説明

透明導電性フィルム、その製造方法及びそれを備えたタッチパネル

【課題】透明導電体層がパターン化されており、かつ、見栄えの良好な透明導電性フィルムおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】透明なフィルム基材の片面または両面に少なくとも2層のアンダーコート層を介して、透明導電体層を有する透明導電性フィルムであって、前記透明導電体層はパターン化されており、かつ前記透明導電体層を有しない非パターン部には前記少なくとも2層のアンダーコート層を有し、透明なフィルム基材から第一層目のアンダーコート層は厚みが100〜220nmであり、かつ、有機物により形成されていることを特徴とする透明導電性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光線領域に於いて透明性を有し、かつフィルム基材上にアンダーコート層を介して透明導電体層が設けられた透明導電性フィルムおよびその製造方法に関する。さらには、当該透明導電性フィルムを備えたタッチパネルに関する。
【0002】
本発明の透明導電性フィルムは、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどのディスプレイ方式やタッチパネルなどに於ける透明電極のほか、透明物品の帯電防止や電磁波遮断などのために用いられる。特に、本発明の透明導電性フィルムはタッチパネル用途において好適に用いられる。なかでも、静電容量結合方式のタッチパネル用途において好適である。
【背景技術】
【0003】
タッチパネルには、位置検出の方法により光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などがある。抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電性フィルムと透明導電体層付ガラスとがスペーサーを介して対向配置されており、透明導電性フィルムに電流を流し透明導電体層付ガラスに於ける電圧を計測するような構造となっている。一方、静電容量方式のタッチパネルは、基材上に透明導電層を有するものを基本的構成とし、可動部分がないことが特徴であり、高耐久性、高透過率を有するため、車載用途等において適用されている。
【0004】
前記タッチパネルには、例えば、透明なフィルム基材の一方の面に、前記フィルム基材の側から第一アンダーコート層、第二アンダーコート層および透明導電体層がこの順に形成されている透明導電性フィルムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−326301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記透明導電性フィルムは、透明導電体層をパターン化する場合がある。しかし、透明導電体層をパターン化するパターン部と非パターン化部との相違が明確化して、表示素子としての見栄えが悪くなる。特に、静電容量結合方式のタッチパネルにおいては、透明導電体層が入射表面側に用いられるため、透明導電体層をパターン化した場合にも表示素子として見栄えが良好なものが求められる。
【0007】
本発明は、透明導電体層がパターン化されており、かつ、見栄えの良好な透明導電性フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。また、当該透明導電性フィルムを備えたタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の構成を採用することにより前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、透明なフィルム基材の片面または両面に少なくとも1層のアンダーコート層を介して、透明導電体層を有する透明導電性フィルムであって、
前記透明導電体層はパターン化されており、かつ前記透明導電体層を有しない非パターン部には前記少なくとも1層のアンダーコート層を有することを特徴とする透明導電性フィルム、に関する。
【0010】
前記透明導電性フィルムにおいて、アンダーコート層が少なくとも2層ある場合には、少なくとも、透明なフィルム基材から最も離れたアンダーコート層は、透明導電体層と同様にパターン化されているものが好適である。
【0011】
前記透明導電性フィルムにおいて、アンダーコート層が少なくとも2層ある場合には、少なくとも、透明なフィルム基材から最も離れたアンダーコート層は、無機物により形成されていることが好ましい。無機物により形成されたアンダーコート層としては、SiO膜が好適である。
【0012】
前記透明導電性フィルムにおいて、透明なフィルム基材から第一層目のアンダーコート層は、有機物により形成されていることが好ましい。
【0013】
前記透明導電性フィルムにおいて、透明導電体層の屈折率とアンダーコート層の屈折率の差が、0.1以上であることが好ましい。
【0014】
前記透明導電性フィルムにおいて、
パターン化された透明導電体層が、2層のアンダーコート層を介して設けられている場合には、
透明なフィルム基材から第一層目のアンダーコート層は、屈折率(n)が1.5〜1.7、厚み(d)が100〜220nmであり、
透明なフィルム基材から第二層目のアンダーコート層は、屈折率(n)が1.4〜1.5、厚み(d)が20〜80nmであり、
透明導電体層は、屈折率(n)が1.9〜2.1、厚み(d)が15〜30nmであり、
前記各層の光学厚み(n×d)の合計が、208〜554nmであることが好ましい。
【0015】
また、パターン化された透明導電体層と2層のアンダーコート層に係る前記光学厚みの合計と、非パターン部のアンダーコート層の光学厚みの差(Δnd)が、40〜130nmであることが好ましい。
【0016】
本発明の透明導電性フィルムとしては、少なくとも片面に前記パターン化された透明導電体層が配置されるように、透明な粘着剤層を介して、前記透明導電性フィルムが少なくとも2枚積層されているものを用いることができる。
【0017】
また本発明の透明導電性フィルムとしては、片面に前記パターン化された透明導電体層が配置されるように、前記透明導電性フィルムの片面に、透明な粘着剤層を介して透明基体が貼り合わされているものを用いることができる。
【0018】
前記透明導電性フィルムは、タッチパネルに好適に用いられる。タッチパネルとしては、静電容量結合方式のタッチパネルに好適である。
【0019】
また本発明は、前記透明導電性フィルムの製造方法であって、
透明なフィルム基材の片面または両面に、少なくとも1層のアンダーコート層を介して、透明導電体層を有する透明導電性フィルムを調製する工程、および
前記透明導電体層を、酸によりエッチングしてパターン化する工程を有することを特徴とする透明導電性フィルムの製造方法、に関する。
【0020】
前記製造方法において、アンダーコート層が少なくとも2層ある場合には、
透明導電体層を、酸によりエッチングしてパターン化する工程の後、
少なくとも、透明なフィルム基材から最も離れたアンダーコート層をアルカリによりエッチングする工程を有する。
