物のうち、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランは、加水分解反応の反応性が高く、かつ入手が容易であるため特に好ましい。
【0013】
また、(a1)成分に加えて、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどのトリアルキルアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのジアルキルジアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン類、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン類、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのテトラアルコキシジルコニウム類などの金属アルコキシド類(a2)(以下、(a2)成分という)を使用しうる。(a2)成分は、いずれか単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、トリアルキルアルコキシシラン類、ジアルキルジアルコキシシラン類、テトラアルコキシシラン類を用いることで、(A)成分の架橋密度を調整することができる。アルキルトリアルコキシシラン類を用いることで、(A)成分中に含まれるチオール基の量を調整することができる。テトラアルコキシチタン類、テトラアルコキシジルコニウム類を用いることで、最終的に得られる透明シートの屈折率を高くすることができる。
【0014】
(a1)成分と(a2)成分を併用する場合は、{(a1)成分に含まれるチオール基のモル数}/{(a1)成分と(a2)成分の合計モル数}(1分子あたりに含まれるチオール基の平均個数を示す)が0.2以上であることが好ましい。0.2未満である場合、得られる(A)成分中に含まれるチオール基の数が少なくなるため、熱硬化性および紫外線硬化性が低下するとともに、透明シートの硬度などの物性についての改善効果も不充分となる傾向がある。また、{(a1)成分と(a2)成分に含まれる各アルコキシ基の合計モル数}/{(a1)成分と(a2)成分の合計モル数}(モル比:1分子あたりに含まれるアルコキシ基の平均個数を示す)が2.5以上3.5以下であることが好ましく、2.7以上3.2以下であることがより好ましい。2.5未満の場合、得られる(A)成分の架橋密度が低く、透明シートの耐熱性が低下する傾向がある。また、3.5を超える場合、(A)成分を製造する際、ゲル化しやすくなる傾向がある。
【0015】
本発明に用いられる(A)成分は、(a1)成分単独やこれに(a2)成分を併用して、それらを加水分解後、縮合させて得ることができる。加水分解反応によって、(a1)成分や(a2)成分に含まれるアルコキシ基が水酸基となり、アルコールが副生する。加水分解反応に必要な水の量は、{加水分解反応に用いる水のモル数}/{(a1)成分と(a2)成分に含まれる各アルコキシ基の合計モル数}(モル比)が0.4以上10以下であればよく、好ましくは0.5以上2以下である。0.4未満の場合、(A)成分中に加水分解されずに残るアルコキシ基があるため好ましくない。また、10を超える場合、後に行う縮合反応(脱水反応)の際に除くべき水の量が多くなるため製造時間が長くなり、経済的に不利である。
【0016】
また、(a2)成分としてテトラアルコキシチタン類、テトラアルコキシジルコニウム類等、特に加水分解性および縮合反応性の高い金属アルコキシド類を併用する場合には、急速に加水分解および縮合反応が進行し、系がゲル化してしまう場合がある。この場合、(a1)成分の加水分解反応を終了させ、実質的にすべての水が消費された状態にした後、該(a2)成分を添加することによって、ゲル化を避けることができる。
【0017】
加水分解反応に用いる触媒としては、特に限定はされず、従来公知の加水分解触媒を任意に用いることができる。これらのうちギ酸は、触媒活性が高く、また引き続く縮合反応の触媒としても機能するので好ましい。ギ酸の添加量は、(a1)成分および(a2)成分の合計100重量部に対して、0.1〜25重量部であることが好ましく、1〜10重量部であることがより好ましい。25重量部よりも多いと、得られる(D)成分の安定性が低下する傾向があり、また後工程でギ酸を除去できるとしても該除去量が多くなる傾向がある。一方、0.1重量部よりも少ないと、実質的に反応が進行しない、又は反応時間が長くなるなどの傾向がある。反応温度、時間は、(a1)成分や(a2)成分の反応性に応じて任意に設定できるが、通常0〜100℃程度、好ましくは20〜60℃、1分〜2時間程度である。該加水分解反応は、溶剤の存在下又は不存在下に行うことができる。溶剤の種類は特に限定されず、任意の溶剤を1種類以上選択して用いることができるが、後述の縮合反応に用いる溶剤と同一のものを用いることが好ましい。(a1)成分や(a2)成分の反応性が低い場合は、無溶剤で行うことが好ましい。
【0018】
上記方法で加水分解反応を行うが、{加水分解されてできた水酸基のモル数}/{(a1)成分と(a2)成分に含まれる各アルコキシ基の合計モル数}(モル比)が0.5以上になるように進行させることが好ましく、0.8以上に調整することがさらに好ましい。
【0019】
上記縮合反応においては、前記の水酸基間で水が副生し、また水酸基とアルコキシ基間ではアルコールが副生して、シロキサン結合を生じる。縮合反応には、従来公知の脱水縮合触媒を任意に用いることができる。前記のように、ギ酸は触媒活性が高く、加水分解反応の触媒と共用できるため好ましい。反応温度、時間は(a1)成分や(a2)成分の反応性に応じてそれぞれ任意に設定できるが、通常は40〜150℃程度、好ましくは60〜100℃、30分〜12時間程度である。
【0020】
上記方法で縮合反応を行うが、{未反応の水酸基および未反応のアルコキシ基の合計モル数}/{(a1)成分や(a2)成分に含まれる各アルコキシ基の合計モル数}(モル比)が0.3以下になるように進行させることが好ましく、0.2以下に調整することがさらに好ましい。0.3を超える場合、未反応の水酸基およびアルコキシ基が(D)成分の保管中に縮合反応してゲル化したり、硬化後に縮合反応し揮発分が発生してクラックが発生するなど、透明シートの性能を損なう傾向があるため好ましくない。
【0021】