【0021】
前記透明導電性フィルムの製造方法において、透明導電体層をパターン化する工程の後に、パターン化された透明導電体層をアニール化処理して結晶化させる工程を有することができる。
【0022】
また本発明は、前記透明導電性フィルムを備えたことを特徴とするタッチパネル、に関する。
【発明の効果】
【0023】
透明導電性フィルムにおいて、透明導電体層がパターン化して設けられた場合には、パターン部と非パターン部の反射率差によってパターン間が明確化になって見栄えが損なわれていた。本発明の透明導電性フィルムでは、透明導電体層をパターン化しているが、非パターン部にはアンダーコート層が設けられており、パターン部と非パターン部の反射率差を小さく抑えることができ、パターン間の明確化による不具合が解消されて見栄えがよくなる。また、非パターン部にアンダーコート層が設けられることで、フィルム基材がむき出し状態にならず、フィルム基材中のオリゴマーの発生を抑えることができ、外観の点で良好である。また、非パターン部にアンダーコート層が設けられることで、パターン化された透明導電体層は、それぞれの間が絶縁化され、パターン化された透明導電体層によって、透明導電性フィルムの使用態様が広がる。かかる透明導電性フィルムは、タッチパネルにおいて好適に用いられる。特に静電容量結合方式のタッチパネルに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の一形態に係る透明導電性フィルムを示す断面図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る透明導電性フィルムを示す断面図である。
【図3】本発明の実施の一形態に係る透明導電性フィルムを示す断面図である。
【図4】比較例1に係る透明導電性フィルムを示す断面図である。
【図5】本発明の実施の一形態に係る透明導電性フィルムを示す断面図である。
【図6】本発明の実施の一形態に係る透明導電性フィルムを示す断面図である。
【図7】本発明の実施の一形態に係る透明導電性フィルムを示す断面図である。
【図8】本発明の実施の一形態に係る透明導電性フィルムを示す断面図である。
【図9】本発明の実施の一形態に係る透明導電性フィルムを示す断面図である。
【図10】本発明の実施の一形態に係る透明導電性フィルムを示す断面図である。
【図11】本発明の実施の一形態に係る透明導電性フィルムを示す断面図である。
【図12】本発明の実施の一形態に係る透明導電性フィルムを示す断面図である。
【図13】本発明の透明導電性フィルムのパターンの一例を示す上面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について、図を参照しながら以下に説明する。図1は、本発明の透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。図1の透明導電性フィルムは、透明なフィルム基材1の片面に、アンダーコート層2を介して、透明導電体層3を有する。透明導電体層3はパターン化されている。なお、各図において、透明導電体層3がパターン化されていることは、透明導電体層3を有するパターン部aと透明導電体層3を有しない非パターン部bを有することで示している。また、前記非パターン部bには前記アンダーコート層2を有する。図2、3は、アンダーコート層2が2層ある場合である。図2、3では、透明なフィルム基材1の側からアンダーコート層21、22がこの順で設けられている。図2では、非パターン部bにアンダーコート層21、22を有する場合である。図3は、透明なフィルム基材1から最も離れたアンダーコート層22は透明導電体層3と同様にパターン化されている。図3では、非パターン部bにアンダーコート層21を有する。即ち、アンダーコート層2が2層の場合には、非パターン部bには、透明なフィルム基材1の側から第一層目のアンダーコート層21を少なくとも有する。図2、3では、アンダーコート層2が2層の場合を例示しているが、アンダーコート層2は3層以上であってもよい。アンダーコート層2が3層以上の場合にも非パターン部bには、透明なフィルム基材1の側から第一層目のアンダーコート層21を少なくとも有する。第一層目より上側のアンダーコート層は、パターン化されていてもよく、パターン化されていなくてもよい。アンダーコート層2が少なくとも2層の場合は、パターン部aと非パターン部bの反射率差を小さく制御するうえで好ましい。特にアンダーコート層2が少なくとも2層の場合には、透明なフィルム基材から最も離れたアンダーコート層(図3のように、アンダーコート層2が2層の場合には、アンダーコート層22)は、透明導電体層3と同様にパターン化されていることが、パターン部aと非パターン部bの反射率差を小さく制御するうえで好ましい。なお、図4は、透明なフィルム基材1の片面に、アンダーコート層2を介することなく、パターン化された透明導電体層3を有する場合である。
【0026】
図5も、本発明の透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。なお、図5では、図1と同様の構成をもって説明しているが、図5においても、当然、図2、図3で説明した構成と同様の構成を適用できる。図5の透明導電性フィルムは、透明なフィルム基材1の両面に、アンダーコート層2を介して、パターン化された透明導電体層3を有する場合である。なお、図5の透明導電性フィルムは、両側に、パターン化された透明導電体層3を有するが、片側のみがパターン化されていてもよい。また、図5の透明導電性フィルムは、両側のパターン化された透明導電体層3のパターン部aと非パターン部bが一致しているが、これらは一致していなくてもよく、各種の態様にて両側で適宜にパターン化することができる。他の、図においても同様である。
【0027】
図6乃至図9も、本発明の透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。図6乃至9の透明導電性フィルムは、前記図1または図5で示す透明導電性フィルムが、透明な粘着剤層4を介して2枚積層されている。また、図6乃至図9では積層して得られる透明導電性フィルムは、少なくとも片面に前記パターン化された透明導電体層3が配置されるように積層されている。図6乃至図7では、図1に示す透明導電性フィルム2枚を透明な粘着剤層4を介して積層している。図6では、図1に示す透明導電性フィルムの透明なフィルム基材1に、他の透明導電性フィルムのパターン化された透明導電体層3が、透明な粘着剤層4を介して積層された場合である。図7では、図1に示す透明導電性フィルムの透明なフィルム基材1同士が、透明な粘着剤層4を介して積層された場合である。図8乃至図9では、図1に示す透明導電性フィルムと図5に示す透明導電性フィルムを透明な粘着剤層4を介して積層している。図8では、図1に示す透明導電性フィルムのパターン化された透明導電体層3と図5に示す透明導電性フィルムの片面のパターン化された透明導電体層3とが透明な粘着剤層4を介して積層された場合である。図9では、図1に示す透明導電性フィルムの透明なフィルム基材1と図5に示す透明導電性フィルムの片面のパターン化された透明導電体層3とが透明な粘着剤層4を介して積層された場合である。図6乃至図9では、図1または図5で示す透明導電性フィルムが、透明な粘着剤層4を介して2枚積層されている場合が例示されているが、図1または図5で示す透明導電性フィルムは、上記図6乃至図9の態様に従って、適宜に3枚以上を組み合わせることができる。なお、図6乃至図9では、図1と同様の構成をもって説明しているが、図6乃至図9においても、当然、図2、図3で説明した構成と同様の構成を適用できる。