当該縮合反応は、(a1)成分((a2)成分を併用する場合は両者)の濃度が2〜80重量%程度になるように溶剤希釈して行うことが好ましく、15〜60重量%であることがより好ましい。縮合反応によって生成する水およびアルコールの沸点より高い沸点を有する溶剤を用いると、反応系中よりこれらを留去することができるため好ましい。該濃度が2重量%未満である場合は、得られる(D)成分に含まれる(A)成分が少なくなるため好ましくない。80重量%を超える場合は、反応中にゲル化したり、生成する(A)成分の分子量が大きくなり過ぎ、得られる(D)成分の保存安定性が悪くなる傾向がある。溶剤としては、任意の溶剤を1種類以上選択して用いることができる。縮合反応によって生成する水およびアルコールより高い沸点を有する溶剤を用いれば、反応系中よりこれらを留去することができるため好ましい。また、(B)成分も溶剤の一部として用いることができる。
【0022】
当該縮合反応の終了後、用いた触媒を除去すると、最終的に得られる(D)成分の安定性が向上するため好ましい。除去方法は、用いた触媒に応じて公知各種の方法から適宜に選択できる。例えば、ギ酸を用いた場合は、縮合反応の終了後、該沸点以上に加熱する、減圧するなどの方法により容易に除去でき、この点からもギ酸の使用が好ましい。
【0023】
上記(B)成分の炭素‐炭素二重結合は、炭素−炭素二重結合を有する官能基とチオール基との反応より優先して、炭素−炭素二重結合を有する官能基同士が重合する不都合が起こらないよう、ラジカル重合性が低いものを用いることが好ましい。このような(B)成分として、アリル基を1つ以上有する化合物が挙げられる。アリル基を1つ含有する化合物としては、ケイ皮酸、モノアリルシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、ビスフェノールAモノアリルエーテル、ビスフェノールFモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテルなどが挙げられる。アリル基を2つ含有する化合物としては、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールFジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、トリプロピレングリコールジアリルエーテルなどが挙げられる。アリル基を3つ以上含有する化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテルなどが挙げられる。これらの化合物は、いずれか単独で、又は組み合わせて使用できる。これらの中で、分子中に1つの炭素‐炭素二重結合のみを有する化合物では分子間の架橋が起こらないため、透明シートの耐熱性、表面硬度等の物性についての改善効果も不充分となる傾向があることから、分子中に2以上の炭素‐炭素二重結合を有する化合物が好ましく、中でもトリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが特に好ましい。
【0024】
また、(B)成分として、上記アリル基を有する化合物よりも高分子量のものを用いることもできる。(B)成分として高分子量のものを用いた成分(D)は、得られる硬化物の可撓性が向上する傾向がある。また、一般にラジカル重合性が低くなる傾向があり、このような視点からも好ましく用いることができる。該高分子量物としては、メチルアリルシロキサンとジメチルシロキサンとからなる共重合物、エピクロルヒドリンとアリルグリシジルエーテルとからなる共重合物(ダイソー(株):商品名「エピクロマー」、日本ゼオン(株):商品名「Gechron」など)、アリル基末端ポリイソブチレンポリマー((株)カネカ:商品名「エピオン」)、ウレタンアクリレート(荒川化学工業(株)製:商品名「ビームセット550B」)などが挙げられる。これらの化合物は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
また、本発明で用いられる(C)成分は、特に限定されず、従来公知のイソシアネート基を有する化合物を適宜に用いることができる。該ジイソシアネート化合物としては、たとえば芳香族、脂肪族又は脂環族の各種公知のジイソシアネート類を使用することができ、より具体的には、たとえば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートなどが挙げられる。これらの化合物は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。該例示化合物のうち、イソホロンジイソシアネートは、最終的に得られる透明シートが無色透明性、耐熱性等に優れ、かつ入手が容易であるため特に好ましい。
【0026】
また、(C)成分として、前記化合物よりも高分子量のものを用いることができる。高分子量のものを用いてなる(D)成分によれば、得られる透明シートの可撓性が向上する傾向がある。該高分子量物としては、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオールなどのポリオール類のジイソシアネート変性物、ポリメリックMDI(三井武田ケミカル(株):商品名「コスモネートM」など)、ポリイソシアヌレートタイプのHDI(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「コロネートHX」など)などが挙げられる。これらの化合物は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。該例示化合物のうち、ポリイソシアヌレートタイプのHDIは、最終的に得られる透明シートが無色透明性、耐熱性等に優れ、かつ入手が容易であるため特に好ましい。
【0027】
また、高分子量物としてメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製:商品名「カレンズMOI」)、アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製:商品名「カレンズAOI」)など、1分子中に2重結合とイソシアネート基が同時に存在する化合物を用いることもできる。このような化合物を用いた際には、(B)、(C)成分を同時に含有するものとみなすことができ、分子中に含まれる2重結合の数およびイソシアネート基の数を考慮のうえ使用量を決定する必要がある。
【0028】
また、(C)成分を用いる場合には従来公知のウレタン化触媒を用いることができる。例えば、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸スズなどの有機スズ化合物、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン類などをあげることができる。ウレタン化触媒は(D)成分100重量部に対し、0.01〜5重量部の割合で使用することが好ましい。
【0029】
上記(D)成分における有効(A)成分、(B)成分および(C)成分の濃度は、用途に応じて適宜に決定でき、必要に応じて溶剤を配合することができる。溶剤としては、当該成分と非反応性であればよく、各種従来公知のものを適宜選択して用いることができる。(D)成分をコーティングして用いる場合は、溶剤で希釈し、所望の粘度とすればよい。また、(D)成分を1mm以上の厚膜に硬化させる場合は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計濃度を(D)成分中90重量%以上にすることが好ましく、95重量%以上にすることがより好ましい。該合計濃度は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の濃度と(D)成分の仕込み時に加えた溶剤の量により計算で求めることができ、また(D)成分に含まれる溶剤の沸点以上で2時間程度加熱し、加熱前後の重量変化により求めることもできる。(D)成分を1mm以上の厚膜に硬化させる場合は、90重量%未満の場合、硬化、成型時に発泡したり、透明シート中に溶剤が残存したりして、透明シートの物性が低下する傾向がある。なお、(A)成分を合成する際に溶剤を必須使用しているため、該用途に用いる際には、反応終了後、不揮発分含有量が90重量%以上となるよう溶剤を揮発させておけばよい。また、(D)成分を調製した後、用いた溶剤を揮発させて、有効な(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計濃度を高めることもできる。
【0030】
上記(D)成分は、(A)成分、(B)成分および(C)成分を含有するものである。(D)成分中に含有される各成分は、[{(B)成分中に含まれる二重結合の数}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.1〜0.8、[{(C)成分中のイソシアネート基の数}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.1〜0.8、[{(B)成分中に含まれる二重結合の数+(C)成分中に含まれる二重結合の数}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.9〜1.1なる割合で含有する。
[{(B)成分中に含まれる二重結合の数+(C)成分中に含まれるイソシアネート基の数)}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.9未満の場合には、チオール基が残存し、その分解によって悪臭を発生させる場合がある。1.1以上の場合には、硬化後に炭素−炭素二重結合やイソシアネート基が残存し、耐候性が低下する傾向がある。
[{(B)成分中に含まれる二重結合の数}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.8を超えると、紫外線硬化を第一段階とする場合には硬化が進行しすぎ、熱硬化を第一段階とする場合には半硬化物中に未反応の(B)成分が多くなりすぎるため、いずれも成型加工性が失われる場合がある。また、0.1未満の場合は、必然的に成分(C)を[{(C)成分中のイソシアネート基の数}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.8を超えて含むこととなり、紫外線硬化を第一段階とする場合には半硬化物中に未反応の(C)成分が多くなりすぎるため、熱硬化を第一段階とする場合には硬化が進行しすぎ、いずれも成型加工性が失われる場合がある。
{(C)成分中のイソシアネート基の数}/{(A)成分中のチオール基の数)}が0.8を超えると、紫外線硬化を第一段階とする場合には半硬化物中に未反応の(C)成分が多くなりすぎるため、熱硬化を第一段階とする場合には硬化が進行しすぎ、いずれも成形加工性が失われる場合がある。また、0.1未満の場合は、必然的に成分(B)を[{(B)成分中の二重結合の数}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.8を超えて含むこととなり、紫外線硬化を第一段階とする場合には硬化が進行しすぎ、熱硬化を第一段階とする場合には半硬化物中に未反応の(B)成分が多くなりすぎるため、いずれも成形加工性が失われる場合がある。
【0031】
また、(D)成分には、用途に応じ、上記(a1)成分および/又はその加水分解物(以下、併せて(E)成分という)を配合できる。(E)成分は、(A)成分の合成に際して用いた(a1)成分をそのままで用いるか、その加水分解物を用いるか、これらを組み合わせて使用できる。(E)成分を含有する(D)成分を二段階硬化して得られる透明シートをガラス、金属等の無機基材に対するコーティング剤として用いると、密着性をより向上できる利点がある。(E)成分の配合量は、(D)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部程度であることが好ましい。0.1重量部未満の場合は、透明シートの無機基材に対する密着性向上効果が不充分となる傾向がある。また、20重量部を超える場合、(E)成分が加水分解、縮合反応する際の揮発分が多くなるため、(D)成分が硬化時に発泡したり、反りやクラックが発生したり、得られる透明シートが脆くなったりする傾向がある。このような(E)成分としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが、密着性向上効果の点で特に好ましい。
【0032】
また、(D)成分には、用途に応じ、上記(a2)成分である金属アルコキシド類および/又はその加水分解物[以下、併せて(F)成分という]を配合できる。(F)成分は、(A)成分の合成に際して用いた金属アルコキシド類をそのままで用いるか、その加水分解物を用いるか、これらを組み合わせて使用できる。(F)成分を含有する(D)成分を用いることで、得られる透明シートの屈折率を調整することができる。透明シートを高屈折率のコーティング剤として用いる場合には、(F)成分としてアルコキシチタン類、アルコキシジルコニウム類が好適である。(F)成分の配合量は、(D)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部程度であることが好ましい。0.1重量部に満たない場合には、屈折率向上効果が不充分となる傾向がある。また、20重量部を超える場合は、(F)成分が加水分解、縮合反応する際の揮発分が多くなるため、(D)成分が硬化時に発泡したり、反りやクラックが発生したり、得られる透明シートが脆くなったりする傾向がある。