【0028】
また、本発明の透明導電性フィルムは、粘着剤層4を設けた態様で用いることができる。粘着剤層4は、透明導電性フィルムの片面に前記パターン化された透明導電体層3が配置されるように積層される。図10は、図1に示す透明導電性フィルムの透明なフィルム基材1に、透明な粘着剤層4が積層された場合である。図11は、図5に示す透明導電性フィルムの片面のパターン化された透明導電体層3に、透明な粘着剤層4が積層された場合である。図10、図11では粘着剤層4にセパレータSが設けられている。なお、図6乃至図9に示すような、透明導電性フィルムを2枚以上積層されたものについても、同様に、透明導電性フィルムの片面に前記パターン化された透明導電体層3が配置されるように粘着剤層4を積層することができる。
【0029】
また、前記透明導電性フィルムの片面には、透明な粘着剤層4を介して透明基体5を貼り合わすことができる。透明基体5が貼り合わされた透明導電性フィルムは、片面に前記パターン化された透明導電体層3が配置されるように、透明基体5が貼り合わされている。図12は、図1の透明導電性フィルムの透明なフィルム基材1(透明導電体層3が設けられていない面)に透明な粘着剤層4を介して透明基体5が貼り合わされた構造の透明導電性フィルムである。透明基体5は、1枚の基体フィルムからなっていてもよく、2枚以上の基体フィルムの積層体(透明な粘着剤層を介して積層したもの)であってもよい。また、図12は、透明基体5の外表面にハードコート層(樹脂層)6が設けられている場合である。図12では、図1の透明導電性フィルムについての例示であるが、同様の構造を図2、3の透明導電性フィルムにも適用できる。また、図5乃至図9等の構造の透明導電性フィルムにも適用できる。
【0030】
前記フィルム基材1としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。例えば、その材料として、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂である。
【0031】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載の高分子フィルム、例えば、(A)側鎖に置換及び/又は非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換及び/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられる。具体的には、イソブチレン及びN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物の高分子フィルムを用いることができる。
【0032】
前記フィルム基材1の厚みは、2〜200μmの範囲内であることが好ましく、2〜100μmの範囲内であることがより好ましい。フィルム基材1の厚みが2μm未満であると、フィルム基材1の機械的強度が不足し、このフィルム基材1をロール状にしてアンダーコート層2、透明導電体層3を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚みが200μmを超えると、透明導電体層3の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上が図れなくなる場合がある。
【0033】
前記フィルム基材1には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられるアンダーコート層2の前記フィルム基材1に対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、アンダーコート層2を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0034】
本発明では、透明導電体層3をパターン化した場合にもアンダーコート層2を有することで、表示素子として見栄えが良好なものが得られる。かかる観点から、アンダーコート層2の屈折率は、透明導電体層3の屈折率とアンダーコート層の屈折率の差が、0.1以上を有するものが好ましい。透明導電体層3の屈折率とアンダーコート層の屈折率の差は、0.1以上0.9以下、さらには0.1以上0.6以下であるのが好ましい。なお、アンダーコート層2の屈折率は、通常、1.3〜2.5、さらには1.38〜2.3、さらには1.4〜2.3であるのが好ましい。
【0035】
アンダーコート層2は、無機物、有機物または無機物と有機物との混合物により形成することができる。例えば、無機物として、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF3(1.63)、Al23(1.63)などの無機物〔上記各材料の( )内の数値は光の屈折率である〕があげられる。これらのなかでも、SiO2、MgF2、A123などが好ましく用いられる。特に、SiO2が好適である。上記の他、酸化インジウムに対して、酸化セリウムを10〜40重量部程度、酸化錫を0〜20重量部程度含む複合酸化物を用いることができる。
【0036】
また有機物としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などがあげられる。これら有機物は、少なくとも1種が用いられる。特に、有機物としては、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
【0037】
アンダーコート層2は、透明なフィルム基材1と透明導電体層3の間に設けられるものであり、導電体層としての機能を有しないものである。即ち、アンダーコート層2は、パターン化された透明導電体層3の間で絶縁できるように誘電体層として設けられる。従って、アンダーコート層2は、通常、表面抵抗が、1×106Ω/□以上であり、好ましくは1×107Ω/□以上、さらに好ましくは1×108Ω/□以上である。なお、アンダーコート層2の表面抵抗の上限は特にない。一般的には、アンダーコート層2の表面抵抗の上限は測定限界である、1×1013Ω/□程度であるが、1×1013Ω/□を超えるものであってもよい。
【0038】
透明なフィルム基材1から第一層目のアンダーコート層は、有機物により形成されていることが、透明導電体層3をエッチングによりパターン化する上で好ましい。従って、アンダーコート層2が1層の場合には、アンダーコート層2は、有機物により形成するのが好ましい。
【0039】
またアンダーコート層2が少なくとも2層ある場合には、少なくとも、透明なフィルム基材1から最も離れたアンダーコート層は、無機物により形成されていることが、透明導電体層3をエッチングによりパターン化する上で好ましい。アンダーコート層2が3層以上ある場合には、透明なフィルム基材1から第二層目より上のアンダーコート層についても無機物により形成されていることが好ましい。
【0040】
無機物により形成されたアンダーコート層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスとして、またはウェット法(塗工法)などにより形成できる。アンダーコート層を形成する無機物としては、前述の通り、SiOが好ましい。ウェット法では、シリカゾル等を塗工することによりSiO2膜を形成することができる。
【0041】
以上から、アンダーコート層2を2層設ける場合には、第一アンダーコート層21を有機物により形成し、第二アンダーコート層22を無機物により形成するのが好ましい。
【0042】
アンダーコート層2の厚さは、特に制限されるものではないが、光学設計、前記フィルム基材1からのオリゴマー発生防止効果の点から、通常、1〜300nm程度であり、好ましくは5〜300nmである。なお、アンダーコート層2を2層以上設ける場合、各層の厚さは、5〜250nm程度であり、好ましくは10〜250nmである。
【0043】
透明導電体層3は、前述の通り、アンダーコート層2との屈折率の差が0.1以上であるものが好適である。透明導電体層3の屈折率は、通常、1.95〜2.05程度である。
【0044】
前記透明導電体層3の構成材料としては特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられる。
【0045】
透明導電体層3の厚さは特に制限されないが、その表面抵抗を1×103Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚さ10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmの範囲内である。厚さが15nm未満であると表面電気抵抗が高くなり、かつ連続被膜になり難くなる。また、35nmを超えると透明性の低下などをきたしてしまう。
【0046】
透明導電体層3の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。なお、透明導電体層3を形成した後、必要に応じて、100〜150℃の範囲内でアニール処理を施して結晶化することができる。このため、フィルム基材1は、100℃以上、更には150℃以上の耐熱性を有することが好ましい。本発明では、透明導電体層3は、エッチングしてパターン化される。透明導電体層3を結晶化するとエッチングが困難になる場合があるため、透明導電体層3のアニール化処理は、透明導電体層3をパターン化した後に行うことが好ましい。さらにはアンダーコート層2をエッチングする場合には、アンダーコート層2のエッチングの後に透明導電体層3のアニール化処理を行うことが好ましい。
【0047】
透明導電体層3は、アンダーコート層2上でパターン化されている。パターン化は、各種態様を、透明導電性フィルムが適用される用途に応じて、各種のパターンを形成することができる。なお、透明導電体層3のパターン化により、パターン部と非パターン部が形成されるが、パターン部の形状としては、例えば、ストライプ状等があげられる。図13は、本発明の透明導電性フィルムの上面図に係わり、透明導電体層3としてストライプ状に形成した場合の一例であり、透明導電体層3のパターン部aと非パターン部bがストライプ状に形成されている。なお、図13では、パターン部aの幅が非パターン部bの幅より大きいが、この範囲に制限されるものではない。
【0048】
本発明の透明導電性フィルムの製造方法は、透明なフィルム基材の片面または両面に、アンダーコート層および透明導電体層が上記構造を有するものであれば、その製造方法は特に制限されない。例えば、通常に従って、透明なフィルム基材の片面または両面に、フィルム基材の側から少なくとも1層のアンダーコート層を介して、透明導電体層を有する透明導電性フィルムを調製した後に、前記透明導電体層を、エッチングしてパターン化することにより製造することができる。エッチングに際しては、パターンを形成するためのマスクにより透明導電体層を覆って、エッチング液により、透明導電体層をエッチングする。
【0049】
透明導電体層は、酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズが好適に用いられるため、エッチング液としては、酸が好適に用いられる。酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液があげられる。
【0050】
アンダーコート層が少なくとも2層ある場合には、透明導電体層のみをエッチングしてパターン化することができる他、透明導電体層を、酸によりエッチングしてパターン化した後に、少なくとも、透明なフィルム基材から最も離れたアンダーコート層を透明導電体層と同様にエッチングしてパターン化することができる。好ましくは、透明なフィルム基材から第一層目のアンダーコート層以外の透明導電体層を透明導電体層と同様にエッチングしてパターン化することができる。
【0051】
アンダーコート層のエッチングに際しては、透明導電体層をエッチングした場合と同様のパターンを形成するためのマスクによりアンダーコート層を覆って、エッチング液により、アンダーコート層をエッチングする。第二層目より上のアンダーコート層は、前述通り、SiO等の無機物が好適に用いられるため、エッチング液としては、アルカリが好適に用いられる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水溶液、およびこれらの混合物があげられる。なお、第一層目の透明導電体層は、酸またはアルカリによって、エッチングされないような有機物により形成するのが好ましい。
【0052】
本発明の透明導電性フィルムにおいて、2層のアンダーコート層を介して、パターン化された透明導電体層が設けられている場合、当該パターン部における、各層の屈折率(n)、厚み(d)、及び前記各層の光学厚み(n×d)の合計は、以下の通りであるのが、パターン部と非パターン部の反射率の差が小さく設計できる点から好ましい。
【0053】
透明なフィルム基材から第一層目のアンダーコート層は、屈折率(n)は1.5〜1.7が好ましく、さらには1.5〜1.65、さらには1.5〜1.6であるのが好ましい。厚み(d)は100〜220nmが好ましく、さらには120〜215nm、さらには130〜210nmであるのが好ましい。
【0054】
透明なフィルム基材から第二層目のアンダーコート層は、屈折率(n)は1.4〜1.5が好ましく、さらには1.41〜1.49、さらには1.42〜1.48であるのが好ましい。厚み(d)は20〜80nmが好ましく、さらには20〜70nm、さらには20〜60nmであるのが好ましい。
【0055】