【0033】
さらに、(D)成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種用途での必要性に応じて、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、フィラー等を配合してもよい。
【0034】
本発明の透明シートは、(D)成分を容器もしくは平板など、好ましくはテフロン(登録商標)コーティングなど離型処理を施した容器に流し込み、加熱して溶剤乾燥の後、熱および紫外線で二段階硬化させることにより得られる。二段階硬化を行う方法としては、一段階目で熱硬化を行った後、二段階目で紫外線硬化を行う方法、一段階目で紫外線硬化を行い、二段階目で熱硬化を行う方法が挙げられる。
【0035】
上記二段階硬化は、(D)成分を熱硬化させて半硬化状態とし、成型加工した後、紫外線硬化させるものであることが好ましい。半硬化状態とは、(D)成分を熱により(A)成分と(C)成分とのみを反応させた状態を意味し、具体的には、成型加工を行う温度でのその弾性率が10〜10Paである状態を意味する。このような硬化途中の半硬化状態は、充分に硬化していないため、種々の成型加工が可能である。成型加工の方法としては、例えば、平板に(D)成分をコーティングした後、熱硬化により半硬化状態とし、平板から(D)成分が流れないようにしつつ平板を曲げ、曲げた状態のまま紫外線により完全硬化させることにより、曲面に密着した透明シートを作製する方法が挙げられる。熱による一段階目の硬化温度および加熱時間は、使用した(A)成分、(B)成分及び(C)成分の種類、および溶剤の種類、透明シートの厚みなどを考慮して、適宜決定するが、通常は20〜150℃程度で1分〜24時間程度の条件とするのが好ましい。また、成型加工後、二段階目の紫外線による硬化においては、紫外線を1分〜6時間程度照射することにより、(A)成分と(B)成分とを反応させ、硬化を完全に進行させる。
【0036】
上記二段階硬化は、(D)成分を紫外線硬化させて半硬化状態とし、成型加工した後、熱硬化させるものであることが好ましい。半硬化状態とは、(D)成分を熱により(A)成分と(B)成分とのみを反応させた状態を意味し、具体的には、成型加工を行う温度でのその弾性率が10〜10Paである状態を意味する。このような硬化途中の半硬化状態は、充分に硬化していないため、種々の成型加工が可能である。成型加工の方法としては、例えば、平板に(D)成分をコーティングした後、紫外線硬化により半硬化状態とし、平板から(D)成分が流れないようにしつつ平板を曲げ、曲げた状態のまま熱により完全硬化させることにより、曲面に密着した透明シートを作製する方法が挙げられる。(D)成分に溶剤を用いた場合、紫外線照射前に溶剤を乾燥させ、実質的に無溶剤として用いることが好ましい。紫外線による一段階目の硬化時間は、使用した(A)成分、(B)成分及び(C)成分の種類、および溶剤の種類、透明シートの厚みなどを考慮して、適宜決定するが、通常は1時間程度の条件とするのが好ましい。また、成型加工後、二段階目の熱による硬化においては、硬化温度および加熱時間は、使用した(B)成分又は(C)成分の種類、および溶剤の種類、透明シートの厚みなどを考慮して、適宜決定するが、通常は20〜150℃程度で1分〜24時間ことにより、残存溶剤を完全に除くとともに硬化反応をさらに進行させる。
【0037】
本発明の透明シートは、透明な支持体上に作製されたものであることが好ましい。(D)成分を所望の透明な支持体上に作製し、熱又は紫外線により二段階硬化をさせることで透明な支持体上に作製された透明シートを得ることができる。(D)成分の透明な支持体上への作製方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0038】
上記透明な支持体としては、ガラス、鉄、アルミ、銅、ITO等の無機基材、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリスチレン樹脂(PSt)、ポリカーボネート樹脂(PC)、アクリロニトリル−ブチレン−スチレン樹脂(ABS)等の有機基材など、各種公知のものを適宜に選択使用できる。無機基材へコーティングする際、密着性が不足する場合には、前述のように(E)成分を併用することが好ましい。また有機基材へコーティングする際、密着性が不足する場合には、前述のように(D)成分を併用することが好ましい。また、(D)成分を溶剤希釈することで、粘度が低くなり、塗りやすい等のコーティング性を向上させることもできる。上述のような(D)成分をコーティングし、二段階硬化させることで、導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、OHPフィルム、光ファイバー、カラーフィルター、光ディスク基板、レンズ、液晶セル用プラスチック基板、プリズム等にコーティング層としての透明シートを形成させることができる。
【0039】
また、透明シートの屈折率が基材より高い場合には、反射防止効果を付与することができる。(A)成分の製造に際して、(a2)成分を(a1)成分と併用したり、前述のように(F)成分として該金属アルコキシド類を含む(D)成分を二段階硬化することにより得られる透明シートの屈折率を向上させることができる。そのため、導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、OHPフィルム、光ファイバー、カラーフィルター、光ディスク基板、レンズ、液晶セル用プラスチック基板、プリズムに対して適用されるコーティング層に反射防止効果を付与したい場合には、(D)成分に当該成分を適量添加しておくことが好ましい。
【0040】
(透明基板への適用)
(D)成分をガラスクロス(基材)に含浸させたのち、熱および紫外線で二段階硬化させて得られる透明シートも本発明の一つである。このような透明シートは基材と密着した透明基板として用いることができる。
【0041】