透明導電体層は、屈折率(n)は1.9〜2.1が好ましく、さらには1.9〜2.05、さらには1.9〜2.0であるのが好ましい。厚み(d)は15〜30nmが好ましく、さらには15〜28nm、さらには15〜25nmであるのが好ましい。
【0056】
前記各層(第一層目のアンダーコート層、第二層目のアンダーコート層、透明導電体層)の光学厚み(n×d)の合計は208〜554nmが好ましく、さらには230〜500nm、さらには250〜450nmであるのが好ましい。
【0057】
また、前記パターン部の光学厚みの合計と、非パターン部のアンダーコート層の光学厚みの差(Δnd)が、40〜130nmであることが好ましい。前記光学厚みの差(Δnd)はさらには40〜120nm、さらには40〜110nmであるのが好ましい。
【0058】
前述の通り、本発明の透明導電性フィルムは、少なくとも片面に前記パターン化された透明導電体層3が配置されるように、透明な粘着剤層4を介して、少なくとも2枚を積層することができる。また本発明の透明導電性フィルムには片面に前記パターン化された透明導電体層3が配置されるように、透明な粘着剤層4を積層することができる。
【0059】
また本発明の透明導電性フィルムの片面には、透明基体5が貼り合わされた透明導電性フィルムの片面に前記パターン化された透明導電体層3が配置されるように、透明な粘着剤層4を介して透明基体5を貼り合わすことができる。透明基体5は、少なくとも2枚の透明な基体フィルムを透明な粘着剤層により貼り合わせた複合構造であってもよい。なお、前記透明導電体層3のパターン化は、かかる構造とした透明導電性フィルムに対して施すこともできる。
【0060】
透明基体5の厚さは、通常、90〜300μmであるのが好ましく、より好ましくは100〜250μmに制御される。また、透明基体5を形成する複数の基体フィルムにより形成する場合、各基体フィルムの厚さは10〜200μm、更には20〜150μmであり、これら基体フィルムに透明な粘着剤層を含めた透明基体5としての総厚さが前記範囲に入るように制御される。基体フィルムとしては、前記したフィルム基材1と同様のものが挙げられる。
【0061】
透明導電性フィルム(例えば、フィルム基材1)と透明基体5の貼り合わせは、透明基体5側に前記の粘着剤層4を設けておき、これに前記フィルム基材1を貼り合わせるようにしてもよいし、逆にフィルム基材1側に前記の粘着剤層4を設けておき、これに透明基体5を貼り合わせるようにしてもよい。後者の方法では、粘着剤層4の形成を、フィルム基材1をロール状にして連続的に行なうことができるので、生産性の面で一層有利である。また、フィルム基材1に、順次に複数の基体フィルムを粘着剤層により貼り合せることにより透明基体5を積層することもできる。なお、基体フィルムの積層に用いる透明な粘着剤層には、下記の透明な粘着剤層4と同様のものを用いることができる。また、透明導電性フィルム同士の貼り合わせに際しても、適宜に粘着剤層4を積層する透明導電性フィルムの積層面を選択して、透明導電性フィルム同士を貼り合せることができる。
【0062】
粘着剤層4としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0063】
粘着剤層4の構成材料である粘着剤の種類によっては、適当な粘着用下塗り剤を用いることで投錨力を向上させることが可能なものがある。従って、そのような粘着剤を用いる場合には、粘着用下塗り剤を用いることが好ましい。
【0064】
前記粘着用下塗り剤としては、粘着剤の投錨力を向上できる層であれば特に制限はない。具体的には、例えば、同一分子内にアミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基等の反応性官能基と加水分解性のアルコキシシリル基とを有するシラン系カップリング剤、同一分子内にチタンを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するチタネート系カップリング剤、及び同一分子内にアルミニウムを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するアルミネート系カップリング剤等のいわゆるカップリング剤、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、ウレタン系樹脂、エステルウレタン系樹脂等の有機反応性基を有する樹脂を用いることができる。工業的に取扱い易いという観点からは、シラン系カップリング剤を含有する層が特に好ましい。
【0065】
また、前記粘着剤層4には、ベースポリマーに応じた架橋剤を含有させることができる。また、粘着剤層4には必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また透明微粒子を含有させて光拡散性が付与された粘着剤層4とすることもできる。
【0066】
尚、前記の透明微粒子には、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、酸化カルシウム、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等の導電性の無機系微粒子や、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタンの如き適宜なポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子など適宜なものを1種又は2種以上用いることができる。
【0067】
前記粘着剤層4は、通常、ベースポリマー又はその組成物を溶剤に溶解又は分散させた固形分濃度が10〜50重量%程度の粘着剤溶液として用いられる。前記溶剤としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤や水等の粘着剤の種類に応じたものを適宜に選択して用いることができる。
【0068】
この粘着剤層4は、例えば、透明基体5の接着後に於いては、そのクッション効果により、フィルム基材1の一方の面に設けられた透明導電体層の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性、いわゆるペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させる機能を有する。この機能をより良く発揮させる観点から、粘着剤層4の弾性係数を1〜100N/cmの範囲、厚さを1μm以上、通常5〜100μmの範囲に設定するのが望ましい。前記厚さであると上記効果が十分発揮され、透明基体5とフィルム基材1との密着力も十分である。上記範囲よりも薄いと上記耐久性や密着性が十分確保できず、また上記範囲よりも厚いと透明性などの外観に不具合が発生してしまうおそれがある。なお、透明導電性フィルムに適用する粘着剤層4の弾性係数、厚さは他の態様においても前記同様である。
【0069】
前記の弾性係数が1N/cm未満であると、粘着剤層4は非弾性となるため、加圧により容易に変形してフィルム基材1、ひいては透明導電体層3に凹凸を生じさせる。また、加工切断面からの粘着剤のはみ出しなどが生じやすくなり、そのうえ透明導電体層3の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上効果が低減する。一方、弾性係数が100N/cmを超えると、粘着剤層4が硬くなり、そのクッション効果が期待できなくなるため、透明導電体層3の耐擦傷性やタッチパネル用としてのペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させることが困難になる傾向がある。
【0070】
また、粘着剤層4の厚さが1μm未満となると、そのクッション効果が期待できないため、透明導電体層3の耐擦傷性やタッチパネル用としてのペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させることが困難になる傾向がある。その一方、厚くしすぎると、透明性を損なったり、粘着剤層4の形成や透明基体5の貼り合わせ作業性、更にコストの面でも好結果を得にくい。
【0071】
この様な粘着剤層4を介して貼り合わされる透明基体5は、フィルム基材1に対して良好な機械的強度を付与し、ペン入力耐久性および面圧耐久性の他に、とくに、カールなどの発生防止に寄与するものである。
【0072】
前記セパレータSを用いて粘着剤層4を転写する場合、その様なセパレータSとしては、例えばポリエステルフィルムの少なくとも粘着剤層4と接着する面に移行防止層及び/又は離型層が積層されたポリエステルフィルム等を用いるのが好ましい。
【0073】
前記セパレータSの総厚は、30μm以上であることが好ましく、60〜100μmの範囲内であることがより好ましい。粘着剤層4の形成後、ロール状態にて保管する場合に、ロール間に入り込んだ異物等により発生することが想定される粘着剤層4の変形(打痕)を抑制する為である。
【0074】
前記移行防止層としては、ポリエステルフィルム中の移行成分、特に、ポリエステルの低分子量オリゴマー成分の移行を防止する為の適宜な材料にて形成することができる。移行防止層の形成材料として、無機物若しくは有機物、又はそれらの複合材料を用いることができる。移行防止層の厚さは、0.01〜20μmの範囲で適宜に設定することができる。移行防止層の形成方法としては特に限定されず、例えば、塗工法、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法などが用いられる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法等も用いることができる。
【0075】
前記離型層としては、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブテン等の適宜な剥離剤からなるものを形成することができる。離型層の厚さは、離型効果の点から適宜に設定することができる。一般には、柔軟性等の取り扱い性の点から、該厚さは20μm以下であることが好ましく、0.01〜10μmの範囲内であることがより好ましく、0.1〜5μmの範囲内であることが特に好ましい。離型層の形成方法としては特に制限されず、前記移行防止層の形成方法と同様の方法を採用することができる。
【0076】
前記塗工法、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法に於いては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等の電離放射線硬化型樹脂や前記樹脂に酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、マイカ等を混合したものを用いることができる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法又は電気メッキ法を用いる場合、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト又はスズやこれらの合金等からなる金属酸化物、ヨウ化鋼等からなる他の金属化合物を用いることができる。
【0077】
また必要に応じて、前記透明基体5の外表面(粘着剤層4とは反対側の面)に、外表面の保護を目的としたハードコート層(樹脂層)6を設けるようにしてもよい。ハードコート層6としては、例えば、メラニン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬化型樹脂からなる硬化被膜が好ましく用いられる。ハードコート層6の厚さとしては、0.1〜30μmが好ましい。厚さが0.1μm未満であると、硬度が不足する場合がある。また、厚さが30μmを超えると、ハードコート層6にクラックが発生したり、透明基体5全体にカールが発生する場合がある。
【0078】
また、本発明の透明導電性フィルムには視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層を設けることができる。抵抗膜方式のタッチパネルに用いる場合には、前記ハードコート層6と同様に前記透明基体5の外表面(粘着剤層4とは反対側の面)に、防眩処理層や反射防止層を設けることができる。また前記ハードコート層6上に、防眩処理層や反射防止層を設けることができる。一方、静電容量方式のタッチパネルに用いる場合には、防眩処理層や反射防止層は、透明導電体層3上に設けられることもある。
【0079】
防眩処理層の構成材料としては特に限定されず、例えば電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。防眩処理層の厚みは0.1〜30μmが好ましい。
【0080】
反射防止層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられる。反射防止機能を一層大きく発現させる為には、酸化チタン層と酸化ケイ素層との積層体を用いることが好ましい。前記積層体は、ハードコート層6上に屈折率の高い酸化チタン層(屈折率:約1.8)が形成され、該酸化チタン層上に屈折率の低い酸化ケイ素層(屈折率:約1.45)が形成された2層積層体、更に、この2層積層体上に、酸化チタン層及び酸化ケイ素層がこの順序で形成された4層積層体が好ましい。この様な2層積層体又は4層積層体の反射防止層を設けることにより、可視光線の波長領域(380〜780nm)の反射を均一に低減させることが可能である。
【0081】
本発明の透明導電性フィルムは、例えば、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルに好適に適用できる。特に、静電容量方式のタッチパネルに好適である。また、本発明の透明導電性フィルムは、例えば、電気泳動方式、ツイストボール方式、サーマル・リライタブル方式、光書き込み液晶方式、高分子分散型液晶方式、ゲスト・ホスト液晶方式、トナー表示方式、クロミズム方式、電界析出方式などのフレキシブル表示素子に好適に利用できる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各例中、部、%はいずれも重量基準である。
【0083】
<屈折率>