上記ガラスクロスとしては各種公知のものを適宜に選択使用できる。ガラスクロスとしては、各種公知のガラス繊維(Eガラス、Cガラス、Tガラス、ECRガラスなどから構成されるストランド、ヤーン、ロービングなど)から得られる各種の布帛が使用できるが、Eガラスから作られるガラスクロスが安価であり、入手性に優れるため特に好ましい。
【0042】
上記(D)成分をガラスクロスに含浸させる方法については、特に限定はされず、各種公知の方法を採用でき、またコーティング法を採用してもよい。また、得られる透明基板を無色透明とするためには、(D)成分から得られる透明シートとガラスクロスとの屈折率の差を0.02以内にすることが好ましく、0.01以内にすることがより好ましく、同一にすることがさらに好ましい。また、(D)成分を溶剤希釈することで、ガラスクロスへの含浸性をより向上させることもできる。なお、ガラスクロスに対する(D)成分の使用割合は、得られる透明基板の用途に応じて適宜に決定でき、通常はガラスクロス100重量部あたり20〜500重量部程度とされる。また得られる透明基板の厚みも、該用途に応じて適宜に決定でき、通常は20μm〜1mmとされる。上述のような(D)成分をガラスクロスに含浸させ、熱および紫外線により二段階硬化させることで得られる透明基板は、透明性、耐熱性に優れ、熱膨張率が低く、ガスバリア性が高いため、導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、カラーフィルター、光ディスク基板、液晶セル用プラスチック基板、フレキシブルティスプレイ用基板等にコーティング層を作製するのに好適である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、各例中、部および%は特記しない限り重量基準である。
【0044】
製造例1(縮合物(A−1)の製造)
攪拌機、冷却管、分水器、温度計、窒素吹き込み口を備えた反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製:商品名「KBM−803」)3400部、イオン交換水936部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸68部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大35℃温度上昇した。反応後、トルエン5670部を仕込み、加熱した。71℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールと、トルエンの一部が留去され始めた。2時間かけて75℃まで昇温し、縮合反応させて水を留去した。さらに1時間、75℃で反応させた後、70℃−200hPaで減圧して、残存するトルエンの一部、メタノール、水、ギ酸を留去した。さらに70℃−7hPaで減圧してトルエンを留去することで、縮合物(A−1)を2330部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)は0.12、濃度は99.0%であった。また縮合物(A−1)のチオール基の濃度は、7.41ミリモル/gであった。
【0045】
製造例2(縮合物(A−2)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン4610部、メチルトリメトキシシラン(多摩化学(株)製:商品名「メチルトリメトキシシラン」)2240部([成分(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=0.63、[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=3)、イオン交換水2160部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸136部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大37℃温度上昇した。反応後、トルエン11400部を仕込み、加熱した。72℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールとトルエンの一部が留去され始めた。1時間かけて75℃まで昇温し、縮合反応させて水を留去した。さらに1時間、75℃で反応させた後、70℃−200hPaで減圧して、残存するトルエンの一部、メタノール、水、ギ酸を留去した。さらに70℃−7hPaで減圧してトルエンを留去することで、縮合物(A−2)を4310部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)は0.10、濃度は99.2%であった。また縮合物(A−2)のチオール基の濃度は、5.43ミリモル/gであった。
【0046】
製造例3(縮合物(A−3)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン4700部、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製:商品名「KBM−103」)2370部([成分(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=0.67、[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=3)、イオン交換水1940部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸140部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大40℃温度上昇した。反応後、トルエン11800部を仕込み、加熱した。71℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールとトルエンの一部が留去され始めた。1時間かけて75℃まで昇温し、縮合反応させて水を留去した。さらに1時間、75℃で反応させた後、70℃−200hPaで減圧して、残存するトルエンの一部、メタノール、水、ギ酸を留去した。さらに70℃−7hPaで減圧してトルエンを留去することで、縮合物(A−3)を4950部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)は0.10、濃度は98.5%であった。また、縮合物(A−3)のチオール基の濃度は、4.83ミリモル/gであった。
【0047】
配合例1〜6(熱−紫外線二段階硬化性組成物の製造)