各層の屈折率は、アタゴ社製のアッベ屈折率計を用い、各種測定面に対して測定光を入射させるようにして、該屈折計に示される規定の測定方法により測定を行った。
【0084】
<各層の厚さ>
フィルム基材、透明基体、ハードコート層、粘着剤層等の1μm以上の厚みを有するものに関しては、ミツトヨ製マイクロゲージ式厚み計にて測定を行った。ハードコート層、粘着剤層等の直接厚みを計測することが困難な層の場合は、各層を設けた基材の総厚みを測定し、基材の厚みを差し引くことで各層の膜厚を算出した。
【0085】
第一層目のアンダーコート層、第二層目のアンダーコート層、ITO膜等の厚みは、大塚電子(株)製の瞬間マルチ測光システムであるMCPD2000(商品名)を用い、干渉スペクトルよりの波形を基礎に算出した。
【0086】
<アンダーコート層の表面抵抗>
JIS K 6911(1995)に準拠する二重リング法に従って、三菱化学(株)製の表面高抵抗計を用いて、アンダーコート層の表面電気抵抗(Ω/□)を測定した。
【0087】
(実施例1)
(アンダーコート層の形成)
厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)からなるフィルム基材の一方の面に、メラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物の重量比2:2:1の熱硬化型樹脂(光の屈折率n=1.54)により、厚さが185nmの第一層目のアンダーコート層を形成した。次いで、シリカゾル(コルコート(株)製,コルコートP)を、固形分濃度2%になるようにエタノールで希釈し、第一層目のアンダーコート層上に、シリカコート法により塗布し、その後、150℃で2分間乾燥、硬化させて、厚さが33nmの第二層目のアンダーコート層(SiO膜,光の屈折率1.46)を形成した。第一層目、第二層目のアンダーコート層を形成した後の表面抵抗は、いずれも1×1012Ω/□以上であった。
【0088】
(透明導電体層の形成)
次に、第二層目のアンダーコート層上に、アルゴンガス98%と酸素ガス2%とからなる0.4Paの雰囲気中で、酸化インジウム97重量%、酸化スズ3重量%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、厚さ22nmのITO膜(光の屈折率2.00)を形成して、透明導電性フィルムを得た。
【0089】
(ハードコート層の形成)
ハードコート層の形成材料として、アクリル・ウレタン系樹脂(大日本インキ化学(株)製のユニディック17−806)100部に、光重合開始剤としてのヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャルティケミカルズ社製のイルガキュア184)5部を加えて、30重量%の濃度に希釈してなるトルエン溶液を調製した。
【0090】
このハードコート層の形成材料を、厚さが125μmのPETフィルムからなる透明基体の一方の面に塗布し、100℃で3分間乾燥した。その後、直ちにオゾンタイプ高圧水銀灯(エネルギー密度80W/cm、15cm集光型)2灯で紫外線照射を行ない、厚さ5μmのハードコート層を形成した。
【0091】
(積層透明導電性フィルムの作製)
次いで、前記透明基体のハードコート層形成面とは反対側の面に、厚さ約20μm、弾性係数10N/cmの透明なアクリル系の粘着剤層を形成した。粘着剤層組成物としては、アクリル酸ブチルとアクリル酸と酢酸ビニルとの重量比が100:2:5のアクリル系共重合体100部に、イソシアネート系架橋剤を1部配合してなるものを用いた。上記粘着剤層側に、上記透明導電性フィルム(透明導電体層を形成していない側の面)を貼り合せて、積層透明導電性フィルムを作製した。
【0092】
(ITO膜のエッチングによるパターン化)
積層透明導電性フィルムの透明導電体層に、ストライプ状にパターン化されているフォトレジストを塗布し、乾燥硬化した後、25℃、5%の塩酸(塩化水素水溶液)に、1分間浸漬して、ITO膜のエッチングを行った。
【0093】
(第二層目のアンダーコート層のエッチングによるパターン化)
上記ITO膜のエッチングを行った後、引き続きフォトレジストを積層したまま、45℃、2%の水酸化ナトリウム水溶液に、3分間浸漬して、第二層目のアンダーコート層のエッチングを行い、その後、フォトレジストを除去した。
【0094】
(透明導電体層の結晶化)
上記第二層目のアンダーコート層のエッチングを行った後、140℃で90分間の加熱処理を行って、ITO膜を結晶化した。
【0095】
実施例2
実施例1において、第二層目のアンダーコート層のエッチングによるパターン化をしなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ITO膜をパターン化した積層透明導電性フィルムを作製した。
【0096】
実施例3
実施例1において、第一層目のアンダーコート層の厚さを35nmに変えたこと、第二層目のアンダーコート層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ITO膜をパターン化した積層透明導電性フィルムを作製した。
【0097】
実施例4
実施例1において、第一層目のアンダーコート層の厚さを150nmに変えたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ITO膜をパターン化した積層透明導電性フィルムを作製した。
【0098】
実施例5
実施例1において、第一層目のアンダーコート層の厚さを150nmに変えたこと、第二層目のアンダーコート層のエッチングによるパターン化しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ITO膜をパターン化した積層透明導電性フィルムを作製した。
【0099】
実施例2乃至5において、第一層目、第二層目のアンダーコート層を形成した後の表面抵抗は、いずれも1×1012Ω/□以上であった。
【0100】
比較例1
実施例1において、第一層目のアンダーコート層、第二層目のアンダーコート層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ITO膜をパターン化した積層透明導電性フィルムを作製した。
【0101】
比較例2
実施例1において、第一層目のアンダーコート層の変わりに厚さ33nmのITO膜を設けたこと、第二層目のアンダーコート層の厚さを60nmに変えたこと、第二層目のアンダーコート層のエッチングによるパターン化をしなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ITO膜(表面の透明導電体層)をパターン化した積層透明導電性フィルムを作製した。第一層目のアンダーコート層(ITO膜)を形成した後の表面抵抗は、2×102Ω/□であった、第二層目のアンダーコート層を形成した後の表面抵抗は、4×102Ω/□であった。
【0102】
実施例および比較例の積層透明導電性フィルム(サンプル)について、下記評価を行った。結果を表1、表2に示す。
【0103】
<ITO膜の表面抵抗値>
二端子法を用いて、ITO膜の表面電気抵抗(Ω/□)を測定した。
【0104】
<ITO膜のパターン間の抵抗値>
独立して存在するITO膜のパターン部について、テスタにより、電気抵抗(Ω)を測定し、絶縁されているか否かを評価した。1×106Ω以上であれば絶縁していると判断できる。テスタは、カスタム社製のデジタルテスタ「CDM‐2000D」を用いた。
【0105】
<光の透過率>
島津製作所製の分光分析装置UV−240を用いて、光波長550nmに於ける可視光線透過率を測定した。
【0106】
<450〜650nmの平均反射率,反射のY値>
(株)日立製作所製の分光光度計U4100の積分球測定モードを用いて、反射入射角は10度にて、反射スペクトルを測定し、450〜650nm領域における平均反射率及びY値を算出した。なお、前記測定は、積層透明導電性フィルム(サンプル)の裏面側(ハードコート層側)を黒色スプレーを用いて遮光層を形成し、サンプルの裏面反射や裏面側からの光の入射が殆どない状態で測定を行った。反射色彩の計算は、JIS Z 8720に規定される標準の光D65を採用し、2度視野の条件で測定を行った。平均反射率及びY値の測定は、パターン部(ITO膜)と非パターン部(エッチング部)についてそれぞれ行った。また、パターン部と非パターン部の反射率の差(Δ反射率)、Y値の差(ΔY値)を表2に併せて示す。
【0107】
<見栄え評価>
黒い板の上に、サンプルを透明導電体層側が上になるように置き、目視によりパターン部と非パターン部の判別ができるか否かを下記基準で評価した。
◎:パターン部と非パターン部の判別が困難。
○:パターン部と非パターン部とをわずかに判別できる。
×:パターン部と非パターン部とをはっきりと判別できる。
【0108】
【表1】

【0109】
表1中、AC(層)は、アンダーコート層を示す。
【0110】
【表2】

【0111】
表1、表2から、本発明の透明導電性フィルムは、透明導電体層がパターン化されているが、見栄えが良好であることが認められる。
【符号の説明】
【0112】
1 フィルム基材
2 アンダーコート層
3 透明導電体層
4 粘着剤層
5 透明基体
6 ハードコート層
a パターン部
b 非パターン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なフィルム基材の片面または両面に少なくとも2層のアンダーコート層を介して、透明導電体層を有する透明導電性フィルムであって、
前記透明導電体層はパターン化されており、かつ前記透明導電体層を有しない非パターン部には前記少なくとも2層のアンダーコート層を有し、透明なフィルム基材から第一層目のアンダーコート層は厚みが100〜220nmであり、かつ、有機物により形成されていることを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項2】
アンダーコート層が少なくとも2層あり、少なくとも、透明なフィルム基材から最も離れたアンダーコート層は、無機物により形成されていることを特徴とする請求項1または1記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
無機物により形成されたアンダーコート層が、SiO膜であることを特徴とする請求項2記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
透明導電体層の屈折率とアンダーコート層の屈折率の差が、0.1以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
パターン化された透明導電体層は、2層のアンダーコート層を介して設けられており、
透明なフィルム基材から第一層目のアンダーコート層は、屈折率(n)が1.5〜1.7、厚み(d)が100〜220nmであり、
透明なフィルム基材から第二層目のアンダーコート層は、屈折率(n)が1.4〜1.5、厚み(d)が20〜80nmであり、
透明導電体層は、屈折率(n)が1.9〜2.1、厚み(d)が15〜30nmであり、
前記各層の光学厚み(n×d)の合計が、208〜554nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
パターン化された透明導電体層と2層のアンダーコート層に係る前記光学厚みの合計と、非パターン部のアンダーコート層の光学厚みの差(Δnd)が、40〜130nmであることを特徴とする請求項5記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
少なくとも片面に前記パターン化された透明導電体層が配置されるように、透明な粘着剤層を介して、請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性フィルムが少なくとも2枚積層されていることを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項8】
片面に前記パターン化された透明導電体層が配置されるように、請求項1〜7のいずれかに記載の透明導電性フィルムの片面に、透明な粘着剤層を介して透明基体が貼り合わされていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項9】
タッチパネルに用いられるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項10】
タッチパネルが静電容量結合方式のタッチパネルであることを特徴とする請求項9に記載の透明導電性フィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の透明導電性フィルムの製造方法であって、
透明なフィルム基材の片面または両面に、少なくとも1層のアンダーコート層を介して、透明導電体層を有する透明導電性フィルムを調製する工程、および
前記透明導電体層を、酸によりエッチングしてパターン化する工程を有することを特徴とする透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項12】
透明導電体層をパターン化する工程の後に、パターン化された透明導電体層をアニール化処理して結晶化させる工程を有することを特徴とする請求項11記載の透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載の透明導電性フィルムを備えたことを特徴とするタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−44145(P2011−44145A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183342(P2010−183342)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【分割の表示】特願2008−700(P2008−700)の分割
【原出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】