製造例1で得られた縮合物(A−1)39.4部に対し、(B)成分としてトリアリルイソシアヌレート(以下TAIC、日本化成(株)製:商品名「TAIC」、炭素‐炭素二重結合の濃度は12.0ミリモル/g)18.9部([(B)成分に含まれる炭素‐炭素二重結合のモル数]/[(A)成分に含まれるチオール基のモル数](モル比)=0.70)、(C)成分として多官能イソシアネート(以下コロネートHX、日本ポリウレタン(株)製:商品名「コロネートHX」、イソシアネート基の濃度は、5.00ミリモル/g)11.8部([(C)成分に含まれるイソシアネート基のモル数]/[(A)成分に含まれるチオール基のモル数](モル比)=0.28)(([(B)成分に含まれる炭素‐炭素二重結合のモル数]+[(C)成分に含まれるイソシアネート基のモル数])/[(A)成分に含まれるチオール基のモル数](モル比)=0.98)、熱硬化用触媒としてジブチルスズジラウレート(以下U−100,日東化成(株):商品名「ネオスタンU−100」)0.14部、光硬化用触媒としてヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(以下Irg184、チバ・ジャパン(株):商品名「イルガキュア184」)0.14部、希釈溶剤としてエチレングリコールジメチルエーテル(以下DMG、日本乳化剤(株):商品名「DMG」)29.6部を配し、熱−紫外線二段階硬化性組成物(D−1)とした。同様に、製造例1〜3で得られた縮合物(A−1〜3)を用い、表1及び表2に従って熱−紫外線二段階硬化性組成物(D−2〜6)とした。表1中、BS−550B:多官能ウレタンアクリレート(荒川化学工業(株)製:商品名「ビームセット550B」、炭素‐炭素二重結合の濃度は2.25ミリモル/g)、IPDI:イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン(株)製:商品名「デスモジュールI」、イソシアネート基の濃度は9.01ミリモル/g)である。
【0048】
配合例7(熱−紫外線二段階硬化性組成物の製造)
縮合物(A)に代わって、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(以下TMMP、堺化学工業(株)製:商品名「TMMP」、チオール基の濃度は7.52ミリモル/g)を用い、TMMP 37.4部に対し、(B)成分としてTAIC 16.2部([(B)成分に含まれる炭素‐炭素二重結合のモル数]/[(A)成分に含まれるチオール基のモル数](モル比)=0.60)、(C)成分としてコロネートHX 16.1部([(C)成分に含まれるイソシアネート基のモル数]/[(A)成分に含まれるチオール基のモル数](モル比)=0.38)(([(B)成分に含まれる炭素‐炭素二重結合のモル数]+[(C)成分に含まれるイソシアネート基のモル数])/[(A)成分に含まれるチオール基のモル数](モル比)=0.98)、熱硬化用触媒としてU−100 0.14部、光硬化用触媒としてIrg184 0.14部、希釈溶剤としてDMG 30.0部を配し、熱−紫外線二段階硬化性組成物(d−1)とした。
【0049】
配合例8(紫外線硬化性組成物の製造)
製造例1で得られた縮合物(A−1)43.5部に対し、(B)成分としてTAIC 26.8部([(B)成分に含まれる炭素‐炭素二重結合のモル数]/[(A)成分に含まれるチオール基のモル数](モル比)=1.00)、光硬化用触媒としてIrg184 0.14部を配し、紫外線硬化性組成物(d−2)とした。
【0050】
配合例9(熱硬化性組成物の製造)
製造例1で得られた縮合物(A−1)28.3部に対し、(C)成分としてコロネートHX 41.9部([(C)成分に含まれるイソシアネート基のモル数]/[(A)成分に含まれるチオール基のモル数](モル比)=1.00)、熱硬化用触媒としてU−100 0.14部、希釈溶剤としてDMG 29.7部を配し、熱硬化性組成物(d−3)とした。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

表中、(B)/(A):([(B)成分に含まれる炭素‐炭素二重結合のモル数]/[(A)成分に含まれるチオール基のモル数](モル比))、(C)/(A):([(C)成分に含まれるイソシアネート基のモル数]/[(A)成分に含まれるチオール基のモル数](モル比))、((B)+(C))/(A):(([(B)成分に含まれる炭素‐炭素二重結合のモル数]+[(C)成分に含まれるイソシアネート基のモル数])/[(A)成分に含まれるチオール基のモル数](モル比))をそれぞれ表す。
【0053】
(透明シートの評価)
実施例1〜5(透明シートの作製)
配合例1で得られた熱−紫外線二段階硬化性組成物(D−1)をテフロンシート上に硬化後膜厚が250μmとなるようコーティングし、80℃で5分、110℃で12分溶剤乾燥および熱硬化を行うことで、半硬化物(E−1)とした。得られた半硬化物(E−1)をテフロンシートからはがし取った後鋼板上に固定し、紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製:商品名「UV−152」)を用いて254nmの検出器で積算光量が500mJ/cmとなるよう紫外線を照射することで、透明シート(F−1)を得た。また成形加工性の評価を行うため、得られた半硬化物(E−1)をテフロンシートからはがし取った後鋼板上に固定し、半硬化物に120℃に熱した円形金型を30秒間押し当てて、円形パターンを半硬化物に転写した。金型を取り去った後、紫外線照射装置を用いて254nmの検出器で積算光量が500mJ/cmとなるよう紫外線を照射することで、透明シート(F−1’)を得た。
同様に、配合例2〜5で得られた熱−紫外線二段階硬化性組成物(D−2〜5)を用い、表3に従って透明シート(F−2〜5)および透明シート(F−2’〜5’)とした。
【0054】
(透明シートの評価)
実施例6(透明シートの作製)
配合例1で得られた熱−紫外線二段階硬化性組成物(D−6)をテフロンシート上に硬化後膜厚が250μmとなるようコーティングし、紫外線照射装置を用いて254nmの検出器で積算光量が250mJ/cmとなるよう紫外線を照射することで、半硬化物(E−6)とした。得られた半硬化物(E−1)をテフロンシートからはがし取った後鋼板上に固定し、120℃で15分熱硬化を行うことで透明シート(F−6)を得た。また成形加工性の評価を行うため、得られた半硬化物(E−6)をテフロンシートからはがし取った後鋼板上に固定し、半硬化物に120℃に熱した円形金型を30秒間押し当てて、円形パターンを半硬化物に転写した。金型を取り去った後、120℃で15分熱硬化を行うことで、透明シート(F−6’)を得た。
【0055】
比較例1(透明シートの作製)
配合例6で得られた熱−紫外線硬化性組成物(d−1)をテフロンシート上に硬化後膜厚が250μmとなるようコーティングし、80℃で5分、110℃で12分溶剤乾燥および熱硬化を行うことで、半硬化物(e−1)とした。得られた半硬化物(e−1)をテフロンシートからはがし取った後鋼板上に固定し、紫外線照射装置を用いて254nmの検出器で積算光量が500mJ/cmとなるよう紫外線を照射することで、透明シート(f−1)を得た。また成形加工性の評価を行うため、得られた半硬化物(e−1)をテフロンシートからはがし取った後鋼板上に固定し、半硬化物に120℃に熱した円形金型を30秒間押し当てて、円形パターンを半硬化物に転写した。金型を取り去った後、紫外線照射装置を用いて254nmの検出器で積算光量が500mJ/cmとなるよう紫外線を照射することで、透明シート(f−1’)を得た。
【0056】
比較例2(透明シートの作製)
配合例7で得られた紫外線硬化性組成物(d−2)をテフロンシート上に硬化後膜厚が250μmとなるようコーティングし、紫外線照射装置を用いて254nmの検出器で積算光量が500mJ/cmとなるよう紫外線を照射することで、透明シート(f−2)を得た。溶剤乾燥工程後は液状のため、透明シート(f−2)に120℃に熱した円形金型を30秒間押し当てて、円形パターンの転写を試みたが、パターンを転写することはできなかった。また、透明シート(f−2)に120℃に熱した円形金型を30秒間押し当てて、円形パターンの転写を試みたが、透明シートの硬化が完了しているため円形パターンを転写することはできなかった。
【0057】
比較例3(透明シートの作製)
配合例8で得られた熱硬化性組成物(d−3)をテフロンシート上に硬化後膜厚が250μmとなるようコーティングし、80℃で5分、110℃で12分溶剤乾燥および熱硬化を行うことで、透明シート(f−3)を得た。透明シート(f−3)に120℃に熱した円形金型を30秒間押し当てて、円形パターンの転写を試みたが、透明シートの硬化が完了しているため円形パターンを転写することはできなかった。また、熱硬化性組成物(d−3)をテフロンシート上に硬化後膜厚が250μmとなるようコーティングし、80℃で5分、110℃で1分溶剤乾燥および熱硬化し、半硬化物(e−3)とした。120℃に熱した円形金型を30秒間押し当てて、円形パターンの転写を試みたところ、金型と半硬化物とが密着し、金型を取り去る際に半硬化物が破断した。
【0058】
実施例1〜6および比較例1〜3で得られた透明シートの成形加工性及び透明性について、以下の基準に基づいて評価を行った。
【0059】
(成形加工性)
○・・・金型による形状転写が可能
×・・・金型による形状転写が不可能
【0060】
(透明性)
○・・・ほぼ透明
△・・・半透明
×・・・不透明
【0061】
【表3】

【0062】
結果、硬化によって作製した実施例1〜6、比較例1の透明シートは、半硬化状態での成形加工性に優れることが明らかとなった。
【0063】
(耐熱性)
実施例1、比較例1で得られた透明シートを5mm×30mmにカットし、粘弾性測定器(セイコーインスツル(株)製、商品名「DMS6100」、測定条件:振動数10Hz、スロープ3℃/分)を用いて動的貯蔵弾性率を測定して、耐熱性を評価した。測定結果を図1に示す。図1から明らかなように、実施例1では比較例1に比べTgが高く、かつ高温でも弾性率の低下が少なく、耐熱性に優れていることが認められる。
【0064】
(支持体を利用した透明シートの評価)
実施例7(形状加工された透明シートの作製)
配合例1で得られた熱−紫外線硬化性組成物(D−1)を厚み100μmのPETフィルム上に硬化後膜厚が50μmとなるようコーティングし、80℃で5分、110℃で12分溶剤乾燥および熱硬化を行うことで、半硬化物付き透明シート(E−7)とした。得られた半硬化物付き透明シート(E−7)の半硬化物がついた面に対し、120℃に熱した円形金型を30秒間押し当てて、円形パターンを半硬化物に転写した。金型を取り去った後、紫外線照射装置を用いて254nmの検出器で積算光量が500mJ/cmとなるよう紫外線を照射することで、形状加工された透明シート(F−7)を得た。
【0065】
比較例4(形状加工された透明シートの作製)
配合例6で得られた熱−紫外線硬化性組成物(d−1)を厚み100μmのPETフィルム上に硬化後膜厚が50μmとなるようコーティングし、80℃で5分、110℃で12分溶剤乾燥及び熱硬化を行うことで、半硬化物付き透明シート(e−4)とした。得られた半硬化物付き透明シート(e−4)の半硬化物がついた面に対し、120℃に熱した円形金型を30秒間押し当てて、円形パターンを半硬化物に転写した。金型を取り去った後、紫外線照射装置を用いて254nmの検出器で積算光量が500mJ/cmとなるよう紫外線を照射することで、形状加工された透明シート(f−4)を得た。
【0066】
比較例5(形状加工された透明シートの作製)
配合例7で得られた紫外線硬化性組成物(d−2)を厚み100μmのPETフィルム上に硬化後膜厚が50μmとなるようコーティングし、80℃で5分溶剤乾燥させた。続いて紫外線照射装置を用いて254nmの検出器で積算光量が500mJ/cmとなるよう紫外線を照射することで、透明シート(f−5)を得た。溶剤乾燥工程後は液状のため、パターンを転写することはできなかった。また、透明シート(f−5)に120℃に熱した円形金型を30秒間押し当てて、円形パターンの転写を試みたが、硬化が完了しているため、パターンを転写することはできなかった。
【0067】
比較例6(透明シートの作製)
配合例8で得られた熱硬化性組成物(d−3)を厚み100μmのPETフィルム上に硬化後膜厚が50μmとなるようコーティングし、80℃で5分、110℃で12分溶剤乾燥及び熱硬化を行うことで、透明シート(f−6)を得た。透明シート(f−6)に120℃に熱した円形金型を30秒間押し当てて、円形パターンの転写を試みたが、パターンを転写することはできなかった。また、熱硬化性組成物(d−3)を厚み100μmのPETフィルム上に硬化後膜厚が50μmとなるようコーティングし、80℃で5分、110℃で1分溶剤乾燥及び熱硬化し、半硬化物付き透明シート(e−6)とした。120℃に熱した円形金型を30秒間押し当てて、円形パターンの転写を試みたところ、金型と半硬化物とが密着し、金型を取り去る際に半硬化物が破断した。
【0068】
実施例7並びに比較例4〜6で得られた透明シートの成形加工性及び透明性について、上述した基準と同様に評価を行った。
【0069】
【表4】

【0070】
結果、硬化によって作製した実施例7、比較例1の透明シートは、半硬化状態での成形加工性に優れることが明らかとなった。
【0071】
配合例10(紫外線硬化性組成物の製造)
配合例8で得られた配合物(D−8)70.4部に対し、希釈溶剤としてDMG 29.6部を配し、紫外線硬化性組成物(d−4)とした。
【0072】
実施例8(ガラスクロス含浸による透明シートの作製)
配合例1で得られた熱−紫外線硬化性組成物(D−1)を厚み90μmのガラスクロス(日東紡績(株)製:屈折率1.558)に含浸させ、80℃で5分、110℃で12分溶剤乾燥及び熱硬化を行い、透明シートを作製した。さらに本シートの両面に熱−紫外線硬化性組成物(D−1)を20μmコーティングし、80℃で5分、110℃で12分溶剤乾燥および熱硬化を行い、半硬化物(E−8)とした。得られた半硬化物(E−8)を直径15cmの紙管に巻き取り、24時間暗所に室温で保管した。続いて120℃で30秒プレス成形した後、紫外線照射装置を用いて254nmの検出器で積算光量が2000mJ/cmとなるよう紫外線を照射することで、膜厚105マイクロメートルの透明シート(F−8)を得た。
【0073】
比較例7(ガラスクロス含浸による透明シートの作製)
配合例10で得られた紫外線硬化性組成物(d−4)を厚み90μmのガラスクロス(日東紡績(株)製:屈折率1.558)に含浸させ、80℃で5分溶剤乾燥を行い、シート化した。さらに本シートの両面に紫外線硬化性組成物(d−4)を20μmコーティングし、80℃で5分溶剤乾燥を行い、シート化した。シートにはタックがあり、巻き取りできなかった。得られたシートを120℃で30秒プレス成形した後、紫外線照射装置を用いて254nmの検出器で積算光量が2000mJ/cmとなるよう紫外線を照射することで、膜厚105マイクロメートルの透明シート(f−7)を得た。
【0074】
比較例8(ガラスクロス含浸による透明シートの作製)
配合例9で得られた熱硬化性組成物(d−3)を厚み90μmのガラスクロス(日東紡績(株)製:屈折率1.558)に含浸させ、80℃で5分溶剤乾燥を行い、シート化した。さらに本シートの両面に熱硬化性組成物(d−3)を20μmコーティングし、80℃で5分溶剤乾燥を行い、シート化した。シートにはタックがあり、巻き取りできなかった。得られたシートを120℃で30秒プレス成形した後、120℃で15分熱硬化することで、膜厚105マイクロメートルの透明シート(f−8)を得た。
【0075】
比較例9(ガラスクロス含浸による透明シートの作製)
配合例9で得られた熱硬化性組成物(d−3)を厚み90μmのガラスクロス(日東紡績(株)製:屈折率1.558)に含浸させ、80℃で5分溶剤乾燥を行い、シート化した。さらに本シートの両面に熱硬化性組成物(d−3)を20μmコーティングし、80℃で5分溶剤乾燥、110℃で2分熱硬化を行い、半硬化物(e−8)とした。得られた半硬化物(e−8)を直径15cmの紙管に巻き取り、24時間暗所に室温で保管した。24時間後プレスのため取り出したところ、硬化が進行しており、成型加工できなかった。
【0076】
実施例8、比較例7〜9で得られた透明シートの全光線透過率、ヘーズを測定した結果、半硬化状態での保管性を表5に示す。評価基準は以下の通りである。
【0077】
(半硬化状態での保管性)
○・・・24時間以上半硬化状態が維持される。
△・・・24時間以上半硬化状態が維持されるが、タックがあるため巻き取って保管できない。
×・・・24時間までに半硬化状態が失われ、成型加工できない。
【0078】
【表5】

【0079】
結果、実施例8で得られた透明シートは平坦化されており、表面の微細な凹凸による光の散乱がないため、ヘーズが比較例7〜9で得られた透明シートと比較すると低くなった。また、実施例8で得られた透明シートの保管性は、比較例7〜9と比較して良かった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1:実施例1及び比較例1で得られた透明シートの動的貯蔵弾性率を測定結果
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
Si(OR (1)
(式中、Rは少なくとも1つのチオール基を有する炭素数1〜8の炭化水素基、又は、少なくとも1つのチオール基を有する芳香族炭化水素基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基を表す。)で示されるチオール基含有アルコキシシラン類(a1)を加水分解および縮合して得られる縮合物(A)、炭素−炭素二重結合を有する化合物(B)、および、イソシアネート基を有する化合物(C)を[{(B)成分中に含まれる二重結合の数}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.1〜0.8、[{(C)成分中に含まれるイソシアネート基の数}/((A)成分中のチオール基の数}]が0.1〜0.8、[{(B)成分中に含まれる炭素−炭素二重結合の数+(C)成分中のイソシアネート基の数}/{(A)成分中のチオール基の数}]が0.9〜1.1なる割合で含有する樹脂組成物(D)を熱および紫外線で二段階硬化させて得られる透明シート。
【請求項2】
前記二段階硬化は、樹脂組成物(D)を熱硬化させて半硬化状態とし、成型加工した後、紫外線硬化させるものである請求項1記載の透明シート。
【請求項3】
前記二段階硬化は、樹脂組成物(D)を紫外線硬化させて半硬化状態とし、成型加工した後、熱硬化させるものである請求項1記載の透明シート。
【請求項4】
透明な支持体上に作製された請求項1〜3のいずれかに記載の透明シート。
【請求項5】
前記樹脂組成物(D)をガラスクロスに含浸させたのち、熱および紫外線で二段階硬化させて得られる請求項1〜3のいずれかに記載の透明シート。

【公開番号】特開2010−155897(P2010−155897A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334332(P2008−334332)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】